特許第6851596号(P6851596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 新潟大学の特許一覧

<>
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000002
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000003
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000004
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000005
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000006
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000007
  • 特許6851596-無線基地局および無線基地局の制御方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851596
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】無線基地局および無線基地局の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0452 20170101AFI20210322BHJP
   H04B 7/024 20170101ALI20210322BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20210322BHJP
【FI】
   H04B7/0452
   H04B7/024
   H04J99/00
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-143549(P2017-143549)
(22)【出願日】2017年7月25日
(65)【公開番号】特開2019-29687(P2019-29687A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】溝口 匡人
(72)【発明者】
【氏名】西森 健太郎
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−343757(JP,A)
【文献】 特開2003−244043(JP,A)
【文献】 H.Li(他3名),Low-Complexity Uplink Multiuser Receivers for MIMO System with Massive Hybrid Array,2017 IEEE 85th Vehicular Technology Conference (VTC Spring),2017年 6月 7日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02−7/08
H04J 99/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局の制御方法において、
前記分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有するものとし、
前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相を検出可能な受信信号の位相を検出し、前記事前設定される位相を基準に該位相を検出した受信信号を同位相合成する第1のステップと、
前記アンテナ群ごとに前記同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行う第2のステップと
を有することを特徴とする無線基地局の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線基地局の制御方法において、
前記第1のステップは、前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する
ことを特徴とする無線基地局の制御方法。
【請求項3】
複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局の制御方法において、
前記分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有し、さらに、1の所定の端末局の情報を有するものとし、
前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元を検出可能な受信信号の位相および送信元を検出し、該送信元が前記所定の端末局でない受信信号を除外し、前記事前設定される位相を基準に該位相を検出しかつ該送信元が前記所定の端末局である受信信号を同位相合成する第1のステップと、
前記アンテナ群ごとに前記同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行う第2のステップと
を有することを特徴とする無線基地局の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の無線基地局の制御方法において、
前記第1のステップは、前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する
ことを特徴とする無線基地局の制御方法。
【請求項5】
複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局において、
前記分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有する構成であり、
前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相を検出可能な受信信号の位相を検出し、前記事前設定される位相を基準に該位相を検出した受信信号を同位相合成するアンテナ群制御手段と、
