特許第6853030号(P6853030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853030
(24)【登録日】2021年3月15日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】表面処理液、及び親水化処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20210322BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20210322BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210322BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20210322BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C09D201/02
   C23C26/00 A
   C09D7/63
   C09D7/65
   C09D133/04
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-242725(P2016-242725)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-95756(P2018-95756A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】先崎 尊博
(72)【発明者】
【氏名】野口 拓也
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−105309(JP,A)
【文献】 特開2015−105311(JP,A)
【文献】 特開2009−256399(JP,A)
【文献】 特開平09−272819(JP,A)
【文献】 特開2012−072336(JP,A)
【文献】 特開2018−094516(JP,A)
【文献】 特開2018−159039(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/136655(WO,A1)
【文献】 特許第6188556(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂と、(B)イオン性化合物と、(S)含水溶媒とを含み、
前記(A)樹脂が、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有する水溶性の樹脂であって、不飽和二重結合を有する単量体の重合体であり、GPCにより測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量が50,000〜3,000,000であり
前記(B)イオン性化合物が、水溶性の非重合体化合物であ
前記(B)イオン性化合物が、下記式(b1)、式(b2)、又は式(b3):
【化1】
(式(b1)及び式(b2)中、Rb1、Rb2、及びRb3は、それぞれ独立に水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキル基であり、Rb4は水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキレン基である。
式(b2)中、Xは1価のアニオンである。
式(b3)中、Rb5、Rb6、Rb7、及びRb8は、それぞれ独立に、単結合であるか、水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、Rb9は水酸基又はホスホン酸基である。)
で表される化合物を1種以上含み、
前記(S)含水溶媒が、水又は有機溶媒の水溶液である、被処理体の表面の親水化に用いられる表面処理液。
【請求項2】
前記(A)樹脂が、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の基である官能基Iをする、請求項1に記載の表面処理液。
【請求項3】
前記官能基Iが、下式(a4):
CH=CR−(R12−CO−R13・・・(a4)
(式(a4)中、Rは水素原子又はメチル基であり、R12は2価の炭化水素基であり、cは0又は1であり、R13は、−OH、−O−R14、又は−NH−R14であり、R14は、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の官能基で置換された炭化水素基である。)
で表される単量体に由来する、請求項2に記載の表面処理液。
【請求項4】
前記(A)樹脂が、下記式(a1):
−NH−R・・・(a1)
(式(a1)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基、又は水素原子である。)
で表される基を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項5】
前記(A)樹脂が、下式(a5):
CH=CR−CO−NH−R・・・(a5)
(式(a5)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基、又は水素原子であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
で表される単量体に由来する構成単位を含む、請求項〜4のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項6】
さらに、pKaが1以下である(C)強酸を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項7】
前記(B)イオン性化合物が、カルボキシ基、ホスホン酸基、及び四級アンモニウム基から選択される1種以上を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項8】
前記(B)イオン性化合物の分子量が500以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面処理液
