特許第6851527号(P6851527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851527非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
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  • 特許6851527-非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池 図000076
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851527
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/36 20060101AFI20210322BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20210322BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20210322BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20210322BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20210322BHJP
【FI】
   C07D317/36
   H01M10/0567
   H01G11/06
   H01G11/64
   !H01M10/052
【請求項の数】1
【全頁数】112
(21)【出願番号】特願2020-68964(P2020-68964)
(22)【出願日】2020年4月7日
(62)【分割の表示】特願2016-17126(P2016-17126)の分割
【原出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2020-143060(P2020-143060A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 英司
(72)【発明者】
【氏名】川上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大竹 崇久
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−080711(JP,A)
【文献】 Tetrahedron Letters,1994年,Vol. 35, No. 50,pp. 9425-9428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 317/36
H01G 11/06
H01G 11/64
H01M 10/0567
H01M 10/052
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯用電子機器の急速な進歩に伴い、その主電源やバックアップ電源に用いられる電池に対する高容量化への要求が高くなっており、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池等の非水系電解液電池が注目されている。
リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCF(CFSO等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が代表例として挙げられる。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵・放出することができる炭素質材料が用いられており、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等が代表例として挙げられる。更に高容量化を目指してシリコンやスズ等を用いた金属又は合金系の負極も知られている。正極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵・放出することができる遷移金属複合酸化物が用いられており、遷移金属の代表例としてはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄等が挙げられる。
【0004】
このような非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池では、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるため、非水系電解液により電池特性が大きく変わることになる。非水系電解液二次電池の保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めたりするために、非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、コバルト酸リチウムに代表されるリチウム遷移金属酸化物を活物質とする正極と、黒鉛を用いる負極と、非水電解液とからなるリチウム二次電池において、電解液中にマロン酸エステル化合物を添加することにより、サイクル特性を改善する検討がなされている。
特許文献2には、ジエチルマロン酸ジエチル等の特定のマロン酸エステル化合物を溶媒として用いることにより、電解液の引火点の上昇、融点を低下される検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開平11−135148号公報
【特許文献2】国際公開第2000/001027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年のリチウム非水系電解液二次電池の特性改善への要求はますます高まっており、高温保存特性、エネルギー密度、出力特性、寿命、高速充放電特性、低温特性等の全ての性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、未だに達成されていない。高温保存特性をはじめとする耐久性能と容量、抵抗、出力特性などの性能がトレードオフの関係になっており、総合的な性能のバランスが悪いという問題があった。
【0008】
特許文献1に記載される、ジメチルマロネートに代表される特定のマロン酸エステル化合物を含有させた電解液を用いると、サイクル特性は向上することが開示されている。しかし、電極上での反応性は高く、高温保存時の保存ガス膨れに関して改善する余地があった。
【0009】
特許文献2に記載される、ジエチルマロン酸ジエチルに代表される特定のマロン酸エステル化合物を含有させた電解液を用いると、電解液の引火点を上昇させることが開示されている。しかし、電極上での反応性は高く、高温保存時の保存ガス膨れに関して改善する余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、非水系電解液電池において、耐久性と容量、抵抗、出力特性などの性能につき、総合的な性能のバランスがよく、放電保存特性及び高温保存特性をバランスよく改善し得る、非水系電解液及び非水系電解液電池を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
本発明の要旨は、以下に示す通りである。
(a)金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極を備える非水系電解液電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液がアルカリ金属塩及び非水系溶媒とともに、下記一般式(A)で表される化合物を含有することを特徴とする非水系電解液。
【化1】

(式(A)中、R、RおよびXは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、Yは炭素−酸素、硫黄−酸素、リン−酸素及び炭素−窒素の不飽和結合のうち少なくとも1つを有する基を示す。R、RおよびXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R、R、XおよびYは互いに結合し環を形成しない。)
(b)前記一般式(A)で表される化合物が、一般式(C)で表される化合物であることを特徴とする(a)に記載の非水系電解液。
【化2】

(式(C)中、R、RおよびXは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R、RおよびXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、R、R及びXは互いに結合し環を形成しない。RおよびRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Zは、水素原子またはハロゲン原子を示し、nは0〜4の整数を示す。n=0の場合、Xが結合している炭素とZが結合した炭素に隣接している炭素が直接結合することを意味する。
(c)更に下記一般式(B)表される化合物を含有することを特徴とする(a)又は(b)に記載の非水系電解液。
【化3】

(式(B)中、R、RおよびXは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R、RおよびXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R、R及びXは互いに結合し環を形成しない。)
(d)前記一般式(A)で表される化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることを特徴とする(a)〜(c)のいずれかに記載の非水系電解液。
(e)更に、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、芳香族化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩、フルオロスルホン酸塩及びイソシアヌル酸骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする(a)〜(d)のいずれかに
記載の非水系電解液。
(f)前記フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、芳香族化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩、フルオロスルホン酸塩及びイソシアヌル酸骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、0.001質量%以上20質量%以下であることを特徴とする(e)に記載の非水系電解液。
【0013】
また、本発明の別の形態に係る要旨は、以下に示す通りである。
(g)リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液二次電池において、該非水系電解液が(a)〜(f)のいずれかに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
(h)前記リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質は、炭素を構成元素として有することを特徴とする(g)に記載の非水系電解液電池。
(i)前記リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質は、ケイ素(Si)またはスズ(Sn)を構成元素として有することを特徴とする(g)に記載の非水系電解液電池。
(j)前記リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質は、ケイ素(Si)またはスズ(Sn)を構成元素とする粒子と黒鉛粒子との混合体または複合体であることを特徴とする(g)に記載の非水系電解液電池。
(k)下記式で表される化合物。
【化4】
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の化合物を有する非水系電解液を用いて非水系電解液二次電池とすることで、高温保存特性などの性能に優れ、総合的な性能のバランスのよい電池を提供することができる。
本発明の実施形態に係る非水系電解液を用いて作製された非水系電解液二次電池が、総合的な性能のバランスが良い二次電池となる作用・原理は明確ではないが、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0015】
上記一般式(A)で表される特定化合物(以下、特定化合物A)は、
(1)マロン酸骨格
(2)炭素−酸素、硫黄−酸素、リン−酸素、炭素−窒素不飽和結合のうち少なくとも1つを有する極性基
の2つの骨格を分子内に有する特徴がある。
マロン酸骨格はリチウムカチオンに対する配位性が高いため、特定化合物Aが非水系電解液中で拡散し、又は泳動により効率よく正極及び負極界面に接近し、濃縮されると考えられる。また、特定化合物A構造内の炭素−酸素、硫黄−酸素、リン−酸素、炭素−窒素不飽和結合を有する極性基は電気化学的に酸化、あるいは還元されるため、正極及び負極界面に被膜を形成することで正極又は負極保護作用に資すると考えられる。この被膜は、
絶縁性を有するため電解液の構成成分である塩、溶媒、その他の助剤の酸化あるいは還元反応による分解を抑制する。そのため、電池内の副反応を抑制し、高温保存時のガス発生の抑制や耐久特性などの向上に資すると推定している。
【0016】
上記課題を解決するために本発明では、金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極を備える非水系電解液電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液がアルカリ金属塩及び非水系溶媒とともに、一般式(A)で表される特定化合物Aを含有することを特徴とする非水系電解液を用いる。該非水系電解液を用いて電池とした結果、高温保存特性等の耐久特性を改善し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】化合物1のH−NMRのチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
また、ここで“重量%”、“重量ppm”及び“重量部”と“質量%”、“質量ppm”及び“質量部”とは、それぞれ同義である。また、単にppmと記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0019】
1.非水系電解液
1−1.本発明の非水系電解液
本発明の実施形態に係る非水系電解液は、下記一般式(A)で表される化合物を含有することを特徴としている。
<一般式(A)で表される化合物>
【0020】
【化5】
【0021】
式(A)中、R、RおよびXは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、Yは炭素−酸素、硫黄−酸素、リン−酸素、炭素−窒素不飽和結合のうち少なくとも1つを有する基を示す。R、RおよびXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R、R、XおよびYは互いに結合し環を形成しない。
【0022】
ここで、上述の置換基とは、シアノ基、イソシアナト基、アルキルカルボニル基(−(C=O)−R)、アルキルカルボニルオキシ基(−O(C=O)−R)、アルコキシカルボニル基(−(C=O)O−R)、アルキルスルホニル基(−SO−R)、アルキルスルホニルオキシ基(−O(SO)−R)、アルコキシスルホニル基(−(SO)−O−R)、アルコキシカルボニルオキシ基(−O−(C=O)−O−R)、環状カーボネート基、スルトン、アルキルオキシ基(−O−R)、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、アルキニル基を示す。
【0023】
炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキニル基を介していてもよいアリール基が挙げられる。中でも好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、さらに好ましくは、アルキル基、アルケニル基、特に好ましくは、アルキル基が挙げられる。R、RおよびXが上述の炭化水素基であると、一般式(A)で表される化合物が電解液の分解物と反応し、抵抗が増加しすぎることを抑えられる。
【0024】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、特に好ましくはエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。化合物の製造難度、工業品の入手性の観点から、エチル基、n−ブチル基が最も好ましい。
【0025】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられ、シクロヘキシル基、アダマンチル基が好ましい。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2‐ブテニル基、3‐メチル2‐ブテニル基、3‐ブテニル基、4‐ペンテニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2‐ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、特に好ましくは、アリル基、メタリル基、最も好ましくはアリル基が挙げられる。上述のアルケニル基であると、立体障害が適切であり、かつ生産が比較的容易であるためである。
【0026】
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2‐プロピニル基、2‐ブチニル基、3‐ブチニル基、4‐ペンチニル基、5‐ヘキシニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2‐プロピニル基、2‐ブチニル基、3‐ブチニル基、さらに好ましくは、2‐プロピニル基、3‐ブチニル基、特に好ましくは、2‐プロピニル基が挙げられる。上述のアルキニル基であると、立体障害が適切であり、かつ生産が比較的容易であるためである。
アルキニル基を介していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(A)で表される化合物と電極との反応性の観点から、一般式のR、R、Xで表される炭素数1〜12の炭化水素基は無置換であることが好ましい。これにより、電極上での反応性及び電極上で生成した電解液の還元生成物等の塩基成分との反応性が低下し、副反応による劣化が抑制される。とりわけ、R、R、Xの中でもXが無置換の炭化水素基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0028】
Yは炭素‐酸素、硫黄‐酸素、リン‐酸素、炭素‐窒素不飽和結合の内少なくとも1つを有する基を示す。中でも炭素‐酸素及び硫黄‐酸素不飽和結合を有する基が好ましく、炭素‐酸素不飽和結合を有する基がさらに好ましい。
【0029】
炭素‐酸素不飽和結合を有する基の具体例としては、アルキルカルボニル基(‐(C=O)‐R)、アルキルカルボニルオキシ基(‐O(C=O)‐R)、アルコキシカルボニル基(‐(C=O)O‐R)、アルコキシカルボニルオキシ基(‐O‐(C=O)‐O‐R)、アクリル基、メタクリル基、環状カーボネート基(例えば式(E)で表されるものが挙げられる)、アミド基(‐(C=O)‐N(R)(R))、カルボン酸
塩(‐(C=O)O‐M)等が挙げられる。中でも、アルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。
【化6】

