【文献】
Xifei LI et al.,Journal of solid state electrochemistry,2008年,12(7−8),pp.851−855
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾式方法が、遊星ボールミル法、低速ボールミル法、高速ボールミル法、混成化法、メカノフュージョン法からなる群から選択された方法を含むことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な具現例による電極活物質、その製造方法、並びにそれを含む電極及びリチウム電池についてさらに詳細に説明する。
一具現例による電極活物質は、リチウム吸蔵放出の可能なコアと、前記コア上の少なくとも一部に形成された表面処理層と、を含み、前記表面処理層がスピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を含み、前記リチウム非含有酸化物に係わるCu−Kα線を使用するX線回折スペクトルで、不純物相(impurity phase)に係わるピーク強度が、X線回折スペクトルのノイズ(noise)レベル以下である。
【0010】
X線回折スペクトルで、不純物相に係わる回折ピークの強度がノイズレベル以下であるということは、X線回折スペクトルで、不純物相に係わる回折ピークの強度が、ベースラインを形成するノイズレベルより低く、実質的に不純物相に係わる回折ピークが検出されないということを意味する。ノイズレベル(noise level)は、ターゲット物質から得られるX線散乱と関係なしに、空気や水などの周辺環境の散乱から不回避に得られるX線散乱を意味する。
【0011】
すなわち、前記リチウム吸蔵放出の可能なコア表面の少なくとも一部が、スピネル構造を有し、不純物相が実質的にないリチウム非含有酸化物で処理されることにより、前記コア表面の一部または全部に、表面処理層が形成される。前記表面処理層という表現は、言い換えれば、コーティング層として表現されることは、当業者に自明である。前記不純物相は、スピネル結晶に該当しない相を意味する。
【0012】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、実質的に不純物を含まないので、充放電過程で、不純物相による副反応を抑制することができる。
以下、本明細書で、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を別途に言及しなければ、不純物相が実質的に除去された酸化物である。
【0013】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、高結晶性であってもよい。すなわち、スピネル構造を有し、高結晶性であるリチウム非含有酸化物は、Cu−Kα線を使用するX線回折スペクトルで、スピネル構造を有して結晶性の低いリチウム非含有酸化物に比べ、シャープな回折ピークを示すことができる。前記リチウム非含有酸化物が高結晶性を有することにより、高電圧で電極活物質の安定性が向上しうる。
【0014】
例えば、前記リチウム非含有酸化物は、Cu−Kα線を使用するX線回折スペクトルで、2θ=35.5±2.0゜で(311)面に係わる回折ピークを有し、前記回折ピークの半値幅(FWHM:full width at half maximum)が0.3゜未満であってもよい。例えば、前記リチウム非含有酸化物は、Cu−Kα線を使用するX線回折スペクトルで、2θ=35.5±2.0゜で(311)面に係わる回折ピークを有し、前記回折ピークの半値幅(FWHM)が0.220゜ないし0.270゜である。
【0015】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、リチウムを吸蔵放出しないことによって、電池容量に関与しないので、前記酸化物を含む表面処理層は、例えば、前記コアの保護膜(protective layer)の役割を果たすことができる。すなわち、前記表面処理層がコアと電解質との副反応を抑制する役割を果たすことができる。また、前記表面処理層が、前記リチウムを吸蔵放出することができるコアからの遷移金属溶出を防止する役割も果たすことができる。
【0016】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、2以上のリチウム以外の金属または半金属元素を含む酸化物であり、スピネル結晶構造を有し、高結晶性及び/または不純物相がないものであるならば、いずれも使用可能である。
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、従来の一般的な岩塩結晶構造を有する酸化物、例えば、NaCl、CaO、FeO;コランダム(corundum)結晶構造を有する酸化物、例えば、Al
2O
3、Fe
2O
3、FeTiO
3、MgOなどに比べて金属−酸素結合が強く、高温及び高電圧条件でも、安定した表面処理層を形成することができる。
【0017】
例えば、前記リチウム非含有酸化物は、下記化学式Aで表示される酸化物のうちから選択された一つ以上であってもよい:
(化学式A)
AB
2O
4
前記化学式Aで、Aは、Sn、Mg、Mo、Cu、Zn、Ti、Ni、Ca、Fe、V、Pb、Co、Ge、Cd、Hg、Sr、Mn、Al、W及びBeからなる群から選択された一つ以上であり、Bは、Mg、Zn、Al、V、Mn、Ga、Cr、Fe、Rh、Ni、In、Co及びMnからなる群から選択された一つ以上であり、AとBは、互いに異なる。
【0018】
例えば、前記リチウム非含有酸化物は、SnMg
2O
4、SnZn
2O
4、MgAl
2O
4、MoAl
2O
4、CuAl
2O
4、ZnAl
2O
4、ZnV
2O
4、TiMn
2O
4、ZnMn
2O
4、NiAl
2O
4、MgGa
2O
4、ZnGa
2O
4、CaGa
2O
4、TiMg
2O
4、VMg
2O
4、MgV
2O
4、FeV
2O
4、ZnV
2O
4、MgCr
2O
4、MnCr
2O
4、FeCr
2O
4、CoCr
2O
4、NiCr
2O
4、CuCr
2O