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の表面処理液の、被処理体の表面への塗布を含む、被処理の表面の親水化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液、及び当該表面処理液を用いる被処理体の親水化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の物品の表面の性質を改質するために、様々な表面処理液が使用されている。表面改質の中でも、物品の表面の親水化についての要求は大きく、親水化用の薬剤や表面処理液について多数提案されている。
【0003】
かかる表面処理用の薬剤に関して、例えば、被膜表面に親水性と防汚性とを付与できる表面調整剤として、少なくともアクリルアミドモノマーと、特定の骨格のシロキシ基含有モノ(メタ)アクリレートモノマーとが共重合された、重量平均分子量1500〜50000の共重合物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5437523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の表面調整剤を用いて親水化処理を行う場合、表面調整剤のみを含む溶液を用いて被処理体の表面を処理しても、表面調整剤が被処理体の表面に付着しにくく、所望する親水化効果を得にくい。
このため、特許文献1では、表面調整剤の溶液に、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミン樹脂等の樹脂を被膜形成成分として配合した液を、表面処理液として用いている。
【0006】
そして、特許文献1に記載の表面調整剤と、被膜形成成分とを含む表面処理液を用いる場合、被処理体の表面が樹脂を含む被膜により被覆されてしまうため、良好な親水化はできても、被処理体が有する有用な表面特性まで損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、被膜形成性の樹脂を含んでいなくても、被処理体の表面の良好な親水化又は疎水化を行うことができる表面処理液と、当該表面処理液を用いる親水化処理方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、(A)樹脂と、(B)イオン性化合物と、(S)含水溶媒とを含む親水化処理用の表面処理液に、(A)樹脂と、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有する水溶性の樹脂を加え、(B)イオン性化合物として、水溶性の非重合体化合物を加えることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、(A)樹脂と、(B)イオン性化合物と、(S)含水溶媒とを含み、
(A)樹脂が、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有する水溶性の樹脂であって、
(B)イオン性化合物が、水溶性の非重合体化合物である、被処理体の表面の親水化に用いられる表面処理液である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる表面処理液の、被処理体の表面への塗布を含む、被処理他の表面の親水化処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被膜形成性の樹脂を含んでいなくても、被処理体の表面の良好な親水化又は疎水化を行うことができる表面処理液と、当該表面処理液を用いる親水化処理方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪表面処理液≫
表面処理液は、(A)樹脂と、(B)イオン性化合物と、(S)含水溶媒とを含む。かかる表面処理液は、被処理体の表面の親水化に用いられる。
(A)樹脂は、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有する水溶性の樹脂である。
(B)イオン性化合物は、水溶性の非重合体化合物である。
以下、表面処理液に含まれる、必須又は任意の成分について説明する。
【0013】
<(A)樹脂>
表面処理液は、所望する表面処理効果を得るための成分として(A)樹脂を含む。(A)樹脂は、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有する。(A)樹脂は、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有することにより、被処理体表面に付着して親水化させる。
【0014】
(A)樹脂は、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の基である官能基Iと、前記官能基I以外の親水性基である官能基IIとを有し、官能基IIが、アニオン性基及び/又はカチオン性基を含むのが好ましい。
この場合、官能基IIが水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の基を含む場合、(A)樹脂は官能基Iを有していなくてもよい。
なお、水酸基、及びカルボキシ基を含む親水性基には、水酸基そのもの、及びカルボキシ基そのものが含まれる。
【0015】
(A)樹脂が、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の基である官能基Iを有することにより、(A)樹脂が、被処理体の表面により良好に付着しやすい。
【0016】
(A)樹脂の種類は、(A)樹脂が(S)含水溶媒に溶解可能である限り特に限定されない。(A)樹脂の例としては、(メタ)アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂の中では、官能基の導入や、官能基を有する単位の含有比率の調整が容易である事から(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0017】
(アニオン性基、及びカチオン性基)
(A)樹脂は、アニオン性基、及び/又はカチオン性基を必須に有する。(A)樹脂中のアニオン性基、及び/又はカチオン性基が、被処理体に対して親水性をもたらす。
【0018】
カチオン性基は、カチオンと、対アニオンとからなる官能基である必要はなく、カチオン化され得る官能基であれば特に限定されない。カチオン性基に由来するカチオンは、例えば、N、C、B、及びP等を含むカチオンであるのが好ましく、Nを含むカチオンであるのがより好ましい。