硫黄‐酸素不飽和結合を有する基の具体例としては、アルキルスルホニル基(‐SO‐R)、アルキルスルホニルオキシ基(‐O(SO)‐R)、アルコキシスルホニル基(‐(SO)‐O‐R)、アルコキシスルホニルオキシ基(‐O‐(SO)‐O‐R)、スルトン、スルホン酸塩(‐(SO)‐O‐M)等が挙げられる。中でもスルトン、スルホン酸塩が好ましい。
リン‐酸素不飽和結合を有する基の具体例としては、ジアルコキシホスホリル基(‐(P=O)‐(O‐R)、ジアルコキシホスホリルオキシ基(‐O‐(P=O)‐(O‐R)、フルオロリン酸塩(‐(P=O)(‐O‐M)(‐F))等が挙げられる。
炭素‐窒素不飽和結合を有する基の具体例としては、シアノ基、イソシアナト基等が挙げられる。
【0030】
、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、アルキニル基を示す。R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウムを示す。中でもリチウムイオンが好ましい。
【0031】
前記一般式(A)で表される化合物が、一般式(C)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
【0032】
式(C)中、R、RおよびXは、前記と同じである。RおよびRは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。Zは、水素原子、またはハロゲン原子を示し、nは0〜4の整数を示す。n=0の場合、Xが結合している炭素とZが結合した炭素に隣接している炭素が直接結合することを意味する。
式(C)中、Zは水素原子であることが好ましく、nは0の整数であることが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態に用いられる、一般式(A)で表される化合物の具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
なお、下記構造式中、Rはそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。これらの中でも、エチル基、ブチル基などの無置換のアルキル基が好ましい。
【0034】
【化8】
【0035】
上記具体的な化合物のうち、好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、化合物の立体障害が小さく、リチウムカチオンへの配位性が高いため、正極あるいは負極界面への濃縮性が高まる。そのため、正極あるいは負極表面に絶縁被膜を好適に形成することが可能となる。
【0036】
【化9】
【0037】
本実施形態においては、非水系電解液全量に対する一般式(A)で表される化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下であり、3.0質量%以下であってもよく、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下の濃度で電解液に配合させる。上記の濃度であれば、電極上での反応性及び電極上で生成した電解液の還元生成物等の塩基成分との反応性が調節でき、電池特性を最適にすることが可能となる。また、高温保存特性等の効果がより向上する。一般式(A)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
なお、本発明の電解液に、一般式(A)で表される化合物を配合する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。上記化合物を発生させる方法としては、これらの化合物以外の化合物を添加し、電解液等の電池構成要素を酸化、還元、又は加水分解等して発生させる方法が挙げられる。更には、電池を作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法も挙げられる。
【0039】
1−2.一般式(B)で表される化合物
本実施形態に係る電解液は、以下の一般式(B)で表される化合物を含んでもよい。
【化10】

式(B)中、R、RおよびXは、一般式(A)と同じである。
本発明の実施形態に用いてもよい一般式(B)で表される化合物の具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
【化17】
【0047】
【化18】
【0048】
【化19】
【0049】
【化20】
【0050】
【化21】
【0051】
上記具体的な化合物のうち、好ましくは以下の構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、化合物の正極上での反応を好適な程度に調整することができるためである。
【0052】
【化22】
【0053】
【化23】
【0054】
【化24】
【0055】
【化25】
【0056】
【化26】
【0057】
より好ましくは以下の構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、化合物の負極上での反応を好適な程度に調整できるためである。
【0058】
【化27】
【0059】
【化28】
【0060】
【化29】
【0061】
【化30】
【0062】
更に好ましくは以下の構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、化合物が電極上で反応し抵抗が増大することを好適な程度に調整できるためである。
【0063】
【化31】
【0064】
【化32】
【0065】
特に好ましくは以下の構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、化合物が電極上で反応し抵抗が増大することをさらに好適な程度に調整できるためである。
【0066】
【化33】
【0067】
最も好ましくは以下の構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、化合物の立体障
害が小さく、電解液粘度の上昇を抑制することができるためである。
【0068】
【化34】
【0069】
本発明の実施形態に係る非水系電解液全量に対する一般式(B)で表される化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、最も好ましくは2質量%以上、また、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下、最も好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記の濃度であれば、電極上での反応性及び電極上で生成した電解液の還元生成物等の塩基成分との反応性が調節でき、電池特性を最適にすることが可能となる。一般式(B)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
上記範囲を満たした場合は、高温保存特性の効果がより向上する。
【0070】
一般式(A)で表される化合物と一般式(B)で表される化合物は組み合わせて使用することが好ましい。電極上に混成被膜を形成し、特性をさらに向上させることができるためである。
非水電解液中の一般式(A)、(B)で表される化合物の含有比率(一般式(A)で表される化合物の含有量(質量%)/一般式(B)で表される化合物の含有量(質量%))は、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上、また、通常、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下、最も好ましくは1以下の含有比率で含有する。上記の含有比率であれば電極上に混成被膜を好適に形成し、特性をさらに向上させることができるためである。
【0071】
なお、一般式(A)で表される化合物と、一般式(B)で表される化合物は、本発明の別の実施形態である、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液二次電池において、電解液中に含有されることが好ましい。
【0072】
1−2.各種化合物(フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、芳香族化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩、イソシアヌル酸骨格を有する化合物)
本発明の実施形態に係る非水系電解液(以下、単に電解液ともいう)は、一般式(A)で表される化合物の他に、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、芳香族化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩、イソシアヌル酸骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の特定化合物をさらに含有することが電池特性向上の点から好ましい。中でも、フッ素原子を有する環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、芳香族化合物、ジフルオロリン酸塩、炭素‐炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、イソシアヌル酸骨格を有する化合物が電池特性向上の観点からより好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素‐炭素不飽和結合を有する環状カーボネートがさらに好ましい。
【0073】
以下に、前記化合物について説明をする。ただし、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩に関しては、後述する1−3.電解質における説明が適用される。
【0074】
1−2−1.フッ素含有環状カーボネート
フッ素含有環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物(以下、「フッ素化エチレンカーボネート」と記載する場合がある)、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される化合物とフッ素含有環状カーボネートとを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期ガス量が抑制できる一方で、過充電ガス量が増加することで電池安全性を一層向上させることができる。
【0075】
フッ素数1〜8個のフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0076】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートが、電解液に高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜を容易に形成しやすい点で好ましい。
【0077】
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。フッ素化環状カーボネートの量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましく
は5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。また、フッ素化環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0078】
また、フッ素含有環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)を用いることもできる。フッ素化不飽和環状カーボネートが有するフッ素数は1以上であれば、特に制限されない。フッ素数は6以下とすることができ、好ましくは4以下であり、1又は2がより好ましい。
【0079】
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0080】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0081】
中でも、フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので好ましい。
【0082】
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは50以上、また、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは100以上であり、また、より好ま
しくは200以下である。
【0083】
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0084】
フッ素化不飽和環状カーボネート(2種以上の場合は合計量)の量は、電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上で、特に好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液二次電池は十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0085】
一般式(A)で表される化合物とフッ素含有環状カーボネートの質量比は、負極上での複合的な界面保護被膜形成の点から、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲で配合した場合、各化合物の正負極での副反応を効率よく抑制でき、電池特性が向上する。特に、初期ガス抑制効果及び過充電時の安全性向上に有用である。
【0086】
1−2−2.硫黄含有有機化合物
本発明の実施形態に係る電解液は、更に硫黄含有有機化合物を含むことができる。硫黄含有有機化合物は、分子内に硫黄原子を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されないが、好ましくは分子内にS=O基を有している有機化合物であり、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルが挙げられる。ただしフルオロスルホン酸塩に該当するものは、1−2−2.硫黄含有有機化合物ではなく、後述する電解質であるフルオロスルホン酸塩に包含されるものとする。
本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される化合物と硫黄含有有機化合物とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期効率を向上させることができる一方で、過充電ガス量が増加することで電池安全性を一層向上させることができる。
【0087】
中でも、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルが好ましく、より好ましくはS(=O)2基を有する化合物である。
これらのエステルは、置換基を有していてもよい。ここで置換基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基であり、好ましくは、炭素原子、水素原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基であり、より好ましくは、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる群から選ばれる1以上の原子で構成された基である。置換基としては、ハロゲン原子;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシ基;シアノ基;イソシアナト基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;カルボキシ基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基;アルキルスルホニル基;アルコキシスルホニル基;ジアルコキシホスファントリイル基;ジアルコキシホスホリル基及びジアルコキシホスホリルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、好ましくはハロゲン原子;アルコキシ基;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基;イソシアナト基;シアノ基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、非置換アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基;ア
シル基;アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、非置換アルキル基及びアルコキシカルボニル基である。これらの置換基に関する例示及び好ましい例は、後述する式(3−2−1)におけるA12及びA13、ならびに式(3−2−2)におけるA14の定義中の置換基に適用される。
【0088】
更に好ましくは鎖状スルホン酸エステル及び環状スルホン酸エステルであり、中でも、式(3−2−1)で表される鎖状スルホン酸エステル及び式(3−2−2)で表される環状スルホン酸エステルが好ましく、式(3−2−2)で表される環状スルホン酸エステルがより好ましい。
【0089】
1−2−2−1.式(3−2−1)で表される鎖状スルホン酸エステル
【化35】

(式中、A12は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下のn21価の炭化
水素基であり、A13は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、n21は、1以上4以下の整数であり、n21が2の場合、A12及びA13は、同一であっても、異なっていてもよい。)
【0090】
式(3−2−1)において、A12及びA13は一緒になって環を形成しておらず、よって式(3−2−1)は鎖状スルホン酸エステルである。
21は、1以上3以下の整数が好ましく、1以上2以下の整数がより好ましく、2が更に好ましい。
【0091】
12における炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基としては、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基等の1価の炭化水素基;
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の2価の炭化水素基;
アルカントリイル基、アルケントリイル基、アルキントリイル基及びアレーントリイル基等の3価の炭化水素基;
アルカンテトライル基、アルケンテトライル基、アルキンテトライル基及びアレーンテトライル基等の4価の炭化水素基;
等が挙げられる。
【0092】
これらのうち、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の2価の炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。これらは、n21が2の場合に対応する。
【0093】
炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基のうち、1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基;ビニル基、1
−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基等の炭素数2以上5以下のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の炭素数2以上5以下のアルキニル基が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1以上5以下のアルキレン基;ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2以上5以下のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等の炭素数2以上5以下のアルキニレン基等が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、更に好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数3以上5以下のアルキレン基である。
3価及び4価の炭化水素基としては、上記1価の炭化水素基に対応する、3価及び4価の炭化水素基が挙げられる。
【0094】
12における置換基を有している炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基とは、上記置換基と上記炭素数1以上12以下のn21価の炭化水素基を組み合わせた基を意味する。A12としては、置換基を有さない炭素数1以上5以下のn21価の炭化水素基が好ましい。
【0095】
13における炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基等の1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0096】
炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基であり、更に好ましくはエチル基、n−プロピル基である。
【0097】
13における置換基を有している炭素数1以上12以下の炭化水素基とは、上記置換基と上記炭素数1以上12以下の炭化水素基を組み合わせた基を意味する。A13としては、置換基を有していてもよい炭素数1以上5以下の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換基を有している炭素数1以上5以下の炭化水素基が好ましく、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基が更に好ましい。中でも、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、1−メトキシカルボニルプロピル基、1−エトキシカルボニルプロピル基、2−メトキシカルボニルプロピル基、2−エトキシカルボニルプロピル基、3−メトキシカルボニルプロピル基、3−エトキシカルボニルプロピル基が好ましく、より好ましくは1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基である。
【0098】
式(3−2−1)で表される鎖状スルホン酸エステルの含有量(2種以上の場合は合計
の含有量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。この範囲内であると、高温保存特性が良好である。
【0099】
1−2−2−2.式(3−2−2)で表される環状スルホン酸エステル
【化36】

