特許第6851362号(P6851362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851362フレキシブル積層体及びそれを用いたフレキシブルディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851362
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】フレキシブル積層体及びそれを用いたフレキシブルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/022 20190101AFI20210322BHJP
   B32B 7/04 20190101ALI20210322BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210322BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210322BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210322BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B32B7/022
   B32B7/04
   G09F9/30 310
   G09F9/30 365
   G09F9/30 330
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   H05B33/02
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-500230(P2018-500230)
(86)(22)【出願日】2017年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2017005979
(87)【国際公開番号】WO2017142078
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-28696(P2016-28696)
(32)【優先日】2016年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 武明
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
(72)【発明者】
【氏名】水野 春奈
(72)【発明者】
【氏名】古川 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真樹
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0201487(US,A1)
【文献】 特開2009−229667(JP,A)
【文献】 特表2005−526296(JP,A)
【文献】 特表2011−526629(JP,A)
【文献】 特開2008−248226(JP,A)
【文献】 特開2014−227453(JP,A)
【文献】 特開2009−150982(JP,A)
【文献】 特開2015−182393(JP,A)
【文献】 特開2009−026883(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/159503(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0095261(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0259463(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0185782(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0226015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/14
H05K 1/00−1/02
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の中間層を間に挟んで2つのハード層が密着された積層構造を1単位として、該積層構造を1単位以上有しており、
前記中間層が、粘弾性を有しており、かつフレキシブル積層体を曲げた場合、前記中間層を間に挟んで密着されたハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成されており、
前記フレキシブル積層体を曲げた場合、前記積層構造1単位について、ハード層のヤング率E、中間層のヤング率E、ハード層の断面二次モーメントI、中間層の断面二次モーメントIとしたとき、
*Iの値がE*Iの値の少なくとも10倍以上であり、前記中間層の内部にニュートラルプレーンが形成されることなく、前記中間層を間に挟んで密着されたハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成されることを特徴とするフレキシブル積層体。
【請求項2】
前記フレキシブル積層体を曲げた場合、前記中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対し他方のハード層が、前記中間層を介して、実質的に積層面方向と平行な方向のみにずれるように、前記フレキシブル積層体を積層方向より挟持している支持機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル積層体。
【請求項3】
前記フレキシブル積層体を曲げた場合、前記フレキシブル積層体の端部に、前記中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれに対応する段差が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル積層体。
【請求項4】