前記アンテナ群ごとに前記同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行うマルチユーザMIMO受信処理手段と
を備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項6】
請求項5に記載の無線基地局において、
前記アンテナ群制御手段は、前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する構成である
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項7】
複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局において、
前記分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有する構成であり、さらに、1の所定の端末局の情報を有する構成とし、
前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元を検出可能な受信信号の位相および送信元を検出し、該送信元が前記所定の端末局でない受信信号を除外し、前記事前設定される位相を基準に該位相を検出しかつ該送信元が前記所定の端末局である受信信号を同位相合成するアンテナ群制御手段と、
前記アンテナ群ごとに前記同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行うマルチユーザMIMO受信処理手段と
を備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項8】
請求項7に記載の無線基地局において、
前記アンテナ群制御手段は、前記アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する構成である
ことを特徴とする無線基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散配置された複数のアンテナ(分散アンテナ)を備え、複数の端末局に対して、同一の周波数チャネルでマルチユーザMIMO伝送を行う無線基地局および無線基地局の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11a規格がある。このシステムは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbit/s のスループットを実現している。
【0003】
さらに、IEEE802.11n規格では、複数のアンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO(Multiple input multiple output)技術や、これまで個別に用いられていた20MHzの周波数チャネルを2つ同時に利用して40MHzの周波数チャネルを利用するチャネルボンディング技術によって高速通信の実現を目指し、最大 600Mbit/s の伝送速度を実現している。
【0004】
さらに、IEEE802.11ac規格では、20MHzの周波数チャネル4つを同時に利用して80MHzの周波数チャネルとして利用するチャネルボンディング技術や、マルチユーザMIMO技術を用いて同一の周波数チャネルで、複数の無線局に対して同時に伝送を行う空間分割多元接続(SDMA:spatial division multiple access)伝送技術が採用され、IEEE802.11n規格より高速かつ高効率な無線通信を実現している。
【0005】
図6は、上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムの概要を示す。
図6において、無線基地局10は、複数の端末局11−1〜11−nから送信される信号を複数のアンテナによって受信し、各アンテナの受信信号に対して受信ウエイト処理を適用することにより、同一の周波数チャネルで複数の端末局11−1〜11−nからの信号を同時受信する。H1 〜Hn は、無線基地局10のアンテナと端末局11−1〜11−nとの間の伝搬チャネル情報である。この伝搬チャネル情報は、無線基地局10の受信ウエイトを算出する際に用いられ、無線基地局10は受信ウエイト処理を適用することにより複数の端末局11−1〜11−nからの信号を同時受信することができる。
【0006】
図7は、上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムの動作例を示す。
図7において、無線基地局10は、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance ;搬送波検知多重アクセス/衝突回避)制御により、ランダムな時間間隔でキャリアセンス(CS)を行い、通信周波数帯域が使用されていないアイドル状態と、通信周波数帯域が使用されているビジー状態のいずれであるのかを判定する。無線基地局10がアイドル状態であることを検出すると、上り回線のマルチユーザMIMO伝送を開始するためのトリガー信号(TRG)を送信する。
【0007】
端末局11−1〜11−nは、無線基地局10から送信されたトリガー信号に従い、送信電力および中心周波数を補正した送信信号(Data#1〜Data#n)を生成し、トリガー信号の受信時刻を基準として同時に無線基地局10宛に送信する。なお、送信信号は、例えば無線通信に適合したフレームに変換されている。また、フレームアグリゲーションが適用されている場合、送信信号は所定数のフレームが連結されたデータユニットとなる。
【0008】
無線基地局10は、複数の端末局11−1〜11−nからの送信信号を複数のアンテナによって受信し、各アンテナの受信信号に対して受信ウエイト処理を適用することにより、同一の周波数チャネルで複数の端末局11−1〜11−nからの信号を同時受信する。
【0009】
さらに、無線基地局10は、各受信信号が正しく受信されたことを通知する応答確認信号(ACK#1〜ACK#n)を各端末局11−1〜11−nに送信する。ここでの無線基地局10からの送信方法は、下り回線のマルチユーザMIMO伝送や下り回線のOFDMA伝送などが利用される。