(式中、A14は置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基
である。)
【0100】
14における炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等が挙げられ、好ましくはアルキレン基、アルケニレン基である。
炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基;ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2〜5のアルケニレン基;
エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等の炭素数2〜5のアルキニレン基等が挙げられる。
これらのうち、好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数1〜5のアルキレン基及びビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数2〜5のアルケニレン基であり、より好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数3〜5のアルキレン基及び1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等の炭素数3〜5のアルケニレン基であり、更に好ましくはトリメチレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基である。
なお、A14における置換基を有している炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基とは、上記置換基と上記炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基を組み合わせた基のことを意味する。A14は、好ましくは置換基を有さない炭素数1以上5以下の2価の炭化水素基である。
【0101】
式(3−2−2)で表される環状スルホン酸エステルを更に含む本発明の実施形態に係る電解液を用いた電池は、初期効率が向上し、かつ過充電ガス量が増加することで電池安全性を一層向上させることができる。式(3−2−2)で表される環状スルホン酸エステルの含有量(2種以上の場合は合計の含有量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。
【0102】
硫黄含有有機化合物としては、以下を挙げることができる。
≪鎖状スルホン酸エステル≫
フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチル等のフルオロスルホン酸エステル;
メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸2−プロピニル、メタンスルホン酸3−ブチニル、ブスルファン、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸3−ブチニル、メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−プロピニル及びメタンスルホニルオキシ酢酸3−ブチニル等のメタンスルホン酸エステル;
ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル及び1,2−ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン等のアルケニルスルホン酸エステル;
メタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、メタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,2−エタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,2−エタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,2−エタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、1,2−エタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3−プロパンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3−プロパンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−ブタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3−ブタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3−ブタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、1,3−ブタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル等のアルキルジスルホン酸エステル;
【0103】
≪環状スルホン酸エステル≫
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン及び1,5−ペンタンスルトン等のスルトン化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等のジスルホネート化合物;
1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−2,2−ジオキシド及び1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド等の含窒素化合物;
1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オ
キサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド及び1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド等の含リン化合物。
【0104】
≪鎖状硫酸エステル≫
ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート及びジエチルスルフェート等のジアルキルスルフェート化合物。
【0105】
≪環状硫酸エステル≫
1,2−エチレンスルフェート、1,2−プロピレンスルフェート、1,3−プロピレンスルフェート、1,2−ブチレンスルフェート、1,3−ブチレンスルフェート、1,4−ブチレンスルフェート、1,2−ペンチレンスルフェート、1,3−ペンチレンスルフェート、1,4−ペンチレンスルフェート及び1,5−ペンチレンスルフェート等のアルキレンスルフェート化合物。
【0106】
≪鎖状亜硫酸エステル≫
ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト及びジエチルスルファイト等のジアルキルスルファイト化合物。
【0107】
≪環状亜硫酸エステル≫
1,2−エチレンスルファイト、1,2−プロピレンスルファイト、1,3−プロピレンスルファイト、1,2−ブチレンスルファイト、1,3−ブチレンスルファイト、1,4−ブチレンスルファイト、1,2−ペンチレンスルファイト、1,3−ペンチレンスルファイト、1,4−ペンチレンスルファイト及び1,5−ペンチレンスルファイト等のアルキレンスルファイト化合物。
【0108】
これらのうち、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、プロパンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、プロパンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1,2−エチレンスルフェート、1,2−エチレンスルファイト、メタンスルホン酸メチル及びメタンスルホン酸エチルが初期効率向上の点から好ましく、プロパンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、プロパンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−メトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1−エトキシカルボニルエチル、1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1,2−エチレンスルフェート、1,2−エチレンスルファイトがより好ましく、1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトンが更に好ましい。
【0109】
硫黄含有有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0110】
硫黄含有有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
一般式(A)で表される化合物と硫黄含有有機化合物の質量比は、一般式(A)で表される化合物:硫黄含有有機化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での化合物の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0111】
1−2−3.シアノ基を有する有機化合物
本発明の実施形態に係る電解液は、シアノ基を有する有機化合物を含むことができる。シアノ基を有する有機化合物としては、分子内にシアノ基を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されないが、好ましくは式(3−4−1)、式(3−4−2)及び式(3−4−3)で表される化合物であり、より好ましくは式(3−4−1)及び式(3−4−2)で表される化合物であり、更に好ましくは、式(3−4−2)で表される化合物である。なお、シアノ基を有する有機化合物が、複数のエーテル結合を有する環状化合物でもある場合、複数のエーテル結合を有する環状化合物に属するものとする。
本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される化合物とシアノ基を有する有機化合物とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期の充放電効率が向上する一方で、保存後の充放電効率を向上させることができる。
【0112】
1−2−3−1.式(3−4−1)で表される化合物
−CN (3−4−1)
(式中、Aは炭素数2以上20以下の炭化水素基を示す。)
上記式(3−4−1)で表される化合物の分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは55以上であり、より好ましくは65以上、更に好ましくは80以上であり、また、好ましくは310以下であり、より好ましくは185以下であり、更に好ましくは155以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する式(3−4−1)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、効果が発現されやすい。式(3−4−1)で表される化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0113】
式(3−4−1)中、炭素数2以上20以下の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基等が挙げられ、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシ基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、1−ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、i−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基等のアリール基等が好ましい

中でも、分子全体に対するシアノ基の割合が多く、電池特性向上効果が高いという観点から、炭素数2以上15以下の直鎖又は分岐状のアルキル基及び炭素数2以上4以下のアルケニル基がより好ましく、炭素数2以上12以下の直鎖又は分岐状のアルキル基が更に好ましく、炭素数4以上11以下の直鎖又は分岐状のアルキル基が特に好ましい。
【0114】
式(3−4−1)で表される化合物としては、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ペラルゴノニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル及び2−ヘキセンニトリル等が挙げられる。
中でも、化合物の安定性、電池特性、製造面の観点から、ペンタンニトリル、オクタンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル及びクロトノニトリルが好ましく、ペンタンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル及びクロトノニトリルがより好ましく、ペンタンニトリル、デカンニトリル及びクロトノニトリルが好ましい。
【0115】
式(3−4−1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(3−4−1)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。上記範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0116】
1−2−3−2.式(3−4−2)で表される化合物
NC−A−CN (3−4−2)
(式中、Aは、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上10以下の有機基である。)
【0117】
水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上10以下の有機基とは、炭素原子及び水素原子から構成される有機基の他に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基を包含する。窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基には、炭素原子及び水素原子から構成される基における骨格の炭素原子の一部が、これらの原子に置換されている有機基、又はこれらの原子で構成された置換基を有する有機基を包含する。
【0118】
式(3−4−2)で表される化合物の分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは、65以上であり、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上であり、また、好ましくは270以下であり、より好ましくは160以下であり、更に好ましくは135以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する式(3−4−2)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、効果が発現されやすい。式(3−4−2)で表される化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0119】
式(3−4−2)中Aとしては、アルキレン基又はその誘導体、アルケニレン基又は
その誘導体、シクロアルキレン基又はその誘導体、アルキニレン基又はその誘導体、シクロアルケニレン基又はその誘導体、アリーレン基又はその誘導体、カルボニル基又はその誘導体、スルホニル基又はその誘導体、スルフィニル基又はその誘導体、ホスホニル基又はその誘導体、ホスフィニル基又はその誘導体、アミド基又はその誘導体、イミド基又はその誘導体、エーテル基又はその誘導体、チオエーテル基又はその誘導体、ボリン酸基又はその誘導体、ボラン基又はその誘導体等が挙げられる。
【0120】
中でも、電池特性向上の点から、アルキレン基又はその誘導体、アルケニレン基又はその誘導体、シクロアルキレン基又はその誘導体、アルキニレン基又はその誘導体、アリーレン基又はその誘導体が好ましい。また、Aが置換基を有してもよい炭素数2以上5以下のアルキレン基であることがより好ましい。
【0121】
式(3−4−2)で表される化合物としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,3,3−トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルスクシノニトリル、2,3−ジエチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジエチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル−1,1−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−2,2−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−3,3−ジカルボニトリル、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,3−ジイソブチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジイソブチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン、1,2−ジジアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル及び3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0122】
これらのうち、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル及び3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、フマロニトリルが保存特性向上の点から好ましい。更に、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、グルタロニトリル及び3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンは、保存特性向上効果が特に優れ、また電極での副反応による劣化が少ないためにより好ましい。通常、ジニトリル化合物は、分子量が小さいほど一分子におけるシアノ基の量割合が大きくなり、分子の粘度が上昇する一方、分子量が大きくなるほど、化合物の沸点が上昇する。よって、作業効率の向上の点から、スクシノスクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル及びピメロニトリルが更に好ましい。
【0123】
式(3−4−2)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(3−4−2)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ
、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0124】
1−2−3−3.式(3−4−3)で表される化合物
【化37】

(式中、Aは、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び
ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基であり、n43は0以上5以下の整数である。)
【0125】
水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基とは、炭素原子及び水素原子から構成される有機基の他に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基を包含する。窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい有機基には、炭素原子及び水素原子から構成される基における骨格の炭素原子の一部が、これらの原子に置換されている有機基、又はこれらの原子で構成された置換基を有する有機基を包含する。
上記n43は0以上5以下、好ましくは0以上3以下、より好ましくは0以上1以下の整数であり、特に好ましくは0である。
また、上記Aは、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基であることが好ましく、水素原子、炭素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる1種以上の原子で構成された炭素数1以上12以下の有機基であることがより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。
ここで置換基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1以上の原子で構成された基のことを表す。
置換基としては、ハロゲン原子;非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基;イソシアナト基;アルコキシカルボニルオキシ基;アシル基;カルボキシル基;アルコキシカルボニル基;アシルオキシ基;アルキルスルホニル基;アルコキシスルホニル基;ジアルコキシホスファントリイル基;ジアルコキシホスホリル基及びジアルコキシホスホリルオキシ基等が挙げられ、好ましくはハロゲン原子;アルコキシ基又は非置換もしくはハロゲン置換のアルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子又は非置換もしくはハロゲン置換のアルキル基であり、更に好ましくは非置換のアルキル基である。
上記脂肪族炭化水素基は、特に制限されないが、炭素数は1以上であることができ、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、12以下であることができ、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
脂肪族炭化水素基としては、n43に応じて、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルカンテトライル基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルケンテトライル基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、アルキンペンタイル基及びアルキンテトライル基等が挙げられる。
これらのうち、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基及びアルカンテトライル基等の飽和炭化水素基がより好ましく、アルカントリイル基が更に好ましい。
【0126】
更に、上記式(3−4−3)で表される化合物は式(3−4−3’)で示される化合物であることがより好ましい。
【化38】

(式中、A及びAは、上記Aに対応する2価の基である。)
また、上記A及びAは、置換基を有していていもよい炭素数1以上5以下の炭化水素基であることがより好ましい。
炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラエチレン基、ペンタメチレン基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、エチニレン基、プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、1−ペンチニレン基及び2−ペンチニレン基等が挙げられる。
これらのうち、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラエチレン基、ペンタメチレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基がより好ましい。
上記A及びAは同一であってもよいが、互いに同一でなく、異なることが好ましい。
【0127】
式(3−4−3)で表される化合物の分子量は、特に制限されない。分子量は、好ましくは、90以上であり、より好ましくは120以上、更に好ましくは150以上であり、また、好ましくは450以下であり、より好ましくは300以下であり、更に好ましくは250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する式(3−4−3)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、効果が発現されやすい。式(3−4−3)で表される化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0128】
式(3−4−3)で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【化39】
【0129】
【化40】
【0130】
【化41】
【0131】
【化42】
【0132】
【化43】
【0133】
【化44】
【0134】
【化45】
【0135】
これらのうち、
【化46】

