(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄処理炉が、少なくとも一端が開口する石英製の反応管と、前記開口を閉塞する金属製の第1フランジと、を有する、請求項1に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
前記洗浄処理炉が、両端が開口する石英製の反応管と、前記開口の一端側を閉塞する金属製の第1フランジと、前記開口の他端側を閉塞する金属製の第2フランジと、を有する請求項1に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
前記第1温度制御装置が、前記反応管及び前記フランジのうち、前記洗浄処理炉内の表面を構成する1以上の部分をそれぞれ独立して温度制御する、1以上の温度制御機構を有する、請求項2又は3に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
前記フランジの前記洗浄処理炉内と対向する面と反対側、及び前記フランジの内側のうち、いずれか一方又は両方に、前記温度制御機構の少なくとも1つが設けられる、請求項4に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構造によって、洗浄処理炉内への反応生成物の付着を防ぐことが可能な、半導体製造装置部品の洗浄装置、半導体製造装置部品の洗浄方法、及び半導体製造装置部品の洗浄システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 半導体が付着した半導体製造装置部品の洗浄装置であって、
前記半導体製造装置部品を収容する洗浄処理炉と、
前記洗浄処理炉内の前記半導体製造装置部品を加熱する加熱装置と、
前記洗浄処理炉内を真空排気する減圧装置と、
前記洗浄処理炉内に、前記半導体と反応するクリーニングガスを導入するガス導入管と、
前記洗浄処理炉内から、前記半導体と前記クリーニングガスとの反応生成物を排出するガス排出管と、
前記洗浄処理炉内の表面の温度を所要の範囲に維持する第1温度制御装置と、
前記ガス排出管内の温度を所要の範囲に維持する第2温度制御装置と、を備える、半導体製造装置部品の洗浄装置。
[2] 前記洗浄処理炉が、少なくとも一端が開口する石英製の反応管と、前記開口を閉塞する金属製の第1フランジと、を有する、[1]に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[3] 前記洗浄処理炉が、両端が開口する石英製の反応管と、前記開口の一端側を閉塞する金属製の第1フランジと、前記開口の他端側を閉塞する金属製の第2フランジと、を有する[1]に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[4] 前記第1温度制御装置が、前記反応管及び前記フランジのうち、前記洗浄処理炉内の表面を構成する1以上の部分をそれぞれ独立して温度制御する、1以上の温度制御機構を有する、[2]又は[3]に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[5] 前記フランジの前記洗浄処理炉内と対向する面と反対側、及び前記フランジの内側のうち、いずれか一方又は両方に、前記温度制御機構の少なくとも1つが設けられる、[4]に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[6] 前記温度制御機構が、液体の供給及び液体の循環のうち、いずれか一方又は両方によるものである、[4]又は[5]に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[7] 前記温度制御機構が、
前記フランジの前記洗浄処理炉内と対向する面と反対側、及び前記フランジの内側のうち、いずれか一方又は両方に設けられた前記液体の流路からなる1以上の熱交換部と、
前記熱交換部に前記液体を供給する1以上の供給経路と、
前記熱交換部から前記液体を排出する1以上の排出経路と、
少なくとも1以上の前記排出経路から分岐し、少なくとも1以上の前記供給経路へ合流して、前記排出経路内の液体の一部を前記供給経路へ返送する1以上の返送経路と、
前記供給経路に設けられ、前記熱交換部への前記液体の供給量を段階的又は連続的に調節する1以上の第1開閉バルブと、
前記排出経路に設けられた1以上の温度測定装置と、
前記返送経路に設けられた1以上の圧送装置と、を有する、[6]に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[8] 前記洗浄処理炉の外側から前記洗浄処理炉の隙間に向けて、温度制御されたパージガスを供給するパージガス供給機構をさらに備える、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[9] 前記半導体が、一般式Al
xIn
yGa
1−x−yN(但し、x、yは、0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物系化合物半導体であり、
前記クリーニングガスが、塩素系ガスである、[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置。
[10] [1]乃至[9]のいずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置を用い、
半導体が付着した半導体製造装置部品を洗浄処理炉内に収容し、
前記半導体製造装置部品を加熱しながら、前記洗浄処理炉内の真空排気を繰り返し行って前記洗浄処理炉内をパージし、
前記洗浄処理炉内にクリーニングガスを導入して、前記半導体製造装置部品を洗浄した後に、
前記洗浄処理炉内の真空排気を繰り返し行って、前記洗浄処理炉内から前記半導体と前記クリーニングガスとの反応生成物をガス排出管へ排出する、半導体製造装置部品の洗浄方法であって、
前記洗浄処理炉内にクリーニングガスを導入して、前記半導体製造装置部品を洗浄し、前記洗浄処理炉内の真空排気を繰り返し行って、前記洗浄処理炉内から前記半導体と前記クリーニングガスとの反応生成物をガス排出管へ排出する間、前記洗浄処理炉内の表面の温度を所要の範囲に維持し、
前記洗浄処理炉内から前記半導体と前記クリーニングガスとの反応生成物をガス排出管へ排出する間、前記ガス排出管内の温度を所要の範囲に維持する、半導体製造装置部品の洗浄方法。
[11] 半導体製造装置部品が配置された成膜炉内で、基材上に半導体の層又は被膜を形成する半導体製造装置と、
洗浄処理炉内で、前記半導体が付着した前記半導体製造装置部品を洗浄する、[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の半導体製造装置部品の洗浄装置と、を備える半導体製造装置部品の洗浄システム。
