(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基を有するものである請求項1又は2に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の硬化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
〔(A)直鎖状ポリフルオロ化合物〕
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物における(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基と主鎖中に直鎖状パーフルオロポリエーテル構造とを有する直鎖状ポリフルオロ化合物である。ここでアルケニル基の数は、2〜30個が好ましく、特に2〜6個が好ましい。なお、本発明の組成物には、1分子中に1個のアルケニル基を有し、且つ主鎖中に直鎖状パーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物は含まないことが好ましい。
なお、本発明において、「直鎖状ポリフルオロ化合物」、「直鎖状パーフルオロポリエーテル構造」又は「直鎖状パーフルオロポリエーテル基」とは、主鎖のパーフルオロポリエーテル構造を構成する2価のフルオロオキシアルキレン繰り返し単位同士が直鎖状に連結していることを意味するものであって、個々の2価のフルオロオキシアルキレン単位それ自体は、例えば、直鎖状フルオロオキシアルキレン単位であっても、あるいは−[CF
2CF(CF
3)O]−等の分岐構造を有するフルオロオキシアルキレン単位であってもよい。
【0031】
(A)成分としては、特に下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0033】
[式(1)中、Xは−CH
2−、−CH
2O−、−CH
2OCH
2−又は−Y−NR
1−CO−
(ここで、Yは−CH
2−、−Si(CH
3)
2CH
2CH
2CH
2−、−Si(CH
3)(CH=CH
2)CH
2CH
2CH
2−、−Si(CH=CH
2)
2CH
2CH
2CH
2−又は下記構造式(Z)
【0035】
(式(Z)中、R
3、R
4はそれぞれ独立に−CH
3又は−CH=CH
2である。)
で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R
1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)であり、
【0036】
X’は−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2OCH
2−又は−CO−NR
2−Y’−
(ここで、Y’は−CH
2−、−CH
2CH
2CH
2Si(CH
3)
2−、−CH
2CH
2CH
2Si(CH
3)(CH=CH
2)−、−CH
2CH
2CH
2Si(CH=CH
2)
2−又は下記構造式(Z’)
【0038】
(式(Z’)中、R
3'、R
4'はそれぞれ独立に−CH
3又は−CH=CH
2である。)
で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R
2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)である。
【0039】
gは独立に0又は1である。
Rf
1は下記式(i)又は(ii)
【0041】
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0〜150の整数、好ましくは1〜150の整数であって、且つpとqの和の平均は2〜200である。rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【0043】
(式(ii)中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは2又は3である。)
で表され、好ましくは、分岐構造を有するフルオロオキシアルキレン単位である−[CF
2CF(CF
3)O]−を含有する2価の直鎖状パーフルオロポリエーテル基である。]
【0044】
ここで、R
1、R
2としては、水素原子、炭素数1〜12、特に1〜10の炭化水素基が好ましく、炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。
【0045】
ここで、式(1)中のRf
1は2価の直鎖状パーフルオロポリエーテル基であり、下記式(i)又は(ii)で表される基が好ましい。
【0047】
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0〜150の整数、好ましくは1〜150の整数、更に好ましくは10〜100の整数であって、且つpとqの和の平均は、2〜200、好ましくは20〜160である。また、rは0〜6の整数、好ましくは0〜4の整数、tは2又は3である。)
【0049】
(式(ii)中、uは1〜200の整数、好ましくは20〜160の整数であり、vは1〜50の整数、好ましくは5〜40の整数であり、tは2又は3である。)
【0050】
Rf
1基の好ましい例としては、例えば、下記の3つのものが挙げられる。この内、特に1番目の式の構造の2価の基が好ましい。
【0052】
(式中、p1及びq1はそれぞれ1〜150の整数、p1+q1(平均)=2〜200である。Lは2〜6の整数である。)
【0054】
(式中、p2及びq2はそれぞれ1〜150の整数、p2+q2(平均)=2〜200である。Lは2〜6の整数である。)
【0056】
(式中、u1は1〜200の整数、v1は1〜50の整数である。)
【0057】
(A)成分の好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
[式(2)中、X
1は−CH
2−、−CH
2O−、−CH
2OCH
2−又は−Y−NR
