特許第6852595号(P6852595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852595
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/38 20060101AFI20210322BHJP
   F16K 1/34 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F16K1/38 C
   F16K1/34 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-126335(P2017-126335)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-7604(P2019-7604A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 奨
(72)【発明者】
【氏名】大田 浩和
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−338550(JP,A)
【文献】 実開昭60−189671(JP,U)
【文献】 特開平06−238453(JP,A)
【文献】 特表2011−523001(JP,A)
【文献】 特許第6086177(JP,B1)
【文献】 特表2013−539526(JP,A)
【文献】 特開2010−121735(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0226980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグとバルブシート間の距離により流量を調整する弁装置であって、
前記プラグは、前記バルブシートと接するプラグ接頭部と、該プラグ接頭部と結合されているプラグ本体とを含んで構成され、
前記プラグ本体の結合凹部と、前記プラグ接頭部の結合凸部とが嵌めあわされることで前記プラグが構成されており、
前記プラグ接頭部はセラミックス製であるとともに、前記プラグ本体は、前記セラミックスよりも熱膨張率が大きい金属製であり、
前記結合凹部、および前記結合凸部のいずれにも接着剤用溝が設けられており、
前記プラグ接頭部と前記プラグ本体とを嵌め合わせたときに、
前記結合凹部の第1接着剤用溝と、前記結合凸部の第2接着剤用溝とが重なり
前記第1接着剤用溝と前記第2接着剤用溝とが重なることにより、
前記第1接着剤用溝と前記第2接着剤用溝とを合わせた形状の、接着剤によるリング状の嵌合材が形成される、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記第2接着剤用溝の断面形状の断面積は、
前記第1接着剤用溝の断面形状の断面積よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記プラグ接頭部が、酸化アルミニウムである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
ニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物を含んだスラリーを加圧浸出するオートクレーブに備えられており、
加圧浸出後のスラリーの抜取に用いられている、
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。さらに詳しくは、プラグ(弁体)とバルブシート(弁座)の間の距離により流量を調整する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備などでは、物質の複数の相(気相、液相または固相)が混じりあう混相流の状態で物質が搬送されることがある。このような混相流では、混相流が接する部材において、混相流の状態で物質が搬送される固体粒子の衝突による摩耗やキャビテーションによる摩耗が発生しやすい。よって、プラント設備を構成する装置への物質の流出口または流入口に設けられる弁装置の部材は、高い耐摩耗性が要求される。
【0003】
図5に従来の弁装置50の正面断面図を示す。この弁装置50では、バルブ本体51に固定されたバルブシート54に対して、プラグ52を上下に動作させ、プラグ52とバルブシート54との間の距離により弁装置50を流れる流量を調整する。プラグ52は、プラグガイド53により案内され、ステム55により上下に動作させられる。弁装置50では、図5の矢印で示すように、流体が水平方向(図5の紙面上左から右)から流入し、プラグ52とバルブシート54との間の縮流部を通過して、鉛直方向(図5の紙面上上から下)に流出する。この流体が、高温高圧である場合、弁装置50内部の減圧段階で流体の一部が気化し、気液混合流体となる場合がある。また、縮流部では、減圧によりキャビテーションが発生しやすい。
【0004】
特許文献1では、弁座および弁頭が固体タングステンカーバイドからなる制御弁が開示され、特許文献2では、上記の混相流の状態で搬送される物質に接触するプラグの一部にタングステンカーバイドを含有した超硬材料の焼結体を用いた弁が開示されている。特許文献2について具体的に説明すると、特許文献1の図5にあるように、所定の物質に接触する弁体頭部の中心に位置する芯部の外周にタングステンカーバイドが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−539526号公報
