(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
図1は、本実施形態に係るウエーハの研磨方法の研磨対象となるデバイスウエーハを示す斜視図である。本実施形態に係るウエーハの研磨方法は、デバイスウエーハ(以下、ウエーハと記す)Wに研磨加工を施すものである。ウエーハWは、
図1に示すように、シリコンを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハWは、表面WSに格子状に形成された複数のストリート(分割予定ライン)Sによって区画された領域を備え、各領域にそれぞれデバイスDBが形成されている。ウエーハWは、表面WSの裏側の裏面WRに研削加工が施されて、所定の厚み(例えば50μm)まで薄化された後に、研削歪みを除去するために研磨加工が施される。
【0015】
図2は、本実施形態に係るウエーハの研磨方法を実行する研削研磨装置の一例を示す斜視図である。研削研磨装置2は、フルオートタイプの加工装置であり、制御部100の制御の下、ウエーハWに対して搬入処理、粗研削加工、仕上げ研削加工、研磨加工、洗浄処理、搬出処理からなる一連の作業を全自動で実施するように構成されている。
【0016】
研削研磨装置2は、
図2に示すように、各構成部を支持する基台4を備えている。基台4の上面の前端側には、開口4aが形成されており、この開口4a内には、ウエーハWを搬送する第1の搬送ユニット6が設けられている。また、開口4aのさらに前端側の領域には、それぞれ複数のウエーハWを収容可能なカセット8a,8bを載置する載置台10a,10bが形成されている。ウエーハWは、カセット8a,8bに収容された状態で研削研磨装置2に搬入される。
【0017】
また、基台4には、ウエーハWの位置合わせを行うアライメント機構12が設けられている。このアライメント機構12は、ウエーハWが仮置きされる仮置きテーブル14を含み、例えば、カセット8aから第1の搬送ユニット6で搬送され、仮置きテーブル14に仮置きされたウエーハWの中心を位置合わせする。
【0018】
基台4には、アライメント機構12を跨ぐ門型の支持構造16が配置されている。この支持構造16には、ウエーハWを搬送する第2の搬送ユニット18が設けられている。第2の搬送ユニット18は、左右方向(X軸方向)、前後方向(Y軸方向)、および上下方向(Z軸方向)に移動可能であり、例えば、アライメント機構12で位置合わせされたウエーハWを後方(
図2中+Y方向)に搬送する。
【0019】
開口4aおよびアライメント機構12の後方には、開口4bが形成されている。この開口4b内には、鉛直方向に延びる回転軸の周りに回転する円盤状のターンテーブル20が配置されている。ターンテーブル20の上面には、ウエーハWを吸引保持する4個のチャックテーブル(保持部)22が略等角度間隔に設置されている。
【0020】
第2の搬送ユニット18でアライメント機構12から搬出されたウエーハWは、裏面側が上方に露出するように、前方側の搬入搬出位置Aに位置付けられたチャックテーブル22へと搬入される。ターンテーブル20は、時計回り方向Rの向きに回転し、チャックテーブル22を、搬入搬出位置A、粗研削位置B、仕上げ研削位置C、研磨位置Dの順に位置付ける。
【0021】
各チャックテーブル22は、それぞれモータ等の回転駆動源(不図示)と連結されており、鉛直方向に延びる回転軸の周りに回転可能に構成されており、本実施形態では、各チャックテーブル22は、制御部100の制御により所定速度(例えば300〜1000rpm)で回転可能となっている。各チャックテーブル22の上面は、ウエーハWを吸引保持する保持面となっている。この保持面は、チャックテーブル22の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)と接続されている。チャックテーブル22に搬入されたウエーハWは、保持面に作用する吸引源の負圧で表面側を吸引される。
【0022】
ターンテーブル20の後方には、上方に伸びる壁状の支持構造24が立設されている。支持構造24の前面には、2組の昇降機構26が設けられている。各昇降機構26は、鉛直方向(Z軸方向)に伸びる2本の昇降ガイドレール28を備えており、この昇降ガイドレール28には、昇降テーブル30がスライド可能に設置されている。
【0023】
昇降テーブル30の後面側には、ナット部(不図示)が固定されており、このナット部には、昇降ガイドレール28と平行な昇降ボールねじ32が螺合されている。昇降ボールねじ32の一端部には、昇降パルスモータ34が連結されている。昇降パルスモータ34で昇降ボールねじ32を回転させることにより、昇降テーブル30は昇降ガイドレール28に沿って上下に移動する。
