【文献】
QU Jian-Bo, et al.,A novel stationary phase derivatized from hydrophilic gigaporous polystyrene-based microspheres for high-speed protein chromatography,Journal of Chromatography A,2009年,1216,p.6511-6516,ISSN 0021-9673
【文献】
Wei-Qing Zhou et al.,Synthesis of macroporous poly(styrene-divinyl benzene) microspheres by surfactant reverse micelles swelling method,Polymer,2007年,Vol.48,p.1981-1988
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明をするが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0014】
<分離材>
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備える。なお、本明細書中、「多孔質ポリマ粒子の表面」とは、多孔質ポリマ粒子の外側の表面のみでなく、多孔質ポリマ粒子の内部における細孔の表面を含むものとする。また、本明細書中、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレート等の他の類似の表現においても同様である。
【0015】
(多孔質ポリマ粒子)
本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、多孔質化剤を含むモノマを硬化させた粒子であり、例えば、従来の懸濁重合、乳化重合等によって合成することができる。モノマとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン系モノマを使用することができる。すなわち、多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマに由来する構造単位を有する重合体を含む。具体的なモノマとしては、以下のような多官能性モノマ、単官能性モノマ等が挙げられる。
【0016】
多官能性モノマとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフェナントレン等のジビニル化合物が挙げられる。これらの多官能性モノマは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも耐久性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れることから、ジビニルベンゼンを使用することが好ましい。
【0017】
モノマとしてジビニルベンゼンを使用する場合、上記重合体は、ジビニルベンゼンに由来する構造単位をモノマ全質量基準で50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましい。ジビニルベンゼンに由来する構造単位をモノマ全質量基準で50質量%以上含むことにより、耐アルカリ性及び耐圧性に優れる傾向にある。
【0018】
単官能性モノマとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、耐酸性及び耐アルカリ性に優れるという観点から、スチレンを使用することが好ましい。また、カルボキシ基、アミノ基、水酸基、アルデヒド基等の官能基を有するスチレン誘導体も使用することができる。
【0019】
多孔質化剤としては、重合時に相分離を促し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒である脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類等が挙げられる。多孔質化剤として、具体的には、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。これらの多孔質化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記多孔質化剤は、モノマ全質量に対して0〜200質量%使用できる。多孔質化剤の量によって、多孔質ポリマ粒子の空隙率をコントロールできる。さらに、多孔質化剤の種類によって、多孔質ポリマ粒子の細孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
【0021】
溶媒として使用する水を多孔質化剤とすることもできる。水を多孔質化剤とする場合は、モノマに油溶性界面活性剤を溶解させ、水を吸収することによって、粒子を多孔質化することが可能である。
【0022】