4、ZnCr
2O
4、CdCr
2O
4、TiMn
2O
4、ZnMn
2O
4、MgFe
2O
4、TiFe
2O
4、MnFe
2O
4、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、CuFe
2O
4、ZnFe
2O
4、CdFe
2O
4、AlFe
2O
4、PbFe
2O
4、MgCo
2O
4、TiCo
2O
4、ZnCo
2O
4、SnCo
2O
4、FeNi
2O
4、GeNi
2O
4、MgRh
2O
4、ZnRh
2O
4、TiZn
2O
4、SrAl
2O
4、CrAl
2O
4、MoAl
2O
4、FeAl
2O
4、CoAl
2O
4、MgGa
2O
4、ZnGa
2O
4、MgIn
2O
4、CaIn
2O
4、FeIn
2O
4、CoIn
2O
4、NiIn
2O
4、CdIn
2O
4及びHgIn
2O
4からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0019】
例えば、前記酸化物は、SnMg
2O
4、SnZn
2O
4、MgAl
2O
4、CuAl
2O
4、ZnAl
2O
4及びNiAl
2O
4からなる群から選択される一つ以上であってもよい。
例えば、前記酸化物は、SnMg
2O
4、SnZn
2O
4及びMgAl
2O
4からなる群から選択された一つ以上である。
【0020】
前記リチウム非含有酸化物は、X線回折スペクトルで、(440)結晶面のピーク強度と、(311)結晶面のピーク強度との比であるI(440)/I(311)が0.3以上であってもよい。例えば、前記I(440)/I(311)が0.3ないし0.7である。
また、前記リチウム非含有酸化物は、X線回折スペクトルで、(511)結晶面のピーク強度と、(311)結晶面のピーク強度との比であるI(511)/I(311)が0.25以上であってもよい。例えば、前記I(511)/I(311)が0.25ないし0.5である。
【0021】
また、前記リチウム非含有酸化物は、X線回折スペクトルで、(511)結晶面のピーク強度と、(440)結晶面のピーク強度との比であるI(511)/I(440)が0.5以上であってもよい。例えば、前記I(511)/I(440)が0.5ないし0.9である。
【0022】
前記リチウム非含有酸化物の含有量は、電極活物質総重量の10重量%以下であり、例えば、5重量%以下である。例えば、前記リチウム非含有酸化物の含有量は、0超過10重量%以下であってもよい。例えば、前記リチウム非含有酸化物の含有量は、0超過5重量%以下である。
【0023】
前記電極活物質で、前記表面処理層は、原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素を含み、前記元素は、Sn、Mg、Mo、Cu、Zn、Ti、Ni、Ca、Al、V、Mn、Ga、Fe、Cr、Rh、In、Pb、Co、Ge、Cd、Hg、Sr、W及びBeからなる群から選択されもする。
【0024】
前記表面処理層に含まれる原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素の含有量は、電極活物質総重量の10重量%以下であり、例えば、0ないし6重量%である。
【0025】
前記表面処理層で、酸素と、原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素との組成比が、4:2.1〜3.9であってもよい。例えば、前記組成比は、4:2.5〜3.5である。例えば、前記組成比は、4:2.9〜3.1である。例えば、前記組成比は、4:3である。前記組成比は、表面処理層に含まれたAB
2O
4の組成式を有するリチウム非含有酸化物で、酸素:A+Bの組成比に該当する。
【0026】
前記電極活物質で、前記表面処理層の厚みは、1Åないし1μmであってもよい。例えば、前記表面処理層の厚みは、1nmないし1μmである。例えば、前記表面処理層の厚みは、1nmないし100nmである。例えば、前記表面処理層の厚みは、1nmないし30nmである。
【0027】
前記電極活物質で前記表面処理層は、前記コアを完全に被覆したり、アイランド(island)タイプに部分的にコア上に形成される。
前記電極活物質で、前記コアは、平均粒径が10nmないし50μmの粒子であってもよい。例えば、前記コアの平均粒径が10nmないし30μmである。例えば、前記コアの平均粒径が1μmないし30μmである。
【0028】
前記電極活物質で、前記リチウムを吸蔵放出することができるコアは、正極活物質を含んでもよい。前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物であってもよい。前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウム電池の正極に使用することができるものであり、当技術分野で使用することができるものであるならば、いずれも可能である。例えば、前記リチウム遷移金属酸化物は、スピネル構造または層状構造を有することができる。
【0029】
前記リチウム遷移金属酸化物は、単一組成物であり、2以上の組成を有する化合物の複合体であってもよい。例えば、2以上の層状構造を有する化合物の複合体である。また、層状構造を有する化合物と、スピネル構造を有する化合物との複合体である。
【0030】
例えば、前記リチウム遷移金属酸化物は、過量のリチウム酸化物(OLO:overlithiated oxide)、または平均作動電位が4.3V以上であるリチウム遷移金属酸化物を含む。例えば、リチウム遷移金属酸化物の平均作動電位は、4.3ないし5.0Vである。
【0031】
前記平均作動電位とは、電池の推奨作動電圧範囲で、充放電電位の上限と下限とで、充放電させる場合の充放電電力量を充放電電気量で割った値を意味する。
前記コアは、例えば、下記化学式1,2で表示される化合物を含んでもよい。
(化学式1)
Li[Li
aMe
1−a]O
2+d
(化学式2)
Li[Li
bMe
cM’
e]O
2+d
