(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細を説明する。ただし、本発明の内容は以下に説明される実施形態に限定されるものではない。
【0013】
1.交互多層一軸延伸フィルム、フィルム巻層体
本発明の実施形態の一例に係る交互多層一軸延伸フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある)からなるフィルム巻層体(以下、「本巻層体」と称することがある)は、第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有する交互多層一軸延伸フィルムからなるフィルム巻層体であって、前記交互多層一軸延伸フィルムの第1層は、ポリエステル系樹脂(A)からなる層であり、前記交互多層一軸延伸フィルムの第2層は、ポリスチレン系樹脂(B)からなる層であり、一軸延伸方向(X方向)、及び、フィルム面内でX方向と直交する方向(Y方向)の屈折率について下記(1)〜(4)を満たし、フィルム面を反射面としてY方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について波長400〜800nmの最大偏光反射率が20%以上であり、フィルム面内でX方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について波長400〜800nmの平均透過率が80%以上であるフィルム巻層体である。
(1)第1層のX方向の屈折率(Nx
1)は1.5800〜1.6000
(2)第1層のY方向の屈折率(Ny
1)は1.4900〜1.5600
(3)第1層と第2層のX方向の屈折率差(ΔNx)は0〜0.0200
(4)第1層と第2層のY方向の屈折率差(ΔNy)は0.0300以上
【0014】
本発明のフィルム巻層体からなる偏光反射フィルムの直線偏光透過軸と、ポリビニルアルコールフィルムから直線偏光フィルムの直線偏光透過軸は直交することなく一致するため、光源からの光を有効利用し表示装置として機能することができる。
【0015】
以下、本フィルムの特徴について詳述する。
【0016】
(a)屈折率
本フィルムは、一軸延伸方向(X方向)、及び、フィルム面内でX方向と直交する方向(Y方向)の屈折率について下記(1)〜(4)を満たす。
(1)第1層のX方向の屈折率(Nx
1)は1.5800〜1.6000
(2)第1層のY方向の屈折率(Ny
1)は1.4900〜1.5600
(3)第1層と第2層のX方向の屈折率差(ΔNx)は0〜0.0200
(4)第1層と第2層のY方向の屈折率差(ΔNy)は0.0300以上
【0017】
本発明において屈折率とは、偏光レンズ付きアタゴ製アッベ屈折率計を用いて、ナトリウムD線(589nm)を光源としJIS K7124に準じて測定したものである。
【0018】
本フィルムにおいて、第1層のX方向の屈折率(Nx
1)は1.5800〜1.6000であり、好ましくは1.5850〜1.5950である。第1層のX方向の屈折率がそれぞれこの範囲にあることにより、X方向の偏光透過率を高くすることができる。第1層に用いる樹脂として後述するポリエステル系樹脂を選択して得られるフィルムを一方向に延伸することで達成される。
【0019】
本フィルムにおいて、第2層のX方向の屈折率(Nx
2)は、好ましくは1.5800〜1.6000で、より好ましくは1.5850〜1.5950である。第2層のX方向の屈折率がそれぞれこの範囲にあることにより、X方向の偏光透過率を高くすることができる。第2層に用いる樹脂として後述するポリスチレン系樹脂を選択して得られるフィルムを一方向に延伸することで達成される。
【0020】
本フィルムにおいて、第1層と第2層のX方向の屈折率差(ΔNx)は0〜0.0200、より好ましくは0〜0.0100、更に好ましくは0〜0.0050である。層間の屈折率差がこの範囲にあることにより、X方向の偏光透過率を高くすることができる。第1層、第2層に用いる樹脂として後述するポリマーを選択して得られるフィルムを一方向に延伸することで達成される。
【0021】
本フィルムにおいて、第1層のY方向の屈折率(Ny
1)は、1.4900〜1.5600で、より好ましくは1.4950〜1.5550である。第1層のY方向の屈折率がそれぞれこの範囲にあることにより、Y方向の反射特性を高くすることができる。第1層に用いる樹脂として後述するポリエステル系樹脂を選択して得られるフィルムを一方向に延伸することで達成される。
【0022】
さらに第1層と第2層のY方向の屈折率差(ΔNy)は0.0300以上であることが好ましく、更に好ましくは0.0350以上であり、特に好ましくは、0.0400以上である。Y方向の屈折率差が0.0300以上であることにより、Y方向の反射特性を効率よく高めることができ、より少ない積層数で高い偏光反射率を得ることができる。第1層、第2層に用いる樹脂として後述するポリマーを選択して得られるフィルムを一方向に延伸することで達成される。上限については特に制限はないが、0.0300以上にすることは一般的に困難である。
【0023】
(b)最大偏光反射率