多孔質化に使用される油溶性界面活性剤としては、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のソルビタンモノエステル、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレテート、ソルビタンモノミリステート又はヤシ脂肪酸から誘導されるソルビタンモノエステル;分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のジグリセロールモノエステル、例えば、ジグリセロールモノオレエート(例えば、C18:1(炭素数18個、二重結合数1個)脂肪酸のジグリセロールモノエステル)、ジグリセロールモノミリステート、ジグリセロールモノイソステアレート又はヤシ脂肪酸のジグリセロールモノエステル;分岐C16〜C24アルコール(例えば、ゲルベアルコール)、鎖状不飽和C16〜C22アルコール又は鎖状飽和C12〜C14アルコール(例えば、ヤシ脂肪アルコール)のジグリセロールモノ脂肪族エーテル;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
これらのうち、ソルビタンモノラウレート(例えば、SPAN(スパン、登録商標)20、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノラウレート)、ソルビタンモノオレエート(例えば、SPAN(スパン、登録商標)80、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノオレエート)、ジグリセロールモノオレエート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノオレエート)、ジグリセロールモノイソステアレート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノイソステアレート)、ジグリセロールモノミリステート(純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノミリステート)、ジグリセロールのココイル(例えば、ラウリル基、ミリストイル基等)エーテル、又は、これらの混合物が好ましい。
【0024】
これらの油溶性界面活性剤は、モノマ全質量に対して5〜80質量%の範囲で用いることが好ましい。油溶性界面活性剤の含有量が5質量%以上であると、水滴の安定性が充分となることから、大きな単一孔を形成し難くなる。また、油溶性界面活性剤の含有量が80質量%以下であると、重合後に多孔質ポリマ粒子が形状をより保持し易くなる。
【0025】
重合反応に用いられる水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体等が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
【0026】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0027】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0029】
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0030】
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマ重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0031】
必要に応じて添加される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、モノマ100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用することができる。
【0032】
重合温度は、モノマ及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
【0033】
多孔質ポリマ粒子の合成において、粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を添加してもよい。
【0034】
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、モノマ100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0035】
モノマが単独で重合することを抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
【0036】
多孔質ポリマ粒子の平均粒径は、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。また、多孔質ポリマ粒子の平均粒径は、通液性の向上の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上であり、更に好ましくは50μm以上である。
