特許第6853716号(P6853716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許6853716レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法
<>
  • 特許6853716-レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法 図000070
  • 特許6853716-レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法 図000071
  • 特許6853716-レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法 図000072
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853716
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20210322BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20210322BHJP
   C08F 20/32 20060101ALI20210322BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20210322BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210322BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/26 511
   C08F20/32
   H01L21/30 573
   G03F7/20 521
   G03F7/40 521
【請求項の数】21
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2017-71098(P2017-71098)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173521(P2018-173521A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕典
(72)【発明者】
【氏名】長井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−316268(JP,A)
【文献】 特開2003−255329(JP,A)
【文献】 特開2016−185999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 − 7/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、
(A1)下記一般式(X)で示される化合物の一種又は二種以上、及び
(B)有機溶剤
を含有するものであることを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化1】
(式中、n01は1〜10の整数を示し、n01が2の場合、Wはスルフィニル基、スルホニル基、エーテル基、又は炭素数2〜50の2価の有機基を示し、n01が2以外の整数の場合、Wは炭素数2〜50のn01価の有機基を示す。また、Yはメチレン基、−OCHCH(OH)CHOC(=O)−、−CHCH(OH)CHOC(=O)−、−OCHCH(OH)CHOC(=O)CH−、又は−CHCH(OH)CHOC(=O)CH−を示す。
【請求項2】
前記一般式(X)中、Wが炭素数3〜10の2〜5価の複素環基であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項3】
前記レジスト下層膜材料が、更に、
(A2)下記一般式(1)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含む重合体(1A)、を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜材料。
【化2】
(式中、R01は、水素原子又はメチル基である。R02は、下記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。)
【化3】
(式中、破線は結合手を示す。)
【請求項4】
前記重合体(1A)が、更に、下記一般式(2)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むものであることを特徴とする請求項に記載のレジスト下層膜材料。
【化4】
(式中、R01は、前記と同様である。Aは、単結合、−CO−、又は−CO−を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Arは、置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)
【請求項5】
前記重合体(1A)が、更に、下記一般式(3)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むものであることを特徴とする請求項又は請求項に記載のレジスト下層膜材料。
【化5】
(式中、R01は、前記と同様である。Rは、脂環構造を有する炭素数3〜20の1価の基である。)
【請求項6】
前記重合体(1A)の重量平均分子量が、1,000〜20,000であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項7】
前記レジスト下層膜材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち一種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項8】
前記レジスト下層膜材料が、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示すレジスト下層膜を与えるものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項9】
前記レジスト下層膜が、前記レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、前記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることを特徴とする請求項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項10】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I−1)被加工基板上に、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(I−2)該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I−3)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、及び
(I−4)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II−1)被加工基板上に、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(II−2)該レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II−3)該レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II−4)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II−5)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II−6)該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III−1)被加工基板上に、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(III−2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III−3)該無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜を形成する工程、
(III−4)該有機反射防止膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III−5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III−6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(III−7)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
前記(II−6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記被加工基板にパターンを転写する工程を有することを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を有することを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記レジスト下層膜材料として、ドライエッチング速度が、前記レジスト上層膜のドライエッチング速度より高いものを用いることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記レジスト下層膜を、前記被加工基板上に前記レジスト下層膜材料を塗布し、100℃以上500℃以下の温度で、10〜600秒間熱処理することによって形成することを特徴とする請求項10から請求項17のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることを特徴とする請求項10から請求項18のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
被加工基板上に請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料をコーティングし、前記レジスト下層膜材料を100℃以上500℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理することによって硬化膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項21】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることを特徴とする請求項20に記載のレジスト下層膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングに用いられるレジスト下層膜材料、該レジスト下層膜材料を用いたパターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなスイッチング機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとして被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまうという問題が発生した。このため、パターンの微細化に伴いフォトレジスト膜は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常、パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しない。そのため、基板の加工中にレジスト膜もダメージを受けて崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなるという問題があった。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。しかしながら、その一方で、解像性を高めるために、フォトレジスト組成物に使用する樹脂には、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められてきた。そのため、露光光がi線、KrF、ArFと短波長化するにつれて、樹脂もノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂と変化してきたが、現実的には基板加工時のドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向にある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック樹脂等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行う際には、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングによりケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいレジスト組成物や、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(レジスト中間膜)にパターンを転写することができ、続いて酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングによるパターン転写を行えば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック樹脂等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。上述のようなレジスト下層膜としては、例えば特許文献1に記載のものなど、すでに多くのものが公知となっている。
【0008】