前記フレキシブル積層体を略U字状となるように一定の曲率半径で曲げた場合、前記中間層が、関係式(1)〜(3)で示される関係を実質的に満たすように構成されており、かつ前記フレキシブル積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断ひずみが、関係式(5)で定義される最大せん断ひずみを超えており、かつ前記フレキシブル積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断せん断応力が、関係式(4)で定義される最大せん断応力を超えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフレキシブル積層体。
θ=Rθ・・・(1)
−R=t+(h+h)/2・・・(2)
L=(θ−θ)(R+R)/2・・・(3)
τxy=G*L/t・・・(4)
γ(=2εxy)=L/t・・・(5)
ただし、関係式(1)〜(5)において、
は、前記中間層に密着された一方のハード層の厚み方向中央の曲げ半径であり、
は、前記中間層に密着された他方のハード層の厚み方向中央の曲げ半径であり、
θは、前記中間層に密着された一方のハード層の厚み方向中央の曲げ角度であり、
θは、前記中間層に密着された他方のハード層の厚み方向中央の曲げ角度であり、
tは、前記中間層の厚みであり、
は、前記中間層に密着された一方のハード層の厚みであり、
は、前記中間層に密着された他方のハード層の厚みであり、
Lは、前記曲率半径(R+R)/2の曲率終了部分での、前記中間層に密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量であり、
τxyは、前記中間層のせん断応力であり、
Gは、前記中間層のせん断弾性係数であり、
γ(=2εxy)は、前記中間層のせん断ひずみであり、
εxyは、歪みテンソルである。
【請求項5】
前記ずれ量Lが、前記フレキシブル積層体の端部での中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量と実質的に同じであることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル積層体。
【請求項6】
フレキシブル積層体を構成する前記中間層は、シリコーン系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、およびウレタン系感圧接着剤からなる群より選択された少なくとも1種の接着剤で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のフレキシブル積層体。
【請求項7】
前記中間層を構成する接着剤の剪断周波数1Hzにおける損失係数tanδが、−40℃〜100℃の温度範囲において、0.2〜5.0の範囲にあることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のフレキシブル積層体。
【請求項8】
前記フレキシブル積層体の一端部に対し他端部を90度以上、曲げることが可能である請求項1から7のいずれか一項に記載のフレキシブル積層体。
【請求項9】
前記中間層を間に挟んで密着されたハード層のうちの一方のハード層が、フレキシブルディスプレイ用発光層であり、かつ他方のハード層が、支持層、光学機能層、保護層、およびフレキシブルディスプレイ用透明電極層から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のフレキシブル積層体。
【請求項10】
請求項9に記載のフレキシブル積層体を備えたことを特徴とするフレキシブルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル積層体及びそれを用いたフレキシブルディスプレイ、特にそのフレキシブル化と耐久性向上とを両立する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の電気電子機器にディスプレイが用いられている。ディスプレイはこれまで、曲がらない構造のディスプレイが一般的であったが、近年は、曲げることができる構造のフレキシブルディスプレイが注目されている。従来のフレキシブルディスプレイとしては、フレキシブル基板に、電極層、発光層、保護層を積層したものがある(例えば特許文献1)。このようなフレキシブルディスプレイによれば、画面を曲げることができるので、電気電子機器の携帯、収納が便利となる。非特許文献1にはフレキシブルAMOLED機器の一例として、バックアップ用基材層と、OLED層などの発光層と、ITO層などの電極層と、保護用基材層と、を順に備えたフレキシブル積層体が開示されている。具体的には、同文献のp.7 Figure 4にはフレキシブルディスプレイの概略構成が示されている。また、非特許文献2(例えば、同文献のp.15)には、折り畳み可能なAMOLED機器において、折り曲げ時のフレキシブル積層体におけるニュートラルプレーンの概念が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−153711号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Information DISPLAY”, JANUARY/FEBRUARY 2015, VOL. 31, NO. 1 p.6-11, “Technologies for Flexible AMOLEDs”(Soonkwang Hong et al)
【非特許文献2】“Information DISPLAY”, JANUARY/FEBRUARY 2015, VOL. 31, NO. 1 p.12-16, “Foldable AMOLED Display Development:Progress and Challenges”(Jing-Yi Yan et al)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなフレキシブルディスプレイは消費者からのニーズにより、曲げる(bendable)、折畳める(foldable)、更には巻ける(rollable)機能を付与した、機能性・収納性の高い仕様が求められてきている。また、ディスプレイメーカについても、自社製品差別化のため、高フレキブル機能を、耐久性・コストと両立した上で安定に供給する必要が出てきている。
【0006】