【0037】
多孔質ポリマ粒子の粒径の変動係数(C.V.)は、通液性の向上の観点から、3〜15%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましく、5〜10%であることが更に好ましい。C.V.を低減する方法としては、マイクロプロセスサーバー(株式会社日立製作所製)等の乳化装置により単分散化することが挙げられる。
【0038】
多孔質ポリマ粒子又は分離材の平均粒径及び粒径のC.V.は、以下の測定法により求めることができる。
1)粒子を、超音波分散装置を使用して水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の多孔質ポリマ粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径及び粒径のC.V.を測定する。
【0039】
多孔質ポリマ粒子の細孔容積は、多孔質ポリマ粒子の全体積基準で30体積%以上70体積%以下であることが好ましく、40体積%以上70体積%以下であることがより好ましい。多孔質ポリマ粒子は、細孔径が0.1μm以上0.5μm未満である細孔、すなわちマクロポアー(マクロ孔)を有することが好ましい。多孔質ポリマ粒子の細孔径として、より好ましくは、0.2μm以上0.5μm未満である。細孔径が0.1μm以上であると、細孔内に物質が入り易くなる傾向にあり、細孔径が0.5μm未満であると、比表面積が充分なものになる。これらは上述の多孔質化剤により調整可能である。
【0040】
多孔質ポリマ粒子の比表面積は、30m
2/g以上であることが好ましい。より高い実用性の観点から、比表面積は35m
2/g以上であることがより好ましく、40m
2/g以上であることが更に好ましい。比表面積が30m
2/g以上であると、分離する物質の吸着量が大きくなる傾向にある。
【0041】
(被覆層)
本実施形態に係る被覆層は、重量平均分子量の異なる2種以上の水酸基を有する高分子を含む。水酸基を有する高分子で多孔質ポリマ粒子を被覆することによりカラム圧の上昇を抑制することができると共に、タンパク質の非特異吸着を抑制することが可能となり、分離材のタンパク質吸着量を、天然高分子を用いた場合と同等又はそれ以上とすることが可能となる。また、水酸基を有する高分子が架橋されていると、カラム圧の上昇をより抑制することが可能となる。
【0042】
(水酸基を有する高分子)
水酸基を有する高分子は、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましく、親水性高分子であることがより好ましい。水酸基を有する高分子としては、例えば、多糖類又はその変性体、及び、ポリビニルアルコール又はその変性体が挙げられる。多糖類としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロース及びキトサンが挙げられる。水酸基を有する高分子として、重量平均分子量2000〜300000の高分子を使用することが好ましく、2500〜280000の高分子を使用することがより好ましい。
【0043】
水酸基を有する高分子の重量平均分子量は、80℃に加温した高分子溶液を、カラムオーブン温度55℃、検出器温度50℃にてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で分析により測定することができる。
【0044】
重量平均分子量の異なる2種以上の水酸基を有する高分子を使用することで、多孔質ポリマ粒子へ吸着する際に、高分子同士の立体的反発を避けることができ、水酸基を有する高分子の吸着量を増加させることができる。重量平均分子量の異なる高分子を2種以上使用する際、重量平均分子量が最も大きい高分子と、重量平均分子量が最も小さい高分子との分子量差が、1000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、30000以上であることが更に好ましい。
【0045】
水酸基を有する高分子は、界面吸着能を向上させる観点から、疎水基により変性された変性体であってもよい。疎水基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。疎水基は、水酸基と反応する官能基(例えば、エポキシ基)及び疎水基を有する化合物(例えば、グリシジルフェニルエーテル)を、水酸基を有する高分子と従来公知の方法で反応させることにより、導入することができる。
【0046】
(被覆層の形成方法)
本実施形態に係る被覆層は、例えば、以下に示す方法により形成することができる。
【0047】
まず、所定の重量平均分子量を有する第1の水酸基を有する高分子の溶液を多孔質ポリマ粒子表面に吸着させる。水酸基を有する高分子の溶液の溶媒としては、水酸基を有する高分子を溶解することのできるものであれば、特に限定されないが、水が最も一般的である。溶媒に溶解させる高分子の濃度は、5〜20(mg/mL)が好ましい。