[12] 前記半導体製造装置と、前記半導体製造装置部品の洗浄装置との間で、前記半導体装置部品を受け渡す搬送装置をさらに備える、[11]に記載の半導体製造装置部品の洗浄システム。
[13] 前記搬送装置内の搬送処理空間が、前記成膜炉内及び前記洗浄処理炉内とそれぞれ連通する、[12]に記載の半導体製造装置部品の洗浄システム。
[14] 前記搬送装置が、前記搬送処理空間を2以上に分割可能な、1以上のゲート弁を有する、[13]に記載の半導体製造装置部品の洗浄システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体製造装置部品の洗浄装置、半導体製造装置部品の洗浄方法、及び半導体製造装置部品の洗浄システムによれば、簡単な構造及び簡単な制御によって、洗浄処理炉内への反応生成物の付着を防ぐことができる。したがって、反応生成物が塩化物であり、炉内に水分が付着した場合であっても、炉内の腐食を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である半導体製造装置部品の洗浄装置について、それを備える洗浄システム及び洗浄方法とともに図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<半導体製造装置部品の洗浄装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である半導体製造装置部品の洗浄装置の構成について説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態である半導体製造装置部品の洗浄装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
本実施形態の半導体製造装置部品の洗浄装置(以下、単に「洗浄装置」という)は、後述する半導体製造装置の成膜炉内にあって、成膜によって化合物半導体が堆積(付着)した部品(以下、半導体製造装置部品という)を洗浄するための装置である。
図1に示すように、本実施形態の洗浄装置1は、洗浄処理炉2、加熱装置3、ガス導入管4、ガス排出管5、減圧装置6、第1温度制御装置7、第2温度制御装置8、及びパージガス供給機構9を備えて、概略構成されている。
【0015】
洗浄対象となる半導体装置部品10は、化合物半導体(半導体)が付着したものであれば、特に限定されない。半導体装置部品としては、例えば、MOCVDやPECVD等の薄膜形成装置の炉内に設置されるサセプタ等が挙げられる。また、半導体装置部品の材質としては、特に限定されないが、石英製、SiC製、SiCコーティングしたもの等を適用できる。
【0016】
除去対象となる化合物半導体は、特に限定されない。本実施形態では、化合物半導体が、一般式Al
xIn
yGa
1−x−yN(但し、x、yは、0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1である。)で表記される窒化物系化合物半導体である場合、より具体的には、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)である場合に、特に顕著な効果が得られる。
【0017】
洗浄処理炉2は、半導体製造装置部品10を収容して、洗浄処理するための密閉された空間である。洗浄処理炉2の構成は、特に限定されない。洗浄処理炉2は、鉛直方向上下に軸線方向を有し、上端(一端)及び下端(他端)が開口する石英製の反応管11と、上端開口を閉塞する金属製の上側フランジ(第1フランジ)12と、下端開口を閉塞する金属製の下側フランジ(第2フランジ)13とを有する縦型炉である。反応管11と上側フランジ12及び下側フランジ13との接続部には、1つ又は2以上の耐熱性のOリング(図示略)がそれぞれ設けられている。換言すると、反応管11と上側フランジ12及び下側フランジ13とは、1つ又は2以上の耐熱性のOリング(図示略)を介して、それぞれ接続されている。
【0018】
洗浄処理炉2内には、半導体装置部品10を載置するための架台(ステージ)14が設けられている。架台14は、回転軸15に軸支されている。回転軸15は、下側フランジ13を貫通するように設けられている。架台14は、回転軸15とともに、洗浄処理炉2内で回転可能とされている。
【0019】
洗浄処理炉2は、上側フランジ12及び下側フランジ13のうち、少なくともいずれか一方のフランジの一部または全部が開放可能に構成される。本実施形態では、下側フランジ13は、反応管11側から順に、4つのフランジ13a〜13dが耐熱性のOリング等を介して積層されて構成されている。下側フランジ13のうち、最下方のフランジ13dが昇降フランジであり、反応管11側のフランジ13cと昇降フランジ13dとの間で洗浄処理炉2内を開放可能となっている。昇降フランジ13dとともに架台14を上昇・下降させることで、洗浄処理炉2の下方から半導体装置部品10を搬入・搬出できる。なお、4つのフランジ13a〜13dのうち、フランジ13a〜13cの間は、溶接されていてもよい。
【0020】
加熱装置3は、洗浄処理炉2内の半導体製造装置部品10を加熱するための熱源である。本実施形態では、加熱装置3は、洗浄処理炉2の外側に設けられている。加熱装置3は、洗浄処理炉2内の半導体製造装置部品10を所要の温度まで加熱できるものであれば、特に限定されない。加熱装置3としては、高周波誘導加熱装置の加熱コイル、加熱ランプ、加熱ヒータ等が挙げられる。これらの中でも、加熱装置3として、半導体装置部品10を約1000℃程度まで加熱可能な加熱コイルを用いることが好ましい。加熱装置3として加熱コイルを用いる場合、反応管11の周囲を巻回するように設けることが好ましい。
【0021】
ガス導入管4は、パージ用の不活性ガス、化合物半導体と反応するクリーニングガス、クリーニングガスと共に用いるキャリアガスを洗浄処理炉2内に導入するためのガス導入経路である。本実施形態では、ガス導入管4は、上側フランジ12を貫通するように設けられている。
【0022】
本実施形態の洗浄装置1で用いるクリーニングガスは、特に限定されるものではなく、半導体装置部品10に付着した化合物半導体(半導体)の種類に応じて適宜選択することができる。ここで、化合物半導体が上述した窒化物系化合物半導体である場合、クリーニングガスとして、Cl
2、HCl、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
3Cl、BCl
3、CHCl
3、CH
2Cl
2、CH
3Cl等の分子内に塩素を含む塩素系ガスを用いることができる。これらの中でも、塩素(Cl
