(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共振部は、ISO6721−4に準じた動的粘弾性の合成曲線から得られる貯蔵弾性率G’が25℃、10kHzにおいて1MPa以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遮音構造体。
前記共振部は、ISO6721−4に準じた動的粘弾性の測定で得られるtanδのピーク温度が1Hzにおいて20℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮音構造体。
前記共振部は、ISO6721−4に準じた動的粘弾性の合成曲線から得られる貯蔵弾性率G’が25℃、5kHzにおいて80MPa以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮音構造体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は本明細書に明示的又は黙示的に記載された実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は特性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明において、「複数」とは「2以上」を意味する。
また、「遮音シート部材」は、少なくともシート部を有する部材、つまり、シート部を意味するが、以下に示す第1の実施形態では、シート部だけでなく共振部も必須の構成要素とするものである一方で、第2及び3の実施形態ではシート部を必須の構成要素とし、共振部等の部材を任意の構成要素とするものである。また、遮音構造体とは、少なくともシート部、共振部、及び遮音シート部材から選択される一の部材と、これらの部材以外の部材(例えば、支持体)とを有する構造物を示す。
また、本発明において「(メタ)アクリレート」とはアクリレートとメタクリレートとの総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味するものであり、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」についても同様である。
また、以下に示す各実施形態間において、各部材の材料や特性は、特段の断りがない限り、相互に採用することができる。
また、共振部等の複数で用いられ得る部材に関する特性値は、特段の断りがない限り、複数の部材の各々の特性値の平均値として算出する。
【0013】
<1.第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態である遮音構造体(以下、単に「遮音構造体」とも称する)は、複数の凸形状のゴム弾性を有する共振部と、前記共振部を支持するシート状の支持体とを有する遮音構造体であって、該共振部が、ISO6721−4に準じた動的粘弾性の合成曲線から得られる貯蔵弾性率G’が25℃、10kHzにおいて100MPa以下であり、該支持体の面密度が、1.0kg/m
2以下である、遮音構造体である。該遮音シートの一形態の斜視図を
図1に示す。
【0014】
<1−1.共振部>
<1−1−1.材料>
共振部に用いられる材料の種類は、動的粘弾性を測定できる、すなわち、ゴム弾性を有するものであれば特に限定されず、例えば、樹脂やエラストマーが挙げられる。
以下に、共振部の材料の詳細を説明するが、後述する第3の実施形態に記載の遮音シート部材用組成物を用いることもできる。
樹脂としては、熱又は光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられ、エラストマーとしては、熱又は光硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーが挙げられるが、これらの中でも光硬化性樹脂又は光硬化性エラストマーが好ましく、特に、形状転写性がよく、生産性に優れることから、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。共振部の材料として、熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂、又は熱硬化性若しくは熱可塑性のエラストマーを用いた場合、成形の際に熱による硬化反応を必要とするため、成形した共振部に気泡が生じる傾向が強い。気泡が生じた場合、共振し難くなり、遮音性能が低下してしまう。一方で、共振部の材料として、光硬化性樹脂又は光硬化性エラストマーを用いた場合、上記のような気泡の問題は生じないため、遮音性能の低下が生じにくい。
樹脂やエラストマーは、1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよいが、貯蔵弾性率、引張破断伸度等の特性を制御することができる観点から、2種以上の材料を組み合わせることが好ましい。
【0015】
共振部に用いられる樹脂として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等の熱硬化性樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、これらの変性体等の単量体の単独重合体又は共重合体等の光硬化性樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体共重合体又は、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、硬化物の弾性率が低いウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0016】
共振部に用いられるエラストマーとして、例えば、化学架橋された天然ゴム或いは合成ゴム等の加硫ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の熱硬化性樹脂系エラストマー等の熱硬化性エラストマー;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、アクリル系光硬化性エラストマー、シリコーン系光硬化性エラストマー、エポキシ系光硬化性エラストマー等の光硬化性エラストマー、シリコーン系熱硬化性エラストマー、アクリル系熱硬化性エラストマー、エポキシ系熱硬化性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、熱硬化性エラストマーであるシリコーン系熱硬化性エラストマー、アクリル系熱硬化性エラストマー、光硬化性エラストマーであるアクリル系光硬化性エラストマー、シリコーン系光硬化性エラストマーが好ましい。
【0017】
光硬化性樹脂とは、光照射により重合する樹脂である。例えば、光ラジカル重合性樹脂、及び光カチオン重合性樹脂が挙げられる。なかでも、光ラジカル重合性樹脂が好ましい。光ラジカル重合性樹脂は、少なくとも分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性エラストマーとしては、特に限定されないが、硬化物の弾性率の観点から、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、モルホリン−4−イル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の弾性率の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0018】
また、共振部に用いられる樹脂として、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含んでもよい。エチレン性不飽和結合を有する化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のモノ(メタ)アクリレート;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(繰返し単位数:5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(繰返し単位数:5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(繰返し単位数:3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(繰返し単位数:5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜15)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(p=1〜15)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜15)のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"−トリス((メタ)アクリロキシポリ(p=1〜4)(エトキシ)エチル)イソシアヌレート等のポリ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜8モル)付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜8モル)付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜12モル)付加物のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜12モル)付加物のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"−トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、N,N'−ビス(アクリロキシエチル)−N"−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内に複数のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の弾性率が低い、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールアクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールアクリレートがより好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
共振部中の樹脂及び/又はエラストマーの含有量は、遮音性能や製造コスト、他の機能などの観点から、適宜調整することができ、特に限定されない。例えば、通常70重量%以上であり、80重量%以上であることが好ましい。また、100重量%であってもよく、99重量%以下であることが好ましい。
【0020】
共振部が光硬化性樹脂又はエラストマーを含む場合、成形性や機械的強度の向上、製造コストの低減等の観点から、光重合開始剤を含むことが好ましく、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系等の光重合開始剤を挙げることができる。上記の光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等を例示することができる。これらは1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0021】
共振部中の光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、機械的強度の向上や適切な反応速度の維持の観点から、通常0.1重量%以上であり、0.3重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましい。また、通常3重量%以下であり、2重量%以下であることが好ましい。
【0022】
共振部は、遮音性や他の機能などを向上させるために、粒子、板、球体等を含んでもよい。これらの材料は特に限定されず、金属、無機、有機等の材料が挙げられる。
