(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図面において、同一部(共通する構成要素)には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
≪実施形態1≫
〔自動分析装置の全体構成〕
図1は、本発明の一実施形態の自動分析装置100の概略を示す平面図である。自動分析装置100は、試料と試薬とを混合し、混合した測定試料の分析を自動で行う装置である。
図1に示されるように、自動分析装置100は、搬送ライン1と、試料を吸引する試料プローブ4と、反応容器供給庫6と、反応容器供給機構7と、反応容器テーブル9と、反応測定装置10と、試薬保冷庫8と、試薬プローブ12と、試薬攪拌棒13と、試薬ディスク14を有する。
【0011】
搬送ライン1は、例えば遠心分離等がされた試料が入っている試料容器3を搬送するラインである。本実施形態では、試料容器3は、1つの試料容器搬送ラック2に複数個がまとめて保持されて、搬送ライン1上を搬送される。なお、試料は、例えば、患者等から採取した血液や尿等である。
【0012】
試料プローブ4は、アームを有して、試料容器3に入った試料の吸引動作及び吐出動作を行うものである。試料プローブ4の先端には、試料を吸引して吐出するノズルが設けられている。
【0013】
反応容器供給庫6は、未使用の複数の反応容器5を保持するものである。反応容器供給機構7は、反応容器供給庫6が保持する反応容器5を反応容器テーブル9へ供給する機構を有する。反応容器テーブル9は、供給された反応容器5を、自らを回転させることで試薬プローブ12から試薬が吐出される試薬吐出位置まで移動させる機構を有する。
なお、反応容器5は、反応容器供給機構7によって、反応容器供給庫6から、反応容器テーブル9へと置かれる。反応容器5は、反応容器テーブル9が回転することによって、反応容器テーブル9の試薬吐出位置、試料吐出位置、反応測定位置、と順番に移動される。ちなみに、試料プローブ4が吐出した試料と、試薬プローブ12が吐出した試薬とは、反応容器5で混合し、反応容器テーブル9に所定時間放置された後、反応測定装置10によって、反応状態が測定される。
【0014】
試薬保冷庫8は、吸熱手段101によって内部が所定温度以下に調整されている保冷庫であり、試薬が入った複数の試薬容器11を収容している。試薬保冷庫8の内部の温度は、所定温度、例えば、室温より低めの温度(一例として5℃〜10℃)に保たれている。これにより、試薬を保冷し、試薬の劣化を防ぐことが可能になる。試薬保冷庫8は、円筒状の形状であり、その上部は試薬保冷庫蓋15によって覆われている。この試薬保冷庫蓋15には、吸引孔16が形成されている。なお、試薬保冷庫8内には試薬ディスク14が備わっており、この試薬ディスク14に複数の試薬容器11が置かれている。
【0015】
また、
図1に示されるように、この自動分析装置100には、試薬保冷庫8と反応容器テーブル9とに跨るようにアーム20が設けられており、このアーム20には、試薬プローブ12と試薬攪拌棒13が当該アーム20に沿って水平方向に移動できるように備わっている。
【0016】
試薬プローブ12が試薬を吸引するための吸引孔16は、例えば貫通孔を有する筒状部材で構成されている。この筒状部材が試薬保冷庫8の上部及び試薬保冷庫蓋15を貫通(試薬保冷庫8の内と外とを連通)して設けられることで吸引孔16が形成されている。なお、試薬プローブ12は、前記のアーム20に沿っての水平方向の移動と共に上下方向の移動が可能であり、試薬容器11に入った試薬の吸引動作及び吐出動作を行う。試薬プローブ12の先端には、試薬を吸引して吐出するノズルが設けられる。また、試薬攪拌棒13も、前記のアーム20に沿っての水平方向の移動と共に上下方向の移動が可能である。
【0017】
試薬容器11の上端は開放されている。試薬攪拌棒13は、試薬容器11に入った試薬を攪拌する試薬攪拌位置まで移動される。そして、試薬攪拌棒13は、吸引孔16と試薬容器11の上端とを介して試薬容器11へ挿入される。そして、試薬攪拌棒13は、挿入された状態で回転されることで、試薬容器11に入った試薬を攪拌する。試薬を攪拌した試薬攪拌棒13は、試薬容器11から引き抜かれる。
【0018】
その後、試薬プローブ12は、試薬容器11から試薬を吸引する試薬吸引位置まで移動される。そして、試薬プローブ12は、吸引孔と試薬容器11の上端とを介して試薬容器11へ挿入される。そして、試薬プローブ12は、挿入された状態で試薬容器11から試薬を吸引する。