が保存特性向上の点から好ましい。
シアノ基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0136】
式(3−4−3)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下の濃度で含有させる。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0137】
一般式(A)で表される化合物とシアノ基を有する有機化合物の質量比は、一般式(A)で表される芳香族カルボン酸エステル:シアノ基を有する有機化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上で
の化合物の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0138】
1−2−4.イソシアネート基を有する有機化合物
本発明の実施形態に係る電解液は、イソシアネート基を有する有機化合物を含むことができる。イソシアネート基を有する有機化合物は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する有機化合物であれば、特に制限されないが、イソシアネート基の数は、一分子中、好ましくは1以上4以下、より好ましくは2以上3以下、更に好ましくは2である。
【0139】
本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される芳香族カルボン酸エステルとイソシアネート基を有する化合物とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、初期ガスの発生を抑制できる一方で、保存後の電池容量を向上させることができる。
イソシアネート基を有する有機化合物は、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基とアルキレン基が連結した構造、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基とアルキレン基が連結した構造、エーテル構造(−O−)、エーテル構造(−O−)とアルキレン基が連結した構造、カルボニル基(−C(=O)−)、カルボニル基とアルキレン基とが連結した構造、スルホニル基(−S(=O)−)、スルホニル基とアルキレン基とが連結した構造又はこれらがハロゲン化された構造等を有する化合物にイソシアネート基が結合した化合物であり、より好ましくは、直鎖状或いは分岐状のアルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基とアルキレン基が連結した構造、芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基とアルキレン基が連結した構造にイソシアネート基が結合した化合物であり、更に好ましくは、シクロアルキレン基とアルキレン基が連結した構造にイソシアネート基が結合した化合物である。イソシアネート基を有する有機化合物の分子量は特に制限されない。分子量は、好ましくは80以上であり、より好ましくは115以上、更に好ましくは170以上であり、また、300以下であり、より好ましくは230以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するイソシアネート基を有する有機化合物の溶解性を確保しやすく、効果が発現されやすい。イソシアネート基を有する有機化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
【0140】
イソシアネート基を有する有機化合物としては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ターシャルブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネートヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロパルギルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネート等のイソシアネート基を1個有する有機化合物;
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,4−ジイソシアナト−2−ブテン、1,4−ジイソシアナト−2−フルオロブタン、1,4−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロブタン、1,5−ジイソシアナト−2−ペンテン、1,5−ジイソシアナト−2−メチルペンタン、1,6−ジイソシアナト−2−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−フルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3,4−ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソ
シアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−1,1’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−
4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(
メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、カルボニルジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン−1,4−ジオン、1,5−ジイソシアナトペンタン−1,5−ジオン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物;
等が挙げられる。
【0141】
これらのうち、モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]
ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物が保存特性向上の点から好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[
2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートがより好ましく、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ
[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)が更に好ましい。
【0142】
イソシアネート基を有する有機化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物から誘導される三量体化合物、又はそれに多価アルコールを付加した脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。例えば、式(3−5−1)〜(3−5−4)の基本構造で示されるビウレット、イソシアヌレート、アダクト及び二官能のタイプの変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0143】
【化47】

(式中、R51〜R54及びR54’は、独立して、2価の炭化水素基(例えば、テト
ラメチレン基、ヘキサメチレン基)であり、R53’は、独立して、3価の炭化水素基である。)
【0144】
分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物には、ブロック剤でブロックして保存安定性を高めた、いわゆるブロックイソシアネートも含まれる。ブロック剤には、アルコール類、フェノール類、有機アミン類、オキシム類、ラクタム類を挙げることができ、具体的には、n−ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエチルケトキシム、ε−カプロラクタム等を挙げることができる。
【0145】
イソシアネート基を有する有機化合物に基づく反応を促進し、より高い効果を得る目的で、ジブチルスズジラウレート等のような金属触媒や、1,8-ジアザビシクロ[5.4
.0]ウンデセン-7のようなアミン系触媒等を併用することも好ましい。
イソシアネート基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0146】
イソシアネート基を有する有機化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好まし
くは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0147】
一般式(A)で表される化合物とイソシアネート基を有する有機化合物の質量比は、一般式(A)で表される化合物:イソシアネート基を有する有機化合物が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜95:5がより好ましく、10:90〜90:10が更に好ましく、20:80〜80:20が特に好ましく、30:70〜70:30が極めて好ましい。この範囲であれば、電池特性、特に初期特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での化合物の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0148】
1−2−5.一般式(A)で表される化合物以外の芳香族化合物
本発明の実施形態に係る電解液は、一般式(A)で表される化合物以外の芳香族化合物を含むことができる。一般式(A)で表される化合物以外の芳香族化合物としては、分子内に芳香環を少なくとも1つ有している式一般式(A)で表される化合物以外の有機化合物であれば、特に制限されないが、好ましくは式(3−7−1)及び式(3−7−2)で表される芳香族化合物である。
【0149】
1−2−5−1.式(3−7−1)で表される芳香族化合物
【化48】

(式中、置換基X71はハロゲン原子、ハロゲン原子又はヘテロ原子を有していてもよ
い有機基を表す。ヘテロ原子を有していてもよい有機基とは、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基、リン原子を有する基、硫黄原子を有する基、ケイ素原子を有する基を示す。また、それぞれの置換基は更にハロゲン原子、炭化水素基、芳香族基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン含有芳香族基等で置換されていてもよい。また置換基X71の数n71は1以上6以下であり、複数の置換基を有する場合それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよく、また環を形成していてもよい。)
【0150】
中でも、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基が電池特性の観点から好ましい。より好ましくは炭素数3以上12以下の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基である。
置換基X71の数n71は好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、更に好ましくは1以上2以下であり、特に好ましくは1である。
【0151】
71はハロゲン原子、ハロゲン原子又はヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。
ハロゲン原子として、塩素、フッ素等が挙げられ、好ましくはフッ素である。
ヘテロ原子を有さない有機基として、炭素数3以上12以下の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基が挙げられ、直鎖状、分岐状のものは環構造を持つものも含まれる。炭素
数1以上12以下の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、等が挙げられる。炭素数は好ましくは3以上12以下、より好ましくは3以上10以下、更に好ましくは3以上8以下、更により好ましくは3以上6以下、最も好ましくは3以上5以下である。
ヘテロ原子を有する有機基を構成するヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。酸素原子を有するものとして、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基等が挙げられる。硫黄原子を有するものとして、スルホン酸エステル構造を有する基等が挙げられる。リン原子を有するものとして、リン酸エステル構造を有する基、ホスホン酸エステル構造を有する基等が挙げられる。ケイ素原子を有するものとして、ケイ素−炭素構造を有する基等が挙げられる。
【0152】
式(3−7−1)で表される芳香族化合物としては、例えば以下が挙げられる。
71がハロゲン原子又はハロゲン原子を有していてもよい有機基であるものとして、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等が挙げられ、好ましくはフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンである。より好ましくはフルオロベンゼンである。
【0153】
71が炭素数1以上12以下の炭化水素基であるものとして、2,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルシクロヘキサン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン等が挙げられ、好ましくは2,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルシクロヘキサン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼンであり、より好ましくは2,2−ジフェニルプロパン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼンであり、更に好ましくはシクロヘキシルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼンである。
【0154】
71がカルボン酸エステル構造を有する基であるものとして、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、酢酸4−フェニルブチル、プロピオン酸フェニル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸4−フェニルブチル、酪酸フェニル、酪酸ベンジル、酪酸2−フェニルエチル、酪酸3−フェニルプロピル、酪酸4−フェニルブチル、フェニル酢酸フェネチル、2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)プロパン等が挙げられ、好ましくは酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)プロパンであり、より好ましくは酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピルである。
【0155】
71がカーボネート構造を有する基であるものとして、2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)シクロヘキサン、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチ
ルフェニルカーボネート、2−tert−ブチルフェニルメチルカーボネート、2−tert−ブチルフェニルエチルカーボネート、ビス(2−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニルメチルカーボネート、4−tert−ブチルフェニルエチルカーボネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ベンジルメチルカーボネート、ベンジルエチルカーボネート、ジベンジルカーボネート等が挙げられ、好ましくは2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)シクロヘキサン体、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートであり、より好ましくはジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートであり、更に好ましくはメチルフェニルカーボネートである。
【0156】
71がスルホン酸エステル構造を有する基であるものとして、メチルフェニルスルホネート、エチルフェニルスルホネート、ジフェニルスルホネート、フェニルメチルスルホネート、2−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネート等が挙げられ、好ましくはメチルフェニルスルホネート、ジフェニルスルホネート、2−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネートであり、より好ましくはメチルフェニルスルホネート、2−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−tert−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネートである。
【0157】
71がケイ素−炭素構造を有する基であるものとして、トリメチルフェニルシラン、ジフェニルシラン、ジフェニルテトラメチルジシラン等が挙げられ、好ましくはトリメチルフェニルシランである。
【0158】
71がリン酸エステル構造を有する基であるものとして、トリフェニルホスフェート、トリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、ジエチル(4−メチルベンジル)ホスホネート等が挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、であり、より好ましくはトリス(2−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェートである。
【0159】
71がホスホン酸エステル構造を有する基であるものとして、ジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、メチルフェニルフェニルホスホネート、エチルフェニルフェニルホスホネート、ジフェニルフェニルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロフェニル)−ホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、メチルフェニルベンジルホスホネート、エチルフェニルベンジルホスホネート、ジフェニルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート等が挙げられ、好ましくはジメ
チルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロフェニル)-ホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネートであり、より好ましくはジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネートである。
【0160】
また、式(3−7−1)で表される芳香族化合物としては、上記芳香族化合物のフッ素化体も含まれる。具体的には、トリフルオロメチルベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、トリフルオロメチルベンゼン、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物;トリフルオロメトキシベンゼン、2−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール、4−トリフルオロメトキシアニソール等のエーテル構造を有するものの部分フッ素化物等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチルベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物;トリフルオロメトキシベンゼン2−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、4−トリフルオロメトキシアニソール等のエーテル構造を有するものの部分フッ素化物等であり、より好ましくは2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物;トリフルオロメトキシベンゼン、2−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、4−トリフルオロメトキシアニソール等のエーテル構造を有するものの部分フッ素化物等である。
【0161】
式(3−7−1)で表される芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(3−7−1)で表される芳香族化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは4質量%以下である。上記範囲内にあることにより、効果が発現しやすく、また、電池の抵抗増大を防ぎやすい。
【0162】
一般式(A)で表される化合物と式(3−7−1)で表される芳香族化合物(2種以上の場合は合計量)の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池特性が低下せずに過充電特性を向上させることができる。
【0163】
1−2−5−2.式(3−7−2)で表される芳香族化合物
【化49】

