【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた酸化ニッケル微粉末の粒径及び比表面積、酸化ニッケル微粉末又はその中間体粒子の硫黄分析方法は、以下の通りである。
【0036】
(1)酸化ニッケル微粉末の粒径の測定:粒子径測定装置(Microtrac 320−X100、Microtrac Inc製)を用いて、レーザー回折・散乱法で測定し、その粒度分布から体積積算50%となる粒径D50を求めた。
(2)酸化ニッケル微粉末の比表面積の測定:比表面積測定装置(NOVA 1000e、ユアサアイオニクス社製)を用いて、BET法で行なった。
(3)酸化ニッケル微粉末又はその中間体粒子の硫黄分析:ICP発光分光分析法で行なった。
【0037】
(実施例1)
硫酸ニッケルの水溶液を撹拌しながら、水酸化ナトリウムによりpH8.0、液温60℃の条件下で中和し、得られた水酸化ニッケル沈殿物を水洗、脱水、乾燥して水酸化ニッケル粒子とした。得られた水酸化ニッケル粒子の硫黄含有量は、2.0質量%であった。この粒子10gをアルミナの試料皿に充填し、長尺石英管にヒーターを付設した管状炉に装填した。
【0038】
この長尺石英管の端部から窒素濃度が99.99vol%で且つ酸素分圧が0.1kPa未満の非還元性ガスを毎分1Lで導入し、この気流雰囲気の下、上記の水酸化ニッケル粒子を800℃で5時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末状にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が120質量ppm、D50が0.31μm、比表面積が4.8m
2/gであった。
【0039】
(実施例2)
焼成時の温度を800℃に代えて850℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が60質量ppm、D50が0.39μm、比表面積が4.3m
2/gであった。
【0040】
(実施例3)
焼成時の温度を800℃に代えて900℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が30質量ppm、D50が0.43μm、比表面積が3.8m
2/gであった。
【0041】
(実施例4)
焼成時の温度を800℃に代えて700℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が150質量ppm、D50が0.61μm、比表面積が15m
2/gであった。
【0042】
(実施例5)
焼成時の温度を800℃に代えて600℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が170質量ppm、D50が0.87μm、比表面積が28m
2/gであった。
【0043】
(実施例6)
中和時のpHを8.0に代えて8.5にした以外は上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を生成したところ、その硫黄含有量は1.8質量%になった。この粒子100gを小型転動炉に充填し、窒素濃度99.99vol%で且つ酸素分圧0.1kPa未満の非還元性ガスを毎分10Lで導入し、この気流雰囲気の下、上記の水酸化ニッケル粒子を850℃で2時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末状にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が120ppm質量、D50が0.33μm、比表面積が4.6m
2/gであった。
【0044】
(実施例7)
焼成時の温度を850℃に代えて900℃にした以外は上記実施例6と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が80質量ppm、D50が0.40μm、比表面積が4.3m
2/gであった。
【0045】
(実施例8)
焼成時の温度を850℃に代えて600℃にした以外は上記実施例6と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が190質量ppm、D50が0.88μm、比表面積が31m
2/gであった。
【0046】
(実施例9)
上記実施例6と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製し、その粒子20gをアルミナの匣鉢に充填してから小型減圧加熱炉内に載置し、排気量と吸気量とを調整して炉内の圧力が20kPa以下、炉内の酸素分圧が4kPa以下の非還元性雰囲気において、850℃で2時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末状にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が100質量ppm、D50が0.40μm、比表面積が4.4m
2/gであった。
【0047】
(実施例10)
上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を管状炉に装填した後、長尺石英管の端部から酸素濃度5vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧が5kPaの非還元性ガスの気流雰囲気の下、900℃で5時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が190質量ppm、D50が0.38μm、比表面積が4.0m
2/gであった。
【0048】
(実施例11)
長尺石英管の端部から酸素濃度3vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧3kPaの非還元性ガスの気流雰囲気の下で焼成した以外は上記実施例10と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が150質量ppm、D50が0.39μm、比表面積が4.0m
2/gであった。
【0049】
(実施例12)
長尺石英管の端部から酸素濃度1vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧1kPaの非還元性ガスの気流雰囲気の下で焼成した以外は上記実施例10と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が90質量ppm、D50が0.42μm、比表面積が3.9m
2/gであった。
【0050】
(比較例1)
長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧が21kPaの大気の気流雰囲気の下で焼成した以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が340質量ppm、D50が0.30μm、比表面積が5.3m
2/gであった。
【0051】
(比較例2)
長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧21kPaの大気の気流雰囲気の下、850℃で5時間の条件で焼成した以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が230質量ppm、D50が0.35μm、比表面積が4.4m
2/gであった。
【0052】
(比較例3)
上記実施例6と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製し、これを上記実施例1と同様にして管状炉に装填した後、長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧21kPaの大気の気流雰囲気の下、850℃で2時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末にした。得られた酸化ニッケル粉末は、硫黄含有量が270質量ppm、D50が0.31μm、比表面積が4.8m
2/gであった。
【0053】
(比較例4)
長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧21kPaの大気の気流雰囲気の下、600℃で5時間の条件で焼成した以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が470質量ppm、D50が0.90μm、比表面積が29m
2/gであった。
【0054】
(比較例5)
焼成時の温度を800℃に代えて1000℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が50質量ppm、D50が1.6μm、比表面積が1.7m
2/gであった。
【0055】
(比較例6)
焼成時の温度を800℃に代えて500℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が270質量ppm、D50が1.1μm、比表面積が65m
2/gであった。
【0056】
(比較例7)
長尺石英管の端部から酸素濃度10vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧10kPaの気流雰囲気の下、焼成した以外は上記実施例10と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が210質量ppm、D50が0.38μm、比表面積が4.1m
2/gであった。上記した実施例及び比較例の結果を下記表1にまとめて示す。
【0057】
【表1】
【0058】
上記表1の結果から分かるように、全ての実施例において、電子部品用材料として好適な、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量が200質量ppm以下で且つD50が1μm以下であり、硫黄含有量が低減された微細な酸化ニッケル粉末が得られた。特に実施例2、3、7、9、12は硫黄含有量が100質量ppm以下であり、固体酸化物形燃料電池の電極材料としても好適である。これに対して、比較例1〜7は、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量及びD50のうちの少なくとも一方において電子部品用材料として好適な範囲内のものが得られなかった。