試薬を吸引した試薬プローブ12は、試薬容器11から引き抜かれる。その後、試薬プローブ12は、試薬吐出位置(反応容器テーブル9の所定位置)まで移動され、反応容器5内に試薬を吐出する。
試薬が吐出された後、反応容器テーブル9は、自らを回転させることで、反応容器5を、試料プローブ4から試料が吐出される試料吐出位置まで移動させる。
【0019】
搬送ライン1は、試料容器搬送ラック2に保持された試料容器3を、試料プローブ4から試料が吸引される試料吸引位置まで搬送する。試料容器3には、検査対象の試料が入っている。また、試料容器3は、上端が開放されている。試料容器3が、搬送ライン1によって試料吸引位置まで搬送された後、試料プローブ4は、試料容器3の上端から試料容器3内に挿入される。そして、試料プローブ4は、挿入された状態で試料容器3から試料を吸引する。
【0020】
試料を吸引した後、試料プローブ4は、試料容器3から引き抜かれる。その後、試料プローブ4は、反応容器テーブル9上の試料吐出位置まで移動される。試料吐出位置まで移動された後、試料プローブ4は、吸引した試料を反応容器5(試薬が入っている)へ吐出する。
図示しない攪拌機構は、反応容器5に吐出された試薬と試料とを攪拌する。攪拌された試薬と試料とは所定時間放置される。放置された後、反応容器5は、反応測定装置10まで移動される。そして、反応測定装置10は、移動された反応容器5に入った試薬と試料との反応状態を測定する。
なお、試薬容器11は試薬ディスク14上に複数個設置されており試薬ディスク8が回転することによって、試薬攪拌棒13および試薬プローブ12で攪拌、吸引する試薬を入れ替えることができる。
【0021】
〔自動分析装置の結露防止に関する構成〕
次に、
図2乃至
図4を参照して、自動分析装置100の詳細な構成、即ち低消費電力かつ簡易な構成で結露の防止を可能にする構成について説明する。
【0022】
図2は、
図1に示す自動分析装置におけるA−A断面図である。
図3は、
図2に示す自動分析装置におけるC−C矢視概略図であり、切替手段が開いている状態での暖気の流れを示している。
図4は、
図2に示す自動分析装置におけるB−B矢視概略図であり、切替手段が開いている状態で吸引孔を構成する筒状部材に暖気があたっているところを示している。
図2〜
図4に示す破線矢印は、暖気の流れを示し、
図2に示す実線矢印は、外気の流れを示している。
【0023】
図2に示すように、自動分析装置100は、上述した構成要素の他にも、吸熱手段101、放熱手段102、暖気手段(暖気ダクト)103、送風手段104、排気ダクト105、切替手段106、制御装置107、吸引孔温度センサ111、保冷庫内温度センサ112、保冷庫外温度センサ113、等を備える。
【0024】
温度センサは、自動分析装置100の複数箇所に取り付けられ、各箇所の温度を測定する。この温度センサの内、吸引孔温度センサ111は、吸引孔16(吸引孔16を構成する筒状部材)の外周表面又は内周表面に取り付けられ、吸引孔16の温度(表面温度)を測定する。また、保冷庫内温度センサ112は、試薬保冷庫8の内部であって、試薬保冷庫蓋15側に取り付けられ、試薬保冷庫8の内部の雰囲気温度を測定する。保冷庫外温度センサ113は、試薬保冷庫蓋15の表面に取り付けられ、試薬保冷庫蓋15の表面温度を測定する。
【0025】
吸熱手段101は、試薬保冷庫8の底部に取り付けられており、試薬保冷庫8の内部の熱を吸収することによって、試薬保冷庫8の内部の温度を下げるものである。このような吸熱手段101を実現する手段としては、例えば、ペルチェ素子等が一例として挙げられる。本実施例におけるペルチェ素子(吸熱手段101)の能力としては、吸熱面が3℃、発熱面が45℃程度のものを想定しており、その場合の試薬保冷庫温度は6.5℃程度を想定している。
【0026】
放熱手段102は、吸熱手段101の下部に設けられている。吸熱手段101によって吸熱された熱は、放熱手段102によって放熱される。放熱手段102は熱伝導率の高い部材で構成されており、かつ表面積が大きくなるような形状とすることが望ましい。また放熱手段102に接続されるように送風手段104が設けられている。送風手段104は、外気を放熱手段102に導き、放熱手段102の熱と外気とを混合することで外気温よりも高温の空気である暖気Hを生成する。送風手段104は放熱手段102に外気をあてて放熱させることができれば良く、送風手段104の配置位置は放熱手段102の下方でも側方でも良い。言い換えると、放熱手段102は、送風手段104の吸入側に配置されていても吐出側に配置されていても良い。