11−CO−(Yは前記と同じものを示し、R
11は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である)で表される基を示し、X
1’は−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2OCH
2−又は−CO−NR
12−Y’−(R
12は上記R
11と同じものを示し、Y’は前記と同じものを示す)で表される基であり、gは独立に0又は1、Lは2〜6の整数、p3及びq3はそれぞれ1〜150の整数、p3+q3(平均)=2〜200である。]
【0060】
式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0062】
(式中、p’及びq’はそれぞれ1〜150の整数、p’+q’(平均)=6〜200である。)
【0064】
(式中、p’及びq’はそれぞれ1〜150の整数、p’+q’(平均)=6〜200である。)
【0066】
(式中、p”及びq”はそれぞれ1〜150の整数、p”+q”(平均)=2〜200である。)
【0067】
式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物に含まれるアルケニル基量は、好ましくは0.005〜0.050モル/100gであり、更に好ましくは0.007〜0.040モル/100gである。直鎖状ポリフルオロ化合物に含まれるアルケニル基量が少なすぎると、光硬化物の物理的強度が低下したり、光硬化物が得られなくなったりする場合がある。また、アルケニル基量が多すぎると、得られる光硬化物が脆く割れやすい場合がある。
【0068】
なお、式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、好ましくは100〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜20,000mPa・sの範囲内にある。この範囲内の粘度の光硬化性組成物をシール、ポッティング、コーティング、含浸等に使用すれば、光硬化物が適当な物理的特性を有するので望ましい。式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物は用途に応じて最も適切な粘度のものを選択する。この際、低粘度のポリマーと高粘度のポリマーを混合し、所望の粘度に調整して用いることも可能である。
なお、本発明において、粘度(23℃)は、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができるが、特に、JIS K7117−1に規定された条件に準拠して測定することが好ましい。また、直鎖状ポリフルオロ化合物の主鎖を構成する直鎖状パーフルオロポリエーテル構造中の各パーフルオロオキシアルキレン繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は、通常、フッ素系溶剤を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として算出することができる。
【0069】
更に本発明では、式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物を目的に応じた所望の数平均分子量又は重量平均分子量に調節するため、予め、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を、分子内にヒドロシリル基(Si−H基)を2個含有する有機ケイ素化合物と通常の方法及び条件でヒドロシリル化反応させ、鎖長延長された生成物を(A)成分として使用することも可能である。
【0070】
これらの直鎖状ポリフルオロ化合物は、1種単独で使用されてもよく、若しくは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0071】
〔(B)含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
(B)成分は、1分子中に含フッ素有機基を1個以上、好ましくは1〜10個有し、且つケイ素原子に直結した水素原子(即ち、Si−Hで示されるヒドロシリル基)を2個以上、好ましくは3〜50個有する
、(A)成分以外の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分は、(A)成分の架橋剤及び/又は鎖長延長剤として機能するものである。また(B)成分は、(A)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基等のフッ素含有基を有するものが好ましい。
【0072】
この1価又は2価の含フッ素有機基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロオキシアルキレン基等の下記式で表されるものを挙げることができる。
【0074】
(式中、gは1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数である。)
【0076】
(式中、fは1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数、hは1〜3の整数である。)
【0078】
(式中、i及びjはそれぞれ1以上の整数、好ましくは1〜100の整数、i+jの平均は2〜200、好ましくは2〜100である。)
【0080】
(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数、好ましくは1〜40の整数である。)
【0081】
また、上述したパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロオキシアルキレン基と(B)成分中のケイ素原子とは2価の連結基により繋がれていることが好ましく、該2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、若しくはこれらの基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基等を介在させたものであってもよく、例えば、下記の炭素数2〜12の2価の連結基等が挙げられる。