しかしながら、この様なフレキシブル化を目指したディスプレイは、保護層・発光層・電極層等の複数のハード基材を積層化しているため、厚みが厚くなり曲げ難く、これゆえ強制的にコンパクトに曲げようとすると、接着力を上回る内部応力がかかり、剥離等して破損するため、実用化が困難であった。
【0007】
この様な内部応力に起因するフレキシブルディスプレイの破損を防ぐため、フレキシブルディスプレイの積層化基材間を、より強固に固定することも考えられる。
【0008】
しかしながら、積層化基材間を強固に固定しても、折り曲げ時に、曲げ応力が積層化基材の強度に達する、また積層化により曲げ応力が増大する等して、フレキシブルディスプレイが破損しやすいことに変わりなかった。従来は、その対策についても最もデリケートな発光層を積層化基材の中心部分に設置する程度で、有効な手段は無かった。
【0009】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、フレキシブル化と耐久性向上とを両立することができる、フレキシブル積層体及びそれを用いたフレキシブルディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが前記課題について鋭意検討をした結果、フレキシブルディスプレイの破損原因が、以下の点にあることを突き止めた。すなわち、フレキシブルディスプレイを曲げると、フレキシブル積層体の隣接するハード層間に応力の干渉が生じるので、ハード層が壊れやすくなる。ハード層が壊れると、フレキシブル積層体が壊れてしまう。また、ハード層間に応力の干渉が生じる原因は、一般的なフレキシブル積層体では、多層構造を有しているにもかかわらず、応力のかからないニュートラルプレーンが1つのみ存在するためであることもわかった。
【0011】
このようなフレキシブル積層体の破損を防ぐためには、密着させる2つのハード層の間に中間層を挟むことが非常に有効であることは公知である。しかし、このような破損原因についてさらに研究を進めたところ、中間層を間に挟んで2つのハード層を密着させたフレキシブル積層体を曲げた場合、中間層に密着された一方のハード層に対し他方のハード層が、積層面方向と平行な方向にずれること、つまり中間層により、一方のハード層と他方のハード層が互いに独立して曲がることにより、ハード層間での応力の干渉を大幅に低減することができるので、フレキシブルディスプレイの破損を大幅に防ぐことができるという知見に至った。
【0012】
そして、より確実に、複数のハード層が互いに独立して曲がるようにするためには、フレキシブル積層体内に応力のかからないニュートラルプレーンが複数、つまりハード層内にその数だけ存在するように、中間層を構成することが非常に重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかるフレキシブル積層体は、1つ以上の中間層を間に挟んで2つのハード層が密着された積層構造を1単位として、該積層構造を1単位以上有している。ここで、中間層は、粘弾性を有しており、かつフレキシブル積層体を曲げた場合、中間層を間に挟んで密着されたハード層の内部のそれぞれに、ニュートラルプレーンが形成される。
【0014】
なお、非特許文献2では、積層体内部に一層のみのニュートラルプレーンが形成されており、複数のニュートラルプレーン、特に中間層にニュートラルプレーンを有さずに他の電極層等にニュートラルプレーンを形成させたフレキシブル積層体やその特性については、いかなる記載も示唆もなされていない。また、そのような概念は、当該技術分野を含むいかなる公知文献にも提示されていない。
【0015】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、フレキシブル積層体を曲げた場合、中間層の内部にニュートラルプレーンが形成されることなく、中間層を間に挟んで密着されたハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成さることが好適である。このようなフレキシブル構造は、前記積層構造1単位について、各々のハード層のヤング率E、中間層のヤング率E、ハード層の断面二次モーメントI、中間層の断面二次モーメントIとしたとき、E*Iの値をE*Iの値の少なくとも10倍以上に設計することにより、好適に実現することができる。
【0016】
本発明のフレキシブル積層体は、フレキシブル積層体を曲げた場合、ハード層の一方の境界面と他方の境界面との間で、応力のかからないニュートラルプレーンの位置が、移動することはあっても、ハード層の内部には、応力のかからないニュートラルプレーンが、必ず存在していることを特徴とするものであり、90度〜180度の折り曲げ時であっても、中間層にニュートラルプレーンが形成されることがない。ここで、ニュートラルプレーンとは、平板状の基材の折り曲げ等の変形時において、該基材内において水平方向の力学的な応力がゼロとなる面のことである。本発明では、複数のハード層が互いに独立して曲がるようにするため、フレキシブル積層体を構成する各平板状部材(ハード層)の内部にニュートラルプレーンが存在するために、積層体を構成する層間の破壊、界面剥離等が発生することなく、フレキシブルディスプレイを形成した場合の破損を防止し、安定な一体型のフレキシブル積層体を形成することができる。
【0017】
また、本発明にかかるフレキシブル積層体においては、支持機構を備えることが好適である。ここで、支持機構は、フレキシブル積層体を曲げた場合、中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対し他方のハード層が、中間層を介して、実質的に積層面方向と平行な方向のみにずれるように、フレキシブル積層体を積層方向から挟持している。このような挟持構造は、特に限定されるものではなく、ハード層が積層方向に実質的に変形、移動しないものであれば、所望の構造をとり得るものであり、挟持箇所及び個数も限定されるものではない。
【0018】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、フレキシブル積層体を曲げた場合、フレキシブル積層体の端部に、段差が形成されることが好適である。ここで、段差は、中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれに対応する。