【0027】
ちなみに、放熱手段102は(吸熱手段101も同じであるが)、熱伝導率の高い材料として、例えば、アルミニウム、鉄、銅、等の金属材料で構成されている。また、放熱手段102は、表面積をできるだけ大きくした形状とすることが好ましい。放熱面積を増加させることで、放熱量を大きくすることができる。
【0028】
また、
図2、
図3に示されるように、本実施形態の自動分析装置100は、暖気ダクト103、排気ダクト105、及び切替手段106を有する。排気ダクト105は、放熱手段102の一方の側部に設けられており、対向する他方の側部には暖気ダクト103が設けられている。また放熱手段102と暖気ダクト103との間には切替手段106が設けられている。切替手段106は暖気ダクト103の断面全てを遮蔽する大きさの弁を備えており、その弁をアクチュエータによって駆動させて暖気ダクト103内を閉鎖もしくは開放するものである。アクチュエータとしては電気モータやソレノイド等を使用する。つまり切替手段106が開放しているときは暖気Hが排気ダクト105と暖気ダクト103の双方に流れるが、切替手段106が閉鎖しているときは排気ダクト105のみに暖気が流れることとなる。つまり、切替手段106によって、暖気ダクト103が開放される場合であっても、閉鎖される場合であっても、排気ダクト105は、暖気を内部に流し、暖気を外部へと排出する。
【0029】
なお、暖気ダクト103は、
図4のB−B断面図に示すように、試薬保冷庫8に設けられている吸引孔16(吸引孔16を構成する筒状部材)の外周部を通って外部へとつながっている。吸引孔16を構成する筒状部材は、熱伝導率の高い部材で構成された円筒形状をしており、試薬保冷庫蓋15を貫通して取り付けられている(暖気が吸引孔16を介して試薬保冷庫8の内部に流れ込まないようにされている)。一方、排気ダクト105は、吸引孔16を経由せずに自動分析装置100の外部につながっている。
【0030】
即ち、暖気ダクト103は、放熱手段102の側部に接続されて設けられ、試薬保冷庫8の下部、試薬保冷庫8の側部、吸引孔16、試薬保冷庫8の上部を通過して、外部へとつながっている。暖気ダクト103は、切替手段106によって開放される場合、暖気を内部に流し、暖気を外部へと排出する(
図2〜
図4の破線矢印参照)。また、暖気ダクト103は、切替手段106によって閉鎖される場合、暖気を内部に流さず、暖気を外部へと排出しない。(暖気は排気ダクト105のみを流れ外部に排出される)。つまり、切替手段106の駆動に伴って、暖気ダクト103内部における暖気の流れは制御される。
【0031】
暖気ダクト103の内部に暖気が流れる場合、暖気ダクト103は、吸引孔16を加温する。吸引孔16の温度が所定温度以下であれば、暖気ダクト103は、吸引孔16が所定温度を超えるまで、吸引孔16を加温する。暖気ダクト103によって吸引孔16が加温されることで、吸引孔16の温度は、所定温度を超える温度に保たれる。これにより、自動分析装置100(試薬保冷庫8)において、吸引孔16に発生する結露を防止することが可能になり、試薬保冷庫8内での結露(蓋がされていない試薬容器11の内部に結露が滴下すること)が防止される。
【0032】
制御装置107は、吸熱手段101、送風手段104、切替手段106、吸引孔温度センサ111、保冷庫内温度センサ112、保冷庫外温度センサ113等と電気配線を介して接続されている。制御装置107は、自動分析装置100の起動後に吸熱手段101と送風手段104を起動させる。その後、吸引孔温度センサ111、保冷庫外温度センサ113、保冷庫内温度センサ112から得た温度情報により、切替手段106を駆動させる。
【0033】
即ち、制御装置107は、吸引孔温度センサ111を介して、吸引孔16の温度を測定し、取得した温度情報に基づいて、暖気の流れを制御する(切替手段106の駆動を制御する)。また、制御装置107は、暖気の流れを制御することで、吸引孔16の温度を調整する。例えば、吸引孔16の温度が所定温度(露点閾値)以下の場合、制御装置107は、暖気ダクト103を開放し、吸引孔16の温度が所定温度(露点閾値)を超えるまで、吸引孔16に暖気を流す。また、吸引孔16の温度が所定温度(露点閾値)より大きい場合、制御装置107は、暖気ダクト103を閉鎖し、吸引孔16に暖気を流さない。
【0034】