共振部は、機械的強度の向上、材料コストの低減の観点から、無機微粒子を含んでいてもよく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ソーダガラス、ダイヤモンド等の透明性を有する無機微粒子を挙げることができる。このような無機微粒子以外にも、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの共重合体などの樹脂粒子を微粒子として使用することもできる。
【0023】
共振部は、遮音性能が阻害されない限り、その他の成分として、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、離型剤等の各種添加剤を含有していてもよく、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
難燃剤は、可燃性の素材を燃え難くする又は発火しないようにするために配合される添加剤である。その具体例としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン等の臭素化合物、トリフェニルホスフェート等のリン化合物、塩素化パラフィン等の塩素化合物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、メラミンシアヌレート等の窒素化合物、ホウ酸ナトリウム等のホウ素化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
また、酸化防止剤は、酸化劣化防止のために配合される添加剤である。その具体例としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
可塑剤は、柔軟性や耐候性を改良するために配合される添加剤である。その具体例としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、シリコーン油、鉱物油、植物油及びこれらの変性体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0024】
成形性や生産性の観点から、共振部の材料は、後述するシート部の材料と一体となりやすいこと、例えば、相溶しやすいことが好ましく、特に、これらの材料が同じであることが好ましい。また、共振部は、鉱物油、植物油、シリコーン油等の液体材料を含んでいてもよい。なお、共振部が液体材料を含む場合には、液体材料の外部への流出を抑制する観点から、高分子材料中に封じ込めておくことが望ましい。
【0025】
<1−1−2.形態>
共振部は、騒音源から音波が入射された際に、ある周波数で振動する振動子(共振器)として機能するものである。共振部を有することにより、騒音源から音波が入射された際に、質量則を凌駕する高い遮音性能を得ることができる。共振部は、
図1に示すように単一構造体からなる構成でもよく、
図2に示すように、基部と、この基部に支持され且つこの基部より大きな質量を有する錘部とを備える複合構造体から構成されていてもよい。さらに、共振部は、
図3に示すように、錘部が基部内に埋設された複合構造体から構成されていてもよい。このような複合構造体では、共振部は、錘として働く錘部の質量と、バネとして働く基部のバネ定数により決定される共振周波数を持つ共振器として有効に機能する。また、共振部は、空孔(空気等の気体)を含む多孔質体であってもよい。
【0026】
共振部の外形形状は、特に限定されず、三角柱状、矩形柱状、台形柱状、五角柱や六角柱等の多角柱状、円柱状、楕円柱状、角錐台状、円錐台状、角錐状、円錐状、中空筒状、分岐形状、これらに分類されない不定形状等、任意の形状を採用することができる。また、共振部の高さ位置によって異なる断面積及び/又は断面形状を有する柱状に形成することもできる。
【0027】
共振部の配列、設置数、大きさ等は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。後述するシート部を用いる場合、共振部は、シート部の少なくとも一の面に接して設けられることが好ましい。また、
図1では、複数の共振部を格子状に等間隔に配置しているが、共振部の配列は、これに特に限定されない。例えば、複数の共振部が、千鳥状に配置されていても、ランダムに配置されていてもよい。本実施形態である遮音構造体による遮音機構は、所謂フォノニック結晶のようにブラッグ散乱を利用していないため、必ずしも共振部の間隔が規則正しく周期的に配置されていなくてもよい。
【0028】
単位面積当たりの共振部の設置数は、複数(2以上)であれば、特に限定されないが、共振部同士が接触する等により干渉しないように配置されることが好ましく、円柱断面直径が5mmの場合には、遮音性能の向上及び遮音構造体材全体の軽量化の観点から、100cm
2当たりの共振部の数は、0.1個〜4個であることが好ましく、0.1個〜3個であることがより好ましく、0.2個〜2個であることがさらに好ましい。
また、円柱断面直径が1mmの場合には、遮音性能の向上及び遮音構造体全体の軽量化の観点から、100cm
2当たりの共振部の数は、1個〜50個であることが好ましく、1個〜40個であることがより好ましい。
共振部の高さや体積は、特に限定されないが、共振部が小さい方が高音に対する遮音効果が大きい一方で、共振部が大きい方が低音に対する遮音効果が大きい傾向にあり、所望性能に応じて適宜設定できる。成形容易性及び生産性の向上等の観点からは、高さは、50μm〜100mmが好ましく、100μm〜50mmがより好ましく、1mm〜30mmがさらに好ましい。同様の観点から、共振部1個当たりの体積は、1cm
3〜300cm
3であることが好ましく、2cm
3〜200cm
3であることがより好ましい。共振部が円柱である場合、円柱断面直径は、同様の観点から、0.5mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましい。上記の好ましい数値範囲内とすることで、共振部を設けた構造体の巻き取りや重ね合わせが容易となり、所謂ロール・トゥ・ロールでの製造や保管ができ、生産性及び経済性が高められる傾向にある。
共振部の構成材料、配列、形状、大きさ、及び設置方向等は、複数の共振部すべてにおいて必ずしも同一でなくてもよい。これらのうち少なくとも1種を相違させた複数種の共振部を設置することにより、高遮音性能が現れる周波数領域を拡大することが可能である。
【0029】
[基部]
共振部が基部と錘部とからなる複合構造体から構成されている場合の基部の材料や形状は、上述した共振部と同様の条件で設定することができ、また、好ましい範囲についても同様である。ただし、高さ及び体積の好ましい範囲については、基部と錘部とを合わせた複合構造体全体の高さ及び体積として考える。
【0030】
[錘部]
錘部は、上述した基部より大きな質量を有するものであれば、形状は特に限定されない。また、錘部は、基部に支持された複合構造体から構成されていてもよく、基部内に埋設された複合構造体から構成されていてもよい。埋設されていた複合構造体の場合、錘部は、基部内に完全に埋設されていても、一部のみが埋設されていてもよい。さらに、遮音構造体の厚み低減、重量低減、または遮音性能向上の観点から、共振部の重心(質量中心)が、少なくとも共振部の高さ方向の中央よりも先端側に位置するように、基部及び錘部を配置することが好ましい。
【0031】
錘部を構成する材料は、質量やコスト等を考慮して適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。遮音構造体の小型化及び遮音性能の向上等の観点から、錘部を構成する素材は、比重の高い材料が好ましい。具体的には、アルミニウム、ステンレス、鉄、タングステン、金、銀、銅、鉛、亜鉛、真鍮等の金属又は合金;ソーダガラス、石英ガラス、鉛ガラス等の無機ガラス;これらの金属或いは合金の粉体又はこれらの無機ガラス等を上述した基部の高分子材料中に含むコンポジット;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。錘部の材質、質量、比重は、遮音構造体の音響バンドギャップが所望する遮音周波数領域に一致するように決定すればよい。これらの中でも、低コスト及び高比重である等の観点から、金属、合金、及び無機ガラスよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0032】
<1−2.シート部>
共振部は、
図1に示すように、支持体に直接設けられていてもよいが、
図4に示すように、ゴム弾性を有するシート部を介して支持体に設けられていてもよく、具体的には、共振部と共振部が設けられたゴム弾性を有するシート部(単に「シート部」又は「シート」と称する場合もある)とを有する遮音シート部材(単に、「遮音シート部材」とも称する)を有し、かつ、該遮音シート部材が、支持体に積層されている態様とすることができる。
【0033】
<1−2−1.材料>
シート部の材料は、後述する支持体と異なる材料であれば特段限定されず、上述した遮音シート部材で用いられる樹脂やエラストマーと同様の材料群の中から選択することができ、1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、該部材で用いられるその他の成分を含んでいてもよい。なお、成形性や生産性の観点から、共振部の材料は、シート部の材料と一体となりやすいこと、例えば相溶しやすいことが好ましく、特に、これらの材料が同じであることが好ましい。また、共振部は、鉱物油、植物油、シリコーン油等の液体材料を含んでいてもよい。なお、共振部が液体材料を含む場合には、液体材料の外部への流出を抑制する観点から、高分子材料中に封じ込めておくことが望ましい。
【0034】
<1−2−2.形態>
シート部を平面視で観察した場合の形状は、特に限定されず、三角形状、正方形状、長方形状、矩形状、台形状、ひし形状、5角形状や6角形状等の多角形状、円状、楕円状、これらに分類されない不定形状等、任意の平面視形状を採用することができる。なお、シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、伸縮性能の向上や軽量化等の観点から、任意の場所に切り込み部や打ち抜き孔等を有していてもよい。
【0035】
シート部の形状は、シート状であれば特に限定されず、シート部の厚みによっても高い遮音性能を発現する周波数帯域(音響バンドギャップ幅や周波数位置)を制御可能であるため、音響バンドギャップが所望の遮音周波数領域に一致するように、シート部の厚みを適宜設定することができる。シート部の厚みが厚いと、音響バンドギャップ幅が狭くなり、且つ、低周波数側にシフトする傾向にある。また、シート部の厚みが薄いと、音響バンドギャップ幅が広くなり、且つ、高周波側にシフトする傾向にある。遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性等の観点から、シート部の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、シート部の厚みは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
【0036】
また、共振部及びシート部を含む遮音シート部材の高さは、用途に応じて適宜変更しうるが、遮音性能と生産性の観点から、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが特に好ましく、一方で、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることが特に好ましい。
【0037】
<1−3.支持体>
本実施形態に用いられる支持体は、例えば、シート部を用いる場合には、シート部の一面に設けられ、シート部を支持するものであり、面密度が1.0kg/m
2以下であるものである。
なお、本発明において、「遮音シート部材」に支持体は含まれない。
【0038】
また、
図4に示すように、シート部を有する構成を採用した場合、支持体を有することにより、例えば、支持体側にある騒音源から音波が入射された際、シート部の共振が生じる。このとき、支持体に作用する力の方向とシート部に発生する加速度の方向とが逆となる周波数領域が存在可能となり、特定周波数の振動の一部乃至全部が打ち消されることで、特定周波数の振動がほぼ完全に存在しなくなる完全音響バンドギャップが生じる。そのため、シート部の共振周波数付近において、振動の一部乃至全部が静止し、その結果、質量則を凌駕する高い遮音性能が得られる。このような原理を利用した遮音部材は、音響メタマテリアルと呼ばれている。また、少なくとも共振部及び支持体を有する構造体を「遮音構造体」と称する。