一方、近年においては、マルチゲート構造等の新構造を有する半導体装置の製造検討が活発化しており、これに呼応し、レジスト下層膜に対して従来以上の優れた平坦化特性及び埋め込み特性の要求が高まってきている。例えば、下地の被加工基板にホール、トレンチ、フィン等の微小パターン構造体がある場合、レジスト下層膜によってパターン内を空隙なく膜で埋め込む(gap−filling)特性が必要になる。また、下地の被加工基板に段差がある場合や、パターン密集部分とパターンのない領域が同一ウエハー上に存在する場合、レジスト下層膜によって膜表面を平坦化(planarization)する必要がある。下層膜表面を平坦化することによって、その上に成膜するレジスト中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンやその後の被加工基板の加工工程でのマージン低下を抑制することができる。また、基板加工後に、埋め込み・平坦化に用いたレジスト下層膜をドライエッチングにより残渣なく除去するために、上述とは異なるドライエッチング特性を有するレジスト下層膜、例えばレジスト上層膜より速いドライエッチング速度を有するレジスト下層膜が必要とされる場合もある。更には、化学薬品を用いたウェットエッチングによる基板加工が必要とされる場合もあり、その場合、加工マスクとなるレジスト下層膜には、ウェットエッチング液耐性も求められることとなる。
【0009】
ここで、多層レジスト法に関してウェットエッチングプロセスに対応した材料が望まれる背景について、詳述する。半導体装置の性能向上のため、最先端の半導体装置では、3次元トランジスタや貫通配線等の技術が使用されている。このような半導体装置内の構造を形成するために使用されるパターニング工程においても、上記の多層レジスト法によるパターニングが行われている。このようなパターニングにおいては、パターン形成後、当該パターンにダメージを与えることなくケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程が求められる場合がある。この除去が不十分である場合、即ち洗浄対象物を残存させたまま次工程の製造プロセスへウエハーを流品させた場合、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。このように、素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなってきている。しかしながら、従来のケイ素含有レジスト中間膜の主要構成元素と半導体装置基板の主要構成元素はいずれもケイ素の場合が多く、ドライエッチングによりケイ素含有レジスト中間膜を選択的に除去しようとしても構成成分が近似しており、半導体装置基板へのダメージを抑えることは困難であった。この問題は、通常のフッ酸系剥離液を用いたウェットエッチングを行っても、解決することができない。そこで、半導体装置基板に対してダメージを与えない剥離液として、半導体製造プロセスにて一般的に使用されているSC1(Standard Clean−1)と呼ばれるアルカリ性過酸化水素水のウェットエッチング液としての適用が考えられる。この場合、逆にレジスト下層膜にはアルカリ性過酸化水素水耐性が必要となる。
【0010】
他に、レジスト下層膜をエッチングマスクとして、アルカリ性過酸化水素水を用いて窒化チタン等の被加工基板をウェットエッチングするプロセスが検討されている。この場合も、レジスト下層膜にはアルカリ性過酸化水素水耐性が必要となる。
【0011】
ドライエッチング速度が速く、段差基板を平坦化可能な半導体装置製造用レジスト下層膜材料として、例えば特許文献2では、ポリグリシジルメタクリレート等の高分子化合物を有する材料が提案されている。また、ドライエッチング速度が速い半導体装置製造用レジスト下層膜材料として、特許文献3では(メタ)アクリル酸及びグリシジル(メタ)アクリレート等を単量体として製造した共重合体を有する材料、特許文献4ではメタクリル酸ヒドロキシプロピル等を単量体として製造した共重合体と架橋剤を含む材料が提案されている。しかしながら、これら公知材料ではアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分であるという問題があった。
【0012】
また、アルカリ性過酸化水素水耐性を有するレジスト下層膜材料として、特許文献5ではエポキシ基及びビニルエーテル化合物を用いて保護したカルボキシル基(アセタール保護エステル)を有するポリマー等を含む材料が、レジスト中間膜を用いない2層プロセス用に提案されている。しかしながら、該材料は平坦化特性が不十分であり、特に最先端プロセスにおいて要求が高い、凹凸や段差がある被加工基板のパターニングには適さず、また、アルカリ性過酸化水素水耐性についても、実用を考えると未だ不十分であるという問題があった。
【0013】
また、優れたドライエッチング特性、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、及び優れた平坦化特性を有するレジスト下層膜として、特許文献6ではエポキシ基及び3級アルキル基を用いて保護したカルボキシル基を有するポリマー等を含む材料が提案されている。しかしながら、該材料はアルカリ性過酸化水素水耐性について、実用を考えると未だ不十分であるという問題があった。
【0014】
以上のように、ウェットエッチングプロセスへの高い適合性(即ち、アルカリ性過酸化水素水耐性)を有するとともに、良好な埋め込み/平坦化特性とドライエッチング特性をも備えた半導体装置製造用レジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−205685号公報
【特許文献2】特開昭61−180241号公報
【特許文献3】特許3082473号公報
【特許文献4】特許4310721号公報
【特許文献5】国際公開特許WO2015/030060号公報
【特許文献6】特開2016−185999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性、良好な埋め込み/平坦化特性、及びドライエッチング特性を有するレジスト下層膜材料、これを用いたパターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明では、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A1)下記一般式(X)で示される化合物の一種又は二種以上、及び(B)有機溶剤を含有するレジスト下層膜材料を提供する。
【化1】
(式中、n01は1〜10の整数を示し、n01が2の場合、Wはスルフィニル基、スルホニル基、エーテル基、又は炭素数2〜50の2価の有機基を示し、n01が2以外の整数の場合、Wは炭素数2〜50のn01価の有機基を示す。また、Yは単結合又は炭素数1〜10の酸素原子を含んでもよい2価の連結基を示す。)
【0018】
このようなレジスト下層膜材料であれば、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するものとすることができる。
【0019】
またこのとき、前記一般式(X)中、Yが単結合、メチレン基、又は−OCHCH(OH)CHOC(=O)−であることが好ましい。
【0020】
このような構造を含むレジスト下層膜材料であれば、アルカリ性過酸化水素水耐性、埋め込み/平坦化特性、及びドライエッチング特性を更に優れたものとすることができる。
【0021】
またこのとき、前記一般式(X)中、Wが炭素数3〜10の2〜5価の複素環基であることが好ましい。
【0022】
このような構造を含むレジスト下層膜材料であれば、ドライエッチング特性を特に優れたものとすることができる。
【0023】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料が、更に、(A2)下記一般式(1)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含む重合体(1A)、を含有するものであることが好ましい。
【化2】
(式中、R01は、水素原子又はメチル基である。R02は、下記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。)
【化3】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0024】
このような重合体を含有するレジスト下層膜材料であれば、より良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、より優れた埋め込み/平坦化特性、及びより優れたドライエッチング特性を有するものとすることができる。
【0025】
またこのとき、前記重合体(1A)が、更に、下記一般式(2)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むものであることが好ましい。
【化4】
(式中、R01は、前記と同様である。Aは、単結合、−CO−、又は−CO−を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Arは、置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)
【0026】
このような繰返し単位を含有するものであれば、この重合体を含むレジスト下層膜材料を、波長193nmにおける適度な光学特性を有するものとすることができるため、特に多層ArFリソグラフィーにおいて使用した際に、露光時の反射光を抑制でき、レジスト上層膜のリソグラフィー時の解像性を向上させることができる。
【0027】
またこのとき、前記重合体(1A)が、更に、下記一般式(3)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むものであることが好ましい。
【化5】
(式中、R01は、前記と同様である。Rは、脂環構造を有する炭素数3〜20の1価の基である。)
【0028】
このような繰返し単位を含有するものであれば、この重合体を含むレジスト下層膜材料の光学特性を劣化させることなく、エッチング速度、エッチング後パターン形状等のエッチング特性を、顧客要求に合わせて調整することが可能となる。
【0029】
またこのとき、前記重合体(1A)の重量平均分子量が、1,000〜20,000であることが好ましい。
【0030】
このような分子量であれば、この重合体を含むレジスト下層膜材料の成膜性が良好となり、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。また、塗布欠陥の発生を抑制でき、埋め込み/平坦化特性に更に優れたものとすることができる。
【0031】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0032】
本発明のレジスト下層膜材料では、必要に応じて、上記のような添加剤を添加して、スピンコーティングによる塗布成膜性、硬化温度、埋め込み/平坦化特性、及び光学特性(吸光特性)などを微調整することができる。
【0033】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料が、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示すレジスト下層膜を与えるものであることが好ましい。
【0034】
更には、前記レジスト下層膜が、前記レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、前記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0035】
このようなレジスト下層膜材料であれば、十分なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するものとなるため、加工可能な被加工基板やウェットエッチングで除去可能なレジスト中間膜等の選択肢を増やすことができる。
【0036】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(I−2)該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I−3)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、及び
(I−4)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0037】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(II−2)該レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II−3)該レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II−4)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II−5)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II−6)該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0038】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III−1)被加工基板上に、上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(III−2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III−3)該無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜を形成する工程、
(III−4)該有機反射防止膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III−5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III−6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(III−7)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0039】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法(2層レジストプロセス、3層レジストプロセス、又は4層レジストプロセス)による微細なパターンの形成が可能であり、またレジスト下層膜の形成によって被加工基板上の段差の埋め込みや被加工基板の平坦化を行うことができる。更に、上記のように本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスにも適用可能である。
【0040】
また本発明のパターン形成方法には、前記(II−6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加することもできる。
【0041】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングでレジスト中間膜の除去を行うことができる。
