特許第6852839号(P6852839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6852839
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】青色顔料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20210322BHJP
   C09B 47/20 20060101ALI20210322BHJP
   C09B 47/12 20060101ALI20210322BHJP
   C09B 47/24 20060101ALI20210322BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20210322BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C09B67/20 G
   C09B47/20
   C09B47/12
   C09B47/24
   C09D7/41
   C09D201/00
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-542339(P2020-542339)
(86)(22)【出願日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2019046536
(87)【国際公開番号】WO2020149024
(87)【国際公開日】20200723
【審査請求日】2020年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2019-7005(P2019-7005)
(32)【優先日】2019年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】柴野 隆
(72)【発明者】
【氏名】河村 彩香
(72)【発明者】
【氏名】勝部 浩史
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−070568(JP,A)
【文献】 特開2007−041330(JP,A)
【文献】 特開2005−316244(JP,A)
【文献】 特開2016−079218(JP,A)
【文献】 特開2017−203899(JP,A)
【文献】 特表2018−522966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/10,47/16,47/20,67/20
C09C 1/00
C09D 7/41,201/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均塩素置換数が0.3〜2.2である塩素化銅フタロシアニンと、銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が下記一般式(1)で表される基、下記一般式(2)で表される基、下記一般式(3)で表される基、下記一般式(4)で表される基、又は下記一般式(5)で表される基の少なくともいずれか一つの基で置換された顔料誘導体を含み、前記塩素化銅フタロシアニンの一次粒子の平均アスペクト比が1.0〜3.5であることを特徴とする自動車塗料用青色顔料組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
−SO (4)
【化4】
[式(1)〜(5)中、a及びbは、各々独立に1〜10の整数であり、R、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基であり、X及びXは、各々独立に単結合、アリーレン基、−NH−、−O−、又は−S−を表す。]
【請求項2】
重量換算で、前記塩素化銅フタロシアニン100部当たり、前記顔料誘導体1部を超えて15部以下を含有することを特徴とする請求項1記載の自動車塗料用青色顔料組成物。
【請求項3】
前記塩素化銅フタロシアニンの平均一次粒子径が20〜60nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車塗料用青色顔料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車塗料用青色顔料組成物を含むことを特徴とする塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化銅フタロシアニン顔料や顔料誘導体を含み、主に自動車用塗料として好適に使用できる青色顔料組成物、及びそれを有する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、堅牢性に優れた青色有機顔料として、銅フタロシアニンを始めフタロシアニン構造を有するフタロシアニン化合物は、着色材として塗料、プラスチック、トナー、インクジェットを始めとする様々な用途に幅広く使用されている。
【0003】
また、銅フタロシアニンの色合いは、分子中に存在する塩素原子の数によって変化することが知られており、塩素数が増えるほど、赤味の青色から緑味の青色を経て緑色へとシフトする。特に、自動車塗料の青色顔料としては、塩素数が1〜4個の塩素化銅フタロシアニンが用いられることが多く、日本の自動車業界では塩素数1であるモノクロロ銅フタロシアニンを用いた赤味の青色が好まれている。
【0004】
さらに、モノクロロ銅フタロシアニン顔料は、視覚角度により色相変化が観察され、特にシェードと呼ばれる領域で赤味が強くなりすぎてしまうといった課題がある。また色相のほかに、自動車塗料用顔料としては、顔料の透明性、分散性といった特性も重要である。
【0005】
引用文献1には、無置換の銅フタロシアニンと銅フタロシアニンの顔料誘導体からなる顔料組成物が提案されているが、色相が異なり、透明性、分散性も良好ではなかった。
【0006】
引用文献2には、モノクロロ銅フタロシアニンと銅フタロシアニンを混合した塩素化銅フタロシアニン顔料組成物が提案されているが、透明性、分散性も良好ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−70568号公報
【特許文献2】特開平9―59531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、塗料の着色材として使用した場合、シェードの色相が緑味化し、透明性に優れた青色顔料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、塩素化銅フタロシアニンに関して鋭意検討を行った結果、特定の平均塩素置換数の塩素化銅フタロシアニンと特定の銅フタロシアニン顔料誘導体を含む顔料組成物を塗料用の着色材として使用した場合、シェードの色相が緑味になり、透明性の優れた塗板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、
[1]平均塩素置換数が0.3〜2.2である塩素化銅フタロシアニンと、銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が下記一般式(1)で表される基、下記一般式(2)で表される基、下記一般式(3)で表される基、下記一般式(4)で表される基、又は下記一般式(5)で表される基の少なくともいずれか一つの基で置換された顔料誘導体を含み、前記塩素化銅フタロシアニンの一次粒子の平均アスペクト比が1.0〜3.5であることを特徴とする青色顔料組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
−SO (4)
【0015】
【化4】
[式(1)〜(5)中、a及びbは、各々独立に1〜10の整数であり、R、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基であり、X及びXは、各々独立に単結合、アリーレン基、−NH−、−O−、又は−S−を表す。]