本フィルムは、フィルム面を反射面としてフィルム面内でX方向と直交する方向(Y方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について波長400〜800nmの最大偏光反射率が20%以上であり、より好ましくは25%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。液晶ディスプレイとしての使用を考慮した際、直線偏光フィルムと本フィルムをroll−to−rollで貼り合わせて光源側に本フィルムを配置したとき、本フィルムの最大偏光反射率が上記範囲であることで、直線偏光フィルムが透過する偏光方向の光量を増加させて液晶セルに供給される光量を増大させ、画像を明るくすることができる。
最大偏光反射率を上記範囲にするためには、第1層、第2層の交互積層で構成される本フィルムにおいて、各層を構成するポリマーとして後述するポリマーを用いることによって達成される。
ここで最大偏光反射率とは、日立製作所製分光光度計(U−4000)を用いて、分光光度計に積分球を取り付け、400nmから800nmの波長の光源に対して、その光源側に吸収型偏光フィルムを挿入し、交互多層一軸延伸フィルムの偏光反射率を測定した際に、その測定された偏光反射率の中で最大のものをいう。
【0024】
(c)平均透過率
本フィルムは、フィルム面内でX方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について波長400〜800nmの平均透過率が80%以上であり、より好ましくは85%以上である。
【0025】
本フィルムのX方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について波長400〜800nmの平均透過率が上記の範囲にあることにより、透過軸が幅方向にある直線偏光フィルムと本フィルムとをroll−to−rollで貼合した際に、液晶ディスプレイとして高い輝度向上性能を発揮させることができる。
ここで、平均透過率とは、日立製作所製分光光度計(U−4000)を用いて、分光光度計に積分球を取り付け、400nmから800nmの波長の光源に対して、その光源側に吸収型偏光フィルムを挿入し、本フィルムの平均偏光透過率を測定したものをいう。
【0026】
(d)積層数
本フィルムは、ポリエステル系樹脂(A)からなる第1層と、ポリスチレン系樹脂(B)からなる第2層とが交互に積層された多層構造を有する。
本フィルムの積層数は、好ましくは、20層以上、より好ましくは50層以上である。積層数が20層以上とすることで、薄膜干渉によりY方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分が選択的に反射され、その偏光成分の最大偏光反射率が、波長400〜800nmにわたり満足することができる。
一方、積層数の上限値は、生産性及びフィルムのハンドリング性等の観点より、2001層であることが好ましい。
(e)厚み
本フィルムの厚み(平均厚み)は、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜50μm、特に好ましくは5〜30μmである。厚みを上記範囲とすることにより、適度な機械的強度を有しつつ、偏光板や液晶表示装置の薄膜化を図ることができる。
【0027】
第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みの比(第1層の平均厚み/第2層の平均厚み)は特に制限はないが、好ましくは0.2以上5.0以下の範囲である。この範囲であることにより、偏光反射特性、及び、偏光透過性に優れた交互多層一軸延伸フィルムを得ることができる。
【0028】
以下、本フィルムを構成する第1層及び第2層について説明する。その後、本フィルムの製造方法について説明する。
【0029】
2.第1層
<ポリエステル系樹脂(A)>
本フィルムを形成する第1層の構成成分として、固有複屈折率が正である樹脂であり、低い屈折率を有するポリエステル系樹脂が選択される。なお、固有複屈折率が正の樹脂とは、それを用いた未延伸フィルムを一軸延伸した場合に、その延伸方向の屈折率が大きくなる樹脂である。ポリエステル系樹脂は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本フィルムが優れた偏光透過性及び偏光反射特性を有するためには、ポリエステル系樹脂(A)からなる未延伸フィルムの平均屈折率は1.5600以下であることが好ましく、1.5550以下であることがより好ましい。下限については特に定めないが、通常は1.5000以上である。
【0031】
ポリエステル系樹脂(A)からなる第1層のX方向における屈折率(Nx
1)は、延伸により0.0100以上増大することが好ましく、より好ましくは0.0150以上、更に好ましくは0.0200以上である。該屈折率の増大する量が下限値に満たない場合は、X方向の層間屈折率が一致するように延伸すると、フィルム破断が先に生じてしまう。
【0032】
ポリエステル系樹脂(A)からなる第1層のY方向における屈折率(Ny
1)は、延伸により0.001以上0.050以下の範囲で減少することが好ましく、より好ましくは0.002以上0.040以下の範囲で減少することが好ましい。該屈折率の減少がこの範囲であれば偏光反射特性は高まる。
【0033】
