(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレイが備える前記吸着部及び前記液体吸引部の一方または双方は、前記トレイが前記処理装置に配置された際に、前記処理装置が備える吸引ラインに接続されて前記積層体の吸着又は前記液体の吸引を行う、請求項11に記載の積層体処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されない。また、図面においては実施形態の各構成をわかりやすくするために、一部を大きくまたは強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
【0013】
<トレイの実施形態>
図1は、実施形態に係るトレイの一例を示す平面図である。なお、
図1では、角部Cの一部を拡大した図を併せて示している。
図2は、トレイの角部Cの一例を示す斜視図である。
図3は、
図2におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。
図1から
図3に示すトレイ100は、パネル状の積層体Wを載置し、不図示の搬送装置等によって搬送される。積層体Wは、例えば、ファンアウト型PLP(Fan−out Panel Level Package)技術によって製造されたパネル状の積層体などが挙げられる。パネル状の積層体Wは、例えば、ガラス基板上に、分離層と、接着層と、電子部品を含むモールド層と、がこの順番で積層されて形成されている。ただし、積層体Wとしてはこの形態に限定されず、接着層がなくてもよく、また、電子部品を含むモールド層が多段に積層された形態であってもよい。
【0014】
トレイ100は、
図1から
図3に示すように、本体部10と、吸着部20と、液体吸引部30と、噴射部40と、を備える。本体部10は、矩形の板状であり、例えば、ステンレスまたはアルミなどの金属材料、あるいは樹脂材料などにより形成されている。本体部10は、上面側に積層体Wを載置するための載置面10aを有する。載置面10aは、平面状に形成されている。本体部10の載置面10aには、保護部11と、当接部12とが設けられている。積層体Wを載置した際、保護部11及び当接部12のいずれにも積層体Wが当接する。
【0015】
保護部11は、積層体Wを載置した際に、積層体Wの中央部が当接する部分に配置される。保護部11は、本体部10の載置面10aの中央部に配置される。保護部11は、防水透湿性素材のシートが貼り付けられて形成される。防水透湿性素材のシートは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーとを複合化して作成されたシートが用いられるが、これに限定されない。保護部11は、上記した防水透湿性素材のシートによりクッション性を有しており、例えば、積層体Wのモールド層に含まれる電子部品が当接し、電子部品が損傷しないように保護する機能を有している。
【0016】
保護部11は、後述の吸着部20に対応する位置に切り込み11aを有する。切り込み11aにより、吸着部20による積層体Wの吸着を妨げないようになっている。また、切り込み11aは、例えば、積層体Wを載置した際に、積層体Wのモールド層に含まれる電子部品から外れた位置に形成される。切り込み11aは、防水透湿性素材のシートを単に切り込んだ形態でもよいし、例えば、幅1mm〜数mm程度に切り取られた形態であってもよい。
【0017】
当接部12は、積層体Wの周縁部が当接する部分に配置される。当接部12は、例えば本体部10の載置面10aの周縁部に配置される。当接部12は、保護部11の周囲を囲むように配置されている。当接部12は、例えば、フッ素系の樹脂又はゴム製のシートが貼り付けられて形成される。当接部12を形成する樹脂等のシートは、上記した保護部11を形成する防水透湿性素材のシートに接続して配置されてもよいし、防水透湿性素材のシートに対して間隔をあけた状態で配置されてもよい。当接部12は、後述する噴射部40の内側の領域、噴射部と後述する液体吸引部30との間の領域、及び液体吸引部30の外側の領域にそれぞれ配置されている。
【0018】
吸着部20は、載置面10aに載置された積層体Wを吸着する。吸着部20は、溝部21と、マニホールド22と、を有する。溝部21は、本体部10の載置面10aの中央部に設けられる。溝部21は、本体部10の四辺に沿って矩形状に形成される。また、溝部21は、矩形の内部において縦横に複数列ずつ設けられ、格子状に形成されている。なお、溝部21は、上記した保護部11の切り込み11aに対応して配置されている。溝部21の幅及び深さは任意に設定可能である。
【0019】
マニホールド22は、本体部10の内部に設けられる。マニホールド22は、溝部21の一部に接続される(後述する
図5参照)。マニホールド22と溝部21との接続箇所及び接続位置は任意に設定可能である。マニホールド22は、裏面側(載置面10aと反対側の面)において、不図示の吸引源に接続可能な接続部23(
図5参照)を備えている。接続部23としては、例えば開口部である。なお、吸引源との接続部23は、本体部10の裏面に限定されず、例えば本体部10の側面あるいは本体部10の上面(載置面10a)に配置されてもよい。
【0020】
また、接続部に接続される吸引源としては、例えば吸引ポンプ等が用いられる。吸引ポンプ等の吸引源は、トレイ100と別に設置されている搬送装置あるいは処理装置に設けられている吸引源が用いられるが、吸引源をトレイ100が備えてもよい。マニホールド22は、吸引源に接続されて吸引された場合、溝部21の各部の吸引力を均一化させるように作用する。
【0021】