ここで、露点閾値は、露点温度(水蒸気を含む空気を冷却した場合に、結露が発生する温度)から温度余裕をとった値に設定する。例えば、温度32℃、湿度85%の環境下での露点温度は29℃であるため、温度余裕を2℃とすると、露点閾値は31℃となる。吸引孔16の温度が、この露点閾値(例えば、31℃)を常に超えるように、制御装置107が暖気の流れを制御することで、吸引孔16における結露を防止することができる。なお、制御装置107は、保冷庫外温度センサ113によって測定された試薬保冷庫蓋15の表面温度に基づいて、露点温度を算出し、別途、設定した温度余裕と併せて、露点閾値を自動設定する。
【0035】
制御装置107は、保冷庫内温度センサ112を介して試薬保冷庫8の内部の温度を測定し、取得した温度情報に基づいて、試薬保冷庫8の内部の温度を調整する(吸熱手段101を制御する)。例えば、試薬保冷庫8の内部の温度が所定温度(保冷閾値)以上の場合、制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が所定温度(保冷閾値)未満となるように、吸熱手段101を制御する。また、試薬保冷庫8の内部の温度が所定温度(保冷閾値)より小さい場合、制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の該温度を維持するように、吸熱手段101を制御する。
【0036】
ここで、保冷閾値とは、試薬容器11の内部に試薬を保管する際の、推奨温度の上限値である。つまり、保冷閾値未満で試薬を保管することで、試薬の効果は使用期限内において担保される。
【0037】
制御装置107は、保冷庫外温度センサ113を制御して、試薬保冷庫8の外部の温度を測定し、取得した温度情報に基づいて、各種装置を適切に制御する。例えば、制御装置107は、試薬保冷庫蓋15の表面温度に基づいて、露点温度を算出し、吸引孔16の温度が露点閾値を超えるように調整する。
【0038】
制御装置107は、吸熱手段101を制御して、試薬保冷庫8の内部の温度を調整し、試薬保冷庫8の内部を冷却する。例えば、制御装置107が吸熱手段101を起動させると、吸熱手段101が、試薬保冷庫8の内部の熱を吸収することで、試薬保冷庫8の内部の温度は下がっていく。
【0039】
制御装置107は、送風手段104を制御して、暖気を発生させる。例えば、制御装置107が送風手段104の電源をオンすると、外気が放熱手段102へと導かれ、外気が吸熱手段101によって吸収された熱で暖められることで、暖気が発生する。
【0040】
制御装置107は、切替手段106の駆動を制御することで、暖気の流れを制御する。例えば、制御装置107が、暖気ダクト103を開放する方向へと、切替手段106を駆動制御すると、暖気は、暖気ダクト103及び排気ダクト105を流れる。また、例えば、制御装置107が、暖気ダクト103を閉鎖する方向へと、切替手段106を駆動制御すると、暖気は、排気ダクト105のみを流れる。
【0041】
本実施形態に係る自動分析装置100は、試薬保冷庫の冷却によって発生した暖気を、吸引孔の加温に利用する。これにより、従来のように、試薬保冷庫を冷却するための機器と、吸引孔を加温するための機器とを、自動分析装置100に別々に搭載せずに済み、簡易な構成で、消費電力を低減させた自動分析装置を100提供することができる。
なお、切替手段106について、全開(開放)か全閉(閉鎖)で説明したが、ステッピングモータ等によって弁の開度を調整して、暖気ダクト103と排気ダクト105の流量比を変更できるようにしても良いことは言うまでもない。
【0042】
〔フローチャート〕
次に、
図5を参照して、吸引孔16の加温プロセスについて説明する。
図5は、自動分析装置100が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS201において、自動分析装置100の電源がオンし、自動分析装置100が起動する。
【0044】
ステップS202において、吸熱手段101が起動し、吸熱手段101は、試薬保冷庫8の内部の熱を吸収することによって、試薬保冷庫8の内部を冷却する。また、送風手段104が起動し、送風手段104は、放熱手段102に向かって外気を送風する。放熱手段102は、外気が温められて発生した暖気を放熱する。
【0045】
ステップS203において、制御装置107は、切替手段106の駆動を制御して、暖気ダクト103を閉鎖する。これにより、暖気は、排気ダクト105のみを流れて、外部へと排出される。
【0046】
