(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853679
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】焼き菓子用ミックス
(51)【国際特許分類】
A21D 2/36 20060101AFI20210322BHJP
A21D 10/02 20060101ALI20210322BHJP
A21D 13/44 20170101ALI20210322BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D10/02
A21D13/44
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-15041(P2017-15041)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-121554(P2018-121554A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通宏
【審査官】
村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−039936(JP,A)
【文献】
特開2012−179026(JP,A)
【文献】
特開2009−213379(JP,A)
【文献】
特公昭46−005019(JP,B1)
【文献】
米粉でもちもちホットケーキ!,cookpad,2009年 1月26日,[検索日 2020年3月12日]、インターネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/721022>
【文献】
横山製粉株式会社 レラピリカ商品ラインアップ,横山製粉株式会社WEBサイト,2013年 4月 1日,[検索日 2019年7月18日]、インターネット:<URL:http://www.rerapirka.com/rerapirka.pdf/>
【文献】
上野 光雄 ほか著,国産小麦主要品種の菓子適性とその利用(1),Pain6,2012年,Vol.59,pp.11-15
【文献】
上野 光雄 ほか著,国産小麦主要品種の菓子適性とその利用(2),Pain7,2012年,Vol.59,pp.6-11
【文献】
斎藤 寛子、松本 時子,米粉がスポンジケーキの性状に及ぼす影響,山形県立米沢女子短期大学紀要,2007年 1月31日,第42号,第93-99頁
【文献】
お米の成分とおいしさの関係,株式会社アスクWEBサイト,2013年 7月30日,[検索日 2020年3月12日]、インターネット:<URL:http:www.okomeno-tawaragura-ask.jp/rice-story/2013/07/post-6.html>
【文献】
ボルボローネ,cookpad,2009年 3月 4日,[検索日 2020年3月12日]、インターネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/192734>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日本産小麦に由来する小麦粉を45〜65質量%及び米粉を10〜25質量%含有し、
前記日本産小麦が、ホクシン、きたほなみ、さとのそら及びシロガネから選択される1種以上であり、
前記小麦粉の水分含量が10質量%以下であり、前記米粉が未処理米粉である焼き菓子用ミックス。
【請求項2】
前記米粉のアミロース含量が17〜20質量%である請求項1に記載の焼き菓子用ミックス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焼き菓子用ミックスから生地を調製し、該生地を焼成する工程を有する、焼き菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼き菓子用ミックスに関し、詳細には、日本産小麦由来の小麦粉を主体とする焼き菓子用ミックス及びそれを用いた及び焼き菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き菓子は、小麦粉、砂糖、卵などを原料にして生地を調製し、調製した生地を焼成することにより製造されるベーカリー食品の一種であり、水分含量が比較的多く、スポンジケーキのように多孔質の内相を有していてふんわりとした食感を楽しむものと、水分含量が比較的少なく、クッキーのようにカリカリサクサクとした食感を持つものとがある。特に前者では、ふんわりとしていながらも口に含むとしっとりとした口当たりを有し、さらに咀嚼すると溶けるように崩壊する、いわゆる口溶けの良い食感を有するものが上質とされている。
【0003】