液体吸引部30は、本体部10の載置面10aにおいて、吸着部20よりも外側に配置されて、載置面10a上の液体を吸引する。液体吸引部30は、載置面10aのうち積層体Wの縁部に対応した位置に配置される。液体吸引部30は、例えば、載置面10aの縁部に沿った一周にわたって配置される。また、液体吸引部30は、積層体Wを載置した際に、上方から見て積層体Wに覆われる位置に設けられる。なお、液体吸引部30は、載置面10aの縁部に沿った一周にわたって連続して配置されることに限定されず、間隔をあけて、載置面10aの縁部に沿った一周にわたって断続的に配置されてもよい。
【0022】
液体吸引部30は、溝部31と、吸引口32とを有する。溝部31は、載置面10aの上方から見た場合、略矩形の環状に形成される。溝部31は、例えば本体部10の4辺に沿った平行部31Pと、本体部10の4つの角部に配置される傾斜部31Qと、を有する。平行部31Pは、本体部10の各辺に平行に配置される。傾斜部31Qは、本体部10の各辺に対してそれぞれ傾斜して配置される。
【0023】
傾斜部31Qは、本体部10の各辺に対する傾斜角度が例えば45°程度に設定されているが、45°に限定されず、例えば一方の平行部31Pに対して60°(すなわち他方の平行部31Pに対して30°)となるように設定されてもよい。なお、傾斜部31Qの長さは、任意に設定可能である。傾斜部31Qが長いと、本体部10の四隅において傾斜部31Qから外側の面積が広くなるが、傾斜部31Qが短くなると、傾斜部31Qから外側の面積が狭くなり、この部分に滞留する液体の量を少なくすることができる。
【0024】
また、溝部31は、
図3に示すように、載置面10aに平行な底部33を有する。吸引口32は、溝部31の底部33から本体部10の裏面にかけて本体部10を貫通して形成される。吸引口32の裏面側は、不図示の吸引源に接続される。吸引源としては、例えば吸引ポンプ等が用いられる。吸引ポンプ等の吸引源は、トレイ100と別に設置されている搬送装置あるいは処理装置に設けられている吸引源が用いられるが、吸引源をトレイ100が備えてもよい。
【0025】
噴射部40は、積層体Wの裏面に向けてガスを噴射する。噴射するガスは、例えば、温度及び湿度が調整された空気あるいは未調整の空気が用いられてもよいし、工場内に設けられている窒素ガスの供給ラインから取得した窒素ガスが用いられてもよい。噴射部40は、吸着部20と液体吸引部30との間に設けられる。噴射部40は、例えば、載置面10aのうち吸着部20と液体吸引部30との間の環状のスペースに沿って一周にわたって設けられる。
【0026】
噴射部40は、本体部10の外周側に傾いた状態で積層体Wの裏面に向けてガスを噴射する。噴射部40は、溝部41と、噴射口42とを有する。溝部41は、載置面10aを上方から見た場合、略矩形の環状に形成される。溝部41は、底面41aと、テーパ面41bと、垂直面41cとを有する。底面41aは、載置面10aに平行に設けられる。テーパ面41bは、溝部41のうち内周側に配置される。テーパ面41bは、溝部41の底面41a側から載置面10a側にかけて、本体部10の内側に傾いた状態で形成される。底面41aとテーパ面41bとのなす角度は、例えば45°程度に設定されるが、これに限定されず、例えば60°など任意に設定可能である。
【0027】
噴射口42は、テーパ面41bに設けられ、ガスを噴射させる。噴射口42の開口形状は、例えば円形状に形成されるが、これに限定されず、楕円形状、長円形状、または多角形など、他の形状であってもよい。噴射口42は、本体部10の裏面連通する供給路を有しており、この供給路にガス供給源が接続される。ガス供給源との接続は、トレイ100が搬送装置あるいは処理装置に載置された際に、搬送装置あるいは処理装置に設けられているガス供給源を上記した供給路に接続させてもよいし、ガス供給源をトレイ100が備えてもよい。
【0028】
噴射口42は、テーパ面41bによって本体部10の外周側に傾いた向きに設けられる。したがって、テーパ面41bの角度を変えることにより、噴射口42から噴出させるガスの向きを変更することができる。なお、噴射口42は、テーパ面41bに設けられることに限定されず、例えば、溝部41内に噴射ノズルが配置され、この噴射ノズルの向きを調整することでガスの噴出する向きを調整するような構成であってもよい。
【0029】
噴射口42は、テーパ面41bの周方向の一周にわたって複数並んで配置される。なお、噴射口42の配置は、テーパ面41bの周方向の一周にわたって等間隔で配置されてもよいし、不等間隔で配置されてもよい。また、噴射口42は、本体部10の四隅に対応する部分について、配置の間隔を小さくしてもよい。噴射口42は、少なくとも本体部10の四隅に対応するように、1つ又は複数が配置される。本体部10の四隅に配置される噴射口42は、載置面10aに載置された積層体Wの四隅に対応しており、積層体Wの四隅に向けてガスを噴射する。この位置に配置される噴射口42は、液体吸引部30の溝部31のうち傾斜部31Qに向けてガスを噴射する。
【0030】
また、噴射口42は、本体部10の各辺に沿った部分に配置されている。本体部10の各辺に沿った部分に配置される噴射口42は、本体部10の各辺側に向けてガスを噴射する。この位置に配置される噴射口42は、液体吸引部30の溝部31のうち平行部31Pに向けてガスを噴射する。複数の噴射口42による単位時間あたりのガスの噴出量は、それぞれ同一であってもよいし、例えば、積層体Wの四隅に対応する噴射口42は、他の噴射口42よりも単位時間あたりのガスの噴出量を多くなるように設定されてもよい。
【0031】
また、噴射部40によるガスの噴射量は、液体吸引部30による吸引量に応じて設定されてもよい。例えば、噴射部40によるガスの噴射量と、液体吸引部30による吸引量とが同量となるように設定されてもよいし、液体吸引部30による吸引量が、噴射部40によるガスの噴射量より大きくなるように設定されてもよい。後者の場合、載置面10aと積層体Wとの間に余分にガスが供給されることを回避でき、積層体Wの吸着力が低下するのを抑制できる。
【0032】
図4(A)及び(B)は、液体吸引部30及び噴射部40の使用形態の一例を示す図であり、(A)は断面図、(B)は平面図である。