【特許文献2】特開2010−121735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タングステンカーバイドは、工具等に用いられているように、高硬度であり耐摩耗性に優れている。しかるに、特定の雰囲気、特に高温酸性および酸性化雰囲気などでは摩耗が激しくなり本来の特性を十分に発揮できないという問題がある。
また、高温酸性および酸性化雰囲気などでの耐摩耗性に優れる材料であるセラミックスで弁体頭部を構成することも可能であるが、弁体そのものは金属製であるため、セラミックスの弁体頭部を金属製の弁体に固定した場合、熱膨張係数の差からセラミックスの割れ等が生じやすくなる。
さらに、特許文献1の弁体の場合、タングステンカーバイド製の弁体頭部と弁ステムが一体に形成されているため、弁体頭部が摩耗した場合に、弁体全体を交換する必要があるという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、高温酸性および酸化性雰囲気など、特殊な環境下でも長期間に亘って使用することが可能な弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の弁装置は、プラグとバルブシート間の距離により流量を調整する弁装置であって、前記プラグは、前記バルブシートと接するプラグ接頭部と、該プラグ接頭部と結合されているプラグ本体とを含んで構成され、前記プラグ本体の結合凹部と、前記プラグ接頭部の結合凸部とが嵌めあわされることで前記プラグが構成されており、前記プラグ接頭部はセラミックス製であるとともに、前記プラグ本体は、前記セラミックスよりも熱膨張率が大きい金属製であり、前記結合凹部、および前記結合凸部のいずれにも接着剤用溝が設けられており、前記プラグ接頭部と前記プラグ本体とを嵌め合わせたときに、前記結合凹部の第1接着剤用溝と、前記結合凸部の第2接着剤用溝とが重なり、前記第1接着剤用溝と前記第2接着剤用溝とが重なることにより、前記第1接着剤用溝と前記第2接着剤用溝とを合わせた形状の、接着剤によるリング状の嵌合材が形成されることを特徴とする。
第2発明の弁装置は、第1発明において、前記第2接着剤用溝の断面形状の断面積は、前記第1接着剤用溝の断面形状の断面積よりも小さいことを特徴とする。
発明の弁装置は、第1発明または第2発明において、前記プラグ接頭部が、酸化アルミニウムであることを特徴とする。
発明の弁装置は、第1発明から第発明の何れかにおいて、ニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物を含んだスラリーを加圧浸出するオートクレーブに備えられており、加圧浸出後のスラリーの抜取に用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、プラグ本体の結合凹部が、セラミックスに比べて熱膨張係数の大きい金属製であることにより、セラミックスとの結合部に発生する、熱膨張による応力を緩和することができ、セラミックスの破損を防止することができる。この点でプラグの寿命が縮むことを防止でき、弁装置を長期間に亘って使用することができる。また、プラグ接頭部がセラミックス製であることにより、混相流に接する部材が高い耐摩耗性を有するので、この点でも、弁装置を長期間に亘って使用することができる。
また、プラグ接頭部とプラグ本体とを嵌め合わせたときに、結合凹部の接着剤用溝と、結合凸部の接着剤用溝とが重なっていることにより、これらの溝の中に保持されている接着剤同士が結合して、リング状の嵌合材を形成するので、さらに固定を確実にすることができる。
発明によれば、プラグ接頭部が酸化アルミニウムであることにより、高温酸性および酸化性雰囲気などでも耐摩耗性が失われることがなく、この雰囲気下での弁装置を長期間に亘って使用することができる。
発明によれば、ニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物を含んだスラリーを加圧浸出するオートクレーブに設けられており、加圧浸出後のスラリーの抜取に用いられていることにより、弁装置の破損および摩耗が抑制されることで、プラント設備の稼働率や生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る弁装置の要部を拡大した正面断面図である。
図2図1の弁装置を構成するプラグの正面断面図である。
図3図2のプラグの組立前の正面図である。
図4図2のプラグの要部を拡大した断面図である。
図5】従来の弁装置の要部を拡大した正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための弁装置を例示するものであって、本発明は弁装置を以下のものに特定しない。なお、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0011】