【0083】
(式中、Phはフェニル基、Ph’はフェニレン基である。)
【0084】
また、この(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおける上記1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子に結合した水素原子以外のケイ素原子に結合した1価の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基が挙げられる。
【0085】
(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、環状、鎖状、三次元網状及びそれらの組み合わせのいずれでもよい。この含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子数は、特に制限されるものではないが、通常2〜60、好ましくは3〜30程度である。
【0086】
このような1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子結合水素原子を有する(B)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種単独でも2種以上を併用して用いられてもよい。なお、下記式において、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0097】
上記(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるSi−H基量は、好ましくは0.00050〜0.01000モル/gであり、更に好ましくは0.00100〜0.00800モル/gである。含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるSi−H基量が少なすぎると架橋密度が不十分となり、得られる光硬化物の物理的特性が低下する場合があり、Si−H基量が多すぎると光硬化性組成物が硬化時に発泡したり、得られる光硬化物の物理的特性が経時で大きく変化したりする場合がある。
【0098】
これらの含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種単独でも2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0099】
上記(B)成分の配合量は、(A)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対し、(B)成分中のヒドロシリル基、即ちSi−H基が0.5〜3.0モル、好ましくは0.8〜2.0モルとなる量である。ヒドロシリル基(≡Si−H)が少なすぎると、架橋密度が不十分となる結果、光硬化物が得られない。また、ヒドロシリル基が多すぎると光硬化性組成物が硬化時に発泡してしまう。
【0100】
〔(C)光活性型ヒドロシリル化触媒〕
(C)成分は、光活性型ヒドロシリル化反応触媒である。光活性型ヒドロシリル化反応触媒は、光、特に300〜400nmの紫外線の照射によって活性化され、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。この光活性型ヒドロシリル化反応触媒は、主に白金族系金属触媒、若しくはニッケル系金属触媒がこれに該当し、白金族系金属触媒としては白金系、パラジウム系、ロジウム系の、ニッケル系金属触媒としてはニッケル系、鉄系、コバルト系の金族錯体化合物がある。中でも白金系金属錯体化合物は、比較的入手し易く、且つ良好な触媒活性を示すため、好ましい。
【0101】
光活性型の白金系金属錯体化合物としては、例えば、(η
5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金錯体化合物やβ−ジケトナト白金錯体化合物などがあり、具体的には(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルエチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルアセチル白金(IV)、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルシクロペンタジエニル白金(IV)、トリメチル(アセチルアセトナト)白金(IV)、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金(IV)、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金(IV)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(2,4−へキサンジオナト)白金(II)、ビス(2,4−へプタンジオナト)白金(II)、ビス(3,5−ヘプタンジオナト)白金(II)、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナト)白金(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)白金(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)白金(II)などが挙げられる。
【0102】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには触媒を適切な溶媒に溶解したものを(A)成分のポリフルオロ化合物に相溶させて使用することが好ましい。
【0103】