[2]重量換算で、前記塩素化銅フタロシアニン100部当たり、前記顔料誘導体1部を超えて15部以下を含有することを特徴とする前記[1]記載の青色顔料組成物。
[3]平均一次粒子径が20〜60nmであることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の青色顔料組成物。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の青色顔料組成物を含むことを特徴とする塗料。
を提供する。
【発明の効果】
【0016】
塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数を0.3〜2.2とすることで無置換の銅フタロシアニンの含有率を低下させ、かつ、特定の顔料誘導体を併用することで、顔料化方法に大きく左右されることなく 、比較的簡単に顔料粒子の結晶成長を抑制することができた。その結果、アスペクト比が1に近い一次粒子を得ることができ、アスペクト比が小さいほど良好な特性が得られる透明性について、優れた顔料を得ることができた。また、塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数が0.3〜2.2であると、顔料自体の発色が緑味に寄り、シェードでの色相も緑味化した。
【0017】
その結果、自動車塗料用顔料組成物の重要な特性であるシェードの色相、透明性に優れる顔料を作製することができた。
【0018】
本発明の青色顔料組成物を塗料用の着色材として使用することで、シェードが緑味で透明性の優れた塗板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、特定の平均塩素置換数の塩素化銅フタロシアニンと特定の銅フタロシアニン顔料誘導体を含む事を最大の特徴とする。
【0020】
<塩素化銅フタロシアニン>
本発明で使用する塩素化銅フタロシアニンは、公知慣用の方法により得ることができる。それらの一例は、次の通りである。
【0021】
まず、無水フタル酸の芳香環の水素原子の一部を塩素に置換した塩素化無水フタル酸と尿素と銅または銅化合物とを反応させるワイラー法や、芳香環の水素原子の一部を塩素に置換した塩素化フタロニトリルと銅または銅化合物を高沸点溶媒で反応させるフタロニトリル法によって塩素化銅フタロシアニンを製造することができる。
【0022】
また、別の製造方法として、クロロスルホン酸法による塩素化方法がある。銅フタロシアニンを、クロロスルホン酸等の硫黄酸化物系の溶媒に溶解し、これに塩素ガスを仕込みハロゲン化する方法が挙げられる。この際の反応は、温度20〜120℃かつ3〜20時間の範囲で行われる。
【0023】
さらに、塩素化方法として、溶融法が知られている。溶融法としては、塩化アルミニウム、四塩化チタンの様なハロゲン化チタン、塩化ナトリウム等の様なアルカリ金属塩素化物またはアルカリ土類金属塩素化物、塩化チオニル等、各種の塩素化の際に溶媒となる化合物の一種または二種以上の混合物からなる10〜170℃程度の溶融物中で、銅フタロシアニンを塩素化剤にて塩素化する方法が挙げられる。
【0024】
本発明では、ワイラー法で合成された塩素化銅フタロシアニンを使用した。以下に、代表的な製造条件を記載する。
【0025】
ワイラー法は無水フタル酸またはその誘導体と、尿素またはその誘導体とを金属源、触媒の存在下に90℃〜300℃で反応させるフタロシアニンの合成法で、フタロシアニンの合成法として最も工業的に利用されているものである。合成の際には系内の温度制御や攪拌効率の向上等の目的のために溶剤を用いてもよい。また収率向上や純度向上等を目的として0.2〜0.7MPa程度の加圧条件で反応を行ってもよい。
【0026】
ワイラー法での合成の際に使用するフタル酸類としては種々の文献で公知であるもの、例えば、無水フタル酸、フタル酸およびその塩、そのエステル、フタルイミド、フタルアミドなどがある。またこれらの化合物の芳香族環上にアルキル基、アリール基、ニトロ基、スルホン基、スルホアミド基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオ基、アシル基、シリルオキシ基、シリル基、ハロゲン、またはそれらから誘導される置換基といった置換基を有するフタル酸類を含有していてもよい。本発明では、これらのフタル酸類と、塩素化されたフタル酸類を任意の割合で混合してワイラー法での合成を行うことで、任意の割合の平均塩素置換数を有する塩素化銅フタロシアニンを合成した。本発明の塩素化銅フタロシアニンを製造するにあたっては、3‐クロロフタル酸水素ナトリウム、4‐クロロフタル酸水素ナトリウム、3‐クロロフタル酸無水物、4‐クロロフタル酸無水物を原料の一部として用いるのが望ましい。
【0027】
ワイラー法でのフタロシアニン類の合成に使用する尿素またはその誘導体としては尿素、アンモニア、ビウレット、トリウレットなどがある。その使用量は無水フタル酸またはその誘導体1モルに対し1モル〜10モル程度である。金属源は金属粉、塩化物、臭化物、沃化物、硫酸塩、硫化物、酢酸塩、酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩などが使用できる。金属の価数は反応に影響を与えるが、一般にフタロシアニン合成には使用できる。金属源の使用量はフタル酸またはその誘導体に対しモル比で0.15から0.40の範囲で用いるのが好ましい。触媒としてはワイラー法で公知なものすべてを用いることができる。例えばモリブデン酸アンモニウム、酸化アンモニウム、リンモリブデン酸などのモリブデン酸化合物、四塩化チタン、チタン酸エステルなどのチタン化合物、酸化アンチモン、酸化ヒ素、ホウ酸などがある。使用量に関しては特に限定はないが、フタル酸またはその誘導体に対し重量比で0.0001から0.3の範囲で用いるのが好ましい。また反応性の向上、製品の純度や鮮明性向上等を目的としてオルトリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、ポリメタリン酸、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素及びこれらの金属塩やアンモニウム塩をフタル酸またはその誘導体に対しモル比で0.05モル〜1モルの割合で添加してもよい。
【0028】
使用できる溶剤としてはワイラー法の合成溶剤として公知のものすべてを用いることができる。例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、テトラリン等の芳香族炭化水素、アルキルシクロヘキサン、デカリン、アルキルデカリン等の脂環式炭化水素、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン等のニトロ化合物、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、ヘキサクロロブタジエン等のハロゲン化炭化水素、スルホラン、ジメチルスルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物、キノリン等の複素環化合物等が使用可能である。これらの有機溶媒は、2種以上の混合物であってもかまわない。
【0029】
反応完了後、溶剤の濾過や溶剤留去等の反応溶剤との分離処置を行った後、水や有機溶剤での洗浄を行うのが好ましい。洗浄の際に酸やアルカリを用いてもよい。更に精製が必要ならば公知の精製技術である昇華、アシッドペースト、アシッドスラリー、再沈殿、再結晶、抽出等の操作によって不純物を除去してもよい。
【0030】
また、本発明の塩素化銅フタロシアニンは、1分子中に塩素が1〜5置換した塩素化銅フタロシアニンと、塩素が置換していない無置換の銅フタロシアニンの混合物である。塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数は、蛍光X線分析装置、または質量分析計(FD−MS、TOF−MS)において同定されるものである。塩素化銅フタロシアニンの製造方法において、ワイラー法またはニトリル法で得られる塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数の分布は狭くなる。一方、銅フタロシアニンを溶融、塩素化するクロロスルホン酸等の合成法で得られる塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数の分布は塩素化出発原料由来のものより、反応条件により左右されるが一般的には大きくなる傾向にある。