【0010】
さらに、上記に示す伝送技術に加えて、無線基地局が有する複数のアンテナを分散配置することで、無線基地局のアンテナと端末局のアンテナとの間の距離を縮め、結果的に各端末局からの信号の受信電力を向上させる分散アンテナ技術の検討も進んでいる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Roh, Wonil, and Arogyaswami Paulraj. "MIMO channel capacity for the distributed antenna." Vehicular Technology Conference, 2002. Proceedings. VTC 2002-Fall. 2002 IEEE 56th. Vol. 2. IEEE, 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
背景技術に示した技術の組合せとして、上り回線のマルチユーザMIMO伝送に分散アンテナを適用する構成が考えられるが、その構成法には大きく分けて2種類ある。
【0013】
一つ目は、分散配置される無線基地局の全てのアンテナに対して、アナログ/デジタルコンバータを接続する構成である。この構成の特徴は、無線基地局のアンテナで受信したアナログ信号をデジタル信号に変換することで、すべてのアンテナで受信した信号を利用したデジタル信号処理を行うことができるため、伝送特性が非常に良好となる。しかしながら、デメリットとして、全アンテナ数と同数のアナログ/デジタルコンバータが必要となるため、分散配置されるアンテナ数の増加に応じて、装置費用、計算コスト、消費電力が増加することとなる。
【0014】
二つ目は、分散配置されるアンテナの数がアナログ/デジタルコンバータの数よりも多いことを前提に、スイッチによるアンテナの切替を適応的に行う構成や複数の信号を合成する構成がある。これらの構成の特徴は、一つ目の構成法と比較して、アナログ/デジタルコンバータの総数が少量となることから、装置費用、計算コスト、消費電力が抑えられること、さらに、一つ目の構成法よりは劣るが、より良いアンテナの選択や複数のアンテナの信号合成によって、伝送特性の改善が可能である。
【0015】
しかしながら、アンテナ切替やアンテナ合成を実現する場合には、事前に分散アンテナと各端末局との間の伝搬特性を把握することが必要となる。したがって、事前情報を取得するための制御信号付加が必要となる。さらに、伝搬特性が時間的に変化した場合には、伝送特性の劣化が発生する。
【0016】
本発明は、無線基地局に分散配置された複数のアンテナを備えた上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムにおいて、リアルタイムにアンテナ切替やアンテナ合成を行うことにより伝送特性を改善する無線基地局および無線基地局の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明は、複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局の制御方法において、分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有するものとし、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相を検出可能な受信信号の位相を検出し、事前設定される位相を基準に該位相を検出した受信信号を同位相合成する第1のステップと、アンテナ群ごとに同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行う第2のステップとを有する。
【0018】
第1の発明の無線基地局の制御方法において、第1のステップは、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する。
【0019】
第2の発明は、複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局の制御方法において、分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有し、さらに、1の所定の端末局の情報を有するものとし、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元を検出可能な受信信号の位相および送信元を検出し、該送信元が所定の端末局でない受信信号を除外し、事前設定される位相を基準に該位相を検出しかつ該送信元が所定の端末局である受信信号を同位相合成する第1のステップと、アンテナ群ごとに同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行う第2のステップとを有する。
【0020】
第2の発明の無線基地局の制御方法において、第1のステップは、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する。
【0021】
第3の発明は、複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局において、分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有する構成であり、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相を検出可能な受信信号の位相を検出し、事前設定される位相を基準に該位相を検出した受信信号を同位相合成するアンテナ群制御手段と、アンテナ群ごとに同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行うマルチユーザMIMO受信処理手段とを備える。
【0022】
第3の発明の無線基地局において、アンテナ群制御手段は、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する構成である。
【0023】