【0042】
また本発明のパターン形成方法には、前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記被加工基板にパターンを転写する工程を追加することもできる。
【0043】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで被加工基板へのパターン転写を行うことができる。
【0044】
また本発明のパターン形成方法には、前記(I−4)工程、前記(II−6)工程、又は前記(III−7)工程の後、更に、前記パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を追加することもできる。
【0045】
このようなパターン形成方法は、特に表面に凹凸を有する基板のイオン打込み加工に好適である。
【0046】
またこのとき、前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加することもできる。
【0047】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングでイオン打込みによるパターン加工後のレジスト中間膜の除去を行うこともできる。
【0048】
またこのとき、前記レジスト下層膜材料として、ドライエッチング速度が、前記レジスト上層膜のドライエッチング速度より高いものを用いることが好ましい。
【0049】
このようなレジスト下層膜材料を用いれば、マスクとして使用したレジスト下層膜をドライエッチングによって残渣なく除去することが可能となるため、欠陥の少ない半導体装置を製造することができる。
【0050】
またこのとき、前記レジスト下層膜を、前記被加工基板上に前記レジスト下層膜材料を塗布し、100℃以上500℃以下の温度で、10〜600秒間熱処理することによって形成することが好ましい。
【0051】
このような条件であれば、凹凸を有する基板上であっても空隙なく平坦なレジスト下層膜を形成でき、また架橋反応を促進させ、上層の膜とのミキシングを防止することができる。また、熱処理温度及び熱処理時間を上記範囲内で適宜調整することにより、用途に適した埋め込み/平坦化特性や硬化特性を得ることができる。
【0052】
またこのとき、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることが好ましい。
【0053】
本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上においても、空隙のない平坦なレジスト下層膜を形成することができる。
【0054】
さらに、本発明では、被加工基板上に上述のレジスト下層膜材料をコーティングし、前記レジスト下層膜材料を100℃以上500℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理することによって硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0055】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性、良好な埋め込み/平坦化特性、及びドライエッチング特性を有するレジスト下層膜を形成できる。また、ベーク温度及び時間を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した平坦化・埋込特性、硬化特性を得ることができる。
【0056】
またこのとき、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることが好ましい。
【0057】
本発明のレジスト下層膜形成方法は、特に、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上に空隙のない平坦化有機膜を形成する場合に特に有用である。
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜材料であれば、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性、優れた埋め込み/平坦化特性、及び優れたドライエッチング特性を有するものとすることができる。
また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法(2層レジストプロセス、3層レジストプロセス、又は4層レジストプロセス)による微細なパターンの形成が可能であり、またレジスト下層膜の形成によって被加工基板上の段差の埋め込みや被加工基板の平坦化を行うことができる。従って、本発明のパターン形成方法は、ウェットエッチング加工プロセス、下層膜形成による平坦化プロセス、ドライエッチングによる下層膜除去プロセスに好適に用いられ、半導体装置製造用の微細パターニングに適用される多層レジストプロセスに用いられるパターン形成方法として極めて有用である。
さらに、本発明のレジスト下層膜形成方法であれば、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性、良好な埋め込み/平坦化特性、及びドライエッチング特性を有するレジスト下層膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
図2】実施例及び比較例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
図3】実施例及び比較例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。前述のように、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性、良好な埋め込み/平坦化特性、及びドライエッチング特性を有するレジスト下層膜材料、これを用いたパターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法が求められていた。
【0061】
本発明者は、レジスト下層膜を用いた多層リソグラフィーにおいて、ウェットエッチング加工の実現、望ましくは、さらに、下層膜形成による埋込・平坦化、下層膜のドライエッチング除去の並立を可能とするため、種々のレジスト下層膜材料、及びパターン形成方法の探索を行ってきた。その結果、特定構造の化合物を主成分とするレジスト下層膜材料、及びパターン形成方法が非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0062】
即ち、本発明のレジスト下層膜材料は、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A1)下記一般式(X)で示される化合物の一種又は二種以上、及び(B)有機溶剤を含有するものである。
【化6】
(式中、n01は1〜10の整数を示し、n01が2の場合、Wはスルフィニル基、スルホニル基、エーテル基、又は炭素数2〜50の2価の有機基を示し、n01が2以外の整数の場合、Wは炭素数2〜50のn01価の有機基を示す。また、Yは単結合又は炭素数1〜10の酸素原子を含んでもよい2価の連結基を示す。)
【0063】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
<レジスト下層膜材料>
本発明のレジスト下層膜材料は、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A1)下記一般式(X)で示される化合物の一種又は二種以上、及び(B)有機溶剤を含有するものであり、本発明のレジスト下層膜材料は、(A1)成分をベース樹脂として含有する。以下、各成分について、更に詳細に説明する。
【化7】
(式中、n01は1〜10の整数を示し、n01が2の場合、Wはスルフィニル基、スルホニル基、エーテル基、又は炭素数2〜50の2価の有機基を示し、n01が2以外の整数の場合、Wは炭素数2〜50のn01価の有機基を示す。また、Yは単結合又は炭素数1〜10の酸素原子を含んでもよい2価の連結基を示す。)
【0065】
[(A1)成分]
(A1)成分は前記一般式(X)で示される化合物の一種又は二種以上である。本発明のレジスト下層膜材料は、前記一般式(X)で示される化合物を含有することにより、被加工基板、特には無機被加工基板との密着性に優れるため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチング中の剥離が抑制され、結果として良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を示すものと考えられる。なお、被加工基板との優れた密着性は、主に分子内の3,4−ジヒドロキシフェニル基の存在により、発現しているものと考えられる。
【0066】
前記一般式(X)中、n01は1〜10の整数を示し、n01が2の場合、Wはスルフィニル基、スルホニル基、エーテル基、又は炭素数2〜50の2価の有機基を示し、n01が2以外の整数の場合、Wは炭素数2〜50のn01価の有機基を示す。即ち、Wはスルフィニル基、スルホニル基、エーテル基、又は炭素数2〜50の有機化合物から1〜10個の水素原子を除去した構造の、1〜10価の有機基である。Wに1〜10個の水素原子が付加した構造(即ち、上記の炭素数2〜50の有機化合物)は、直鎖状、分枝状、又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、エーテル基、水酸基、エステル基、ケト基、アミノ基、ハロゲン基、スルフィド基、カルボキシル基、スルホ基、アミド基、イミド基、シアノ基、アルデヒド基、イミノ基、ウレア基、カーバメート基、カーボネート基、ニトロ基、スルホン基を含んでもよい。特に、Wが炭素数3〜10の2〜5価の複素環基であることが好ましい。用途に応じて、Wとして適切な構造を選択することにより、エッチング耐性、耐熱性、光学定数、極性、柔軟性などの特性を調整することができる。Wとしてより具体的には、下記に示す構造を例示できるがこれらに限定されない。なお、下記式中、破線は結合手を表す。
【0067】
【化8】
【0068】
【化9】
【0069】
【化10】
【0070】
【化11】
【0071】
前記一般式(X)中、Yは単結合又は炭素数1〜10の酸素原子を含んでもよい2価の連結基である。用途に応じて、Yとして適切な構造を選択することにより、耐熱性、極性、柔軟性などの特性を調整することができる。好ましいYの例として具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、イソプロピリデン基、エチリデン基、カルボニル基、テトラメチレン基、シクロヘキサンジイル基、デカンジイル基、フェニレン基、−CO−、−OCO−、−COCH−、−COCHCH−、−COCHCHCH−、−COCH(CH)−、−COCHCHCHCH−、−COCHCHCHCHCHCHCHCH−、−COCHCHO−、−COCHCHOCHCHO−、−COCHCHOCHCHOCHCHO−、−OCHCH(OH)CHO−、−OCHCH(OH)CHC−(即ち、−OCHCH(OH)CHOC(=O)−)を例示できるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明において、(A1)成分の化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。(A1)成分の化合物の分子量(式量)は300〜5,000が好ましく、500〜2,500が特に好ましい。分子量が300以上であれば、成膜性に劣ったり、あるいは、加熱硬化時の昇華物増加により装置を汚染したりする恐れがなくなる。また、分子量が5,000以下であれば、平坦化/埋込特性に劣る恐れがなくなる。
【0073】
(A1)成分の化合物の例として具体的には、下記の化合物を例示できるがこれらに限定されない。
【化12】
【0074】
【化13】
【0075】
[(A2)成分]
本発明のレジスト下層膜材料は、更に、(A2)成分として、下記一般式(1)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含む重合体(1A)を含有することが好ましい。
【化14】
(式中、R01は、水素原子又はメチル基である。R02は、下記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。)
【化15】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0076】
重合体(1A)の配合により、塗布成膜性が向上するとともに、エッチング耐性の調整可能範囲を拡大できる。重合体(1A)を配合する場合の配合量は、(A1)成分の化合物100質量部に対し、5〜2,000質量部の範囲が好ましく、20〜1,000質量部がより好ましい。重合体(1A)の配合量が5質量部以上であれば、配合効果を十分に得ることができ、逆に重合体(1A)の配合量が2,000質量部以下であれば、アルカリ性過酸化水素水耐性を十分に得ることができる。
【0077】
重合体(1A)は、上記一般式(1)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むことを特徴とする。上記一般式(1)で示される繰返し単位は、重合体(1A)に十分な熱硬化能を与え、上層膜とのインターミキシングを防ぐ効果を付与する。また、アルカリ性過酸化水素水耐性にも一定の寄与があると考えられる。
【0078】
上記一般式(1)中、R01は、水素原子又はメチル基である。R01が水素原子である場合、重合体(1A)が、流動性に優れるため平坦化/埋め込み特性に優れる場合や、炭素含量が少なくなるためエッチング速度に優れる場合がある。一方、R01がメチル基である場合、本発明のレジスト下層膜材料の成膜塗布性に優れる場合がある。R02は、上記式(1−1)〜(1−3)から選択される基である。
【0079】
重合体(1A)は、上記一般式(1)で示される繰り返し単位を、一種のみ有しても良いし、二種以上有していてもよい。上記一般式(1)で示される繰返し単位は、具体的には、下記のものである。
【化16】
【0080】
重合体(1A)は、更に、下記一般式(2)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むことがより好ましい。
【化17】
(式中、R01は、前記と同様である。Aは、単結合、−CO−、又は−CO−を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Arは、置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)
【0081】