【0031】
本発明における塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数は、0.3〜2.0が好適であり、0.5〜1.6がさらに好適である。平均塩素置換数が高過ぎると色相が過剰に緑味化し所望の色相から外れることになり、逆に平均塩素置換数が低過ぎると色相が赤味化し所望の色相から外れるだけでなく、後述するように一次粒子の平均アスペクト比が大きくなり透明性が低下してしまう。
【0032】
本発明における塩素化銅フタロシアニンの平均一次粒子径は、20〜60nmが好適であり、平均一次粒子が小さ過ぎると塗料作成時の分散性が悪くなり、十分に塗料中に分散されない。また、平均一次粒子径が大き過ぎると透明性、着色力等の特性が悪化する。
【0033】
平均アスペクト比は、1.0〜3.5が好適であり、色相、透明性、分散性とも良好である。平均アスペクト比が大き過ぎると透明性、分散性、着色力等の特性が悪化する。
【0034】
本発明において、多角度分光測色計によるハイライトの領域での測色とは、正反射光近傍の受光角度(具体的には正反射光を0°としたときの−15°)での測色で、多角度分光測色計によるシェードの領域での測色とは、正反射光から離れた反射光強度の比較的小さい受光角度(具体的には正反射光を0°としたときの110°)での測色である。シェードの色相を緑味にする方法としては、顔料の平均一次粒子径を小さくし、赤味の散乱光を低減すること、塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数を高くすることで、顔料自体の発色を緑味化すること等がある。
【0035】
<銅フタロシアニン顔料誘導体>
次に本発明の銅フタロシアニン顔料誘導体について、説明する。本発明で使用される銅フタロシアニン顔料誘導体は、銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が一般式(1)で表される基、一般式(2)で表される基、一般式(3)で表される基、一般式(4)で表される基、又は一般式(5)で表される基の少なくともいずれか一つの基で置換された顔料誘導体であり、公知公用の方法で合成される。
【0036】
銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が一般式(1)で表される置換基で置換された顔料誘導体は、塩基性の顔料誘導体である。顔料化処理時に使用することで、顔料の過度の結晶成長を抑制する。また、塗料用顔料組成物でよく使用され、塗料の粘度安定性を向上させる。
【0037】
【化5】
[一般式(1)中、aは独立に1から10の整数であり、R、Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0038】
銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が一般式(2)で表される置換基で置換された顔料誘導体は、塩基性の顔料誘導体である。顔料化処理時に使用することで、顔料の過度の結晶成長を抑制する。また、塗料用顔料組成物でよく使用され、塗料の粘度安定性を向上させる。
【0039】
【化6】
[一般式(2)中、bは独立に1から10の整数であり、R、Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0040】
銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が一般式(3)で表される置換基で置換された顔料誘導体は、銅フタロシアニンの結晶成長抑制剤としての効果はよく知られており、小粒径が求められるカラーフィルタ用フタロシアニン顔料やトナー用フタロシアニン顔料では、含有される場合が多い。本発明では、これらの効果と同様に小粒径化や結晶成長抑制効果のみならず、顔料の一次粒子径のバラツキの分布を抑制することで散乱光を抑えることができ、シェードの色相を緑味にしていると推測している。
【0041】
【化7】
【0042】
銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が一般式(4)で表される置換基で置換された顔料誘導体は、顔料化処理時に使用することで、顔料の過度の結晶成長を抑制する。また、プラスチック用顔料組成物でよく使用され、分散性を向上させる効果がある。本発明では、これらの効果と同様に小粒径化や結晶成長抑制効果のみならず、顔料の一次粒子径のバラツキの分布を抑制することで散乱光を抑えることができ、シェードの色相を緑味にしていると推測している。
【0043】
−SO (4)
[一般式(4)中、Rは、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基である。]
【0044】
銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が一般式(5)で表される置換基で置換された顔料誘導体は、銅フタロシアニンの結晶成長抑制剤としての効果はよく知られており、小粒径が求められるカラーフィルタ用フタロシアニン顔料やトナー用フタロシアニン顔料では、含有される場合が多い。本発明では、これらの効果と同様に小粒径化や結晶成長抑制効果のみならず、顔料の一次粒子径のバラツキの分布を抑制することで散乱光を抑えることができ、シェードの色相を緑味にしていると推測している。
【0045】
【化8】
[一般式(5)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基であり、X及びXは、各々独立に単結合、アリーレン基、−NH−、−O−、又は−S−を表す。]
【0046】
本発明で使用される銅フタロシアニン顔料誘導体は、銅フタロシアニンのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子が上記一般式(1)〜(5)で表される置換基の少なくともいずれか一つの置換基で置換された顔料誘導体であればよく、同一または異なる複数の一般式(1)〜(5)で表される置換基で置換された顔料誘導体であってもよい。
【0047】
また、複数種の銅フタロシアニン顔料誘導体を混合して使用することも可能である。
【0048】
本発明で使用される銅フタロシアニン顔料誘導体としては、以下に示す式(4−1)〜式(4−7)の化合物が例示されるが、これらの化合物に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0049】
【化9】
(4−1)
【0050】
【化10】
(4−2)
【0051】
【化11】
(4−3)
【0052】
【化12】
(4−4)
【0053】
【化13】
(4−5)
【0054】
【化14】
(4−6)
【0055】
【化15】
(4−7)
【0056】
前記顔料誘導体は置換基構造が大きいため、通常の合成方法では、1分子中の置換基数が最大で5である。本発明の顔料誘導体における、上記一般式(1)〜(5)で表される置換基の平均置換基数は、0.5〜5.0であり、耐熱性、耐光性の観点から、1.0〜1.7が好ましい。
【0057】
本発明の青色顔料組成物において、塩素化銅フタロシアニンに対する前記顔料誘導体の添加量は、塩素化銅フタロシアニン100重量部に対して、1重量部を超えて15重量部以下が好ましく、シェードの色相を制御しつつ、顔料誘導体による色変化をなるべく起こさないために、1〜10重量部がさらに好ましい。
【0058】