2)ガスがとくに好ましい。また、クリーニングガスとして、上述した塩素系ガスのうち1種または2種以上の混合物を用いてもよいし、窒素等のキャリアガスによって濃度調整したものを用いてもよい。
【0023】
ガス排出管5は、洗浄処理炉内に導入したパージガスや、半導体製造装置部品10に付着した化合物半導体とクリーニングガスとの反応生成物を洗浄処理炉2内から排出するためのガス排出経路である。本実施形態では、ガス排出管5は、下側フランジ13(具体的には、フランジ13b)を貫通するように設けられている。また、ガス排出管5は、主経路5Aと、主経路5Aと分岐した後、再び合流するバイパス経路5Bとを有していてもよい。その場合、主経路5A及びバイパス経路5Bには、それぞれ切り替え用の開閉バルブ(図示略)が設けられることが好ましい。
【0024】
また、ガス排出管5の下流側には、洗浄処理炉2内から排出された反応生成物を冷却・凝集させて補足するためのトラップ(図示せず)が設けられている。さらに、ガス排出管5の下流側には、塩素系ガスの除害装置(図示せず)が設けられている。
【0025】
減圧装置6は、洗浄処理炉2内を真空排気するために、ガス排出管5の主経路5Aに設けられている。減圧装置6は、洗浄処理炉2内を所要の真空度に到達させるものであれば、特に限定されない。このような減圧装置6としては、ロータリーポンプ、ドライポンプ等を用いることができる。これらの中でも、減圧装置6としてドライポンプを用いることが好ましい。
【0026】
第1温度制御装置7は、接ガス部となる洗浄処理炉2内の表面2Aの温度を所要の範囲に維持するために設けられている。第1温度制御装置7は、上側フランジ12の炉内側表面12Aの温度を制御する温度制御機構16と、下側フランジ13の炉内側表面13Aの温度を制御する温度制御機構17と、を備えて構成されている。すなわち、第1温度制御装置7は、上側フランジ12及び下側フランジ13をそれぞれ独立して温度制御することができる。なお、第1温度制御装置7は、反応管11と上側フランジ12及び下側フランジ13との接続部の温度を所要の範囲に維持するように設けることが好ましい。これにより、反応管11と上側フランジ12及び下側フランジ13との接続部に設けられたOリングを耐熱温度以下に保持できる。
【0027】
図2は、上側フランジ12に設けられている温度制御機構16の構成の一例を示す図である。温度制御機構16は、上側フランジ12の炉内側表面12Aの温度を所要の温度範囲に制御できるものであれば、特に限定されない。温度制御機構16としては、温度制御された液体との熱交換によって、上側フランジ12の炉内側表面12Aの温度を制御する機構が好ましい。
【0028】
具体的には、温度制御機構16は、熱交換部18と、熱交換部18に液体を供給する供給経路L1と、熱交換部18から液体を排出する排出経路L2と、排出経路L2から分岐し、供給経路L1に合流する返送経路L3と、第1開閉バルブ19と、第2開閉バルブ20と、温度計(温度測定装置)21と、ポンプ(圧送装置)22と、を有して構成されている。
【0029】
熱交換部18は、上側フランジ12の内側に設けられた液体の流路である。この流路に所要の温度を有する液体を供給することで、上側フランジ12との間で熱交換が行われる。すなわち、上側フランジ12を冷却したい場合、熱交換部18に上側フランジ12よりも低い温度の液体を供給すればよい。また、上側フランジ12を加熱したい場合、熱交換部18に上側フランジ12よりも高い温度の液体を供給すればよい。さらに、上側フランジ12を所要の温度に維持したい場合、熱交換部18に所要の温度に制御された液体を供給すればよい。
【0030】
本実施形態では、熱交換部18を上側フランジ12の内側に設ける構成を一例として説明したが、これに限定されない。上側フランジ12の炉内側表面12Aと反対側の表面と接するように、液体の流路が設けられてもよい。また、熱交換部18は少なくとも1つ有していればよく、2つ以上有する構成であってもよい。
【0031】
供給経路L1は、図示略の供給源から液体を熱交換部18に供給するために設けられた、配管等の経路である。供給経路L1は、主経路L1Aと、副経路L1Bとに分岐し、再び合流した後で熱交換部18と接続されている。
【0032】
供給経路L1には、熱交換部18への液体の供給量を段階的又は連続的に調節するために、第1開閉バルブ19が設けられている。具体的には、供給経路L1を構成する主経路L1A及び副経路L1Bには、第1開閉バルブ19A,19Bがそれぞれ設けられている。
【0033】
第1開閉バルブ19Aは、洗浄装置1を運転する際、供給経路L1内の液体を常時流動させるために一定の開度に制御される。供給源からの液体を熱交換部18に常時供給することで、上側フランジ12を耐熱温度以下に制御できる。
【0034】
第1開閉バルブ19Bは、後述する温度計21と電気的に接続されており、温度計21から送信された制御信号を受信して所要の開度に制御される。第1開閉バルブ19Aと第1開閉バルブ19Bとを併用することで、必要な液体の供給量を即時に供給できるため、温度制御の応答速度が向上する。
【0035】
本実施形態では、1つの熱交換部18に液体を供給する1つの供給経路L1を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。1つの熱交換部18に対して2以上の供給経路L1を有していてもよいし、2以上の熱交換部18に対して対応する数の供給経路L1を有する構成であってもよい。さらに、1本の供給経路L1が分岐して2以上の熱交換部18に供給する態様であってもよい。
【0036】
また、本実施形態では、1本の供給経路L1から分岐した各経路L1A,L1Bにそれぞれ第1開閉バルブ19A,19Bを設ける構成を一例として説明したが、これに限定されない。2以上の供給経路L1にそれぞれ第1開閉バルブ19を設ける構成であってもよいし、1本の供給経路L1が2以上に分岐する場合、分岐する前に設ける態様でもよいし、分岐前後に全て設ける態様であってもよい。
【0037】
排出経路L2は、熱交換部18から熱交換後の液体を排出するために設けられた、配管等の経路である。排出経路L2には、温度計21、及び第2開閉バルブ20が設けられている。
【0038】
温度計21は、熱交換部18から排出された液体の温度を測定する。温度計21は、第2開閉バルブ19Bと電気的に接続されており、熱交換部18から排出された液体の温度に応じて、第2開閉バルブ19Bへ制御信号を送信する。
【0039】
第2開閉バルブ20は、熱交換部18から排出された液体のうち、系外への排出量を段階的又は連続的に調節する。具体的には、洗浄装置1を運転する際、第1開閉バルブ19Aの開度に応じて、第2開閉バルブ20の開度が制御される。また、第1開閉バルブ19A,19Bが併用された場合、それらの合計の開度に応じて、第2開閉バルブ20の開度が制御される。なお、後述するように返送経路L3にポンプ22を設けて、液体を循環経路内で循環させる場合には、第2開閉バルブ20を省略することもできる。