カチオン性基としては、(A)樹脂の入手の容易性や、良好な表面処理効果を得やすいことから、環式、又は非環式のアミノ基や、4級アンモニウム塩基が好ましい。
【0019】
(A)樹脂としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が好ましい。かかる場合、重合体は、カチオン性基を有する構成単位として、下記式(a2)で表される化合物に由来する構成単位を含むのが好ましい。
CH=CR−(CO)−R・・・(a2)
(式(a2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは−Y−R−Rで表される基、又はアミノ基であり、Yは、−O−、又は−NH−であり、Rは置換基を有してもよい2価の有機基であり、Rは炭素原子数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、又は−N・Zで表される4級アンモニウム塩基であり、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、Zは対アニオンであり、aは0又は1である。)
【0020】
上記式(a2)中、Rが−Y−R−Rで表される基である場合、Rは置換基を有してもよい2価の有機基である。2価の有機基としては特に限定されないが、2価の炭化水素基が好ましい。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)樹脂の入手や調製が容易である事から、Rが2価の炭化水素基である場合、2価の炭化水素基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜6が最も好ましい。
【0021】
としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0022】
の好適な具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、n−ブタン−1,4−ジイル基、n−ペンタン−1,5−ジイル基、n−ヘキサン−1,6−ジイル基、n−ヘプタン−1,7−ジイル基、n−オクタン−1,8−ジイル基、n−ノナン−1,9−ジイル基、n−デカン−1,10−ジイル基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0023】
としての2価の炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0024】
が炭素原子数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基である場合、その好適な具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−n−ペンチルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ、及びジフェニルアミノ基が挙げられる。
【0025】
が−N・Zで表される4級アンモニウム塩基である場合、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、Zは対アニオンである。
炭素原子数1〜6の炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、及びフェニル基が挙げられる。
としての対アニオンは、1価のアニオンであれば特に限定されずハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンの好適な例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられる。
【0026】
以上説明した式(a2)で表される化合物に由来する構成単位の好適な具体例としては、下記の構成単位a2−1〜a2−24が挙げられる。これらの構成単位の中では、単量体化合物の入手が容易である点や、良好な表面処理効果を得やすいことから、構成単位a2−1〜a2−4、a2−17、及びa2−18が好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
アニオン性基は、アニオンと、対カチオンとからなる官能基である必要はなく、アニオン化され得る官能基であれば特に限定されない。
アニオン性基は、典型的には、ブレンステッド酸性を示す官能基である。ブレンステッド酸性を示す官能基の好適な例としては、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びフェノール性水酸基が挙げられる。
【0029】
これらのブレンステッド酸性基は、対カチオンとともに塩を形成してもよい。対カチオンは、特に限定されず、有機カチオンであっても、金属イオンのような無機カチオンであってもよく、金属イオンが好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましく、例えば、Li+、Na+、K+、及びSr+が好ましい。
【0030】
(A)樹脂としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が好ましい。かかる場合、重合体は、アニオン性基を有する構成単位として、下記式(a3)で表される化合物に由来する構成単位を含むのが好ましい。
CH=CR−(CO)−R・・・(a3)
(式(a3)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは、水酸基、又は−A−R10−R11で表される基であり、Aは−O−、又は−NH−であり、R10は置換基を有してもよい2価の有機基であり、R11はブレンステッド酸性基であり、bは0又は1であり、ただし、bが0である場合、Rは水酸基でない。)
【0031】
上記式(a3)中、Rが−A−R10−R11で表される基である場合、R10は置換基を有してもよい2価の有機基である。2価の有機基としては特に限定されないが、2価の炭化水素基が好ましい。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)樹脂の入手や調製が容易である事から、R10が2価の炭化水素基である場合、2価の炭化水素基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜6が最も好ましい。
【0032】
10としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0033】
10の好適な具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、n−ブタン−1,4−ジイル基、n−ペンタン−1,5−ジイル基、n−ヘキサン−1,6−ジイル基、n−ヘプタン−1,7−ジイル基、n−オクタン−1,8−ジイル基、n−ノナン−1,9−ジイル基、n−デカン−1,10−ジイル基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0034】
10としての2価の炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、水酸基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0035】
11としてのブレンステッド酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びフェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びフェノール性水酸基がより好ましい。
【0036】
11がフェノール性水酸基でない場合、−R10−R11で表されるとしては、以下の基が好ましい。下記構造式において、R11はフェノール性水酸基以外のブレンステッド酸性基である。
【化2】
【0037】
以上説明した式(a3)で表される化合物に由来する構成単位の好適な具体例としては、下記の構成単位a3−1〜a3−20が挙げられる。これらの構成単位の中では、単量体化合物の入手が容易である点や、良好な表面処理効果を得やすいことから、構成単位a3−1〜a3−10、a3−19、及びa3−20が好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
(A)樹脂における、アニオン性基、及び/又はカチオン性基の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
(A)樹脂に含まれる全構成単位中の、アニオン性基、及び/又はカチオン性基を有する構成単位のモル比率は、50〜99.9モル%が好ましく、60〜99モル%がより好ましく、70〜99モル%が特に好ましい。
【0040】
(官能基I)
(A)樹脂は、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の基である官能基Iを有するのが好ましい。この場合、(A)樹脂が、被処理体の表面により良好に付着しやすい。
【0041】
(A)樹脂としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が好ましい。かかる場合、重合体は、官能基Iを有する構成単位として、下記式(a4)で表される化合物に由来する構成単位を含むのが好ましい。
CH=CR−(R12−CO−R13・・・(a4)
(式(a4)中、Rは水素原子又はメチル基であり、R12は2価の炭化水素基であり、cは0又は1であり、R13は、−OH、−O−R14、又は−NH−R14であり、R14は、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の官能基で置換された炭化水素基である。)
【0042】
上記式(a4)中、R12は2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)樹脂の入手や調製が容易である事から、R12としての2価の炭化水素基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜6が最も好ましい。
【0043】
12としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0044】
12の好適な具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、n−ブタン−1,4−ジイル基、n−ペンタン−1,5−ジイル基、n−ヘキサン−1,6−ジイル基、n−ヘプタン−1,7−ジイル基、n−オクタン−1,8−ジイル基、n−ノナン−1,9−ジイル基、n−デカン−1,10−ジイル基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0045】
13は、−OH、−O−R14、又は−NH−R14であり、R14は、水酸基、シアノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される1以上の官能基で置換された炭化水素基である。
14の基の主骨格を構成する炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族基の炭素原子数は1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
直鎖状、又は分岐鎖状の脂肪族基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
環状の脂肪族基の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等のシクロオクチル基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基や、これらのポリシクロアルカンのC1−C4アルキル置換体から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、及びビフェニリル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基は、メチル基、エチル基等のC1−C4アルキル基で置換されていてもよい。
【0046】
式(a4)で表される化合物に由来する構成単位の特に好ましい具体例としては、下記a4−1〜a4−9の構成単位が挙げられる。下記a4−1〜a4−9の単位の中では、a4−1〜a4−4の構成単位がより好ましい。
【化4】
【0047】
(A)樹脂における官能基Iの量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
(A)樹脂に含まれる全構成単位中の、官能基Iを有する構成単位のモル比率は、0.1〜50モル%が好ましく、1〜20モル%がより好ましく、1〜15モル%が特に好ましい。