一般的に顔料粒子の成長速度は、無置換の銅フタロシアニンが最も速く、塩素化銅フタロシアニンは塩素の置換数が多いほど遅くなることが知られている。本発明の塩素化銅フタロシアニンは、1分子中に塩素が1〜5置換した塩素化銅フタロシアニンと、塩素が置換していない無置換の銅フタロシアニンの混合物であるために、それぞれの化合物で顔料を製造する工程での顔料粒子の成長速度が異なり、粒子の大きさが不揃いな顔料粒子となり易く、これが視覚角度による散乱の差を生じシェード領域で赤味化する原因の1つであると推察している。この点について、本発明で用いる特定の銅フタロシアニン顔料誘導体は、結晶成長抑制効果が特に高いために、成長速度が異なる複数化合物から構成される塩素化銅フタロシアニンにおいても粒度分布が狭く粗大粒子の少ない顔料組成物の粒子を得ることができ、その結果、塗料用の着色材として使用した際に、シェードが緑味で且つ透明性の優れた塗板が得られたと推察している。
【0059】
本発明の青色顔料組成物は、前記塩素化銅フタロシアニンと前記銅フタロシアニン顔料誘導体を単に混合させるだけでも色相、分散性を制御することが可能であるが、分子レベルで両物質を均一にさせるためには、一旦両物質を混合し、溶解させ、析出することで、分子レベルで均一な顔料組成物を製造することができる。
【0060】
本発明における青色顔料組成物の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で視野内の粒子を撮影し、そして、二次元画像上の凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の最長の長さ(最大長)、最小の長さ(最小長)を求めた。個々の粒子の最大長の平均値を平均一次粒子径とした。また、個々の粒子で、最大長/最小長を求め、それらの平均値を一次粒子の平均アスペクト比とした。
【0061】
本発明における青色顔料組成物の平均一次粒子径は、20〜60nmが好適であり、平均一次粒子が小さ過ぎると塗料作成時の分散性が悪くなり、十分に塗料中に分散されない。また、平均一次粒子径が大き過ぎると透明性、着色力等の特性が悪化する。
【0062】
<本発明の青色顔料組成物の製造方法>
本発明の青色顔料組成物を得る方法を、一例として述べる。より好適な顔料組成物が得られるように以下説明するが、本発明の青色顔料組成物を得る方法を限定的に解釈されるべきものではない。
【0063】
例えば、顔料を良溶媒に溶解させた後、貧溶媒と接触させて析出させ、顔料粒子を微細化する第一工程、第一工程で得られた顔料を有機溶剤または、有機溶剤と水の混合液中で加熱処理することで整粒化する第二工程によって、青色顔料組成物を得ることができる。
【0064】
第一工程は、顔料を良溶媒に溶解させた後、貧溶媒と接触させて析出させ、顔料粒子を微細化する工程である。塩素化銅フタロシアニン100重量部に対して50〜10000重量部の強酸に、0〜90℃で、完全または一部溶解(酸濃度によりアシッドペースティング、アシッドスラリー、アシッドスェリング)した後、貧溶媒と混合し、顔料粒子を析出させる。
【0065】
上記強酸としては、硫酸、塩酸、硝酸を使用することができる。中でも、コスト、ハンドリング性、量産性を考慮すると硫酸が好ましい。また、硫酸の酸濃度としては、フタロシアニン顔料が溶解可能な70%〜100%(無水硫酸)である。ただし、顔料が完全に溶解可能な濃度としては、90%以上が好ましい。
【0066】
顔料の強酸溶液を貧溶媒と混合させる際に、貧溶媒量は、顔料を十分に析出させることが必要であり、強酸溶液100重量部に対して、50〜10000重量部を用いる。
【0067】
上記貧溶媒としては、顔料が酸濃度の低下により析出すれば如何なる溶媒でも使用することができるが、本発明では水、または水100重量部に対して、有機溶媒1〜300重量部の有機溶媒からなる混合溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、水溶性および水不溶性どちらの有機溶媒も使用することができる。アルコール類、グリコール類、ケトン類、炭化水素類等、水不溶性溶媒の場合は、高速撹拌または乳化剤、界面活性剤の添加によりエマルジョン化して、水との混合溶媒とすることができる。
【0068】
顔料の強酸溶液と貧溶媒との混合方法は、公知公用の方法が使用可能であり、強酸溶液を貧溶媒に取り出しても良いし、その逆でも構わない。例えば、大量の貧溶媒溶液中に顔料の強酸溶液を徐々に追加する方法や、顔料の強酸溶液を貧溶媒と常に接触させて析出させる、いわゆるマイクロリアクター方式の混合方法もある。例えば、エジェクターを用いた混合方法は、マイクロリアクター同様に顔料の強酸溶液と貧溶媒とを常に接触させて析出させるため、接触時の強酸濃度が均一であること、温度一定下で粒子を析出させるため、粒度分布が狭い粒子ができることでより好ましい混合方法である。
【0069】
第二工程は、第一工程で得られた顔料を有機溶剤または、有機溶剤と水の混合液中で加熱処理することで整粒化する工程である。
【0070】
加熱処理で使用する液媒体は、青色顔料組成物を目的の粒子径で粒度分布を狭く制御できるものを選択する。液媒体としては、有機溶剤または有機溶剤と水の混合液が使用できる。有機溶剤としては、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、安息香酸、安息香酸メチル等の芳香族化合物類;ヘプタン、ヘキサン、石油ベンジン、ミネラルスピリット、ケロシン等の脂肪族炭化水素化合物類;イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、ジエチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;N‐メチルピロリドン;γ‐ブチロラクトン;ジメチルホルムアミド等が挙げられる。中でも、塩素化銅フタロシアニンとの親和性が高い、テトラヒドロフラン、安息香酸メチル、N‐メチルピロリドン、γ‐ブチロラクトンが好ましい。
【0071】
また、使用する有機溶剤は、単独でも数種類の混合溶剤でも、各種有機溶剤と水の混合液でも構わない。その混合比率は、有機溶剤の種類に応じて適宜設定することができる。
【0072】
また、有機溶剤と水の混合液はエマルジョンとして使用することもできる。エマルジョン作製において、使用できる界面活性剤は、いかなる市販の界面活性剤を使用することができる。水と有機溶剤とがエマルジョンを形成すればよく、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系のいかなる界面活性剤を用いることができる。本発明においては、特に安息香酸メチルと水をエマルジョン化する能力を有し、塗膜適性の悪影響を及ぼさない点で、アニオン系界面活性剤を界面活性剤として使用することが好ましい。
【0073】
加熱処理の温度、時間は、特に制限されるものではないが、目的の粒子径にて粒度分布を狭く制御できる時間として好適であればよく、使用する液媒体の種類に依存する。一般的には、30〜150℃の温度範囲、30分〜6時間の時間範囲である。
【0074】
本発明の青色顔料組成物の代表的な用途は塗料である。塗料用樹脂組成物は、液状樹脂と本発明の顔料組成物とを含めれば容易に調製できる。
【0075】
本発明によって着色すべき塗料用樹脂組成物に用いる液状樹脂は、天然または合成されたものであることが出来る。液状樹脂としては、被膜が形成出来るものが好ましい。例えば、油ワニス、セラックニス、ラッカー、フタル酸樹脂、アルキド樹脂、メラミンアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルメラミン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、塩化ゴム樹脂等がある。本発明においてこれら液状樹脂は、2種以上を併用することもできる。
【0076】
また、顔料組成物を液状樹脂中で分散し又は混合し、塗料用樹脂組成物とする時に、通常の添加剤類、例えば、分散剤類、充填剤類、塗料補助剤類、乾燥剤類、可塑剤類及び/又は補助顔料を用いることが出来る。これは、それぞれの成分を、単独又は幾つかを一緒にして全ての成分を集め、又はそれらの全部を一度に加えることによって、分散又は混合して達成される。