【0039】
支持体を構成する素材は、共振部やシート部を支持可能なものであれば特に限定されないが、遮音性能を高める観点から、共振部やシート部よりも剛性の高いものが好ましい。具体的には、支持体は、1GPa以上のヤング率を有することが好ましく、より好ましくは1.5GPa以上である。上限は特にないが、例えば1000GPa以下が挙げられる。
また、シート部を装置、構造体上等に直接設置する場合において、シート部を設置する面は、シート部を支持する観点、遮音性能を高める観点等から上記支持体と同様の剛性を有することが好ましい。
【0040】
支持体を構成する材料の具体例としては、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフロロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリノルボルネン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキサジン樹脂等の有機材料、これらの有機材料中にアルミニウム、ステンレス、鉄、銅、亜鉛、真鍮等の金属、無機ガラス、無機粒子や繊維を含む複合材料等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、遮音性、剛性、成形性、コスト等の観点から、支持体は、光硬化性樹脂シート、熱硬化性樹脂シート、熱可塑性樹脂シート、金属板及び合金板からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、特に、柔軟性と耐久性の観点から、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、その中でもポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
ここで、支持体の厚みは、特に限定されないが、遮音性能、剛性、成形性、軽量化、コスト等の観点から、通常0.03mm以上であり、0.04mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、一方で、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることが特に好ましい。
【0041】
支持体の形状は、
図1に示した態様に限定されず、設置面に応じて適宜設定できる。例えば、平坦なシート状であっても、湾曲したシート状であっても、曲面部や折り曲げ部等を有するように加工された特殊形状であってもよい。さらに、軽量化等の観点から、切り込みや打ち抜き部等が、支持体の任意の場所に設けられていてもよい。
【0042】
支持体は、他の部材に貼りつけるために、支持体の面に粘着層等を有していてもよい。粘着層等を有する支持体の面は特に限定されず、1つでも複数であってもよい。
【0043】
<1−4.リブ状突起部>
遮音構造体には、
図5及び6に示すように、共振部が存在する側の遮音構造体の面の側に存在し、共振部よりも高さが大きく、かつ、外形略板状又は略円柱状等の形状で形成されたものである、リブ状突起部を設けていてもよい。これにより、遮音構造体を巻き取ったり又は複数枚重ね合せたりしても、リブ状突起部がスペーサーとして機能するため、遮音構造体の裏面に対する共振部の接触が抑制される。リブ状突起部の具体的態様としては、国際公開第2017/135409号に例示される態様を採用することができる。なお、本実施形態において、「遮音シート部材」にリブ状突起部は含まれない。
【0044】
<1−5.特性>
以下、各部材の特性について説明するが、共振部又はシート部を測定対象とする場合、測定を行うための試験片としては、実際に共振部又はシート部から切り出して作製した試験片を用いてよく、また、共振部又はシート部と同一の材料・条件で評価用に作製した試験片を用いてもよい。これは、後述する第2の実施形態及び第3の実施形態でも同様とする。
また、シート部を採用する場合、下記の特性のうち、共振部の特性に係る記載は、シート部にも同様に適用できる。すなわち、シート部の特性の数値範囲として、共振部の好適な数値範囲を採用することが好ましい。
また、下記の特性のうち、共振部に対する貯蔵弾性率、損失係数、及び引張破断伸度の測定について、その測定の対象は共振部中の樹脂又はエラストマーの部分である。例えば、基部及び錘部からなる構成で共振部を用いた場合、貯蔵弾性率の測定対象は、錘部を除いた基部である。これは、後述する第2の実施形態及び第3の実施形態でも同様とする。
また、共振部と後述するシート部の材料が同一である場合、共振部の特性として、シート部の特性を採用することができる。これは、後述する第2の実施形態及び第3の実施形態でも同様とする。
【0045】
[貯蔵弾性率]
共振部の25℃、10kHzにおける貯蔵弾性率G’(単に「貯蔵弾性率」とも称する)は、遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、100MPa以下であり、95MPa以下であることが好ましく、90MPa以下であることがより好ましい。また共振部の貯蔵弾性率は小さい方が好ましく、上記の観点からは特に下限を設ける必要はないが、形状転写性の観点から、例えば0.1MPa以上であって、好ましくは1MPa以上であることが挙げられる。
貯蔵弾性率が上記範囲内にある場合、共振周波数が低周波側で発生するために、目的とする遮音領域の遮音性能が向上する傾向がある。
また、25℃、5kHzにおける貯蔵弾性率も、特に限定さない。遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、80MPa以下であることが好ましく、75MPa以下であることがより好ましい。また、共振部の貯蔵弾性率は小さい方が好ましく、特に下限はないが、例えば1MPa以上が挙げられる。
ここで、本実施形態における貯蔵弾性率とは、内部に貯蔵された応力の保持に関する指標であり、実測値より、ISO6721−4に準じてWLF(ウイリアム・ランデル・フェリー)則によるマスターカーブ(合成曲線)を作成し、1Hz、5kHz、又は10kHz帯の弾性率を求めたものである。
【0046】
貯蔵弾性率は、樹脂等の分子量や結合の種類を変える、又はフィラーを添加することにより制御でき、一般的に、分子量の増加、結合力の増加、又はフィラーの添加に伴い増加する。さらに、例えば、貯蔵弾性率の低い樹脂と貯蔵弾性率の高い樹脂をブレンドさせて成形体を製造した場合、これらの樹脂のブレンド比率を調整することにより成形体の貯蔵弾性率を制御することができる。
【0047】
[損失係数]
共振部の損失係数(以下、「tanδ」とも称する)のピーク温度は、遮音性能、タック性、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、通常20℃以下であり、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましく、−30℃以下であることが特に好ましい。また、通常−100℃以上であり、−80℃以上であることが好ましく、−60℃以上であることがより好ましい。ここで、本実施形態におけるtanδとは、(粘性を表す)損失弾性率/(弾性を表す)貯蔵弾性率で算出され、弾性の性質と粘性の性質のどちらが大きいかを表す指標であり、ISO6721−4「プラスチック動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−」の非共振法により測定される損失係数の1Hzにおける値を意味している。
tanδのピーク温度は、硬化物のガラス転移温度の異なる材料を併用し、これら使用比率を調整することにより制御することができる。
【0048】
[比重]
一般的に、制振遮音材料の特性は、いわゆる質量則に従う。すなわち、騒音の低減量の指標である透過損失は、制振遮音材料の質量と弾性波や音波の周波数との積の対数により決定される。そのため、ある一定周波数の騒音の低減量をより大きくするためには、制振遮音材料の質量を増やすことが求められる。そのため、共振部の比重は高い方が好ましいが、比重が高いとハンドリング性が低減し、また輸送コストが増加してしまう。
上記の観点から、共振部の比重は、通常1.0g/cm
3以上であり、1.01g/cm
3以上であることが好ましい。また、通常3.0g/cm
3以下であり、2.5g/cm
3以下であることが好ましい。
また、複数の共振部の比重は、各々が異なってもよいが、安定した遮音性を確保する観点から、各々が均一であることが好ましい。ここで、均一な比重とは、複数の共振部の比重の最大値と最小値との差が、0.5g/cm
3以内にあることを意味する。
なお、比重は、材料の質量と、それと同体積の圧力1013.25hPaのもとにおける4℃の純水の質量との比を意味し、本明細書においては、JIS K 0061「化学製品の密度及び比重測定方法」により測定される値を用いる。
【0049】
[面密度]
支持体の面密度は、1.0kg/m
2以下であるが、0.9kg/m
2以下であることが好ましく、0.8kg/m
2以下であることがより好ましく、0.7kg/m
2以下であることが特に好ましく、一方で、0.01kg/m
2以上であることが好ましく、0.03kg/m
2以上であることがより好ましく、0.05kg/m
2以上であることが特に好ましい。この範囲であることにより、支持体が共振部に対して重すぎない為、共振部が支持体に対して振動を抑える錘として作用することができ、遮音効果を向上させることができる。面密度は、支持体の厚さや材料により調節することが可能である。
支持体の面密度は、支持体の比重に支持体厚さを乗することで求めることができる。
【0050】
[音響透過損失]
遮音構造体の音響透過損失は、0.5dB以上であることが好ましく、1.0dB以上であることがより好ましい。ここで、本実施形態における音響透過損失とは、シートを境界として分けた二つの空間のうちの一方の空間で音を発生させた場合に、音を発生させた空間(音源室)の所定の箇所における音圧と、もう一方の空間(受音室)の所定の箇所における音圧との差を表すものである。
音響透過損失の測定条件の例を以下に示す。
遮音構造体が取り付けられた小型残響箱の内側からホワイトノイズを発生させ、下記式(1)に基づき、小型残響箱の内外に取り付けられたマイクの音圧の差から音響透過損失(TL)を求めることができる。
残響箱内外に設置したマイクの音圧差
【数1】
【0051】
<1−6.成形方法>
[共振部]
共振部の成形方法は、特に限定されず、樹脂やエラストマーの公知の成形方法を採用することができる。熱硬化性又は熱可塑性の樹脂若しくはエラストマーの場合、例えば、プレス成形や押出成形、射出成形等の溶融成形法が挙げられ、この場合の溶融成形を行う温度や圧力等の成形条件は、用いる材料の種類に応じて適宜変更することができる。また、光硬化性樹脂又はエラストマーの場合、例えば、活性エネルギー線透過性の板状成形型にこれらの樹脂等を注入し、活性エネルギー線を照射して光硬化させることができる。
【0052】
光硬化性樹脂等の硬化に用いられる活性エネルギー線は、用いる光硬化性樹脂等を硬化させるものであればよく、例えば紫外線、電子線等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、用いる光硬化性樹脂等を硬化させる量であればよく、モノマー及び重合開始剤の種類、量を参酌して、例えば、波長が200〜400nmの紫外線を通常0.1〜200Jの範囲で照射する。活性エネルギー線の光源としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。また、活性エネルギー線の照射は、1段で行ってもよいが、表面性状の良好な光硬化樹脂の共振部を得るためには、複数段で、少なくとも2段で行うことが好ましい。また、光硬化性樹脂を用いる場合、硬化促進剤を含有してもよい。
【0053】
[共振部と支持体との複合]