【0048】
(官能基II)
官能基IIは親水性基である。親水性基は、従来から、当業者に親水性基であると認識されている官能基であれば特に限定されず、その中から適宜選択できる。
【0049】
親水性基の具体例としては、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基等)、アミノ基、4級アンモニウム塩基、カルボキシ基、水酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びスルホン酸基等があげられる。また、これらの基を含む有機基も親水性基として好ましい。
【0050】
親水化効果が優れる点で、親水性基としては、下記式(a1):
−NH−R・・・(a1)
(式(a1)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基、又は水素原子である。)
で表される基が好ましい。
について、アミノ基は、カチオン性基に該当し、スルホン酸基、及びホスホン酸基はアニオン性基に該当する。水酸基のうちフェノール性水酸基はアニオン性基に該当する。
【0051】
式(a1)で表される親水性基の具体例としては、アミノ基と、下記式で表される基と、が挙げられる。
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
上記の式(A1)で表される親水性基の具体例のうち、より好ましい基としては、以下の基が挙げられる。
【化9】
【0056】
上記の式(a1)で表される親水性基の具体例のうち、特に好ましい基としては、以下の基が挙げられる。
【化10】
【0057】
前述の通り(A)樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂のような不飽和二重結合を有する単量体の重合体が好ましい。
この場合、(A)樹脂が、官能基IIを有する構成単位として、下式(a5):
CH=CR−CO−NH−R・・・(a5)
(式(a5)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基、又は水素原子であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
で表される単量体に由来する構成単位を含むのが好ましい。
【0058】
式(a5)中、Rについては、前述した通りである。
【0059】
式(a5)で表される単量体に由来する、親水性基を有する単位の特に好ましい具体例としては、下記a5−1〜a5−5の単位が挙げられる。下記の単位の中では、a5−1〜a5−4の単位がより好ましい。
【化11】
【0060】
(A)樹脂に含まれる全構成単位中の、官能基IIを有する構成単位のモル比率は、50〜99.9モル%が好ましく、60〜99モル%がより好ましく、70〜99モル%が特に好ましい。
ただし、官能基IIを有する構成単位が水酸基、シアノ基、カルボキシ基のいずれか1つの基を含む場合、重合体に含まれる官能基IIを有する構成単位の比率は100モル%であってもよい。
【0061】
なお、(A)樹脂は、アニオン性基、カチオン性基、官能基I、及び官能基IIを有さない構成単位を含んでいてもよい。
【0062】
(A)樹脂が不飽和結合を有する単量体の重合体である場合、アニオン性基、カチオン性基、官能基I、及び官能基IIを有さない構成単位を与える化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ペンチル(メタ)アクリルアミド、N−イソペンチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ペンチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びクロルスチレン等が挙げられる。
【0063】
(A)樹脂の質量平均分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)樹脂の質量平均分子量は、表面処理液における溶解性や、所望する表面処理効果を得やすい点から、50,000〜3,000,000が好ましく、50,000〜2,000,000がより好ましい。
なお、(A)樹脂の質量平均分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0064】
表面処理液における(A)樹脂の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。表面処理液における(A)樹脂の含有量は、被処理体の表面への(A)樹脂の過度の付着を防ぎつつ、所望する表面処理効果を得やすいことから、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜7質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0065】
<(B)イオン性化合物>
(B)イオン性化合物は、塩であっても、アニオン化されうるアニオン性の化合物であっても、カチオン化されうるカチオン性の化合物であってもよい。(B)イオン性化合物は、有機化合物であっても無機化合物であってもよいが、(A)樹脂との親和性等の点から有機化合物であるのが好ましい。
【0066】
(B)イオン性化合物は、良好な親水化の効果を得やすいことから、カルボキシ基、ホスホン酸基、及び四級アンモニウム基から選択される1種以上を有する化合物であるのが好ましい。
【0067】
(B)イオン性化合物の分子量は、500以下であるのが好ましく、400以下であるのがより好ましく、300以下であるのが特に好ましい。
このような範囲内の分子量を有する低分子量の(B)イオン性化合物を用いる場合、(B)イオン性化合物が被処理体の表面に均一に付着しやすく、良好な親水化の効果を得やすい。
【0068】
(B)イオン性化合物は、芳香族基を含む芳香族化合物であってもよく、芳香族基を含まない非芳香族化合物であってもよい。表面処理液への溶解性の点から、(B)イオン性化合物は、非芳香族化合物であるのが好ましい。非芳香族化合物としては、有機化合物(脂肪族化合物)でも無機化合物であってもよい。