前記化学式1及びで、0<a<1、b+c+e=1;0<b<1、0<e<0.1;0≦d≦0.1であり、前記Meが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択された一つ以上の金属であり、前記M’が、Mo、W、Ir、Ni及びMgからなる群から選択された一つ以上の金属である。例えば、0<a<0.33である。
【0032】
また、前記コアは、下記化学式3ないし7で表示される化合物を含んでもよい:
(化学式3)
LixCo
1−yM
yO
2−αX
α
(化学式4)
LixCo
1−y−zNi
yM
zO
2−αX
α
(化学式5)
Li
xMn
2−yM
yO
4−αX
α
(化学式6)
Li
xCo
2−yM
yO
4−αX
α
(化学式7)
Li
xMe
yM
zPO
4−αX
α
前記化学式3ないし7で、0.90≦x≦1.1、0≦y≦0.9、0≦z≦0.5、1−y−z>0、0≦α≦2であり、前記Meが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択された一つ以上の金属であり、Mが、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Zn、Al、Si、Ni、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、Vまたは希土類元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、Xが、O、F、S及びPからなる群から選択される元素である。
【0033】
また、前記コアは、下記化学式8,9で表示される化合物を含んでもよい。
(化学式8)
pLi
2MO
3−(1−p)LiMeO
2
(化学式9)
xLi
2MO
3−yLiMeO
2−zLi
1+dM’
2−dO
4
前記化学式8及び9で、0<p<1、x+y+z=1;0<x<1、0<y<1、0<z<1;0≦d≦0.33であり、前記Mが、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Zn、Al、Si、Ni、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V及び希土類元素からなる群から選択される一つ以上の金属であり、前記Meが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択される一つ以上の金属であり、前記M’が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択される一つ以上の金属である。
【0034】
前記化学式8の化合物は、層状構造を有し、前記化学式9の化合物で、Li
2MO
3−LiMeO
2、は層状構造を有し、Li
1+dM’
2−dO
4は、スピネル構造を有することができる。
前記電極活物質で、リチウムを充放電することができるコアは、負極活物質を含んでもよい。前記負極活物質は、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された一つ以上を含んでもよい。前記負極活物質は、当技術分野でリチウム電池の負極活物質として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0035】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などであってもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0036】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などである。
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO
2、SiO
x(0<x<2)などである。
【0037】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはそれらの混合物であってもよい。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛であり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(低温焼成炭素)またはハードカーボン、メソ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどであってもよい。
【0038】
前記電極活物質で表面処理層は、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物の前駆体を前記コアと混合した後、乾式方法で機械的エネルギーを加えてコア表面に形成される。
他の一具現例による電極は、前記による電極活物質を含んでもよい。前記電極は、正極または負極であってもよい。
【0039】
前記正極は、次の通り製造される。
表面の少なくとも一部に、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を含む表面処理層が形成された正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して正極活物質組成物を準備する。前記正極活物質組成物を、アルミニウム集電体上に直接コーティング及び乾燥させ、正極活物質層が形成された正極極板を製造することができる。代案としては、前記正極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを、前記アルミニウム集電体上にラミネーションし、正極活物質層が形成された正極極板を製造することができる。
【0040】
前記導電剤としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ、炭素ナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属ファイバまたは金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使われもするが、それらに限定されるものではなく、当技術分野で導電材として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0041】