ポリエステル系樹脂(A)は、ジオール成分とジカルボン酸成分とを共重合させることで得られる樹脂である。ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、テトラメチルシクロブタンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、4、4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4、4’−メチレンジフェニル、4、4’−ヒドロキシビフェノール、及び、ジヒドロキシベンゼン等を挙げることができ、これらのジオール成分は1種類のみ用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明のポリエステル系樹脂は、ポリエステルの耐熱性や屈折率、固有複屈折率の観点から、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール単位を有することが好ましい。
【0034】
ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール単位を有している場合、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位は35モル%以上である事が好ましく、45モル%以上である事がより好ましく、55モル%以上である事がさらに好ましく、60モル%以上である事が特に好ましい。
1,4−シクロヘキサンジメタノール単位は35モル%以上であることで、本フィルムにおいて第1層の屈折率が好ましい範囲となり、本フィルムの偏光透過性、偏光反射特性を高めることができる。
【0035】
また、ポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、及び、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、及び、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、及び、ピロメリット酸等の多官能酸等を挙げることができる。これらのジカルボン酸成分は1種類のみ用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明のポリエステル系樹脂は、ジオール成分との反応性、ポリエステルの耐熱性の観点、及び、層間の剥離を高める観点より、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位を有していることが好ましい。
【0036】
ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位を有している場合、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位は50モル%以上とする事が好ましい。酸成分のうち、テレフタル酸単位が70モル%以上である事がより好ましく、80モル%以上である事がさらに好ましく、90モル%以上である事が特に好ましく、酸成分の全て(100モル%)がテレフタル酸である事がとりわけ好ましい。
テレフタル酸単位が50モル%以上であることで、本フィルムにおいて第1層の屈折率が好ましい範囲となり、本フィルムの偏光透過性、偏光反射特性を高めることができる。
【0037】
3.第2層
<ポリスチレン系樹脂(B)>
本フィルムを形成する第2層を構成成分としては、前記ポリエステル系樹脂(A)より平均屈折率が高く、フィルム延伸及び熱処理した後にほとんど複屈折性を残さないので、ポリスチレン系樹脂(B)が選択される。
【0038】
本フィルムにおいて、優れた偏光特性や輝度向上性能を実現するためにはポリスチレン系樹脂(B)からなる未延伸フィルムの屈折率は、1.5800〜1.6000であることが好ましく、1.5850〜1.6000であることがより好ましい。ポリスチレン系樹脂(B)の屈折率がこの範囲であることで、本フィルムの偏光透過性、偏光反射特性を高めることができる。
【0039】
ポリスチレン系樹脂(B)からなる第2層のX方向における屈折率(Nx
2)の変化量は0.0000以上0.0500以下の範囲であることが好ましく、0.0000以上0.0400以下の範囲であることがより好ましく、0.0000以上0.0300以下での範囲であることが更に好ましい。該屈折率の変化が上記の範囲であることで本フィルムの偏光透過性を高めることができる。
【0040】
ポリスチレン系樹脂(B)の屈折率からなる第2層のY方向における屈折率(Ny
2)は、X方向の一軸延伸により0.0010以上0.0500以下の範囲で増大することが好ましく、0.0010以上0.0400以下の範囲で増大することが好ましく、0.0010以上0.030以下の範囲で増大することが更に好ましい。該屈折率の変化が小さい方がより偏光反射特性を高めることができる。
【0041】
スチレン系樹脂は、スチレン構造を繰り返し単位の一部又は全部として有する樹脂であり、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、及び、p−フェニルスチレンなどのスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、及び、酢酸ビニルなどのその他の単量体との共重合体;を挙げることができる。これらの中で、屈折率、成型性の観点よりスチレン系単量体のみからなる重合体、すなわち、ホモポリスチレンを用いることが好ましい。