【0024】
昇降テーブル30の前面には、固定具36が設けられている。粗研削位置Bの上方に位置付けられた昇降テーブル30の固定具36には、ウエーハWを粗研削する粗研削用の研削ユニット38aが固定されている。一方、仕上げ研削位置Cの上方に位置付けられた昇降テーブル30の固定具36には、ウエーハWを仕上げ研削する仕上げ研削用の研削ユニット38bが固定されている。研削ユニット38a,38bのスピンドルハウジング40には、それぞれ、回転軸を構成するスピンドル42が収容されており、各スピンドル42の下端部(先端部)には、円盤状のホイールマウント44が固定されている。研削ユニット38aのホイールマウント44の下面には、粗研削用の研削砥石を備えた研削ホイール46aが装着されており、研削ユニット38bのホイールマウント44の下面には、仕上げ研削用の研削砥石を備えた研削ホイール46bが装着されている。各スピンドル42の上端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、研削ホイール46a,46bは、回転駆動源から伝達される回転力で回転する。
【0025】
チャックテーブル22およびスピンドル42を回転させつつ、研削ホイール46a,46bを下降させ、純水等の研削液を供給しながらウエーハWの裏面側に接触させることで、ウエーハWを粗研削又は仕上げ研削できる。また、研磨位置Dの近傍には、研削ユニット38a,38bで研削されたウエーハWの裏面を研磨する研磨ユニット48が設けられている。
【0026】
アライメント機構12の前方にはウエーハWを洗浄する洗浄ユニット52が設けられており、研磨された後のウエーハWは、第2の搬送ユニット18でチャックテーブル22から洗浄ユニット52へと搬送される。洗浄ユニット52で洗浄されたウエーハWは、第1の搬送ユニット6で搬送され、カセット8bに収容される。
【0027】
図3は、研削研磨装置が備える研磨ユニットの斜視図である、
図4は、研磨ユニットの周辺構成を示す模式図である。
図5は、研磨パッドの構成を示す断面模式図である。
図6は、研磨パッドをドレッシングする状態を示す模式図である。基台4(
図2)の上面には、
図3に示すように、ブロック状の支持構造54が立設されている。支持構造54の後面には、研磨ユニット48を水平方向(ここでは、X軸方向)に移動させる水平移動ユニット56が設けられている。
【0028】
水平移動ユニット56は、支持構造54の後面に固定され水平方向(X軸方向)に平行な一対の水平ガイドレール58を備える。水平ガイドレール58には、水平移動テーブル57がスライド可能に設置されている。水平移動テーブル57の後面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、水平ガイドレール58と平行な水平ボールねじ(不図示)が螺合されている。
【0029】
水平ボールねじの一端部には、パルスモータ59が連結されている。パルスモータ59で水平ボールねじを回転させることにより、水平移動テーブル57は水平ガイドレール58に沿って水平方向(X軸方向)に移動する。水平移動テーブル57の後面側には、研磨ユニット48を鉛直方向(Z軸方向)に移動させる鉛直移動ユニット64が設けられている。鉛直移動ユニット64は、水平移動テーブル57の後面に固定され鉛直方向(Z軸方向)に平行な一対の鉛直ガイドレール66を備える。鉛直ガイドレール66には、鉛直移動テーブル68がスライド可能に設置されている。鉛直移動テーブル68の前面側(裏面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、鉛直ガイドレール66と平行な鉛直ボールねじ(不図示)が螺合されている。
【0030】
鉛直ボールねじの一端部には、パルスモータ70が連結されている。パルスモータ70で鉛直ボールねじを回転させることにより、鉛直移動テーブル68は鉛直ガイドレール66に沿って鉛直方向(Z軸方向)に移動する。鉛直移動テーブル68の後面(表面)には、ウエーハWの上面を研磨する研磨ユニット48が固定されている。研磨ユニット48のスピンドルハウジング72には、回転軸を構成するスピンドル74が収容されており、スピンドル74の下端部(先端部)には、円盤状のホイールマウント76が固定されている。ホイールマウント76の下面には、ホイールマウント76と略同径の研磨ホイール78が装着されている。研磨ホイール78は、ステンレス等の金属材料で形成されたホイール基台78aと、このホイール基台78aの下面に取り付けられる円盤状の研磨パッド78bとを備える。