【0048】
この溶液を、多孔質ポリマ粒子に含浸させる。含浸方法は、第1の水酸基を有する高分子の溶液に多孔質ポリマ粒子を加えて一定時間放置する。含浸時間は多孔質体の表面状態によっても変わるが、通常一昼夜含浸すれば高分子濃度が多孔質体の内部で外部濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分の第1の水酸基を有する高分子を除去する。
【0049】
次に、第1の水酸基を有する高分子とは重量平均分子量の異なる第2の水酸基を有する高分子の溶液を、第1の水酸基を有する高分子が吸着された多孔質ポリマ粒子表面に吸着させて、上記と同様の操作を行う。第3の水酸基を有する高分子を更に用いる場合は、同じ操作を繰り返す。
【0050】
本実施形態において、被覆層を形成する際に用いられる水酸基を有する高分子は、重量平均分子量の異なるものが2種以上であれば特に限定されず、2〜10種を用いることができる。被覆層は、重量平均分子量の異なる水酸基を有する高分子のうち、分子量の大きい高分子から順に多孔質ポリマ粒子へ吸着させることで形成することが好ましい。
【0051】
多孔質ポリマ粒子に2種以上の高分子が吸着していることは、粒子を揮発成分1質量%以内まで十分に乾燥させた後、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いて、上記乾燥粒子約10mgの熱重量変化を測定することにより求めることができる。
【0052】
(架橋処理)
次いで、架橋剤を加えて多孔質ポリマ粒子表面に吸着された水酸基を有する高分子を架橋反応させて、架橋体を形成する。このとき、架橋体は、水酸基を有する3次元架橋網目構造を有する。
【0053】
架橋剤としては、例えばエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、メチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物などのような水酸基に活性な官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。また、水酸基を有する高分子としてキトサンのようなアミノ基を有する化合物を使用する場合には、ジクロロオクタンのようなジハライドも架橋剤として使用できる。
【0054】
この架橋反応には通常触媒が用いられる。該触媒は架橋剤の種類に合わせて適宜従来公知のものを用いることができるが、例えば、架橋剤がエピクロルヒドリン等の場合には水酸化ナトリウム等のアルカリが有効であり、ジアルデヒド化合物の場合には塩酸等の鉱酸が有効である。
【0055】
架橋剤による架橋反応は、通常、分離材を適当な媒体中に分散、懸濁させた系に架橋剤を添加することによって行われる。架橋剤の添加量は、水酸基を有する高分子として多糖類を使用した場合、単糖類の1単位を1モルとすると、それに対して0.1〜100モル倍の範囲内で、分離材の性能に応じて選定することができる。一般に、架橋剤の添加量を少なくすると、被覆層が多孔質ポリマ粒子から剥離し易くなる傾向にある。また、架橋剤の添加量が過剰で、かつ、水酸基を有する高分子との反応率が高い場合、原料の水酸基を有する高分子の特性が損なわれる傾向にある。
【0056】
触媒の使用量としては、架橋剤の種類により異なるが、通常、水酸基を有する高分子として多糖類を使用する場合に、多糖類を形成する単糖類の1単位を1モルとすると、これに対して0.01〜10モル倍の範囲、好ましくは0.1〜5モル倍で使用される。
【0057】
例えば、架橋反応条件を温度条件とした場合、反応系の温度を上げ、その温度が反応温度に達すれば架橋反応が生起する。
【0058】
水酸基を有する高分子の溶液等を含浸させた多孔質ポリマ粒子を分散、懸濁させる媒体としては含浸させた高分子溶液から高分子、架橋剤等を抽出してしまうことなく、かつ、架橋反応に不活性なものである必要がある。その具体例としては水、アルコール等が挙げられる。
【0059】
架橋反応は、通常、5〜90℃の範囲の温度で、1〜10時間かけて行う。好ましくは、30〜90℃の範囲の温度である。
【0060】
架橋反応終了後、生成した粒子を濾別し、次いで水、メタノール、エタノール等の親水性有機溶媒で洗浄し、未反応の高分子、懸濁用媒体等を除去すれば、多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部が、水酸基を有する高分子を含む被覆層により被覆された分離材が得られる。
【0061】
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子1g当たり30〜500mgの被覆層を備えると好ましく、50〜500mgの被覆層を備えることがより好ましく、50〜480mgの被覆層を備えることが更に好ましい。被覆層の割合が多孔質ポリマ粒子1gに対して500mg以下であると、被覆層を薄膜とすることができ、カラムとして用いたときの通液性がより向上する傾向にある。また、被覆層の割合が多孔質ポリマ粒子1gに対して30mg以上であると、タンパク質吸着量がより高まる傾向にある。被覆層の量は熱分解の重量減少等で測定することができる。