図4(A)及び(B)に示すように、載置面10aに積層体Wを配置した状態において、例えば積層体Wに対して洗浄あるいは膜の除去などの液体Qを用いた処理を行う場合、処理に用いた液体Qが処理中あるいは処理後に載置面10a上に残り、矢印に示すように載置面10aと積層体Wとの間に入り込むことがある。
【0033】
そこで、トレイ100においては、液体吸引部30から吸引を行わせると共に、噴射部40からガスを噴射させる。液体吸引部30の吸引により、載置面10aの周縁部に付着する液体Qが吸引されて溝部31に引き込まれる。また、噴射部40から噴射されるガスにより、液体Qが載置面10aの内側に入り込むのを防止する。このとき、上記したように、噴射部40からの単位時間あたりのガスの噴出量が、液体吸引部30における単位時間当たりの吸引量より小さくしているので、載置面10aの周縁部の液体Qを溝部31側に引き込みつつ、噴出したガスが液体吸引部30で吸引されずに積層体Wの裏面奥に進入することを抑制している。
【0034】
液体Qは、例えばトレイ100の本体部10の四辺部分よりも四隅の方が載置面10aと積層体Wとの間に入り込みやすい場合がある。また、溝部31の傾斜部31Qの外側にはやや広い領域が残っているため、この部分に液体Qが残りやすい。このため、傾斜部31Qの長さを短くして、傾斜部31Qの外側の領域を狭くすることにより、この積層体Wの四隅の裏側に入り込む液体Qが傾斜部31Qによって吸引されやすくなるようにしている。また、積層体Wの四隅に向けて噴射部40によりガスを噴射しているので、本体部10の四隅において載置面10aと積層体Wとの間に入り込む液体Qが載置面10aの内側に入り込むことを確実かつ効率よく防止している。
【0035】
なお、図示していないが、溝部31の平行部31Pにおいても、同様に、積層体Wの裏側に入り込む液体Qを平行部31Pによって吸引しつつ、積層体Wに向けて噴射部40によりガスを噴射しているので、載置面10aと積層体Wとの間に入り込む液体Qが載置面10aの内側に入り込むことを確実かつ効率よく防止している。
【0036】
図5は、積層体Wがトレイ100に載置された状態の一例を示す断面図である。
図5に示すように、トレイ100は、本体部10の裏面側に接続部23を有する。接続部23は、本体部10の内部に設けられるマニホールド22を介して溝部21と連通している。接続部23は、例えば吸着パッド52等、外部の装置(例えば搬送装置あるいは処理装置など)の吸引ラインに接続される。なお、積層体Wをトレイ100に載置しただけの状態では、積層体Wは吸着されないが、例えば、トレイ100が吸着源を備えている場合は、この吸着源を駆動することにより積層体Wを吸着することができる。
【0037】
図6は、積層体Wを載置したトレイ100が処理装置に載置された際の吸着部20の状態の一例を示す断面図である。
図6に示すように、トレイ100は、処理装置に設けられているステージ51上に載置される。なお、トレイ100が搬送装置により搬送される場合においても、
図6に示すステージ51と同様にトレイ100を載置可能なアーム等に載置された状態で搬送される。ステージ51は、トレイ100の接続部23と接続可能な位置に、上記したような複数の吸着パッド52を有する。複数の吸着パッド52のそれぞれは、処理装置あるいは搬送装置などに形成された吸引源53に接続されている。
【0038】
吸着パッド52は、トレイ100がステージ51に載置された状態で、接続部23に接続する位置に配置される。積層体Wを載置したトレイ100がステージ51に載置されると、接続部23が吸着パッド52を介して吸引源53に接続される。これにより、マニホールド22が吸引されて負圧になり、マニホールド22と連通する溝部21によって積層体Wが本体部10の載置面10aに吸着される。この吸着力によってトレイ100が吸着パッド52に押し付けられ、トレイ100がステージ51に保持された状態となる。つまり、トレイ100をステージ51に載置することにより、積層体Wが本体部10を介して吸着パッド52に吸着されることにより、トレイ100がステージ51に保持されることになる。
【0039】
図7は、トレイ100が処理装置に載置された際の液体吸引部30及び噴射部40の状態の一例を示す断面図である。
図7に示すように、ステージ51には、吸着パッド52a及び供給パッド52bが設けられている。吸着パッド52a及び供給パッド52bは、トレイ100の液体吸引部30の吸引口32及び噴射部40の噴射口42にそれぞれ対応して配置されている。トレイ100がステージ51上に載置されると、吸着パッド52a及び供給パッド52bのそれぞれは、本体部10の裏面側において、液体吸引部30の吸引口32及び噴射部40の噴射口42に接続される。
【0040】
吸着パッド52aは、処理装置に設けられている例えば吸引ポンプ等の液体吸引源53aに接続されている。なお、液体吸引源53aは、吸着部20のための吸引源53(
図6参照)が兼用して用いられてもよいし、吸引源53と別の吸引源であってもよい。供給パッド52bは、処理装置に設けられている、あるいは処理装置が設置されている工場建屋内に形成されているガス供給源53bに接続されている。
【0041】
積層体Wを載置したトレイ100がステージ51に載置されると、吸着パッド52a及び供給パッド52bがそれぞれ液体吸引部30の吸引口32及び噴射部40の噴射口42に接続され、液体吸引部30による液体の吸引を行いつつ、噴射部40によるガスの噴射を行う。なお、上記したように、吸引源53の吸引力によってトレイ100がステージ51に保持されているので、吸着パッド52a及び供給パッド52bと、吸引口32及び噴射口42との接続状態が維持される。
【0042】
<積層体処理システム>