【0040】
本実施形態では、1つの熱交換部18から液体を排出する1つの排出経路L2を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。1つの熱交換部18に対して2以上の排出経路L2を有していてもよいし、2以上の熱交換部18に対して対応する数の排出経路L2を有する構成であってもよい。さらに、2以上の熱交換部18から同数の排出経路に排出された後、1本の排出経路L2に合流する態様であってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、1本の排出経路L2に1つの第2開閉バルブ20を設ける構成を一例として説明したが、これに限定されない。2以上の排出経路L2にそれぞれ第2開閉バルブ20を設ける構成であってもよいし、2以上の排出経路L2が1本に合流する場合、合流する前にそれぞれ設ける態様でもよいし、合流前後に全て設ける態様であってもよい。
【0042】
返送経路L3は、排出経路L2から分岐した後、供給経路L1に合流して、排出経路L2内の熱交換後の液体の一部を供給経路L1に返送するために設けられた、配管等の経路である。具体的には、排出経路L2の温度計21と第2開閉バルブ20との間を分岐点とし、供給経路L1の主経路L1Aと副経路L1Bとの二次側を合流点として、分岐点と合流点との間にわたって設けられている。すなわち、本実施形態の温度制御機構16には、上記合流点から熱交換部18までの供給経路L1と、熱交換部18と、熱交換部18から上記分岐点までの排出経路L2と、返送経路L3とからなる、液体の循環経路が設けられている。
【0043】
また、返送経路L3には、所要の圧力・流量で液体を圧送するポンプ22が設けられている。これにより、熱交換部18から排出された熱交換後の液体の一部は、所要の流量で供給経路L1に返送され、供給経路L1内の液体と混合された後、再び熱交換部18に供給される。すなわち、循環経路内に液体が循環される。
【0044】
本実施形態では、1本の排出経路L2から1本の供給経路L1に液体を返送する1つの返送経路L3を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。上述した供給経路L1及び排出経路L2と同様に、種々の変更を設けてもよい。また、本実施形態では、1本の返送経路L3に1つのポンプ22を有する構成を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、種々の変更を設けてもよい。
【0045】
温度制御機構16では、洗浄装置1を運転する際、第1開閉バルブ19Aを一定の開度に制御して、供給経路L1内の液体を常時流動させる。具体的には、供給源から液体を供給経路L1に供給する。供給経路L1から熱交換部18に供給された液体は、上側フランジ12と熱交換された後、熱交換部18から排出経路L2へ排出される。排出経路L2に排出された液体は、一部が返送経路L3から供給経路L1へ返送され、残部が排出経路L2に設けられた第2開閉バルブ20を介して系外へ排出される。ここで、供給経路L1へ返送された液体は、供給経路L1内の液体と混合された後、再び熱交換部18に供給される。
【0046】
洗浄処理炉2内で加熱された半導体製造装置部品10の輻射熱等によって上側フランジ12の温度が上昇すると、熱交換部18において上側フランジ12と熱交換された液体の温度も上昇する。さらには、返送経路L3によって返送された液体と混合されるため、供給経路L1から熱交換部18へ供給される液体(すなわち、循環経路内の液体)の温度も上昇する。
【0047】
ここで、排出経路L2に設けられた温度計21によって測定した循環経路内の液体の温度が所要の温度範囲の上限値を超える場合、循環経路内の液体を冷却する。具体的には、副経路L1Bに設けられた第1開閉バルブ19Bを開いて供給源からの液体の供給量を増加させる。併せて、ポンプ22の出力を制御して返送経路L3から返送する液体の流量を少なくし、排出経路L2に設けられた第2開閉バルブ20の開度を大きくして系外への液体の排出量を増加させる。このように、循環経路内の液体の温度を所要の温度範囲内で一定の温度に制御することにより、上側フランジ12の温度上昇を抑制することができる。
【0048】
一方、洗浄処理炉2内で半導体製造装置部品10の加熱が停止すると、上側フランジ12の温度が下降する。ここで、排出経路L2に設けられた温度計21によって測定した循環経路内の液体の温度が所要の温度範囲の下限値に満たない場合、循環経路内の液体を維持する。具体的には、副経路L1Bに設けられた第1開閉バルブ19Bを閉じる。併せて、ポンプ22の出力を制御して返送経路L3から返送する液体の流量を多くし、排出経路L2に設けられた第2開閉バルブ20の開度を小さくして系外への液体の排出量を減少させる。このように、循環経路内の液体の温度を所要の温度範囲内で一定の温度に制御することにより、上側フランジ12の温度下降を抑制することができる。
【0049】
このように、熱交換部18から排出される液体の温度、すなわち、循環経路内の液体の温度を所要の温度範囲内で一定の温度に制御することで、上側フランジ12の炉内側表面12Aの温度を所要の温度範囲に緩やかに制御することができる。また、循環経路内の液体の温度や流量は、洗浄処理炉2内の半導体製造装置部品10の加熱温度で予め確認したテーブルを用いて設定してもよい。
【0050】
本実施形態では、温度制御機構16が、循環経路内の液体の温度を測定し、所要の温度範囲に制御された循環経路内の液体と上側フランジ12とを熱交換することで上側フランジ12の炉内側表面12Aの温度を制御する態様を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、上側フランジ12の内部あるいは表面に冷却用の液体流路と加熱用の液体流路とをそれぞれ設け、上側フランジ12の炉内側表面12Aの温度に応じて冷却用あるいは加熱用の液体を適宜供給する構成としてもよい。
【0051】
温度制御機構17は、
図1に示すように、下側フランジ13の炉内側表面13Aの温度を制御する。温度制御機構17は、下側フランジ13の炉内側表面13Aの温度を所要の温度範囲に制御できるものであれば、特に限定されない。このような温度制御機構17としては、温度制御された液体の供給又は循環による構成とすることが好ましく、温度制御機構16と同様に、下型フランジ13を構成するフランジ13a、13c、13dのそれぞれに、温度制御された液体を供給あるいは循環させることで循環経路内の液体の温度を制御する構成がより好ましい。
【0052】