【0042】
4.本フィルムの製造方法
本発明の交互多層一軸延伸フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は、本フィルムを製造する方法の一例であり、本フィルムはかかる製造方法により製造されるフィルムに限定されるものではない。
【0043】
本発明の実施形態の一例に係る交互多層一軸延伸フィルムの製造方法は、第1層は、ポリエステル系樹脂(A)からなる層であり、第2層は、ポリスチレン系樹脂(B)からなる層であり、第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有する未延伸フィルムを作成し(製膜工程)、延伸する(延伸工程)交互多層一軸延伸フィルムの製造方法である。
以下、製膜方法、延伸方法について順次説明する。
【0044】
製膜方法としては、公知の方法、例えば、溶液流涎法や、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ラボプラストミルなどの溶融混合設備を有し、熱プレスによるシート化や、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性などの面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。
【0045】
前記押出キャスト法としては、また、複数の樹脂を膜状に成形して積層し、樹脂積層体を形成する溶融押出方法として、共押出法が挙げられる。前記共押出法は、複数の樹脂を個別の成形機より溶融状態で押出した後、金型に導入し、金型内外で溶融状態のまま積層する方法である。前記共押出は、押出された樹脂を積層するタイミングや成形精度によって、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、マルチスロットダイ方式、及びスタティックミキサー方式など数種類の方式に大別される。本発明では、比較的多数の層を高精度で積層する必要があることから、前記フィードブロック法が好ましい。
【0046】
前記フィードブロック方式は、樹脂流入部で2種類以上の樹脂を積層状態として、フラットダイのマニホールドに供給し、マニホールド内で積層状態を維持しながら幅方向を拡大させて、ダイリップ開口部から積層状態で吐出する方式である。前記フィードブロック方式は、積層される熱可塑性樹脂組成物ごとにマニホールドを設ける必要が無いので、他の方式に比べてフラットダイの構造を簡単にすることが可能であり、従って操業性及びメンテナンス性に優れる。
【0047】
前記フィードブロックの構造は、主に複数の上流側流路と、合流部と、下流側流路とを有する。上流側流路から流入する複数の樹脂を、前記フィードブロック内の合流部において、樹脂流れを複数の流路に導入して分割し、かつ分割された樹脂流れが交互に積層されるように、樹脂流路を交互に配置して厚み方向に積層状態に合流させ、合流した溶融樹脂積層体を、下流側流路から下流側の流路アダプタやフラットダイ等に流出させてフィルムを成形する。
【0048】
前記フィードブロック方式により得られた溶融樹脂積層体の厚み方向に表裏層を加えることで、表裏層付き多層フィルムを得る。前記表裏層付き多層フィルムを得る方法としては、フィードブロック方式により得られた溶融樹脂積層体を、下流側流路からフラットダイに流出させる間に、前記溶融樹脂積層体の厚み方向に表裏層を積層するフィードブロックを設置する方法が挙げられる。表裏層をフィードブロック方式により得られた溶融樹脂積層体に積層することで、フィードブロックで得られた多層部の層の乱れを抑制できることが期待できる。
【0049】
前記フィードブロック方式により得られた前記溶融樹脂積層体を、厚み方向に更に積層することで、溶融樹脂積層体よりも更に層数の増加した多層フィルムを得る。前記多層フィルムを得る方法としては、溶融樹脂積層体を厚み方向に積層する手法であれば特に限定されないが、例えば多層用ブロックを用いる方法が挙げられる。前記多層用ブロックとしては、上記フィードブロック内で合流し得られた溶融樹脂積層体を、その表面と垂直方向であり、かつ、製造時の樹脂積層体の流れ方向と平行方向に分割し、分割された樹脂積層体を厚み方向に再び積層し、これを繰り返すことにより多層溶融樹脂積層体を得ることが可能な流路ブロックを用いることができる。
【0050】
厚み方向に一定の1層の厚みを有し、一定の積層数を有する多層構造を有する光学フィルムを成形するためには、前記フィードブロック内合流部の樹脂流路を、20層以上備えることが好ましい。また、多層構造を有することにより、偏光反射特性を効率的に発揮させることができる。偏光反射特性を効率的に発揮させる観点から、その積層数は、50層以上であることが好ましく、50層以上であることがより好ましく、1000層以上であることがさらに好ましい。
【0051】