第4の発明は、複数の端末局が同一周波数チャネルを用いて同時に送信した信号を、分散配置された複数のアンテナを用いた上り回線のマルチユーザMIMO伝送によって受信する無線基地局において、分散配置された複数のアンテナを所定数のアンテナごとに複数のアンテナ群に分割し、アンテナ群ごとに事前設定される位相情報を有する構成であり、さらに、1の所定の端末局の情報を有する構成とし、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元を検出可能な受信信号の位相および送信元を検出し、該送信元が所定の端末局でない受信信号を除外し事前設定される位相を基準に該位相を検出しかつ該送信元が所定の端末局である受信信号を同位相合成するアンテナ群制御手段と、アンテナ群ごとに同位相合成した信号を用いて上り回線のマルチユーザMIMO伝送の受信を行うマルチユーザMIMO受信処理手段とを備える。
【0024】
第4の発明の無線基地局において、アンテナ群制御手段は、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号のうち、位相および送信元が検出不可の受信信号は、他のアンテナの受信信号と単純に合成する構成である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、分散配置されるアンテナ群ごとに相対的に近距離にある1つの端末局からの受信信号の位相または送信元を既知とし、アンテナ群の各アンテナで、受信信号の位相または送信元のみを検出する簡単な構成により、リアルタイムにアンテナ切替やアンテナ合成を行って伝送特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明が適用される上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムの概要を示す図である。
図2】受信信号のフレームフォーマットの一例を示す図である。
図3】本発明の第1の特徴に対応する無線基地局20の実施例1の構成例を示す図である。
図4】本発明の無線基地局20の実施例1における処理手順例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の特徴に対応する無線基地局20の実施例2の構成例を示す図である。
図6】上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムの概要を示す図である。
図7】上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムの動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明が適用される上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムの概要を示す。
【0028】
図1において、無線基地局20は、それぞれが複数のアンテナからなるアンテナ群21−1〜21−mを分散配置し、複数の端末局11−1〜11−nから送信される信号をアンテナ群21−1〜21−mの各アンテナで受信し、アンテナ群ごとに各アンテナの受信信号を合成して受信ウエイト処理を適用することよって、同一の周波数チャネルにおける複数の端末局からの信号の同時受信を行う。アンテナ群の数(m)は端末局の数(n)以上とし、各アンテナ群からみて相対的に近距離にある1つの端末局が特定されるものとする。また、当該端末局からの信号位相が既知であるもしくは事前設定される位相情報を有するものとする。H1 〜Hn は、端末局11−1〜11−nから無線基地局20のアンテナ群21−1〜21−mに対する伝搬チャネル情報であり、無線基地局20で受信ウエイトを算出する際に用いられる。
【0029】
本発明の第1の特徴は、無線基地局20のアンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号から簡易な受信装置を用いて位相を検出して同位相合成し、アンテナ群ごとに対応する端末局からの信号電力を増加させて受信処理し、マルチユーザMIMO伝送用信号処理に供するところにある。なお、アンテナ群における各アンテナの受信信号は、近距離の所定の端末局からの信号レベルが他の端末局からの信号レベルに比べて大きいので、所定の端末局からの受信信号の位相を検出して同位相合成することができる。一方、アンテナ群の各アンテナにおいて、複数の端末局からの受信信号が干渉するなどして位相を検出できない場合には、同位相合成ではなく単純な合成になる。
【0030】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴に加えて、アンテナ群ごとに、各アンテナの受信信号から簡易な受信装置を用いて送信元を検出し、所定の端末局以外からの受信信号を合成しないようにするところにある。なお、アンテナ群に対応する所定の端末局以外からの受信信号は、他のアンテナ群で受信されるので支障はない。また、アンテナ群における各アンテナの受信信号から送信元を検出できない場合には、そのまま合成されることになる。
【0031】
図3は、本発明の第1の特徴に対応する無線基地局20の実施例1の構成例を示す。
図3において、無線基地局20は、分散配置される複数のアンテナ群21−1〜21−mと、アンテナ群の各アンテナに対応する簡易受信部22−1〜22−mおよび位相変換部23−1〜23−mと、アンテナ群に対応する合成部24−1〜24−mおよび受信部25−1〜25−mと、伝搬チャネル情報推定部26、受信ウエイト生成部27、マルチユーザMIMO伝送用信号処理部28から構成される。なお、簡易受信部22−iおよび位相変換部23−i(iは1〜m)は、アンテナ群21−iの各アンテナに対応してそれぞれ複数設けられるが、ここではアンテナ群ごとに同一符号を付している。また、本図では本発明に関係する受信系のみの構成を示し、送信系の構成については省略している。
【0032】