【0077】
上記顔料組成物を分散する分散機としては、ディスパー、ホモミキサー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、ビーズミル、アトライター、ボールミル、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー等の公知の分散機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
上記添加剤類としては、公知慣用の、BYK Chemie製のDisperbyk−160、同161、同162、同163、同164、同166、同、170、同171、同174、同180、同182、同183、同185、同2000、同2001等やZeneca製のSolsperse3000、同6000、同17000、同20000等や、共栄社化学株式会社製のフローレンDOPA−22、同DOPA−17、同DOPA−15、同AF−205、同AF−405、同AF−1000等も使用することも可能である。
【0079】
有機顔料に対する添加剤の量は、最終用途の塗料の必要条件により異なるが、所定の何れかの量で加えられる。通常有機顔料100重量部に対して、添加剤は0.01〜20重量部、好ましくは、0.1〜10重量部である。
【0080】
液状樹脂に対する添加剤の量は、最終用途の塗料の必要条件により異なるが、所定の何れかの量で加えられる。通常液状樹脂100重量部に対して、添加剤は0.001〜4重量部、好ましくは、0.01〜2重量部である。
【0081】
液状樹脂に対する顔料組成物の量は、最終用途の塗料の必要条件により異なるが、所定の何れかの量で加えられる。通常液状樹脂100重量部に対して、顔料組成物は0.01〜40重量部、好ましくは、0.1〜20重量部である。
【0082】
本発明の青色顔料組成物は、塗料用樹脂組成物向けとして、広範囲の分散樹脂系に対して良好な分散性を示す。また、得られた塗料用樹脂組成物は、流動性が良好で、高鮮明・高着色力で混色安定性が良く、さらに良好な貯蔵安定性を示すので、建物・建材用塗料、構造物用塗料、船舶用塗料、道路車両用塗料、電気・機械用塗料、金属製品用塗料、木工製品用塗料、家庭用塗料等に優れた塗装を提供できる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例、参考例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。
以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、夫々『重量部』及び『重量%』を表わす。
【0084】
(塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数の算出方法)
塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数の算出方法として、
蛍光X線分析装置(PANalytical社製epsilon5)で塩素化銅フタロシアニンの粉末を測定した。その後、得られた測定値を用い下記のように計算し、塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数とした。
塩素化銅フタロシアニンの平均塩素置換数 =(塩素原子の測定値(%)/塩素の原子量)/(銅原子の測定値(%)/銅の原子量)
また蛍光X線分析以外にも、FD−MS、TOF−MS等の質量分析計でも、一般的な測定法で平均塩素置換数を算出でき、蛍光X線と同様の結果が得られる。
【0085】
(一次粒子の平均粒子径、平均アスペクト比の測定法)
青色顔料組成物の粒子径は、透過型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影し、そして、二次元画像上の凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の最長の長さ(最大長)、最小の長さ(最小長)を求めた。個々の粒子の最大長の平均値を平均一次粒子径とした。また、個々の粒子で、最大長/最小長を求め、それらの平均値を一次粒子の平均アスペクト比とした。
【0086】
(明度Lの測定法)
黒帯が印刷されたアート紙に、青色塗料組成物をアプリケーターで展色し、青色塗板を得た。その塗板の黒帯上にある展色部分を分光光度計(データカラー社製データカラー650)を用いて測定し、明度Lを算出した。透明性が高い顔料ほど、下地の黒帯をより反射するようになり、Lが小さくなる。
【0087】
(ハイライト、シェードでの色相の測定法)
透明フィルムに、青色塗料組成物をアプリケーターで展色し、青色塗板を得た。その塗板を展色面を上にして黒色紙上に置き、多角度分光測色計(X‐rite社製MA98)を用いて測定し、色相角度h、彩度Cを算出した。この装置はサンプルに対して45°の角度の光源を持ち、正反射を0°とした際、−15°〜110°の6角度の受光角度で色相評価が行える。受光角度−15°(ハイライト)と110°(シェード)の色相角度hの差(Δh)が小さいほどフロップ性に優れる。
【0088】
(合成例1)
1Lオートクレーブに、T‐SOL150 400ml(JXTGエネルギー株式会社製)、4−クロロフタル酸水素ナトリウム66.8部(東京化成工業株式会社)、無水フタル酸74.1部(富士フイルム和光純薬株式会社)、尿素153.9部(富士フイルム和光純薬株式会社)、塩化銅(I)19.8部(富士フイルム和光純薬株式会社)、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.45部(富士フイルム和光純薬株式会社)を加え、攪拌しながら195℃まで昇温し、195℃、3.5気圧で2時間撹拌した。
【0089】
上記の反応溶液を常温まで自然放冷後、エバポレーターで脱溶剤し、塩素化銅フタロシアニンの粗製物を得た。還流管を付けた3Lのガラス製セパラブルフラスコに、上記の粗製物、硫酸(5%)水溶液2000部を加え、70℃まで昇温し、70℃で1時間撹拌した。その後、ヌッチェで濾過し、濾液のpHが6以上になるまで水洗浄をくりかえした。その後90℃で20時間乾燥、粉砕し、塩素化銅フタロシアニン(1)を109部得た。
【0090】
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(1)の平均塩素置換数は1.48と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(1)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は20%と測定された。
【0091】
(合成例2)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを49.0部、無水フタル酸を85.9部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(2)を102部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(2)の平均塩素置換数は1.12と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(2)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は34%と測定された。
【0092】
(合成例3)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを40.1部、無水フタル酸を91.8部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(3)を103部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(3)の平均塩素置換数は0.90と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(3)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は38%と測定された。