結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子などの混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使われ、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使われもするが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使われるものであるならば、いずれも可能である。前記正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。
前記負極は、正極活物質の代わりに負極活物質が使われることを除いては、正極と同じ方法で製造することができる。
【0042】
例えば、前記負極は、次の通り製造される。
前述の正極製造時と同様に、表面の少なくとも一部にスピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を含む表面処理層が形成された負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、これを銅集電体に直接コーティングして負極極板を製造することができる。代案としては、前記負極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションして負極極板を製造することができる。
【0043】
負極活物質組成物において、導電剤、結合剤及び溶媒は、正極の場合と同じものを使用することができる。場合によっては、前記正極活物質組成物及び負極活物質組成物に、可塑剤をさらに付加し、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
前記負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電材、結合剤及び溶媒のうち一つ以上が省略されてもよい。
【0044】
他の一具現例によるリチウム電池は、前記電極を採用する。前記リチウム電池は、例えば、次の通り製造することができる。
まず前述のように、一具現例による正極及び負極を製造する。前記正極及び負極にうち一つ以上が、リチウムを吸蔵放出することができるコア上に、前述のスピネル構造を有し、不純物相が排除されたリチウム非含有酸化物を含む表面処理層が形成された電極活物質を含む。
【0045】
次に、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータを準備する。前記セパレータは、リチウム電池で一般的に使われるものであるならば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能にすぐれるものが使われもする。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはそれらの化合物のうちから選択されたものであり、不織布または織布の形態でもよい。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使われ、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能に優れるセパレータが使われもする。例えば、前記セパレータは、下記方法によって製造される。
【0046】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物を準備する。前記セパレータ組成物が電極上部に直接コーティング及び乾燥され、セパレータが形成される。または、前記セパレータ組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥され後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされてセパレータが形成される。
【0047】
前記セパレータ製造に使われる高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合材に使われる物質がいずれも使われもする。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物などが使われもする。
【0048】
次に電解質を準備する。
例えば、前記電解質は、有機電解液であってもよい。また、前記電解質は、固体であってもよい。例えば、ボロン酸化物、リチウム酸窒化物などであるが、それらに限定されるものではなく、当技術分野で固体電解質として使われることができるものであるならば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリングなどの方法で、前記負極上に形成できる。
【0049】
例えば、有機電解液が準備できる。有機電解液は有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
前記有機溶媒は、当技術分野で有機溶媒として使われるものであるならば、いずれも使われる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物などである。
【0050】
前記リチウム塩も、当技術分野でリチウム塩として使われるものであるならば、いずれも使用することができる。例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ただし、x、yは自然数)、LiCl、LiIまたはそれらの混合物などである。
【0051】
図6から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られるか、あるいは折り畳まれ、電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップアセンブリ6で密封され、リチウム電池1が完成される。前記電池ケースは、円筒形、角形、薄膜型などであってもよい。例えば、前記リチウム電池は、大型薄膜型電池である。前記リチウム電池は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0052】