(式中、R11〜R15は、独立して、水素、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置
換の炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、R16及びR17は、独立して、炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成していてもよく、ただし、式(3−7−2)は、(A)及び(B):
(A)R11〜R15のうち少なくとも1つは、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基である、
(B)R11〜R17の炭素数の合計は、3以上20以下である、のうち少なくとも一方の条件を満たす)
なお、R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成している場合、R11〜R17のうち2つが一緒になって環を形成していることが好ましい。
【0164】
16及びR17は、独立して、炭素数1以上12以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基)であり、R16とR17は一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成していてもよい。初期効率及び溶解性や保存特性向上の観点から、R16及びR17は、好ましくは炭素数1以上12以下の炭化水素基であるか、R16とR17が一緒になって形成した炭化水素基である環式基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基であるか、R16とR17が一緒になって形成した炭化水素基である5〜8員の環式基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、R16とR17が一緒になって形成したシクロヘキシル基、シクロペンチル基、であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、R16とR17が一緒になって形成したシクロヘキシル基である。
【0165】
11〜R15は、独立して、水素、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基)であり、これらのうち2つは一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成していてもよい。初期効率及び溶解性や保存特性向上の観点から、好ましくは水素、フッ素、非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、より好ましくは水素、フッ素、非置換もしくはフッ素置換の炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、更に好ましくは水素、フッ素、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘキシル基、tert−ヘプチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロtert−ブチル基、1−メチル−1−フェニル−エチル基、1−エチル−1−フェニル−プロピル基であり、特に好ましくは水素、フッ素、tert−ブチル基、1−メチル−1−フェニル−エチル基であり、最も好ましくは水素、tert−ブチル基、1−メチル−1−フェニル−エチル基である。
【0166】
11〜R15のいずれか1つとR16が一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成してもよい。好ましくはR11とR16とが一緒になって環(例えば、炭化水素基である環式基)を形成している。この場合、R17は、アルキル基であることが好ましい。R17がメチル基で、R11とR16が一緒になって環を形成した化合物として、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、2,3−ジヒドロ1,3−ジメチ
ル−1−(2−メチル−2−フェニルプロピル)−3−フェニル−1H−インダン等が挙げられる。
【0167】
式(3−7−2)は、(A)及び(B):
(A)R11〜R15のうち少なくとも1つは、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基である、
(B)R11〜R17の炭素数の合計は、3以上20以下である、
のうち少なくとも一方の条件を満たす。
式(3−7−2)は、通常の電池動作電圧範囲内における正極上での酸化抑制の点から、(A)を満たしていることが好ましく、電解液への溶解性の点から、(B)を満たしていることが好ましい。式(3−7−2)は、(A)と(B)の両方を満たしていてもよい。
【0168】
(A)について、R11〜R15のうち少なくとも1つが、ハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基であれば、他は水素原子であっても、環を形成していてもよい。電解液への溶解性の観点から、非置換もしくはハロゲン置換の炭化水素基の炭素数は1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、更に好ましくは1以上3以下、更により好ましくは1又は2、最も好ましくは1である。
(B)について、R11〜R17の炭素数の合計は3以上20以下であれば、R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成していてもよい。R11〜R17のうち少なくとも2つが一緒になって環を形成している場合、炭素数の合計の算出にあたっては、環を形成する炭素のうち、R11〜R17に相当しない炭素(R11〜R15については、これらが結合しているベンゼン環を構成する炭素、R16及びR17については、ベンジル位の炭素)はカウントしないこととする。炭素数の合計は、電解液への溶解度の点から、好ましくは3以上14以下であり、より好ましくは3以上10以下である。例えば、R17がメチル基で、R11とR16が一緒になって環を形成している化合物として1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、2,3−ジヒドロ1,3−ジメチル−1−(2−メチル−2−フェニルプロピル)−3−フェニル−1H−インダン等が挙げられるが、これは(B)の条件を満たす。
【0169】
式(3−7−2)で表される芳香族化合物としては、以下が挙げられる。
16及びR17が、独立して、炭素数1以上20以下の炭化水素基であり(ただし、R16及びR17の合計は炭素数3以上20以下である)、R11〜R15が水素である化合物((B)を満たす)。
2,2−ジフェニルブタン、3,3−ジフェニルペンタン、3,3−ジフェニルヘキサン、4,4−ジフェニルヘプタン、5,5−ジフェニルオクタン、6,6−ジフェニルノナン、1,1−ジフェニル−1,1−ジtert−ブチル−メタン。
【化50】
【0170】
16及びR17が一緒になって環を形成しており、R11〜R15が水素である化合物((B)を満たす)。
1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニルシクロペンタン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン。
下記の化合物であってもよい(上記例示の化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【化51】
【0171】
11〜R15のうち少なくとも1つがハロゲン又は非置換もしくはハロゲン置換の炭素数1以上20以下の炭化水素基である化合物((A)を満たす)。
1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン。
下記の化合物であってもよい(上記例示の化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【化52】
【0172】
17が炭素数1以上20以下の炭化水素基(例えば、炭素数1以上20以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基)であり、R11とR16が一緒になって環を形成している化合物((B)を満たす)。
1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン。
下記の化合物であってもよい(上記例示の化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【化53】
【0173】
中でも、初期の負極上での還元性の観点から好ましいのは、2,2−ジフェニルブタン、3,3−ジフェニルペンタン、1,1−ジフェニル−1,1−ジtert−ブチル−メタン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニルシクロペンタン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
【0174】
下記の化合物も好ましいものとして挙げられる(上記好ましい化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【化54】
【0175】
より好ましいのは、2,2−ジフェニルブタン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
【0176】
下記の化合物もより好ましいものとして挙げられる(上記より好ましい化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【化55】
【0177】
更に好ましいのは1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
【0178】
下記の化合物も更に好ましいものとして挙げられる(上記更に好ましい化合物と重複する場合があるが、構造式で示すこととする)。
【化56】
【0179】
特に好ましいのは1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンであり、下記の構造式で表される。
【化57】
【0180】
最も好ましくは1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン化合物であり、以下の構造式で表される。
【化58】
【0181】
式(3−7−2)で表される芳香族化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。非水系電解液全量(100質量%)中、式(3−7−2)で表される芳香族化合物の量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以
下である。上記範囲内にあることにより、効果が発現しやすく、また、電池の抵抗増大を防ぐことができる。
【0182】
1−2−6.イソシアヌル酸骨格を有する化合物
【化59】

式(D)中、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の有機基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは炭素−炭素不飽和結合あるいはシアノ基を有する。好ましくは、式(D)中、R〜Rが、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基である。より好ましくは、式(D)中、R〜Rのうち少なくとも1つが炭素‐炭素不飽和結合を有する有機基である。
【0183】
ここで、有機基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる原子で構成された官能基のことを表す。
【0184】
置換基を有してもよい有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アクリル基、メタクリル基、ビニルスルホニル基、ビニルスルホ基等が挙げられる。
ここでいう置換基は、ハロゲン原子、アルキレン基等が挙げられる。また、アルキレン基の一部に不飽和結合などが含まれていてもよい。ハロゲン原子の中でも、フッ素原子が好ましい。
【0185】
置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基等が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、1−プロピニル基等が挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0186】
中でも好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、アリール基、シアノ基、ビニルスルホニル基、ビニルスルホ基が挙げられる。
さらに好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、シアノ基が挙げられる。
特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、シアノ基が挙げられる。
最も好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アリル基、メタリル基が挙げられる。とりわけ非置換のアリル基又はメタリル基が好ましい。被膜形成能の観点からアリル基が好ましい。
【0187】
本発明の実施形態で用いる一般式(D)で表される化合物の具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
【化60】
【0188】
【化61】
【0189】
【化62】
【0190】
好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。
【化63】
【0191】
【化64】
【0192】
さらに好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。
【化65】
【0193】
特に好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。
【化66】
【0194】
最も好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。
【化67】
【0195】
また、これら最も好ましい化合物の中でも、被膜形成能の観点から以下の構造の化合物が好ましい。
【化68】
【0196】
本発明の実施形態に係る非水系電解液全体に対する一般式(D)で表される化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下の濃度で含有させる。
上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、サイクル特性、高温保存特性、電池膨れ等の効果がより向上する。
【0197】
1−3.電解質
電解質は特に制限なく、電解質として公知のものを任意に用いることができる。リチウム二次電池の場合は、通常リチウム塩が用いられる。具体的には、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;LiWOF等のタングステン酸リチウム類;HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウムイミド塩類;LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレート等のリチウム(マロナト)ボレート塩類;リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート等のリチウム(マロナト)ホスフェート塩類;その他、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類;リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラトホスフェート塩類;等が挙げられる。
【0198】
中でも、LiPF、LiSbF、LiTaF、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO
、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0199】
非水系電解液中のこれらの電解質の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、その含有量は特に制限されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、更に好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更に好ましくは2.0mol/L以下である。この範囲であれば、荷電粒子であるリチウムが少なすぎず、また粘度を適切な範囲とすることができるため、良好な電気伝導度を確保しやすくなる。
【0200】
2種以上の電解質を併用する場合、少なくとも1種は、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩であることも好まく、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩であることもより好ましい。これらのうちリチウム塩が好ましい。モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩は、0.01質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上であり、また、20質量%以下であることができ、好ましくは10質量%以下である。
【0201】
電解質として、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる1種以上と、それ以外の塩の1種以上を含むことが好ましい。それ以外の塩としては、上記で例示したリチウム塩が挙げられ、特に、LiPF、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(Cが好ましく、LiPFが更に好ましい。それ以外の塩は、電解液の電導度と粘度の適切なバランスを確保する観点から0.01質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上であり、また、20質量%以下であることができ、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0202】
電解質の合計量は、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、更に好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更に好ましくは2.0mol/L以下、特に好ましくは1.5mol/L以下である。
【0203】
1−3−1.モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、それぞれ、分子内に少なくとも1つのモノフルオロリン酸又はジフルオロリン酸構造を有する塩であれば、特に制限されない。本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される化合物とモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上とを併用することにより、電池
の初期充放電後の体積変化を著しく抑制し、過充電時安全性の一層の向上を図ることができる。また、併用によって、電池の初期不可逆容量を小さくし、放電保存特性を向上させることもできる。これと同時に、電池は優れた高温サイクル特性を有することができる。
【0204】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、NR121122123124(式中、R121〜R124は、独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。上記アンモニウムのR121〜R124で表わされる炭素数1以上12以下の有機基は特に制限されず、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR121〜R124は、独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0205】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが好ましく、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0206】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上の量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、5質量%以下であることができ、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲内であると、初期不可逆容量向上の効果が顕著に発現される。
【0207】
一般式(A)で表される化合物とモノフルオロリン酸塩及び塩から選ばれる1種以上(2種以上の場合は合計量)の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、他の電池特性を低下せずに目的である特性を向上させることができる。
【0208】
1−3−2.ホウ酸塩
ホウ酸塩は、分子内にホウ素原子を少なくとも1つ有している塩であれば、特に制限されない。ただしシュウ酸塩に該当するものは、1−3−2.ホウ酸塩ではなく、後述する1−3−3.シュウ酸塩に包含されるものとする。本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される化合物とホウ酸塩とを併用することによって、初期特性及び保存特性も改善され、更に、過充電時安全性に優れた電池が得られる。
【0209】
ホウ酸塩におけるカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、バリウム等が挙げられ、中でもリチウムが好ましい。
【0210】
ホウ酸塩としては、リチウム塩が好ましく、含ホウ酸リチウム塩も好適に使用することができる。例えばLiBF、LiBFCF、LiBF、LiBF
、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等が挙げられる。中でも、LiBFが初期充放電効率と高温サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。
ホウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0211】
ホウ酸塩の量(2種以上の場合は合計量)は、0.05質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10.0質量%以下であることができ、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以下である。この範囲内であると、電池負極の副反応が抑制され抵抗を上昇させにくい。
【0212】
一般式(A)で表される化合物とホウ酸塩の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池中での正負極上副反応を抑制し、電池の抵抗を上昇させにくい。
また、電解質としてホウ酸塩とLiPFを用いた場合、非水電解液中のLiPFのモル含有量に対するホウ酸塩のモル含有量の比は、0.001以上12以下が好ましく、0.01〜1.1がより好ましく、0.01〜1.0が更に好ましく、0.01〜0.7がより好ましい。この範囲であると、電池中での正負極上副反応を抑制し、電池の充放電効率が向上する。
【0213】
1−3−3.シュウ酸塩
シュウ酸塩は、分子内に少なくとも1つのシュウ酸構造を有する化合物であれば、特に制限されない。本発明の電解液において、一般式(A)で表される化合物とシュウ酸塩とを併用することによって、初期特性及び保存特性も改善された電池が得られる。
【0214】
シュウ酸塩としては、式(9)で表される金属塩が好ましい。この塩は、オキサラト錯体をアニオンとする塩である。
【化69】