【0019】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、フレキシブル積層体を略U字状となるように一定の曲率半径で曲げた場合、中間層が下記関係式(1)〜(3)で示される関係を実質的に満たすように構成され、かつフレキシブル積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断ひずみが、下記関係式(5)で定義される最大せん断ひずみを超え、かつフレキシブル積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断せん断応力が下記関係式(4)で定義される最大せん断応力を超えることが好適である。すなわち、本発明にかかるフレキシブル積層体においては、関係式(1)〜(3)で示される構造上の構成を有し、かつ、中間層を構成する材料固有の物理的性質が、関係式(4)および関係式(5)により与えられる物性の下限値を超えるもの、すなわち、中間層(材質)を採用することが好ましいものである。かかる構造上および材質上の条件を充足することで、本願発明の目的は好適に達成可能である。
【0020】
θ=Rθ・・・(1)
−R=t+(h+h)/2・・・(2)
L=(θ−θ)(R+R)/2・・・(3)
τxy=G*L/t・・・(4)
γ(=2εxy)=L/t・・・(5)
【0021】
ただし、上記関係式(1)〜(5)において、Rは、中間層に密着された一方のハード層の厚み方向中央の曲げ半径である。Rは、中間層に密着された他方のハード層の厚み方向中央の曲げ半径である。θは、中間層に密着された一方のハード層の厚み方向中央の曲げ角度である。θは、中間層に密着された他方のハード層の厚み方向中央の曲げ角度である。tは、中間層の厚みである。hは、中間層に密着された一方のハード層の厚みである。hは、中間層に密着された他方のハード層の厚みである。Lは、曲率半径(R+R)/2の曲率終了部分での、中間層に密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量である。τxyは、中間層のせん断応力である。Gは、中間層のせん断弾性係数である。γ(=2εxy)は、中間層のせん断ひずみである。εxyは歪みテンソルである。
【0022】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、曲率半径(R+R)/2の曲率終了部分での一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量Lが、フレキシブル積層体の端部での一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量と実質的に同じであることが好適である。ここで、ずれ量が実質的に同じであるとは、ずれ量の相違が5%以内、好適には1%以内であり、ずれ量の相違が0.5%以内であることが最も好適である。
【0023】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、中間層が、シリコーン系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、およびウレタン系感圧接着剤からなる群より選択された少なくとも1種の接着剤で構成されていることが好適である。なお、経済性、他の基材への接着性、耐久性の点ではアクリル系感圧接着剤を選択することができる。しかしながら、優れた耐熱・耐寒性および耐久性の点ではシリコーン系感圧接着剤がより好ましく、優れた透明性の点ではシリコーン系感圧接着剤がより好ましい。
【0024】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、前記中間層を構成する接着剤について、−40℃〜100℃の温度範囲内、特に、−20℃〜85℃の温度範囲内における剪断周波数1Hzにおける損失係数tanδが0.2〜5.0の範囲にある接着剤層を用いることが、特に好ましい。すなわち、接着剤層の剪断周波数1Hzにおける損失係数tanδが0.2未満の場合には粘着性が発現しづらく、接着剤層の剪断周波数1Hzにおける損失係数tanδが5.0を超える場合は構造の保持能が保てなくなるからである。ここで、損失係数はAnton Paar社製粘弾性測定装置等の装置により、接着剤単独で測定することができる。なお、接着剤層を構成する接着剤の損失係数tanδとは、途工/途布または成型前の接着剤組成物が液状または半硬化状態である場合、フレキシブル積層体の部材として硬化させた接着剤(硬化物)について測定される値である。
【0025】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、フレキシブル積層体の一端部に対し他端部を90度以上、曲げることが可能であることが好適である。
【0026】
本発明にかかるフレキシブル積層体においては、中間層を間に挟んで密着されたハード層のうちの一方のハード層がフレキシブルディスプレイ用発光層であり、かつ他方のハード層が支持層、光学機能層、保護層、およびフレキシブルディスプレイ用透明電極層から選ばれた1種以上であることが好適である。
【0027】
また、前記目的を達成するために本発明にかかるフレキシブルディスプレイは、本発明にかかるフレキシブル積層体を備えており、中間層を間に挟んで密着されたハード層のうちの一方のハード層が発光層であり、かつ他方のハード層が支持層、光学機能層、保護層および透明電極層から選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかるフレキシブル積層体によれば、フレキシブル積層体を曲げた場合に、粘弾性を有する中間層により、ハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成されるので、フレキシブル積層体を曲げても、フレキシブル積層体の破損を大幅に低減することができる。
【0029】
