特許第6851188号(P6851188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851188
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びシャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20210322BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20210322BHJP
   C23C 16/507 20060101ALI20210322BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
   H01L21/302 101C
   C23C16/507
   C23C16/455
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-230545(P2016-230545)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-88336(P2018-88336A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐希
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−227427(JP,A)
【文献】 特開平07−022341(JP,A)
【文献】 特開2008−177428(JP,A)
【文献】 特開2013−105664(JP,A)
【文献】 特開2013−239482(JP,A)
【文献】 特開2015−022806(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
H01L 21/3065
C23C 16/507
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形の基板を収容する処理室と、誘導結合プラズマを生成するための高周波アンテナと、前記処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドとを備え、前記シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるプラズマ処理装置において、
前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、
前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第2の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの長辺に沿う前記分割シャワーヘッドを含む第5の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの短辺に沿う前記分割シャワーヘッドを含む第6の分割シャワーヘッド群とに仕分けられ、
前記第5の分割シャワーヘッド群及び前記第6の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々を構成する各前記分割シャワーヘッドには、各前記分割シャワーヘッド群に対応する各流量比率制御器から分岐するガス流路が接続され、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々において、前記流量比率制御器から各前記分割シャワーヘッドまでの前記ガス流路の長さは統一されることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々に対応して前記高周波アンテナが配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
平面視矩形の基板を収容する処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドであって、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるシャワーヘッドにおいて、
前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、
前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項6】
平面視矩形の基板を収容する処理室と、誘導結合プラズマを生成するための高周波アンテナと、前記処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドとを備え、前記シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるプラズマ処理装置において、
前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、
前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御され、
前記高周波アンテナは前記複数の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置され、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は個別に制御され、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量、及び前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は互いに独立して制御されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
平面視矩形の基板を収容する処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドであって、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるシャワーヘッドにおいて、
前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、
前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御され、
高周波アンテナが前記複数の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置され、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は個別に制御され、