(式中、Mは、周期表における1族、2族及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる元素であり、Mは、遷移金属、周期表の13族、14族及び15族からなる群より選ばれる元素であり、R91は、ハロゲン、炭素数1以上11以下のアルキル基及び炭素数1以上11以下のハロゲン置換アルキル基からなる群より選ばれる基であり、a及びbは正の整数であり、cは0又は正の整数であり、dは1〜3の整数である。)
【0215】
は、本発明の電解液をリチウム二次電池に用いたときの電池特性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。
は、リチウム二次電池に用いる場合の電気化学的安定性の点で、ホウ素及びリンが特に好ましい。
91としては、フッ素、塩素、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、ペンタフルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ter
t−ブチル基等が挙げられ、フッ素、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0216】
式(9)で表される金属塩としては、以下が挙げられる。
リチウムジフルオロオキサラトボレート及びリチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラトホスフェート塩類;
これらのうち、リチウムビス(オキサラト)ボレート及びリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートが好ましく、リチウムビス(オキサラト)ボレートがより好ましい。
シュウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0217】
シュウ酸塩の量(2種以上の場合は合計量)は、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質
量%以下である。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0218】
一般式(A)で表される化合物とシュウ酸塩の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池の正負極上での副反応をバランスよく抑制し、電池特性を向上させやすい。
【0219】
1−3−4.フルオロスルホン酸塩
フルオロスルホン酸塩としては、分子内に少なくとも1つのフルオロスルホン酸構造を有している塩であれば、特に制限されない。本発明の実施形態に係る電解液において、一般式(A)で表される化合物とフルオロスルホン酸塩とを併用することにより、初期特性及び保存特性も改善された電池が得られる。
【0220】
フルオロスルホン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び、NR131132133134(式中、R131〜R134は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。R131〜R134に関する例示及び好ましい例については、上記1−3−2におけるR131〜R134が適用される。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0221】
フルオロスルホン酸塩としては、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスルホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホン酸構造を有するイミド塩もフルオロスルホン酸塩として使用することができる。
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0222】
フルオロスルホン酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、0.05質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に
好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲内であると、電池中での副反応が少なく、抵抗を上昇させにくい。
【0223】
一般式(A)で表される化合物とフルオロスルホン酸塩の質量比は、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。この範囲であると、電池中での副反応を適切に抑制し、高温耐久特性を低下させにくい。
【0224】
1−4.非水溶媒
本発明の実施形態に係る電解液で使用する非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能である。これらを例示すると、フッ素原子を有さない環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル化合物、スルホン系化合物等が挙げられる。
【0225】
<フッ素原子を有さない環状カーボネート>
フッ素原子を有さない環状カーボネートとしては、炭素数2〜4のアルキレン基を有する環状カーボネートが挙げられる。
炭素数2〜4のアルキレン基を有する、フッ素原子を有さない環状カーボネートの具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0226】
フッ素原子を有さない環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フッ素原子を有さない環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0227】
<鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3〜7の鎖状カーボネートが好ましく、炭素数3〜7のジアルキルカーボネートがより好ましい。
鎖状カーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0228】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」
と記載する場合がある)も好適に用いることができる。
【0229】
フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
【0230】
フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0231】
フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0232】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。また、鎖状カーボネートは、非水溶媒100体積%中、90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下であることが好ましい。このように上限を設定することにより、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0233】
<環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、炭素原子数が3〜12のものが好ましい。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0234】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電
気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0235】
<エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、一部の水素がフッ素にて置換されていても良い炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、
ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタ
ンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0236】
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0237】
エーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
エーテル系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、また、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。
【0238】
この範囲であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0239】
<スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3〜6の環状スルホン、及び炭素数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
【0240】
炭素数3〜6の環状スルホンとしては、
モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;
ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。
【0241】
中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と記載する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0242】
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等が、イオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0243】
また、炭素数2〜6の鎖状スルホンとしては、
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
【0244】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフ
ルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0245】
スルホン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは0.3体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。
この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0246】
<フッ素原子を有する環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合>
フッ素原子を有する環状カーボネートは、非水系電解液において、助剤としても用いることができ、非水溶媒としても用いることができる。
本発明において、フッ素原子を有する環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合は、フッ素原子を有する環状カーボネート以外の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒の1種をフッ素原子を有する環状カーボネートと組み合わせて用いてもよく、2種以上をフッ素原子を有する環状カーボネートと組み合わせて併用しても良い。
【0247】
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの一つとして、フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは60体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは90体積%以上であり、かつフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの割合が3体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また通常60体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下、特に好ましくは30体積%以下、最も好ましくは20体積%以下である。
【0248】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
例えば、フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0249】
フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネ
ート、モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったモノフルオロエチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、対称鎖状カーボネート類がジメチルカーボネートであることが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素数1〜2が好ましい。
【0250】
これらのフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にフッ素原子を有さない環状カーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートとの合計が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、かつフッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの割合が1体積%以上、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、特に好ましくは20体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下、特に好ましくは60体積%以下のものである。
【0251】
この濃度範囲でフッ素原子を有さない環状カーボネートを含有すると、負極に安定な保護被膜を形成しつつ、電解液の電気伝導度を維持できる。
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチル
カーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0252】
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものがさらに好ましく、特に、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート
といったモノフルオロエチレンカーボネートと非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素数1〜2が好ましい。
【0253】
非水溶媒中にエチルメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるエチルメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上することがある。
上記フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せにおいては、上記フッ素原子を有さない環状カーボネート以外にも、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、含フッ素芳香族溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
【0254】
<フッ素原子を有する環状カーボネートを助剤として用いる場合>
本発明において、フッ素原子を有する環状カーボネートを助剤として用いる場合は、フッ素原子を有する環状カーボネート以外の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの一つとして、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。
【0255】
中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、かつ環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有さない環状カーボネートの割合が好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、特に好まし
くは25体積%以下である。
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
【0256】
例えば、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート等が挙げられる。
【0257】
フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものがさらに好ましく、特に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートといったものがサイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。
【0258】
中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素数1〜2が好ましい。
非水溶媒中にジメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下、特に好ましくは、70体積%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上することがある。
【0259】
中でも、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有し、ジメチルカーボネートの含有割合をエチルメチルカーボネートの含有割合よりも多くすることにより、電解液の電気伝導度を維持できながら、高温保存後の電池特性が向上することがあり好ましい。
全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電解液の電気伝導度の向上と保存後の電池特性を向上させる点で、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。上記体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電池特性を向上させる点で、40以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、8以下が特に好ましい。
【0260】
上記フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せにおいては、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、芳香族含フッ素溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
なお、本明細書において、非水溶媒の体積は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
【0261】
1−5.助剤
本発明の実施形態に係る非水系電解液電池において、一般式(A)で表される化合物、並びに、必要に応じて添加する炭素‐炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、ニトリル化合物、イソシアネート化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物、フルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、環状スルホン酸エステル以外に、目的に応じて適宜助剤を用いてもよい。助剤としては、以下に示される酸無水物化合物、フッ素化不飽和環状カーボネート、三重結合を有する化合物、その他の助剤、等が挙げられる。
【0262】
1−5−1.酸無水物化合物
酸無水物化合物としては、カルボン酸無水物、硫酸無水物、硝酸無水物、スルホン酸無水物、リン酸無水物、亜リン酸無水物であることや、環状酸無水物、鎖状酸無水物であることなどの限定を受けず、酸無水物化合物であるならば特にその構造は限定されないものとする。
【0263】
酸無水物化合物の具体例としては、例えば、
無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2、3−ジメチルマレイン酸無水物、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水フェニルマレイン酸、2、3−ジフェニルマレイン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、2−フェニルグルタル酸無水物、アリルコハク酸無水物、2−ブテン−11−イルコハク酸無水物、(2-メチル-2-プ
ロペニル)コハク酸無水物、テトラフルオロコハク酸無水物、ジアセチル−酒石酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、クロトン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、無水酢酸等が挙げられる。
【0264】
これらのうち、
無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水フェニルマレイン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、アリルコハク無水物、無水酢酸、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、メタンスルホン酸無水物が特に好ましい。
酸無水物化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0265】
本発明の実施形態に係る非水系電解液全体に対する酸無水物化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下の濃度で含有させる。
上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、サイクル特性、高温保存特性等の効
果がより向上する。
【0266】
1−5−2.フッ素化不飽和環状カーボネート
フッ素化環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)を用いることも好ましい。フッ素化不飽和環状カーボネートが有するフッ素原子の数は1以上であれば、特に制限されない。中でもフッ素原子が通常6以下、好ましくは4以下であり、1又は2のものが最も好ましい。
【0267】
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0268】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、
4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0269】
中でも、好ましいフッ素化不飽和環状カーボネートとしては、
4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0270】
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上であり、また、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、効果が発現されやすい。
フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは100以上であり、また
、より好ましくは200以下である。
【0271】
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、通常、非水系電解液100質量%中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
この範囲内であれば、非水系電解液電池は十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0272】
1−5−3.三重結合を有する化合物
三重結合を有する化合物としては、分子内に三重結合を1つ以上有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
三重結合を有する化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキシン、2−ヘキシン、3−ヘキシン、1−ヘプチン、2−ヘプチン、3−ヘプチン、1−オクチン、2−オクチン、3−オクチン、4−オクチン、1−ノニン、2−ノニン、3−ノニン、4−ノニン、1−ドデシン、2−ドデシン、3−ドデシン、4−ドデシン、5−ドデシン、フェニルアセチレン、1−フェニル−1−プロピン、1−フェニル−2−プロピン、1−フェニル−1−ブチン、4−フェニル−1−ブチン、4−フェニル−1−ブチン、1−フェニル−1−ペンチン、5−フェニル−1−ペンチン、1−フェニル−1−ヘキシン、6−フェニル−1−ヘキシン、ジフェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、ジシクロヘキシルアセチレン等の炭化水素化合物;
【0273】
2−プロピニルメチルカーボネート、2−プロピニルエチルカーボネート、2−プロピニルプロピルカーボネート、2−プロピニルブチルカーボネート、2−プロピニルフェニルカーボネート、2−プロピニルシクロヘキシルカーボネート、ジ−2−プロピニルカーボネート、1−メチル−2−プロピニルメチルカーボネート、1、1−ジメチル−2−プロピニルメチルカーボネート、2−ブチニルメチルカーボネート、3−ブチニルメチルカーボネート、2−ペンチニルメチルカーボネート、3−ペンチニルメチルカーボネート、4−ペンチニルメチルカーボネート等のモノカーボネート;
2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジエチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジプロピルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジブチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジフェニルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキシルジカーボネート等のジカーボネート;
【0274】
酢酸2−プロピニル、プロピオン酸2−プロピニル、酪酸2−プロピニル、安息香酸2−プロピニル、シクロヘキシルカルボン酸2−プロピニル、酢酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、プロピオン酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、酪酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、安息香酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、シクロヘキシルカルボン酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、酢酸2−ブチニル、酢酸3−ブチニル、酢酸2−ペンチニル、酢酸3−ペンチニル、酢酸4−ペンチニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ビニル、アクリル酸2−プロペニル、アクリル酸2−ブテニル、アクリル酸3−ブテニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸2−プロペニル、メタクリル酸2−ブテニル、メタクリル酸3−ブテニル、2−プロピン酸メチル、2−プロピン酸エ
チル、2−プロピン酸プロピル、2−プロピン酸ビニル、2−プロピン酸2−プロペニル、2−プロピン酸2−ブテニル、2−プロピン酸3−ブテニル、2−ブチン酸メチル、2−ブチン酸エチル、2−ブチン酸プロピル、2−ブチン酸ビニル、2−ブチン酸2−プロペニル、2−ブチン酸2−ブテニル、2−ブチン酸3−ブテニル、3−ブチン酸メチル、3−ブチン酸エチル、3−ブチン酸プロピル、3−ブチン酸ビニル、3−ブチン酸2−プロペニル、3−ブチン酸2−ブテニル、3−ブチン酸3−ブテニル、2−ペンチン酸メチル、2−ペンチン酸エチル、2−ペンチン酸プロピル、2−ペンチン酸ビニル、2−ペンチン酸2−プロペニル、2−ペンチン酸2−ブテニル、2−ペンチン酸3−ブテニル、3−ペンチン酸メチル、3−ペンチン酸エチル、3−ペンチン酸プロピル、3−ペンチン酸ビニル、3−ペンチン酸2−プロペニル、3−ペンチン酸2−ブテニル、3−ペンチン酸3−ブテニル、4−ペンチン酸メチル、4−ペンチン酸エチル、4−ペンチン酸プロピル、4−ペンチン酸ビニル、4−ペンチン酸2−プロペニル、4−ペンチン酸2−ブテニル、4−ペンチン酸3−ブテニル等のモノカルボン酸エステル;
2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテート、2−ブチン−1,4−ジオール ジプロピオネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジブチレート、2−ブチン−1,4−ジオール ジベンゾエート、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキサンカルボキシレート等のジカルボン酸エステル;
【0275】
シュウ酸メチル 2−プロピニル、シュウ酸エチル 2−プロピニル、シュウ酸プロピル 2−プロピニル、シュウ酸2−プロピニル ビニル、シュウ酸アリル 2−プロピニル、シュウ酸ジ−2−プロピニル、シュウ酸2−ブチニル メチル、シュウ酸2−ブチニル エチル、シュウ酸2−ブチニルプロピル、シュウ酸2−ブチニル ビニル、シュウ酸アリル 2−ブチニル、シュウ酸 ジ−2−ブチニル、シュウ酸3−ブチニル メチル、シュウ酸3−ブチニル エチル、シュウ酸3−ブチニルプロピル、シュウ酸3−ブチニル
ビニル、シュウ酸アリル 3−ブチニル、シュウ酸ジ−3−ブチニル等のシュウ酸ジエステル;
【0276】
メチル(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジビニル(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロペニル)2(−プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロピニル)(2−プロペニル)ホスフィンオキシド、ジ(3−ブテニル)(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、及びジ(2−プロピニル)(3−ブテニル)ホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;
【0277】
メチル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル、2−ブテニル(メチル)ホスフィン酸2−プロピニル、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル、ジ(3−ブテニル)ホスフィン酸2−プロピニル、メチル(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、2−ブテニル(メチル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、及びジ(3−ブテニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、メチル(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル、メチル(2−プロピニル)ホスフィン酸3−ブテニル、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸3−ブテニル、2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロペニル、及び2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸3−ブテニル等のホスフィン酸エステル;
【0278】
2−プロペニルホスホン酸メチル 2−プロピニル、2−ブテニルホスホン酸メチル(2−プロピニル)、2−プロペニルホスホン酸(2−プロピニル)(2−プロペニル)、3−ブテニルホスホン酸(3−ブテニル)(2−プロピニル)、2−プロペニルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)、2−ブテニルホスホン酸(1,1
−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)、2−プロペニルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(2−プロペニル)、及び3−ブテニルホスホン酸(3−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)、メチルホスホン酸(2−プロピニル)(2−プロペニル)、メチルホスホン酸(3−ブテニル)(2−プロピニル)、メチルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(2−プロペニル)、メチルホスホン酸(3−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)、エチルホスホン酸(2−プロピニル)(2−プロペニル)、エチルホスホン酸(3−ブテニル)(2−プロピニル)、エチルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(2−プロペニル)、及びエチルホスホン酸(3−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)等のホスホン酸エステル;
【0279】
リン酸(メチル)(2−プロペニル)(2−プロピニル)、リン酸(エチル)(2−プロペニル)(2−プロピニル)、リン酸(2−ブテニル)(メチル)(2−プロピニル)、リン酸(2−ブテニル)(エチル)(2−プロピニル)、リン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)(2−プロペニル)、リン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(エチル)(2−プロペニル)、リン酸(2−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)、及びリン酸(2−ブテニル)(エチル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)等のリン酸エステル;
これらのうち、アルキニルオキシ基を有する化合物は、電解液中でより安定に負極被膜を形成するため好ましい。
【0280】
さらに、2−プロピニルメチルカーボネート、ジ−2−プロピニルカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネート、酢酸2−プロピニル、2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテート、シュウ酸メチル 2−プロピニル、シュウ酸ジ−2−プロピニル等の化合物が保存特性向上の点から特に好ましい。
【0281】
上記三重結合を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する三重結合を有する化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0282】
1−5−4.その他の助剤
その他の助剤としては、上記助剤以外の公知の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル、1,2−ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン
等の含硫黄化合物;
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキ
サゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド
等の含燐化合物;
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物;
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0283】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。