【0093】
(合成例4)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを26.7部、無水フタル酸を115.5部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(4)を101部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(4)の平均塩素置換数は0.60と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(4)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は57%と測定された。
【0094】
(合成例5)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを22.3部、無水フタル酸を103.7部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(5)を101部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(5)の塩素数は0.51と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(5)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は68%と測定された。
【0095】
(合成例6)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを13.4部、無水フタル酸を109.6部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(6)を102部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(6)の塩素数は0.30と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(6)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は67%と測定された。
【0096】
(合成例7)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを89.1部、無水フタル酸を59.4部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(7)を110部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(7)の塩素数は2.01と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(7)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は5.1%と測定された。
【0097】
(合成例8)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを0部、無水フタル酸を118.5部に変更した以外は合成例1と同様に行い、銅フタロシアニン(8)を100部得た。
【0098】
(合成例9)
前記合成例1で、4−クロロフタル酸水素ナトリウムを142.4部、無水フタル酸を23.7部に変更した以外は合成例1と同様に行い、塩素化銅フタロシアニン(9)を115部得た。
蛍光X線分析より、塩素化銅フタロシアニン(9)の塩素数は3.20と測定された。FD−MS分析より、塩素化銅フタロシアニン(9)に含まれる無置換の銅フタロシアニンの割合は0.6%と測定された。
【0099】
(製造例1)
還流管を付けた1Lのガラス製セパラブルフラスコに、合成例1で合成した塩素化銅フタロシアニン(1)28.5部、硫酸(95%)257部加え、70℃まで昇温し、70℃で1時間撹拌した。45℃まで自然放冷後、エジェクター(樹脂製アスピレータ)で吸引しながら45℃の水 2300部と混合させて、硫酸スラリーを得た。還流管を付けた3Lのガラス製セパラブルフラスコに前記硫酸スラリーを加え、70℃まで昇温し、70℃で1時間撹拌した後、ヌッチェで濾過し、濾液のpHが6以上になるまで水洗浄をくりかえし、塩素化銅フタロシアニン(1)のウエットケーキ(不揮発分12%)を得た。
【0100】
還流管を付けた1Lのガラス製セパラブルフラスコに、上記ウエットケーキ全量、下記の顔料誘導体(1)1.5部、テトラヒドロフラン100部(富士フイルム和光純薬株式会社)を加え、55℃まで昇温し、55℃で2時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液(25%)19部(富士フイルム和光純薬株式会社)、水180部を加え、30分撹拌した。その後、還流管を取り外し、リービッヒ冷却管を取り付け、100℃まで昇温し、100℃で30分撹拌し、テトラヒドロフランを顔料スラリーから取り除いた。
常温まで自然放冷後、ヌッチェで濾過し、濾液のpHが8以下になるまで水洗浄をくりかえした。その後90℃で20時間乾燥、粉砕し、青色顔料組成物(1)を29部得た。
【0101】
【化16】
顔料誘導体(1)
【0102】
(製造例2)
前記製造例1で、塩素化銅フタロシアニン(1)を塩素化銅フタロシアニン(2)に変更した以外は、製造例1と同様に行い、青色顔料組成物(2)を29部得た。
【0103】
(製造例3)
前記製造例1で、塩素化銅フタロシアニン(1)を塩素化銅フタロシアニン(3)に変更した以外は、製造例1と同様に行い、青色顔料組成物(3)を29部得た。
【0104】
(製造例4)
前記製造例3で、顔料誘導体(1)を顔料誘導体(2)に変更した以外は、製造例3と同様に行い、青色顔料組成物(4)を29部得た。
【0105】
【化17】
顔料誘導体(2)
【0106】
(製造例5)
前記製造例3で、顔料誘導体(1)を顔料誘導体(3)に変更した以外は、製造例3と同様に行い、青色顔料組成物(5)を29部得た。
【0107】
【化18】
顔料誘導体(3)
【0108】
(製造例6)
前記製造例3で、顔料誘導体(1)1.5部を、顔料誘導体(1)1.0部、および顔料誘導体(2)0.5部に変更した以外は、製造例3と同様に行い、青色顔料組成物(6)を29部得た。
【0109】
(製造例7)
還流管を付けた1Lのガラス製セパラブルフラスコに、塩素化銅フタロシアニン(3)28.5部、硫酸(95%)257部加え、70℃まで昇温し、70℃で1時間撹拌した。45℃まで自然放冷後、エジェクター(樹脂製アスピレータ)で吸引しながら45℃の水2300部と混合させて、硫酸スラリーを得た。還流管を付けた3Lのガラス製セパラブルフラスコに前記硫酸スラリーを加え、70℃まで昇温し、70℃で1時間撹拌した後、ヌッチェで濾過し、濾液のpHが6以上になるまで水洗浄をくりかえし、塩素化銅フタロシアニン(3)のウエットケーキ(不揮発分12%)を得た。
1Lのガラス製ビーカーに、水303部、安息香酸メチル15.3部(富士フイルム和光純薬株式会社)、スルホこはく酸ジオクチルナトリウム(東京化成工業株式会社)0.46部を加え、T.K.ホモミクサーMARKII(プライミクス株式会社製)で10000rpm、10分間撹拌し、エマルション液(1)を作製した。
還流管を付けた1Lのガラス製セパラブルフラスコに、上記塩素化銅フタロシアニン(3)のウエットケーキ全量、前記の顔料誘導体(1)1.5部、水500部を加え、85℃まで昇温し、さらに、エマルション液(1)64部を加え、85℃で2時間撹拌した。常温まで自然放冷後、水酸化ナトリウム水溶液(25%)10部を加え、85℃まで昇温し、85℃で2時間撹拌した。その後、pHが10以上であることを確認し、常温まで自然放冷後、ヌッチェで濾過し、濾液のpHが8以下になるまで水洗浄をくりかえした。その後90℃で20時間乾燥、粉砕し、青色顔料組成物(7)を29部得た。
【0110】