前記正極及び負極間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、かような電池パックが、高容量及び高出力が要求されるあらゆる機器に使われもする。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などに使われもする。
【0053】
また、前記リチウム電池は、高温での保存安定性・寿命特性・高率特性にすぐれるので、電気車両に使われもする。例えば、プラグイン・ハイブリッド車両(PHEV:plug−in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車両に使われもする。
【0054】
他の一具現例による電極活物質の製造方法は、電極活物質を含むコアと、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物粒子と、を混合する段階と、乾式方法で、前記コア上にリチウム非含有酸化物を含む表面処理層を形成させる段階と、を含む。
前記乾式方法は、電極活物質を含むコアと、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物粒子との混合物に、溶媒を使用せずに、機械的なエネルギーを加えて表面処理層を形成する方法をいずれも含む。
【0055】
前記乾式方法は、a)低回転ボールミルなどで、被覆材、例えば、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物の粉末をコア粒子表面に接触させ、被覆材粒子がコア粒子表面に付着されると同時に、付着された被覆材粒子が互いに凝集されて表面処理層が形成される方法、b)装置内部の粉砕媒体または回転子の運動などによって、被覆材粒子をコア粒子表面に拘束させ、コアと被覆材粒子とを結合させると同時に、被覆材粒子に伴う応力により、コア粒子上の被覆材粒子を互いに機械的に結合させたり、あるいは応力から発生する熱により、コア粒子上の被覆材粒子の表面処理層を軟化または溶融させ、それら粒子を結合させる方法、前記a)及び/またはb)の方法によって形成された表面処理層が被覆されたコアを熱処理法により、表面処理層及びコアの一部または全部を溶融させた後、さらに冷却させる方法などがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で使われもする乾式方法がいずれも使われもする。
【0056】
例えば、前記乾式方法は、遊星ボールミル法、低速ボールミル法、高速ボールミル法、混成化法(hybridization)、メカノフュージョン法(mechanofusion)からなる群から選択された一つの方法であってもよい。例えば、メカノフュージョン法を使用することができる。メカノフュージョン法は、混合物を、回転する容器内に投入した後、遠心力で前記混合物を容器内壁に固定させた後、容器内壁と、それと若干の間隔で近接するアームヘッド(arm head)との間隙で圧縮する方法である。メカノフュージョン法は、前記b)の方法に該当する。
【0057】
前記乾式方法で表面処理層を形成する段階後、表面処理層が形成された結果物を熱処理する段階を追加して含んでもよい。前記熱処理によって、表面処理層がさらに強固になる。前記熱処理条件は、前記表面処理層の一部または全部を溶融させることができる条件であるならば、いずれも可能である。
【0058】
前記製造方法で、前記リチウム非含有酸化物の含有量が、コア及びリチウム非含有酸化物総重量の10重量%以下であってもよい。例えば、前記リチウム非含有酸化物の含有量が、コア及びリチウム非含有酸化物総重量の5重量%以下である。例えば、前記含有量は、0超過10重量%以下であってもよい。例えば、前記含有量は、0超過5重量%以下である。
【0059】
前記製造方法で、前記リチウム非含有酸化物粒子の製造は、リチウム非含有酸化物前駆体をミーリングして混合物を準備する段階と、前記混合物を焼成し、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を準備する段階と、を含んでもよい。
リチウム非含有酸化物前駆体をミーリングして混合物を準備する段階で、リチウム非含有酸化物前駆体をボールミルなどで処理して前駆体粒子を予備的に反応させ、中間相を形成することができる。前記中間相は、2以上の遷移金属を含む酸化物を含む相である。
【0060】
前記混合物が中間相を含むことにより、焼成段階で、ZnOの揮発に起因した多様な二次相の形成、すなわち、不純物相の形成が防止される。すなわち、中間相が形成されることにより、焼成段階で、高温焼成にもかかわらず、不純物相が除去されたスピネル構造を有したリチウム非含有酸化物が製造される。また、前記高温焼成によって、リチウム非含有酸化物の結晶性が向上しうる。
【0061】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を準備する段階後、前記リチウム非含有酸化物を粉砕する段階を追加して含んでもよい。前記粉砕段階によって、リチウム非含有酸化物ナノ粒子が準備される。前記ナノ粒子は、10nmないし1,000nmの粒径を有することができる。
【0062】
前記混合物の焼成は、700ないし1,500℃の高温で行われてもよい。例えば、前記焼成は1,000ないし1400℃で行われる。
前記混合物の焼成が高温で行われることにより、表面処理物質の物性がさらに容易に制御される。例えば、焼成温度の調節が容易であるので、不純物の含有量などがさらに容易に調節される。これに反し、前記混合物がコアと同時に熱処理する場合には、コアの劣化を防止するために、焼成温度が700℃未満の低温に制限されるので、表面処理物質の物性調節が困難である。
【0063】
前記製造方法で前記焼成は、12ないし72時間行われてもよい。例えば、前記焼成は、24ないし60時間行われる。例えば、前記焼成は、36ないし60時間行われる。