(B)イオン性化合物の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノエトキシエタノール、エチレンジアミン、ピロリジン、ピペラジン、モルホリン、コリン、及びこれらの塩類等のカチオン性化合物;エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1,2−カルボキシ−1,2−ホスホノエタン、2−ホスホノエタン−1−スルホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アコニット酸、及びこれらの塩類等のアニオン性化合物;ベタイン(例えば、トリメチルグリシン)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン四酢酸等の両性化合物;が挙げられる。
【0069】
(B)イオン性化合物として好適な化合物としては、−COO基、−SO基、又は−PO基等のアニオン性基と、カチオン性基としての4級アンモニウム基とを同一分子内に有する両性化合物(B−a)、少なくとも1つの水酸基含有有機基で窒素原子が置換された4級アンモニウム塩(B−b)、2以上のカルボキシ基を有する脂肪族ポリカルボン酸化合物(B−c)が挙げられる。
上記両性化合物(B−a)の好ましい例としては、下記式(b1)で表される化合物が挙げられる。上記4級アンモニウム塩(B−b)の好ましい例としては、下記式(b2)で表される化合物が挙げられる。上記脂肪族ポリカルボン酸化合物(B−c)の好ましい例としては、下記式(b3)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
(式(b1)及び式(b2)中、Rb1、Rb2、及びRb3は、それぞれ独立に水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキル基であり、Rb4は水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキレン基である。
式(b2)中、Xは1価のアニオンである。
式(b3)中、Rb5、Rb6、Rb7、及びRb8は、それぞれ独立に、単結合であるか、水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、Rb9は水酸基又はホスホン酸基である。)
【0070】
式(b1)中、Rb1、Rb2、及びRb3は、水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキル基である。置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
b1、Rb2、及びRb3としては、無置換のアルキル基が好ましい。Rb1、Rb2、及びRb3の好適な具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基である。
【0071】
式(b1)中、Rb4は、水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキレン基である。置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
b4としては、無置換のアルキレン基が好ましい。Rb4の好適な具体例は、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、及びプロパン−2,2−ジイル基であり、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、及びプロパン−1,3−ジイル基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0072】
式(b1)で表される化合物としては、いわゆるベタインが好ましく、具体例としてはトリメチルグリシンが挙げられる。
【0073】
式(b2)中、Rb1、Rb2、Rb3、及びRb4は、式(b1)について説明した通りである。式(b2)中のRb4は、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、及びプロパン−1,3−ジイル基が好ましく、エタン−1,2−ジイル基がより好ましい。
【0074】
式(b2)中のXは1価のアニオンであり、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適なアニオンとしては、水素イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、酒石酸イオン等が挙げられる。
【0075】
式(b2)で表される化合物の好適な具体例としては、水酸化コリン、塩化コリン、重酒石酸コリンが挙げられる。
【0076】
式(b3)中、Rb5、Rb6、Rb7、及びRb8は、それぞれ独立に、単結合であるか、水酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜3のアルキレン基である。置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
b5、Rb6、Rb7、及びRb8としては、単結合、又は無置換のアルキレン基が好ましい。無置換のアルキレン基の好適な具体例は、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、及びプロパン−2,2−ジイル基であり、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、及びプロパン−1,3−ジイル基が好ましく、メチレン基、及びエタン−1,2−ジイル基がより好ましい。
【0077】
式(b3)で表される化合物の好適な具体例としては、クエン酸、及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸が挙げられる。
【0078】
表面処理液における(B)イオン性化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。表面処理液における(B)イオン性化合物の含有量は、所望する親水化効果を得やすいことから、(A)樹脂の質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
【0079】
<(C)強酸>
表面処理液は、(C)強酸を含んでいてもよい。(C)強酸のpKaは1以下である。なお、pKaは水中での値である。
(C)強酸は、(A)樹脂の被処理体の表面への付着又は結合を促進させる。