【0062】
(イオン交換基の導入)
被覆層を備える分離材は、イオン交換基、リガンド(プロテインA)等を表面上の水酸基等を介して導入することによりイオン交換精製、アフィニティ精製等に使用することができる。イオン交換基の導入方法として、例えば、ハロゲン化アルキル化合物を用いる方法が挙げられる。
【0063】
ハロゲン化アルキル化合物としては、モノハロゲノ酢酸、モノハロゲノプロピオン酸等のモノハロゲノカルボン酸及びそのナトリウム塩、ジエチルアミノエチルクロライド等のハロゲン化アルキル基を少なくとも1つ有する1級、2級又は3級アミン、ハロゲン化アルキル基を有する4級アンモニウムの塩酸塩等が挙げられる。これらのハロゲン化アルキル化合物は、臭化物又は塩化物であることが好ましい。ハロゲン化アルキル化合物の使用量としては、イオン交換基を付与する分離材の全質量に対して0.2質量%以上であることが好ましい。
【0064】
イオン交換基の導入には、反応を促進させるために、有機溶媒を用いることが有効である。有機溶媒としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0065】
通常、イオン交換基の導入は、分離材表面の水酸基に行われるので、湿潤状態の粒子を、ろ過等により水切りした後、所定濃度のアルカリ性水溶液に浸漬し、一定時間放置した後、水−有機溶媒混合系で、上記ハロゲン化アルキル化合物を添加して反応させる。この反応は温度40〜90℃で、還流下、0.5〜12時間行うことが好ましい。上記の反応で使用されるハロゲン化アルキル化合物の種類により、付与されたイオン交換基が決定される。
【0066】
イオン交換基として、弱塩基性基であるアミノ基を導入する方法としては、上記ハロゲン化アルキル化合物のうち、アルキル基のうちの少なくとも1つがハロゲン化アルキル基で置換されている、モノ−、ジ−又はトリ−アルキルアミン、モノ−アルキル−モノ−アルカノールアミン、ジ−アルキル−モノ−アルカノールアミン、モノ−アルキル−ジ−アルカノールアミン等を反応させる方法、又はアルカノール基のうちの少なくとも1つがハロゲン化アルカノール基で置換されている、モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン、モノ−アルキル−モノ−アルカノールアミン、ジ−アルキル−モノ−アルカノールアミン、モノ−アルキル−ジ−アルカノールアミンを反応させる方法等が挙げられる。これらのハロゲン化アルキル化合物の使用量としては、分離材の全質量に対して0.2質量%以上であることが好ましい。反応条件としては、40〜90℃で、0.5〜12時間であることが好ましい。
【0067】
イオン交換基として、強塩基性基の4級アンモニウム基を導入する方法としては、まず、3級アミノ基を導入し、該3級アミノ基にエピクロルヒドリン等のハロゲン化アルキル化合物を反応させ、4級アンモニウム基に変換させる方法が挙げられる。また、4級アンモニウムの塩酸塩等を分離材に反応させてもよい。
【0068】
イオン交換基として、弱酸性基であるカルボキシ基を導入する方法としては、上記ハロゲン化アルキル化合物として、モノハロゲノ酢酸、モノハロゲノプロピオン酸等のモノハロゲノカルボン酸又はそのナトリウム塩を反応させる方法が挙げられる。これらハロゲン化アルキル化合物の使用量は、イオン交換基を導入する分離材の全質量に対して0.2質量%以上であることが好ましい。
【0069】
イオン交換基として、強酸性基であるスルホン酸基の導入方法としては、分離材に対してエピクロロヒドリン等のグリシジル化合物を反応させ、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩の飽和水溶液に分離材を添加する方法が挙げられる。反応条件は、30〜90℃で1〜10時間であることが好ましい。
【0070】
一方、イオン交換基の導入方法として、アルカリ性雰囲気下で、分離材に1,3−プロパンスルトンを反応させる方法も挙げられる。1,3−プロパンスルトンは、分離材の全質量に対して0.4質量%以上使用することが好ましい。反応条件は、0〜90℃で0.5〜12時間であることが好ましい。
【0071】
本実施形態の分離材の吸湿度は、次の方法で測定する。乾燥分離材1gを恒温恒湿度試験槽(温度60℃、湿度90%)に18時間放置した後、再度分離材の質量を測定することにより吸湿度を以下の式より算出する。
(吸湿後分離材質量−1)g/1g×100=吸湿度(%)
【0072】
本実施形態の分離材の吸湿度は1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。分離材の吸湿度が30質量%以下であると、被覆層の厚みによる分離材の通液性が低下を抑制することができる。
【0073】