前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量、及び前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は互いに独立して制御されることを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項8】
前記シャワーヘッドは、前記第1の分割シャワーヘッド群及び前記第2の分割シャワーヘッド群を取り囲む複数の他の分割シャワーヘッドをさらに備え、
前記複数の他の分割シャワーヘッドは複数の他の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、 前記複数の他の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記他の分割シャワーヘッドを含む第7の分割シャワーヘッド群と、前記第7の分割シャワーヘッド群の各前記他の分割シャワーヘッドに挟まれる前記他の分割シャワーヘッドを含む第8の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記第1の分割シャワーヘッド群は、前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、前記第2の分割シャワーヘッド群は、前記第8の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、
前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1の分割シャワーヘッド群及び前記第2の分割シャワーヘッド群を取り囲む複数の他の分割シャワーヘッドをさらに備え、
前記複数の他の分割シャワーヘッドは複数の他の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、 前記複数の他の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記他の分割シャワーヘッドを含む第7の分割シャワーヘッド群と、前記第7の分割シャワーヘッド群の各前記他の分割シャワーヘッドに挟まれる前記他の分割シャワーヘッドを含む第8の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記第1の分割シャワーヘッド群は、前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、前記第2の分割シャワーヘッド群は、前記第8の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、
前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とする請求項5記載のシャワーヘッド。
【請求項10】
前記シャワーヘッドは、前記第1の分割シャワーヘッド群及び前記第2の分割シャワーヘッド群を取り囲む複数の他の分割シャワーヘッドをさらに備え、
前記複数の他の分割シャワーヘッドは複数の他の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、 前記複数の他の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記他の分割シャワーヘッドを含む第7の分割シャワーヘッド群と、前記第7の分割シャワーヘッド群の各前記他の分割シャワーヘッドに挟まれる前記他の分割シャワーヘッドを含む第8の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記第1の分割シャワーヘッド群は、前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、前記第2の分割シャワーヘッド群は、前記第8の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、
前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御され、
前記高周波アンテナは前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置され、前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は個別に制御され、
前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量、及び前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は互いに独立して制御されることを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1の分割シャワーヘッド群及び前記第2の分割シャワーヘッド群を取り囲む複数の他の分割シャワーヘッドをさらに備え、
前記複数の他の分割シャワーヘッドは複数の他の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、 前記複数の他の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記他の分割シャワーヘッドを含む第7の分割シャワーヘッド群と、前記第7の分割シャワーヘッド群の各前記他の分割シャワーヘッドに挟まれる前記他の分割シャワーヘッドを含む第8の分割シャワーヘッド群とを含み、
前記第1の分割シャワーヘッド群は、前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、前記第2の分割シャワーヘッド群は、前記第8の分割シャワーヘッド群及び前記第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドからなり、
前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御され、
前記高周波アンテナは前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置され、前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は個別に制御され、