共振部と支持体とを複合する方法は、特に限定されず、成形後の共振部と支持体とを接着する方法、又は支持体上で共振部を成形する方法のいずれの方法でもよい。接着する方法の場合、接着剤を用いることが好ましいが、共振部と支持体とを接着することができれば接着剤の種類に限定はない。
【0054】
[シート部]
シート部の成形方法は、上述した共振部と同様の方法を採用することができる。
また、シート部を有する遮音構造体の成形方法は、特に限定されず、成形した共振部と成形したシート部とを接着する方法、又は共振部とシート部とを同時に成形する方法のいずれの方法でもよいが、特性が安定し易い点及びシート部と共振部との剥離を抑制できる点から、共振部とを同時に成形する方法が好ましい。当該方法により、シート部及び共振部(遮音シート部材)が一体成形された遮音構造体とすることができる。
成形した共振部シートと成形した共振部とを接着する方法について、シート部は、上述した共振部の成形方法で述べた方法により成形することができる。一方で、シート部は、共振部と同様に、プレス成形や押出成形、射出成形等の一般的な公知の成形方法を採用することができる。接着する方法の場合、接着剤を用いることが好ましいが、シート部と共振部とを接着することができれば接着剤の種類に限定はない。
シート部と共振部とを同時に成形する方法は、熱硬化性又は熱可塑性の樹脂若しくはエラストマーの場合、例えば、国際公開第2017/135409号に記載する方法を採用することができる。具体的には、複数のキャビティを有する金型を準備し、該キャビティ内に樹脂・エラストマー材料を流し込み、流し込まれた樹脂・エラストマー材料を熱で硬化し、さらに、得られた硬化物を金型より剥離することにより成形することができる。また、光硬化性樹脂又はエラストマーの場合、例えば、上記の熱硬化性樹脂等の成形方法における熱硬化を活性エネルギー線による光硬化とすることにより成形することができる。この場合の活性エネルギー線の照射量や波長、光源等は、上述したシートの成形方法と同様とすることができる。
また、シート部と支持体との複合については、上記の共振部と支持体との複合の方法と同様の方法により行うことができる。
【0055】
上記の共振部とシート部とを同時に成形する方法において、金型から硬化物を剥離する際に、シート部から共振部が剥離してしまい、キャビティの形状が適切に転写されないおそれがある。シート部と共振部との剥離は、金型と硬化物との摩擦、硬化反応による材料の膨張、型内の硬化物に起因する型内圧力等の発生により、金型から硬化物を剥離する際に共振部とシート部との境界部分に応力が集中するために生ずる。
共振部とシート部との剥離を抑制するには、構造の観点から、共振部の先端を細くするようにテーパーを設けることが考えられるが、共振部の形状選択が制限されてしまうという問題、さらに、金型の製造コストが増大してしまうという問題がある。このため、材料の観点からの改善が望まれる。
【0056】
応力集中が生じても剥離されない材料としては、負荷をかけても破断し難い材料、つまり引張破断伸度が大きい材料が挙げられる。共振部やシート部の材料の伸度は、通常30%以上であり、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることが特に好ましく、通常500%以下であり、400%以下であることが好ましく、300%以下であることがより好ましい。引張破断伸度が上記下限値以上であることで負荷をかけても破断し難い傾向にあり、引張破断伸度が下記上限値以下であることで、伸びた形状が復元しやすい傾向にある。これらの範囲であることで転写性に優れる傾向にある。
なお、引張破断伸度は、ISO527の引張速度5mm/minの条件で測定した値である。
【0057】
<2.第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態である遮音シート部材(以下、本実施形態において、単に「遮音シート部材」や「シート」とも称する)は、ゴム弾性を有する遮音シート部材であって、ISO6721−4に準じた動的粘弾性の合成曲線から得られる貯蔵弾性率G’が25℃、10kHzにおいて100MPa以下であり、前記遮音シート部材の少なくとも一の面に凹凸構造を有する、遮音シート部材である。該遮音シート部材の一形態の斜視図を
図7に示す。
凹凸構造として、例えば、
図7に示すように、上述の遮音シート部材の一の面に共振部を備える構造が挙げられる。該共振部については以下に説明するが、国際公開第2017/135409号に例示された共振部を採用することもできる。
【0058】
<2−1.遮音シート部材>
<2−1−1.材料>
遮音シート部材(シート)に用いられる材料の種類は、動的粘弾性を測定できる、つまり、ゴム弾性を有するものであれば特に限定されず、例えば、樹脂やエラストマーが挙げられ、これらの具体的な態様は、上述した第1の実施形態における共振部の材料や特性を同様に適用することができる。
また、後述する第3の実施形態に記載の遮音シート部材用組成物を用いることもできる。
また、重合開始剤等の添加物の具体的な態様についても、上述した第1の実施形態における共振部の材料や特性を同様に適用することができる。
【0059】
<2−1−2.形態>
シートを平面視で観察した場合の形状は、特に限定されず、三角形状、正方形状、長方形状、矩形状、台形状、ひし形状、5角形状や6角形状等の多角形状、円状、楕円状、これらに分類されない不定形状等、任意の平面視形状を採用することができる。なお、シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、伸縮性能の向上や軽量化等の観点から、任意の場所に切り込み部や打ち抜き孔等を有していてもよい。
【0060】
シートの形状は、シート状であれば特に限定されず、シートの厚みによっても高い遮音性能を発現する周波数帯域(音響バンドギャップ幅や周波数位置)を制御可能であるため、音響バンドギャップが所望の遮音周波数領域に一致するように、シートの厚みを適宜設定することができる。シートの厚みが厚いと、音響バンドギャップ幅が狭くなり、且つ、低周波数側にシフトする傾向にある。また、シートの厚みが薄いと、音響バンドギャップ幅が広くなり、且つ、高周波側にシフトする傾向にある。遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性等の観点から、シートの厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、シートの厚みは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
【0061】
シートは、
図4に示すように、シートの少なくとも一の面に支持体を有していてもよい。支持体を有することにより、例えば、支持体側にある騒音源から音波が入射された際、シートの共振が生じる。このとき、支持体に作用する力の方向とシートに発生する加速度の方向とが逆となる周波数領域が存在可能となり、特定周波数の振動の一部乃至全部が打ち消されることで、特定周波数の振動がほぼ完全に存在しなくなる完全音響バンドギャップが生じる。そのため、シートの共振周波数付近において、振動の一部乃至全部が静止し、その結果、質量則を凌駕する高い遮音性能が得られる。このような原理を利用した遮音部材は、音響メタマテリアルと呼ばれている。なお、本実施形態において、「遮音シート部材」に支持体は含まれない。
【0062】
支持体を構成する素材は、シートを支持可能なものであれば特に限定されないが、遮音性能を高める観点から、シートよりも剛性の高いものが好ましい。具体的には、支持体は、1GPa以上のヤング率を有することが好ましく、より好ましくは1.5GPa以上である。上限は特にないが、例えば1000GPa以下が挙げられる。
また、シートを装置、構造体上等に直接設置する場合において、シートを設置する面は、シートを支持する観点、遮音性能を高める観点等から上記支持体と同様の剛性を有することが好ましい。
【0063】
支持体を構成する材料は、上述した第1の実施形態における支持体の材料や特性を同様に適用することができる。
支持体の厚みは、特に限定されないが、遮音性能、剛性、成形性、軽量化、コスト等の観点から、通常0.1mm以上、50mm以下であることが好ましい。
【0064】
支持体の形状は、
図4に示した態様に限定されず、設置面に応じて適宜設定できる。例えば、平坦なシート状であっても、湾曲したシート状であっても、曲面部や折り曲げ部等を有するように加工された特殊形状であってもよい。さらに、軽量化等の観点から、切り込みや打ち抜き部等が、支持体の任意の場所に設けられていてもよい。
【0065】
支持体は、他の部材に貼りつけるために、支持体の面に粘着層等を有していてもよい。
粘着層等を有する支持体の面は特に限定されず、1つでも複数であってもよい。
【0066】
<2−2.特性>
[貯蔵弾性率]
遮音シート部材(シート部)の25℃、10kHzにおける貯蔵弾性率は、遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、100MPa以下であり、95MPa以下であることが好ましく、90MPa以下であることがより好ましい。またシートの貯蔵弾性率は小さい方が好ましく、上記の観点からは特に下限を設ける必要はないが、例えば0.1MPa以上であって、好ましくは1MPa以上であることが挙げられる。
貯蔵弾性率が上記範囲内にある場合、凹凸構造部の共振周波数が低周波側で発生するために、目的とする遮音領域の遮音性能が向上する傾向がある。
また、25℃、5kHzにおける貯蔵弾性率も、特に限定さない。遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、80MPa以下であることが好ましく、75MPa以下であることがより好ましい。またシート部の貯蔵弾性率は小さい方が好ましく、特に下限はないが、例えば1MPa以上が挙げられる。
ここで、本実施形態における貯蔵弾性率とは、内部に貯蔵された応力の保持に関する指標であり、実測値より、ISO6721−4に準じてWLF(ウイリアム・ランデル・フェリー)則によるマスターカーブ(合成曲線)を作成し、1Hz、5kHz、又は10kHz帯の弾性率を求めたものである。
貯蔵弾性率は、樹脂等の分子量や結合の種類を変える、又はフィラーを添加することにより制御でき、一般的に、分子量の増加、結合力の増加、又はフィラーの添加に伴い増加する。さらに、例えば、貯蔵弾性率の低い樹脂と貯蔵弾性率の高い樹脂をブレンドさせて成形体を製造した場合、これらの樹脂のブレンド比率を調整することにより成形体の貯蔵弾性率を制御することができる。
【0067】
[比重]
一般的に、制振遮音材料の特性は、いわゆる質量則に従う。すなわち、騒音の低減量の指標である透過損失は、制振遮音材料の質量と弾性波や音波の周波数との積の対数により決定される。そのため、ある一定周波数の騒音の低減量をより大きくするためには、制振遮音材料の質量を増やすことが求められる。そのため、シートの比重は高い方が好ましいが、比重が高いとハンドリング性が低減し、また輸送コストが増加してしまう。
上記の観点から、シートの比重は、通常1.0g/cm
3以上であり、1.01g/cm
3以上であることが好ましい。また、通常3.0g/cm
3以下であり、2.5g/cm
3以下であることが好ましい。
なお、比重は、材料の質量と、それと同体積の圧力1013.25hPaのもとにおける4℃の純水の質量との比を意味し、本明細書においては、JIS K 0061「化学製品の密度及び比重測定方法」により測定される値を用いている。
【0068】
[音響透過損失]
遮音構造体の音響透過損失は、0.5dB以上であることが好ましく、0.8dB以上であることがより好ましい。ここで、本実施形態における音響透過損失とは、シートを境界として分けた二つの空間のうちの一方の空間で音を発生させた場合に、音を発生させた空間(音源室)の所定の箇所における音圧と、もう一方の空間(受音室)の所定の箇所における音圧との差を表すものである。
音響透過損失の測定条件の例として、第1の実施形態に記載の測定条件の例を採用することができる。
【0069】
<2−3.成形方法>
遮音シート部材(シート)の成形方法は、特に限定されず、一般的な公知のシート成形方法を採用することができる。熱硬化性又は熱可塑性の樹脂若しくはエラストマーの場合、例えば、プレス成形や押出成形、射出成形等の溶融成形法が挙げられ、この場合の溶融成形を行う温度や圧力等の成形条件は、用いる材料の種類に応じて適宜変更することができる。また、光硬化性樹脂又はエラストマーの場合、例えば、活性エネルギー線透過性の板状成形型にこれらの樹脂等を注入し、活性エネルギー線を照射して光硬化させることができる。