図1には、本発明の一実施形態に係る弁装置10の要部を拡大した正面断面図を示す。本発明の一実施形態に係る弁装置10では、バルブ本体11に固定されたバルブシート14に対して、プラグ12を上下に動作させ、プラグ12とバルブシート14との間の距離により弁装置10を流れる流体の流量を調整する。プラグ12は、プラグガイド13により案内され、ステム15により上下に駆動させられる。弁装置10では、図1の矢印で示すように、流体が水平方向(図1の紙面上左から右)から流入し、プラグ12とバルブシート14との間の縮流部を通過して、鉛直方向(図1の紙面上上から下)に流出する。本発明の弁装置10は、例えば高温の流体を流すことにより弁装置10内部が、高温となってもプラグ12に熱膨張係数の違いによる破損が発生しにくく、また酸性および酸化性雰囲気になってもプラグ12が摩耗することを抑制するので、弁装置10を長期に亘って安定的に使用することができる。
【0012】
図2には、本実施形態に係る弁装置10を構成するプラグ12の正面断面図を、図3には、このプラグ12の組立前の正面図を、図4には、プラグ12の要部を拡大した断面図を示す。図3では、理解を容易にするために、プラグ12を構成するプラグ本体21については、図3の左半分が断面図となっている。また図4の要部とは、プラグ本体21の結合凹部23と、プラグ接頭部31の結合凸部32とが合わさった箇所である。
【0013】
本実施形態のプラグ12は、バルブシート14と接触するプラグ接頭部31と、このプラグ接頭部31と結合されるプラグ本体21とを含んで構成されている。そして、プラグ本体21の結合凹部23と、プラグ接頭部31の結合凸部32とが嵌め合わされることでプラグ12が構成されている。
【0014】
プラグ本体21は、略円柱形状であり、図2の紙面上の上側には、ステム15と結合するためのステム用ねじ孔22が設けられ、下側には、プラグ接頭部31と嵌め合わせるための結合凹部23が設けられている。プラグ本体21の下側の結合凹部23は、プラグ本体21の下側に開口した孔であり、断面が円形状である。この結合凹部23の内周面には、接着剤26を保持するための第1接着剤用溝24が設けられている。
【0015】
図3に示すように、この第1接着剤用溝24は、結合凹部23の内周面に、円周方向に沿って3本互いに平行になるように設けられている。すなわち、3本の第1接着剤用溝24は、プラグ本体21の軸心と垂直な平面内にそれぞれ設けられており、これらの第1接着剤用溝24は互いに連結していない。第1接着剤用溝24の断面形状は半円状であるが、加工方法によっては三角形となる場合もある。
【0016】
プラグ本体21は、プラグ接頭部31の材質として採用されている酸化アルミニウム等のセラミックスよりも熱膨張率が大きい金属製であり、加工の容易性や、耐食性、入手性を考慮してステンレス製である。より詳しくは、オーステナイト系ステンレスであるSUS316が望ましい。
【0017】
プラグ接頭部31は、バルブシート14と接触する部材であり、先端部31aは、円柱形状であって、バルブシート14へのプラグ接頭部31のガイドを行う部分である。シート接触部31bは、バルブシート14と直接接触する部分であり、円錐台形状をしている。また、図2の紙面上の上側には、プラグ本体21と嵌め合わせるための結合凸部32が設けられている。結合凸部32は、円柱形状をしており、この円柱形状部の直径は、プラグ本体21の結合凹部23と遊嵌する程度の大きさである。また、この円柱形状の外側には、接着剤26を保持するための第2接着剤用溝33が設けられている。
【0018】
この第2接着剤用溝33は、結合凸部32の外周面に、円周方向に沿って3本互いに平行になるように設けられている。すなわち、3本の第2接着剤用溝33は、プラグ接頭部31の軸心と垂直な平面内に設けられており、これらの第2接着剤用溝33は互いに連結していない。第2接着剤用溝33の断面形状は、半円状であるが、加工方法によっては三角形となる場合もある。また、結合凸部32に設けられている第2接着剤用溝33の断面形状の断面積は、結合凹部23に設けられている第1接着剤用溝24の断面形状の断面積よりも小さい。さらに、結合凹部23に結合凸部32が嵌めあわされ、所定の位置に配置された場合に、結合凸部32の第2接着剤用溝33と、結合凹部23の第1接着剤用溝24と重なるように、結合凸部32の第2接着剤用溝33が配置される。
【0019】
ここで、第1接着剤用溝24と第2接着剤用溝33とが重なるとは、図4に示すように、第1接着剤用溝24内に保持された接着剤26と、第2接着剤用溝33内に保持された接着剤26とが合わさって、塊を形成することができるような位置関係を言い、具体的には、プラグ本体21の下先端から第1接着剤用溝24までの距離と、このプラグ本体21の下先端が接触するプラグ接頭部31の肩部から第2接着剤用溝33までの距離が概略等しいことを意味する。なお、第1接着剤用溝24と第2接着剤用溝33との重なり部分は、望ましくは結合凸部32の外周全周に亘ることが望ましいが、その一部のみ重なる場合もある。
【0020】
プラグ接頭部31は、耐摩耗性を考慮して、セラミックス製である。工業的に使用されることが多いファインセラミックスとしては例えば、窒化ホウ素、窒化ケイ素、フェライトなどがあるが、本実施形態では、高温酸性および酸化性雰囲気での耐摩耗性を考慮して、プラグ接頭部31の材質は酸化アルミニウムである。
【0021】
プラグ本体21とプラグ接頭部31との結合は、接着剤26を用い、具体的には高温用二液混合接着剤を用いて行う。例えば、エポキシ系の熱硬化樹脂を使用することができる。プラグ本体21とプラグ接頭部31とを結合する際には、この二液混合接着剤の二液を事前に混合し、プラグ本体21の結合凹部23の内面と、プラグ接頭部31の結合凸部32とにそれぞれ塗布し、結合凹部23と結合凸部32とを嵌め合わせる。
【0022】