図8は、本実施形態に係る積層体処理システムSYSの一例を概略的に示す平面図である。積層体処理システムSYSは、上記したトレイ100を載置して、トレイ100に載置された積層体Wを処理する。積層体処理システムSYSは、は、例えば、トレイ100に載置された積層体Wに対して、膜の一部あるいは全部の除去を行う処理、または洗浄処理を行う。積層体処理システムSYSは、は、ステージ装置50と、ローダ装置60と、洗浄装置70と、乾燥装置80と、アンローダ装置90と、これら各部を統括して制御する不図示の制御装置とを有する。
【0043】
ただし、積層体処理システムSYSは、上記した構成に限定されない。例えば、ローダ装置60及びアンローダ装置90を省略して、ステージ装置50と、洗浄装置70と、乾燥装置80とで構成されてもよいし、乾燥装置80が省略されてもよい。また、洗浄装置70は、積層体Wの形成した膜の一部または全部を除去する装置であってもよい。また、処理装置としては、洗浄装置に限定されず、例えば、支持体を含む積層体Wの一部を、支持体から剥離するための剥離装置であってもよいし、積層体Wをトレイ100に対して反転させるための反転装置であってもよい。
【0044】
ステージ装置50は、上記したステージ51と、ガイド機構54とを有する。ステージ51は、リニアモータあるいは電動回転モータなどの駆動源を有しており、この駆動源を駆動することにより、トレイ100を載置した状態で、ガイド機構54に沿って、ローダ装置60と、洗浄装置70と、乾燥装置80と、アンローダ装置90との間を移動可能である。なお、ステージ51にトレイ100が載置されることにより、
図6及び
図7に示すように、吸着部20による積層体Wの吸着、液体吸引部30による液体の吸引、及び、噴射部40によるガスの噴射を行うことは上記のとおりである。
【0045】
ただし、液体吸引部30による液体の吸引、及び、噴射部40によるガスの噴射について、そのタイミングと動作時間は、不図示の制御装置によって制御されてもよい。例えば、液体吸引部30による液体の吸引、及び、噴射部40によるガスの噴射は、処理装置である洗浄装置70又は乾燥装置80による積層体Wの処理中あるいは処理以降に動作するように、制御装置によって制御されてもよい。
【0046】
ローダ装置60は、積層体Wを載置したトレイ100を積層体処理システムSYSに搬入する。トレイ100は、積層体Wを載置した状態で搬送装置等によってローダ装置60に搬送される。ローダ装置60は、フレーム61を有する。フレーム61は、ステージ装置50のガイド機構54の一部が延びて配置されており、このガイド機構54の一部を支持する。なお、ローダ装置60は、トレイ100を受け取り、上下方向を軸としてトレイ100を回転させる回転機構を有してもよい。また、ローダ装置60は、例えば、不図示の搬送装置により搬送されるトレイ100を受け取ってステージ51に載置するための移載機構を有してもよい。
【0047】
洗浄装置(処理装置)70は、積層体Wを洗浄する。洗浄装置70は、第1ノズル部71と、第2ノズル部72と、第3ノズル部73と、フレーム74とを有する。第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、トレイ100の搬送方向にこの順番で並んで配置される。第1ノズル部71は、積層体Wの周縁部又は端面に第1溶剤を噴射する。第1溶剤は、積層体Wを構成する分離層R(後述)を溶解させるための溶剤である。第2ノズル部72は、積層体Wの周縁部又は端面に第2溶剤を噴射する。第2溶剤は、積層体Wを構成する接着層A(後述)を溶解させる溶剤である。第3ノズル部73は、積層体Wの周縁部又は端面に洗浄液を噴射する。洗浄液は、例えば水である。
【0048】
第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、ステージ51がガイド機構54に沿って移動することにより、トレイ100の移動方向に対して相対的に移動する。ただし、第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、トレイ100の移動方向に移動可能に設けられてもよい。例えば、第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、不図示のノズル駆動装置により、トレイ100の移動方向の前方と後方との間を往復移動可能に設けられてもよい。
【0049】
第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、それぞれ、スリットノズル75と、スプレーノズル76とを有する。スリットノズル75は、積層体Wのうち移動方向の前側及び後側の端辺及びその周縁部に溶剤又は洗浄液を噴射する。スリットノズル75は、2流体スリットノズルが用いられ、移動方向と直交する方向(以下、スリット方向という)に沿った複数の噴射口77を有する。噴射口77は、溶剤又は洗浄液を噴射する液体噴射口77aと、空気または窒素ガスなどの気体を噴射する気体噴射口77bとを有する。
【0050】
複数の噴射口77は、例えば、液体噴射口77aと気体噴射口77bとがスリット方向に交互に並んで配置されるが、この配置に限定されず、例えば、液体噴射口77aと気体噴射口77bとが移動方向に並んで配置されてもよい。スリットノズル75は、液体噴射口77aから溶剤又は洗浄液を噴射し、同時に気体噴射口77bから気体を噴射することで、溶剤等をスリット方向に均一に噴射させることができる。ただし、スリットノズル75として2流体スリットノズルを用いることに限定されず、開口がスリット状のノズルが用いられてもよい。
【0051】
スプレーノズル76は、スリットノズル75の長手方向の両端に配置される。スプレーノズル76は、積層体Wのうち移動方向の両側の側辺、及びトレイ100の載置面10aの両側の側辺に対して溶剤又は洗浄液を塗布する。スプレーノズル76は、2流体スプレーノズルが用いられ、上記したスリットノズル75と同様に、溶剤又は洗浄液を噴射する不図示の液体噴射口と、空気または窒素ガスなどの気体を噴射する不図示の気体噴射口とを有する。スプレーノズル76は、体噴射口から溶剤又は洗浄液を噴射し、同時に気体噴射口から気体を噴射することで、溶剤等を均一に噴射させることができる。ただし、スプレーノズル76として2流体スプレーノズルを用いることに限定されず、各種任意のスプレーノズルが用いられてもよい。