本発明においては、フレキシブル積層体を曲げた場合、中間層の内部にニュートラルプレーンが形成されることなく、中間層に密着されたハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成されることにより、フレキシブル積層体のフレキシブル化と耐久性向上との両立を、より確実に図ることができる。このようなフレキシブル積層体は、1つの中間層を間に挟んで2つのハード層が密着された積層構造を1単位としたとき、前記積層構造1単位について、各々のハード層のヤング率E、中間層のヤング率E、ハード層の断面二次モーメントI、中間層の断面二次モーメントIとしたとき、E*Iの値がE*Iの値の少なくとも10倍以上である場合に好適に実現可能である。
【0030】
本発明においては、中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対し他方のハード層が積層面方向と実質的に平行な方向のみにずれるように、支持機構によりフレキシブル積層体を支持することにより、フレキシブル積層体のフレキシブル化と耐久性向上との両立を、より確実に図ることができる。
【0031】
本発明においては、上記関係式(1)〜(3)で示される関係を実質的に満たすように中間層を構成し、かつ積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断せん断応力が上記関係式(4)で定義される最大せん断応力を超えており、かつ積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断ひずみが、上記関係式(5)で定義される最大せん断ひずみを超えるように設計することにより、フレキシブル積層体のフレキシブル化と耐久性向上との両立を、確実に図ることができる。特に、曲率半径Rの曲率終了部分での一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量Lが、フレキシブル積層体の端部での一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量と実質的に同じとなるように構成することにより、フレキシブル積層体のフレキシブル化と耐久性向上との両立を、より確実に図ることができる。
【0032】
本発明においては、シリコーン系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、およびウレタン系感圧接着剤からなる群より選択された少なくとも1種の接着剤で中間層を構成することにより、フレキシブル積層体のフレキシブル化と耐久性向上との両立を、より確実に図ることができる。このような接着剤の剪断周波数1Hzにおける損失係数tanδは0.2〜5.0の範囲にあることがより好適である。このような損失係数は、接着剤単独で、公知の測定手段を用いて容易に測定できることから、フレキシブル積層体の設計上、極めて有用である。具体的には、MCR301粘弾性測定装置(Anton Paar社製)により損失係数tanδを測定してよく、測定条件は、直径8mm厚み1mmの円盤状の試料を用い、8mmパラレルプレート、周波数1Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3°C/minで、使用温度である−40℃から100℃の範囲であってよい。ここで、使用温度はフレキシブル積層体の使用温度であって、一般に寒冷地域から高温条件を含め−40℃〜100℃の温度範囲にあるが、フレキシブル積層体がタッチパネルを含むフレキシブルディスプレイ等であることを考慮すると、概ね−20℃〜85℃の温度範囲を使用温度として、接着剤層を構成する接着剤の損失係数tanδは、当該温度範囲内において0.2〜5.0の範囲にあることが、本発明を実用する上でより好ましい形態である。なお、接着剤層を構成する接着剤の損失係数tanδとは、途工/途布または成型前の接着剤組成物が液状または半硬化状態である場合、フレキシブル積層体の部材として硬化させた接着剤(硬化物)について測定される値である。
【0033】
本発明においては、中間層を間に挟んで密着された一方のハード層をフレキシブルディスプレイ用発光層とし、かつ他方のハード層を支持層、光学機能層、保護層、およびフレキシブルディスプレイ用透明電極層から選ばれた1種以上とすることにより、フレキシブルディスプレイに、優れたフレキシブル性および耐久性を付与することができる。
【0034】
また、前記目的を達成するために本発明にかかるフレキシブルディスプレイは、本発明にかかるフレキシブル積層体を備えることとしたので、フレキシブルディスプレイの更なるフレキシブル化と耐久性の更なる向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態にかかるフレキシブル積層体を用いたフレキシブルディスプレイの概略構成の説明図である。
図2図1に示したフレキシブル積層体の曲げた状態を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるフレキシブル積層体の作用の説明図である。
図4図3に示したフレキシブル積層体の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。図1には本発明の一実施形態にかかるフレキシブル積層体を用いたフレキシブルディスプレイの概略構成が示されている。なお、同図では、本実施形態にかかるフレキシブルディスプレイのフラット状態を示している。
【0037】
同図に示すフレキシブルディスプレイ10は、フレキシブル構造を有するフレキシブル積層体12を備える。フレキシブル積層体12において、14,16,18,20がハード層であり、これらにはバックアップ用基材層、OLED層などの発光層、ITO層などの無機層、保護用基材層などが含まれる。
【0038】
本発明において特徴的なことは、粘弾性を有する1つ以上の中間層を間に挟んで2つのハード層が密着された積層構造を1単位として、該積層構造を1単位以上有しており、フレキシブル積層体を曲げた場合、中間層を間に挟んで密着されたハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成されることにある。このような機械的特徴は、フレキシブル積層体を曲げた場合に、中間層の内部にニュートラルプレーンが形成されることなく、中間層を間に挟んで密着されたハード層の内部のそれぞれにニュートラルプレーンが形成されると説明することも可能であり、そのような構造は、積層構造1単位について、各々のハード層のヤング率E、中間層のヤング率E、ハード層の断面二次モーメントI、中間層の断面二次モーメントIとしたとき、E*Iの値がE*Iの値の少なくとも10倍以上であり、好適には15倍以上、より好適には20倍以上とするハード層の基材および中間層を選択することでより好適に実現可能である。フレキシブル積層体が、複数の積層構造1単位を有する(すなわち、4層以上の積層体)の場合には、積層体を構成する各積層構造単位について、E*Iの値がE*Iの値の少なくとも10倍以上であることが好ましい。なお、E*Iの値がE*Iの値に近いと(詳細には、10倍未満)であると、該積層構造単位中の積層体のハード層と中間層が一体に近い挙動を示す傾向が強まり、折り曲げ時に中間層の内部にニュートラルプレーンが形成され、フレキシブル積層体全体の破損・界面の剥離等が生じる場合がある。