(C)強酸の種類は、pKaが1以下である限り特に限定されない。(C)強酸としては、pKaが1以下である酸を2種以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
(C)強酸の好適な例としては、フッ素化脂肪族カルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸等)、フルオロスルホン酸、炭素原子数1〜30のアルカンスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等)、アリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、炭素原子数1〜30のフルオロアルカンスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸及びトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)、ビススルホニルイミド化合物、2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホニルイミド化合物、及びN−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミド等が挙げられる。
【0081】
これらの(C)強酸が、フルオロアルキル基、又はフルオロアルキレン基を含む場合、これらの基は、部分的にフッ素化されたフルオロアルキル基、又はフルオロアルキレン基であってもよく、完全にフッ素化されたパーフルオロアルキル基、又はパーフルオロアルキレン基であってもよい。
【0082】
これらの(C)強酸の中では、フルオロスルホン酸、炭素原子数1〜30のアルカンスルホン酸、炭素原子数1〜30のフルオロアルカンスルホン酸、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド酸、2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホンイミド酸、及びN−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミドが好ましく、炭素原子数1〜30のフルオロアルカンスルホン酸、ビススルホニルイミド化合物、2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホニルイミド化合物、及びN−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミドが好ましい。
【0083】
炭素原子数1〜30のフルオロアルカンスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸等が好ましい。
【0084】
ビススルホニルイミド化合物としては、下式(C1)で表される化合物が好ましい。
【化13】
式(C1)中、X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの電子吸引性基で置換された炭化水素基を表す。炭化水素基は、式(C1)で表される化合物の強酸性が損なわれない範囲で、電子吸引性基以外の種々の基で置換されていてもよい。X及びXの炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜7が特に好ましい。
電子吸引性基で置換された炭化水素基としては、フッ素化アルキル基、ニトロ基を有するアリール基が好ましい。フッ素化アルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。フッ素化アルキル基は、完全にフッ素化されたパーフルオロアルキル基であるのが好ましい。ニトロ基を有するアリール基としては、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、及びp−ニトロフェニル基が好ましく、p−ニトロフェニル基がより好ましい。
【0085】
式(C1)で表される化合物の好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
【化14】
【0086】
2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホニルイミド化合物としては、下式(C2)で表される化合物が好ましい。
【化15】
【0087】
式(C2)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。Xの炭素原子数は、2〜6が好ましく、3〜5がより好ましく、3が特に好ましい。
【0088】
式(C2)で表される化合物の好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
【化16】
【0089】
N−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミドとしては、下式(C3)で表される化合物が好ましい。
【化17】
式(C3)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。Xの炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
は、炭化水素基である。炭化水素基について、前述のR14の基の主骨格を構成する炭化水素基と同様である。
【0090】
式(C3)で表される化合物の好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
【化18】
【0091】
表面処理液中の(C)強酸の含有量は、表面処理を良好に行うことが出来る限り特に限定されない。表面処理液中の(C)強酸の含有量は、(A)樹脂100質量に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部が特に好ましい。
【0092】
<その他の成分>
表面処理液は、本発明の目的を阻害しない範囲で、(A)樹脂、(B)イオン性化合物、(C)強酸、及び(S)含水溶媒以外の種々の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、着色剤、界面活性剤、消泡剤、粘度調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0093】
<(S)含水溶媒>
表面処理液は、(S)含水溶媒を必須に含む、(S)含水溶媒は、水であってもよく、有機溶媒の水溶液であってもよい。