【0052】
フレーム74は、第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73をそれぞれ交換可能に支持する。第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、積層体Wの大きさによって交換されてもよいし、噴射する溶剤あるいは洗浄液の種類によって交換されてもよい。また、第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73は、積層体W(トレイ100)との間隔を調整するために上下方向に移動可能であり、さらに上下方向に移動するための駆動機構を備えてもよい。また、フレーム74は、ステージ装置50のガイド機構54の一部が配置されており、このガイド機構54の一部を支持する。
【0053】
乾燥装置(処理装置)80は、積層体Wあるいはトレイ100に付着している液体を除去して、積層体W(トレイ100を含む)を乾燥させる。乾燥装置80は、液体除去部81と、フレーム82とを有する。液体除去部81は、フレーム82に支持され、ステージ51が移動することにより積層体Wに対して相対的に移動する。なお、液体除去部81は、トレイ100の移動方向に対して移動可能に設けられてもよい。液体除去部81は、積層体Wあるいはトレイ100に対して気体を噴射することにより、積層体Wあるいはトレイ100に付着している溶剤又は洗浄液を除去する。
【0054】
液体除去部81としては、例えばエアナイフ等を用いることができる。なお、液体除去部81は、トレイ100の移動方向に対して傾けた状態で配置されてもよいし、上下方向を軸として回転可能に設けられて、移動方向に対して傾ける角度を変更可能に構成されてもよい。また、液体除去部81は、積層体Wの上面側及び下面側(すなわちトレイ100の裏面側)の両側から気体を噴射する構成であってもよい。積層体Wに噴射する気体としては、例えば、温度及び湿度が調整された、あるいは未調整の空気、窒素ガス、アルゴンガス等が用いられる。フレーム82は、上記したように液体除去部81を支持するとともに、ステージ装置50のガイド機構54の一部が配置されており、このガイド機構54の一部を支持する。
【0055】
アンローダ装置90は、積層体Wを載置したトレイ100を積層体処理システムSYSから搬出する。アンローダ装置90に載置されたトレイ100は、積層体Wを載置した状態で搬送装置等によりアンローダ装置90から他の場所に搬送される。アンローダ装置90は、フレーム91を有する。フレーム91は、ステージ装置50のガイド機構54の一部が延びて配置されており、このガイド機構54の一部を支持する。なお、アンローダ装置90は、上下方向を軸としてトレイ100を回転させる回転機構を有してもよい。また、アンローダ装置90は、例えば、ステージ51から搬送機構にトレイ100を渡すための機構を有してもよい。
【0056】
次に、積層体処理システムSYSの動作を説明する。積層体処理システムSYSの動作は、不図示の制御装置の制御に基づいて行われる。
図9(A)及び(B)は、積層体Wの一例を模式的に示す図である。
図9(A)に示すように、積層体Wは、ファンアウト型PLP技術によって製造されたパネル状の積層体であり、ガラス支持体Gと、分離層Rと、接着層Aと、基板Sとを有する。
【0057】
積層体Wは、例えば、塗布装置等によりガラス支持体G上に分離層Rが形成された後、同じく塗布装置等により分離層R上に接着層Aが積層され、この接着層A上に基板Sが積層される。基板Sは、電子部品を樹脂等でモールドしたモールド層である。基板Sは、例えば、電子部品を接着層Aに配置し、次いで、電子部品を覆うように粉状または粒状の樹脂材料を堆積させた後に、これをプレスして樹脂材料を固めることにより形成される。
【0058】
なお、基板Sの表面のモールドが除去されて、基板Sの表面に、配線パターンが形成されてもよい。また、基板Sが多段に積層されてもよい。基板Sが多段に積層される場合、基板Sに含む電子部品どうしは導電性のバンプ等により電気的に接続されてもよい。積層体Wは、
図9(A)に示すような状態でトレイ100に載置され、搬送装置により積層体処理システムSYSのローダ装置60に搬入される。また、積層体処理システムSYSから搬送装置により搬出された積層体Wは、例えば、
図9(B)に示すように、基板S、接着層A、及び分離層Rを覆うように絶縁層Iが形成される。絶縁層Iは、例えば、ポリイミドなどの樹脂が用いられる。
【0059】
また、
図9(A)に示すように、接着層A上に基板Sを積層した後、接着層Aが基板Sの端部からはみ出してしまうと、その後の工程において、接着層Aによる汚染が発生する可能性がある。そこで、積層体処理システムSYSは、洗浄装置70において基板Sの端部からはみ出した接着層Aを除去することにより、その後の工程における汚染を抑制することができる。なお、以下に説明する積層体処理システムSYSの動作は、不図示の制御装置によって制御される。
【0060】
まず、ステージ装置50は、ステージ51をローダ装置60で待機させ、搬送装置により、積層体Wを載置したトレイ100をローダ装置60に搬送する。ローダ装置60は、搬送装置からトレイ100を受け取ってステージ51に載置する。ステージ装置50は、ステージ51にトレイ100が載置されると、吸引源53が動作を開始する。これにより、トレイ100がステージ51に吸着されて保持され、かつ、積層体Wが本体部10の載置面10aに吸着される。なお、積層体Wは、
図9(A)に示すように、ガラス支持体Gと、分離層Rと、接着層Aと、基板Sとが積層された状態となっている。