アンテナ群21−iの各アンテナの受信信号は、それぞれ簡易受信部22−iおよび位相変換部23−iに入力する。簡易受信部22−iは、アンテナ群21−iの各アンテナの受信信号の位相のみを検出する非常に簡易な構成であり、さらに、アンテナ群21−iに近接する所定の端末局に対応する既知位相もしくは事前設定される位相との位相差を検出し、位相変換部23−iに出力する。
【0033】
受信信号のフレームフォーマットの一例として、IEEE802.11acで規定された無線LAN信号のフレームフォーマットを図2に示す。簡易受信部22−iでは、従来の無線LAN規格との互換性を確保するためのプリアンブルであるL−STFからL−SIGの中のL−STF、L−LTF、もしくは両方のプリアンブルから本受信信号の位相を検出する。
【0034】
アンテナ群21−iの位相変換部23−iは、簡易受信部22−iで検出された位相差情報に応じて、各アンテナの受信信号の位相を所定の端末局に対応する既知位相もしくは事前設定される位相に揃え、合成部24−iに出力する。
【0035】
合成部24−iでは、アンテナ群ごとに各アンテナの受信信号を同位相合成し、受信部25−iに出力する。ここで、簡易受信部22−iで位相を検出できない受信信号については、位相変換部23−iをスルーして合成部25−iに入力し、他の受信信号と合成される。すなわち、アンテナ群ごとに各アンテナの受信信号のうち、位相を検出できる比較的近距離の所定の端末局からの受信信号が同位相合成されることになり、結果的にアンテナ群21−iに近距離の所定の端末局からの受信信号電力が増大して受信部25−iに入力することになる。
【0036】
受信部25−1〜25−mは、それぞれ合成部24−1〜24−mから入力する信号について、想定する無線システムで規定される周波数や送信電力から伝搬チャネル情報推定部26およびマルチユーザMIMO伝送用信号処理部28で処理可能な信号形式に変換し、伝搬チャネル情報推定部26およびマルチユーザMIMO伝送用信号処理部28に出力する。
【0037】
伝搬チャネル情報推定部26は、受信部25−1〜25−mから入力する信号に含まれるトレーニング信号から各端末局11−1〜11−nとの伝搬チャネル情報H1 〜Hn を推定し、受信ウエイト生成部27に出力する。
【0038】
受信ウエイト生成部27は、伝搬チャネル情報推定部26から入力する各端末局との伝搬チャネル情報H1 〜Hn から、一般的なマルチユーザMIMO伝送で用いられる受信ウエイト算出方法に従い、受信ウエイトを算出してマルチユーザMIMO伝送用信号処理部28に出力する。
【0039】
マルチユーザMIMO伝送用信号処理部28は、受信ウエイト生成部27から入力する受信ウエイトに従い、アンテナ群21−1〜21−mに対応する受信部25−1〜25−mから入力する信号に対して受信ウエイト処理を行い、各端末局11−1〜11−nから送信された信号の分離を行い、各信号を外部に出力する。
【0040】
本発明の無線基地局20の実施例1の構成に対する端末局11−1〜11−nは、一般的な上り回線のマルチユーザMIMO伝送システムで用いられる端末局と同等の機能を有する構成である。
【0041】
図4は、本発明の無線基地局20の実施例1における処理手順例を示す。
図4において、複数の端末局11−1〜11−nからの送信信号を分散配置された複数のアンテナ群21−1〜21−mの各アンテナで受信する(ステップS01)。次に、簡易受信部22−1〜22−mにおいて、アンテナ群の各アンテナの受信信号の位相を検出し、アンテナ群ごとに近距離の所定の端末局に対応する既知位相もしくは事前設定される位相との位相差を検出する(ステップS02)。次に、位相変換部23−1〜23−mにおいて、アンテナ群の各アンテナの受信信号が同位相になるように変換する(ステップS03)。次に、合成部24−1〜24−mにおいて、アンテナ群の各アンテナの受信信号を同位相合成して受信部25−1〜25−mに入力し、各合成信号を基地局内で信号処理可能な形式に変換する(ステップS04)。次に、伝搬チャネル情報推定部26において、伝搬チャネル情報を推定する(ステップS05)。次に、受信ウエイト生成部27において、推定した伝搬チャネル情報から受信ウエイトを算出する(ステップS06)。最後に、マルチユーザMIMO伝送用信号処理部28において、入力信号の受信ウエイト処理を行い、各端末局からの送信信号を分離し、外部に出力する(ステップS07)。
【0042】
図5は、本発明の第2の特徴に対応する無線基地局20の実施例2の構成例を示す。
図5において、実施例2の無線基地局20は、図2に示す実施例1の無線基地局20の構成の簡易受信部22−1〜22−mにおいて、アンテナ群21−1〜21−mの各アンテナの受信信号の送信元アドレスを検出する機能を付加し、送信元アドレスが比較的近距離の所定の端末局以外からの受信信号であれば減衰させる信号減衰部29−1〜29−mを備え、合成部24−1〜24−mで合成しない構成とする。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0043】
なお、簡易受信部22−1〜22−mでは、図2のフレームフォーマット内に含まれる送信アドレス情報を検出し、所定の端末局からの受信信号であるか否かを判定する構成とする。また、所定の端末局のアドレス情報は、図5では図示していない送信部から図7に示すトリガー信号内に含まれるアドレス情報を簡易受信部22−1〜22−mで取得するようにしてもよい。
【0044】
アンテナ群ごとの信号低減部29−1〜29−mは、簡易受信部22−1〜22−mから入力された情報に従い、送信元=所定の端末局であれば各アンテナの受信信号をスルーし、送信元≠所定の端末局であれば各アンテナの受信信号を減衰させる。以上の処理を図4に示すステップS02およびステップS03と並行して行う。
【符号の説明】
【0045】
10,20 無線基地局
11−1〜11−n 端末局
21−1〜21−m アンテナ群
22−1〜22−m 簡易受信部
23−1〜23−m 位相変換部
24−1〜24−m 合成部
25−1〜25−m 受信部
26 伝搬チャネル情報推定部
27 受信ウエイト生成部
28 マルチユーザMIMO伝送用信号処理部
29−1〜29−m 信号減衰部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7