以上説明したように、第1温度制御装置7は、複数の温度制御機構16,17を有するため、上側フランジ12及び下側フランジ13をそれぞれ独立して温度制御することができる。
【0053】
また、上述した温度制御機構16,17の少なくとも一方又は両方が、温度制御された液体の供給又は循環による構成とすることで、温度制御が容易であるとともに、設置コストを低減することができる。
【0054】
冷却媒体及び加熱媒体として用いる温度制御された液体は、特に限定されるものではなく、洗浄処理炉2内を所要の温度範囲に維持可能なものを適宜選択することができる。これらの中でも、上側フランジ12及び下側フランジ13の炉内側表面の温度を70〜80℃に制御する場合、液体として水を用いることが、安全性の面や経済性の面から好ましい。
【0055】
なお、本実施形態では、第1温度制御装置7が、耐熱温度が高く、熱容量が大きい石英製の反応管11の温度制御機構を有しない構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、第1温度制御装置が、反応管11の温度制御機構、上側フランジ12の温度制御機構16及び下側フランジ13の温度制御機構17を有する構成としてもよい。このような構成により、洗浄処理炉2内の表面2Aの温度をより正確に制御することができる。
【0056】
図1に示すように、第2温度制御装置8は、反応生成物がガス排出管5内に付着しないように、ガス排出管5内の温度を所要の範囲に維持する。第2温度制御装置8は、ガス排出管5において洗浄処理炉2の外側の部分から図示略のトラップにわたって設けることが好ましい。また、第2温度制御装置8は、ガス排出管5が主経路5Aとバイパス経路5Bとに分岐する場合、両方の経路にわたって設けることが好ましい。
【0057】
第2温度制御装置8は、ガス排出管5内の温度を所要の範囲に維持できるものであれば、特に限定されない。第2温度制御装置8としては、配管ヒータ、ブロックヒータ等を用いることができる。これらをガス排出管5の形状に合わせて適宜用いることが好ましい。
【0058】
パージガス供給機構9は、洗浄処理炉2の外側から洗浄処理炉2の隙間に向けて、温度制御されたパージガスを供給する。パージガス供給機構9は、パージガスである不活性ガス供給源(図示略)と、不活性ガス供給源に接続されたパージガス供給経路(図示略)と、パージガス供給経路の先端に設けられたパージガス噴出口9Aと、を備える。
【0059】
ここで、洗浄処理炉2の隙間とは、洗浄処理炉2を構成する反応管11と上側フランジ12及び下側フランジ13との接続部や、ガス導入管4、ガス排出管5及び回転軸15等が上下フランジ12、13を貫通する部分等、温度制御が困難であって所要の表面温度に制御することが困難な部分をいう。パージガス供給機構9により、洗浄処理炉2の隙間に温度制御されたパージガスを供給することで、洗浄処理炉2内の表面温度が局所的に低下することを防ぐことができる。したがって、洗浄処理炉2内の表面に、反応生成物が付着することを防ぐことができる。
【0060】
<半導体製造装置部品の洗浄システム>
次に、上述した洗浄装置1を備える、洗浄システムについて説明する。
図3は、本発明を適用した一実施形態である半導体製造装置部品の洗浄システムの構成の一例を示す模式図である。また、
図4は、本実施形態の洗浄システムにおいて、半導体製造装置部品10の受け渡しを説明するための図である。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の半導体製造装置部品の洗浄システム(以下、単に「洗浄システム」という)50は、半導体製造装置101と、洗浄装置1と、搬送装置24とを備えて概略構成されている。
【0062】
(半導体製造装置)
半導体製造装置101は、基材上に半導体の層や被膜を形成するものであれば、特に限定されない。半導体製造装置101としては、例えば、MOCVD、PECVD等の化学蒸着法を利用した装置や、真空蒸着、分子線蒸着(MBE)等の物理蒸着法を利用した装置を用いることができる。以下、半導体装置101が、CVD成膜装置である場合を一例として説明する。
【0063】
半導体装置101は、半導体製造装置部品10が配置される成膜炉(反応炉)102、成膜炉102内の基材を所要の温度まで加熱する加熱装置103を備える。
成膜炉102は、反応管111、上側フランジ112及び下側フランジ113を有する。
成膜炉102内には、半導体製造装置部品10を載置する架台114と、架台114を支持する回転軸115とが設けられている。
下側フランジ113は、フランジ113a〜113dから構成されており、フランジ113dが昇降フランジとなっている。フランジ13dは、回転時115を回転可能に軸支しており、フランジ13dの昇降とともに、架台114も昇降する。
【0064】
(搬送装置)
搬送装置24は、半導体製造装置101と洗浄装置1との間で、洗浄対象である半導体製造装置部品10の受け渡しが可能なものであれば、特に限定されない。
搬送装置24は、内側に密閉された搬送処理空間を有する。また、搬送装置24は、搬送処理空間を仕切る、開閉式のゲートバルブ28、29を有する。ゲートバルブ28、29により、搬送処理空間は、第1待機室25、ブロー室26及び第2待機室27の3つの空間に分割される。
【0065】
第1待機室25は、洗浄処理炉2の下方に配置される。ここで、
図4に示すように、洗浄処理炉2の下側フランジ13を構成する昇降フランジ13dを開放することで、搬送処理空間である第1待機室25と洗浄処理炉2内とが連通する。また、昇降フランジ13dともに架台14を下降させることで、洗浄処理炉2の下側から半導体装置部品10を第1待機室25へ搬出できる。反対に、第1待機室25において半導体製造装置部品10を載置した架台14を昇降フランジ13dともに上昇させることで、第1待機室25から洗浄処理炉2内へ半導体製造装置部品10を搬入できる。
【0066】
ブロー室26は、
図3に示すように、第1待機室25と第2待機室27との間に、それぞれに隣接して配置される。ブロー室26では、半導体製造装置部品10の洗浄後に残る可能性がある、膜の最上部に存在する酸化層から発生する残渣をブローにより除去する。ブロー室26には、グローブボックス31と、ブローノズル32と、ブロア33と、ポンプ等を介してブローノズル32と気密につながった吸引ポート34と、ブロア33の吸引側の直前で残渣(微粒子)を捕捉するフィルタ35とが設けられている。これにより、大気成分を混入させることなく、半導体製造装置部品10の残渣をブローによって除去できる。
【0067】
第2待機室27は、成膜炉102の下方に配置される。ここで、