(S)含水溶媒中の水の含有量は、例えば、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0094】
(S)含水溶媒が含んでいてもよい有機溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;
ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、ぎ酸−n−ペンチル、酢酸−i−ペンチル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸−i−プロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸−n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
β−プロピロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−ペンチロラクトン等のラクトン類;
等が挙げられる。
上記の有機溶媒には、水と自由に混合しない非水溶性有機溶媒も含まれる。非水溶性有機溶媒は水溶性有機溶媒とともに用いることで、(S1)含水溶媒中に溶解し得る。
【0095】
<表面処理液の調製方法>
表面処理液を調製する方法は特に限定されない。表面処理液は、典型的には、それぞれ所定量の(A)樹脂と、(B)イオン性化合物と、(S)含水溶媒と、必要に応じて、(C)強酸やその他の成分を、均一に混合することにより調製される。
【0096】
≪親水化処理方法≫
以上説明した表面処理液を用いる親水化処理方法は、通常、被処理体の表面への表面処理液の塗布を含む。表面処理液の塗布方法は特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられる。被処理体が基板である場合、表面処理液を均一に塗布することで、基板表面を均一に親水化又は疎水化できることから、塗布方法としてスピンコート法が好ましい。
【0097】
被処理体の表面処理液が塗布される面の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
有機材料としては、PET樹脂、PBT樹脂等のポリエステル樹脂、各種ナイロン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂等、ポリジメチルシロキサン等の種々の樹脂材料が挙げられる。
また、種々のレジスト材料に含まれる感光性の樹脂成分や、アルカリ可溶性の樹脂成分も有機材料として好ましい。
無機材料としては、ガラス、シリコンや、銅、アルミニウム、鉄、タングステン等の種々の金属が挙げられる。金属は、合金であってもよい。
【0098】
被処理体の形状は特に限定されない。被処理体は平坦な基板であってもよく、例えば、球状や、柱状等の立体形状であってもよい。また、被処理体の表面は、平滑であっても、規則的又は不規則な凹凸を有していてもよい。
【0099】
表面処理液を、被処理体の表面に塗布した後は、必要に応じて塗布膜を加熱して(S)含水溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0100】
被処理体上の表面処理液が塗布された箇所は必要に応じてリンスされてもよい。前述の通り、所定の官能基を有する(A)樹脂を含む表面処理液を被処理体の表面に塗布すると、被処理体の表面に(A)樹脂が良好に付着又は結合する。
しかし、被処理体の表面には、当該表面に付着又は結合していない(A)樹脂もある程度の量存在している。したがって、(A)樹脂の、被処理体の表面特性に与える影響を低減させるために、リンスにより、被処理体の表面に付着又は結合していない(A)樹脂を洗い流してもよい。
【0101】
表面処理液は、(S)含水溶媒を含む。このため、リンスは水により行うのが好ましい。また、(S)含水溶媒が有機溶媒を含む場合、(S)含水溶媒と同様の有機溶媒の水溶液を用いてリンスを行うのも好ましい。
【0102】
表面処理液の塗布後、又はリンス後に、被処理体の表面を必要に応じて乾燥させることにより、良好に親水化された物品が得られる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
〔実施例1〜9〕
(A)樹脂として下記構造の樹脂を、濃度1質量%でエタノール水溶液に溶解させた溶液を調製した。エタノール水溶液のエタノール濃度は90質量%であった。
下記構造式において、各構成単位中の括弧の右下の数値は、樹脂中における各構成単位のモル比率(%)を表す。また、下記構造の樹脂の質量平均分子量は、800,000である。
【0105】
【化19】
【0106】
得られた溶液に、表1に記載の量((A)樹脂の量に対する質量%)及び種類のイオン性化合物を溶解させて表面処理液を得た。イオン性化合物の種類は下記の通りである。
B−I:2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸
B−II:2−アミノエタノール
B−III:無水ベタイン
B−IV:水酸化コリン
【0107】
実施例1〜9では、被処理体としてポリジメチルシロキサンからなる表面を備える基板を用いた。基板に対して、表面処理液をディップコートした。ディップコート後、80℃で5分間基板を乾燥させた。乾燥後の基板表面を純水によりリンスした。リンス後、窒素ガスを吹き付けて基板表面を乾燥させた後、2000ms後の基板表面の水の接触角を測定した。測定結果を表1に記す。
【0108】
〔比較例1〕
イオン性化合物を用いないことの他は、実施例と同様にして表面処理液を得た。
得られた表面処理液を用いて、実施例と同様にしてポリジメチルシロキサンからなる表面を備える基板の表面処理を行い、基板表面を乾燥させた後、2000ms後の基板表面の水の接触角を測定した。測定結果を表1に記す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1によれば、(A)樹脂と、(B)イオン性化合物と、(S)含水溶媒とを含み、(A)樹脂が、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有する水溶性の樹脂であって、(B)イオン性化合物が、水溶性の非重合体化合物である表面処理液を用いることにより、被処理体の表面を良好に親水化できることが分かる。