【0039】
このために本実施形態においては、本発明の積層構造を3単位有しており、つまり第一の積層構造と、第二の積層構造と、第三の積層構造と、を備えており、4つのニュートラルプレーンを形成している。すなわち、同図に示すフレキシブル積層体12では、第一の積層構造として、ハード層14とハード層16とが中間層22を間に挟んで密着されている。第二の積層構造として、ハード層16とハード層18とが中間層24を間に挟んで密着されている。第三の積層構造として、ハード層18とハード層20とが中間層26を間に挟んで密着されている。
【0040】
本発明において、中間層は、シリコーン系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、およびウレタン系感圧接着剤からなる群より選択された少なくとも1種の接着剤で構成することができるが、本実施形態では、優れた透明性を有しており、かつ本発明の中間層としても優れたシリコーン系感圧接着剤(PSA)で中間層22、24、26を構成している。本実施形態においては、フレキシブル積層体12に、シリコーン系感圧接着剤で構成された中間層22、24、26を設けることにより、フレキシブル積層体12内に、4つのニュートラルプレーンを形成している。
【0041】
以下、ニュートラルプレーンについて、図2を参照しつつ、より具体的に説明する。図2には、図1に示したフレキシブル積層体12を曲げた状態が示されている。本実施形態においては、中間層22が、ハード層14内にニュートラルプレーン30を形成しており、かつハード層16内にニュートラルプレーン32を形成している。中間層24は、ハード層16内にニュートラルプレーン32を形成しており、かつハード層18内にニュートラルプレーン34を形成している。中間層26は、ハード層18内にニュートラルプレーン34を形成しており、かつハード層20内にニュートラルプレーン36を形成している。
【0042】
このため、本実施形態によれば、フレキシブルディスプレイを破損することなく、フレキシブルディスプレイの一端部に対し他端部を90度以上、曲げられる。例えば、同図に示されるように、フレキシブル積層体12の一端部12aに対し他端部12bを180度曲げても、フレキシブルディスプレイの破損を大幅に低減することができる。すなわち、同図に示されるように、フレキシブル積層体12を曲げると、中間層を間に挟んで密着された一方のハード層と他方のハード層との間に、積層面方向と実質的に平行な方向にずれを生じさせている。なお、実質的に平行な方向とは、理想的には積層方向への変形や移動がまったく生じないか、生じたとしても極めて軽微であり、中間層の厚みを考慮して無視できる程度に留まっていることを意味する。
【0043】
本実施形態においては、フレキシブル積層体12の一端部12aでは、中間層22により、ハード層14の一端部14aに対しハード層16の一端部16aが、図中、上方(積層面方向に平行な方向)にずれている。フレキシブル積層体12の他端部12bでも、中間層22により、ハード層14の他端部14bに対しハード層16の他端部16bが、図中、上方にずれている。
【0044】
フレキシブル積層体12の一端部12aでは、中間層24により、ハード層16の一端部16aに対しハード層18の一端部18aが図中、上方にずれている。フレキシブル積層体12の他端部12bでも、中間層24により、ハード層16の他端部16bに対しハード層18の他端部18bが、図中、上方にずれている。
【0045】
フレキシブル積層体12の一端部12aでは、中間層26により、ハード層18の一端部18aに対しハード層20の一端部20aが、図中、上方にずれている。フレキシブル積層体12の他端部12bでも、中間層26により、ハード層18の他端部18bに対しハード層20の他端部20bが、図中、上方にずれている。
【0046】
したがって、本実施形態にかかるフレキシブル積層体12のように、全てのハード層内にニュートラルプレーンが形成されている場合、ハード層14の一端部14a(フレキシブル積層体12の一方の末端部)と他端部14b(フレキシブル積層体12の他方の末端部)とを、同じ水平面上に位置させた場合、フレキシブル積層体12の一端部12aでは、ハード層14の一端部14aから、ハード層16の一端部16a、ハード層18の一端部18a、ハード層20の一端部20aにかけて、連続的な段差が形成されているのを観察することができる。フレキシブル積層体12の他端部12bでも、ハード層14の他端部14bから、ハード層16の他端部16b、ハード層18の他端部18b、ハード層20の他端部20bにかけて、連続的な段差が形成されているのを観察することができる。
【0047】
これに対し、一般的なフレキシブル積層体では、1つのニュートラルプレーンが、複数のハード層のうちの1つのハード層のみに形成されているので、フレキシブル積層体の端面が面一であり、一般的なフレキシブル積層体の端面で図2に示されるような段差を観察することはできない。
【0048】
このように、本実施形態では、フレキシブル積層体12を構成する全てのハード層に、ニュートラルプレーンが存在している。つまり、ハード層14に、ニュートラルプレーン30が形成されている。ハード層16に、ニュートラルプレーン32が形成されている。ハード層18に、ニュートラルプレーン34が形成されている。ハード層20に、ニュートラルプレーン36が形成されている。
【0049】
