特許第6851510号(P6851510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851510
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210322BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H01L21/302 101D
   H05H1/46 C
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-568117(P2019-568117)
(86)(22)【出願日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2019024437
(87)【国際公開番号】WO2020012907
(87)【国際公開日】20200116
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 靖
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−174537(JP,A)
【文献】 特開2016−092342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記第一のガスの供給時間が前記第一のステップの時間から所定値を減じた時間となるように前記第一のガスの供給時間を制御し、
前記所定値は、前記第二の時間から前記第一の時間を減じた値であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記第二のガスの供給時間が前記第二のステップの時間から所定値を減じた時間となるように前記第二のガスの供給時間を制御し、
前記所定値は、前記第一の時間から前記第二の時間を減じた値であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項9】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項10】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体装置に含まれるコンポーネントの微細化や集積化への対応が求められている。例えば、集積回路やナノ電気機械システムにおいて、構造物のナノスケール化がさらに推進されている。
【0003】
通常、半導体デバイスの製造工程において、微細パターンを成形するためにリソグラフィ技術が用いられる。この技術は、レジスト層の上にデバイス構造のパターンを適用し、レジスト層のパターンによって露出した基板を選択的にエッチング除去するものである。その後の処理工程において、エッチング領域内に他の材料を堆積させれば、集積回路を形成できる。
【0004】
ところで、マスク形状を下層膜に転写するエッチング工程には、より高い形状制御性が要求されており、例えばアスペクト比の高い垂直形状をエッチングする際には高度な技術が必要とされる。そのような技術のひとつとして、エッチングガスと、そのエッチングガスに対してエッチング耐性の高い保護膜を形成するデポジションガスとを、プラズマを生成した状態のまま周期的に交互に処理室に導入し、プラズマエッチング処理を行うガスパルス法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、交互にガスを導入する際、それぞれのガスの効果をより高めるために、エッチングガスを導入しているプロセスと、デポジションガスを導入しているプロセスでセルフバイアスを発生させるために、試料台へ供給する高周波電力をガスの導入と同期させて変えることが開示されている。
【0006】
ガスパルス法を用いてエッチングと保護膜形成を交互に行いながらエッチング処理を行った場合、スカロッピングとよばれる微小な段差形状がエッチング後の加工穴側面に形成されるが、この微小な段差形状は半導体デバイスの形成に当たっては望ましくないものである。この微小な段差形状を抑制するためには、交互に導入するガスのそれぞれの導入時間を短くして1〜3秒とすることが有効である。
【0007】
ガスの処理室への導入量の制御は、一般にガス供給装置(Mass Flow Controller:MFC)に所望のガス流量を流すための制御信号を与えることにより行われている。しかしながら、ガス供給装置に流量の信号を与えた後、処理室にガスが導入されるまでには、ガス供給装置の応答時間、ガス配管やシャワープレート、処理室内の圧力やガスの流れ等が影響して1秒程度の遅延が発生し、また、その遅延は、0.2〜0.3秒ほどのばらつきを持っている。
【0008】
そのため、ガス導入時間を1〜3秒程度とする場合、ガス供給装置への制御信号を与えてから、ガスが実際に処理室に導入されるまでの遅延を考慮して制御を行う必要がある。なぜなら、そのような制御を行わないと、処理室内にエッチングまたは保護膜形成を行うプロセスのガスが導入されているタイミングと、バイアスやプラズマを発生させる電力などのプロセスパラメータをそれぞれのプロセスに適した値に制御しているタイミングに無視できない時間のずれが生じ、最適な処理が実現されなくなるからである。
【0009】