【0061】
トレイ100がステージ51に保持された後、ステージ装置50は、ステージ51をガイド機構54に沿って移動させ、トレイ100を洗浄装置70に搬送する。続いて、洗浄装置70内の所定の停止位置でステージ51を停止させる。この待機位置は、第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73の3つのノズル部が積層体Wを搬送方向に通過可能な位置である。以下の説明は、停止したトレイ100に対して第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73が移動する例を挙げているが、これに代えて、移動しない第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73に対してトレイ100が移動させてもよいし、第1ノズル部71、第2ノズル部72及び第3ノズル部73の移動とともに、トレイ100を反対方向に移動させてもよい。
【0062】
<積層体処理方法>
図10は、本実施形態に係る積層体処理方法の一例を模式的に示しており、洗浄装置70の動作の一例を模式的に示す図である。本実施形態に係る積層体処理方法は、上記したように、トレイ100に、パネル状の積層体Wを載置することと、トレイ100に載置された積層体Wを処理することと、を含む。本実施形態では、処理の一例として、積層体Wを洗浄する工程を示している。また、処理としては、積層体Wの一部を形成(例えば成膜)することも含む。
図10に示すように、洗浄装置70は、まず、第1ノズル部71により第1溶剤を噴射する。この場合、洗浄装置70は、第1ノズル部71を積層体Wのうちトレイ100の移動方向の後側端部に配置させ、スリットノズル75から第1溶剤を噴射させる。第1溶剤は、積層体Wのうち搬送方向の後方の縁部に噴射される。これにより、基板Sから移動方向の後方にはみ出した分離層Rが溶解して除去される。
【0063】
次に、洗浄装置70は、第1ノズル部71を移動方向の下流側に移動させつつ、スプレーノズル76により第1溶剤を噴射する。噴射された第1溶剤は、積層体Wのうち移動方向の両側の側方の縁部に噴射される。これにより、基板Sから移動方向の両側の側方にはみ出した分離層Rが溶解して除去される。次に、洗浄装置70は、第1ノズル部71を積層体Wのうち移動方向の前側端部に配置させ、スリットノズル75から第1溶剤を噴射させる。第1溶剤は、積層体Wのうち移動方向の前方の縁部に噴射される。これにより、基板Sから移動方向の前方にはみ出した分離層Rが溶解して除去される。
【0064】
続いて、第2ノズル部72により第2溶剤を噴射する。この場合、第1ノズル部71と同様に、第2ノズル部72のスリットノズル75から噴射した第2溶剤によって、基板Sから移動方向の前方及び後方にそれぞれはみ出した接着層Aが溶解して除去される。また、第2ノズル部72のスプレーノズル76から噴射した第2溶剤によって、基板Sから移動方向の両側の側方にはみ出した接着層Aが溶解して除去される。
【0065】
続いて、第3ノズル部73により洗浄液を噴射する。この場合、洗浄装置70は、上記動作と同様に、第3ノズル部73を積層体Wのうち移動方向の後側端部に配置させ、スリットノズル75から洗浄液を噴射させる。洗浄液は、積層体Wのうち移動方向の後方の縁部に噴射され、この縁部に残留している第1溶剤、第2溶剤、分離層R、及び接着層Aを洗い流す。
【0066】
次に、洗浄装置70は、第3ノズル部73を移動方向の下流側に移動させつつ、スプレーノズル76により洗浄液を噴射する。洗浄液は、積層体Wのうち移動方向の両側の側方の縁部に噴射され、この縁部に残留している第1溶剤、第2溶剤、分離層R、及び接着層Aを洗い流す。なお、第3ノズル部73が移動している間に、第3ノズル部73のスリットノズル75から洗浄液を噴射させて、積層体Wの上面に付着している異物または溶剤を洗い流すようにしてもよい。次に、洗浄装置70は、第3ノズル部73を積層体Wのうち移動方向の前側端部に配置させ、スリットノズル75から洗浄液を噴射させる。洗浄液は、積層体Wのうち移動方向の前方の縁部に噴射され、この縁部に残留している第1溶剤、第2溶剤、分離層R、接着層Aを洗い流す。
【0067】
なお、洗浄装置70が積層体Wに溶剤(第1溶剤、第2溶剤)又は洗浄液を噴射する場合、溶剤あるいは洗浄液がトレイ100の本体部10の載置面10aと積層体Wとの間に入り込むことがある。このため、ステージ装置50は、洗浄装置70において溶剤及び洗浄液を積層体Wに噴射している間、さらには噴射後の一定時間において、液体吸引源53a及びガス供給源53bを作動させる。
【0068】
これにより、トレイ100は、液体吸引部30から液体の吸引が行われるとともに、噴射部40からガスが噴射される。液体吸引部30により、積層体Wの裏面側の周縁部から入り込む溶剤又は洗浄液が吸引されて溝部31に引き込まれる。また、噴射部40から噴射されるガスにより、積層体Wの裏面側の周縁部から奥に入り込もうとする溶剤又は洗浄液が外側に押し戻されて、液体吸引部30により吸引される。このように、液体吸引部30による液体の吸引、及び噴射部40によるガスの噴射によって、溶剤又は洗浄液が積層体Wと載置面10aとの間に入り込むのを抑制できる。
【0069】
また、噴射部40からの単位時間あたりのガスの噴出量を、液体吸引部30における単位時間当たりの吸引量より小さくすることにより、載置面10aから積層体Wが浮き上がることを防止しつつ、溶剤又は洗浄液が積層体Wと載置面10aとの間に入り込むのを効率よく抑制できる。洗浄装置70において、以上の動作を行うことにより、積層体W(トレイ100を含む)の洗浄処理が完了する。
【0070】