【0284】
以上、上述の非水系電解液は、本発明に記載の非水系電解液電池の内部に存在するものも含まれる。
具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調整し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合や、本発明の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合、更には、本発明の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液電池内で発生させて、本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
【0285】
2.電池構成
本発明の実施形態に係る非水系電解液電池は、非水系電解液電池の中でも二次電池用、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の実施形態に係る非水系電解液を用いた非水系電解液電池について説明する。
本発明の実施形態に係る非水系電解液電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能な負極及び正極と、上記の本発明の非水系電解液とを備える。
【0286】
2−1.負極
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0287】
<負極活物質>
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
炭素質材料としては、(1)天然黒鉛、(2)人造黒鉛、(3)非晶質炭素、(4)炭素被覆黒鉛、(5)黒鉛被覆黒鉛、(6)樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。
【0288】
(1)天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛及び/又はこれらの黒鉛を原料に球形化や緻密化等の処理を施した黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性や充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛が特に好ましい。
球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。
具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、球形化処理を行なう装置が好ましい。また、炭素材を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。
【0289】
例えば前述の装置を用いて球形化処理する場合は、回転するローターの周速度を30〜100m/秒にするのが好ましく、40〜100m/秒にするのがより好ましく、50〜100m/秒にするのが更に好ましい。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0290】
(2)人造黒鉛としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサイルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の有機化合物を、通常2500℃以上、通常3200℃以下の範囲の温度で黒鉛化し、必要に応じて粉砕及び/又は分級して製造されたものが挙げられる。この際、ケイ素含有化合物やホウ素含有化合物等を黒鉛化触媒として用いることもできる。また、ピッチの熱処理過程で分離したメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化して得た人造黒鉛が挙げられる。更に一次粒子からなる造粒粒子の人造黒鉛も挙げられる。例えば、メソカーボンマイクロビーズや、コークス等の黒鉛化可能な炭素質材料粉体とタール、ピッチ等の黒鉛化可能なバインダと黒鉛化触媒を混合し、黒鉛化し、必要に応じて粉砕することで得られる、扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した黒鉛粒子が挙げられる。
【0291】
(3)非晶質炭素としては、タール、ピッチ等の易黒鉛化性炭素前駆体を原料に用い、黒鉛化しない温度領域(400〜2200℃の範囲)で1回以上熱処理した非晶質炭素粒子や、樹脂等の難黒鉛化性炭素前駆体を原料に用いて熱処理した非晶質炭素粒子が挙げられる。
【0292】
(4)炭素被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の有機化合物である炭素前駆体を混合し、400〜2300℃の範囲で1回以上熱処理し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、非晶質炭素が核黒鉛を被覆している炭素黒鉛複合体が挙げられる。複合の形態は、表面全体又は一部を被覆しても、複数の一次粒子を前記炭素前駆体起源の炭素をバインダーとして複合させたものであってもよい。また、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛にベンゼン、トルエン、メタン、プロパン、芳香族系の揮発分等の炭化水素系ガス等を高温で反応させ、黒鉛表面に炭素を堆積(CVD)させることでも炭素黒鉛複合体を得ることもできる。
【0293】
(5)黒鉛被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の易黒鉛化性の有機化合物の炭素前駆体を混合し、2400〜3200℃程度の範囲で1回以上熱処理し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、黒鉛化物が核黒鉛の表面全体又は一部を被覆している黒鉛被覆黒鉛が挙げられる。
【0294】
(6)樹脂被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、樹脂等を混合、400℃未満の温度で乾燥し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、樹脂等が核黒鉛を被覆している樹脂被覆黒鉛が挙げられる。
【0295】
また、(1)〜(6)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記(2)〜(5)に用いられるタール、ピッチや樹脂等の有機化合物としては、石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機化合物等が挙げられる。また、原料有機化合物は混合時の粘度を調整するため、低分子有機溶媒に溶解させて用いても良い。
また、核黒鉛の原料となる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛としては、球形化処理を施した天然黒鉛が好ましい。
【0296】
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズの単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0297】
<炭素質材料の物性>
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335nm以上であり、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることがさらに好ましい。
【0298】
(体積基準平均粒径)
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0299】
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0300】
(ラマンR値)
炭素質材料のラマンR値は、レーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、
通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0301】
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。
一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0302】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光(若しくは半導体レーザー光)を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明の炭素質材料のラマンR値と定義する。
【0303】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・レーザー波長 :Arイオンレーザー514.5nm(半導体レーザー532nm)
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値 :バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0304】
(BET比表面積)
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上がさらに好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下がさらに好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
【0305】
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。
【0306】
(円形度)
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充
填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0307】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。
【0308】
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0309】
(タップ密度)
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
【0310】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。
【0311】
(配向比)
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。
【0312】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0313】
(アスペクト比(粉))
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0314】
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
【0315】
(被覆率)
本発明に用いられる負極活物質は、炭素質物又は黒鉛質物で被覆されていでもよい。この中でも非晶質炭素質物で被覆されていることがリチウムイオンの受入性の点から好ましく、この被覆率は、通常0.5%以上30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは、2%以上20%以下である。この含有率が大きすぎると負極活物質の非晶質炭素部分が多くなり、電池を組んだ際の可逆容量が小さくなる傾向がある。含有率が小さすぎると、核となる黒鉛粒子に対して非晶質炭素部位が均一にコートされないとともに強固な造粒がなされず、焼成後に粉砕した際、粒径が小さくなりすぎる傾向がある。
なお、最終的に得られる負極活物質の有機化合物由来の炭化物の含有率(被覆率)は、負極活物質の量と、有機化合物の量及びJIS K 2270に準拠したミクロ法により測定される残炭率により、下記式で算出することができる。
式:有機化合物由来の炭化物の被覆率(%)=(有機化合物の質量×残炭率×100)/{負極活物質の質量+(有機化合物の質量×残炭率)}
【0316】
(内部間隙率)
負極活物質の内部間隙率は通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましく5%以上、更に好ましくは7%以上である。また通常50%未満、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。この内部間隙率が小さすぎると粒子内の液量が少なくなり、充放電特性が悪化する傾向があり、内部間隙率が大きすぎると、電極にした場合に粒子間間隙が少なく、電解液の拡散が不十分になる傾向がある。また、この空隙には、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、空隙中に存在又は空隙がこられにより満たされていてもよい。
【0317】
<Liと合金化可能な金属粒子>
金属粒子が、Liと合金化可能な金属粒子であることを確認するための手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察及び元素分析、蛍光X線による元素分析等が挙げられる。
Liと合金化可能な金属粒子は、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、金属粒子は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、As、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物であることが好ましい。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良く、金属粒子が、2種以上の金属元素により形成された合金粒子であってもよい。これらの中でも、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその金属化合物が好ましい。
金属化合物として、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良い。
【0318】
Liと合金可能な金属粒子の中でも、Si又はSi金属化合物が好ましい。Si金属化合物は、Si金属酸化物であることが好ましい。Si又はSi金属化合物は、高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi金属化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiOx,SiNx,SiCx、SiZxOy(Z=C、N)等が挙げられる。Si化合物は、好ましくは、Si金属酸化物であり、Si金属酸化物は、一般式で表すとSiOxである。この一般式SiOxは、二酸化Si(SiO2)と金属Si(Si)とを原料として得られるが、そのxの値は通常0≦x<2である。SiOxは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、更に非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
Si金属酸化物は、具体的には、SiOxと表されるものであり、xは0≦x<2であり、より好ましくは、0.2以上、1.8以下、更に好ましくは、0.4以上、1.6以下、特に好ましくは、0.6以上、1,4以下であり、X=0がとりわけ好ましい。この範囲であれば、高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
【0319】
・Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)
Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性の得ることができる。平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる。
【0320】
・Liと合金化可能な金属粒子のBET法比表面積
Liと合金化可能な金属粒子のBET法により比表面積は通常0.5〜60m/g、1〜40m/gであることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率及び放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
【0321】
・Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量
Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01〜8質量%、0.05〜5質量%であることが好ましい。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在していてもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量が前記範囲内であると、SiとOの強い結合により、充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
【0322】
<Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質>。
本明細書においてLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子を含有する負極活物質とは、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合物でもよいし、Liと合金化可能な金属粒子が黒鉛粒子の表面又は内部に存在している複合体でもよい。本明細書において、複合体(複合粒子ともいう)とは、特に、Liと合金化可能な金属粒子及び炭素質物が含まれている粒子であれば特に制限はないが、好ましくは、Liと合金化可能な金属粒子及び炭素質物が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化した粒子である。より好ましい形態としては、Liと合金化可能な金属粒子及び炭素質物が、少なくとも複合粒子表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各々の固体成分が粒子内で分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、炭素質物が存在しているような形態である。更に具体的な好ましい形態は、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子から少なくとも構成される
複合材であって、黒鉛粒子、好ましくは、天然黒鉛が曲面を有する折り畳まれた構造を持つ粒子内に、該曲面を有する折り畳まれた構造内の間隙にLiと合金化可能な金属粒子が存在していることを特徴とする負極活物質である。また、間隙は空隙であってもよいし、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、間隙中に存在していてもよい。
【0323】
・Liと合金化可能な金属粒子の含有割合
Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属粒子の含有割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲であると、十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
【0324】
合金系材料負極は、公知のいずれの方法を用いて製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0325】
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
【0326】
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
【0327】
また、負極集電体の質量を低減させて電池の質量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、質量も自在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
【0328】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下であることが好ましい。負極活物質の含
有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に導電剤の含有量が不足することにより、負極としての電気伝導性を確保しづらい傾向にある。なお、二以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0329】
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、特に5質量%以上、また、通常30質量%以下、特に25質量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となる。なお、二以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0330】
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、特に1質量部以上、また、通常10質量部以下、特に8質量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となる。なお、二以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0331】
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0332】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電剤や結着剤、増粘剤を混合して、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の有機溶媒を、水に対して30質量%以下の範囲で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0333】
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【0334】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
【0335】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0336】
2−2.正極
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
〈リチウム遷移金属系化合物〉
リチウム遷移金属系化合物とは、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。硫化物としては、TiSやMoS等の二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MeMo(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物等が挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn、LiCoMnO、LiNi0.5Mn1.5、LiCoVO等が挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMeO(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表される。具体的にはLiCoO、LiNiO、LiNi1−xCo、LiNi1−x−yCoMn、LiNi0.5Mn0.5、Li1.2Cr0.4Mn0.4、Li1.2Cr0.4Ti0.4、LiMnO等が挙げられる。
【0337】
〈組成〉
また、リチウム含有遷移金属化合物は、例えば、下記組成式(F)又は(G)で示されるリチウム遷移金属系化合物であることが挙げられる。
1)下記組成式(F)で示されるリチウム遷移金属系化合物である場合
Li1+xMO …(F)
ただし、xは通常0以上、0.5以下である。Mは、Ni及びMn、或いは、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、5以下である。Ni/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。Co/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。なお、xで表されるLiのリッチ分は、遷移金属サイトMに置換してい
る場合もある。
【0338】
なお、上記組成式(F)においては、酸素量の原子比は便宜上2と記載しているが、多少の不定比性があってもよい。また、上記組成式中のxは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のxが−0.65以上、1以下に測定されることがある。
【0339】
また、リチウム遷移金属系化合物は、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものが電池特性に優れる。
さらに、組成式(F)で示されるリチウム遷移金属系化合物は、以下一般式(F’)のとおり、213層と呼ばれるLiMOとの固溶体であってもよい。
αLiMO・(1−α)LiM’O・・・(F’)
一般式中、αは、0<α<1を満たす数である。
【0340】
Mは、平均酸化数が4+である少なくとも1種の金属元素であり、具体的には、Mn、Zr、Ti、Ru、Re及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。
M’は、平均酸化数が3+である少なくとも1種の金属元素であり、好ましくは、V、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。
【0341】
2)下記一般式(B)で表されるリチウム遷移金属系化合物である場合。
Li[LiMn2−b−a]O・・・(G)
ただし、Mは、Ni、Cr、Fe、Co、Cu、Zr、Al及びMgから選ばれる遷移金属のうちの少なくとも1種から構成される元素である。
bの値は通常0.4以上、0.6以下である。
bの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度が高い。
【0342】
また、aの値は通常0以上、0.3以下である。また、上記組成式中のaは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のaが−0.65以上、1以下に測定されることがある。
【0343】
aの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度を大きく損なわず、かつ、良好な負荷特性が得られる。
さらに、δの値は通常±0.5の範囲である。
δの値がこの範囲であれば、結晶構造としての安定性が高く、このリチウム遷移金属系化合物を用いて作製した電極を有する電池のサイクル特性や高温保存が良好である。
【0344】
ここでリチウム遷移金属系化合物の組成であるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物におけるリチウム組成の化学的な意味について、以下により詳細に説明する。
上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のa,bを求めるには、各遷移金属とリチウムを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で分析して、Li/Ni/Mnの比を求める事で計算される。
【0345】
構造的視点では、aに係るリチウムは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、aに係るリチウムによって、電荷中性の原理によりMとマンガンの平均価数が3.5価より大きくなる。
また、上記リチウム遷移金属系化合物は、フッ素置換されていてもよく、LiMn4−x2xと表記される。
【0346】
〈ブレンド〉
上記の組成のリチウム遷移金属系化合物の具体例としては、例えば、Li1+xNi0.5Mn0.5、Li1+xNi0.85Co0.10Al0.05、Li1+xNi0.33Mn0.33Co0.33、Li1+xNi0.45Mn0.45Co0.1、Li1+xMn1.8Al0.2、Li1+xMn1.5Ni0.5等が挙げられる。これらのリチウム遷移金属系化合物は、1種を単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いても良い。
【0347】
〈異元素導入〉
また、リチウム遷移金属系化合物は、異元素が導入されてもよい。異元素としては、B,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sb,Te,Ba,Ta,Mo,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Bi,N,F,S,Cl,Br,I,As,Ge,P,Pb,Sb,Si及びSnの何れか1種以上の中から選択される。これらの異元素は、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界等に単体もしくは化合物として偏在していてもよい。
【0348】
[リチウム二次電池用正極]
リチウム二次電池用正極は、上述のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体及び結着剤を含有する正極活物質層を集電体上に形成してなるものである。
正極活物質層は、通常、正極材料と結着剤と更に必要に応じて用いられる導電材及び増粘剤等を、乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、或いはこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥することにより作成される。
【0349】
正極集電体の材質としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。また、形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。
【0350】
正極集電体として薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、通常1μm以上、100mm以下の範囲が好適である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する可能性がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる可能性がある。
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタ
ジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0351】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、80質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう可能性がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる可能性がある。
正極活物質層には、通常、導電性を高めるために導電材を含有させる。その種類に特に制限はないが、具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等を挙げることができる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。正極活物質層中の導電材の割合は、通常0.01質量%以上、50質量%以下である。導電材の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
【0352】
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極材料であるリチウム遷移金属系化合物粉体、結着剤、並びに必要に応じて使用される導電材及び増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等を挙げることができる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0353】
正極活物質層中の正極材料としてのリチウム遷移金属系化合物粉体の含有割合は、通常10質量%以上、99.9質量%以下である。正極活物質層中のリチウム遷移金属系化合物粉体の割合が多すぎると正極の強度が不足する傾向にあり、少なすぎると容量の面で不十分となることがある。
また、正極活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。
【0354】
正極のプレス後の電極密度としては、通常、2.2g/cm以上、4.2g/cm以下である。
なお、塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
かくして、リチウム二次電池用正極が調製できる。
【0355】
2−3.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の実施形態に係る非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0356】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0357】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0358】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0359】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0360】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着材を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着材として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0361】
セパレータの非電解液二次電池における特性を、ガーレ値で把握することができる。ガーレ値とは、フィルム厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、100mlの空気が該フィルムを通過するのに必要な秒数で表されるため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚さ方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚さ方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは、フィルム厚さ方向の孔のつながり度合いである。本
発明のセパレータのガーレ値が低ければ、様々な用途に使用することが出来る。例えば非水系リチウム二次電池のセパレータとして使用した場合、ガーレ値が低いということは、リチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。セパレータのガーレ値は、任意ではあるが、好ましくは10〜1000秒/100mlであり、より好ましくは15〜800秒/100mlであり、更に好ましくは20〜500秒/100mlである。ガーレ値が1000秒/100ml以下であれば、実質的には電気抵抗が低く、セパレータとしては好ましい。
【0362】
2−4.電池設計
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0363】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0364】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0365】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0366】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0367】
(外装体)
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0368】
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0369】
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0370】
3.実施例
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
化合物1:2‐ブチル‐2‐(2‐オキソ‐[1,3‐]ジオキソラン‐4‐イル)‐マロン酸ジエチル
【化70】