【0031】
本実施形態では、
図4に示すように、研磨パッド78bは、ウエーハWと同等以上の大径(例えば、ウエーハW;300mm、研磨パッド;450mm)に形成され、研磨ユニット48は、ウエーハWの裏面WR全面を覆いつつ、チャックテーブル22に対して偏心して配置される。また、本実施形態では、ウエーハWの裏面WRに研削加工をする前に、ウエーハWの表面WSには、表面WSに形成されたデバイス(不図示)を保護するために表面保護テープTが貼着される。このため、チャックテーブル22に保持されたウエーハWの表面WSは、表面保護テープTによって保護されて裏面WRが露出する形態で研削および研磨される。
【0032】
研磨ユニット48は、
図4に示すように、スピンドル74、ホイールマウント76および研磨ホイール78を貫通する流体供給路79を備える。この流体供給路79は、チャックテーブル22に保持されたウエーハWの裏面WRに水(純水)を供給する流路であり、この流体供給路79には電磁弁61を介して純水供給源62が接続されている。水は、ウエーハWの裏面WRの研磨加工をする際に供給される液体であり、研磨パッド78bに含まれるアルカリ粒子(後述する)が溶解することにより、シリコンウエーハと化学反応を生じてCMP(Chemical Mechanical Polishing;化学機械研磨)を実施するアルカリ性の研磨液を生成する。また、流体供給路79を通じて供給される水は、ウエーハWと実質的に化学反応を生じない物質のみで構成され、例えば純水が用いられる。また、本実施形態では、電磁弁61は、制御部100の制御により、開度を調整して流体供給路79を流れる流量を調整可能な流量調整弁が用いられている。
【0033】
また、チャックテーブル22の周囲には、研磨加工時に流下する研磨液を受ける環状の受け部63と、この受け部63に連結される排水管65とが設けられる。排水管65には、この排水管65を流れる排液(研磨液)のpH(水素イオン濃度)値を計測するpH計測部67が設けられている。このpH計測部67は、制御部100の制御により、排水管65を流れる研磨液のpH値を所定時間(例えば10秒)ごとに計測し、この計測したpH値を制御部100に出力する。なお、pH値の計測間隔は適宜変更することができ、連続的にpH値を計測してもよい。
【0034】
また、チャックテーブル22の近傍には、該チャックテーブル22と並んでドレスユニット80が配置される。ドレスユニット80は、回転駆動源81と、回転駆動源81に連結されるスピンドル82と、スピンドル82の上端部(先端部)に固定される円盤状のホイールマウント83とを備える。このホイールマウント83の上面には、ダイヤモンド等の粒子を表面に接着させたドレッシングパッド84が取り付けられている。ドレスユニット80は、ドレッシングパッド84を研磨パッド78bに当接(押圧)させ、研磨パッド78bの表面を削るドレッシングを行う。このドレッシングにより、研磨パッド78bの表面粗さを調節し、研磨パッド78bの研磨能力を適正な値とする。さらに、研磨パッド78bに含まれるアルカリ粒子が研磨パッド78bの表面に露出する。研磨ユニット48は、上記した水平移動ユニット56により水平方向(X方向)に移動可能となっている。このため、ウエーハWを研磨していない時に、研磨ユニット48を水平方向に移動させることにより、研磨ユニット48の研磨パッド78bをドレスユニット80に対向させることができる。
【0035】
また、ドレスユニット80には、該ドレスユニット80を鉛直方向(Z軸方向)に昇降させる昇降機構85が設けられている。昇降機構85は、ドレッシング時に、ドレッシングパッド84が研磨パッド78bに当接するまでドレスユニット80を昇降させ、それ以外のときには、ドレスユニット80を降下させて退避させる。
【0036】
次に、研磨パッドについて説明する。研磨パッド78bは、
図5に示すように、例えば、ポリウレタン樹脂などの樹脂材および不織布からなる基材90と、この基材90中に分散された砥粒91及びアルカリ粒子92とを備えて構成される。この研磨パッド78bは、基材90中に砥粒91及びアルカリ粒子92を分散させ、適宜の液状の結合剤で固定した固定砥粒型の研磨パッドである。この
図5における砥粒91およびアルカリ粒子92の形状は、これらを区別するために異なる形状としたものであり、砥粒91およびアルカリ粒子92が
図5に記載した形状を有するものではない。