洗浄処理が完了した後、ステージ装置50のステージ51は、ガイド機構54に沿って移動し、トレイ100を乾燥装置80に搬送する。ステージ装置50は、乾燥装置80において、ステージ51をガイド機構54に沿って移動方向の下流側に所定速度で移動させる。乾燥装置80は、積層体Wが液体除去部81の下方を通過する際に、液体除去部81から気体を噴射させ、積層体Wに付着した溶剤又は洗浄液を吹き飛ばして除去する。このとき、液体吸引部30による液体の吸引、及び噴射部40によるガスの噴射を動作させてもよいし、停止させてもよい。
【0071】
なお、上記した例では、ステージ51を移動させつつ液体除去部81から気体を噴射させているが、これに限定されず、ステージ51を停止させ、液体除去部81から気体を噴射させながら液体除去部81を移動方向に移動させてもよいし、ステージ51を移動させつつ液体除去部81から気体を噴射させながら液体除去部81を反対方向に移動させてもよい。また、乾燥装置80は、加熱したチャンバ内において液体除去部81による溶剤又は洗浄液の除去を行ってもよいし、加熱した気体を液体除去部81から噴射させてもよい。いずれの場合も積層体Wの乾燥を促進させることが可能である。乾燥装置80において、以上の動作を行うことにより、乾燥処理が完了する。
【0072】
乾燥処理が完了した後、ステージ装置50のステージ51は、ガイド機構54に沿って移動し、トレイ100をアンローダ装置90に搬送する。続いて、ステージ装置50は、吸引源53の駆動を停止させる。これにより、トレイ100は、ステージ51に吸着された状態が解放され、かつ、積層体Wが本体部10に吸着された状態が解放される。その後、アンローダ装置90は、搬送装置にトレイ100を渡す。これにより、トレイ100は、積層体処理システムSYSから搬出される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るトレイ100は、吸着部20よりも外側に設けられて液体を吸引する液体吸引部30を備えるので、積層体Wとトレイ100(載置面10a)との間に入り込もうとする液体を液体吸引部30によって吸引し、液体が積層体Wの裏面側に入り込むことを抑制して、積層体Wの裏面側が液体に濡れることを防止することができる。さらに、積層体Wの裏面側に液体が入り込むことを抑制するので、液体(例えば溶剤等)によって積層体Wがダメージを受けることを回避できる。従って、本実施形態に係る積層体処理方法によれば、積層体Wに与えるダメージを回避して、歩留りを向上させるなど、効率よく積層体Wを処理または作成することができる。
【0074】
<トレイの他の実施形態>
上記した実施形態においては、トレイ100が液体吸引部30及び噴射部40を備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図11〜
図15は、それぞれ他の実施形態に係るトレイを示す断面図あるいは平面図である。なお、以下の
図11〜
図15に示す他の実施形態の説明において、上記したトレイ100に関する実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する
【0075】
図11に示すように、トレイ100Aは、上記したトレイ100に対して、液体吸引部30を有しているが、噴射部40に相当する構成を有していない。このトレイ100Aにおいても、液体吸引部30によって、積層体Wとトレイ100Aの載置面10aとの間に入り込もうとする液体を吸引するので、積層体Wの裏面側に液体が入り込むことを抑制し、積層体Wの裏面側が溶剤あるいは洗浄液などの液体で濡れることを防止することができる。
【0076】
また、上記したトレイ100においては、液体吸引部30が平面状の載置面10aに設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図12に示すように、トレイ100Bは、本体部10の外周部にテーパ面13を有する。テーパ面13は、内側から外周側に向けて、載置面10aから離れるように傾斜して形成されている。テーパ面13は、平面状に形成されるが、湾曲した曲面状に形成されてもよい。また、テーパ面13は、本体部10の外周部に沿った一周にわたって連続的または断続的に形成されている。このトレイ100Bは、積層体Wを載置した状態において、積層体Wの端部がテーパ面13の上部に配置された状態となる。また、トレイ100Bは、液体吸引部30Bの吸引口32Bがテーパ面13に設けられる。
【0077】
このトレイ100Bでは、トレイ100Bの本体部10の外周部がテーパ面13であるため、液体はテーパ面13によって外側に向けて流れやすくなり、積層体Wの端部とトレイ100Bの載置面10aとの間に溶剤又は洗浄液等の液体が入り込みにくくなる。また、テーパ面13に液体吸引部30Bが設けられるため、テーパ面13上において外側に流れていく液体を効率よく吸引することができる。このトレイ100Bにおいても、液体吸引部30Bによって積層体Wの裏面側に液体が入り込むことを抑制し、積層体Wの裏面側が溶剤あるいは洗浄液などの液体で濡れることを防止することができる。
【0078】
図13に示すトレイ100Cは、
図12に示すトレイ100Bの構成に噴射部40の構成を加えたものである。具体的には、トレイ100Cは、本体部10の外周部に上記したテーパ面13を有し、テーパ面13に液体吸引部30Bが設けられる。また、液体吸引部30Bの内側において、本体部10の載置面10aに噴射部40が設けられる。
【0079】
このトレイ100Cは、本体部10の外周部がテーパ面13であるため、トレイ100Bと同様に、テーパ面13上の液体は本体部10の外側に向けて流れやすくなり、液体吸引部30Bによって液体を効率よく吸引することができる。さらに、噴射部40により本体部10の外側に向けて気体が噴射されるため、積層体Wの端部とトレイ100Cとの間に液体が入り込むのをより確実に防ぐことができる。このトレイ100Cにおいても、液体吸引部30B及び噴射部40によって積層体Wの裏面側に液体が入り込むことを抑制し、積層体Wの裏面側が溶剤あるいは洗浄液などの液体で濡れることを防止することができる。