【0070】
光硬化性樹脂等の硬化に用いられる活性エネルギー線は、用いる光硬化性樹脂等を硬化させるものであればよく、例えば紫外線、電子線等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、用いる光硬化性樹脂等を硬化させる量であればよく、モノマー及び重合開始剤の種類、量を参酌して、例えば、波長が200〜400nmの紫外線を通常0.1〜200Jの範囲で照射する。活性エネルギー線の光源としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。また、活性エネルギー線の照射は、1段で行ってもよいが、表面性状の良好な光硬化樹脂シートを得るためには、複数段で、少なくとも2段で行うことが好ましい。また、光硬化性樹脂を用いる場合、硬化促進剤を含有してもよい。
【0071】
支持体を用いる場合、シートと支持体とを複合する方法は、特に限定されず、成形後のシートと支持体とを接着する方法、又は支持体上でシートを成形する方法のいずれの方法でもよい。接着する方法の場合、接着剤を用いることが好ましいが、シートと支持体とを接着することができれば接着剤の種類に限定はない。
【0072】
<2−4.凹凸構造>
遮音シート部材(シート)は、該遮音シート部材の少なくとも一の面に凹凸構造を有するものである。本実施形態において、凹凸構造とは、複数の突起部を含む構造であり、該突起部の形状や材料は特に限定されない。また、凹凸構造の形成は、遮音シート部材を変形して形成させたものでもよく、また、遮音シート部材とは別の材料を突起部として形成させたものでよい。さらに、凹凸構造は、遮音シート部材の一の面に形成されていてもよく、また、複数の面に形成されていてもよい。なお、支持体を有する形態においては、シートの支持体と積層面と反対側の面に凹凸を有していてもよく、積層面と同一の面に凹凸を有していてもよい。これらは、遮音性能や製造コスト、ハンドリング性等の観点から用途に応じて適宜選択し得る。
凹凸構造として、例えば、
図7に示すように、上述の遮音シート部材の一の面に共振部を備える構造が挙げられる。該共振部については以下に説明するが、国際公開第2017/135409号に例示された共振部を採用することもできる。
【0073】
[共振部]
共振部は、騒音源から音波が入射された際に、ある周波数で振動する振動子(共振器)として機能するものである。共振部を有することにより、騒音源から音波が入射された際に、質量則を凌駕する高い遮音性能を得ることができる。共振部は、
図7に示すように単一構造体からなる構成でもよく、
図8に示すように、基部と、この基部に支持され且つこの基部より大きな質量を有する錘部とを備える複合構造体から構成されていてもよい。さらに、共振部は、
図9に示すように、錘部が基部内に埋設された複合構造体から構成されていてもよい。このような複合構造体では、共振部は、錘として働く錘部の質量と、バネとして働く基部のバネ定数により決定される共振周波数を持つ共振器として有効に機能する。また、共振部は、空孔(空気等の気体)を含む多孔質体であってもよい。
【0074】
共振部の外形形状は、特に限定されず、三角柱状、矩形柱状、台形柱状、五角柱や六角柱等の多角柱状、円柱状、楕円柱状、角錐台状、円錐台状、角錐状、円錐状、中空筒状、分岐形状、これらに分類されない不定形状等、任意の形状を採用することができる。また、共振部の高さ位置によって異なる断面積及び/又は断面形状を有する柱状に形成することもできる。
【0075】
共振部の材料は、上述した遮音シート部材で用いられる樹脂やエラストマーと同様の材料群の中から選択することができ、1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、該部材で用いられるその他の成分を含んでいてもよい。なお、成形性や生産性の観点から、共振部の材料は、遮音シート部材の材料と一体となりやすいこと、例えば相溶しやすいことが好ましく、特に、これらの材料が同じであることが好ましい。また、共振部は、鉱物油、植物油、シリコーン油等の液体材料を含んでいてもよい。なお、共振部が液体材料を含む場合には、液体材料の外部への流出を抑制する観点から、高分子材料中に封じ込めておくことが望ましい。
【0076】
共振部の配列、設置数、大きさ等は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。共振部は、遮音シート部材の少なくとも一の面に接して設けられる。例えば、複数の共振部を格子状に等間隔に配置しているが、共振部の配列は、これに特に限定されない。例えば、複数の共振部が、千鳥状に配置されていても、ランダムに配置されていてもよい。本実施形態である遮音シート部材による遮音機構は、所謂フォノニック結晶のようにブラッグ散乱を利用していないため、必ずしも共振部の間隔が規則正しく周期的に配置されていなくてもよい。
【0077】
単位面積当たりの共振部の設置数は、共振部同士が接触する等により干渉しないように配置可能であれば、特に限定されない。例えば、円柱断面直径が5mmの場合には、遮音性能の向上及び遮音シート部材全体の軽量化の観点から、100cm
2当たりの共振部の数は、0.1個〜4個であることが好ましく、0.1個〜3個であることがより好ましい。
また、円柱断面直径が1mmの場合には、遮音性能の向上及び遮音シート部材全体の軽量化の観点から、100cm
2当たりの共振部の数は、1個〜50個であることが好ましく、1個〜40個であることがより好ましい。
共振部の高さや体積は、特に限定されないが、共振部が小さい方が高音に対する遮音効果が大きい一方で、共振部が大きい方が低音に対する遮音効果が大きい傾向にあり、所望性能に応じて適宜設定できる。成形容易性及び生産性の向上等の観点からは、高さは、50μm〜100mmが好ましく、100μm〜50mmがより好ましく、1mm〜30mmがさらに好ましい。同様の観点から、共振部1個当たりの体積は、1cm
3〜300cm
3であることが好ましく、2cm
3〜200cm
3であることがより好ましい。共振部が円柱である場合、円柱断面直径は、同様の観点から、0.5mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜10mmであることがより好ましい。上記の好ましい数値範囲内とすることで、共振部を設けた遮音シート部材の巻き取りや重ね合わせが容易となり、所謂ロール・トゥ・ロールでの製造や保管ができ、生産性及び経済性が高められる傾向にある。
共振部の構成材料、配列、形状、大きさ、及び設置方向等は、複数の共振部すべてにおいて必ずしも同一でなくてもよい。これらのうち少なくとも1種を相違させた複数種の共振部を設置することにより、高遮音性能が現れる周波数領域を拡大することが可能である。
【0078】
[基部]
共振部が基部と錘部とからなる複合構造体から構成されている場合の基部の材料や形状は、上述した共振部と同様の条件で設定することができ、また、好ましい範囲についても同様である。ただし、高さ及び体積の好ましい範囲については、基部と錘部とを合わせた複合構造体全体の高さ及び体積として考える。
【0079】
[錘部]
錘部は、上述した基部より大きな質量を有するものであれば、形状は特に限定されない。また、錘部は、基部に支持された複合構造体から構成されていてもよく、基部内に埋設された複合構造体から構成されていてもよい。埋設されていた複合構造体の場合、錘部は、基部内に完全に埋設されていても、一部のみが埋設されていてもよい。さらに、遮音シート部材の厚み低減、重量低減、または遮音性能向上の観点から、共振部の重心(質量中心)が、少なくとも共振部の高さ方向の中央よりも先端側に位置するように、基部及び錘部を配置することが好ましい。
【0080】
錘部を構成する材料は、質量やコスト等を考慮して適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。遮音シート部材の小型化及び遮音性能の向上等の観点から、錘部を構成する素材は、比重の高い材料が好ましい。具体的には、アルミニウム、ステンレス、鉄、タングステン、金、銀、銅、鉛、亜鉛、真鍮等の金属又は合金;ソーダガラス、石英ガラス、鉛ガラス等の無機ガラス;これらの金属或いは合金の粉体又はこれらの無機ガラス等を上述した基部の高分子材料中に含むコンポジット;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。錘部の材質、質量、比重は、遮音シート部材の音響バンドギャップが所望する遮音周波数領域に一致するように決定すればよい。これらの中でも、低コスト及び高比重である等の観点から、金属、合金、及び無機ガラスよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0081】
[リブ状突起部]
共振部を有する遮音シート部材には、
図10及び11に示すように、共振部が存在する側のシート面に存在し、共振部よりも高さが大きく、かつ、外形略板状又は略円柱状等の形状で形成されたものである、リブ状突起部を設けていてもよい。これにより、遮音シート部材を巻き取ったり又は複数枚重ね合せたりしても、リブ状突起部がスペーサーとして機能するため、遮音シート部の裏面に対する共振部の接触が抑制される。リブ状突起部の具体的態様としては、国際公開第2017/135409号に例示される態様を採用することができる。なお、本実施形態において、「遮音シート部材」にリブ状突起部は含まれない。
【0082】
[共振部を有する遮音シート部材の成形方法]
共振部を有する遮音シート部材の成形方法は、特に限定されず、成形したシートと成形した共振部を接着する方法、又はシートと共振部とを同時に成形する方法のいずれの方法でもよい。
成形したシートと成形した共振部とを接着する方法について、シートは、上述した遮音シート部材の成形方法で述べた方法により成形することができる。一方で、共振部は、シートと同様に、プレス成形や押出成形、射出成形等の一般的な公知の成形方法を採用することができる。シートと共振部とを複合する方法は、特に限定されず、成形したシートと成形した共振部とを接着する方法、又は形成したシート上で共振部を成形する方法のいずれの方法でもよい。接着する方法の場合、接着剤を用いることが好ましいが、シートと共振部とを接着することができれば接着剤の種類に限定はない。
シートと共振部とを同時に成形する方法は、熱硬化性又は熱可塑性の樹脂若しくはエラストマーの場合、例えば、国際公開第2017/135409号に記載する方法を採用することができる。具体的には、複数のキャビティを有する金型を準備し、該キャビティ内に樹脂・エラストマー材料を流し込み、流し込まれた樹脂・エラストマー材料を熱で硬化し、さらに、得られた硬化物を金型より剥離することにより成形することができる。また、光硬化性樹脂又はエラストマーの場合、例えば、上記の熱硬化性樹脂等の成形方法における熱硬化を活性エネルギー線による光硬化とすることにより成形することができる。この場合の活性エネルギー線の照射量や波長、光源等は、上述したシートの成形方法と同様とすることができる。
【0083】
上記のシートと共振部とを同時に成形する方法において、金型から硬化物を剥離する際に、シートから共振部が剥離してしまい、キャビティの形状が適切に転写されないおそれがある。シートと共振部との剥離は、金型と硬化物との摩擦、硬化反応による材料の膨張、型内の硬化物に起因する型内圧力等の発生により、金型から硬化物を剥離する際にシートと共振部との境界部分に応力が集中するために生ずる。
シートと共振部との剥離を抑制するには、構造の観点から、共振部の先端を細くするようにテーパーを設けることが考えられるが、共振部の形状選択が制限されてしまうという問題、さらに、金型の製造コストが増大してしまうという問題がある。このため、材料の観点からの改善が望まれる。
【0084】