また、ガス導入の遅延時間のばらつきの影響を低減するため、処理室へのガス導入の正確な時間をリアルタイムで把握しながら、その他のプロセスパラメータの制御を行う必要がある。
【0010】
エッチングガスとデポジションガスの交換を判定する方法としては、特許文献2に開示されているように、発光スペクトル・質量分析計を用いてガス比を検出することにより、エッチングガスとデポジションガスの入れ変わり時間を求め高周波電力を同期させる方法がある。
【0011】
また、特許文献3に開示されているように、プラズマインピーダンスの変化に基づいて一方のガスから他方のガスへ切り替えを検知した後、高周波電源から供給された高周波電力を変化させるように高周波電源を制御する方法も、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭60−50923号公報
【特許文献2】特開平2−105413号公報
【特許文献3】特開2016−92342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上記従来技術では、複数のプラズマ処理装置間で生じる機差の課題についての考慮が十分になされていなかった。具体的には、特許文献2または特許文献3に開示された方法では、ガスの入れ替わりを基準に高周波電力を変化させるため、エッチングガスまたはデポジションガスなどが処理室内を流れている時間が、それぞれのガスに対応した高周波電力を印加時間している時間となる。
【0014】
ガス供給装置などにより構成されるガス供給系は高周波電力源に比べ応答性が悪く、それにより複数の装置のガス供給系間における応答性の差も、複数の装置の高周波電力源間の応答性の差に比べて大きくなる。しかし高周波電力の印加時間が、ガスが処理室を流れている時間によって決まるため、複数のプラズマ処理装置間では、ガス供給系の応答性の機差が高周波電力の印加時間の機差になって表れてしまう。これにより、高周波電力源の応答性の機差によって発生していた印加時間の機差よりも大きい機差がプラズマ処理装置間において発生し、処理時間がばらついて量産安定性を下げてしまうという課題がある。
【0015】
以上、上記課題に鑑みて本発明は、ガスを周期的に切り替えながらプラズマ処理を行う複数のプラズマ処理装置間で、高周波電力の印加時間の機差が小さくかつ形状制御性の高いプラズマエッチングを行うことができるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のプラズマ処理装置は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0017】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理装置は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0018】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理装置は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0019】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理装置は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御する制御装置をさらに備え、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0020】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理方法は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0021】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理方法は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第一のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第一のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第一のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0022】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理方法は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第一の高周波電力を前記第一のステップの前記第一の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第一の高周波電力の値へ変化させるように前記第一の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第一の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【0023】