前記焼成は、酸素、空気及び窒素の雰囲気で行われる。例えば、前記焼成は、空気雰囲気で行なわれる。
以下の実施例及び比較例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0064】
(スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物の製造)
〔製造例1(乾式法)〕
SnO(tin oxide)及びZnO(zinc oxide)を1:2の組成比で混合した後、ボールミル(planetary ball mill、Fritsch、Planetary monomill 6)で、300〜500rpmで5時間ミーリングした。次に、前記結果物を1,200℃で48時間、空気雰囲気で焼成させ、スピネル構造を有するSnZn
2O
4を製造した。次に、前記SnZn
2O
4を粉砕機(paint shaker)で1時間粉砕し、約100nmの粒径を有するSnZn
2O
4ナノ粒子を製造した。
製造例1で製造されたSnZn
2O
4ナノ粒子のSEM(scanning electron microscope)写真を
図2に示す。
【0065】
〔比較製造例1(共沈法)〕
SnCl
4(tin chloride)及びZn(NO
3)
2(zinc nitrate)を1:2の組成比で水に添加し、第1水溶液を準備した。LiOHを水に添加し、第2水溶液を準備した。前記第1水溶液と第2水溶液とを混合し、SnZn
2(OH)
8を共沈させた。前記沈殿したSnZn
2(OH)
8を濾過及び乾燥させた後、850℃で、12時間酸素雰囲気で焼成させ、SnZn
2O
4を製造した。次に、前記SnZn
2O
4を粉砕機(paint shaker)で1時間粉砕し、約100nmの粒径を有するSnZn
2O
4ナノ粒子を製造した。
【0066】
(表面処理された5V正極活物質の製造)
〔実施例1〕
SnO(tin oxide)及びZnO(zinc oxide)を1:2の組成比で混合した後、ボールミル(planetary ball mill、Fritsch、Planetary mono mill 6)で、300〜500rpmで5時間ミーリングした。次に、前記結果物を1,200℃で48時間空気雰囲気で焼成させ、スピネル構造を有するSnZn
2O
4を製造した。次に、前記SnZn
2O
4を粉砕機(paint shaker)で1時間粉砕し、約100nmの粒径を有するSnZn
2O
4ナノ粒子を製造した。
前記SnZn
2O
4ナノ粒子3重量部と、平均粒径10μmのLiNi
0.5Mn
1.5O
4粉末97重量部を混合した。
図3に、平均粒径10μmのLiNi
0.5Mn
1.5O
4粉末を示す。前記混合物を乾式表面処理装置(Hosokawa Micron Corporation、Japan、Mechanofusion device、Nobilta−130)に入れ、5分間6,000rpmで処理し、LiNi
0.5Mn
1.5O
4コア上に、SnMg
2O
4が含まれた表面処理層が形成された正極活物質を製造した。製造された正極活物質を
図4に示す。
【0067】
〔実施例2〕
SnO(tin oxide)及びMgO(magnesium oxide)をリチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にSnMg
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0068】
〔実施例3〕
MgO(magnesium oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にMgAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0069】
〔実施例4〕
CuO(copper oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にCuAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0070】
〔実施例5〕
ZnO(zinc oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)をリチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にZnAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0071】
〔実施例6〕
NiO(nickel oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)をリチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にNiAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0072】
〔実施例7〜12〕
使われた酸化物前駆体の含有量を、1重量%(リチウム非含有酸化物1重量部及び正極活物質99重量部の混合物)に変更したことを除いては、実施例1〜6と同じ方法で表面処理層が形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0073】
〔実施例13〜18〕
使われた酸化物前駆体の含有量を、5重量%(リチウム非含有酸化物5重量部及び正極活物質95重量部の混合物)に変更したことを除いては、実施例1〜6と同じ方法で表面処理層が形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0074】
〔実施例19〜24〕
使われた酸化物前駆体の含有量を、10重量%(リチウム非含有酸化物10重量部及び正極活物質90重量部の混合物)に変更したことを除いては、実施例1〜6と同じ方法で表面処理層が形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0075】
〔比較例1〕
表面処理層の製造過程なしに、平均粒径15μmのLiNi
0.5Mn
1.5O
4をそのまま正極活物質として使用した。