前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量、及び前記第7の分割シャワーヘッド群及び前記第8の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は互いに独立して制御されることを特徴とする請求項7記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割シャワーヘッドを有するプラズマ処理装置及びシャワーヘッド に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)製造工程では、平面視矩形のガラス基板にエッチング処理や成膜処理等のプラズマ処理を施す。このようなプラズマ処理を行うためにプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等の種々のプラズマ処理装置が用いられる。プラズマ処理装置としては、高真空度で高密度のプラズマを得ることができる誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)処理装置が好適に用いられる。
【0003】
従来の誘導結合プラズマ処理装置では、高周波アンテナと処理室の間にガラス基板に対応した平面視矩形の誘電体窓が配置され、高周波電力が供給された高周波アンテナからの磁界に誘電体窓を透過させ、処理室の内部において処理ガスから誘導結合プラズマを生成する。ところで、近年、FPDの世代が進み、ガラス基板が大型化し、例えば、約2800mm×約3000mmのガラス基板へプラズマ処理が施される。これに伴い、誘電体窓も大型化しているが、誘電体窓を構成する石英等の誘電体材料は脆いために大型化には不向きである。
【0004】
そこで、誘電体窓の代わりに、延性材料である金属からなる平面視矩形の金属窓を処理室の天井部として用い、金属窓を仕切りとしての絶縁部材で分割し、分割された金属窓の各部においてループ電流を誘起させて処理室の内部に誘導電界を形成し、該誘導電界によってプラズマを生じさせる誘導結合プラズマ処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−227427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガラス基板の大型化に対応して処理室も大型化すると、様々な要因により、ガラス基板へ均一なプラズマ処理を施すことが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、基板へ均一なプラズマ処理を施すことができるプラズマ処理装置及びシャワーヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置は、平面視矩形の基板を収容する処理室と、誘導結合プラズマを生成するための高周波アンテナと、前記処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドとを備え、前記シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるプラズマ処理装置において、前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のシャワーヘッドは、平面視矩形の基板を収容する処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドであって、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるシャワーヘッドにおいて、前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御されることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置は、平面視矩形の基板を収容する処理室と、誘導結合プラズマを生成するための高周波アンテナと、前記処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドとを備え、前記シャワーヘッドは、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるプラズマ処理装置において、前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御され、前記高周波アンテナは前記複数の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置され、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は個別に制御され、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量、及び前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は互いに独立して制御されることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のシャワーヘッドは、平面視矩形の基板を収容する処理室の金属窓として機能する平面視矩形のシャワーヘッドであって、前記シャワーヘッドの中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つ前記シャワーヘッドの外周を辿る方向を周方向としたとき、前記径方向及び前記周方向に関し、絶縁部材を介して複数の分割シャワーヘッドに分割され、各前記分割シャワーヘッドは個別に処理ガスを前記処理室の内部へ導入可能に構成されるシャワーヘッドにおいて、前記複数の分割シャワーヘッドは複数の分割シャワーヘッド群に仕分けされ、前記複数の分割シャワーヘッド群は、前記シャワーヘッドの角部に位置する前記分割シャワーヘッドを含む第1の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの外周に位置して前記第1の分割シャワーヘッド群の各前記分割シャワーヘッドに挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第2の分割シャワーヘッド群と、前記シャワーヘッドの中央に存在する前記分割シャワーヘッドを含む第3の分割シャワーヘッド群と、前記第3の分割シャワーヘッド群及び前記第1の分割シャワーヘッド群又は前記第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる前記分割シャワーヘッドを含む第4の分割シャワーヘッド群とを含み、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量は個別に制御され、高周波アンテナが前記複数の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置され、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は個別に制御され、前記複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される前記処理ガスの流量、及び前記複数の分割シャワーヘッド群の各々が前記処理室の内部に形成する誘導電界は互いに独立して制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の分割シャワーヘッド群の各々へ供給される処理ガスの流量は個別に制御されるので、各分割シャワーヘッド群から処理室へ導入される処理ガスの流量を個別に制御することができる。