更に、代表的な本発明のプラズマ処理方法は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成させるための第一の高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台に第二の高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
第一のステップのガスである第一のガスから第二のステップのガスである第二のガスへ切り替える時に生じるプラズマインピーダンスの変化に基づいて前記第二の高周波電力を前記第一のステップの前記第二の高周波電力の値から前記第二のステップの前記第二の高周波電力の値へ変化させるように前記第二の高周波電源を制御する場合、前記第二のステップの前記第二の高周波電力の供給時間が前記第二のステップの時間と概ね同等となるように第一の時間と第二の時間を用いて前記第二のガスの供給時間を制御し、
前記第一のステップおよび前記第二のステップは、プラズマ処理条件を構成するステップであり、
前記第一の時間は、前記第一のステップの開始時間から前記第一のガスの供給開始時間までの時間であり、
前記第二の時間は、前記第一のステップの終了時間から前記第一のガスの供給終了時間までの時間であることにより達成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガスを周期的に切り替えながらプラズマ処理を行う複数のプラズマ処理装置間で、高周波電力の印加時間の機差が小さくかつ形状制御性の高いプラズマエッチングを行うことができるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することが出来る。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態に関わるプラズマ処理装置の構成を説明する縦断面図である。
図2図2は、ガスの切り替わりに同期して高周波電力を変化させた場合に高周波印加時間が変動することを表した図である。
図3図3は、本発明の実施例に関わるガス供給装置へのガス供給設定信号の設定時間を、供給を設定してから処理室へガス導入が導入されるまで遅れ時間を元に変化させる動作を示したフローチャートである。
図4図4は、図3のフローチャートに従ってガス供給装置へのガス供給設定信号の設定時間を調整した場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の全体構成の概略を示す縦断面図である。真空容器101の上部に、真空容器101内にエッチングガスを導入するためのシャワープレート102、処理室上部を気密に封止するための誘電体窓103を設置し、処理室104を構成する。シャワープレート102には、ガス配管105を介して複数のガス供給装置(MFC)106が接続され、各ガス供給装置106には、それぞれプラズマエッチング処理を行うためのSFガスやOガスなどの処理用ガス源(図示省略)が接続されている。
【0027】
上記の複数のガス供給装置によりエッチング処理を行うための第1プロセスガス(エッチングガス)と、保護膜形成処理を行うための第2プロセスガス(デポジションガス)とが一定の周期で交互に、ガス配管105およびシャワープレート102を介して処理室104に導入できるものとする。ここでは、第1プロセスガスが、第一のステップのガスすなわち第一のガスを構成し、第2プロセスガスが、第二のステップのガスすなわち第二のガスを構成する。
【0028】
尚、エッチングガスおよびデポジションガスは、単一のガスでも良いし、複数のガスの組み合わせでもよい。また、ガスの切り換え時の放電不安定性を低減するためには、エッチグガスおよびデポジションガスには、ArガスやHeガスなどの各プロセスの特性を大きく変えない希ガスを共通のガスとして添加させることが望ましい。また、真空容器101には、真空排気口115を介して真空排気装置(図示省略)が接続されており、処理室104内の圧力を制御できるものとする。
【0029】
このプラズマ処理装置におけるプラズマ発生機構は、マイクロ波と呼ばれる2.45GHzの電磁波を発生する電磁波発生用電源(マグネトロン)107、マイクロ波整合器108および磁場発生コイル109により構成され、第一の高周波電源である電磁場発生用電源107から発振された電磁波(第一の高周波電力)と、磁場発生コイル109により形成された磁場との電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)により処理室104にプラズマを生成する。
【0030】
また、シャワープレート102に対向した処理室104下部には、加工対象の試料である半導体基板111を載置する試料台112が設置されている。試料台112には高周波整合器113を介して、第二の高周波電源である高周波電源114が接続される。
【0031】
試料台112に接続された高周波電源114から高周波電力(第二の高周波電力)を供給することにより、一般的にセルフバイアスとよばれる負の電圧が試料台112上に発生し、セルフバイアスによってプラズマ中のイオンが加速されて半導体基板111に垂直に入射することにより、半導体基板111がエッチングされる。
【0032】