また、小麦粉は一般的に、蛋白質含量を基準として蛋白質含量が多い順に、強力系、準強力系、中力系、薄力系に分類されるところ、焼き菓子には、蛋白質含量が少ない中力系や薄力系の小麦粉が適しているとされている。また、小麦粉は原料小麦の産地によって性質が異なり、特に、日本産小麦に由来する小麦粉(以下、「日本産小麦粉」ともいう)と、外国産小麦に由来する小麦粉(以下、「外国産小麦粉」ともいう)とで、性質が大きく異なることが知られている。
【0004】
日本産小麦粉は、蛋白質含量としては強力系に分類されるものは少数であり、焼き菓子の製造に適した普通系や中力系に分類されるものが大部分を占める。しかしながら、日本産小麦粉は、原料小麦が日本特有の高温多湿環境で栽培されることなどに起因して、普通系や中力系であっても、蛋白質の麩質が軟弱である一方で、澱粉が強靭な粘弾性を有するという性質を持ち、原料小麦の栽培環境が日本とは異なる外国産小麦粉とは、性質が大きく異なる。このような特異的な性質を持つ日本産小麦粉は、パンや焼き菓子などの原料として使用するのは問題が多いというのが本技術分野の当業者の常識であり、現状専ら、うどんを代表とする麺の原料として使用され、パンや焼き菓子にはほとんど使用されていない。
【0005】
また従来、米は、米飯として消費されるか、又は団子などのもち様の和菓子として主に使用されてきたが、近年、食感の改善、小麦アレルギー対応、余剰米の有効利用などを目的として、米を粉砕した米粉を用いたパンや焼き菓子が提案されている。しかし、単にパンや焼き菓子に米粉を配合しただけでは、もっちりとした食感は強化されるものの、口溶け感はむしろ低下し、団子様の粘調な一般的には好ましくない食感が強くなるという課題がある。このような米粉の課題に対し、改良技術が種々提案されている。
【0006】
特許文献1には、ボリューム、食感共に良好な半生低蛋白ケーキが得られる生地として、小麦粉100重量部に対して、蛋白質含量が約1.5重量%の低蛋白調整米粉を130〜150重量部含む生地が記載されている。特許文献2には、もっちり感のあるパンやしっとり感のあるケーキが得られるパン又は菓子用穀粉組成物として、アルファ化米粉と、澱粉と、米粉を含む原料穀粉とを特定比で含む穀粉組成物が記載されている。
【0007】
特許文献3には、洋菓子類製造適性に優れた菓子類用米粉ブレンド粉として、13.5%水分ベースの質量で、軟質小麦粉95〜50質量部とアルカリ処理米粉5〜50質量部とを含むブレンド粉が記載されている。また特許文献3には、軟質小麦粉として、蛋白質含量が6〜10.5質量%の範囲にある比較的蛋白質含量が低いものを使用する旨記載されており、実施例では日本産小麦粉を使用してスポンジケーキやパウンドケーキを製造している。尚、特許文献3の比較例1及び4では、前記ブレンド粉において、アルカリ処理米粉に代えて市販米粉、即ちアルカリ処理されていない通常の米粉を用いているところ、この比較例1及び4は、アルカリ処理米粉を用いた実施例に比して、ケーキの食感やボリュームに劣る結果となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−213379号公報
【特許文献2】特開2010−263869号公報
【特許文献3】特開2012−179026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の消費者の自然志向、健康志向の高まりを背景に、日本産小麦粉が持つ安心感や健康的なイメージ、あるいは外国産麦小麦粉に対する農薬の大量使用の印象に基づく不安感などから、消費者の間には日本産麦小麦粉を用いた小麦粉含有食品のニーズが高まってきている。本技術分野の当業者の常識を覆し、日本産麦小麦粉を用いながらも、食感の良好な焼き菓子を製造し得る技術は未だ提供されていない。
【0010】
本発明の課題は、日本産小麦粉を用いながらも、しっとり感に優れ、口溶けが良好な高品質の焼き菓子を製造することができる焼き菓子用ミックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、日本産小麦に由来する小麦粉を45〜65質量%及び米粉を10〜25質量%含有する焼き菓子用ミックスである。
【0012】
また本発明は、前記の本発明の焼き菓子用ミックスから生地を調製し、該生地を焼成する工程を有する、焼き菓子の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、日本産小麦粉を用いながらも、しっとり感に優れ、口溶けが良好な高品質の焼き菓子を製造することができる。