使用する溶媒の種類については、触媒が可溶なものであれば特に限定はされないが、炭化水素基の水素の一部がフッ素に置換された溶媒、又は炭化水素基の水素の一部がフッ素で置換された溶媒と炭化水素の水素全てがフッ素に置換された溶媒との混合溶媒を使用することが、触媒を組成物中により均一に分散可能である点で、より好ましい。
【0104】
炭化水素基の水素の一部がフッ素で置換された溶媒としては、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−メチル−3−(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、1,1,1−トリフルオロ−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン−2−オン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、ヘプタフルオロ酪酸n−ブチル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸エチル、2−メチル−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2,3−ジメトキシベンゾトリフルオリドなどが挙げられる。
【0105】
また炭化水素基の水素の全てがフッ素で置換された溶媒としては、例えばオクタフルオロトルエン、(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)パーフルオロベンゼン、ペンタフルオロエチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、フロリナート(3M社製)、PF5060(3M社製)、パーフルオロポリエーテルオリゴマーなどが挙げられる。
【0106】
触媒を溶液として用いる場合、(A)成分のポリマーと触媒溶液との好ましい混合比は、100:0.01〜1.00(重量比)の範囲である。触媒溶液の添加量がこの範囲より多い場合には、光硬化物の物性が低下する可能性があり、一方この範囲よりも少ない場合には、光硬化性組成物への触媒の分散性不良を招く可能性がある。よって、触媒溶液の濃度はこの混合比の範囲内になるよう、適宜調整を行えばよい。
【0107】
(C)成分の使用量は、(A)成分の質量に対して金属原子換算(特には、白金族金属原子換算、又はニッケル系金属原子換算)で0.1〜500ppm、好ましくは1〜100ppmである。使用量が少なすぎると、光硬化性組成物が十分な光硬化性を得られず、一方多すぎると光硬化物の耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0108】
〔(D)疎水性シリカ粉末〕
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物には、更に、(D)成分として、本発明の効果を損なわない範囲で疎水性シリカ粉末を添加することができる。これによって、本発明の光硬化性組成物から得られる光硬化物に適切な物理的強度を付与することができる。この疎水性シリカ粉末としては、BET比表面積が50m
2/g以上、特に50〜400m
2/gの微粉末シリカを疎水化処理したものが好適である。
【0109】
BET比表面積が50m
2/g未満の場合、得られる光硬化物の所望の物理的強度が得られないことがある。BET比表面積が、400m
2/gを超えると、混練作業が困難となり、また光による硬化性を著しく低下させる可能性がある。微粉末シリカとしては、煙霧質シリカ(乾燥シリカ)、沈降性シリカ(湿式シリカ)、コロイドシリカ等が例示されるが、これらの中では煙霧質シリカが最も好ましい。
【0110】
また、上記微粉末シリカの疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示されるが、これらの中ではオルガノクロロシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザンが好ましい。
【0111】
この(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0〜30質量部、好ましくは0.5〜30質量部であり、更に好ましくは1〜25質量部の範囲である。配合量が0.5質量部未満の場合には、得られる光硬化物の物理的特性を調整することができず、一方、30質量部を超えると光硬化性組成物の流動性が悪くなり、また光硬化性も著しく低下することがある。
【0112】
〔(E)反応制御剤〕
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物には、更に、(E)成分として、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のヒドロシリル化反応の反応制御剤を配合することができる。これによって、光硬化性組成物は更に良好な保存性を得ることができる。反応制御剤としては、例えば1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノールなどのアセチレンアルコールや、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のアセチレン化合物などが挙げられる。また、以下の構造式で示される含フッ素アセチレンアルコール化合物、若しくはポリメチルビニルシロキサン環式化合物、有機リン化合物なども反応制御剤として用いることができる。
【0119】
これら反応制御剤は、その化学構造によって制御能力が異なるため、添加量についてはそれぞれ最適な量に調整すべきである。一般的に、反応制御剤の添加量が少なすぎると、光硬化性組成物の室温での長期保存性が得られず、反応制御剤の添加量が多すぎると、光硬化性組成物の硬化性が鈍くなり十分な硬化性が得られなくなる可能性がある。
【0120】
〔その他の成分〕