制御装置116は、上述したこれらの装置を予め決められたプロセス条件に基づいて制御する。また、制御装置116は、以下に説明する方法により処理室104へのガスの導入を、マイクロ波整合器108または高周波整合器113からプラズマインピーダンスに関するデータを受け取って、処理室104にガス導入されたかどうかを検知し、検知後にガス以外のプロセスパラメータを変化させるタイミングの制御を行う。このようなプロセスパラメータの変化としては、例えば第1の高周波電力を第一のステップに対応する第1の値と第二のステップに対応する第2の値とで変化させたり、第2の高周波電力を第一のステップに対応する第1の値と第二のステップに対応する第2の値とで変化させるものがある。
【0033】
図2に、ガスの切り替わりに同期して第二の高周波電力を変化させた場合に、ガス供給の設定(S10)よりガスが処理室104へ導入(S11)されるまで、時間に応じて第二の高周波電力の印加時間tが基準のステップ時間Tに対してどのように変動するかを表す。
【0034】
以下の制御において、「ガス供給設定信号のオン」とは、制御装置116がガス供給装置106にガス供給を指示するガス供給設定信号を付与することを意味し、「ガス供給設定信号のオフ」とは、制御装置116がガス供給装置106へのガス供給設定信号の付与を中断することを意味するものとする。
【0035】
制御装置116よりガス供給装置106に与えるガス供給設定信号を、基準のステップ時間に同期させてオン/オフ変化させる。まず、ガス供給設定信号のオン(S10)に設定した場合に処理室104内へ導入されるガス流量は、ガス供給装置106の設定信号に対する応答の遅れ、さらにガス配管105およびシャワープレート102を通過に要する時間のため、ガス供給設定信号のオン(S10)よりも遅れて増加する。
【0036】
処理室104内に所望のガスが流れたことを検知(S11)したあと、高周波電源114への高周波設定信号を、決められたプロセス条件に合わせてLowからHighへ変化(S12)させ、第二の高周波電力を第一の値から第二の値へと変更する。これによりガス供給設定信号のオン(S10)より高周波設定信号の変化(S12)まで、時間bが経過したとする。時間bを、ステップの開始時間からガスの供給開始時間までの第一の時間とする。
【0037】
また、ガス供給設定信号のオン(S10)より時間Tが経過し、ガス供給設定信号のオフ(S13)とした場合も、ガス減少の遅延が発生する。具体的には、ガス供給装置106の設定信号に対する応答の遅れ、さらにガス配管105およびシャワープレート102に充填されていたガスの排出に要する時間のため、ガス供給設定信号のオフ(S13)に対して遅れて処理室104内からガスが排出される。
【0038】
処理室104内に所望のガスが排出されたことを検知(S14)したあと、高周波設定信号を決められたプロセス条件に合わせてHighからLowへ変化(S15)させる。これによりガス供給設定信号のオフ(S13)より高周波設定信号の変化(S15)まで、時間aが経過したとする。時間aを、ステップの終了時間からガスの供給終了時間までの第二の時間とする。
【0039】
ガス供給設定信号のオン(S10)から処理室104にガスが導入されるまでの時間bと、ガス供給設定信号のオフ(S13)から処理室104よりガスが排出されるまでの時間aとは、対象ステップのガスの流量やガスの粘性などの特性および対象ステップ前後のステップのガスの流量やガスの粘性などの特性によって変化する。また、前後のステップでガス条件が異なる場合は、時間a、bは等しい時間とならない。
【0040】
高周波設定信号は、基準の開始時間に対して時間bだけ遅れて立ち上がった後、さらに基準の終了時間よりも時間aだけ長く持続するため、対象ステップの第二の高周波電力に設定している時間tは(T+a−b)となり、時間差(a−b)だけ基準のステップ時間と異なる事となる。
【0041】
時間差(a−b)は、ガス供給装置106の応答性によって変化する数値であり、各プラズマ処理装置のガス供給装置の機差により時間差(a−b)は変化する。そのため第二の高周波電力を印加している時間t=(T+a−b)も変化する。第二の高周波電力を印加している時間は、半導体基板をプラズマ処理する結果に大きく影響するため、ガス供給装置の機差によってプラズマ処理装置間での半導体基板の処理結果に差が出る。
【0042】
ガス供給装置の機差によって発生する第二の高周波電力印加時間tのプラズマ装置間機差を低減するには、時間差(a−b)で変動した分を打ち消すために、第二の高周波電力の印加時間を決めている処理室104内に対象ステップのガスが流れている時間を、時間差(a−b)分だけ補正する必要がある。ガスが流れている時間を変更するには、その元となるガス供給を設定しているガス供給時間をTから{T−(a−b)}に変更すればよい。ガス供給時間を{T−(a−b)}にすることにより、第二の高周波電力の印加時間tは、
t = T−(a−b)+(a−b)= T
となり時間差(a−b)を含まない時間とすることができ、ガス供給装置等の機差を含まない時間とすることが出来る。
【0043】
しかし、ガス供給設定信号をオフにしてから処理室104より対象のガスが排出されるまでの時間aは、実際にガス供給設定信号をオフとし高周波設定信号が変化した後でなければ知ることはできないため、調整前に時間aを測定しておく必要がある。ガスパルス法では複数のステップから構成される1つのサイクルを複数回繰り返すため、制御装置116は、対象サイクルのガス供給時間を、その直前の一つ前のサイクルで測定された時間を用いて変更すればよい。