これにより、処理室の内部の処理ガスの分布を任意に調整することができる。また、金属窓として機能する複数の分割シャワーヘッド群の各々へ個別にループ電流を誘起させて処理室の内部に誘導電界を形成することにより、処理室の内部の誘導電界の分布を任意に調整することができる。すなわち、処理室の内部において、処理ガスの分布と誘導電界の分布を独立して制御できるので、様々な状況に対応するために各所においてエッチングレートを個別に制御することができ、もって、基板へ均一なプラズマ処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置としての誘導結合プラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2図1における高周波アンテナの構成を概略的に示す平面図である。
図3図1におけるシャワーヘッドの分割形態を説明するための模式的な平面図である。
図4図1の誘導結合プラズマ処理装置における各分割シャワーヘッドへの処理ガスの供給形態を説明するための模式図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置としての誘導結合プラズマ処理装置におけるシャワーヘッドの分割形態を説明するための模式的な平面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置としての誘導結合プラズマ処理装置におけるシャワーヘッドの分割形態を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置としての誘導結合プラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0017】
図1に示す誘導結合プラズマ処理装置10は、平面視矩形の基板、例えば、FPD用ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成する際のメタル膜、ITO膜、酸化膜等のエッチング処理や、レジスト膜のアッシング処理等のプラズマ処理を行う。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が該当する。
【0018】
誘導結合プラズマ処理装置10は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる角筒形状の気密な処理容器11を備える。処理容器11は分解可能に構成され、接地線12によって電気的に接地されている。処理容器11は、該処理容器11と絶縁されて形成された平面視矩形のシャワーヘッド13により、図中上下方向に関してアンテナ室14及び処理室15に区画されている。シャワーヘッド13は金属窓として機能し、処理室15の天壁を構成する。金属窓となるシャワーヘッド13は、例えば、非磁性体で導電性の金属、例えば、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金で構成される。また、シャワーヘッド13の耐プラズマ性を向上させるために、シャワーヘッド13の処理室15側の表面に誘電体膜や誘電体カバーを設けてもよい。誘電体膜としては陽極酸化膜又は溶射セラミックス膜が該当する。また、誘電体カバーとしては石英又はセラミックスからなるカバーが該当する。
【0019】
アンテナ室14の側壁14a及び処理室15の側壁15aとの間には、処理容器11の内側に突出する支持棚16が配置されている。支持棚16は導電性材料、例えば、アルミニウム等の金属で構成される。シャワーヘッド13は後述するように絶縁部材18を介して複数、例えば、24個の分割シャワーヘッド13a〜13xに分割される。シャワーヘッド13は、絶縁部材18を介して支持棚16に支持される。分割シャワーヘッド13a〜13xの各々には、混合ガスからなる処理ガスを供給するガスボックス19からガス供給管20を介して処理ガスが供給され、各分割シャワーヘッド13a〜13xはそれぞれに形成されたガス吐出孔21から処理ガスを処理室15の内部(処理空間S)へ導入する。すなわち、各分割シャワーヘッド13a〜13xは個別に処理ガスを処理空間Sへ導入する。なお、各分割シャワーヘッド13a〜13xへの処理ガスの供給形態の詳細については後述する。
【0020】
シャワーヘッド13の上のアンテナ室14内には、シャワーヘッド13に面するように高周波アンテナ22が配置されている。高周波アンテナ22は絶縁部材からなるスペーサ(図示せず)によってシャワーヘッド13から離間して配置され、後述する第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置されている。高周波アンテナ22は、例えば、図2に示すように、平面視において渦巻き状に形成され、導電性材料、例えば、銅等からなる略L字状の4本のアンテナ線22a〜22dを90°毎に回転角度をずらしながら巻回して全体が渦巻状を呈するように構成した多重(四重)アンテナからなり、各アンテナ線22a〜22dの配置領域が略額縁状をなしている。なお、高周波アンテナ22の形態は図2に示す例に限られず、一本又は複数のアンテナ線を環状にした環状アンテナであってもよい。
【0021】
高周波アンテナ22には、給電線24及び整合器25を介して第1の高周波電源26が接続されている。プラズマ処理の間、第1の高周波電源26から給電線24を介して、例えば、13.56MHzの高周波電力が高周波アンテナ22に供給されることにより、金属窓として機能するシャワーヘッド13に誘起されるループ電流を介して処理室15の処理空間Sに誘導電界が形成され、シャワーヘッド13から処理空間Sへ導入された処理ガスが、形成された誘導電界によって励起され、処理室15の処理空間Sにプラズマが生成される。
【0022】