応力集中が生じても剥離されない材料としては、負荷をかけても破断し難い材料、つまり引張破断伸度が大きい材料が挙げられる。シートや共振部の材料の伸度は、通常30%以上であり、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることが特に好ましく、通常500%以下であり、400%以下であることが好ましく、300%以下であることがより好ましい。引張破断伸度が上記下限値以上であることで負荷をかけても破断し難い傾向にあり、引張破断伸度が下記上限値以下であることで、伸びた形状が復元しやすい傾向にある。これらの範囲であることで転写性に優れる傾向にある。
なお、引張破断伸度は、ISO527の引張速度5mm/minの条件で測定した値である。
【0085】
<3.第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態である遮音シート部材用組成物(以下、単に「組成物」とも称する)は、その硬化物がゴム弾性を有し、かつ、該硬化物のISO6721−4に準じた動的粘弾性の測定で得られるtanδのピーク温度が1Hzにおいて20℃以下である、遮音シート部材用組成物である。
上記遮音シート部材用組成物の硬化物は、上述した第1の実施形態、及び第2の実施形態におけるシート部や共振部として用いることができる。
また、遮音シート部材に共振部を供する場合には、この部材の材料として本項に記載の材料を用いることができる。
【0086】
<3−1.遮音シート部材用組成物>
組成物を硬化して得られる遮音シート部材に用いられる材料の種類は、ゴム弾性を有し、動的粘弾性を測定できるものであれば特に限定されず、例えば、樹脂やエラストマーが挙げられる。樹脂としては、熱又は光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられ、エラストマーとしては、熱又は光硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーが挙げられるが、これらの中でも光硬化性樹脂又は光硬化性エラストマーが好ましく、特に、形状転写性がよく、優れた遮音機能を発現することから、光硬化性樹脂が好ましい。遮音シート部材の材料として、熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂、又は熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂を用いた場合、シート成形の際に熱による硬化反応を必要とするため、成形したシートに気泡が生じる傾向が強い。気泡が生じた場合、共振し難くなり、遮音性能が低下してしまう。一方で、遮音シート部材の材料として、光硬化性エラストマーを用いた場合、上記のような気泡の問題は生じないため、遮音性能の低下が生じにくい。
【0087】
樹脂として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、これらの変性体等の単量体の単独重合体又は共重合体等の光硬化性樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体共重合体又は、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0088】
エラストマーとして、例えば、化学架橋された天然ゴム或いは合成ゴム等の加硫ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の熱硬化性樹脂系エラストマー等の熱硬化性エラストマー;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、アクリル系光硬化性エラストマー、シリコーン系光硬化性エラストマー、エポキシ系光硬化性エラストマー等の光硬化性エラストマーが挙げられ、1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0089】
本発明の一形態である遮音シート部材用組成物は、上記の樹脂やエラストマーを得るためのモノマーとして、光硬化性モノマーや熱硬化性モノマー、熱可塑性モノマーを含有することが好ましく、特に、形状転写性がよく、優れた遮音機能を発現することから、光硬化性モノマーを含むことが好ましい。
光硬化性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマーや不飽和ポリエステル系モノマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、1種のモノマーを単独で用いてもよく、2種以上のモノマーを任意の組み合わせ及び比率で併用してもよいが、tanδや貯蔵弾性率、引張破断伸度等の特性を制御することができる観点から、2種以上のモノマーを組み合わせることが好ましい。また、これらのモノマーは、本発明の要旨を超えない範囲で、任意の官能基で置換されていてもよい。
【0090】
組成物中の光硬化性モノマー、熱硬化性モノマー、及び/又は熱可塑性モノマーの含有量の合計は、特に限定されないが、遮音性能、製造コスト、他の機能などの観点から、適宜調整することができる。特に限定されないが、例えば、通常70重量%以上であり、80重量%以上であることが好ましく、また、100重量%であってもよく、99重量%以下であることが好ましい。
【0091】
2種以上のモノマーを組み合わせる場合、硬化物の弾性率の観点から、光硬化性モノマーとして、二官能モノマー((A)成分)(「二官能モノマー(A)」とも称する)及び単官能モノマー((B)成分)(「単官能モノマー(B)」とも称する)を組み合わせて用いることが好ましい。さらに、この場合、後述するラジカル性光重合開始剤((C)成分)(「ラジカル性光重合開始剤(C)」とも称する)を併用することが好ましい。
二官能モノマー(A)の種類は、特に限定されないが、硬化物の弾性率の観点から、(メタ)アクリレートであることが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、モルホリン−4−イル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の弾性率の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
単官能モノマー(B)の種類は、特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含んでもよい。エチレン性不飽和結合を有する化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のモノ(メタ)アクリレート;
ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(繰返し単位数:5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(繰返し単位数:5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(繰返し単位数:3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(繰返し単位数:5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物(p=1〜7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜15)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(p=1〜5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(p=1〜15)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜5)のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1〜15)のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"−トリス((メタ)アクリロキシポリ(p=1〜4)(エトキシ)エチル)イソシアヌレート等のポリ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜8モル)付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜8モル)付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜12モル)付加物のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4〜12モル)付加物のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"−トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、N,N'−ビス(アクリロキシエチル)−N"−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内に複数のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、硬化物の弾性率が低い、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールアクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールアクリレートがより好ましい。
また、上記の二官能モノマー(A)及び単官能モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が低い方が好ましく、硬化物表面にタックがないことが好ましい。
【0092】
二官能性モノマーの分子量は、特に限定されないが、硬化物の弾性率の観点から、重量均分子量Mwで、通常1000以上であり、1200以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。また、通常20000以下であり、18000以下であることが好ましい。前記範囲であれば、硬化物の弾性率及び表面タック性に優れる傾向にある。
また、単官能性モノマーの分子量は、特に限定されないが、硬化物の弾性率及び表面のタック性の観点から、重量均分子量Mwで、通常100以上であり、120以上であることが好ましい。また、通常1000以下であり、500以下であることが好ましい。前記範囲であれば、硬化物の弾性率及び表面タック性に優れる傾向にある。
【0093】
組成物中の二官能性モノマーの含有量は、特に限定されないが、遮音性能や製造コストの観点から、通常30重量%以上であり、35重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。また、通常80重量%以下であり、75重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。前記範囲であれば、硬化物の弾性率及び表面タック性に優れる傾向にある。
また、組成物中の単官能性モノマーの含有量は、特に限定されないが、遮音性能や製造コストの観点から、通常20重量%以上であり、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。また、通常70重量%以下であり、65重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。前記範囲であれば、硬化物の弾性率及び表面タック性に優れる傾向にある。
さらに、単官能性モノマー含有量に対する二官能性モノマーの含有量の比率は、特に限定されないが、遮音性能や製造コストの観点から、通常30%以上であり、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、通常80%以下であり、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。前記範囲であれば、硬化物の弾性率及び表面タック性に優れる傾向にある。
【0094】