【0037】
基材90を構成する樹脂材は、例えば、ポリウレタン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、もしくはアクリル系の樹脂から選択される一又は複数の樹脂材から構成される。基材90の研磨面90a(
図5中の下面)には、分散された砥粒91及びアルカリ粒子92が露出し、この露出した砥粒91がウエーハWの裏面WR(
図4)を研磨する。また、図示は省略したが、基材90の研磨面90aには、研磨中に発生した異物を取り込む溝が形成されている。この溝は、基材90の中央部と縁部とが連結されたものが好ましく、例えば、中央部から縁部に向けて放射状、もしくは、格子状や螺旋状に形成されている。これにより、溝に取り込まれた異物は、溝を通じて外部へ排出される。また、この溝は、供給された水(研磨液)を研磨面90aにわたって均一に供給する流路としての機能も有する。
【0038】
砥粒91は、ウエーハWよりモース硬度が高く、該ウエーハWを研磨できることが可能なものであればよい。例えば、ウエーハWがシリコンウエーハの場合、モース硬度5以上の物質を主材料にした砥材が好ましく、固相反応微粒子であるシリカ(SiO
2)粒子が用いられる。本実施形態では、砥粒91としてのシリカ粒子は、平均粒径が0.05μm以上、50μm未満の範囲に調整されている。
【0039】
また、アルカリ粒子92は、供給された水に徐々に溶解してアルカリ性の研磨液を生成する。アルカリ粒子92としては、水に溶解した際に強アルカリ性(例えばpH値が11以上)を示す物質が好ましく、例えば、水酸化カルシウム粒子が用いられる。また、基材90の研磨面90aから露出したアルカリ粒子92が、水にすぐに溶けて消費されてしまうと、研磨液のpH値が安定しないため、溶解度がある程度小さいものが好ましい。本実施形態では、25℃における水(純水)への溶解度が0.17重量%(0.17g/100gH
2O)以下の物質が好ましい。この範囲の材料をアルカリ粒子92に用いることにより、基材90の研磨面90aから露出したアルカリ粒子92は、水に徐々に溶解することで消費が抑えられ、研磨液のpH値を安定させることができる。なお、アルカリ粒子92としては、25℃における水(純水)への溶解度が0.17重量%(0.17g/100gH
2O)以下の物質であれば、水酸化カルシウムの他にも、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、または炭酸カルシウムを用いることができる。
【0040】
研磨液のpH値は、所定の研磨液範囲(例えばpH値が8.5以上10以下)に調整される。具体的には、pH計測部67が計測したpH値に基づき、制御部100は、電磁弁61の開度を制御し、流体供給路79を通じて供給される水量を調整する。すなわち、計測したpH値が所定の研磨液範囲よりも高い場合には、流体供給路79を通じて供給される水量を増加してpH値を低下させる。また、計測したpH値が所定の研磨液範囲よりも低い場合には、流体供給路79を通じて供給される水量を減少してpH値を向上させる。
【0041】
上述のように、研磨パッド78bは、基材90に分散されたアルカリ粒子92を備え、基材90の研磨面90aから露出したアルカリ粒子92を水に溶解させて研磨液を生成している。このため、ウエーハWの研磨枚数が増加すると、研磨面90aから露出したアルカリ粒子92が消費されるため、供給される水量を調整(減少)しても、研磨液のpH値が研磨液範囲の下限閾値(例えばpH値が8.5)を下回ることが想定される。この場合には、上記した水平移動ユニット56(
図3)を動作させ、
図6に示すように、研磨ユニット48を水平方向(X方向)に移動させる。さらに、研磨ユニット48を回転させた状態で、ドレスユニット80を上昇させるとともに、ドレッシングパッド84を回転させながら該ドレッシングパッド84を研磨パッド78bに当接させる。この際、昇降機構85は、ドレッシングパッド84が所定の圧力で研磨パッド78bを押圧するように押圧力を制御する。また、水平移動ユニット56を動作させて、研磨ユニット48を水平方向(X方向)に揺動させることにより、研磨パッド78bの全域にドレッシングパッド84が当接されるため、研磨パッド78bの基材90の研磨面90aが削られる。このため、研磨パッド78bの研磨能力が適正な値に調整されるとともに、研磨パッド78bの基材90の研磨面90aにアルカリ粒子92が露出する。これにより、研磨液のpH値は、研磨液範囲の下限閾値(例えばpH値が8.5)を上回り、研磨液範囲に含まれる。