このため、本実施形態では、ハード層間での力の干渉を防ぐことができる。すなわち、本実施形態では、中間層22により、ハード層14とハード層16との間での力の干渉を防ぐことができる。中間層24により、ハード層16とハード層18との間での力の干渉を防ぐことができる。中間層26により、ハード層18とハード層20との間での力の干渉を防ぐことができる。本実施形態では、各ハード層間での力の干渉を防ぐことができるので、フレキシブル積層体12をコンパクトに曲げても、フレキシブル積層体12の破損を大幅に低減することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、フレキシブル積層体を曲げた場合、中間層を間に挟んで密着された一方のハード層に対し他方のハード層が、積層面方向と実質的に平行な方向のみに、スムースにずれるようにするため、以下の支持機構を備えることも非常に重要である。
【0051】
以下、前記支持機構について、図3を参照しつつ、より具体的に説明する。同図では、フレキシブル積層体12がU字状を形成するように、フレキシブル積層体12を曲げた場合、フレキシブル積層体12には、曲率部分40、42と、直線部分44、46と、が形成されている。
【0052】
本実施形態においては、本発明の支持機構として、図3に示されるような支持手段50、52、54、56、58、60、62、64、66、68を備えている。すなわち、フレキシブル積層体12の中間部分12cを間に挟んで支持手段50、52が対向配置されている。支持手段50、52は、フレキシブル積層体12の中間部分12cで、ハード層が積層方向に移動しないように、フレキシブル積層体12の中間部分12cを挟持している。
【0053】
同図では、フレキシブル積層体12の一方の曲率終了部分12d(曲率部分40と直線部分44との境界部分)を間に挟んで、支持手段54、56が対向配置されている。支持手段54、56は、フレキシブル積層体12の一方の曲率終了部分12dで、各ハード層が積層方向にずれることなく、積層面方向と実質的に平行な方向にずれるように、フレキシブル積層体12の一方の曲率終了部分12dを挟持している。
【0054】
同図では、フレキシブル積層体12の他方の曲率終了部分12e(曲率部分42と直線部分46との境界部分)を間に挟んで、支持手段58、60が対向配置されている。支持手段58、60は、フレキシブル積層体12の他方の曲率終了部分12eで、各ハード層が、積層方向にずれることなく、積層面方向と実質的に平行な方向にずれるように、フレキシブル積層体12の他方の曲率終了部分12eを挟持している。
【0055】
フレキシブル積層体12の一端部12aの近くでは、フレキシブル積層体12を構成する各ハード層が、積層方向にずれることなく、積層面方向と実質的に平行な方向にずれるように、支持手段62、64がフレキシブル積層体12を積層方向から挟持している。本実施形態においては、支持手段62、64が、フレキシブル積層体12の一端部12aでのずれを、拘束することなく、フリーとしている。このため、フレキシブル積層体12の一方の曲率終了部分12dでのずれは、その状態が、直線部分44でも保持されたまま、フレキシブル積層体12の一端部12aで、実質的に同様のずれとなって現れる。ここで、実質的に同様のずれとは、図に示したように、ずれ量である長さがほぼ等しいことを意味するものであり、該長さの相違が5%以内、好適には1%以内であり、相違が0.5%以内であることが最も好適である。
【0056】
フレキシブル積層体12の他端部12bの近くでは、支持手段66、68が、フレキシブル積層体12を構成する各ハード層が、積層方向にずれることなく、積層面方向と平行な方向にずれるように、フレキシブル積層体12を積層方向から挟持している。本実施形態においては、支持手段66、68が、フレキシブル積層体12の他端部12bでのずれを、拘束することなく、フリーとしている。このため、フレキシブル積層体12の他方の曲率終了部分12eでのずれは、その状態が、直線部分46でも保持されたまま、フレキシブル積層体12の他端部12bにて、実質的に同様のずれとなって現れる。
【0057】
このように、支持機構により、フレキシブル積層体12を支持する一方、フレキシブル積層体12の一端部12aでのずれ及び他端部12bでのずれを許容し、フリーとすることにより、全てのハード層にニュートラルプレーンを確実に形成することができる。
【0058】
本実施形態においては、フレキシブル積層体12の曲率終了部分12d、12eでのひずみの状態を、フレキシブル積層体12の端部12a、12bでも、確実に保持するため、以下の点を考慮することも、非常に重要である。
【0059】
最大せん断ひずみ領域(曲率終了部分12d、12e)で、中間層の破断ひずみは、最大せん断ひずみを超えることが好ましい。
【0060】
最大せん断ひずみ領域(曲率終了部分12d、12e)で、中間層の破断せん断応力は、最大せん断応力を超えることが好ましい。
【0061】
最大せん断ひずみ領域(曲率終了部分12d、12e)で、ハード層の耐久力は、最大せん断応力τxy(max)*Sを超えることが好ましい。ただし、Sは、直線部分44(46)の長さである。
【0062】
最大せん断ひずみ領域(曲率終了部分12d、12e)で、τxy(max)*Sは、ハード層および中間層の座屈力Fよりも小さいことが好ましい。
【0063】
フレキシブル積層体12の最上層(例えば、前記図1中、ハード層20)のせん断ひずみ/せん断応力と、最下層(例えば、前記図1中、ハード層14)のせん断ひずみ/せん断応力とは、バランスを保つため、同じ値とすることが好ましい。
【0064】
本実施形態のように、多層化された中間層は、多機能、例えば熱安定性能、伸張性能を有することも好ましい。
【0065】
本実施形態では、フレキシブル積層体を折り曲げた場合に、各ハード層がニュートラルプレーンを確実に有しており、ハード層間に応力の干渉は生じていないと仮定できるので、以下の数学モデルを用いて、ハード層間のずれを計算し、各ハード層の間に挟まれた中間層のせん断ひずみも容易に計算することができる。
【0066】
以下、前記数学モデルについて、具体的に説明する。なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、図4(A)に示されるような、中間層30を間に挟んで密着されたハード層(一方のハード層)14及びハード層(他方のハード層)16を用いて説明する。同図(B)は、前記図3に示したフレキシブル積層体12の全体を示したものではなく、つまり曲率部分40、42のみを示しており、直線部分44、46を省略している。