本発明の主たる特徴の1つは、日本産小麦粉を主体的に使用する点にあるところ、近年、食の安全性に対する国民の意識の高まりにより、種々の小麦粉含有食品において、農薬を大量に使用しているなどの印象と結びつきやすい外国産小麦粉よりも日本産小麦粉を選択する気運が非常に高まっており、本発明はこうした日本産小麦粉に対するニーズにマッチした待望の技術であるといえる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の焼き菓子用ミックスは、日本産小麦粉を含有する。別の観点から言えば、本発明の焼き菓子用ミックスは、外国産小麦粉を全く含有しないか、又は含有するとしても少量である。小麦の品質は、栽培される土壌や気候などの影響を受けて大きく変化し、同じ品種の小麦でも産地が異なれば品質が異なる。日本産小麦と外国産小麦とにおいても品質に大きな違いがある。
【0015】
日本産小麦粉を焼き菓子用ミックスに使用することで、従来焼き菓子用ミックスにおいて多用されている外国産小麦粉を使用した場合に比して、得られる焼き菓子の食感(しっとり感、口溶け)が向上する。外国産小麦粉を主体とする従来の焼き菓子用ミックスは、汎用されているだけあって、一定レベルの品質を備えた焼き菓子を提供し得るが、本発明の焼き菓子用ミックスと比較すると、特に、しっとり感が足りない点で食感に劣る。この点は、後述する実施例3と比較例3との対比からも明らかである。
【0016】
日本産小麦粉の原料たる日本産小麦は、品種の特性や製粉性等の観点から、「普通系(中力系)」と「強力系」とに大別される。本発明で用いる日本産小麦粉は、普通系が特に好ましい。一般に、普通系の日本産小麦はグルテンの水和性が極めて鋭敏な上に、澱粉は強じんで粘弾性に富むことから、これを由来とする小麦粉は保水性に優れた食感が要望される小麦粉食品に適した性質を有している。そのため、普通系の日本産小麦由来の小麦粉は従来、麺類特にうどんが主たる用途であり、「うどん粉」などとも呼ばれている。
【0017】
本発明で用いる日本産小麦粉の原料たる日本産小麦としては、普通系小麦が良好であり、特に、軟質、あるいは中間質の小麦が好ましい。また、日本産小麦の蛋白質含量は、7.5〜12.0質量%の範囲がより好ましい。また、日本産小麦として、下記の品種名を例示できる。本発明では、下記の品種名の日本産小麦に由来する小麦粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、下記に示す日本産小麦は、農林水産省の農林認定品種データベース等を用いて調べることができる。
【0018】
(日本産小麦の具体例)
あおばの恋、あきたっこ、アブクマワセ、あやひかり、イワイノダイチ、キタカミコムギ、きたさちほ、キタノカオリ、きたほなみ、きたもえ、キタ力ミコムギ、きぬあかり、きぬあずま、きぬいろは、きぬの波、キヌヒメ、コユキコムギ、さとのそら、さぬきの夢2000、さぬきの夢2009、しゅんよう、シラサギコムギ、シラネコムギ、シロガネコムギ、せときらら、タイセツコムギ、タクネコムギ、ダブル8号、タマイズミ、チクゴイズミ、ちくしW2号、チホクコムギ、つるきち、つるぴかり、ナンブコムギ、ニシノカオリ、ニシホナミ、ネノリゴシ、ネバリゴシ、ハナマンテ、ハルイブ、はるきらり、はるひので、ハルユタカ、ハレイブキ、ハレユタカ、バンドウワセ、フウセツ、ふくあかり、ふくさやか、ふくはるか、ふくほのか、ホクシン、ホロシリコムギ、もち姫、ゆきちから、ゆきはるか、ゆめあかり、ユメアサヒ、ゆめかおり、ゆめきらり、ユメシホウ、ユメセイキ、ゆめちから、銀河のちから、香育21号、春のかがやき、春よ恋、長崎W2号、東海103号、東海104号、東山42号、農林61号、福井県大3号、利根3号、ダブレ8号、ミナミノカオリ。
【0019】
本発明で用いる日本産小麦粉は、水分含量が10質量%以下、特に9.5質量%
以下であるものが好ましい。小麦粉の通常の水分含量(乾燥処理を施さない場合の水分含量)は約12〜15質量%であるが、日本産小麦粉の水分含量を前記特定範囲として通常よりも低くすることで、前述した日本産小麦粉の使用による効果をより高いものとすることができる。この点については、後述する実施例3(水分含量10質量%超)と実施例10及び11(水分含量10質量%以下)との対比からも明らかである(下記表3参照)。一方、日本産小麦粉の水分含量の下限については特に制限されないが、焼き菓子の食感および経時変化耐性の観点から、好ましくは5質量%以上である。尚、本発明における小麦粉の水分含量は、水分計(ケット科学社製、商品名「赤外線水分計(FD−720)」)を用いて測定した値である。
【0020】