【0042】
次に、ウエーハの研磨方法について説明する。
図2に示すように、カセット8aに収容されたウエーハWは、第1の搬送ユニット6によりカセット8aから引き出されて仮置きテーブル14まで搬送され、仮置きテーブル14でウエーハWの中心を位置合わせする。
【0043】
続いて、第2の搬送ユニット18は、仮置きテーブル14で位置合わせされたウエーハWを搬入搬出位置Aに位置付けられたチャックテーブル22に搬送し、表面保護テープT(
図4)を下側にしてチャックテーブル22により吸引保持される。これにより、ウエーハWは、チャックテーブル22で保持されて裏面WRが露出される。このウエーハWをチャックテーブル22で吸引保持した後、ターンテーブル20を矢印Rで示す時計回り方向に90度回転する。これにより、チャックテーブル22に保持されたウエーハWは、粗研削用の研削ユニット38aに対向する粗研削位置Bに位置付けられる。
【0044】
ウエーハWの粗研削では、粗研削位置Bに位置付けられたウエーハWに対して、チャックテーブル22を例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール46aをチャックテーブル22と同一方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削液を供給しながら昇降パルスモータ34を作動して粗研削用の研削砥石をウエーハWの裏面WRに接触させる。そして、研削ホイール46aを所定の研削送り速度で下方に所定量送り、ウエーハWの裏面WRの粗研削を実施する。この粗研削により、ウエーハWを所望の厚みに研削する。
【0045】
粗研削が終了すると、ターンテーブル20を時計回り方向に更に90度回転して、粗研削の終了したウエーハWを仕上げ研削位置Cに位置付ける。この仕上げ研削では、チャックテーブル22を例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール46bをチャックテーブル22と同一方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削液を供給しながら昇降パルスモータ34を作動して仕上げ研削用の研削砥石をウエーハWの裏面WRに接触させる。そして、研削ホイール46bを所定の研削送り速度で下方に所定量送り、ウエーハWの裏面WRの仕上げ研削を実施する。この仕上げ研削により、ウエーハWを所望の厚み(例えば50μm)に仕上げる。
【0046】
仕上げ研削の終了したウエーハWを保持したチャックテーブル22は、ターンテーブル20を時計回り方向に更に90度回転することにより、研磨ユニット48に対向する研磨位置Dに位置付けられ、研磨工程が実施される。
【0047】
研磨工程では、
図4に示すように、研磨ユニット48の研磨パッド78bがウエーハWの裏面WR全面を覆った状態で研磨を実施する。この研磨工程において、電磁弁61が開放され、純水供給源62から流体供給路79を通じて、所定流量(例えば1リットル/分)に調整された水(純水)がウエーハWの裏面WRと研磨パッド78bに供給される。この水は、研磨パッド78bの基材90の研磨面90aから露出したアルカリ粒子92を溶解し、所定の研磨液範囲のpH値に調整された研磨液が生成される。そして、予め設定された研磨条件、すなわちチャックテーブル22を矢印α方向に、例えば505rpmで回転させるとともに、研磨パッド78bを矢印α方向に、例えば500rpmで回転させながら、ウエーハWの裏面WRに研磨パッド78bを所定荷重(例えば25kPa)で押し付ける研磨条件にて、ウエーハWの裏面WRの研磨を実施する。なお、上記した水の供給流量も研磨条件に含まれる。この研磨工程により、ウエーハWの裏面WRを研削した際に生成された研削歪が除去される。なお、研磨工程では、ドレッシングパッド84が研磨パッド78bに当接しないように、昇降機構85はドレスユニット80を降下させて退避させている。
【0048】
また、研磨工程中おいて、チャックテーブル22から流下された研磨液は、受け部63および排水管65を流通し、pH計測部67にてpH値が測定される(pH測定工程)。ここで、制御部100は、測定されたpH値に応じて、研磨条件を変更(補正)する。具体的には、制御部100は、pH値に応じて、少なくともウエーハWの研磨時間および研磨パッド78bへの水の供給量を変更する(研磨条件変更工程、補正工程)。測定されたpH値が予め決められた基準値よりも高い場合には、水の供給量を増やすと共に、ウエーハWの研磨時間を予め決められた基準時間よりも短縮する。また、測定されたpH値が予め決められた基準値よりも低い場合には、水の供給量を減らすと共に、ウエーハWの研磨時間を予め決められた基準時間よりも延長する。これにより、研磨液のpH値の変動を抑制し、ウエーハWの研磨状態の均等化を図り、該研磨状態のばらつきを低減することができる。