ステップS204において、制御装置107は、保冷庫内温度センサ112を介して得られた試薬保冷庫8の内部の温度が、保冷閾値以上であるか否かを判定する。制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が、保冷閾値以上であると判定した場合(ステップS204→Yes)、ステップS205の処理へと進む。制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が、保冷閾値未満であると判定した場合(ステップS204→No)、ステップS206の処理へと進む。
【0047】
ステップS205において、制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が保冷閾値未満となるように、吸熱手段101を制御して、試薬保冷庫8の内部の温度が保冷閾値未満に下がるまで、待機する。
【0048】
ステップS206において、制御装置107は、吸引孔温度センサ111を介して得られた吸引孔16の温度が、露点閾値以下であるか否かを判定する。制御装置107は、吸引孔16の温度が露点閾値以下であると判定した場合(ステップS206→Yes)、ステップS207の処理へと進む。制御装置107は、吸引孔16の温度が露点閾値より大きいと判定した場合(ステップS206→No)、ステップS201の処理へと戻る。
【0049】
ステップS207において、制御装置107は、切替手段106の駆動を制御して、暖気ダクト103を開放する。これにより、暖気は、暖気ダクト103及び排気ダクト105を流れて、外部へと排出される。
【0050】
ステップS208において、暖気ダクト103は、内部を流れる暖気で、吸引孔16を加温する。吸引孔16の温度が露点閾値を超えるまで、ステップS206〜ステップS208の処理は、繰り返される。
【0051】
上述のように、自動分析装置100は、吸引孔16の温度が露点閾値以下の場合、暖気ダクト103を流れる暖気によって、吸引孔16の温度が所定温度を超えるまで、吸引孔16を加温する。このように、吸引孔16の温度に応じて加温制御することで、吸引孔16の温まりすぎを防ぎつつ、吸引孔16の温度を、結露が発生しない温度に保つことができる。
【0052】
〔変形例〕
次に、本実施形態に係る自動分析装置100の変形例について説明する。
図6は、本実施形態の変形例に係る自動分析装置200の構成を示す図である。
【0053】
変形例の自動分析装置200は、
図2に示す例とは異なり、放熱手段102の下部に送風手段104を備えない。また、切替弁としての切替手段106を備えない。変形例では、送風手段108aと送風手段108bを備え、この2つの送風手段108aと送風手段108bに、
図2の例の送風手段104と切替手段106の役割を持たせるようにしている。つまり、「暖気ダクト103と排気ダクト105との流量比を変更又は流れを切替え可能な切替手段」を具現化したものである。
【0054】
送風手段108aは、暖気ダクト103の終端近傍に取り付けられ、送風手段108bは、排気ダクト105の終端近傍に取り付けられる。送風手段108a,送風手段108bは、制御装置107によって、オンオフ制御されることで、暖気の流れを切り替える。
【0055】
例えば、送風手段108aがオンし、送風手段108bがオンすると、暖気が暖気ダクト103及び排気ダクト105を流れるため、暖気ダクト103は、吸引孔16を加温する。また、例えば、送風手段108aがオフし、送風手段108bがオンすると、暖気が排気ダクト105のみを流れるため、暖気ダクト103は、吸引孔16を加温しない。
【0056】
制御装置107は、送風手段108a,送風手段108bを制御することで、暖気の流れを切り替える。例えば、制御装置107が、送風手段108a及び送風手段108bがオンとなるように制御すると、暖気は、暖気ダクト103及び排気ダクト105を流れる。また、例えば、制御装置107が、送風手段108aがオフ、送風手段108bがオンとなるように制御すると、暖気は、排気ダクト105のみを流れる。
【0057】
即ち、自動分析装置200が備える送風手段108a,送風手段108bは、自動分析装置100が備える送風手段104、切替手段106と同様の機能を有する。自動分析装置200は、2個の送風手段108a,送風手段108bを使い分けることによって、暖気の流れを切り替えて、吸引孔16の温度に応じて、適切なタイミングで、吸引孔16を加温する。これにより、吸引孔16付近に発生する結露を防止することができる。