(製造例8)
前記製造例1で、塩素化銅フタロシアニン(1)を塩素化銅フタロシアニン(4)に変更した以外は、製造例1と同様に行い、青色顔料組成物(8)を29部得た。
【0111】
(製造例9)
塩素化銅フタロシアニン(4)95部、顔料誘導体(1)5部、塩化ナトリウム700部、およびジエチレングリコール130部(富士フイルム和光純薬株式会社)をステンレス製双腕型ニーダー(2L)に仕込み、90℃で6時間混練した。その後、この混合物を70℃の塩酸(0.5%)水溶液 4000部に投入し、1時間攪拌してスラリー状とし、ヌッチェで濾過し、濾液のpHが6以上、比電導度200μS/cm以下となるまで水洗をくりかえして、塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた。その後90℃で20時間乾燥、粉砕し、青色顔料組成物(9)を95部得た。
【0112】
(製造例10)
前記製造例6で、塩素化銅フタロシアニン(3)を塩素化銅フタロシアニン(5)に変更した以外は、製造例6と同様に行い、青色顔料組成物(10)を29部得た。
【0113】
(製造例11)
前記製造例6で、塩素化銅フタロシアニン(3)を塩素化銅フタロシアニン(6)に変更した以外は、製造例6と同様に行い、青色顔料組成物(11)を28部得た。
【0114】
(製造例12)
前記製造例6で、塩素化銅フタロシアニン(3)を塩素化銅フタロシアニン(7)に変更した以外は、製造例6と同様に行い、青色顔料組成物(12)を28部得た。
【0115】
(製造例13)
前述製造例12で、顔料誘導体(1)を顔料誘導体(4)に変更した以外は、製造例12と同様に行い、青色顔料組成物(13)を27部得た。
【0116】
【化19】
顔料誘導体(4)
【0117】
(製造例14)
前記製造例12で、顔料誘導体(1)を顔料誘導体(5)に変更した以外は、製造例12と同様に行い、青色顔料組成物(14)を26部得た。
【0118】
【化20】
顔料誘導体(5)
【0119】
(製造例15)
前記製造例6で、塩素化銅フタロシアニン(3)を銅フタロシアニン(8)に変更した以外は、製造例6と同様に行い、青色顔料組成物(15)を29部得た。
【0120】
(製造例16)
前述製造例6で、塩素化銅フタロシアニン(3)を塩素化銅フタロシアニン(9)に変更した以外は、製造例6と同様に行い、青色顔料組成物(16)を28部得た。
【0121】
【表1】

【0122】
(実施例1)
(青色塗料組成物の調製)
製造例1で得られた青色顔料組成物(1)3.50部、アクリディック47−712(DIC株式会社製)17.5部、キシレン19.3部、ノルマルブタノール6.4部を配合し、スキャンデックス(FAST&FLUID社製)で4時間分散させた。その後、アクリディック47−712 41.5部、スーパーベッカミンL−117−60(DIC株式会社製)12.3部、キシレン9.8部、ノルマルブタノール3.2部を配合し、スキャンデックスで10分間分散させ、青色塗料組成物(1)を調製した。
【0123】
(塗板の作製)
得られた青色塗料組成物(1)を黒帯が印刷されたアート紙に6milのアプリケーターで展色し、130℃に調整した定温乾燥機で15分間焼付乾燥させ、青色塗板(1−1)を得た。また、得られた青色塗料組成物(1)を透明フィルムに4milのアプリケーターで展色し、130℃に調整した定温乾燥機で15分間焼付乾燥させ、青色塗板(1−2)を得た。
【0124】
実施例1で得られた青色塗板(1−1)のLは1.8、青色塗板(1−2)の受光角度−15°でのhは272.7、Cは30.7、受光角度110°でのhは290.7、Cは21.7、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは18.0だった。
【0125】
(実施例2)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(2)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(2−1)、青色塗板(2−2)を得た。
【0126】
実施例2で得られた青色塗板(2−1)のLは1.9、青色塗板(2−2)の受光角度−15°でのhは272.7、Cは30.7、受光角度110°でのhは291.5、Cは22.0、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは18.8だった。
【0127】
(実施例3)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(3)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(3−1)、青色塗板(3−2)を得た。
【0128】
実施例3で得られた青色塗板(3−1)のLは2.0、青色塗板(3−2)の受光角度−15°でのhは275.9、Cは30.2、受光角度110°でのhは292.6、Cは23.9、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは16.7だった。
【0129】
(実施例4)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(4)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(4−1)、青色塗板(4−2)を得た。
【0130】
実施例4で得られた青色塗板(4−1)のLは2.2、青色塗板(4−2)の受光角度−15°でのhは278.4、Cは31.3、受光角度110°でのhは292.9、Cは24.6、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは14.6だった。
【0131】
(実施例5)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(5)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(5−1)、青色塗板(5−2)を得た。
【0132】
実施例5で得られた青色塗板(5−1)のLは2.1、青色塗板(5−2)の受光角度−15°でのhは281.2、Cは29.4、受光角度110°でのhは292.5、Cは26.0、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは11.4だった。
【0133】
(実施例6)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(6)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(6−1)、青色塗板(6−2)を得た。
【0134】
実施例6で得られた青色塗板(6−1)のLは2.1、青色塗板(6−2)の受光角度−15°でのhは277.0、Cは30.7、受光角度110°でのhは292.7、Cは24.0、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは15.7だった。
【0135】
(実施例7)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(7)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(7−1)、青色塗板(7−2)を得た。
【0136】
実施例7で得られた青色塗板(7−1)のLは1.7、青色塗板(7−2)の受光角度−15°でのhは268.4、Cは31.0、受光角度110°でのhは292.4、Cは21.6、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは24.0だった。
【0137】
(実施例8)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(8)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(8−1)、青色塗板(8−2)を得た。