シートが光硬化性樹脂又はエラストマーを含む場合、成形性や機械的強度の向上、製造コストの低減等の観点から、ラジカル性光重合開始剤(C)を含むことが好ましく、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系等の光重合開始剤を挙げることができる。上記の光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等を例示することができる。これらは1種の材料を単独で用いてもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0095】
組成物中のラジカル性光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、機械的強度の向上や適切な反応速度の維持の観点から、通常0.1重量%以上であり、0.3重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましい。また、通常3重量%以下であり、2重量%以下であることが好ましい。
【0096】
組成物は、硬化物の機械的強度の向上、遮音性、材料コストの低減等の観点から、粒子、板、球体等を含んでもよい。これらの材料は特に限定されず、金属、無機、有機等の材料が挙げられる。
硬化物の機械的強度の向上、材料コストの低減の観点から、無機微粒子を含んでいてもよく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ソーダガラス、ダイヤモンド等の透明性を有する無機微粒子を挙げることができる。このような無機微粒子以外にも、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの共重合体などの樹脂粒子を微粒子として使用することもできる。
【0097】
組成物は、遮音性能が阻害されない限り、その他の成分として、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、離型剤等の各種添加剤を含有していてもよく、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
難燃剤は、可燃性の素材を燃え難くする又は発火しないようにするために配合される添加剤である。その具体例としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン等の臭素化合物、トリフェニルホスフェート等のリン化合物、塩素化パラフィン等の塩素化合物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、メラミンシアヌレート等の窒素化合物、ホウ酸ナトリウム等のホウ素化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
また、酸化防止剤は、酸化劣化防止のために配合される添加剤である。その具体例としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
可塑剤は、柔軟性や耐候性を改良するために配合される添加剤である。その具体例としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、シリコーン油、鉱物油、植物油及びこれらの変性体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0098】
<3−2.遮音シート部材>
本発明の一形態である遮音シート部材(以下、単に「シート」とも称する)は、上記の組成物を用いて成形した硬化物であれば特に限定されない。該遮音シート部材の一形態の斜視図を
図12に示す。
遮音シート部材の成形方法は、特に限定されず、一般的な公知のシート成形方法を採用することができる。熱硬化性又は熱可塑性の樹脂若しくはエラストマーの場合、例えば、プレス成形や押出成形、射出成形等の溶融成形法が挙げられ、この場合の溶融成形を行う温度や圧力等の成形条件は、用いる材料の種類に応じて適宜変更することができる。また、光硬化性樹脂又はエラストマーの場合、例えば、活性エネルギー線透過性の板状成形型にこれらの樹脂等を注入し、活性エネルギー線を照射して光硬化させることができる。
【0099】
光硬化性樹脂等の硬化に用いられる活性エネルギー線は、用いる光硬化性樹脂等を硬化させるものであればよく、例えば紫外線、電子線等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、用いる光硬化性樹脂等を硬化させる量であればよく、モノマー及び重合開始剤の種類、量を参酌して、例えば、波長が200〜450nmの紫外線を通常100〜2000mJ/cm
2の範囲で照射する。活性エネルギー線の光源としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。また、活性エネルギー線の照射は、1段で行ってもよいが、表面性状の良好な光硬化樹脂シートを得るためには、複数段で、少なくとも2段で行うことが好ましい。また、光硬化性樹脂を用いる場合、硬化促進剤を含有してもよい。
【0100】
二官能モノマー(A)及び単官能モノマー(B)を組み合わせて用いて遮音シート部材を成形した場合、遮音シート部材は、二官能モノマー(A)由来の構成単位及び単官能モノマー(B)由来の構成単位を含む。遮音シート部材中のこれらの構成単位の含有量について、重量換算での好ましい範囲は、上記の組成物中の含有量の範囲と同様である。
遮音シート部材中の二官能モノマー(A)由来の構成単位及び単官能モノマー(B)由来の構成単位の含有量を確認する方法は、例えばIR、熱分解GC/MS等の方法が挙げられる。
【0101】
<3−2−1.形態>
遮音シート部材の形態は、以下の記載を除き、第2の実施形態と同様の形態を採用することができる。共振部を採用する場合には、当該部材の形態についても第2の実施形態と同様の形態を採用することができる。また、シートは、
図13に示すように、シートの少なくとも一の面に支持体を有していてもよい。
シートの厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、シートの厚みは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
また、当該遮音シート部材は、上記の遮音シート部材用組成物の硬化物が、該硬化物を支持する支持体に積層されていることが好ましい。
【0102】
<3−2−2.特性>
遮音シート部材の特性は、以下の記載を除き、第2の実施形態と同様の形態を採用することができる。
[損失係数]
シートの損失係数(以下、「tanδ」とも称する)のピーク温度は、遮音性能、タック性、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、通常20℃以下であり、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましく、−30℃以下であることが特に好ましい。また、通常−100℃以上であり、−80℃以上であることが好ましく、−60℃以上であることがより好ましい。ここで、本実施形態におけるtanδとは、(粘性を表す)損失弾性率/(弾性を表す)貯蔵弾性率で算出され、弾性の性質と粘性の性質のどちらが大きいかを表す指標であり、ISO6721−4「プラスチック動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−」の非共振法により測定される損失係数の1Hzにおける値を意味している。
tanδのピーク温度は、硬化物のガラス転移温度の異なる材料を併用し、これら使用比率を調整することにより制御することができる。
【0103】
[貯蔵弾性率]
シートの25℃、10kHzにおける貯蔵弾性率は、特に限定されないが、遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、100MPa以下が好ましく、95MPa以下であることが好ましく、90MPa以下であることがより好ましい。またシートの貯蔵弾性率は小さい方が好ましく、上記の観点からは特に下限を設ける必要はないが、例えば0.1MPa以上であって、好ましくは1MPa以上であることが挙げられる。貯蔵弾性率が上記範囲内にある場合、凹凸構造部の共振周波数が低周波側で発生するために、目的とする遮音領域の遮音性能が向上する傾向がある。
また、25℃、5kHzにおける貯蔵弾性率も、特に限定さない。遮音性能、機械的強度、柔軟性、ハンドリング性や生産性等の観点から、80MPa以下であることが好ましく、75MPa以下であることがより好ましい。またシートの貯蔵弾性率は小さい方が好ましく、特に下限はないが、例えば0.1MPa以上が挙げられる。
ここで、本実施形態における貯蔵弾性率とは、内部に貯蔵された応力の保持に関する指標であり、実測値より、ISO6721−4に準じてWLF(ウイリアム・ランデル・フェリー)則によるマスターカーブ(合成曲線)を作成し、1Hz、5kHz、又は10kHz帯の弾性率を求めたものである。
【0104】
貯蔵弾性率は、樹脂等の分子量や結合の種類を変える、又はフィラーを添加することにより制御でき、一般的に、分子量の増加、結合力の増加、又はフィラーの添加に伴い増加する。さらに、例えば、貯蔵弾性率の低い樹脂と貯蔵弾性率の高い樹脂をブレンドさせて成形体を製造した場合、これらの樹脂のブレンド比率を調整することにより成形体の貯蔵弾性率を制御することができる。
【0105】
[ガラス転移温度]
シートは、低温における遮音性の温度依存性を低減させる観点から、0℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。シートのガラス転移温度が低いほど、耐寒性が高められ、弾性率の0℃付近での温度依存性が小さくなり遮音性能が環境温度に依存し難くなる傾向にある。より好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下、特に好ましくは−30℃以下である。なお、本明細書において、シートのガラス転移温度は、上述した周波数10kHzにおける動的粘弾性測定、特に温度依存性測定において、損失正接のピーク温度を意味する。
【0106】
[凹凸構造]
遮音シート部材は、前記遮音シート部材(以下、「シート部」とも称する)の少なくとも一の面に凹凸構造を有してもよく、第2の実施形態と同様の凹凸構造を採用することができる。
また、第2の実施形態における共振部や基部、錘部、リブ状突起部、さらに、共振部を有する遮音シート部材の成形方法も同様に採用することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい範囲同様に、本発明の好ましい範囲を示すものであり、本発明の好ましい範囲は前記した実施態様における好ましい範囲と下記実施例の値または実施例同士の値の組合せにより示される範囲を勘案して決めることができる。
また、本項において、シート部又は/及び共振部からなる構成を遮音シート部材と称し、これに支持体を積層させた構成を遮音構造体と称する。
【0108】
[使用原料]
以下の材料を原料として使用した。
<二官能モノマー(A)>
・EBECRYL 8402(ダイセル・オルネクス(株)製、ウレタンアクリレート、重量平均分子量Mw:1000)
・EBECRYL 230(ダイセル・オルネクス(株)製、ウレタンアクリレート、重量平均分子量Mw:5000)
・EBECRYL 270(ダイセル・オルネクス(株)製、ウレタンアクリレート、重量平均分子量Mw:1500)
・紫光UV−3000B(三菱ケミカル(株)製、ウレタンアクリレート、重量平均分子量Mw18,000)
<単官能モノマー(B)>
・PHE−2D(第一工業製薬(株)製、フェノキシジエチレングリコールアクリレート)
・アロニックスM−120(東亜合成(株)製、特殊アクリレート、分子量245)
・ビスコート#160(大阪有機化学工業(株)製、ベンジルアクリレート、分子量16
2.2)
・NKエステルAM−90G(新中村化学工業(株)、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、分子量454)
<ラジカル重合開始剤(C)>
・IRGACURE 184(BASF社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)
・IRGACURE TPO(BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)
<支持体>