前記フィードブロックを構成する樹脂流路幅の比を、目的とする一層厚み分布に応じて設定することが好ましい。また、第1層および第2層を構成する樹脂を、溶融粘度やその剪断速度依存性に基づいて適宣選択したり、前記熱可塑性樹脂に可塑剤や粘度調整剤を添加したりポリエステル系樹脂(A)およびポリスチレン系樹脂(B)の樹脂押出量を調整したりすることにより、成形が行われる。
【0052】
前記共押出成形を実施する際には、第1層及び第2層に含まれる樹脂の種類や組成等、目的とする層厚み及び膜幅並びに成形環境や操業性等を考慮して、適宜に、設備仕様、手法及び条件が選択される。
【0053】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、前記樹脂以外の他の樹脂を混合することを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般的に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0055】
延伸方法としては、一般的な一軸延伸方法、つまり、フィルム搬送方向にロール延伸を行う方法やフィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を行う方法や裁断したフィルムをストレッチャーにより固定端一軸延伸する方法などを採用することができ、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明においては、直線偏光フィルムとroll−to−rollでの貼り合せが可能とする輝度向上フィルムが得られるという点より、フィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を行う方法が好適に用いられる。
一軸延伸を実施する際の温度は、第1層のガラス転移温度をTgとして、好ましくはTg〜Tg+50℃、より好ましくはTg+5℃〜Tg+30℃、特に好ましくはTg+5℃〜Tg+15℃である。この時の延伸倍率は好ましくは1.5〜10倍、さらに好ましくは2.0〜8.0倍、特に好ましくは2.5〜6.0倍である。1.5倍以上とすることで、第1層及び第2層における個々の層の面方向の厚さのバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、本フィルムの光干渉が均一になる。また延伸後は熱固定をすることが好ましい。
【0056】
5.本巻層体の製造方法
本発明の巻層体を製造する方法としては、特に制限されるものではないが、公知の方法が適用でき、本フィルムを重ね巻きすることで製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0058】
<測定及び評価方法>
各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
【0059】
(1)ガラス転移温度
パーキンエルマー社製差走査熱量計(Diamond DSC)を用いて、JIS K7122に準じて、実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂AおよびBのガラス転移温度(Tg)を測定した。試料約10mgを加熱速度10℃/分で室温から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温しその後、これを再度加熱速度10℃/分で250℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムからガラス転移温度を読み取った。
【0060】
(2)各方向の延伸前、延伸後の屈折率
各層を構成する個々の樹脂について屈折率を測定した。
各層を構成する樹脂をそれぞれ溶融させてダイより押し出しし、キャスティングドラム上にキャストして未延伸フィルムを得た。また得られた未延伸フィルムをついで一軸方向に延伸したフィルムを得た。得られた未延伸フィルムと延伸フィルムを用い、延伸方向(X方向)、その直交方向(Y方向)についてそれぞれ、偏光レンズ付きアタゴ製アッベ屈折率計を用いて、ナトリウムD線(589nm)を光源とし、JIS K7124に準じて、屈折率を測定した。
【0061】
(3)最大偏光反射率
日立製作所製分光光度計(U−4000)を用いて、実施例および比較例で作成した交互多層一軸延伸フィルムの偏光反射率を測定した。分光光度計に積分球を取り付け、400nmから800nmの波長の光源に対して、その光源側に吸収型偏光フィルムを挿入し、実施例及び比較例で得られた交互多層一軸延伸フィルムの偏光反射率を、延伸方向に対して垂直でフィルム面に平行な軸について測定した。その測定された偏光反射率の中で最大のものを最大偏光反射率、その波長を反射波長とした。
【0062】
(4)平均偏光透過率
日立製作所製分光光度計(U−4000)を用いて、実施例および比較例で得られた交互多層延伸フィルムの偏光透過率を測定した。分光光度計に積分球を取り付け、400nmから800nmの波長の光源に対して、その光源側に吸収型偏光フィルムを挿入し、実施例及び比較例で得られた交互多層一軸延伸フィルムの平均偏光透過率を、延伸方向に平行な軸について測定した。
【0063】
(5)フィルム厚み
実施例および比較例で得られた交互多層延伸フィルムの全厚みについては、1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