本発明の光硬化性組成物においては、その実用性を高めるために上記の(A)〜(E)成分以外にも、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機質充填剤、接着促進剤、接着助剤、シランカップリング剤等の各種配合剤を必要に応じて添加することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲、及び光硬化性組成物の特性及び光硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0121】
可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤として、下記式(3)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物、及び/又は、下記式(4)及び/又は(5)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物を併用することができる。
【0123】
[式(3)中、X’は上記と同じ、Rf
3は、下記式(iii)であり、aは、0又は1である。
【0125】
(式(iii)中、f1は1以上の整数、好ましくは2〜100の整数であり、tは2又は3であり、且つf1は上記(A)成分のRf
1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さいことが好ましい。)]
【0127】
(式(4)中、Dは式:C
sF
2s+1−(sは1〜3)で表される基であり、c1は1〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、且つc1は前記(A)成分のRf
1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さいことが好ましい。)
【0129】
(式(5)中、Dは式:C
sF
2s+1−(sは1〜3)で表される基であり、d1及びe1はそれぞれ1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数であり、且つ、d1とe1の和は、前記(A)成分のRf
1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和以下である。)
【0130】
上記式(3)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる(なお、下記f1’は、上記f1の要件を満足するものである。)。
【0132】
式(4)及び(5)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる(なお、下記c1’、及びd1’とe1’の和は、上記c1、及びd1とe1の和の要件を満足するものである。)。
【0134】
(式中、c1’は1〜200の整数である。)
【0136】
(式中、d1’は1〜200の整数、e1’は1〜200の整数で、d1’+e1’=2〜200である。)
【0137】
式(3)〜(5)の化合物の配合量は、本組成物中の(A)成分、特に式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは50〜250質量部である。また、回転粘度計による粘度(23℃)は、直鎖状ポリフルオロ化合物と同様の理由から、5〜100,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
【0138】
無機質充填剤として、例えば、石英粉末、溶融石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム等の補強性又は準補強性充填剤、酸化鉄、カーボンブラック、アルミン酸コバルト等の無機顔料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン等の耐熱向上剤、アルミナ、窒化硼素、炭化ケイ素、金属粉末等の熱伝導性付与剤、カーボンブラック、銀粉末、導電性亜鉛華等の導電性付与剤等を挙げることができる。
【0139】
また、本発明では、必要により、カルボン酸無水物、チタン酸エステル等の接着促進剤、接着付与剤及び/又はシランカップリング剤を添加することができる。
【0140】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物]
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、上記した(A)〜(C)成分、好ましくは(A)〜(D)成分、より好ましくは(A)〜(E)成分と、その他の任意成分とをプラネタリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー等の混合装置、必要に応じてニーダー、三本ロール等の混練装置を使用して均一に混合することによって製造することができる。
【0141】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の製造方法は特に制限されず、上記成分を練り合わせることにより製造することができる。また2種の組成物として調製し、使用時に混合するようにしてもよい。
【0142】
以下、(A)〜(E)成分を配合した場合について光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の製造方法の一例を示す。(A)〜(C)成分より組成物を製造する場合は、単純に(A)〜(C)成分を順次配合し、混合すればよい。
【0143】
上記(A)〜(E)成分を含む光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の製造方法としては、例えば、まず(A)成分の一部又は全部100質量部に対して(D)成分を10〜50質量部の範囲で加熱又は無加熱条件下で該(A)成分と配合し、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で該(A)成分と(D)成分との混練りを行った後、最終的に所定の配合比となるように(A)成分の残部で後希釈する方法が挙げられる。この方法によれば、光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の光硬化特性を向上させることができる。