本実施形態に係る分離材又は多孔質ポリマ粒子の細孔径、比表面積及び空隙率は、水銀圧入測定装置(オートポア:株式会社島津製作所製)にて測定した値であり、以下のようにして測定する。試料約0.05gを、標準5mL粉体用セル(ステム容積0.4mL)に加え、初期圧21kPa(約3psia、細孔直径約60μm相当)の条件で測定する。水銀パラメータは、装置デフォルトの水銀接触角130°、水銀表面張力485dynes/cmに設定する。また、細孔径0.1〜3μmの範囲に限定してそれぞれの値を算出する。
【0074】
本実施形態の分離材は、タンパク質を静電的相互作用による分離、アフィニティ精製に用いるのに好適である。例えば、タンパク質を含む混合溶液の中に本実施形態の分離材を添加し、静電的相互作用によりタンパク質だけを分離材に吸着させた後、該分離材を溶液からろ別し、塩濃度の高い水溶液中に添加すれば、分離材に吸着しているタンパク質を容易に脱離、回収できる。また、本実施形態の分離材は、カラムクロマトグラフィーにおいて、使用することも可能である。
【0075】
本実施形態の分離材を用いて分離できる生体高分子としては、水溶性物質が好ましい。具体的には、血清アルブミン、免疫グロブリン等の血液タンパク質などのタンパク質、生体中に存在する酵素、バイオテクノロジーにより生産されるタンパク質生理活性物質、DNA、生理活性をするペプチド等の生体高分子などであり、好ましくは分子量が200万以下、より好ましくは50万以下である。また、公知の方法に従い、タンパク質の等電点、イオン化状態等によって、分離材の性質、条件等を選ぶ必要がある。公知の方法としては、例えば、特開昭60−169427号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0076】
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子上の被覆層を架橋処理後、分離材の表面にイオン交換基、プロテインAを導入することにより、タンパク質等の生体高分子の分離において、天然高分子からなる粒子又は合成ポリマからなる粒子のそれぞれの利点を有する。特に本実施形態の分離材における多孔質ポリマ粒子は、上述の方法で得られるものであるため、耐久性及び耐アルカリ性を有する。また、本実施形態の分離材は、タンパク質の非特異吸着を低減し、タンパク質の吸脱着が起こり易い傾向にある。さらに、本実施形態の分離材は、同一流速下でのタンパク質等の吸着量(動的吸着量)が大きい傾向にある。
【0077】
本明細書における通液速度とは、φ7.8×300mmのステンレスカラムに本実施形態の分離材を充填し、液を通した際の通液速度を表す。本実施形態の分離材は、カラムに充填した場合、カラム圧0.3MPaのときに通液速度が800cm/h以上であることが好ましい。カラムクロマトグラフィーでタンパク質の分離を行う場合、タンパク質溶液等の通液速度としては、一般に400cm/h以下の範囲であるが、本実施形態の分離材を使用した場合は、通常のタンパク質分離用の分離材よりも速い通液速度800cm/h以上で使用することができる。
【0078】
本実施形態の分離材の平均粒径は、10〜300μmであることが好ましい。分取用又は工業用のクロマトグラフィーでの使用には、カラム内圧の極端な増加を避けるために、50〜100μmであることが好ましい。
【0079】
本実施形態の分離材は、カラムに用いることができる。すなわち、本実施形態のカラムは、上記分離材を備える。本実施形態の分離材は、カラムクロマトグラフィーでカラム充填材として使用した場合、使用する溶出液の性質に依らず、カラム内での体積変化がほとんどないため、操作性に優れる。
【0080】
分離材の細孔容積は、分離材の全体積基準で30体積%以上70体積%以下であることが好ましく、40体積%以上70体積%以下であることがより好ましい。分離材は、平均細孔径が0.1〜0.5μmである細孔、すなわちマクロポアー(マクロ孔)を有することが好ましい。
【0081】
分離材の細孔径(モード径)は、0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.05〜0.45μmであることがより好ましく、0.05〜0.4μmであることが更に好ましい。細孔径が0.05μm以上であると、細孔内に物質が入り易くなる傾向にあり、細孔径が0.5μm以下であると、比表面積が充分なものになる。
【0082】
分離材の比表面積は、30m
2/g以上であることが好ましい。より高い実用性の観点から、比表面積は35m
2/g以上であることがより好ましく、40m
2/g以上であることが更に好ましい。比表面積が30m
2/g以上であると、分離する物質の吸着量が大きくなる傾向にある。分離材の比表面積の上限値は、300m
2/g以下とすることができる。
【0083】
分離材の細孔径(モード径)、比表面積等は、多孔質ポリマ粒子の原料、多孔質化剤、水酸基を有する高分子等を適宜選択することによって、調整することができる。
【0084】