なお、本実施形態では、プラグ本体21の結合凹部23と、プラグ接頭部31の結合凸部32の両方に第1接着剤用溝24および第2接着剤用溝33が設けられている場合について記載したが、この構成に限定されるものではない。例えば、プラグ接頭部31の結合凸部32のみに設けることも可能であり、プラグ本体21の結合凹部23のみに設けることも可能である。
【0023】
本実施形態の弁装置10のバルブシート14は、プラグ接頭部31の材料と同じく酸化アルミニウムである。また他の部分は、弁装置10を流れる流体により適宜決定されるが、プラグ本体21と同じ素材であるSU316Lが望ましい。
【0024】
プラグ本体21の結合凹部23が、セラミックス(酸化アルミニウムで、7.0−7.7×10−6/℃)に比べて線膨張係数(熱膨張率)の大きい金属、例えばステンレス(SUS316Lで、16.0−16.2×10−6/℃) であることにより、熱膨張による応力が緩和され易く、この点でプラグ12の寿命が縮むことを防止でき、弁装置10を長期間に亘って使用することができる。例えば、本発明とは逆に、セラミックス製のプラグ接頭部で凹部を形成し、ステンレス製のプラグ本体で凹部を形成した場合、ステンレスの熱膨張による応力が全てセラミックス側に働くので、セラミックス製のプラグ接頭部が割れ易くなる。また、プラグ接頭部31がセラミックス製であることにより、混相流に接する部材が高い耐摩耗性を有するので、この点でも弁装置10を長期間に亘って使用することができる。
【0025】
結合凹部23、および結合凸部32のうち少なくとも一方には第1接着剤用溝24または第2接着剤用溝33が設けられていることにより、接着剤を第1接着剤用溝24または第2接着剤用溝33に保持することができるので、接着力を高めることができる。また、接着剤同士が結合してリング状の嵌合材を形成するので、プラグ接頭部31がプラグ本体21から外れ難くなる。
【0026】
プラグ接頭部31とプラグ本体21とを嵌め合わせたときに、結合凸部32の第2接着剤用溝33と、結合凹部23の第1接着剤用溝24とが重なっていることにより、これらの溝の中に保持されている接着剤26同士が結合して、さらに接着力を高めることができる。
【0027】
プラグ接頭部31が酸化アルミニウムであることにより、高温酸性および酸化性雰囲気などでも耐摩耗性が失われることがなく、この雰囲気下での弁装置10を長期間に亘って使用することができる。
【0028】
本発明の弁装置10は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物を含んだスラリーを加圧浸出するためのオートクレーブに備えられ、加圧浸出後スラリーの抜取に用いることができる。本発明の弁装置10により、抜取に用いられている弁装置の破損および摩耗を抑制することができ、プラント設備の稼働率や生産性を向上させることができる。以下、ニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物を含んだスラリーをオートクレーブによって加圧浸出するプロセスの一例として、硫酸ニッケルの製造プロセスについて説明する。
【0029】
硫酸ニッケルの原料としてニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物(MS:Mixed Sulfide)が用いられる。このニッケル・コバルト混合硫化物は低ニッケル品位のニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)し、加圧酸浸出液から鉄などの不純物を除去した後、ニッケルイオンおよびコバルトイオンを含む浸出液に硫化水素ガスを吹き込む湿式硫化反応などによって得られたものである。ニッケル・コバルト混合硫化物の主成分はNiS等の硫化物である。
【0030】
次にニッケル・コバルト混合硫化物に対して、レパルプ工程が実施される。このレパルプ工程において、ニッケル・コバルト混合硫化物は水などによりレパルプされスラリーとなる。レパルプ工程では、固体粉末状のニッケル・コバルト混合硫化物をレパルプ槽に投入し、水とともに混合、撹拌してスラリーを製造する。スラリーはオートクレーブに装入され加圧浸出に供される。
【0031】
次に加圧浸出工程が実施される。この加圧浸出工程では、オートクレーブによって混合硫化物に含まれるニッケルおよびコバルトが高圧空気により浸出される。例えば、オートクレーブに装入されるスラリーの固形分濃度は200〜300g/L、流量は50〜100L/分である。オートクレーブ内の温度は150〜220℃、圧力はゲージ圧で1.7〜2.3MPaである。
【0032】
オートクレーブからは硫酸ニッケルと硫酸コバルトとの混合水溶液である加圧浸出液が排出される。加圧浸出液は降圧、冷却された後に次工程に供給され、硫酸ニッケルの製造に用いられる。このオートクレーブから浸出後のスラリーを抜取って、降圧装置(フラッシュタンク)に移送するための抜取り弁(オートクレーブのレベル調節弁)として、本発明の弁装置が最適に用いられる。
【0033】
上記浸出後のスラリーは高温高圧であるのみならず、固いMSの浸出残渣を含んだスラリーであり、抜取り弁の縮流部で減圧されるため水分が気化し、弁装置の内部は気相と液相および固相が混じりあう混相流の状態となっている。
【符号の説明】
【0034】
10 弁装置
12 プラグ
14 バルブシート
21 プラグ本体
23 結合凹部
24 第1接着剤用溝
31 プラグ接頭部
32 結合凸部
33 第2接着剤用溝
図1
図2
図3
図4
図5