【0144】
ここで、(A)成分の一部又は全部と(D)成分との配合・混練りは、(D)成分である疎水性シリカ粉末の表面を(A)成分である直鎖状ポリフルオロ化合物で十分に被覆するために行われる。これにより、(B)成分が(D)成分のシリカ表面に吸着されにくくなったり、(B)成分及び(D)成分同士が凝集されにくくなることによって、光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の粘度が低減し、光硬化性が向上するからである。(A)成分の一部又は全部と(D)成分との配合・混練りは、プラネタリーミキサー、ゲートミキサー及びニーダー等の混練り装置などによって行うことができる。
【0145】
配合・混練りの温度及び時間に関しては、適宜決定すればよいが、熱処理温度は120〜180℃、成分が均一に分散するように混練りは1時間以上行うことが好ましい。
【0146】
配合・混練り時の圧力に関しては、用いる装置によって異なるので、その装置に応じて加圧若しくは減圧下で行うことが好ましい。例えば、プラネタリーミキサーやゲートミキサーで混練りする場合には、その圧力条件はゲージ圧で−0.05MPa以下の減圧下であることが好ましい。また、ニーダーで混練りする場合には、その圧力条件はゲージ圧で0.4〜0.6MPaの加圧下であることが好ましい。この条件下で操作を行う理由は、(A)成分が(D)成分の表面に濡れやすく(被覆しやすく)するためである。
【0147】
以上のようにして得られた(A)成分の一部又は全部及び(D)成分からなる液状ベースに、上記(A)成分の残部、(B)成分、(C)成分及び(E)成分を配合することにより、光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得ることができる。
【0148】
なお、本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を使用するに当たり、その用途、目的に応じて適当なフッ素系溶剤、例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、フロリナート(3M社製)、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロポリエーテルオリゴマー、又はそれらの混合物等に所望の濃度に該組成物を溶解して使用してもよい。特に、薄膜コーティング用途においては溶剤を使用することが好ましい。
【0149】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の光硬化方法]
製造された光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、光照射により硬化され得る。硬化の際、照射する光は発光スペクトルにおける最大ピーク波長が300〜400nmの領域にあり、且つ300nmより短い波長領域にある各波長の放射照度は前記最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、つまり0に近ければ近いほど好ましい。300nmより短い波長領域にあり、放射照度が前記最大ピーク波長の放射照度の5%より大きい波長を有する光を照射すると、ポリマー末端基の分解が起こったり、触媒の一部が分解したりするなどして、十分な硬化物を得ることができない可能性がある。
【0150】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を硬化させるのに用いる活性光線種は特に限定はされないが、紫外線、特には、最大ピーク波長が300〜400nmである近紫外線が好ましい。良好な光硬化性を得るための紫外線照射量(照度)は、積算光量として100mJ/cm
2〜100,000mJ/cm
2、好ましくは1,000mJ/cm
2〜10,000mJ/cm
2、より好ましくは5,000〜10,000mJ/cm
2である。紫外線照射量(照度)が上記範囲未満の場合には、光硬化性組成物中の光活性型ヒドロシリル化反応触媒を活性化するのに十分なエネルギーが得られず、十分な光硬化物を得ることができない可能性がある。また、紫外線照射量(照度)が上記範囲を超える場合には、光硬化性組成物に必要以上のエネルギーが照射され、ポリマー末端基の分解が起こったり、触媒の一部が失活したりするなどして、十分な光硬化物を得ることができない可能性がある。
【0151】
紫外線照射は複数の発光スペクトルを有する光であっても、単一の発光スペクトルを有する光であってもよい。また、単一の発光スペクトルは300nmから400nmまでの領域にブロードなスペクトルを有するものであってもよい。単一の発光スペクトルを有する光は、300nmから400nmまで、好ましくは350nmから380nmまでの範囲にピーク(即ち、最大ピーク波長)を有する光である。このような光を照射する光源としては、例えば、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や、紫外線発光半導体レーザー等の紫外線発光半導体素子光源が挙げられる。
【0152】
複数の発光スペクトルを有する光を照射する光源としては、例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、ナトリウムランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等のランプ等、窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
【0153】