【0058】
本実施形態の変形例に係る自動分析装置200においても、試薬保冷庫8の冷却によって発生した暖気を、吸引孔の加温に利用する。これにより、従来のように、試薬保冷庫を冷却するための機器と、吸引孔を加温するための機器とを、自動分析装置200に別々に搭載せずに済み、簡易な構成で、消費電力を低減させた自動分析装置200を提供することができる。
【0059】
≪実施形態2≫
〔自動分析装置の構成〕
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る自動分析装置300の構成について説明する。
図8は、
図7に示す自動分析装置300の主要機能のみを抜き出したD−D断面図である。なお、第1実施形態と同一の構成、同一の内容については、説明を省略する。
【0060】
図7に示すように、自動分析装置300は、吸熱手段101、放熱手段102、送風手段104、制御装置107、暖気手段(伝熱ダクト)108、伝熱手段(伝熱板)109、伝熱切替手段110、伝熱吸引孔160(吸引孔16)、吸引孔温度センサ111、保冷庫内温度センサ112、保冷庫外温度センサ113、等を備える。
【0061】
吸引孔温度センサ111は、伝熱吸引孔160の表面外部又は表面内部に取り付けられ、伝熱吸引孔160の表面温度を測定する。保冷庫内温度センサ112は、試薬保冷庫8の内部であって、試薬保冷庫蓋15側に取り付けられ、試薬保冷庫8の内部の雰囲気温度を測定する。保冷庫外温度センサ113は、試薬保冷庫蓋15の表面に取り付けられ、試薬保冷庫蓋15の表面温度を測定する。
【0062】
伝熱吸引孔160(実施形態1の吸引孔16に対応)は、試薬保冷庫蓋15を貫通して設けられ、
図8に示すように、終端が伝熱ダクト108側へ延長された形状となっている。伝熱吸引孔160は、熱伝導率の高い材料で構成され、伝熱板109を介して伝熱ダクト108から伝わる熱によって、露点閾値を超えるまで、温められる。
【0063】
吸熱手段101は、試薬保冷庫8の下部に設けられ、試薬保冷庫8の内部の熱を吸収することによって、試薬保冷庫8の内部を冷却する。放熱手段102は、吸熱手段101の下部に設けられ、吸熱手段101によって吸収された熱に伴って発生した暖気を放熱する。
【0064】
伝熱ダクト108は、熱伝導率の高い材料で構成され、放熱手段102の側部に設けられ、試薬保冷庫8の下部、試薬保冷庫8の側部を通過して、外部へとつながっている。従って、伝熱ダクト108は、試薬保冷庫8の下部から上部へと暖気を流し、外部へと排出する。
【0065】
伝熱板109は、熱伝導率の高い材料で構成され、伝熱ダクト108或いは伝熱吸引孔160の何れか一方に固定される。
図7及び
図8に示す例では、伝熱板109が、伝熱ダクト108に固定されて、伝熱吸引孔160と接続、或いは非接続する構成を一例に挙げて説明するが、伝熱板109が、伝熱吸引孔160に固定されて、伝熱ダクト108と、接続、或いは非接続する構成としても良い。
【0066】
伝熱板109は、伝熱切替手段110によって駆動制御される。伝熱板109が
図7の矢印Z1方向へ駆動すると、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とは、伝熱板109を介して、接続される。伝熱板109が
図7の矢印Z2方向へ駆動すると、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とは、接続されない。
【0067】
例えば、
図8(a)に示すように、伝熱板109が、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とを接続する場合、伝熱板109は、伝熱ダクト108から伝わる熱を、伝熱吸引孔160へと伝える。一方、
図8(b)に示すように、伝熱板109が、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とを接続しない場合、伝熱板109は、伝熱ダクト108から伝わる熱を、伝熱吸引孔160へと伝えない。
【0068】
伝熱板109と伝熱吸引孔160とが接続する場合、伝熱板109は、伝熱ダクト108から伝わる熱で、伝熱吸引孔160を加温する。伝熱吸引孔160の温度が露点閾値以下であれば、伝熱板109は、伝熱吸引孔160が露点閾値を超えるまで、伝熱吸引孔160を加温する。伝熱板109によって伝熱吸引孔160が加温されることで、伝熱吸引孔160の温度は、所定温度を超える温度に保たれる。これにより、自動分析装置300において、伝熱吸引孔160に発生する結露を防止することが可能になる。