処理室15の底壁には、シャワーヘッド13を挟んで高周波アンテナ22と対向するように、FPD用ガラス基板(以下、単に「基板」という。)Gを載置するための載置台27が絶縁部材28を介して固定されている。載置台27は、導電性材料、例えば、表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成され、載置台27に載置された基板Gは、静電チャック(図示せず)によって載置台27へ吸着保持される。載置台27の上部周縁部には絶縁性のシールドリング29が配置され、載置台27の側面は絶縁リング30によって覆われる。載置台27には基板Gの搬出入のための複数のリフターピン31が、処理室15の底壁及び絶縁部材28を介して挿通されている。各リフターピン31は、処理容器11の外部に配置された昇降機構(図示せず)によって昇降駆動し、基板Gの搬出入を行う。また、処理容器11の外部の下方には、整合器32及び第2の高周波電源33が配置され、載置台27には給電線34により、整合器32を介して第2の高周波電源33が接続されている。第2の高周波電源33は、プラズマ処理中に、バイアス用の高周波電力、例えば、周波数が3.2MHzの高周波電力を載置台27に供給する。このバイアス用の高周波電力によって生成されたセルフバイアスにより、処理室15の内部に生成されたプラズマ中のイオンが効果的に基板Gに引き込まれる。
【0023】
さらに、載置台27内には、基板Gの温度を制御するため、ヒータ等の加熱手段や冷媒流路等からなる温度制御機構と、温度センサーとが配置されている(いずれも図示しない)。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも処理容器11の底面及び絶縁部材28に配置された開口部35を通して処理容器11の外部に導出される。
【0024】
処理室15の側壁15aには、基板Gを搬出入するための搬出入口36及び該搬出入口36を開閉するゲートバルブ37が配置されている。また、処理室15の底壁には、排気管38を介して真空ポンプ等を含む排気装置39が接続されている。排気装置39によって処理室15の内部が排気され、プラズマ処理中、処理室15の内部が所定の真空雰囲気(例えば1.33Pa)に設定、維持される。また、載置台27に載置された基板Gの裏面側には極薄の冷却空間(図示しない)が形成され、冷却空間には一定の圧力の熱伝達用ガスとしてヘリウムガスがヘリウムガス流路40から供給される。このように基板Gの裏面側に熱伝達用ガスを供給することにより、真空下において基板Gのプラズマ処理による温度上昇や温度変化を抑制することができる。
【0025】
誘導結合プラズマ処理装置10の各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなる制御部41に接続されて制御される。また、制御部41には、オペレータによる誘導結合プラズマ処理装置10を管理するためのコマンド入力等の入力操作を行うキーボードや、誘導結合プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース42が接続されている。さらに、制御部41には、誘導結合プラズマ処理装置10で実行される各種処理を制御部41の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて誘導結合プラズマ処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納された記憶部43が接続されている。特に、処理レシピは記憶部43の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、コンピュータに内蔵されたハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース42からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部43から呼び出して制御部41に実行させることにより、制御部41の制御下で誘導結合プラズマ処理装置10による所望の処理が行われる。
【0026】
ところで、誘導結合プラズマは、高周波アンテナに高周波電流が流れることにより、その周囲に磁界が発生し、当該磁界によって誘起される誘導電界を利用して高周波放電を起こし、当該高周波放電によって処理ガスを励起させて生じさせるプラズマである。ここで、処理室の天壁として金属窓を用いると、高周波アンテナからの磁界が金属窓を透過しないため、金属窓の裏面側、すなわち、処理室の内部に磁界が到達せず、当該内部においてプラズマが生じない。
【0027】
本実施の形態では、これに対応して、金属窓として機能するシャワーヘッド13を絶縁部材18で分割シャワーヘッド13a〜13xに分割することにより、各分割シャワーヘッド13a〜13xにおいてループ電流を誘起させて処理室15の処理空間Sに誘導電界を形成し、該誘導電界によって処理空間Sに導入された処理ガスを励起させてプラズマを生じさせる。
【0028】
図3は、図1におけるシャワーヘッドの分割形態を説明するための模式的な平面図である。
【0029】
図3において、シャワーヘッド13の中央から外周へ向かう方向を径方向とし、且つシャワーヘッド13の外周を辿る方向を周方向としたとき、シャワーヘッド13は、径方向及び周方向に関し、絶縁部材18を介して複数の分割シャワーヘッド13a〜13xに分割される。具体的には、シャワーヘッド13は径方向に関して3分割され、さらに、径方向に3分割されたシャワーヘッド13は、中央から外周へ向かうにつれて周方向に関し、4分割、8分割及び12分割される。すなわち、本実施の形態では、シャワーヘッド13が24個の分割シャワーヘッド13a〜13xに分割される。
【0030】
また、各分割シャワーヘッド13a〜13xは4つの分割シャワーヘッド群に仕分けされる。なお、図3では、同じ分割シャワーヘッド群に含まれる分割シャワーヘッドには同じハッチングを記している。具体的に、各分割シャワーヘッド13a〜13xは、シャワーヘッド13の角部に位置する8つの分割シャワーヘッド13o,13p,13r,13s,13u,13v,13x及び13mからなる第1の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の外周に位置して第1の分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドに挟まれる4つの分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wからなる第2の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の中央付近に存在する4つの分割シャワーヘッド13a〜13dからなる第3の分割シャワーヘッド群と、第3の分割シャワーヘッド群及び第1の分割シャワーヘッド群又は第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる8つの分割シャワーヘッド13e〜13lからなる第4の分割シャワーヘッド群とに仕分けされる。なお、上述したように、高周波アンテナ22が第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置されている。