前記光が発光スペクトルにおいて300nmよりも短い波長領域にピークを有する場合、若しくは、300nmよりも短い波長領域に前記発光スペクトルにおける最大ピーク波長の放射照度の5%よりも大きい放射照度を有する波長が存在する場合(例えば、発光スペクトルが広域波長領域に渡ってブロードである場合)には、光学フィルターにより300nmよりも短い波長領域にある波長の光を除去する。これにより、300nmよりも短い波長領域にある各波長の放射照度を最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0%にする。なお、発光スペクトルにおいて300nmから400nmまでの波長領域に複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を最大ピーク波長とする。光学フィルターは300nmよりも短い波長をカットするものであれば特に制限されないが、公知の物を使用すればよい。例えば365nmバンドパスフィルター等を使用することができる。なお、紫外線の照度、スペクトル分布は分光放射照度計、例えばUSR−45D(ウシオ電機)にて測定することができる。
【0154】
光照射装置としては、特に限定はされないが、例えばスポット式照射装置、面式照射装置、ライン式照射装置、コンベア式照射装置等の照射装置が使用できる。
【0155】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を硬化させる際、光照射時間は、例えば1〜300秒、好ましくは10〜200秒、より好ましくは30〜150秒であり、光照射の1〜60分後、特には5〜30分後には光硬化性組成物は流動性を失いゴム弾性体(ゴム硬化物)を得ることができる。
【0156】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム硬化物]
上記(A)〜(C)成分、好ましくは(A)〜(D)成分、より好ましくは(A)〜(E)成分を主成分とする本発明の光硬化性組成物は、前記光硬化方法により耐薬品性及び耐溶剤性に優れ、且つ透湿性の低いゴム硬化物を形成することができる。ゴム硬化物の形成は、本発明の光硬化性組成物を適当な容器内に注入するか、若しくは適当な基体上にコーティングした後に、光照射し硬化させる等の従来公知の方法により容易に行うことができる。
【0157】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム硬化物は、例えば、自動車用、化学プラント用、半導体製造ライン用、分析・理化学機器用、医療機器用、燃料電池用、インクジェットプリンタ用、航空機用、有機ELパネル用等の様々な用途の部材として好適に使用することができる。
【0158】
更に詳述すると、本発明の硬化物及び硬化物を含むゴム製品は、例えば、自動車用ゴム部品、具体的には、ダイヤフラム類、バルブ類、若しくはシール材等;化学プラント用ゴム部品、具体的には、ポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケット、タンク配管補修用シール材等のシール材等;半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には、薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、パッキン、ガスケット等のシール材等、低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブ等;分析・理化学機器用ゴム部品、具体的には、ポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(パッキン等);医療機器用ゴム部品、具体的には、ポンプ、バルブ、ジョイント等;燃料電池用ゴム部品、具体的には、燃料電池用シール材;インクジェットプリンタ用ゴム部品;航空機用ゴム部品;有機ELパネル用ゴム部品;その他のゴム部品;具体的には、テント膜材料、シーラント、成型部品、押し出し部品、被覆材、複写機ロール材料、電気用防湿コーティング材、センサー用ポッティング材、工作機器用シール材、積層ゴム布等に有用である。
【実施例】
【0159】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、Meはメチル基を示し、部は質量部を示す。また、粘度は23℃における測定値を示す(JIS K7117−1に準拠)。分子量は、フッ素系溶剤を展開溶媒としたGPC分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。
【0160】
光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物用ベースコンパウンドの製造
[製造例]
下記式(6)で表されるポリマー(粘度9,000mPa・s、ビニル基量0.013モル/100g、数平均分子量15,700)100部に疎水性シリカ系充填剤としてフュームドシリカ(品名 AEROSIL R972:日本アエロジル(株)製商品名)10部をプラネタリーミキサーにて分割添加し、1時間混練りを行った。次いで、150℃で1時間混合減圧(−0.08〜−0.10MPa)熱処理し、冷却後3本ロールにて分散処理してベースコンパウンドの製造を行った。
【0161】
【化48】
【0162】
光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の調製
[実施例1]
式(6)で示されるポリマー100部をプラネタリーミキサー内に仕込み、これに(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.07部、下記式(7)で示される含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン2.4部(Si−H基量0.00500モル/g)を順次添加し、均一になるよう混合した。その後、脱泡操作を行うことにより光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製した。
【0163】
【化49】
【0164】
[実施例2]