図4に示すように、成膜炉102の下側フランジ113を構成する昇降フランジ113dを開放することで、搬送処理空間である第2待機室27と成膜炉102内とが連通する。また、昇降フランジ113dともに架台114を下降させることで、成膜炉102の下側から半導体装置部品10を第2待機室27へ搬出できる。反対に、第2待機室27において半導体製造装置部品10を載置した架台114を昇降フランジ113dともに上昇させることで、第2待機室27から成膜炉102内へ半導体製造装置部品10を搬入できる。
【0068】
搬送装置24は、フォーク機構30を有する。フォーク機構30は、搬送処理空間において半導体製造装置部品10を把持できる。また、フォーク機構30は、搬送装置24の搬送処理空間内を水平方向に移動できる。すなわち、ゲートバルブ28、29を開放することで、フォーク機構30が半導体製造装置部品10を把持した状態で、第1待機室25、ブロー室26及び第2待機室27を横断するように、水平方向に搬送することができる。
【0069】
<半導体製造装置部品の洗浄方法>
次に、本実施形態の半導体製造装置部品の洗浄方法について説明する。
本実施形態の半導体製造装置部品の洗浄方法(以下、単に洗浄方法という)は、洗浄装置1を備える洗浄システム50を用いて行う。
なお、本実施形態では、化合物半導体(半導体)が窒化物系化合物半導体の窒化ガリウム(GaN)であり、クリーニングガスとして塩素ガス(Cl
2)を用いる場合を一例として説明する。
【0070】
(第1ステップ)
先ず、化合物半導体(半導体)が付着した半導体製造装置部品10を半導体製造装置101の成膜炉102内から取り出して、洗浄装置1の洗浄処理炉2内に収容する。
具体的には、先ず、
図3及び
図4に示すように、成膜炉102の下側フランジ113のうち、昇降フランジ113dを開放して成膜炉102内と第2待機室27とを連通させる。次いで、昇降フランジ113dとともに窒化ガリウム(GaN)の成膜に用いた半導体製造装置部品10を載置した架台114を下降させて、半導体製造装置部品10を第2待機室27内へ搬入する。次いで、ゲートバルブ28、29を開放し、フォーク機構30を第2待機室27内へ移動させた後、半導体製造放置部品10を把持した状態で、第1待機室25へ移動させる。
【0071】
次に、第1待機室25内で待機している架台14の上に半導体製造装置部品10を載置し、フォーク機構30を退避する。次に、洗浄処理炉2の下側フランジ13のうち、昇降フランジ13dとともに半導体製造装置部品10を載置した架台14を上昇させて、半導体装置部品10を洗浄装置1の洗浄処理炉2内へ搬入する。
【0072】
(第2ステップ)
次に、
図1に示すように、半導体製造装置部品10を加熱しながら、洗浄処理炉2内の真空排気を繰り返してパージを行なう。
具体的には、加熱装置3によって半導体製造装置部品10を1000℃程度まで加熱しながら、ガス導入管4からパージガスとして乾燥窒素ガスを洗浄処理炉2内へ供給する。その後、減圧装置6によって洗浄処理炉2内の真空排気を行う。これを数回繰り返すことで、半導体製造装置部品10や洗浄処理炉2内に残留する水分を除去する。
【0073】
(第3ステップ)
次に、洗浄処理炉2内にクリーニングガスを導入して、半導体製造装置部品10を洗浄する。
具体的には、半導体製造装置部品10を1000℃程度まで加熱しながら、ガス導入管4からクリーニングガスとして塩素ガスと窒素ガスとの混合ガスを洗浄処理炉2内へ供給する。洗浄処理炉2内では、半導体製造装置部品10に付着した窒化ガリウムと塩素ガスとが気相反応することで、反応生成物として塩化ガリウム(GaCl
3)が生成する。このように、半導体製造装置部品10に付着した窒化ガリウムが除去されることで、半導体製造装置部品10が洗浄される。
【0074】
(第4ステップ)
次に、洗浄処理炉2内の真空排気を繰り返し行って、洗浄処理炉2内から化合物半導体とクリーニングガスとの反応生成物をガス排出管5へ排出する。
具体的には、半導体製造装置部品10への加熱を停止し、減圧装置6を稼働して洗浄処理炉2内から塩化ガリウム(GaCl
3)を含むガスをガス排出管5へ排出する。
【0075】
本実施形態の洗浄方法では、上述した第3ステップ及び第4ステップの間、洗浄処理炉2内の表面の温度を所要の範囲に維持する。
具体的には、第1温度制御装置7によって、上側フランジ12及び下側フランジ13をそれぞれ独立して温度制御する。
【0076】
洗浄処理炉2内の表面の温度としては、50℃以上200℃以下とすることができ、60℃以上100℃以下とすることが好ましく、70℃以上80℃以下とすることがより好ましい。洗浄処理炉2内の表面温度を50℃以上とすれば、塩化ガリウムを効率よく蒸発させることができる。洗浄処理炉2内の表面温度を200℃以下とすれば、耐熱温度の低い安価なOリングを用いることができる。洗浄処理炉2内の表面温度を100℃以下とすれば、冷却媒体となる液体として水を用いることができ、機構が安価でメンテしやすい。
【0077】
第1温度制御装置7が、温度制御機構16、17を有し、上側フランジ12及び下側フランジ13をそれぞれ独立して温度制御する場合、温度制御された液体の供給又は循環による機構とすることで、容易に温度制御できる。また、液体として水を用いる場合、70℃以上80℃以下に温度制御することで、安全に運転することができる。
【0078】
図5は、三塩化ガリウムの蒸気圧曲線を示すグラフである。
図5に示すように、三塩化ガリウムの蒸気圧曲線によると、各温度での飽和蒸気圧は、例えば、100℃で6kPa、70℃で2kPa、20℃でほぼ0である。ここで、ある温度において洗浄処理炉2内の圧力が飽和蒸気圧を下回るか、同レベルに達すれば、塩化ガリウムは素早く蒸発することになる。
【0079】
すなわち、塩化ガリウムなどは、大気圧でおよそ200℃の蒸気圧であるため、半導体製造装置部品10の洗浄中の温度(1000℃程度)では気化させて排気できる。しかしながら、いくらかの残渣が洗浄処理炉2内に残り、それが200℃以下、さらには常温(20℃程度)まで冷却されると、反応生成物が排気されないままとなって、不具合が生じる場合がある。
【0080】
本願の発明者は、このような不具合の対策として、洗浄処理炉2内を減圧して塩化ガリウムの分圧を上げることで、反応生成物を蒸発しやすくなることを確認した。その際、さらに洗浄処理炉2内をパージすると効率があがることを確認した。さらには、洗浄処理炉2内の接ガス部となる表面2Aを暖めることで、より除去しやすい環境となることを確認した。
【0081】
ところで、洗浄対象を高温に加熱する従来の洗浄装置では、高温によって加熱対象ではない洗浄処理炉の耐熱温度が低い部分が劣化することが多く、そのような部分にはその耐熱温度を超えないように、冷却液(例えば、20℃程度の水)を循環させる冷却機構を設けることが一般的であった。
【0082】
しかしながら、従来の洗浄装置では、洗浄対象の加熱が停止すると洗浄処理炉の炉壁(炉内表面)の温度が、環境温度(例えば、20℃程度の常温)、あるいは冷却機構の冷却水の温度まで下がってしまう。すると、上述したように、反応生成物が排気されずに炉内表面に残渣として残るという不具合が生じることとなる。