【0031】
図4は、図1の誘導結合プラズマ処理装置における各分割シャワーヘッドへの処理ガスの供給形態を説明するための模式図である。
【0032】
図4において、誘導結合プラズマ処理装置10では、ガスボックス19からのガス供給管20が第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群に対応して4つのガス供給支管44〜47に分岐され、ガス供給支管44は第1の分割シャワーヘッド群へ処理ガスを供給し、ガス供給支管45は第2の分割シャワーヘッド群へ処理ガスを供給し、ガス供給支管46は第3の分割シャワーヘッド群へ処理ガスを供給し、ガス供給支管47は第4の分割シャワーヘッド群へ処理ガスを供給する。
【0033】
誘導結合プラズマ処理装置10では、各ガス供給支管44〜47に対応して4つの流量比率制御器(Flow Ratio Controller:FRC)48〜51が配置され、各FRC48〜51は、対応する各ガス供給支管44〜47を流れる処理ガスの流量を個別に制御する。これにより、第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群から処理空間Sへ導入される処理ガスの流量を個別に制御することができる。
【0034】
また、各ガス供給支管44〜47が各FRC48〜51の下流において分岐され、各分割シャワーヘッド13a〜13xへ個別に処理ガスが供給される。例えば、図4に示すように、ガス供給支管45は4つの分岐管45a〜45d(ガス流路)に分岐され、分岐管45a〜45dの各々は第2の分割シャワーヘッド群の分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wの各々へ接続される。ガス供給支管45においてFRC49から各分岐管45a〜45dを経て各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wまで至るガス流路の長さは統一され、各分岐管45a〜45dの断面積も統一される。したがって、FRC49から各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wまで至るガス流路のコンダクタンスは同じとなり、各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wへ処理ガスが均等に配分される。その結果、各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wから同一量の処理ガスが処理空間Sへ導入される。
【0035】
また、ガス供給支管44は8つの分岐管44a〜44hに分岐され、分岐管44a〜44hの各々は第1の分割シャワーヘッド群の分割シャワーヘッド13o,13p,13r,13s,13u,13v,13x及び13mの各々へ接続される。ガス供給支管44においても各分岐管44a〜44hの長さは統一され、各分岐管44a〜44hの断面積も統一される。したがって、各分割シャワーヘッド13o,13p,13r,13s,13u,13v,13x及び13mからも同一量の処理ガスが処理空間Sへ導入される。
【0036】
さらに、ガス供給支管46は4つの分岐管46a〜46dに分岐され、分岐管46a〜46dの各々は第3の分割シャワーヘッド群の分割シャワーヘッド13a〜13dの各々へ接続される。ガス供給支管46においても各分岐管46a〜46dの長さは統一され、各分岐管46a〜46dの断面積も統一される。したがって、各分割シャワーヘッド13a〜13dからも同一量の処理ガスが処理空間Sへ導入される。
【0037】
また、ガス供給支管47は8つの分岐管47a〜47hに分岐され、分岐管47a〜47hの各々は第4の分割シャワーヘッド群の分割シャワーヘッド13e〜13lの各々へ接続される。ガス供給支管47においても各分岐管47a〜47hの長さは統一され、各分岐管47a〜47hの断面積も統一される。したがって、各分割シャワーヘッド13e〜13lからも同一量の処理ガスが処理空間Sへ導入される。
【0038】
なお、誘導結合プラズマ処理装置10では、高周波アンテナ22が第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群の各々に対応するように配置されていることから、処理空間Sにおける第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群に対向する部分に導入された処理ガスの流量に応じて第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群に対向する部分の誘導電界の強度を高周波アンテナ22によって制御してもよい。
【0039】
誘導結合プラズマ処理装置10によれば、第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群へ供給される処理ガスの流量は個別に制御されるので、第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群から処理空間Sへ導入される処理ガスの流量を個別に制御することができる。これにより、処理空間Sの処理ガスの分布を任意に調整することができる。また、金属窓として機能する第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群の各々へ個別にループ電流を誘起させて処理空間Sに誘導電界を形成することにより、処理空間Sの誘導電界の分布を任意に調整することができる。すなわち、処理空間Sにおいて、処理ガスの分布と誘導電界の分布を独立して制御できるので、様々な状況に対応するために各所においてエッチングレートを個別に制御することができ、もって、基板Gへ均一なプラズマ処理を施すことができる。
【0040】