上記製造例で作製したベースコンパウンド(110部)に式(6)で示されるポリマー100部をプラネタリーミキサー内に仕込み、均一になるまで混合した。これに(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.14部、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンのトルエン溶液(5.0質量%)0.11部、上記式(7)で示される含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン5.0部(Si−H基量0.00500モル/g)を順次添加し、均一になるよう混合した。その後、脱泡操作を行うことにより光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製した。
【0165】
[実施例3]
実施例2において、光活性型ヒドロシリル化反応触媒:(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.14部をビス(2,4−へプタンジオナト)白金(II)の酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(白金濃度0.5質量%)0.88部に変更した以外は実施例2と同様にして光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製した。
【0166】
[実施例4]
実施例2において、含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン(7)5.0部を下記式(8)で示す含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン5.0部に変更した以外は実施例2と同様にして光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製した。
【0167】
【化50】
【0168】
[比較例1]
実施例4において、光活性型ヒドロシリル化反応触媒:(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.14部の代わりに、非光活性型ヒドロシリル化反応触媒:白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のエタノール溶液(白金濃度3.0質量%)0.14部に変更した以外は実施例4と同様にして硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製した。
【0169】
[保存性評価]
上記実施例及び比較例で得られたフルオロポリエーテル系ゴム組成物を遮光中、23℃で2週間放置した時の粘度と初期粘度との比較を行った。その結果を表1に示す。なお、粘度の測定はJIS K7117−1に準拠し、東機産業株式会社製TV−10U型回転粘度計(ロッドNo.H6、23℃、100rpm)を使用して行った。
【0170】
[光硬化性評価]
実施例1〜4で得られた光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物をそれぞれ(H)×(D)×(t)=105mm×85mm×2mmの型に流し込み、均一照射光学ユニットを装着したアイUV電子制御装置(岩崎電気(株)製)を用いて光照射を行った。その際、300nmよりも短い波長領域にある光を365nmバンドパスフィルターにより除去し、メインの365nmの光の積算光量が9,000mJ/cm
2となるよう100mW/cm
290秒間照射を行った。光照射後は直ちに遮光し、23℃にて静置し、光照射後、30分後、1時間後、2時間後のゴム物性をJIS K6250、6251、6253に準じて測定した。その結果を表2に示す。
また参考例1では、組成は実施例1と同一であり、紫外線照射時に365nmバンドパスフィルターを用いなかったこと以外は同様の操作を行った。その結果を表2に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
表1の結果より、本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物が遮光中23℃において良好な保存性を示すことが分かった。
【0174】
表2の結果より、本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物(実施例1〜4)を、365nmバンドパスフィルターにて300nmよりも短い波長域にある光をカットして光照射することで、良好な硬化性を示すことが分かった。また、365nmバンドパスフィルターを用いなかった参考例1では、光照射面の最表面が黄変し未硬化部が存在し、十分な硬化物を得ることができなかった。
【0175】
[光硬化物の耐熱性評価]
実施例1〜4で得られた光硬化物をJIS K6257に準じて150℃における耐熱試験を行った。結果を表3に示す。
【0176】
【表3】
【0177】
表3の結果より、本発明の光硬化物は、硬化後の150℃耐熱性試験において、ゴム物性の変動が小さいことから、室温で十分なゴム物性を有する光硬化物を形成しており、得られた光硬化物は耐熱性に優れることが分かった。
【0178】
光硬化物の低温性評価
実施例1〜4の組成物で得られた光硬化物を用いて、DSCによりガラス転移点(Tg)を測定した。その結果、いずれの硬化物もTg=−54℃であることが確認された。このことから本実施例の組成物から得られた光硬化物が低温特性に優れることを確認した。
【0179】
光硬化物の耐溶剤性評価
実施例2で得られた光硬化物を用いて、JIS K6258に準じて各種有機溶剤に対する浸漬試験を実施し体積変化率(%)を測定し、耐溶剤膨潤性を評価した。結果を表4に示す。
【0180】
【表4】
【0181】
表4に示された結果より、実施例2で得られた光硬化物は耐溶剤膨潤性に優れていることが確認された。実施例3、4についても、同評価において同様な結果が得られ、それぞれの光硬化物は耐溶剤膨潤性に優れていることが確認された。