【0083】
そこで、本願発明者らは、鋭意検討した結果、洗浄処理炉の温度制御に用いる冷却液の温度を、一般的な20℃から50℃以上200℃以下に変更することで、洗浄処理炉内で加熱を行っていないときでも、炉内表面が適度に暖気されるため、炉内に残留する反応生成物が炉内表面に残渣として残留しないことを見出した。
【0084】
さらに、本願発明者らは、冷却液として市水等の水(冷却水)を用い、洗浄処理時の炉内の加熱を利用することで、高価なチラー等を使用することなく、冷却水の流量変化のみで冷却水の温度を70〜80℃に保てることを見出した。具体的には、液体を循環させる経路を設けて、液体の熱容量によって液温の急激な温度変化を抑えて、結果、炉内表面の急激な温度変化を抑えることができる。
【0085】
ここで、本実施形態の洗浄方法において、上述した第3ステップ及び第4ステップの間、第1温度制御装置7を構成する温度制御機構16による、上側フランジ12の温度の制御方法を説明する。
【0086】
図1に示すように、温度制御機構16は、第3ステップの開始前では、通常、市水(20℃程度)を供給源として供給経路L1に供給した冷却水(液体)を、熱交換部18を含む循環経路内で循環させる。
【0087】
次に、第3ステップが開始されると、洗浄処理炉2内で半導体製造装置部品10を加熱(例えば1000℃)する際の輻射熱で、炉壁を構成する上側フランジ12も加熱され、循環している冷却水も加熱される。排出経路L2の温度計21によって測定された冷却水の液温が、予め設定された第1の閾値(例えば80度)となったら、供給経路L1の第1開閉バルブ19と排出経路L2の第2開閉バルブ20を開き、循環している一部の冷却水を入れ替えて、液温を低下させる。温度計21による液温が、予め設定された第2の閾値(例えば70℃)となったら、第1開閉バルブ19及び第2開閉バルブ20を閉じて、冷却水を循環経路内で循環させる。これを繰り返すことで、第3ステップの間、冷却水の温度を70℃から80℃で保ち、上側フランジ12の温度を耐熱温度以下に保つことができる。
【0088】
なお、第3ステップ間の冷却水の温度上昇率によっては、供給経路L1から段階的に未加熱の液体の流量を増加させて、循環経路内での液体の温度を低下させることができる。このような調整は、開度調整可能な1以上の第1開閉バルブ19(19A、19B)を介した1以上の供給経路L1(L1A,L1B)によって達成可能である。併せて、排出経路L2においても同様の構成とすることが好ましい。
【0089】
次に、第4ステップが開始されると、洗浄処理炉2内での半導体製造装置部品10の加熱は終了するが、しばらくの間は余熱によって循環経路内の冷却水は温められるため、上述した第3ステップ中と同様に、第1の閾値と第2の閾値との間で冷却水の温度制御が繰り返される。
【0090】
次いで、洗浄処理炉2内の温度が下がって、炉壁を構成する上側フランジ12の温度が第2の閾値(例えば70℃)未満になったとしても、循環経路内の冷却水は自身の熱容量によって急激には冷めない。よって、しばらくの間、すなわち、第4ステップが終了するまでの間、上側フランジ12の温度を70℃前後に保つことができ、洗浄処理炉2内の表面2Aを暖める効果が持続する。このような方法によれば、常時温度制御する場合と比較して暖気効果は少なくなる(時間が短くなる)が、高価なチラー等の設備を設けなくて済むので、経済効果が高い。
【0091】
なお、本実施形態の温度制御機構16の構成及び運転方法は、一例であり、これに限定されない。例えば、上側フランジ12の温度制御エリアを複数に分割してそれぞれに熱交換部を設け、被温度制御部となるこれらの熱交換部に対して開閉バルブを有する供給経路、排出経路及び返送経路を並列で複数設けるとともに、それぞれに第1及び第2の閾値を設定して制御すれば、より細かい温度制御が可能である。また、第1及び第2の閾値は、区分された複数の被温度制御部に対して、それぞれ独立としてもよいし、共通としてもよい。
【0092】
また、本実施形態の洗浄方法では、上述した第3ステップ及び第4ステップの間、少なくともクリーニングガスが炉内に滞在している間、洗浄処理炉2のうち温度制御が困難である箇所(すなわち、温度が所要の温度よりも下がる懸念がある箇所)に対して、パージガス供給機構9から温度制御したパージガスを洗浄処理炉2へ噴出することが好ましい。
【0093】
パージガスの温度範囲は、特に限定されない。パージガスの温度範囲の上限としては、200℃以下であって、洗浄処理炉2の周囲の部材の耐熱温度を越えない温度とすることができる。パージガスの温度範囲の下限としては、70℃以上とすることが好ましい。このように、温度制御したパージガスを洗浄処理炉2の温度制御が困難である箇所に噴出することで、洗浄処理炉2内の表面に反応生成物である窒化ガリウムが析出することをより確実に防ぐことができる。
【0094】
さらに、本実施形態の洗浄方法では、上述した第4ステップの間、ガス排出管5内の温度を所要の範囲に維持する。
具体的には、第2温度制御装置8によって、ガス排出管5の洗浄処理炉2の外側の部分からトラップ(図示略)にわたって温度制御する。これにより、ガス排出管5内での窒化ガリウムの析出を防ぎ、トラップ(図示略)において窒化ガリウムを確実に補足できる。
【0095】
ガス排出管5内の表面の温度としては、200℃以上400℃以下とすることができ、200℃以上250℃以下とすることがより好ましい。洗浄処理炉2内の表面温度を200℃以上とすれば、ガス排出管5内で反応生成物である窒化ガリウムの析出を防ぐことができる。
【0096】
(第5ステップ)
最後に、半導体製造装置部品10を洗浄処理炉2内から搬出して、半導体製造装置101の成膜炉102内に収容する。
具体的には、先ず、
図3及び
図4に示すように、洗浄処理炉2の下側フランジ13のうち、昇降フランジ13dを開放して洗浄処理炉2内と第1待機室25とを連通させる。次いで、昇降フランジ13dとともに洗浄処理が完了した半導体製造装置部品10を載置した架台14を下降させて、半導体製造装置部品10を第1待機室25内へ搬入する。次いで、フォーク機構30を第1待機室25内へ移動させた後、半導体製造放置部品10を把持した状態で、ゲートバルブ28を開放し、ブロー室26へ移動させる。
【0097】
ブロー室26において、洗浄処理後の半導体製造装置部品10上に飛散している、パーティクル(例えば、酸化アルミニウム等の残渣)をブロー除去する。具体的には、グローブボックス31内から、ブローノズル32及び吸引ポート34を操作して、半導体製造装置部品10の表面に飛散しているパーティクルをブロー除去する。なお、ブロー室26におけるパーティクルの除去方法は一例であり、これに限定されない。除去方法としては、ブローと、ブラスト、あるいはドライアイスブラストとを組み合わせても良いし、吸引により除去しても良い。また、ブロー室26内に浴槽を設置して、ウエット洗浄と組み合わせても良い。