【0049】
また、制御部100は、研磨工程中に測定されたpH値が所定の研磨液範囲に含まれるか否かを合わせて判定している(判定工程)。この判定工程において、測定されたpH値が所定の研磨液範囲の下限閾値よりも小さく、研磨液範囲に含まれないと判定した場合には、研磨工程が終了した際に、研磨ユニット48を上昇させるとともに、研磨ユニット48およびチャックテーブル22の回転を停止する。そして、
図6に示すように、研磨ユニット48を水平方向(X方向)に移動させて研磨ユニット48の研磨パッド78bをドレスユニット80の上方に配置する。研磨ユニット48を回転させた状態で、ドレスユニット80を上昇させ、ドレッシングパッド84を矢印β方向に回転させながら該ドレッシングパッド84を研磨パッド78bに当接させる(ドレッシング工程)。ここで、研磨ユニット48を水平方向(X方向)に揺動させることにより、研磨パッド78bの全域にドレッシングパッド84が当接されるため、研磨パッド78bの基材90の研磨面90aが削られる。このため、研磨パッド78bの研磨能力が適正な値に調整されるとともに、研磨パッド78bの基材90の研磨面90aにアルカリ粒子92が露出し、研磨液のpH値は、研磨液範囲の下限閾値(例えばpH値が8.5)を上回り、研磨液範囲に含まれる。
【0050】
研磨液のpH値が研磨液範囲に含まれた場合には、研磨工程を再開する。一方、研磨ユニット48の研磨パッド78bをドレッシングしても、研磨液のpH値が研磨液範囲の下限閾値を下回った(研磨液範囲に含まれない)状態の場合には、制御部100は、pH値を研磨液範囲に調整することが不可能であると判断する。そして、例えば、エラーを報じて研磨パッド78bの交換を促す。これにより、研磨パッド78bを適正なタイミングで新しい物に交換できるため、ウエーハWを継続して適正に研磨することができる。なお、pH値を研磨液範囲に調整することが不可能であるとの判断は、ドレッシングを複数回(例えば3回)行っても、pH値が研磨液範囲に含まれない場合に行ってもよい。
【0051】
上記した本実施形態は、以下のウエーハの研磨方法を含む。
【0052】
(付記1)
砥粒とアルカリ粒子が混入された研磨パッドを用いて、ウエーハを研磨するウエーハの研磨方法であって、
設定された研磨条件に基づき回転するウエーハに研磨パッドを当接させつつ回転させて、純水を研磨パッドに供給してアルカリ性の研磨液を生成し該ウエーハに作用させて研磨する研磨工程と、
該研磨工程中に該研磨液のpH値を測定する測定工程と、
測定されたpH値に基づき該研磨条件を補正する補正工程と、を含み、
補正された新たな研磨条件で研磨することによりウエーハの研磨状態を一定に保つ、ウエーハの研磨方法。
【0053】
以上、本実施形態の研磨パッド78bは、ポリウレタンおよび不織布からなる基材90中にシリカ粒子からなる砥粒91とアルカリ粒子92とを含むため、水を研磨パッド78bに供給するだけでアルカリ性の研磨液を生成することができる。このため、研磨液供給源を別途設ける必要がなく、アルカリ性の研磨液をウエーハWに容易に供給することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、アルカリ粒子92の水への溶解度は、25℃において0.17重量%(0.17g/100gH
2O)以下であるため、基材90の研磨面90aから露出したアルカリ粒子92は、水に徐々に溶解することでアルカリ粒子92の消費が抑えられ、研磨液のpH値を安定させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る研磨方法は、研磨パッド78bに純水を供給することによりアルカリ性の研磨液を生成し、該研磨パッド78bをウエーハWに当接させることにより該ウエーハWを研磨する研磨工程と、該研磨工程中に該研磨液のpH値を測定するpH測定工程と、該pH測定工程にて測定されたpH値に基づき、少なくともウエーハWの研磨時間および該研磨パッド78bへの純水の供給量を変更する研磨条件変更工程と、を含むため、研磨液のpH値の変動を抑制し、ウエーハWの研磨状態の均等化を図り、該研磨状態のばらつきを低減することができる。
【0056】