上記一般式(2)で示される繰返し単位は、波長193nmにおける適度な光学特性をベース樹脂に与えるため、特に多層ArFリソグラフィーにおける露光時に、反射光を抑制でき、解像性に優れる。なお、反射光を抑制するために、レジスト下層膜材料の光学定数としては、屈折率nが1.5〜1.9、消衰係数kが0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0082】
上記一般式(2)中、R01は、水素原子又はメチル基である。Aは、単結合、−CO−、又は−CO−を含有する炭素数2〜10の2価の連結基である。Aとしてより具体的には、単結合、−CO−、−COCH−、−COCHCH−、−COCHCHCH−、−COCH(CH)−、−COCHCHCHCH−、−COCHCHCHCHCHCHCHCH−、−COCHCHO−、−COCHCHOCHCHO−、−COCHCHOCHCHOCHCHO−を例示できるが、これらに限定されない。Arは、置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基である。Arとしてより具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アセチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基を例示でき、特にフェニル基、t−ブトキシフェニル基が好ましいが、これらに限定されない。
【0083】
また、重合体(1A)は、更に、下記一般式(3)で示される繰返し単位の一種又は二種以上を含むことがより好ましい。
【化18】
(式中、R01は、前記と同様である。Rは、脂環構造を有する炭素数3〜20の1価の基である。)
【0084】
上記一般式(3)で示される繰返し単位を適度に導入することにより、ベース樹脂の光学特性を劣化させることなく、エッチング速度、エッチング後パターン形状等のエッチング特性を、顧客要求に合わせて調整することが可能となる。
【0085】
上記一般式(3)中、R01は、水素原子又はメチル基である。Rは、脂環構造を有する炭素数3〜20の1価の基である。Rとしてより具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ジシクロヘプチル基、ジシクロオクチル基、ジシクロノニル基、ジシクロデカニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、シクロヘキシルメチル基、ジシクロヘプチルメチル基、イソボルニル基、メンチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシジシクロヘプチル基、ヒドロキシアダマンチル基、1−メチルシクロプロピル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボニル基、2−エチル−2−ノルボニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基、ブチロラクトニル基、バレロラクトニル基、1,3−シクロヘキサンカルボラクトニル基、4−オキサ−5−オキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、2,6−ノルボルナンカルボラクトン−3−イルメチル基、2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル基、3−メトキシカルボニル−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル基、7−オキサ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−5−イル基を例示できる。用途に応じてRとして最適な構造を選択することにより、炭素密度、極性など重合体全体の性質を最適に調整し、ひいてはこの重合体を利用した下層膜の特性を調整することが可能である。
【0086】
本発明においては、重合体(1A)中、上記一般式(1)で示される繰り返し単位のモル分率は、20%以上90%以下であることが好ましく、25%以上70%以下であることがより好ましい。20%以上であれば、硬化能が十分なものとなる。70%以下であれば、平坦化特性、エッチング特性が十分なものとなる。上記一般式(2)で示される繰り返し単位のモル分率は、5%以上50%以下であることが好ましく、5%以上40%以下であることがより好ましい。5%以上であれば、上層レジストリソグラフィー時の解像性が十分なものとなり、50%以下であれば、エッチング特性が十分なものとなる。
【0087】
なお、上記一般式(1)、(2)で示される繰り返し単位のモル分率が合計で100%にならない場合、ベース樹脂は他の繰り返し単位を含む。その場合の他の繰り返し単位としては、上述の一般式(3)で示される繰り返し単位、他のアクリル酸エステル、他のメタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;5,5−ジメチル−3−メチレン−2−オキソテトラヒドロフランなどのα,β−不飽和ラクトン類;ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸無水物;アリルエーテル類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;ビニルシラン類に由来するいずれかの繰り返し単位とすることができる。
【0088】
重合体(1A)は、重量平均分子量1,000〜20,000であることが好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン標準)により測定される値に基づく。重合体(1A)の重量平均分子量は1,000〜20,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましく、2,000〜10,000がさらに好ましい。重量平均分子量が1,000以上であれば、成膜性に劣ったり、あるいは、加熱硬化時の昇華物増加により装置を汚染したりする恐れがなくなる。一方、重量平均分子量が20,000以下であれば、塗布欠陥が発生したり、あるいは、流動性の劣化により平坦化/埋込特性に劣ったりする恐れがなくなる。
【0089】
また、本発明のレジスト下層膜材料においては、重合体(1A)のガラス転移温度が、50℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることがさらに好ましい。このようなレジスト下層膜材料は、レジスト下層膜形成による平坦化/埋込特性に特に優れるため、表面に凹凸を有する基板の加工に特に好適である。
【0090】
また、本発明のレジスト下層膜材料においては、重合体(1A)のGPC分散度が、2.0以下であることがより好ましく、1.8以下であることがさらに好ましい。このようなレジスト下層膜材料であれば、レジスト下層膜形成時の昇華物発生が少なく、装置汚染を抑制することが可能であり、実用性に優れる。
【0091】
重合体(1A)の例として、具体的には、以下の重合体を例示できるが、これらに限定されない。式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を、tBuはtert−ブチル基を、Acはアセチル基を示し、以下同様である。
【0092】
【化19】
【0093】
【化20】
【0094】
【化21】
【0095】
本発明において、重合体(1A)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。あるいは、前記一般式(1)、(2)、(3)で示される繰り返し単位を含まない樹脂を混合して用いてもよい。その場合に混合してもよい樹脂としては、特に限定されることなく、公知の樹脂を用いることができるが、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0096】
ここで、重合体(1A)を合成するには、1つの方法として、各繰り返し単位に対応した重合性不飽和結合を有するモノマーを混合し、溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱重合を行う方法があり、これにより重合体を得ることができる。重合条件は、用いるモノマー、目標分子量等に応じて、種々選択でき、特に制限されないが、重合時に使用する溶剤として具体的には、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチルを例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、また、重合の際に連鎖移動剤として、オクタンチオール、2−メルカプトエタノール等のチオール類を加えてもよい。重合反応は、好ましくは40℃〜反応溶剤の沸点に加熱して行うことができる。反応時間としては0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。
【0097】
例えば、下記一般式(1a)、(2a)、及び(3−1a)で表される重合性二重結合を有する化合物をモノマーとして用いて、前述のような重合を行うことにより、前記一般式(1)、(2)及び(3−1)で表される繰り返し単位を有する重合体(高分子化合物)を合成することができる。
【化22】
(上記一般式(1a)、(2a)、及び(3−1a)中、R01、R02、R03、A、Ar、nは前記と同様である。)
【0098】
重合の際は、全原料を混合した後に加熱を行ってもよいし、あらかじめ加熱しておいた一部原料中に、残りの原料を個別に又は混合して、一気に又は徐々に添加してもよい。例えば、重合溶剤のみを加熱しておき、そこに、モノマー溶液と開始剤溶液を別々に漸次添加する重合方法は、比較的均質な重合体が得られ、また、暴走反応等の異常反応を防止できることから、特に好ましい。
【0099】
上記により得られた重合液を、そのままレジスト下層膜材料に配合してもよいし、必要に応じて、晶析、分液、ろ過、濃縮などの常法を用いて精製を行い、残存モノマー、残存溶剤、反応副生物その他の不純物を除去してもよい。重合体(1A)を精製する場合は、重合液に水、含水アルコール、飽和炭化水素等の貧溶媒を加え、生じた沈殿を濾取する晶析法、あるいは、貧溶媒層を分離除去する分液法が好適であり、うち分液法が特に好適である。重合体を分液法により精製すると、重合液中の低分子量成分を効率よく除去できるため、重合体を含むレジスト下層膜材料よりレジスト下層膜を形成する際の昇華物発生が少なくなり、成膜装置の汚染防止の観点から好ましい。
【0100】
また、本発明のレジスト下層膜材料には、更に別の化合物やポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、(A1)成分の化合物及び(A2)成分の重合体と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。また、ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーとしては、フェノール性水酸基を持つ化合物が好ましい。
【0101】
このような材料としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004−205685号公報に記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005−128509号公報に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005−250434号公報に記載のアセナフチレン共重合体、特開2006−227391号公報に記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006−293298号公報に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−285095号公報に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010−122656号公報に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008−158002号公報に記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。
【0102】
また、下記一般式(2A)又は(3A)で示されるフェノール化合物をブレンドしてもよい。ただし、下記一般式(2A)又は(3A)で示されるフェノール化合物は、上記一般式(X)で示される化合物とは異なる化合物であり、分子内に3,4−ジヒドロキシフェニル基を有さないものである。
【化23】
(式中、Rは単結合又は炭素数1〜50の有機基であり、X’は下記一般式(2B)で示される基であり、m2は1≦m2≦5を満たす整数である。)
【化24】
(式中、n3は0又は1であり、n4は1又は2であり、Xは下記一般式(2C)で示される基であり、n6は0、1、又は2である。)
【化25】
(式中、R11は水素原子又は炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、式中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【化26】
(式中、R101、R102、R103、R104はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基であり、m100は1、2、又は3であり、R100は、m100が1のときは水素原子又は水酸基であり、m100が2のときは単結合又は下記一般式(3B)で示される基であり、m100が3のときは下記一般式(3C)で示される基であり、式中の芳香環上の水素原子はメチル基、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシメチル基で置換されていてもよい。m101は0又は1であり、m102は1又は2であり、m103は0又は1であり、m104は1又は2であり、m105は0又は1である。m101が0の場合、n101及びn102は0≦n101≦3、0≦n102≦3、かつ1≦n101+n102≦4を満たす整数であり、m101が1の場合、n101、n102、n103、及びn104は0≦n101≦2、0≦n102≦2、0≦n103≦2、0≦n104≦2、かつ2≦n101+n102+n103+n104≦8を満たす整数である。)
【化27】
(式中、*は結合位置を示し、R106、R107は水素原子又は炭素数1〜24の有機基であり、R106とR107は結合して環状構造を形成してもよい。)
【化28】
(式中、*は結合位置を示し、R108は水素原子又は炭素数1〜15の有機基である。)