分離材の空隙率は、40〜70%であることが好ましい。空隙率がこの範囲にあると、タンパク質吸着量を多くすることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、イオン交換基を導入する形態の分離材について説明したが、イオン交換基を導入しなくても分離材として用いることができる。このような分離材は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーに利用することができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
(多孔質ポリマ粒子1)
500mLの三口フラスコに、純度96%のジビニルベンゼン(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「DVB960」)14g、オクタノールを2g、過酸化ベンゾイル0.64g加えて、ポリビニルアルコール(0.5質量%)水溶液を調製した。この水溶液をマイクロプロセスサーバーを使用して乳化後、得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間撹拌した。得られた粒子をろ過後、アセトン洗浄を行い、多孔質ポリマ粒子1を得た。多孔質ポリマ粒子1の粒径をフロー型粒径測定装置で測定し、平均粒径及び粒径のC.V.値、細孔径(モード径)、空隙率及び比表面積を算出した。結果を表1に示す。
【0088】
(多孔質ポリマ粒子2)
市販のアガロース粒子(GEヘルスケアジャパン株式会社、商品名「Capto DEAE」)を多孔質ポリマ粒子2として使用した。
【0089】
(多孔質ポリマ粒子3)
ジビニルベンゼン14gを、ジビニルベンゼン4g及びジヒドロキシプロピルメタクリレート8gに変更した以外は多孔質ポリマ粒子1の合成と同様にして、多孔質ポリマ粒子3を合成した。
【0090】
【表1】
【0091】
(変性アガロース1)
重量平均分子量150000のアガロースを2質量%含有するアガロース水溶液100mLに水酸化ナトリウム4g及びグリシジルフェニルエーテル0.4gを投入して70℃で12時間反応させ、アガロースにフェニル基を導入した。フェニル基が導入されたアガロースをイソプロピルアルコールで3回再沈殿して洗浄し、変性アガロース1を得た。
【0092】
(変性アガロース2)
重量平均分子量150000のアガロースを重量平均分子量100000のアガロースに変更した以外は、変性アガロース1の合成と同様にして、変性アガロース2を得た。
【0093】
(変性アガロース3)
重量平均分子量150000のアガロースを重量平均分子量75000のアガロースに変更した以外は、変性アガロース1の合成と同様にして、変性アガロース3を得た。
【0094】
(変性アガロース4)
重量平均分子量150000のアガロースを重量平均分子量5000のアガロースに変更した以外は、変性アガロース1の合成と同様にして、変性アガロース4を得た。
【0095】
(変性アガロース5)
重量平均分子量150000のアガロースを重量平均分子量3000のアガロースに変更した以外は、変性アガロース1の合成と同様にして、変性アガロース5を得た。
【0096】
(実施例1)
<被覆層の形成及び架橋>
水1mLに対して変性アガロース1を10mg含有する変性アガロース1の水溶液350mLに多孔質ポリマ粒子1を10g投入し、55℃で24時間攪拌して、多孔質ポリマ粒子1に変性アガロース1を吸着させた後、ろ過を行い、熱水で洗浄した。次に、洗浄後の変性アガロース1を吸着させた多孔質ポリマ粒子1を、水1mLに対して変性アガロース2を10mg含有する変性アガロース2の水溶液350mLに投入し、55℃で24時間攪拌して、変性アガロース2を更に吸着させた後、ろ過を行い、熱水で洗浄した。
【0097】
変性アガロース1及び2は次のようにして架橋した。0.4Mの水酸化ナトリウム水溶液に、変性アガロース1及び2が吸着した多孔質ポリマ粒子1を10gと、エチレングリコールジグリシジルエーテルを39gとを添加し、24時間室温にて攪拌した。その後、2質量%の熱ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後、純水で洗浄し、粒子の水分散液として保管した。得られた粒子を乾燥後、熱重量分析により被覆層の質量(被覆量)を測定した。
【0098】
(タンパク質の非特異吸着能評価)
得られた粒子0.5gをBSA(Bovine Serum Albumin)濃度20mg/mLのリン酸緩衝液(pH7.4)50mLに投入し、24時間室温で攪拌を行った後、遠心分離で上澄みをとり、分光光度計でろ液のBSA濃度より、粒子に吸着したBSA量を算出した。BSAの濃度は、分光光度計により280nmの吸光度から確認した。結果を表3に示す。
【0099】
<イオン交換基の導入>