また、本実施形態のウエーハWの研磨方法は、研磨パッド78bが、基材90にアルカリ粒子92を含むので、水を研磨パッド78bに供給するだけでアルカリ性の研磨液を生成することができ、この研磨液をウエーハWに容易に供給して研磨させることができる。また、本実施形態のウエーハWの研磨方法は、回転するウエーハWに研磨パッド78bを当接させつつ回転させて、水を該研磨パッド78bに供給してアルカリ性の研磨液を生成し該ウエーハWに作用させて研磨する研磨工程と、該研磨液のpH値を測定し、測定したpH値が所定の研磨液範囲内にあるかどうかを判定する判定工程と、該判定工程において、該pH値が研磨液範囲の下限閾値よりも小さく該研磨液範囲にないと判定された場合、該研磨パッド78bをドレッシングし、該研磨液のpH値を下限閾値よりも大きくして該研磨液範囲に含まれるように調整するドレッシング工程と、を含むため、研磨液のpH値に基づいて、研磨パッド78bを適時にドレッシングしてpH値を調整することができ、生成される研磨液のpH値の変動を抑制できることにより、ウエーハWの研磨状態のばらつきを低減することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、pH値を研磨液範囲に調整することが不可能である場合には、研磨パッド78bを適正なタイミングで新しい物に交換できるため、ウエーハWを継続して適正に研磨することができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、研磨工程における研磨条件には、先のウエーハWに対する研磨処理と、次のウエーハWに対する研磨処理との間に行われるドレッシング条件を含んでもよい。すなわち、先のウエーハWに対して研磨処理している際に測定したpH値が、所定の第1閾値よりも小さくなった場合には、次のウエーハWを研磨する前に、ドレッシング時の切り込み量(削り量)を増すか、ドレッシングパッド84の押圧力を増大させてドレッシングしてもよい。
【0059】
本実施形態では、研磨パッド78bをドレッシングしても、研磨液のpH値が研磨液範囲の下限閾値を下回った(研磨液範囲に含まれない)状態の場合には、pH値を研磨液範囲に調整することが不可能であると判断しているが、例えば、下限閾値よりも小さく、研磨条件(供給水量など)を変更してもpH値を変更できない所定の第2閾値を設定し、この第2閾値を下回った場合に、pH値を研磨液範囲に調整することが不可能であると判断して研磨パッド78bを交換してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、測定したpH値が研磨液範囲の下限閾値を下回った場合には、供給する水の流量を変更(減少)する構成としたが、アルカリ粒子の溶解度は、温度に依存するものであるため、供給する水の温度を調整(例えば加熱)する構成としてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、研磨工程が終了するとカセット8bに収容して処理を終了とするが、研磨工程後に、ウエーハWの裏面WRにゲッタリング層を生成することを目的としたゲッタリング層生成工程を実施してもよい。ゲッタリング層は、ウエーハWに含有される銅(Cu)などの金属を主とする不純物原子を捕捉して、デバイスDBを不純物による汚染から守るものである。このため、デバイスDBが、例えば、メモリ(フラッシュメモリやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等)である場合には、ウエーハWの裏面WRにゲッタリング層を設けることにより、不純物による汚染を防止することができる。ゲッタリング層生成工程では、アルカリ性の研磨液は不要であるため、例えば、水の供給量を増大してpH値を7近くに保つようにする。なお、ゲッタリング層形成工程を行う場合には、研磨パッド78bの基材90に、平均粒径が0.35〜1.5μmのグリーンカーボランダム(GC)砥粒(不図示)を更に含んだものを利用してもよい。また、上記したグリーンカーボランダム(GC)砥粒をゲッタリング層生成工程の際に、水に混入させてもよい。このゲッタリング層生成工程は、研磨工程に続いて実行される付加的な工程であるため、ゲッタリング層生成工程を実行せずに研磨工程で終了してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、研磨パッド78bとして、基材90に砥粒91を固定させた固定砥粒研磨パッドを例示したが、水に砥粒91を分散させた状態で供給し、砥粒91を固定させていない基材からなる研磨パッドを用いてもよい。