【0103】
一般式(2A)で示されるフェノール化合物や、一般式(3A)で示されるフェノール化合物としては、以下の化合物を例示することができる。なお、以下の化合物の芳香環上の任意の水素原子はメチル基、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシメチル基で置換されていてもよい。
【化29】
【0104】
【化30】
【0105】
【化31】
【0106】
【化32】
【0107】
上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、(A1)成分の化合物100質量部に対して5〜250質量部が好ましく、より好ましくは5〜100質量部である。
【0108】
[(B)成分]
本発明のレジスト下層膜材料における(B)成分は有機溶剤である。本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な有機溶剤(B)としては、(A1)成分の化合物を溶解できれば特に制限はなく、(A2)成分の重合体(1A)、後述の(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、(F)可塑剤、及び(G)色素をも溶解できるものが良い。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤を添加することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n−ノニル、モノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、γ−ブチロラクトン、及び、これらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。有機溶剤の配合量は、レジスト下層膜の設定膜厚に応じて調整することが望ましいが、通常、(A1)成分の化合物100質量部に対し、500〜10,000質量部の範囲である。
【0109】
[(C)成分]
本発明のレジスト下層膜材料においては、熱などによる架橋反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0110】
本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な酸発生剤(C)としては、
i.下記一般式(P1a−1)、(P1a−2)、(P1a−3)又は(P1b)のオニウム塩、
ii.下記一般式(P2)のジアゾメタン誘導体、
iii.下記一般式(P3)のグリオキシム誘導体、
iv.下記一般式(P4)のビススルホン誘導体、
v.下記一般式(P5)のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル、
vi.β−ケトスルホン酸誘導体、
vii.ジスルホン誘導体、
viii.ニトロベンジルスルホネート誘導体、
ix.スルホン酸エステル誘導体
等が挙げられる。
【0111】
【化33】
(式中、R101a、R101b、R101cはそれぞれ炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基等によって置換されていてもよい。また、R101bとR101cとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101b、R101cはそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。Kは非求核性対向イオンを表す。R101d、R101e、R101f、R101gは、水素原子、又はR101a、R101b、R101cと同じ定義である。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。)
【0112】
上記R101a、R101b、R101c、R101d、R101e、R101f、R101gは互いに同一であっても異なっていてもよく、具体的にはアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基等が挙げられ、2−オキソプロピル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。オキソアルケニル基としては、2−オキソ−4−シクロヘキセニル基、2−オキソ−4−プロペニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等や、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェニルエチル基、フェネチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。Kの非求核性対向イオンとしては塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸、更には下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示される、α、β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【0113】
【化34】
【0114】
【化35】
【0115】
一般式(K−1)中、R102Kは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、アリーロキシ基である。一般式(K−2)中、R103Kは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基である。
【0116】
また、R101d、R101e、R101f、R101gが式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環は、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0117】
(P1a−1)と(P1a−2)は光酸発生剤、熱酸発生剤の両方の効果があるが、(P1a−3)は熱酸発生剤として作用する。
【0118】
【化36】
(式中、R102a、R102bはそれぞれ炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R103は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。R104a、R104bはそれぞれ炭素数3〜7の2−オキソアルキル基を示す。Kは非求核性対向イオンを表す。)
【0119】
上記R102a、R102bのアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。R103のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロオクチレン基、1,4−シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。R104a、R104bの2−オキソアルキル基としては、2−オキソプロピル基、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソシクロヘプチル基等が挙げられる。Kは式(P1a−1)、(P1a−2)及び(P1a−3)で説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0120】
【化37】
(式中、R105、R106は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
【0121】
105、R106のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1,1,1−トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基が挙げられる。ハロゲン化アリール基としてはフルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0122】
【化38】
(式中、R107、R108、R109は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。R108、R109は互いに結合して環状構造を形成してもよく、環状構造を形成する場合、R108、R109はそれぞれ炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R105は(P2)式のものと同様である。)
【0123】
107、R108、R109のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、アラルキル基としては、R105、R106で説明したものと同様の基が挙げられる。なお、R108、R109のアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0124】
【化39】
(式中、R101a、R101bは前記と同様である。)
【0125】
【化40】
(式中、R110は炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部は更に炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、アセチル基、又はフェニル基で置換されていてもよい。R111は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は置換のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシアルキル基、フェニル基、又はナフチル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部は更に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基;炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基又はアセチル基で置換されていてもよいフェニル基;炭素数3〜5のヘテロ芳香族基;又は塩素原子、フッ素原子で置換されていてもよい。)
【0126】
ここで、R110のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基等が、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、フェニルエチレン基、ノルボルナン−2,3−ジイル基等が、アルケニレン基としては、1,2−ビニレン基、1−フェニル−1,2−ビニレン基、5−ノルボルネン−2,3−ジイル基等が挙げられる。R111のアルキル基としては、R101a〜R101cと同様のものが、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプレニル基、1−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、ジメチルアリル基、1−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が、アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチロキシメチル基、ヘキシロキシメチル基、ヘプチロキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチロキシエチル基、ヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基等が挙げられる。
【0127】
なお、更に置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が、炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基又はアセチル基で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、トリル基、p−tert−ブトキシフェニル基、p−アセチルフェニル基、p−ニトロフェニル基等が、炭素数3〜5のヘテロ芳香族基としては、ピリジル基、フリル基等が挙げられる。
【0128】
酸発生剤は、具体的には、オニウム塩としては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ピリジニウム、カンファースルホン酸トリエチルアンモニウム、カンファースルホン酸ピリジニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフタレンカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート、トリエチルアンモニウムノナフレート、トリブチルアンモニウムノナフレート、テトラエチルアンモニウムノナフレート、テトラブチルアンモニウムノナフレート、トリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルアンモニウムトリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のオニウム塩を挙げることができる。
【0129】
ジアゾメタン誘導体としては、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体を挙げることができる。
【0130】
グリオキシム誘導体としては、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体を挙げることができる。
【0131】
ビススルホン誘導体としては、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等のビススルホン誘導体を挙げることができる。
【0132】
β−ケトスルホン誘導体としては、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等のβ−ケトスルホン誘導体を挙げることができる。
【0133】
ジスルホン誘導体としては、ジフェニルジスルホン誘導体、ジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体を挙げることができる。
【0134】
ニトロベンジルスルホネート誘導体としては、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体を挙げることができる。
【0135】
スルホン酸エステル誘導体としては、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0136】