・PETフィルム(ダイヤホイル、三菱ケミカル(株)製、フィルム厚み250μm)
【0109】
[遮音構造体の評価I]
[実施例1]
表1に示す二官能モノマー(A)、単官能モノマー(B)、及びラジカル重合開始剤(C)の混合物を、アルミニウム製で直径1.2mm、高さ2mmの凹形状が、ピッチ2mmで設けられたA4サイズの金型に、該混合物を流し込んだ後、金型上にPETフィルムをのせ、高圧水銀ランプを用いて波長200〜450nmnm、エネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射により硬化を行った。その後、金型内で硬化した遮音構造体を、金型から剥離させた。
得られた遮音構造体は、直径1.2mm、高さ2mm、ピッチ2mmの凸形状の共振部を有しており、単位面積当たりの共振部は2500個/100cm
2であった。また、遮音構造体の重量は71gであった。
支持体である上記PETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0110】
[実施例2]
表1に示す二官能モノマー(A)、単官能モノマー(B)、及びラジカル重合開始剤(C)の混合物を作製した。アルミニウム製で直径6mm、高さ5mmの凹形状が、ピッチ10mmで設けられたA4サイズの金型に、該混合物を流し込んだ後、金型上にPETフィルムをのせ、高圧水銀ランプを用いて波長200〜450nm、エネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射により硬化を行った。その後、金型内で硬化した遮音構造体を、金型から剥離させた。
得られた遮音構造体は、直径6mm、高さ5mm、ピッチ10mmの凸形状の共振部を有しており、単位面積当たりの共振部は100個/100cm
2であった。また、遮音構造体の重量は119gであった。
支持体である上記PETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0111】
[実施例3]
表1に示す二官能モノマー(A)、単官能モノマー(B)、及びラジカル重合開始剤(C)の混合物を作製した。アルミニウム製で直径6mm、高さ5mmの凹形状が、ピッチ18mmで設けられたA4サイズの金型に、該混合物を流し込んだ後、金型上にPETフィルムをのせ、高圧水銀ランプを用いて波長200〜450nm、エネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射により硬化を行った。その後、金型内で硬化した遮音構造体を、金型から剥離させた。
得られた遮音構造体は、直径6mm、高さ5mm、ピッチ18mmの凸形状の共振部を有しており、単位面積当たりの共振部は30個/100cm
2であった。また、遮音構造体の重量は119gであった。支持体である上記PETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0112】
[比較例1]
表1に示す二官能モノマー(A)、単官能モノマー(B)、及びラジカル重合開始剤(C)の混合物を用い、実施例1と同様の方法で比較例1の遮音構造体を作製した。遮音シート部材の比重は、1.1g/cm
3であり、遮音構造体の重量は71gであった。支持体であるPETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0113】
[比較例2]
表1に示す二官能モノマー(A)、単官能モノマー(B)、及びラジカル重合開始剤(C)の混合物を用い、アルミニウム製で凹形状設けられていないA4サイズの金型に、該混合物を流し込んだ後、金型上にPETフィルムをのせ、高圧水銀ランプを用いて波長200〜450nmnm、エネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射により硬化を行った。その後、金型内で硬化した遮音構造体を、金型から剥離させた。
得られた遮音構造体は、遮音シート部材の比重は1.1g/cm
3であり、遮音構造体の重量は71gであった。アルミニウム製の支持体の面密度は、1.35kg/m
2であった。
【0114】
[比較例3]
表1に示す二官能モノマー(A)、単官能モノマー(B)、及びラジカル重合開始剤(C)の混合物を用い、実施例2と同様の方法で比較例3の遮音構造体を作製した。遮音シート部材の比重は、1.1g/cm
3であり、遮音構造体の重量は119gであった。支持体であるPETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0115】
[比較例4]
PETフィルムの支持体を鉄製の支持体に変更したこと以外は実施例1と同様に遮音構造体を作製した。鉄製の支持体の面密度は、7.85kg/m
2であった。
【0116】
[参考例1]
凸形状の共振部は有していないこと以外は実施例1と同様に遮音構造体を作製した。支持体であるPETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0117】
[参考例2]
凸形状の共振部は有していないこと以外は実施例3と同様に遮音構造体を作製した。支持体であるPETフィルムの面密度は0.35kg/m
2であった。
【0118】
[貯蔵弾性率]
動的粘弾性装置DMS6100(SII社製)を用いて、以下の条件で貯蔵弾性率を測定した。測定用のサンプルとして、上記実施例等の遮音シート部材に用いた混合物から、幅5mm、長さ50mm、厚み1mmのシリコーン枠に混合物を流し込んだ状態でガラスキャストし、高圧水銀灯ランプを用いてエネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射することにより短冊状樹脂を作製した。得られた粘弾性曲線を時間−温度換算則より1Hzから10kHzまでの合成曲線を作成し、25℃における貯蔵弾性率を算出した。この測定結果を表1に示す。
測定モード:引張り
測定温度:−70〜50℃
昇温速度:2℃/min
測定周波数:1Hz、10Hz、50Hz(本周波数における測定結果から1Hzから10kHzまでの合成曲線を作成し、5kHz、10kHzにおける貯蔵弾性率を算出した。)
【0119】
[tanδのピーク温度]
動的粘弾性装置DMS6100(SII社製)を用いて、以下の条件でtanδを測定し、このピーク温度を求めた。測定用のサンプルとして、上記実施例等の遮音シート部材に用いた混合物から、幅5mm、長さ50mm、厚み1mmのシリコーン枠に混合物を流し込んだ状態でガラスキャストし、高圧水銀灯ランプを用いてエネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射することにより短冊状樹脂を作製した。この測定結果を表2に示す。
測定モード:引張り
測定温度範囲:−70〜50℃
昇温速度:2℃/min
測定周波数:1Hz
【0120】
[音響透過損失]
上記の遮音構造体を用いて、音響透過損失を測定した。参考例1及び参考例2の測定値を基準(reference)として、この測定値とそれぞれの実施例及び比較例との差(ΔTL)を求め、500Hzから5000Hzの範囲のΔTLが1.0dB以上であれば「A」、ΔTLが1.0未満または音響メタマテリアル起因のピークが発現しなければ「B」とし、表1及び2にまとめた。
音響透過損失の測定条件を以下に示す。
遮音構造体が取り付けられた小型残響箱の内側からホワイトノイズを発生させ、下記式(1)に基づき、小型残響箱の内外に取り付けられたマイクの音圧の差から音響透過損失(TL)を求めた。
残響箱内外に設置したマイクの音圧差
【数2】
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1の実施例1と比較例1との比較から、所望の貯蔵弾性率を有する遮音シート部材を用いた遮音構造体は、そうでない遮音構造体と比較して、遮音性能に優れる(音響透過損失が大きい)ことが分かる。これは、高周波数領域においても低弾性率であるため、5kHz周辺領域までに共振部が共振することで音響透過損失が向上したためである。
また、実施例1と参考例1との比較から、凹凸構造を有する遮音構造体は、そうでない遮音構造体と比較して、遮音性能に優れる(音響透過損失が大きい)ことが分かる。これは、凹凸構造が共振部として作用し音響透過損失が向上したためである。
【0124】
表2の実施例1と比較例1との比較から、所望のtanδのピーク温度を有する遮音シート部材を用いた遮音構造体は、そうでない遮音構造体と比較して、遮音性能に優れる(音響透過損失が大きい)ことが分かる。これは、高周波数領域においても低弾性率であるため、5kHz周辺領域までに共振部が共振することで音響透過損失が向上したためである。
【0125】
表1の実施例1及び2と比較例2及び4との比較から、所望の面密度を有する支持体と用いた遮音構造体は、そうでない遮音構造体と比較して、遮音性能に優れる(音響透過損失が大きい)ことが分かる。これは、所望の面密度を有することで凹凸構造の共振による支持体の振動低減効果が高まるためである。
【0126】
[遮音構造体の評価II]
[参考例3]
表3に示すモノマーA、モノマーB、及び開始剤の混合物を、アルミニウム製で直径1.2mm、高さ2mmの凹形状が、ピッチ2mmで設けられたA4サイズの金型に、該混合物を流し込んだ後、金型上にPETフィルムをのせ、高圧水銀ランプを用いて波長200〜450nmnm、エネルギー量1000mJ/cm
2で紫外線照射により硬化を行った。その後、金型内で硬化した遮音構造体を、金型から剥離させた。
得られた遮音構造体は、直径1.2mm、高さ2mm、ピッチ2mmの凸形状の共振部を有しており、単位面積当たりの共振部は2500個/100cm
2であった。また、遮音シート重量は71gであった。
【0127】
[参考例4]
表3に示すモノマーA、モノマーB、及び開始剤の混合物を用い、参考例3と同様の方法で参考例2の遮音構造体を作製した。遮音シート部材の比重は、1.1g/cm
3であった。また、遮音構造体の重量は71gであり、単位面積当たりの共振部は2500個/100cm
2であった。
【0128】
[参考例5]
表3に示すモノマーA、モノマーB、及び開始剤の混合物を用い、参考例3と同様の方法で、容器内の混合物の硬化を行った。その後、参考例3と同様の方法で、容器内で硬化した遮音構造体を容器から剥離させたが、遮音構造体中の共振部が該構造体から剥離してしまった。この部材の比重は、1.1g/cm
3であった。
【0129】
[参考例6]
表3に示すモノマーA、モノマーB、及び開始剤の混合物を用い、参考例3と同様の方法で、容器内の混合物の硬化を行った。その後、参考例3と同様の方法で、容器内で硬化した遮音構造体を容器から剥離させたが、遮音構造体中の共振部が該構造体から剥離してしまった。この部材の比重は、1.1g/cm
3であった。
【0130】
[参考例7]
表3に示すモノマーA、モノマーB、及び開始剤の混合物を用い、参考例3と同様の方法で、容器内の混合物の硬化を行った。その後、参考例3と同様の方法で、容器内で硬化した遮音構造体を容器から剥離させたが、遮音シート部材中の共振部が該部材から剥離してしまった。この部材の比重は、1.1g/cm
3であった。
【0131】
[引張破断伸度]
上記各参考例の遮音構造体に用いた混合物から、厚み200μm、幅10mm、長さ100mmの短冊状樹脂サンプルを作製し、万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS−X)を用いて、短冊状樹脂サンプルの引張破断伸度を測定し、遮音シート部材の引張破断伸度とした。試験条件は、チャック間距離を40mm、引っ張り速度を5mm/minとし、また25℃で測定した。
【0132】
[転写性]
容器内で硬化した遮音構造体を容器から剥離させる工程で、該部材から共振部が剥離しなかった又は剥離時に共振部が欠損しなかった場合を「A」として、また、該部材から共振部かが剥離してしまった又は剥離時に共振部が欠損した場合を「B」として、転写性の評価を行った。この評価結果を表3に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
表3の参考例3及び4と参考例5〜7との比較から引張破断伸度の高い遮音構造体は、転写性に優れることが分かる。凹凸構造が精度よく転写されることで目的の周波数領域で共振させることが可能となる。