【0069】
伝熱切替手段110は、伝熱板109に設けられ、伝熱板109を駆動制御することで、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160との接続又は非接続を切り替える。伝熱切替手段110は、例えば、回転型アクチュエータ、等によって構成される。なお、伝熱切替手段110は、伝熱板109を上下方向に駆動制御しても良いし、伝熱板109を左右方向に駆動制御しても良い。伝熱板109の駆動方向は、特に限定されるものではない。
【0070】
例えば、伝熱切替手段110が、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とを接続する方向へ、伝熱板109を駆動制御する場合、伝熱ダクト108から伝熱吸引孔160へと熱が伝わる。この場合、伝熱吸引孔160は、伝熱ダクト108から伝わる熱で、加温される。一方、伝熱切替手段110が、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とを非接続する方向へ、伝熱板109を駆動制御する場合、伝熱ダクト108から伝熱吸引孔160へと熱が伝わらない。
【0071】
制御装置107は、吸熱手段101、送風手段104、伝熱切替手段110、吸引孔温度センサ111、保冷庫内温度センサ112、保冷庫外温度センサ113等と、電気配線を介して接続される。制御装置107は、自動分析装置300の起動後に、吸熱手段101、送風手段104、伝熱切替手段110を、吸引孔温度センサ111、保冷庫内温度センサ112、保冷庫外温度センサ113等から得た温度情報により制御する。
【0072】
制御装置107は、伝熱切替手段110を制御することで、伝熱板109の駆動を制御する。例えば、制御装置107が、伝熱切替手段110を制御することで、伝熱板109と伝熱吸引孔160とが接続する場合、伝熱ダクト108の内部を流れる暖気によって、伝熱吸引孔160へと熱が伝わる。
【0073】
本実施形態に係る自動分析装置300によれば、試薬保冷庫の冷却によって発生した暖気を、吸引孔の加温に利用する。これにより、従来のように、試薬保冷庫を冷却するための機器と、吸引孔を加温するための機器とを、自動分析装置300に別々に搭載せずに済み、簡易な構成で、消費電力を低減させた自動分析装置300を提供することができる。
【0074】
〔フローチャート〕
次に、
図9を参照して、伝熱吸引孔160の加温プロセスについて説明する。
図9は、自動分析装置300が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS301において、自動分析装置300の電源がオンし、自動分析装置300が起動する。
【0076】
ステップS302において、吸熱手段101が起動し、吸熱手段101は、試薬保冷庫8の内部の熱を吸収することによって、試薬保冷庫8の内部を冷却する。また、送風手段104が起動し、送風手段104は、放熱手段102に向かって外気を送風する。放熱手段102は、外気が温められて発生した暖気を放熱する。
【0077】
ステップS303において、制御装置107は、伝熱切替手段110を制御して、伝熱板109と伝熱吸引孔160とを非接続とする。伝熱ダクト108の内部に暖気が流れていても、伝熱ダクト108から伝熱吸引孔160へと熱は伝わらない。
【0078】
ステップS304において、制御装置107は、保冷庫内温度センサ112を制御して、試薬保冷庫8の内部の温度が、保冷閾値以上であるか否かを判定する。制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が、保冷閾値以上であると判定した場合(ステップS304→Yes)、ステップS305の処理へと進む。制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が、保冷閾値未満であると判定した場合(ステップS304→No)、ステップS306の処理へと進む。
【0079】
ステップS305において、制御装置107は、試薬保冷庫8の内部の温度が保冷閾値未満となるように、吸熱手段101を制御して、試薬保冷庫8の内部の温度が保冷閾値未満に下がるまで、待機する。
【0080】