【0076】
(表面処理されたOLO正極活物質の製造)
〔実施例25〕
SnO(tin oxide)及びZnO(zinc oxide)を1:2の組成比で混合した後、ボールミル(planetary ball mill、Fritsch、Planetary mono mill 6)で、300〜500rpmで5時間ミーリングした。次に、前記結果物を、1,200℃で48時間空気雰囲気で焼成させ、スピネル構造を有するSnZn
2O
4を製造した。次に、前記SnZn
2O
4を、粉砕機(paint shaker)で時間粉砕し、約100nmの粒径を有するSnZn
2O
4ナノ粒子を製造した。
前記SnZn
2O
4ナノ粒子3重量部と、平均粒径10μmのLi[Li
0.05Ni
0.45Co
0.16Mn
0.35]O
2粉末97重量部とを混合した。前記混合物を乾式表面処理装置(Hosokawa Micron Corporation、Japan、Mechanofusiondevice、Nobilta−130)に入れて5分間6,000rpm処理し、Li[Li
0.05Ni
0.45Co
0.16Mn
0.35]O
2コア上に、SnZn
2O
4が含まれた表面処理層が形成された正極活物質を製造した。
【0077】
〔実施例26〕
SnO(tin oxide)及びMgO(magnesium oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にSnMg
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例25と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0078】
〔実施例27〕
MgO(magnesium oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にMgAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例25と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0079】
〔実施例28〕
CuO(copper oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にCuAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例25と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0080】
〔実施例29〕
ZnO(zinc oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にZnAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例25と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0081】
〔実施例30〕
NiO(nickel oxide)及びAl
2O
3(aluminum oxide)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用して組成比を調節し、表面にNiAl
2O
4が含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例25と同じ方法で正極活物質を製造した。
【0082】
〔実施例31〜36〕
使われたリチウム非含有酸化物の含有量を、1重量%(リチウム非含有酸化物1重量部及び正極活物質99重量部の混合物)に変更したことを除いては、実施例25〜30と同じ方法で表面処理層が形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0083】
〔実施例37〜42〕
使われたリチウム非含有酸化物の含有量を、5重量%(リチウム非含有酸化物5重量部及び正極活物質95重量部の混合物)に変更したことを除いては、実施例25〜30と同じ方法で表面処理層が形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0084】
〔実施例43〜48〕
使われたリチウム非含有酸化物の含有量を、10重量%(リチウム非含有酸化物10重量部及び正極活物質90重量部の混合物)に変更したことを除いては、実施例25〜30と同じ方法で表面処理層が形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0085】
〔比較例2〕
表面処理層製造過程なしに、平均粒径10μmのLi[Li
0.05Ni
0.45Co
0.16Mn
0.35]O
2をそのまま正極活物質として使用した。
【0086】
(正極の製造)
〔実施例49〕
実施例1で製造された正極活物質、炭素導電剤(Ketchen Black、EC−600JD)、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、93:3:4の重量比で混合した混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)と共にメノウ乳鉢で混合してスラリを製造した。15μm厚のアルミニウム集電体上に前記スラリを、ドクターブレードを使用し、約20μm厚に塗布して常温で乾燥した後、真空、120℃の条件で、さらに1回乾燥させて正極活物質層が形成された正極板を製造した。
【0087】
〔実施例50〜96〕
実施例2ないし48の正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例49と同じ方法で正極板を製造した。
【0088】
〔比較例3,4〕
比較例1,2の正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例49と同じ方法で正極板を製造した。
(リチウム電池の製造)
【0089】
〔実施例97〕
前記実施例49で製造された正極板を使用し、リチウム金属を対電極とし、PTFEセパレータ、及び1.3M LiPF