具体的に、誘導結合プラズマ処理装置10では、例えば、基板Gに成膜されたアルミ(Al)膜をエッチングする際、処理ガスとして塩素ガスを各分割シャワーヘッド13a〜13xから処理空間Sへ導入し、高周波アンテナ22によって処理空間Sに誘導電界を形成し、塩素ガスを励起して誘導結合プラズマを生じさせる。この場合、生成されたプラズマが側壁15aに触れて失活するので、シャワーヘッド13の角部に位置する分割シャワーヘッド13o,13p,13r,13s,13u,13v,13x及び13mからなる第1の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の外周に位置する分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wからなる第2の分割シャワーヘッド群とに誘起されるループ電流を、シャワーヘッド13の中央付近に存在する分割シャワーヘッド13a〜13dからなる第3の分割シャワーヘッド群と、第3の分割シャワーヘッド群及び第1の分割シャワーヘッド群又は第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる分割シャワーヘッド13e〜13lからなる第4の分割シャワーヘッド群とに誘起されるループ電流よりも増大させて側壁15a近傍に形成される誘導電界を強くする。これにより、側壁15a近傍において生成されるプラズマを増大させ、側壁15aに触れて失活したプラズマを補い、処理空間Sにおいて誘導結合プラズマの均一な分布を実現する(より好ましくは、誘起されるループ電流の量が第3の分割シャワーヘッド群<第4の分割シャワーヘッド群<第2の分割シャワーヘッド群<第1の分割シャワーヘッド群となるように調整する。)。また、基板Gの周縁部では未反応の塩素ガスが多く存在するが、エッチング対象であるアルミ膜はケミカル反応性が高いため、ローディング効果により、基板Gの周縁部におけるエッチングレートが高くなる。このローディング効果を抑制するために、シャワーヘッド13の角部に位置する第1の分割シャワーヘッド群とシャワーヘッド13の外周に位置する第2の分割シャワーヘッド群に供給される塩素ガスの量を、シャワーヘッド13の中央付近に存在する第3の分割シャワーヘッド群と、第3の分割シャワーヘッド群及び第1の分割シャワーヘッド群又は第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる第4の分割シャワーヘッド群に供給される塩素ガスの量よりも減少させる。(より好ましくは、供給される塩素ガスの量が第3の分割シャワーヘッド群=第4の分割シャワーヘッド群>第2の分割シャワーヘッド群>第1の分割シャワーヘッド群となるように調整する。)。
【0041】
また、誘導結合プラズマ処理装置10において、基板Gに成膜された酸化シリコン(SiO)膜をエッチングする際、処理ガスとして四フッ化炭素(CF)と酸素(O)の混合ガスを各分割シャワーヘッド13a〜13xから処理空間Sへ導入し、高周波アンテナ22によって処理空間Sに誘導電界を形成し、処理ガスを励起して誘導結合プラズマを生じさせる場合もある。この場合、エッチング対象である酸化シリコン膜は、シリコン原子と酸素原子の結合が強く、処理ガスとのケミカル反応性が低いため、ローディング効果が作用し難い。したがって、ローディング効果を抑制するために処理空間Sにおいて処理ガスを偏在させる必要が無く、シャワーヘッド13の角部に位置する第1の分割シャワーヘッド群、シャワーヘッド13の外周に位置する第2の分割シャワーヘッド群、シャワーヘッド13の中央付近に存在する第3の分割シャワーヘッド群と、第3の分割シャワーヘッド群及び第1の分割シャワーヘッド群又は第2の分割シャワーヘッド群に挟まれる第4の分割シャワーヘッド群において供給される処理ガスの流量を等しくすることができる。このように、第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群の各々が、処理空間Sへ供給する処理ガスの流量と、処理空間Sに形成する誘導電界の量を個別に制御することができるため、処理空間Sの各所においてエッチングレートを個別に制御することができ、もって、基板Gへの均一なプラズマ処理を実現することができる。
【0042】
また、誘導結合プラズマ処理装置10では、ガス供給支管45においてFRC49から各分岐管45a〜45dを経て第2の分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wまで至るガス流路の長さは統一され、各分岐管45a〜45dの断面積も統一されるので、FRC49から各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wまで至るガス流路のコンダクタンスを統一することができ、各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wへ処理ガスを均等に分配することができる。これにより、第2の分割シャワーヘッド群において各分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wへ処理ガスを均等に分配するためのFRCを設ける必要を無くすことができ、もって、誘導結合プラズマ処理装置10の構成を簡素化することができる。なお、第1の分割シャワーヘッド群、第3の分割シャワーヘッド群及び第4の分割シャワーヘッド群においても同様の効果を奏することができる。
【0043】
さらに、誘導結合プラズマ処理装置10では、第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群に対応して高周波アンテナ22が配置されるので、処理空間Sの誘導電界の強度の分布を処理ガスの分布に合わせて制御することができ、もって、処理空間Sにおける誘導結合プラズマの分布を詳細に制御することができる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0045】
第2の実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0046】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置としての誘導結合プラズマ処理装置におけるシャワーヘッドの分割形態を説明するための模式的な平面図である。
【0047】
図5において、各分割シャワーヘッド13a〜13xは5つの分割シャワーヘッド群に仕分けされる。なお、図5でも、同じ分割シャワーヘッド群に含まれる分割シャワーヘッドには同じハッチングを記している。具体的に、8つの分割シャワーヘッド13o,13p,13r,13s,13u,13v,13x及び13mからなる第1の分割シャワーヘッド群と、4つの分割シャワーヘッド13a〜13dからなる第3の分割シャワーヘッド群と、8つの分割シャワーヘッド13e〜13lからなる第4の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の外周に位置し且つシャワーヘッド13の長辺に沿う2つの分割シャワーヘッド13n,13tからなる第5の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の外周に位置し且つシャワーヘッド13の短辺に沿う2つの分割シャワーヘッド13w,13qからなる第6の分割シャワーヘッド群とに仕分けされる。なお、本実施の形態でも、高周波アンテナ22が第1の分割シャワーヘッド群、第3の分割シャワーヘッド群〜第6の分割シャワーヘッド群に対応するように配置されている。