【0138】
実施例8で得られた青色塗板(8−1)のLは1.7、青色塗板(8−2)の受光角度−15°でのhは276.9、Cは31.9、受光角度110°でのhは294.4、Cは25.1、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは17.5だった。
【0139】
(実施例9)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(9)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(9−1)、青色塗板(9−2)を得た。
【0140】
実施例9で得られた青色塗板(9−1)のLは1.5、青色塗板(9−2)の受光角度−15°でのhは277.4、Cは27.7、受光角度110°でのhは295.5、Cは25.9、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは18.1だった。
【0141】
(実施例10)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(10)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(10−1)、青色塗板(10−2)を得た。
【0142】
実施例10で得られた青色塗板(10−1)のLは1.9、青色塗板(10−2)の受光角度−15°でのhは270.4、Cは30.9、受光角度110°でのhは294.5、Cは25.6、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは24.1だった。
【0143】
(実施例11)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(11)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(11−1)、青色塗板(11−2)を得た。
【0144】
実施例11で得られた青色塗板(11−1)のLは1.7、青色塗板(11−2)の受光角度−15°でのhは271.0、Cは40.7、受光角度110°でのhは295.0、Cは27.1、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは24.0だった。
【0145】
(実施例12)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(12)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(12−1)、青色塗板(12−2)を得た。
【0146】
実施例12で得られた青色塗板(12−1)のLは2.0、青色塗板(12−2)の受光角度−15°でのhは265.6、Cは30.5、受光角度110°でのhは291.6、Cは23.9、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは25.9だった。
【0147】
(実施例13)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(13)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(13−1)、青色塗板(13−2)を得た。
【0148】
実施例13で得られた青色塗板(13−1)のLは2.0、青色塗板(13−2)の受光角度−15°でのhは263.4、Cは29.3、受光角度110°でのhは290.1、Cは24.4、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは25.7だった。
【0149】
(実施例14)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(14)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(14−1)、青色塗板(14−2)を得た。
【0150】
実施例14で得られた青色塗板(14−1)のLは2.0、青色塗板(14−2)の受光角度−15°でのhは2665.0、Cは29.4、受光角度110°でのhは290.3、Cは24.0、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは25.3だった。
【0151】
(比較例1)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(15)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(15−1)、青色塗板(15−2)を得た。
【0152】
比較例1で得られた青色塗板(15−1)のLは2.3、青色塗板(15−2)の受光角度−15°でのhは262.6、Cは42.7、受光角度110°でのhは298.2、Cは31.7、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは35.6だった。
【0153】
(比較例2)
前記実施例1で青色顔料組成物(1)を青色顔料組成物(16)に変更した以外は実施例1と同様に行い、青色塗板(16−1)、青色塗板(16−2)を得た。
【0154】
比較例2で得られた青色塗板(16−1)のLは2.3、青色塗板(16−2)の受光角度−15°でのhは255.0、Cは25.8、受光角度110°でのhは291.7、Cは22.4、受光角度−15°と110°の色相角度hの差Δhは36.7だった。
【0155】
【表2】

【0156】
実施例1、2、3、8、10、11、及び12と比較例1は、顔料誘導体(1)を用いているが銅フタロシアニンの平均塩素置換数が異なっている。平均塩素置換数が0.3〜2.0である実施例1、2、3、8、10、11、及び12では、塩素化銅フタロシアニンを含有していることにより、顔料粒子が成長しづらく、アスペクト比、平均粒子径ともに小さい。そのため、シェードのh、Lともに小さく、自動車塗料用顔料として好適である。
一方、平均塩素置換数が0である無置換の銅フタロシアニンである比較例1は、実施例1、2、3、8、10、11、及び12と比べるとシェードで赤味寄りである。また、塩素が全く置換していない銅フタロシアニンであるため、顔料粒子が成長しやすい。そのため、アスペクト比、平均粒子径ともに大きくなり、Δh、Lともに大きくなった。よって、比較例1は自動車塗料用青色顔料に適さない。
【0157】
実施例7、10、11及び12と比較例2は、同一条件で作製したが、銅フタロシアニンの平均塩素置換数が異なっている。均塩素置換数が0.3〜2.0である実施例7、10、11及び12では、塩素化銅フタロシアニンを含有していることにより、顔料粒子が成長しづらく、アスペクト比、平均粒子径ともに小さいため、粗大な顔料粒子の散乱光によるシェードの赤味化は抑制できる。
一方、比較例2では銅フタロシアニンの平均塩素置換基数が3.2と大きいため、ハイライト、シェードともにhが小さく、顔料自体の発色が緑味である。よって、比較例2は自動車塗料用青色顔料に適さない。
【0158】
実施例3、4、5および実施例12、13、14は、顔料誘導体の種類が異なる他は、同一条件で作製したサンプルである。いずれの顔料誘導体でも、シェードのh、Lともに小さく、自動車塗料用顔料として好適である。
実施例6は、顔料誘導体を組み合わせて使用した他は、実施例3、4と同一条件で作製したサンプルである。いくつかの顔料誘導体を組み合わせた場合でも、シェードのh、Lともに小さく、自動車塗料用顔料として好適である。
実施例12、13、14は、顔料誘導体の種類が異なる他は、同一条件で作製したサンプルである。いずれの顔料誘導体でも、シェードのh、Lともに小さく、自動車塗料用顔料として好適である。
実施例3、7は、顔料化方法が異なる他は、同一条件で作製したサンプルである。いずれの顔料化方法でも、シェードのh、Lともに小さく、自動車塗料用顔料として好適である。