【0044】
図3は、上記の方法で2つのステップによって構成された処理を繰り返し行うガスパルス法によるプラズマ処理方法において、ガス供給装置106および高周波整合器113を制御する場合のフローチャートであり、図4はそのフローチャートに基づいてガス供給装置および高周波電源を制御した場合のタイミングチャートである。
【0045】
プラズマ処理装置の動作開始時(図4のSQ00)には、ガス供給設定信号をオンしてから処理室104にガスが導入されるまでの時間がまだ測定されていないため、図3のステップS100において、第2のガスの導入遅れの時間aおよび第1のガスの導入遅れの時間bを、それぞれ初期値0に設定する。
【0046】
ガスパルス法においては、一方のガス(第1のガス)の供給停止と、他方のガス(第1のガスとは異なる第2のガス)の供給開始が同時に行われる。しかし、ガスの供給設定を切り替えた後、ガス配管105内に充填された一方のガスを他方のガスによって押し出されなければ、一方のガスの排出と他方のガスの導入が行われない。このため、第2のガスの導入遅れの時間aは、第1のガスの供給設定信号をオフ(図2のS13)としてから第1のガスが排出される(図2のS14)までの時間とみなすことが出来る。同様に第1のガスの導入遅れの時間bは、第2のガスの供給設定信号をオフとしてから第2のガスが排出されるまでの時間とみなすことが出来る。
【0047】
次にステップS101において、はじめに第1プロセスガスを供給する様に、制御装置116は、ガス供給装置106に第1のガス供給設定信号を送信し(図4のSQ01)、ステップS102で、処理室104内のガス流れや圧力が安定するまでの待ち時間Tだけ待つ。図4のSQ02より第一のステップが開始される。
【0048】
ステップS103において、制御装置116は、プラズマ生成用のマイクロ波を電磁波発生用電源107で処理室に供給するとともに、磁場発生コイル109で磁場を発生させることによりプラズマを生成する。又、制御装置116は、次に高周波電源114によって第一のステップの第二の高周波電力の値に応じた高周波電力を試料台112に供給し、セルフバイアスを発生させる(図4のSQ03)など、装置各部を第1のプロセスパラメータに制御することでエッチング処理を開始する。
【0049】
ステップS104において、制御装置116は、基準となる第1のステップ時間Tより時間差(a−b)を引いた時間だけ待った後、ステップS105において第1プロセスガスの供給設定信号をオフし(図4のSQ04)、同時に第2プロセスガスの供給設定信号をオンする(図4のSQ05)。図4のSQ04で第一のステップが終了し、図4のSQ05より第二のステップが開始される。1サイクル目のときは先行するサイクルが存在し無いからa=b=0であるため、ガス供給設定信号がオンとなる時間はTのままであるが、2サイクル目以降は、前サイクルで得られた時間a、bを用いて、ガス供給設定信号がオンとなる時間を変更できる。
【0050】
その後、第一のステップから第二ステップへの移行に伴い、処理室内のガスが第1プロセスガスから第2プロセスガスへ切り替わるとプラズマインピーダンスが変化するため、第二の高周波電力の整合点も変化し、第二の高周波電力の反射波が発生する(図4のSQ06)。ステップS106においては、制御装置116は、この反射波の情報を利用し処理室104内のガスが第1プロセスガスより第2プロセスガスへ切り替わったと検知する(図4のSQ07)。
【0051】
次にステップS107において、制御装置116は、第2プロセスガスの供給設定信号のオン(図4のSQ05)より処理室内が第2プロセスガスに切り替わった時(図4のSQ07)までの時間aを計算し、ステップS108で高周波電源114によって第二の高周波電力を設定する(図4のSQ08)。換言すれば、制御装置116は、第一のステップの第二の高周波電力の値から第二のステップの第二の高周波電力の値へ変化させるように高周波電源114を制御する。ここでステップS105からステップS106までの時間をaではなくaとしているのは、次のサイクルに移行するまでaを更新しないためであり、次のサイクルに移行する際に、制御装置116は、時間aにaを代入し置き換える(後述するステップS114)。
【0052】
第2プロセスガスの場合、導入の遅れ時間と排出の遅れ時間とが第1プロセスガスとは逆になるため、制御装置116は、ステップS109において基準となる第2のステップ時間Tより時間差(b−a)を引いた時間を待つ。換言すれば、制御装置116は、第2プロセスガスの供給時間が第二のステップの時間Tから所定値(b−a)を減じた時間となるように第2プロセスガスの供給時間を制御する。ステップS109は1つのサイクルの最後(図4のSQ10)であるため、制御装置116は、ステップS110において設定した回数を繰り返したか判定し、設定回数繰り返していない場合は次のサイクルに移行する。
【0053】