化合物2:ジエチルマロン酸ジエチル
【化71】

化合物3:マロン酸ジエチル
【化72】
【0371】
<<合成例A(化合物1の合成)>>
Arグローブボックス中、50mlビーカーに1.00g(4.6mmol)のブチルマロン酸ジエチルを仕込み、20mlのジメチルカーボネートに溶解させた。次いで、0.4g(4.6mmol)のビニレンカーボネート、0.7g(4.6mmol)の六フッ化リン酸リチウムを加え、均一溶液とした。ここに、0.32g(46mmol)のリチウム金属を分割添加した。 室温で1週間撹拌した後、反応液をろ過して不溶成分を除
去した。得られたろ液を大気中に取り出し、20mlの水を加えて1時間撹拌した後、酢酸エチルに抽出した(20 ml×3回)。得られた有機溶液を20mlの飽和食塩水で
洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、カラム精製(silica、ヘキサン:酢酸エチル=8:2、Rf=0.2)を行うことで、化合物1を無色液体として0.95g、収率68
%で得た。H−NMR(CDCl, 400MHz):Δ5.09−5.04(m, 1
H)、4.70−4.58(m,2H)、4.29−4.20(m,4H)、2.16−2.01(m,2H)、1.49−1.09(m, 4H)、1.31−1.25(t, 6H)、0.92(t, 3H). MS(CI): m/z 303.1(M+H)H−NMRによる化合物1の分析の結果を図1に示す。
【0372】
<実施例1−1、比較例1−1〜1−3>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)との混合物(体積容量比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPFを1.2モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、ビニレンカーボネート(VC)とモノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)とをそれぞれ2.0質量%ずつ添加した(これを基準電解液1と呼ぶ)。基準電解液1全体に対して、下記表1に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例1−1は基準電解液1そのものである。
【0373】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0374】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末98質量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。負極の比率は、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン−ブタジエンゴム=98:1:1である。
【0375】
[非水系電解液電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0376】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。0.2Cで4.1VまでCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、初期コンディショニングを行った。
【0377】
<非水系電解液二次電池の評価>
[充電保存試験]
初期容量評価後のセルを再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「充電保存ガス量」とした。
下記表1に、比較例1−1の値で規格化した、充電保存ガス量を示す。
【0378】
【表1】
【0379】
表1から明らかなように、本発明の一般式(A)で表される特定化合物を含む非水系電解液を用いた場合、特定化合物を含有していない比較例1‐1よりも充電保存ガスを抑制することが示されている。また、比較例1‐2、1‐3のような一般式(A)で表される特定化合物以外の化合物を添加すると充電保存ガスは増大してしまうことが示されている。これより、非水系電解液に一般式(A)で表される構造を有する化合物を添加した非水系電解液を用いることで充電保存時の電池膨れが改善されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0380】
本発明の非水系電解液によれば、放電保存特性及び高温保存特性がバランスよく改善されるので、非水系電解液二次電池が用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。また、非水系電解液を用いるリチウムイオンキャパシタ等の電解コンデンサにおいても好適に利用できる。
本発明の非水系電解液及び非水系電解液二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。その用途の具体例としては、ラップトップコンピュー
タ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンタ、携帯オーディオプレーヤー、小型ビデオカメラ、医薬、農薬、高分子材料等の中間原料、液晶テレビ、ハンディクリーナー、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。
図1