N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体としては、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体が挙げられる。
【0137】
これらの中でも、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフタレンカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体;ビスナフチルスルホニルメタン等のビススルホン誘導体;N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。
【0138】
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸発生剤の添加量は、ベース樹脂100質量部に対して好ましくは0.05〜50質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。0.05質量部以上であれば、酸発生量が少なく、架橋反応が不十分となる恐れが少なく、50質量部以下であれば、上層レジストへ酸が移動することによるミキシング現象が起こる恐れが少ない。
【0139】
[(D)成分]
本発明のレジスト下層膜材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009−269953号公報中の(0142)〜(0147)段落に記載のものを用いることができる。
【0140】
[(E)成分]
本発明のレジスト下層膜材料には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(E)架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β−ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0141】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β−ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−メチレンビス4,5−ジフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−メチレンビス−4−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−メチレンビス−4−tertブチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、1,4−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0142】
[(F)成分]
本発明のレジスト下層膜材料には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013−253227号公報記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。
【0143】
[(G)成分]
本発明のレジスト下層膜材料には、多層リソグラフィーのパターニングの際の解像性を更に向上させるために、(G)色素を添加することができる。色素としては、露光波長において適度な吸収を有する化合物であれば特に限定されることはなく、公知の種々の化合物を広く用いることができる。一例として、ベンゼン類、ナフタレン類、アントラセン類、フェナントレン類、ピレン類、イソシアヌル酸類、トリアジン類を例示できる。
【0144】
なお、本発明のレジスト下層膜材料は、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示すレジスト下層膜を与えるものであることが好ましい。このようなレジスト下層膜材料であれば、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するレジスト下層膜を形成できるため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスにも適用可能である。
【0145】
アルカリ性過酸化水素水は、半導体ウエハー洗浄に一般的に用いられている。特に、脱イオン水5質量部、29質量%アンモニア水1質量部、30質量%過酸化水素水1質量部の混合液はSC1(Standard Clean−1)と呼ばれ、ウエハー表面の有機不純物、微粒子の洗浄除去用の標準的薬液となっている。この他、アルカリ性過酸化水素水により、一部の金属、金属化合物の他、ウェット剥離用に設計されたケイ素含有レジスト中間膜の剥離あるいはエッチング加工が可能である。これらの加工に用いられるアルカリ性過酸化水素水の組成は特に制限されないが、典型的には、脱イオン水、過酸化水素、アンモニアの混合物である。その場合の、過酸化水素の濃度としては、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%であり、アンモニアの濃度としては、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。処理温度としては、0〜90℃が好ましく、より好ましくは20〜80℃である。
【0146】
ここで、レジスト下層膜のアルカリ性過酸化水素水耐性試験について説明する。まず、3cm角に切断したシリコンウエハー上に、後述する成膜条件に準じて、レジスト下層膜材料を膜厚約100nmとなるように成膜する。このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬し、続いて、脱イオン水でリンス後に、目視によりウエハーからのレジスト下層膜剥離の有無を検査することができる。レジスト下層膜の一部又は全部が剥がれ、シリコンウエハー表面が露出した場合は、試験に供したレジスト下層膜はアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分と判断される。
【0147】
即ち、本発明のレジスト下層膜材料から形成されるレジスト下層膜は、レジスト下層膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、上記レジスト下層膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0148】
なお、本発明において、レジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nm、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。3層レジストプロセス用のレジスト下層膜の場合は、その上にケイ素を含有するレジスト中間膜、ケイ素を含まないレジスト上層膜を形成することができる。2層レジストプロセス用のレジスト下層膜の場合は、その上にケイ素を含有するレジスト上層膜、又はケイ素を含まないレジスト上層膜を形成することができる。
【0149】
(レジスト下層膜形成方法)
本発明では、被加工基板上に上述のレジスト下層膜材料をコーティングし、前記レジスト下層膜材料を100℃以上500℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理することによって硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0150】
本発明のレジスト下層膜形成方法においては、上記のレジスト下層膜材料を、スピンコート法などを用いて被加工基板上にコーティングし、その後溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間膜とのミキシング防止のため、あるいは架橋反応を促進させるためにベークを行う。このようにスピンコート法などを用いることで、良好な埋込特性を得ることができる。
【0151】
ベークは100℃以上500℃以下、好ましくは100℃以上300℃以下、より好ましくは150℃以上280℃以下の温度範囲内で行い、10秒〜600秒間、好ましくは10〜300秒の範囲内で行う。ベーク温度及び時間を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した平坦化・埋込特性、硬化特性を得ることができる。ベーク温度が100℃以上であれば、硬化が十分となり、上層膜又は中間膜とのミキシングを生じる恐れがなくなる。ベーク温度が300℃以下であれば、ベース樹脂の熱分解が顕著とならず、膜厚が減少したり、膜表面が不均一になったりする恐れがなくなる。
【0152】
また、本発明のレジスト下層膜形成方法は、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることも好ましい。本発明のレジスト下層膜形成方法は、特に、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上に空隙のない平坦化有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0153】
(パターン形成方法)
本発明では、上述のレジスト下層膜材料を用いたパターン形成方法を提供する。本発明のパターン形成方法は、ケイ素含有2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス、又はケイ素を含まない2層レジストプロセスといった多層レジストプロセスに好適に用いられる。
【0154】
即ち、本発明では、2層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I−1)被加工基板上に、上述のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(I−2)該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I−3)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、及び
(I−4)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0155】
また、本発明では、3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II−1)被加工基板上に、上述のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(II−2)該レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II−3)該レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II−4)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II−5)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II−6)該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0156】
また、本発明では、4層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III−1)被加工基板上に、上述のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
(III−2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III−3)該無機ハードマスク中間膜上に、有機反射防止膜を形成する工程、
(III−4)該有機反射防止膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III−5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III−6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(III−7)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0157】
本発明のパターン形成方法について、以下にケイ素原子を含有するレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を用いた3層レジストプロセスを例に挙げて説明するが、これに限定されない。
【0158】
この場合、被加工基板上に上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜を形成し、該レジスト中間膜より上にフォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光(パターン露光)した後、現像液で現像してレジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間膜をエッチングしてパターンを転写し、該パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングしてパターンを転写し、さらに、該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして被加工基板を加工して被加工基板にパターンを形成する。
【0159】
3層レジストプロセスにおけるレジスト下層膜は、上記のレジスト下層膜材料を、スピンコート法などを用いて被加工基板上に塗布し、その後溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間膜とのミキシング防止のため、あるいは架橋反応を促進させるためにベークを行うことで形成することができる。このようにスピンコート法などを用いることで、良好な埋込特性を得ることができる。
【0160】
ベークは100℃以上500℃以下、好ましくは100℃以上300℃以下、より好ましくは150℃以上280℃以下の温度範囲内で行い、10秒〜600秒間、好ましくは10〜300秒の範囲内で行う。ベーク温度及び時間を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した平坦化・埋込特性、硬化特性を得ることができる。ベーク温度が100℃以上であれば、硬化が十分となり、上層膜又は中間膜とのミキシングを生じる恐れがなくなる。ベーク温度が300℃以下であれば、ベース樹脂の熱分解が顕著とならず、膜厚が減少したり、膜表面が不均一になったりする恐れがなくなる。
【0161】