6が、エチレンカーボネート(EC)+ジエチルカーボネート(DEC)(3:7体積比)に溶けている溶液を電解質として使用し、コインセルを製造した。
【0090】
〔実施例98〜144〕
実施例50〜96で製造された正極をそれぞれ使用したことを除いては、前記実施例97と同じ方法で製造した。
【0091】
〔比較例5,6〕
比較例3,4で製造された正極をそれぞれ使用したことを除いては、前記実施例97と同じ方法で製造した。
【0092】
〔評価例1:XRD(x−ray diffraction)実験〕
前記製造例1及び比較製造例1で製造されたSnZn
2O
4それぞれの表面に対して、XRD(X−ray diffraction)実験を行い、その結果を
図1に示した。XRDは、Cu−Kα線を使用して測定した。
図1で(a)は、比較製造例1で製造されたSnZn
2O
4に係わるXRD結果である。
図1で(b)は、製造例1で製造されたSnZn
2O
4に係わるXRD結果である。
図1の(b)から分かるように、製造例1のSnZn
2O
4は、スピネル構造を有するSnZn
2O
4に係わる特性ピークだけ示されたが、
図1の(a)から分かるように、比較製造例1のSnZn
2O
4は、不純物相(impurity phase)に該当するピークが多く示されている。製造例1で製造されたSnZn
2O
4は、実質的に不純物を含んでいない。すなわち、Cu−Kα線を使用するX線回折スペクトルで、不純物に係わるピークの強度が、ノイズレベル以下であった。
また、
図1(b)で、2θ=34゜近くで、(311)面に係わる回折ピークが示され、前記回折ピークの半値幅(FWHM)は、0.530゜であった。これに比べ、
図1(a)で、(311)面に係わる回折ピークの半値幅(FWHM)は、0.260゜であった。すなわち、製造例1のSnZn
2O
4は、比較製造例1のSnZn
2O
4に比べ、結晶性が顕著に向上している。
【0093】
〔評価例2:ICP実験〕
前記実施例1で製造された正極活物質表面に対し、ICP(ion coupled plasma)実験を行った。
ICP実験に使われた機器は、シマズ(Shimadzu)社モデルICPS−8100であった。前記正極活物質表面でのSn:Znの組成比は、1.000:2.000であった。
【0094】
〔評価例3:60℃高温安定性実験〕
前記実施例97〜120及び比較例5で製造されたコインセルに対し、最初のサイクルで、0.05Cの速度で4.45Vまで定電流充電し、0.05Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。2回目のサイクルは、0.1Cの速度で4.45Vまで定電流充電し、次に、4.45Vに維持しつつ、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、0.1Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。3回目のサイクルは、0.5Cの速度で4.45Vまで定電流充電し、次に、4.45Vに維持しつつ、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、0.2Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。前記3回目のサイクルでの放電容量を標準容量とした。
4回目のサイクルで、0.5Cの速度で4.45Vまで充電し、次に、4.45Vに維持しつつ、電流が0.05Cになるまで定電圧充電した後、前記充電された電池を60℃のオーブンに7日間保管した後、前記電池を取り出し、0.1Cの速度で3.0Vまで4回目サイクルの放電を進めた。充放電結果の一部を下記表1に示した。高温保管後、容量維持率は、下記数式1で定義される。
(数式1)
高温保管後の容量維持率[%]=[4回目サイクルでの高温放置後の放電容量/標準容量]Χ100(ただし、前記標準容量は、3回目サイクルでの放電容量である)
【0095】
〔評価例4:90℃高温安定性実験〕
実施例97〜120及び比較例5で製造されたコインセルに対し、前記充電された電池を90℃のオーブンに4時間保管したことを除いては、前記評価例3と同一に実験した。充放電結果の一部を下記表1に示した。高温保管後の容量維持率は、前記数式1で定義されている。
【0097】
前記表1から分かるように、実施例97,98のリチウム電池は、比較例5のリチウム電池に比べ、高温保管後の容量維持率が顕著に向上している。すなわち、高温安定性が顕著に向上したのを有している。
【0098】
〔評価例7:高温充放電実験〕
前記実施例97〜120及び比較例5で製造された前記コインセルを、60℃の高温で、リチウム金属に対して、3.5〜4.9Vの電圧範囲で1C rateの定電流で、100回充放電を行った。100回目サイクルでの容量維持率は、下記数式2で表示される。初期クーロン効率は、下記数式3で表示される。100回目サイクルでの容量維持率及び初期クーロン効率を下記表2に示した。
(数式2)
100回目サイクルでの容量維持率[%]=[100回目サイクルでの放電容量/最初のサイクルでの放電容量]×100
(数式3)
初期クーロン効率[%]=[最初のサイクルでの放電容量/1thサイクルでの充電容量]×100
【0100】
前記表2から分かるように、実施例97,98のリチウム電池は、比較例5のリチウム電池に比べて向上した高温寿命特性及び初期クーロン効率を示した。
【0101】
〔評価例6:高率特性実験〕
実施例97,98及び比較例5で製造された前記コインセルに対し、常温でリチウム金属に対して、3.5〜4.9Vの電圧範囲で、0.1C rateの定電流で充電させつつ、電流密度が増大することによる放電容量の容量維持率を
図4に示した。放電時の電流密度は、それぞれ0.1C,0.2C,0.5C、1C、2C、5C、8C及び10C rateであった。
図5で、容量維持率は、下記数式4から計算される。
(数式4)
レート別容量維持率[%]=[レート別放電容量/0.1Cでの放電容量]×100
図5から分かるように、実施例97,98のリチウム電池は、比較例5のリチウム電池に比べて高率特性が向上している。