前記の水分含量10質量%以下の日本産小麦粉は、乾燥処理が施されていない日本産小麦粉(原料小麦粉)に乾燥処理を施すことによって得られる。前記乾燥処理としては、例えば、原料小麦粉を乾式加熱する方法、凍結乾燥する方法、減圧乾燥する方法が挙げられる。特に、原料小麦粉の乾式加熱が好ましい。即ち、水分含量10質量%以下の日本産小麦粉は、熱処理小麦粉であることが好ましい。前記乾式加熱は、原料小麦粉に水分を添加せずに、原料小麦粉を直接的又は間接的に加熱することでなされ、直接加熱の一例として、原料小麦粉に熱風を直接吹き付ける熱風乾燥処理が挙げられ、間接加熱の一例として、原料小麦粉を熱伝導障壁(鉄板など)を介して間接的に加熱する処理が挙げられる。前記熱風乾燥処理の条件としては、原料小麦粉に温度85〜130℃の熱風を数秒〜数分間吹き付ける条件を例示できる。前記間接加熱においては、前記熱伝導障壁を加熱する熱媒体として、過熱水蒸気や熱水等を用いることができる。
【0021】
本発明の焼き菓子用ミックスにおいて、日本産小麦粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して45〜65質量%であり、好ましくは50〜60質量%である。ミックスにおける日本小麦粉の含有量が45質量%未満であると、該ミックスを用いて得られた焼き菓子の口溶けが低下し、日本小麦粉の含有量が65質量%を超えると、焼き菓子のしっとりとした食感が低下する。
【0022】
本発明の焼き菓子用ミックスは、日本産小麦粉に加えてさらに、米粉を含有する。焼き菓子用ミックスに日本産小麦粉及び米粉の双方を配合することで、焼き菓子の品質(しっとりとした食感、口溶け)に関して良好な結果が得られるようになる。焼き菓子用ミックスに米粉を適量配合することで焼き菓子の品質が向上することは、下記表2における実施例と比較例との対比から明らかである。特に興味深い点は、下記表1における実施例3と比較例3との対比から明らかなように、焼き菓子用ミックスに小麦粉と米粉とが配合されていても、該小麦粉が外国産小麦粉(比較例3)では十分な効果は得られず、該小麦粉が日本産小麦粉(実施例3)の場合に初めて十分な効果が得られるという点である。
【0023】
本発明で用いる米粉は、焼き菓子の食味、食感及びボリュームの観点から、加熱処理、特許文献3に記載の如きアルカリ処理等の加工処理が施されていない未処理米粉が好ましい。また、本発明で用いる米粉としては、一般的に流通するアミロース含量36%以下のものを利用でき、例えば、アミロース含量がほぼ0質量%のもち米由来の米粉、あるいはアミロース含量の高いインディカ種うるち米由来の米粉などを利用できるが、アミロース含量が17〜20質量%のものを用いると、特に効果が高い。この点については、後述する実施例3及び13(アミロース含量17〜20質量%の範囲内)と実施例12及び14(アミロース含量17〜20質量%の範囲外)との対比からも明らかである(下記表4参照)。アミロース含量17〜20質量%の米粉は、1種類の米粉からなるものに限定されず、2種以上の米粉を混合したブレンド粉からなるものであってもよい。米粉のアミロース含量は、ヨウ素親和力測定法、ヨウ素呈色比色法、ペーパークロマトグラフィー、ゲルろ過法等により測定することができる。
【0024】
本発明の焼き菓子用ミックスにおいて、米粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して10〜25質量%であり、好ましくは13〜22質量%である。米粉の含有量が10質量%未満であると、該ミックスを用いて得られた焼き菓子のしっとりとした食感が低下し、米粉の含有量が25質量%を超えると、焼き菓子の食感がモチモチとした粘弾性の強いものとなり、口溶けが低下する。
【0025】
本発明の焼き菓子用ミックスは、日本産小麦粉及び米粉に加えてさらに、砂糖、果糖及びブドウ糖からなる群から選択される1種以上の糖類を含有することが好ましい。焼き菓子用ミックスに糖類が配合されることで、特に、該ミックスを用いて得られた焼き菓子について口溶けの良いさっくりとした食感が高まる。糖類の含有量は、本発明の焼き菓子用ミックスの全質量に対して、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは18〜32質量%である。
【0026】
本発明の焼き菓子用ミックスには、前記成分(日本産小麦粉、米粉、糖類)に加えて、必要に応じて、焼き菓子用ミックスの製造に通常用いられ得るその他の原料、例えば、外国産小麦粉、澱粉、卵粉、食塩、増粘剤、膨張剤等を配合することができる。これらその他の原料の含有量は、本発明の焼き菓子用ミックスの全質量に対して、0〜50質量%程度とすることが好ましい。外国産小麦粉を使用する場合、日本産小麦粉の特徴を活かす観点から、本発明の焼き菓子用ミックス中の全小麦粉に占める外国産小麦粉の割合は20質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