ケイ素原子を含有するレジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記のように、レジスト中間膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0162】
3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト中間膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間膜を好適に用いることができる。ポリシルセスキオキサンベースの中間膜は反射防止効果を持たせることが容易であり、これによりレジスト上層膜のパターン露光時に反射光を抑制でき、解像性に優れる利点がある。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含む材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるレジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0163】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間膜の形成の方が簡便でコスト的なメリットがある。
【0164】
3層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。上記フォトレジスト組成物により単層レジスト上層膜を形成する場合、上記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0165】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層レジストプロセスにおけるレジスト中間膜のエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。次いでレジスト中間膜パターンをマスクにして酸素ガス又は水素ガスを用いてレジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0166】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジストプロセスにおけるレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有レジスト中間膜の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0167】
なお、被加工基板としては、被加工層が基板上に成膜される。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、TiN、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜などが用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成される。
【0168】
ここで、本発明のパターン形成方法を適用すれば、上記の一般的加工プロセスに加えて、様々な特殊加工プロセスの構築が可能となり、産業上の価値が高い。
【0169】
まず、ケイ素含有レジスト中間膜の剥離に関しては、一般的には上記の通り、ドライエッチング剥離が必須であるが、本発明のパターン形成方法においては、レジスト下層膜がアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、アルカリ性過酸化水素水を用いてケイ素含有レジスト中間膜のみをウェット剥離することも選択肢となる。即ち、本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、上記の(II−6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加してもよい。
【0170】
また、被加工基板がW、TiNなどの場合、本発明のパターン形成方法を適用すれば、アルカリ性過酸化水素水による基板のウェットエッチング加工も選択肢となりうる。即ち、本発明の2層、3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、上記の(I−4)工程、(II−6)工程、又は(III−7)工程の後、更に、パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、被加工基板にパターンを転写する工程を追加してもよい。
【0171】
その場合のプロセスの一例では、まず、被加工基板上にレジスト下層膜を成膜、その上に必要に応じてレジスト中間膜を成膜した後、レジスト上層膜を成膜する。続いて、常法によりレジスト上層膜をパターニング、続いてエッチングによりパターンをレジスト下層膜まで転写する。最後に、レジスト下層膜をマスクとして、被加工基板をウェットエッチングによりパターニングすることができる。
【0172】
また、本発明の2層、3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、上記の(I−4)工程、(II−6)工程、又は(III−7)工程の後、更に、パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、被加工基板をパターン加工する工程を追加してもよい。このとき、イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、パターンが転写されたレジスト中間膜を除去する工程を追加してもよい。
【0173】
また、本発明のパターン形成方法は、高さ30nm以上の構造体又は段差を有するような段差基板の加工にも好適である。以下、このようなプロセスの一例について説明する。
【0174】
まず、段差基板上に、レジスト下層膜を成膜して埋込・平坦化を行い、必要に応じてレジスト中間膜を成膜した後、レジスト上層膜を成膜する。次に、常法によりレジスト上層膜をパターニング、続いてエッチングによりパターンをレジスト下層膜まで転写する。次に、レジスト下層膜をマスクとして、イオン打込みにより基板をパターン加工することができる。残存したレジスト中間膜の剥離は、必要に応じて、ドライエッチング、ウェットエッチングから選択して行うことができる。最後に、レジスト下層膜をドライエッチングにより除去できる。
【0175】
このとき、レジスト下層膜材料として、ドライエッチング速度が、レジスト上層膜のドライエッチング速度より高いものを用いることが好ましい。このようなレジスト下層膜材料を用いれば(即ち、形成されるレジスト下層膜のドライエッチング速度が高ければ)、基板段差の隅部など、一般に除去が困難な場所についても、ドライエッチングにより残渣なく除去することが可能となり、より好ましい。
【0176】
また、本発明のパターン形成方法においては、少なくとも、被加工基板上に上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜より上にフォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングしてパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてパターンを転写し、該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして被加工基板を加工して被加工基板にパターンを形成することができる。
【0177】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、特開2002−334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5〜200nm、好ましくは10〜100nmであり、中でも反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。
【0178】
また、本発明は、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスにも好適に用いることができる。この場合、少なくとも、被加工基板上に上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングしてパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてパターンを転写し、該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして被加工基板を加工して被加工基板にパターンを形成する。
【0179】
レジスト中間膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、上記のように、レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成しても良い。レジスト中間膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARC膜の2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0180】
3層レジストプロセスの一例について図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。
3層レジストプロセスの場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上にレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0181】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分6を露光し、PEB(露光後ベーク)及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間膜4をエッチング加工してレジスト中間膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたレジスト中間膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素系又は水素系プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(図1(E))。更にレジスト中間膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(図1(F))。
【0182】
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間膜4が無機ハードマスク中間膜であり、BARCを敷く場合はレジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはレジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変えるなどしてレジスト中間膜4のエッチングを行うことができる。
【実施例】
【0183】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
なお、分子量の測定は下記の方法による。テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0184】
以下の合成例には、下記に示すエポキシ化合物(E−X1)〜(E−X4)を用いた。
【化41】
【0185】
また、以下の合成例には、下記に示すカルボン酸化合物(C−X1)〜(C−X3)を用いた。
【化42】
【0186】
[合成例1]化合物(X−1)の合成
【化43】
エポキシ化合物(E−X1)57.2g、カルボン酸化合物(C−X1)42.8g、及び2−メトキシ−1−プロパノール300gを窒素雰囲気下、液温100℃で均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド10.0gを加え液温120℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン1,000gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、化合物(X−1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=780、Mw/Mn=1.04であった。
【0187】
[合成例2〜9]化合物(X−2)〜(X−9)の合成
表1,2に示されるエポキシ化合物、カルボン酸化合物を使用した以外は、合成例1と同じ反応条件で、表1,2に示されるような化合物(X−2)〜(X−9)を生成物として得た。これらの化合物の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を求め、表3に示した。
【0188】
【表1】
【0189】
【表2】
【0190】
【表3】
【0191】
以下の合成例には、下記に示す化合物(P−X1)〜(P−X4)を用いた。
【化44】
【0192】
[合成例10]化合物(X−10)の合成
【化45】
ナフトール化合物(P−X1)83.1g、3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール(P−X2)140.1g、及び2−メトキシ−1−プロパノール1,000gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2−メトキシ−1−プロパノール溶液30gをゆっくり加え、液温110℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)2,000gを加え、有機層を純水800gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にテトラヒドロフラン(THF)800mLを加え、ヘキサン4,000mLで晶出させた。晶出した結晶をろ過で分別し減圧乾燥して化合物(X−10)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1,132、Mw/Mn=1.38、H−NMRより算出した3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール導入率は(P−X1)1分子に対して4.0分子であった。
【0193】
[合成例11]化合物(X−11)の合成
【化46】