【0080】
また、上記したトレイ100では、溝部31の底部33が載置面10aに平行である構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図14に示すように、トレイ100Dは、溝部31Dの底部33Dがテーパ状に形成されている。底部33Dは、本体部
10の内側から外側に向けて載置面10aから離れるように傾斜している。底部33Dは、平面状に形成されるが、湾曲した曲面状に形成されてもよい。
【0081】
このトレイ100Dは、溝部31Dの底部33Dがテーパ状であるため、溝部31Dに入り込んだ液体は本体部10の外側に向けて移動しやすくなる。このため、溝部31Dの内側に液体が流れにくくなり、液体吸引部30Dによって効率よく液体を吸引することができる。ま、トレイ100Dは、噴射部40により本体部10の外側に向けて気体が噴射されるため、積層体Wの端部とトレイ100Dとの間に液体が入り込むのをより確実に防ぐことができる。このトレイ100Dにおいても、液体吸引部30D及び噴射部40によって積層体Wの裏面側に液体が入り込むことを抑制し、積層体Wの裏面側が溶剤あるいは洗浄液などの液体で濡れることを防止することができる。
【0082】
また、上記したトレイ100は、吸着部20の溝部21が、本体部10の4辺に沿って矩形状に形成され、矩形の内部において縦横に複数列ずつ設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図15に示すように、トレイ100Eは、溝部21Aと溝部21Bとを有している。溝部21Aは、溝部21Bとは別に、溝部21Bを囲むように矩形状に形成されている。溝部21Bは、上記したトレイ100の溝部21と同様に矩形状に形成され、矩形の内部において縦横に1列ずつ設けられた格子状の構成である。溝部21A及び溝部21Bは、いずれもマニホールド22に接続されている。
【0083】
このように、溝部21A及び溝部21Bと複数形成されたトレイ100Eであっても、積層体Wをトレイ100Eの載置面10aに確実に吸着させることができる。なお、保護部11(
図1下図及び
図2参照)に形成される切り込み11aは、溝部21A及び溝部21Bに対応してそれぞれ形成されており、溝部21A及び溝部21Bを介した吸着力を阻害しないようにしている。
【0084】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、トレイ100の載置面10aのうち、積層体Wの周縁部が当接する部分に樹脂製又はゴム製の当接部12を備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、当接部12の材料が樹脂又はゴム以外の材料を用いる構成であってもよいし、当接部12が設けられない構成であってもよい。
【0085】
また、上記した実施形態では、積層体Wの中央部が当接する部分に、シート状の防水透湿性素材を用いた保護部11を備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、保護部11として透水性素材のシートが貼り付けられて構成されてもよい。透水性素材としては、織物あるいは不織布などが用いられてもよい。また、保護部11が積層体Wの中央部の全面に当接する構成に代えて、積層体Wの中央部の一部に当接する構成であってもよい。また、トレイ100は、保護部11が設けられない構成であってもよい。
【0086】
また、上記した実施形態では、噴射部40から気体を噴射する際、単位時間あたりのガスの噴出量が液体吸引部30における単位時間当たりの吸引量より小さい場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、噴射部40における単位時間当たりのガスの噴射量を、液体吸引部30における単位時間当たりの吸引量よりも大きくしてもよい。この場合、吸着部20による積層体Wの吸着を損なわないように、噴射部40から噴射された気体が外側に排出されるように当接部12の一部に気体の流路が設けられてもよい。
【0087】
また、上記した実施形態では、液体吸引部30がトレイ100の四隅の近傍を含んで設けられ、噴射部40がトレイ100の四隅近傍の液体吸引部30に対応して配置される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、液体吸引部30又は噴射部40は、四隅の全部に配置されることに代えて、四隅のうちの1つ〜3つの箇所に液体吸引部30又は噴射部40が設けられてもよい。
【0088】
また、上記した実施形態では、噴射部40が外側に傾いた向きでガスを噴射する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、噴射部40が載置面10aに垂直な方向にガスを噴射する構成であってもよいし、噴射部40が載置面10aに平行な方向にガスを噴射する構成であってもよい。
【0089】
また、上記した実施形態では、液体吸引部30が積層体Wの縁部に対応するように一周にわたって設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、液体吸引部30が、積層体Wの縁部に対応する部分の一部、例えば、本体部10の角部のみに配置された構成であってもよいし、角部を除いて本体部10の四辺に沿った部分にのみ配置された構成であってもよい。
【0090】
また、上記した実施形態では、液体吸引部30が、積層体Wを載置した際に、上方から見て積層体Wに覆われる位置に設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、積層体Wを載置した際に、上方から見て液体吸引部30が積層体Wの外側の位置に設けられてもよい。この場合、液体吸引部30は、液体が積層体Wとトレイ100との間に達する前に液体を吸引することができる。