【0064】
<構成材料>
実施例、及び、比較例で用いた樹脂について説明する。
【0065】
[第1層]
(A1:ポリエステル系樹脂)
ジカルボン酸単位:テレフタル酸100wt%、ジオール単位:1,4−シクロヘキサンジメタノール79wt%、テトラメチルシクロブタンジオール21wt%
Tg:110℃
【0066】
(C1:ポリエチレンナフタレート系樹脂)
テオネックスTN8065S、帝人(株)製
Tg:118℃
【0067】
[第2層]
(B1:ポリスチレン系樹脂)
G9305、PSジャパン製
Tg:96℃
【0068】
(C2:ポリカーボネート系樹脂)
ユーピロンH3000、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製
Tg:140℃
【0069】
<実施例1>
ポリエステル系樹脂(A1)、ポリスチレン系樹脂(B1)をそれぞれ240℃に加熱された押出機A、Bに供給し、各押出機において、240℃で溶融混練した後、2種65層のフィードブロックを用いて、フィードブロック内で合流させて溶融樹脂積層体を得た。さらに240℃に加熱された押出機Cにポリスチレン系樹脂(B1)を供給し、押出機Cにおいて、240℃で溶融混練した後、前記溶融樹脂積層体に表裏層を加える構造である表裏層導入のフィードブロックを用いて、フィードブロック内で合流させて、これをTダイに導入して押出し、ロール温度95℃のキャストロールで冷却固化して、交互多層フィルムを得た。なお、前記多層フィルム1は、表層/(B1)/(A1)/(B1)/・・・/(B1)/(A1)/(B1)/裏層の構成で樹脂(A1)から成る層と樹脂(B1)から成る層とを交互に積層させたフィルムである。
【0070】
得られた交互積層フィルムを予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンからなるテンター延伸機にて、延伸速度400%/min、予熱120℃、延伸120℃、熱処理100℃にて横方向(幅方向)に4倍延伸することで交互多層延伸フィルムを得た。得られた交互多層延伸フィルム1の評価結果を表1に示す。
【0071】
<実施例2>
実施例1で得られた交互積層フィルムについて、横方向(幅方向)に3倍に延伸した以外は、実施例2と同様の手法により交互多層延伸フィルムを得た。得られた交互多層延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0072】
<比較例1>
実施例1で得られた交互積層フィルムについて、延伸温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様の手法により交互多層延伸フィルムを得た。得られた交互多層延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0073】
<比較例2>
ポリエステル系樹脂(A1)に代えてポリエチレンナフタレート系樹脂(C1)を、ポリスチレン系樹脂(B1)に代えてポリカーボネート系樹脂(C2)を、それぞれ270℃に加熱された押出機A、Bに供給し、各押出機において、270℃で溶融混練した後、2種65層のフィードブロックを用いて、フィードブロック内で合流させて溶融樹脂積層体を得た。さらに270℃に加熱された押出機Cにポリカーボネート系樹脂(C2)を供給し、押出機Cにおいて、270℃で溶融混練した後、前記溶融樹脂積層体に表裏層を加える構造である表裏層導入のフィードブロックを用いて、フィードブロック内で合流させて、これをTダイに導入して押出し、ロール温度105℃のキャストロールで冷却固化して、交互多層フィルムを得た。なお、前記多層フィルムは、表層/(C2)/(C1)/(C2)/・・・/(C2)/(C1)/(C2)/裏層の構成で交互に積層させたフィルムである。
【0074】
得られた交互多層フィルムを予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンからなるテンター延伸機にて、延伸速度400%/min、予熱140℃、延伸150℃、熱処理180℃にて横方向(幅方向)に4倍延伸することで交互多層延伸フィルムを得た。得られた交互多層延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
上記結果より明らかであるように、実施例1〜2の交互多層一軸延伸フィルムは原料樹脂の選択と延伸条件により、フィルムの幅方向(延伸方向、X方向)の平均偏光透過率が高く、フィルムの長尺方向(Y方向)の最大偏光反射率が高いものであった。また、得られた交互多層一軸延伸フィルムは剥離強度にも優れたものであった。
実施例1〜2の交互多層一軸延伸フィルムは、フィルムの幅方向に透過軸を有する直線偏光フィルムとroll−to−rollで貼り合せて輝度向上フィルムとすることができる。
これに対して、比較例1では、フィルムの幅方向(延伸方向、X方向)の平均偏光透過率が低いものであり、実施例よりも偏光透過性が劣るものであった。比較例2では、フィルムの幅方向(延伸方向、X方向)の平均偏光透過率が低く、フィルムの長尺方向(Y方向)の最大偏光反射率が低いため、実施例1〜2より偏光透過性、及び、偏光反射特性が劣るものであった。