ビフェニル誘導体(P−X3)50.0g、カテコール(P−X4)32.1g、1,2−ジクロロエタン500mlを窒素雰囲気下、液温50℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸15mlをゆっくり滴下し、液温50℃で4時間反応を行った。MIBK1,000mlで希釈後、不溶分をろ別して分液ロートに移し変え、300mlの超純水で分液水洗を7回繰り返した。有機層を減圧濃縮した後、メタノールで再結晶を行うことでビフェニル誘導体を得た、H−NMRにより、このビフェニル誘導体が化合物(X−11)であることを確認した、また、GPCにより求めた純度は98.0%であった。
【0194】
[比較合成例1]化合物(R−1)の合成
【化47】
エポキシ化合物(E−X2)57.7g、カルボン酸化合物(C−X3)52.3g、及び2−メトキシ−1−プロパノール300gを窒素雰囲気下、液温100℃で均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド10.0gを加え液温120℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン1,000gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、化合物(R−1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=601、Mw/Mn=1.02であった。
【0195】
[合成例12]重合体(A2−1)の合成
PGMEA23.3gを窒素雰囲気下80℃にて加熱撹拌した。これに、メタクリル酸グリシジル25.8g、アクリル酸(2−フェノキシエチル)12.0g、アクリル酸トリシクロデカニル12.9g、PGMEA46.7gの混合物と、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.45gとPGMEA46.7gの混合物を、同時かつ別々に、2時間かけて添加した。さらに16時間加熱撹拌後、60℃に冷却し、ヘプタン200gを添加後、室温に冷却し、2時間静置した。上層を分離除去、PGMEA100gを添加後、ヘプタンを減圧留去し、目的とする重合体(A2−1)のPGMEA溶液を得た。
【化48】
【0196】
[合成例13]重合体(A2−2)の合成
PGMEA23.3gを窒素雰囲気下80℃にて加熱撹拌した。これに、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド28.5g、アクリル酸(2−フェノキシエチル)12.0g、アクリル酸トリシクロデカニル12.9g、PGMEA46.7gの混合物と、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.45gとPGMEA46.7gの混合物を、同時かつ別々に、2時間かけて添加した。さらに16時間加熱撹拌後、60℃に冷却し、ヘプタン200gを添加後、室温に冷却し、2時間静置した。上層を分離除去、PGMEA100gを添加後、ヘプタンを減圧留去し、目的とする重合体(A2−2)のPGMEA溶液を得た。
【化49】
【0197】
レジスト下層膜材料(UL−1〜13、比較UL−1〜3)の調製
化合物(X−1)〜(X−11),(R−1)、重合体(A2−1),(A2−2)、酸発生剤(C1)、架橋剤(E1)を、界面活性剤としてPF−6320(OMNOVA製を自社精製)0.05質量%を含む溶剤中に表4に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(UL−1〜13、比較UL−1〜3)を調製した。なお、表4中、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを示す。
【0198】
【表4】
【0199】
表4中、酸発生剤(C1)及び架橋剤(E1)の詳細は以下の通りである。
【化50】
【0200】
溶剤耐性、光学定数測定(実施例1−1〜1−13、比較例1−1〜1−3)
上記で調製したレジスト下層膜材料(UL−1〜13、比較UL−1〜3)をシリコン基板上に塗布し、表5に記載の温度にて60秒焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶剤をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEA溶媒を蒸発させ、膜厚を再度測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めることにより溶剤耐性を評価した。また、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)にて求めた成膜後のレジスト下層膜の波長193nmにおける光学定数(屈折率n,消衰係数k)を表5に併せて示す。
【0201】
【表5】
【0202】
本発明のパターン形成方法においては、いずれのレジスト下層膜材料も、成膜性良好、かつ、溶剤処理による減膜がほとんどなく、溶剤耐性良好な膜が得られることが分かった。また、光学定数については、膜厚、上層膜の種類等にも依存するが、概ね、n値1.5〜1.9、k値0.1〜0.5の間であれば、基板からの反射光を相当程度抑制でき、フォトレジストパターニング用の下層膜として適用可能である。上記実施例においては、光学定数はいずれも好適な範囲にあり、レジスト下層膜としてフォトレジストパターニングに適用可能であることが分かった。
【0203】
/H系ガスでのドライエッチング試験(実施例2−1〜2−13、比較例2−1〜2−4)
前記の通り形成されたレジスト下層膜、及び下記のように形成したレジスト上層膜について、N/H系ガスによるドライエッチング試験を実施した。
【0204】
パターニングに用いるレジスト上層膜材料(ArF用フォトレジスト)は、ArF単層レジストポリマー1で示される重合体(樹脂)、酸発生剤PAG1、塩基化合物amine1をFC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶剤中に表6の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0205】
【表6】
【0206】
用いたArF単層レジストポリマー1、PAG1、amine1を以下に示す。
【化51】
【0207】
【化52】
【0208】
上記で調製したレジスト上層膜材料(PR−1)をシリコン基板上に塗布し、105℃で60秒間ベークすることにより膜厚約100nmのフォトレジスト膜を形成した。
【0209】
/H系ガスによるドライエッチング試験は、下記条件にて実施した。
【0210】
エッチング条件
チャンバー圧力 2.7Pa
RFパワー 1,000W
ガス流量 500mL/min
ガス流量 30mL/min
時間 20sec
【0211】
東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いて測定したドライエッチング前後の膜厚差を、エッチング時間にて除することにより求めたドライエッチング速度を表7に示す。
【0212】
【表7】
【0213】
上記結果より、本発明のレジスト下層膜材料(UL−1〜13)においては、いずれのレジスト下層膜も、レジスト上層膜(比較例2−4)に比べて、ドライエッチング速度が高いことが分かった。このことから、本発明のレジスト下層膜材料は、特に、基板加工後、ドライエッチングによるレジスト下層膜除去を含む加工プロセスにおいて、レジスト下層膜除去後の残渣を抑制することができるため、好ましい。
【0214】
埋め込み特性評価(実施例3−1〜3−13、比較例3−1〜3−3)
前記のレジスト下層膜材料をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、表8に記載の温度にて60秒焼成し、レジスト下層膜を形成した。使用した基板は図2(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiOウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、レジスト下層膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表8に示す。埋め込み特性に劣るレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好なレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、図2(I)に示されるようにホール内部にボイドなくレジスト下層膜8が充填される。
【0215】
【表8】
【0216】
上記結果より、実施例のレジスト下層膜材料(UL−1〜13)はボイドなくホールパターンを充填することが可能であり、埋め込み特性に優れることが分かった。
【0217】
平坦化特性評価(実施例4−1〜4−13、比較例4−1〜4−3)
前記のレジスト下層膜材料をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(図3(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.1μm)を有する下地基板9(SiOウエハー基板)上に塗布し、表9に記載の条件で焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜10の膜厚の差(図3(K)中のdelta 10)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を表9に示す。本評価において、膜厚の差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。
【0218】
【表9】
【0219】
上記結果より、実施例のレジスト下層膜材料(UL−1〜13)は、比較例のレジスト下層膜材料(比較UL−3)に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜の膜厚の差が小さく、平坦化特性に優れることが分かった。
【0220】
アルカリ性過酸化水素水耐性評価(実施例5−1〜5−13、比較例5−1〜5−3)
3cm角に切断したシリコンウエハー上に、表10に記載の焼成条件に従い、前記レジスト下層膜材料を膜厚約100nmとなるように成膜した。このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、70℃で5分間浸漬、続いて、脱イオン水でリンス後に、目視によりウエハーからのレジスト下層膜剥離の有無を検査した。レジスト下層膜の一部又は全部が剥がれ、シリコンウエハー表面が露出した場合は、試験に供したレジスト下層膜はアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分と判断される。結果を表10に示す。
【0221】
【表10】
【0222】
上記結果より、実施例のレジスト下層膜材料(UL−1〜13)は、比較例のレジスト下層膜材料(比較UL−1〜3)に比べて、アルカリ性過酸化水素耐性に優れることが分かった。
【0223】
パターン形成評価(実施例6−1〜6−13、比較例6−1〜6−3)
【0224】
前記レジスト下層膜材料を、それぞれ、Siウエハー基板上に塗布し、表11に記載の条件で焼成することにより、レジスト下層膜を形成した。その上に前記レジスト上層膜材料(PR−1)を塗布し、105℃で60秒間ベークすることにより膜厚約200nmのフォトレジスト膜を形成した。
【0225】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、160nm1:1のポジ型のラインアンドスペース(L/S)フォトレジストパターンを得た。
【0226】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりフォトレジストパターンをマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、レジスト下層膜パターンを形成した。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0227】
フォトレジストパターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.7Pa
RFパワー 1,000W
ガス流量 500mL/min
ガス流量 30mL/min
時間 40sec
【0228】
レジスト下層膜パターン形成の可否は、下層膜エッチング後のウエハーを上空SEM観察(top−down SEM view)することにより確認した。続いて、ウエハーを2cm幅に切断し、このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、70℃で5分間浸漬、脱イオン水でリンス、乾燥後に、光学顕微鏡を用いて観察し、レジスト下層膜パターンの剥離有無を評価した。これらの評価結果を表11に示す。
【0229】
【表11】
【0230】
上記結果より、本発明のレジスト下層膜材料(実施例6−1〜13)においては、いずれの場合も上層レジストパターンがレジスト下層膜まで良好に転写されており、多層レジスト法による微細リソグラフィーに好適に用いられることが分かった。さらに、形成したレジスト下層膜パターンのアルカリ性過酸化水素水耐性が良好であることも確認できた。従って、本発明のレジスト下層膜材料及びパターン形成方法はアルカリ性過酸化水素水等を用いた薬液エッチングと多層レジスト法を組み合わせた微細加工による半導体装置製造を可能とする上で特に有用である。
【0231】
以上より、本発明のレジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法は、半導体装置製造における微細パターニングのための多層レジストプロセスに好適に用いることができ、特には、ウェットエッチング加工を含む多層レジストプロセスにも適用可能であり、産業上極めて有用である。
【0232】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0233】
1…基板、 2…被加工層、 2a…基板に形成されるパターン、
3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、 4…レジスト中間膜、
4a…レジスト中間膜パターン、 5…レジスト上層膜、
5a…レジストパターン、 6…所用部分、
7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…レジスト下層膜、
9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…レジスト下層膜、
delta 10…トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜の膜厚の差。
図1
図2
図3