得られた粒子分散液から遠心分離することにより水を除去した後、20gのジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩を溶解した水溶液100mLに分散させ、70℃で10分間攪拌した。その後、70℃に加温した5MのNaOH水溶液100mLを添加し、1時間反応させた。反応終了後、ろ過し、水/エタノール(体積比8/2)の混合液で2回洗浄して、ジエチルアミノエチル(DEAE)基をイオン交換基として有する分離材を得た。得られた分離材の細孔径(モード径)、比表面積及び空隙率を水銀圧入法にて測定した。結果を表2に示す。
【0100】
(イオン交換容量評価)
12時間以上水で膨潤させた分離材を0.2〜0.3g定量し、ビーカに移し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液20mLを加え、25℃、1時間撹拌した。その後、フィルタを用いて吸引ろ過を行い、フィルタ上の粒子を洗浄液が中性になるまで洗浄した。その後、分離材をビーカに移し、0.1N塩酸水溶液20mLを添加し、室温で1時間撹拌した。その後、フィルタを用いて吸引ろ過を行い、フィルタ上の分離材を洗浄液が中性になるまで洗浄した。この洗浄液について自動電位差滴定装置を使用して0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行うことによって、分離材のイオン交換容量(mmol/mL)を求めた。結果を表2に示す。
【0101】
(カラム特性評価)
得られた分離材を濃度30質量%のスラリー(溶媒:メタノール)としてφ7.8×300mmのステンレスカラムにて15分充填した。その後、カラムに流速を変えながら水を通し、流速とカラム圧との関係を測定し、0.3MPa時の通液速度(線流速)を測定した。
また、動的吸着量は以下のようにして測定した。20mmol/LのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)をカラムに10カラム容量通した。その後、BSA濃度2mg/mLの20mmol/LのTris−塩酸緩衝液を通し、UV測定によってカラム出口でのBSA濃度を測定した。カラム入口と出口のBSA濃度が一致するまで緩衝液を通し、5カラム容量分の1M NaCl Tris−塩酸緩衝液で希釈した。10%breakthroughにおける動的吸着量を以下の式を用いて算出した。結果を表3に示す。
q
10=c
fF(t
10−t
0)/V
B
q
10:10%breakthroughにおける動的吸着量(mg/mL wet resin)
cf:注入しているBSA濃度
F:流速(mL/min)
V
B:ベッド体積(mL)
t
10:10%breakthroughにおける時間(min)
t
0:BSA注入開始時間(min)
【0102】
(耐アルカリ性評価)
得られた分離材を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で24時間撹拌し、リン酸緩衝液で洗浄後、カラム特性評価と同様の条件にて充填した。BSAの10%breakthrough動的吸着量を測定し、アルカリ処理前の動的吸着量と比較した。動的吸着量の減少率が3%以下であるものを「○」、3%超20%以下であるものを「△」、20%超であるものを「×」とした。結果を表3に示す。
【0103】
(耐久性評価)
800cm/hの流速で水をカラムに流し、カラム圧を測定後、3000cm/hに流速を上昇させ、1h通液させた。再度800cm/hにカラム圧を下げた際に、カラム圧が初期値(3000cm/hに流速を上げる前)より10%以上上昇した場合を「×」、10%未満である場合を「○」とした。結果を表3に示す。
【0104】
(実施例2)
変性アガロース2を変性アガロース4に変更した以外は実施例1と同様にして分離材を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0105】
(実施例3)
変性アガロース1、3及び5の順に、多孔質ポリマ粒子1に吸着させて被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして分離材を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0106】
(比較例1)
多孔質ポリマ粒子2をそのまま分離材として用い、実施例1と同様に評価した。
【0107】
(比較例2)
(多孔質ポリマ粒子6)
多孔質ポリマ粒子1を多孔質ポリマ粒子3に変更し、被覆層を形成せずにイオン交換基を導入した以外は実施例1と同様にして分離材を作製し、実施例1と同様に評価をした。
【0108】
(比較例3)
変性アガロース4のみを多孔質ポリマ粒子1に吸着させて被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして分離材を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
実施例の分離材は、非特異吸着は少なく、0.3MPa時の通液速度が非常に速く、動的吸着量が800cm/h以上でも高い値を保つことがわかった。また、実施例の分離材は、耐アルカリ性が改善され、動的吸着量がアルカリ処理前後で変化しないことがわかった。