【0098】
次に、フォーク機構30により、ブロー室26内の半導体製造装置部品10を把持した状態でゲートバルブ29を開放し、第2待機室27へ移動させる。次いで、第2待機室27内で待機している架台114の上に半導体製造装置部品10を載置し、フォーク機構30を退避した後、ゲートバルブ29を閉じる。次に、成膜炉102の下側フランジ113のうち、昇降フランジ113dとともに半導体製造装置部品10を載置した架台114を上昇させて、半導体装置部品10を半導体製造装置部品101の成膜炉102内へ搬入する。
【0099】
このように、本実施形態の洗浄方法によれば、搬送装置24を用いることで、半導体製造装置部品101の成膜炉102内と洗浄装置1の洗浄処理炉2内との間で外気にさらすことなく半導体製造装置部品10を搬送できる。
【0100】
以上説明したように、本実施形態の洗浄装置1、洗浄システム50及びこれらを用いる洗浄方法によれば、簡単な構造によって、洗浄処理炉2を構成する反応管11、上側フランジ12及び下側フランジ13の表面への反応生成物の付着物の残留を防ぐことができる。したがって、反応生成物が腐食性の高い窒化ガリウム等の塩化物等であり、洗浄処理炉2の大気開放に伴って金属製の上側フランジ12及び下側フランジ13が大気中に暴露された場合であっても、これらの部材は腐食されない。
【0101】
また、本実施形態の洗浄装置1、洗浄システム50及び洗浄方法によれば、少なくともクリーニングガスが洗浄処理炉2内に滞在している間、洗浄処理炉2内の表面温度を70〜80℃の範囲に制御することで、その後の真空置換(到達圧力300Pa程度)によって析出した反応生成物が全て蒸発させられる。また、本実施形態では、減圧装置6として、市販されている安価なロータリーポンプ、ドライポンプ(到達真空度は数百Pa程度)等を用いることができる。
【0102】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の洗浄装置1では、上端及び下端が開口する石英製の反応管11と、上端開口を閉塞する金属製の上側フランジ12と、下端開口を閉塞する金属製の下側フランジ13とを有する洗浄処理炉2の構成を一例として説明したが、これに限定されない。
【0103】
図6は、他の実施形態に係る半導体製造装置部品の洗浄装置の構成を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、他の実施形態の洗浄装置41は、下端が開口する石英製の反応管51と、下端開口を閉塞する金属製の下側フランジ53とを有する洗浄処理炉42を有する構成であってもよい。この場合、反応管51の上端はベルジャー形状等、真空引きに耐えられる構造であることが好ましい。これにより、上述した実施形態の洗浄装置1を構成する、上側フランジ12の温度制御機構16を省略することができる。
【0104】
また、
図1に示すように、上述した実施形態の洗浄装置1では、加熱装置3として加熱コイルを用いる構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、他の実施形態に係る洗浄装置41では、加熱装置43として、反応管51の側面と上端を覆う加熱ヒータを用いる構成であってもよい。
【0105】
また、上述した実施形態の洗浄装置1では、ガス導入管4が上側フランジ12を貫通する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、他の実施形態に係る洗浄装置41では、ガス導入管44として、下側フランジ13及び回転軸15を貫通する構成であってもよい。
【0106】
また、上述した実施形態の洗浄装置1では、架台(ステージ)14が回転機構を有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、架台14が回転機構を有しない構成としてもよい。具体的には、回転軸15にかえて支柱とし、支柱を昇降フランジ13dに固定することで、洗浄処理炉2内を気密にすることができる。したがって、パージガス供給機構9を書略することができる。
【0107】
また、上述した実施形態の洗浄装置1では、洗浄処理炉2が縦型炉である構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、反応管の軸線方向が水平方向である横型炉としてもよい。
【0108】
また、上述した実施形態の洗浄装置1が、搬送処理空間25を介して図示略の半導体製造装置と気密に連結されている場合、上述した洗浄方法において第2ステップを省略する構成としてもよい。さらに、上述した洗浄方法において、時間短縮を目的として半導体製造装置部品10が高温のまま搬送する構成としてもよい。
【実施例】
【0109】
MOCVD装置を用いて基材上にAlN層を含むGaN系窒化物HEMT構造を5μm成長させた。その後、基材の周辺に配置されたMOCVD炉内の部品を、
図1に示す洗浄装置1を用い、以下の条件、手順にしたがって洗浄した。
【0110】
<条件>
・洗浄時の加熱温度:900℃
・洗浄処理炉内圧力:大気圧
・クリーニングガス:塩素(1L/min)と窒素(9L/min)との混合ガス
・洗浄時間 :60分間(1バッチあたり)
【0111】
<手順>
(1)部品を洗浄処理炉2内に設置
(2)洗浄処理炉2内を真空引きしながらパージ
(3)部品を加熱して、加熱温度まで昇温
(4)洗浄処理炉2内にクリーニングガスの供給開始
(5)クリーニングガスの供給を停止し、降温開始
(6)洗浄処理炉2内を真空置換
(7)降温開始
(8)洗浄処理炉2内温度が300℃以下に下がったら部品を取出し、炉外でさらに冷却
【0112】
クリーニング完了後、洗浄処理炉2内から取り出した洗浄後の部品表面を目視で観察したが、残渣は観察されなかった。
【0113】
また、堆積物があった場所の残渣をカーボンテープで採取し、走査型電子顕微鏡で観察した。さらに、エネルギー分散型エックス線分析装置を用いて残渣の分析を行った。これらの観察及び分析の結果、洗浄後の部品表面から、堆積物の主成分である窒化ガリウムや窒化アルミニウムの構成元素であるガリウム、アルミニウム、窒素は検出されなかった。ただし、白色の箔状の粉が観察されたが、ブローで吹き飛んだ。
【0114】
常温まで降温後、洗浄処理炉2内を観察したところ、反応生成物の析出は見当たらず、異臭もしなかった。
【0115】
洗浄後の部品を再度MOCVD装置に設置し、前回と同様に基材上にGaN系窒化物HEMT構造のエピ成長を行なったところ、基材上の膜厚や結晶性が前回と同等であることを確認した。