制御装置116は、ステップS109において、第2プロセスガスを時間{T−(b−a)}だけ供給したため、次のサイクルであるステップS111において、第2プロセスガスの供給設定信号をオフとし(図4のSQ09)、同時に第1プロセスガスの設供給定信号をオンする(図4のSQ11)。処理室104内のガスが第2プロセスガスより第1プロセスガスに切り替わると、ステップS106の場合と同様に第二の高周波電力の反射波が発生する(図4のSQ12)ため、その情報に基づいて制御装置116は、ステップS112でガスが切り替わったと検知する。
【0054】
次にステップS113において、第1プロセスガスの供給設定信号のオン(図4のS111)より処理室104内が第1プロセスガスに切り替わった時(図4のSQ13)までの時間bを計算する。
【0055】
これにより第1プロセスガスから第2プロセスガスに切り替わるまでの時間aと、第2プロセスガスより第1プロセスガスに切り替わるまでの時間bの両方が求まったため、制御装置116は、ステップS114で時間aをaで更新するとともに、フローをステップS103に戻し、再び第二の高周波電力を第一のステップに対応する値に設定し次のサイクルへの処理へと移行する。このとき、制御装置116は、第1プロセスガスの供給時間が第一のステップの時間Tから所定値(b−a)を減じた時間となるように第1プロセスガスの供給時間を制御する。
【0056】
以後、ステップS110において規定の処理回数に到達したと判定されるまでガスパルス法にエッチング処理を続け、到達したと判定されたらエッチング処理を終了する。本実施形態によれば、図4から明らかなように、1サイクル目では、第1のステップ時間Tに対し、第一のステップに応じて第二の高周波電力を印加する時間tとが異なり、また第2のステップ時間Tに対し、第二のステップに応じて第二の高周波電力を印加する時間tとが異なっている。しかしながら、上記のステップを実行することで、2サイクル目以降では、T≒t、T≒tとすることができる。
【0057】
換言すれば、制御装置116は、第一のステップの第二の高周波電力の供給時間が第一のステップの時間と概ね同等となるように、時間aと時間bを用いて第1プロセスガスの供給時間を制御することができ、また第二のステップの第二の高周波電力の供給時間が第二のステップの時間と概ね同等となるように、時間aと時間bを用いて第2プロセスガスの供給時間を制御することができる。
【0058】
なお、制御装置116は、第一のステップの第一の高周波電力の値から第二のステップの第一の高周波電力の値へ変化させるように電磁波発生用電源107を制御することもできる。この場合において、制御装置116は、第一のステップの第一の高周波電力の供給時間が第一のステップの時間と概ね同等となるように、時間aと時間bを用いて第1プロセスガスの供給時間を制御することができ、また第二のステップの第一の高周波電力の供給時間が第二のステップの時間と概ね同等となるように、時間aと時間bを用いて第2プロセスガスの供給時間を制御することができる。
【0059】
前サイクルで測定されたガス導入の遅れ時間を用いるため、完全には第二の高周波電力の印加時間t、tと基準となるステップ時間T、Tとを等しくすることはできない。しかし前サイクルのガス導入の遅れ時間であっても、ガス供給装置の機差を含んだ時間であるため、この時間を用いてガス供給の設定時間を変更する事で、複数のプラズマ処理装置間において第二の高周波電力の印加時間の機差を低減することが可能である。
【0060】
また図3および図4は、1サイクルが2つのステップで処理を繰り返した場合に適用されるが、1サイクルを構成するステップが3ステップ以上であっても、本発明は適用可能である。
【0061】
複数のステップで構成されるサイクルのステップ間の一部でガスの切り替わりの終点検出を実行しない場合もありうる。その場合でも本発明を適用するには、ガスの切り替わりの終点を検出して第二の高周波電力を変化させるステップ間はガスの遅れ時間を計算し、終点検出せずに第二の高周波電力を変化させるステップ間のガス遅れ時間は0とみなし、ガス供給時間の調整を実施すればよい。
【0062】
本実施形態では処理室内のガス切り替えをプラズマインピーダンスの変化を元に検知して、ガス供給設定信号のオンから処理室にガスが供給されるまでの時間を計算した。しかし、それ以外にもプラズマからの発光スペクトル強度の変化を用いて処理室内のガスの切り代わりを検出する方法、処理室に粒子計測器を取り付け処理室内のガス分子を分析してガスの切り替わりを検出方法などによっても、ガス供給設定信号のオンからガスが処理室に供給されるまでの時間を計算する可能である。
【0063】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)処理装置、容量結合型プラズマ(Capacitively Coupled Plasma:CCP)処理装置などを用いて、処理室内のガスの切り替わりを検知した後、第二の高周波電力を切り替えるものに対して適用可能である。
【0064】
また、上述した実施例は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
101…真空容器、102…シャワープレート、103…誘電体窓、104…処理室、105…ガス配管、106…ガス供給装置、107…電磁波発生用電源、108…マイクロ波整合器、109…磁場発生コイル、110…空洞共振器、111…半導体基板、112…試料台、113…高周波整合器、114…高周波電源、115…真空排気口、116…制御装置
図1
図2
図3
図4