本発明の焼き菓子用ミックスは、各種の焼き菓子の製造に使用することができ、その使用方法はこの種のミックスと基本的に同じである。本発明の焼き菓子用ミックスを用いた焼き菓子の製造方法は、典型的には、該ミックスから生地を調製し、該生地を焼成する工程を有する。前記生地は、粘土状生地(ドウ)と液状生地(バッター)とに大別でき、いずれの生地も焼き菓子用ミックスに液体を添加・混合することで調製することができ、該液体としては例えば、水、牛乳、卵、生クリーム又はそれら2種以上の混合物を利用できる。生地調製の際の前記液体の添加量は、焼き菓子の種類等に応じて適宜選択すれば良く特に制限されないが、例えば前記液体が水の場合において、ドウを調製する場合は、ミックス100質量部に対して50〜160質量部程度、バッターを調製する場合は、ミックス100質量部に対して150〜300質量部程度である。本発明の焼き菓子用ミックスは、特に、ドウを調製する焼き菓子の製造方法に好適である。
【0028】
本発明の焼き菓子用ミックスは、各種焼き菓子の製造に使用することができ、膨張剤を用いたケーキ焼き菓子及びイーストを用いたイースト焼き菓子の何れにも適用できる。本発明の焼き菓子用ミックスは、特に、水分含量が比較的多く(例えば水分含量20質量%以上)、ふんわりとした食感を楽しむ焼き菓子に好適であり、具体的には例えば、パンケーキ、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナツ、クレープ、スコーン、パウンドケーキ、マフィン、ワッフルなどが挙げられる。尚、焼き菓子の水分含量は、水分計(ケット科学社製、商品名「赤外線水分計(FD−720)」)を用いて常法に従って測定することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜14及び比較例1〜5〕
下記表1に示す原料を適宜混合・攪拌して、各実施例及び比較例の焼き菓子用ミックスを製造した。使用した原料の詳細は下記の通り。
・日本産小麦粉(品種名「ホクシン」由来の小麦粉、水分含量14質量%)
・外国産小麦粉(日清製粉製、商品名「フラワー」、水分含量14質量%)
・米粉(複数種の米粉のブレンド粉、アミロース含量17質量%)
尚、日本産小麦粉として、前記の水分含量14質量%のものに加えてさらに、水分含量9.5質量%及び9.2質量%のものを使用したところ(実施例10及び11)、この低水分含量の日本産小麦粉は、水分含量14質量%の日本産小麦粉(ホクシン)を乾式加熱することで調製した。具体的には、水分含量14質量%の日本産小麦粉を鉄板上に薄く敷き詰め、該鉄板の温度を140℃にすることで該小麦粉を間接的に加熱し、該小麦粉の水分含量を所望の範囲まで低減させた。
【0031】
〔試験例〕
各実施例及び比較例の焼き菓子用ミックスを用いてパンケーキを製造した。具体的には、焼き菓子用ミックス180質量部に対して、卵50質量部、牛乳170質量部を加えてよく攪拌し、液状生地(バッター)を得た。得られた生地を、170℃に熱したホットプレート上に垂らして広げ、2分間焼成した後、該生地を上下反転させて未焼成の面側を1分30秒間焼成し、パンケーキを製造した。
製造したパンケーキを10名のパネラーに食してもらい、その際の食感(しっとり感、口溶け)を下記評価基準で評価してもらった。その結果を10名の評価点の平均値として下記表1に示す。
【0032】
<しっとり感の評価基準>
5点:非常にしっとり感を感じ、極めて良好。
4点:しっとり感を感じ、良好。
3点:普通。
2点:しっとり感が悪くパサつき、不良。
1点 非常にしっとり感が悪くパサつき、極めて不良。
<パンケーキの口溶けの評価基準>
5点:非常に口溶けが良く、極めて良好。
4点:口溶けが良く、良好。
3点:普通。
2点:口溶けが悪く団子様になり、不良。
1点:非常に口溶けが悪く団子様になり、極めて不良。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示す通り、日本産小麦粉を45〜65質量%の範囲内で含有する各実施例のミックスは、日本産小麦粉の含有量が斯かる特定範囲内に無い比較例1及び2に比して、パンケーキのしっとり感及び口溶けに優れていた。このことから、焼き菓子用ミックスにおける日本産小麦粉の含有量としては45〜65質量%が好ましいことがわかる。また、実施例3と比較例3との対比から、パンケーキのような、水分含量20質量%以上でふんわりとした食感を楽しむ焼き菓子を作るためのミックスにおいては、主たる原料粉として、外国産小麦粉よりも日本産小麦粉の方が優れていることが明らかである。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示す通り、焼き菓子用ミックスにおける米粉の含有量は、実施例の範囲内である10〜25質量%が好ましく、特に、実施例6〜8の範囲内である13〜22質量%程度が好ましいことがわかる。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】