【0067】
同図(C)中、左方に示された、ずれの状態は、前記図3に示されたフレキシブル積層体12の一端部12aに形成されたずれの状態をそのまま保持して、曲率部分40へ平行移動したものである。同図(C)中、右方に示された、ずれの状態は、前記図3に示されたフレキシブル積層体12の他端部12bに形成されたずれの状態をそのまま保持して、曲率部分42へ平行移動したものである。このような説明が可能な理由は、本実施形態にかかるフレキシブル積層体によれば、曲率半径Rの曲率終了部分での、中間層に密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量Lが、フレキシブル積層体の端部での、中間層に密着された一方のハード層に対する他方のハード層のずれ量と実質的に同じであるからである。なお、ずれ量が実質的に同じ、という用語の意味は前述のとおりである。
【0068】
同図(A)に示されるようなフラット状態のフレキシブル積層体12が、同図(B)に示されるように略U字状となるように、フレキシブル積層体12を曲率半径Rで曲げた場合、フレキシブル積層体12の端部では、同図(C)に示されるような変形が生じる。すなわち、同図(C)に示されるように、ハード層14の一端部14aに対しハード層16の一端部16aが、図中上方に、ずれ量Lだけずれている。同様に、ハード層14の他端部14bに対しハード層16の他端部16bも、上方にずれている。
【0069】
ここで、中間層22は、下記関係式(6)〜(8)を満たすように構成され、かつ積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断ひずみが、関係式(10)で定義される最大せん断ひずみを超え、かつ積層体を曲げた際の最大せん断ひずみ領域において、材料固有の破断せん断応力が関係式(9)で定義される最大せん断応力を超えるように設計されている。
【0070】
θ=Rθ・・・(6)
−R=t+(h+h)/2・・・(7)
L=(θ−θ)(R+R)/2・・・(8)
τxy=G*L/t・・・(9)
γ(=2εxy)=L/t・・・(10)
【0071】
ただし、上記関係式(6)〜(10)において、Rは、ハード層(一方のハード層)14の厚み方向中央位置での曲げ半径である。Rは、ハード層(他方のハード層)16の厚み方向中央位置での曲げ半径である。θは、ハード層(一方のハード層)14の曲げ角度である。θは、ハード層(他方のハード層)16の曲げ角度である。tは、中間層22の厚みである。hは、ハード層(一方のハード層)14の厚みである。hは、ハード層(他方のハード層)16の厚みである。Lは、曲率半径Rの曲率終了部分(フレキシブル積層体12の端部)での、ハード層(一方のハード層)14に対するハード層(他方のハード層)16のずれ量である。τxyは、中間層22のせん断応力である。Gは、中間層22のせん断弾性係数である。γ(=2εxy)は、中間層22のせん断ひずみである。εxyは、歪みテンソルである。
【0072】
本実施形態にかかるフレキシブル積層体によれば、全てのハード層内に応力のかからないニュートラルプレーンが存在しているので、本実施形態にかかるフレキシブル積層体において非常に重要な意味を持つ中間層のせん断ひずみを、上記した厚み、曲げ半径、曲げ角度、及びずれ量などの情報から、シンプルな計算で求め、かつ、基材の物性に合わせて上記の関係を充足する構造を設計することができる。これにより、本実施形態では、中間層の設計が、より簡単に行える。
【0073】
なお、前記計算では、中間層22を間に挟んで密着されたハード層14及びハード層16を例に説明したが、中間層24を間に挟んで密着されたハード層16及びハード層18に適用することも好ましく、中間層26を間に挟んで密着されたハード層18及びハード層20に適用することも好ましい。
【0074】
以上説明したように本実施形態にかかるフレキシブルディスプレイによれば、本実施形態にかかるフレキシブル積層体を用いることとしたので、フレキシブルディスプレイをよりコンパクトに曲げても、フレキシブルディスプレイの破損を大幅に低減することができる。したがって、本実施形態にかかるフレキシブルディスプレイによれば、従来極めて困難であった、フレキシブル化と耐久性向上との両立を、確実に図ることができる。
【0075】
なお、本発明のフレキシブル積層体、及びフレキシブルディスプレイは、前記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、前記実施形態では、本発明の積層構造の単位を3単位としたが、本発明の積層構造の単位は、3単位に限定されるものではなく、1単位、2単位、または4単位以上とすることが可能である。また、前記実施形態では、本発明のフレキシブル積層体を、フレキシブルディスプレイに用いた例について説明したが、フレキシブル積層体を必要としている、フレキシブルディスプレイ以外のものに用いることもできる。また、本発明のフレキシブルディスプレイは、本実施形態にかかるフレキシブル積層体以外の層を含むことができる。このようなフレキシブル積層体の製造例は特に限定されるものではなく、蒸着や圧着等、公知の手段を用いて製造することができるが、特に前記の接着剤で中間層を構成する場合には、(1)接着層として前記接着剤を必要に応じて硬化乃至半硬化させてフィルム状に成型して、層間に付着または圧着させる方法、(2)液状乃至半硬化状態の接着剤組成物を層間にフィルム状に塗布/塗工して、積層体の一部または全部を加熱等することにより層間に接着層を形成させる方法、(3)半硬化状態の接着剤組成物を層間に付着または圧着させ、さらに積層体の一部または全部を加熱等することにより層間に接着層を形成させる方法などが例示される。ただし、接着剤を中間層とするフレキシブル積層体の製造方法はこれらに限定されるものではなく、公知の積層体の製造工程を所望により採用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 フレキシブルディスプレイ
12 フレキシブル積層体
14 ハード層
16 ハード層
18 ハード層
20 ハード層
22、24、26 中間層
30、32、34、36 折り曲げ時に形成されたニュートラルプレーン
図1
図2
図3
図4