【0048】
また、本実施の形態でも、ガスボックス19からのガス供給管20が第1の分割シャワーヘッド群、第3の分割シャワーヘッド群〜第6の分割シャワーヘッド群に対応して5つのガス供給支管に分岐され、各ガス供給支管に対応して5つのFRCが配置され、各FRCは、対応する各ガス供給支管を流れる処理ガスの流量を個別に制御する。これにより、第1の分割シャワーヘッド群、第3の分割シャワーヘッド群〜第6の分割シャワーヘッド群から処理空間Sへ導入される処理ガスの流量を個別に制御することができる。
【0049】
また、各ガス供給支管において対応するFRCから各分岐管を経て同じ分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドまで至るガス流路の長さは統一され、各分岐管の断面積も統一される。したがって、FRCから同じ分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドまで至るガス流路のコンダクタンスは同じとなり、各分割シャワーヘッドへ処理ガスが均等に配分される。その結果、同じ分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドから同一量の処理ガスが処理空間Sへ導入される。
【0050】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0051】
第3の実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0052】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置としての誘導結合プラズマ処理装置におけるシャワーヘッドの分割形態を説明するための模式的な平面図である。
【0053】
図6において、シャワーヘッド13は、径方向及び周方向に関し、絶縁部材18を介して複数の分割シャワーヘッド13a〜13x、52a〜52pに分割される。具体的には、シャワーヘッド13は径方向に関して4分割され、さらに、径方向に4分割されたシャワーヘッド13は、中央から外周へ向かうにつれて周方向に関し、4分割、8分割、12分割及び16分割される。すなわち、本実施の形態では、シャワーヘッド13が40個の分割シャワーヘッド13a〜13x、52a〜52pに分割される。
【0054】
また、各分割シャワーヘッド13a〜13x、52a〜52pは6つの分割シャワーヘッド群に仕分けされる。なお、図6でも、同じ分割シャワーヘッド群に含まれる分割シャワーヘッドには同じハッチングを記している。具体的に、各分割シャワーヘッド13a〜13x、52a〜52pは、シャワーヘッド13の角部に位置する8つの分割シャワーヘッド52a,52d,52e,52h,52i,52l,52m及び52pからなる第7の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の外周に位置して第の分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドに挟まれる8つの分割シャワーヘッド52b,52c,52f,52g,52j,52k,52n及び52oからなる第8の分割シャワーヘッド群と、シャワーヘッド13の中央付近に存在する4つの分割シャワーヘッド13a〜13dからなる第3の分割シャワーヘッド群と、第3の分割シャワーヘッド群の分割シャワーヘッド13a〜13dと径方向に関して隣接する8つの分割シャワーヘッド13e〜13lからなる第4の分割シャワーヘッド群と、第7の分割シャワーヘッド群及び第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる8つの分割シャワーヘッド13o,13p,13r,13s,13u,13v,13x及び13mからなる第1の分割シャワーヘッド群と、第8の分割シャワーヘッド群及び第4の分割シャワーヘッド群に挟まれる4つの分割シャワーヘッド13n,13q,13t,13wからなる第2の分割シャワーヘッド群とに仕分けされる。なお、本実施の形態でも、高周波アンテナ22が第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群、第7の分割シャワーヘッド群及び第8の分割シャワーヘッド群に対応するように配置されている。
【0055】
また、本実施の形態でも、ガスボックス19からのガス供給管20が第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群、第7の分割シャワーヘッド群及び第8の分割シャワーヘッド群に対応して6つのガス供給支管に分岐され、各ガス供給支管に対応して6つのFRCが配置され、各FRCは、対応する各ガス供給支管を流れる処理ガスの流量を個別に制御する。これにより、第1の分割シャワーヘッド群〜第4の分割シャワーヘッド群、第7の分割シャワーヘッド群及び第8の分割シャワーヘッド群から処理空間Sへ導入される処理ガスの流量を個別に制御することができる。
【0056】
また、各ガス供給支管において対応するFRCから各分岐管を経て同じ分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドまで至るガス流路の長さは統一され、各分岐管の断面積も統一される。したがって、FRCから同じ分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドまで至るガス流路のコンダクタンスは同じとなり、各分割シャワーヘッドへ処理ガスが均等に配分される。その結果、同じ分割シャワーヘッド群の各分割シャワーヘッドから同一量の処理ガスが処理空間Sへ導入される。
【0057】
以上、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
G 基板
10 誘導結合プラズマ処理装置
11 処理容器
13 シャワーヘッド
13a〜13x,52a〜52p 分割シャワーヘッド
15 処理室
18 絶縁部材
20 ガス供給管
22 高周波アンテナ
44〜47 ガス供給支管
48〜51 FRC
44a〜44h,45a〜45d,46a〜46d,47a〜47h 分岐管
図1
図2
図3
図4
図5
図6