ステップS306において、制御装置107は、吸引孔温度センサ111を制御して、伝熱吸引孔160の温度が、露点閾値以下であるか否かを判定する。制御装置107は、伝熱吸引孔160の温度が露点閾値以下であると判定した場合(ステップS306→Yes)、ステップS307の処理へと進む。制御装置107は、伝熱吸引孔160の温度が露点閾値より大きいと判定した場合(ステップS306→No)、ステップS301の処理へと戻る。
【0081】
ステップS307において、制御装置107は、伝熱切替手段110を制御して、伝熱板109と伝熱吸引孔160とを接続する。これにより、伝熱ダクト108から、伝熱板109を介して、伝熱吸引孔160へと熱が伝わる。
【0082】
ステップS308において、伝熱ダクト108は、内部を流れる暖気によって発生する熱を、伝熱板109へと伝えて、伝熱吸引孔160を加温する。伝熱吸引孔160の温度が露点閾値を超えるまで、ステップS306〜ステップS308の処理は、繰り返される。
【0083】
上述のように、自動分析装置300は、伝熱吸引孔160の温度が露点閾値以下の場合、伝熱板109を介して、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とを接続することで、伝熱吸引孔160の温度が所定温度を超えるまで、伝熱ダクト108から伝わる熱によって、伝熱吸引孔160を加温する。このように、伝熱吸引孔160の温度に応じて加温制御することで、伝熱吸引孔160の温まりすぎを防ぎつつ、伝熱吸引孔160の温度を、結露が発生しない温度に保つことができる。
【0084】
〔変形例〕
次に、本実施形態2に係る自動分析装置300の変形例について説明する。
図10は、本実施形態2の変形例に係る自動分析装置400の構成を示す図である。
【0085】
自動分析装置400は、吸熱手段101、放熱手段102、制御装置107、暖気手段(伝熱ダクト)108、伝熱手段(伝熱板)109、伝熱切替手段110、伝熱吸引孔160、送風手段120、吸引孔温度センサ111、保冷庫内温度センサ112、保冷庫外温度センサ113、等を備える。即ち、自動分析装置400は、自動分析装置300が備える送風手段104の代わりに、送風手段120を備えている。
【0086】
送風手段120は、伝熱ダクト108の終端近傍に取り付けられる。送風手段120は、制御装置107によって、オンオフ制御されることで、暖気の流れを切り替える。
【0087】
例えば、送風手段120がオンすると、暖気が伝熱ダクト108を流れる。この際、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とが、伝熱板109を介して接続していれば、伝熱ダクト108から伝熱吸引孔160へと熱が伝わる。例えば、送風手段120がオフすると、暖気が伝熱ダクト108を流れない。この際、伝熱ダクト108と伝熱吸引孔160とが、伝熱板109を介して接続していても、伝熱ダクト108から伝熱吸引孔160へと熱は伝わらない。
【0088】
即ち、自動分析装置400は、伝熱板109の駆動を制御して、伝熱吸引孔160への加温を制御するのみならず、送風手段120をオンオフ制御することによっても、伝熱吸引孔160への加温を制御することが可能である。
【0089】
本実施形態2の変形例に係る自動分析装置400でも、試薬保冷庫の冷却によって発生した暖気を、吸引孔の加温に利用する。これにより、従来のように、試薬保冷庫を冷却するための機器と、吸引孔を加温するための機器とを、自動分析装置400に別々に搭載せずに済む。これにより、簡易な構成で、消費電力を低減させた自動分析装置を提供することができる。
【0090】
なお、本発明は、前記した実施形態(変形例)に限定されることなく、様々に構成して実施することができる。例えば、吸熱手段と放熱手段は、ヒートポンプ式の冷凍サイクル装置でも良い。 また、暖気手段は、空気の流れを伴わないヒートパイプのような熱伝達手段でも良い。即ち、暖気手段として、実施形態1では暖気ダクト103(
図2、
図6)を例示し、実施形態2では伝熱ダクト108(
図7、
図10)を例示したが、暖気手段はヒートパイプで構成されても良い(暖気手段にはヒートパイプのような熱伝達手段も含まれる)。また、実施形態1と実施形態2を適宜組み合わせることもできる。例えば、
図7や
図10の自動分析装置300や自動分析装置400において、実施形態1の排気ダクト105と切替手段106を備えるようにしてもよい。この場合、
図7や
図10の伝熱切替手段110や送風手段120を廃止することも可能である。また、その他の適宜組み合わせも可能である。