(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
高分子有機物からなる樹脂膜の製法としては、蒸着重合法や紫外線硬化法が広く用いられている。この2つの製法は何れも、減圧された処理槽内に低分子の有機物ガスを導入し、被処理体上に供給された樹脂材料が重合反応を起し、高分子の樹脂膜を被処理体の表面上に形成する方法であり、被処理体の表面に対する樹脂膜のカバレッジ(被覆率)が良いという特長がある。特許文献1には、これに適した成膜装置が開示されている。
【0003】
図7にメタルマスクを用いて樹脂膜を成膜するプロセスを示す。樹脂膜の代表例としてアクリル樹脂膜を例示する。
まず、基板Sに対して無機保護膜形成などの前処理を施した後、成膜室内へ基板Sを移動する(SX1、SX2)。
【0004】
成膜室内(減圧雰囲気)において、
図8〜
図10に示すように、所望の開口部を設けたメタルマスクMXを基板Sの被成膜面上に配置する(SX3)。これにより、開口部の位置にある基板Sの被成膜面は、
図10に示すように、露呈された状態となる。
次に、
図11に示すように、メタルマスクMXを介して、アクリル材料膜fを基板Sの上に形成する(SX4)。アクリル材料膜fは、基板Sを被覆する部位f1と、部位f1に連なりメタルマスクMXを被覆する部位f2と、から構成される[
図11B]。
【0005】
次いで、アクリル材料膜fに紫外線(UV)照射して、アクリル材料膜fを硬化してアクリル樹脂膜Fを形成した後、
図12に示すように、メタルマスクMXを矢印の方向へ移動させることにより、メタルマスクMXを基板Sから剥離する(SX5、SX6)。メタルマスクMXは、一回の成膜後、もしくは、基板を入れ替えて複数回使用された(複数回の成膜が行われた)後、クリーニングされて、再使用される。
このような装置では、メタルマスクMXをクリーニングする設備が必要となる。さらに、真空中でメタルマスクMXと基板を位置合わせするアライメント機構が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、マスクを用いた樹脂膜の形成において、低コスト化および作業の簡単化を図ることが可能な、樹脂膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る樹脂膜の形成方法は、基板上にパターニングされた樹脂膜を形成する方法であって、マスク本体が可撓性(フィルム状)の支持部と接着部とが重なった構造を有するマスクを用い、前記基板(被成膜面)に対して前記接着部が接するように前記マスクを設ける第1工程(工程α)と、前記マスク本体に設けた開口部を通して前記基板(被成膜面)に気化した樹脂材料を供給し該基板上で凝縮させ、該基板上に
、UV光の照射により硬化若しくは重合する液状の樹脂材料膜を形成した後、該樹脂材料膜と前記マスクにUV光を照射する第2工程(工程β)と、前記基板から前記マスクを剥離する第3工程(工程γ)と、を少なくとも順に備える。
本発明の第1態様に係る樹脂膜の形成方法においては、前記接着部としてUV光の照射により前記基板に対する粘着性が低下する部材を用いてもよい。
本発明の第1態様に係る樹脂膜の形成方法においては、前記樹脂材料膜の厚さが前記接着部の厚さを超えないように制御してもよい。
本発明の第1態様に係る樹脂膜の形成方法においては、前記第1工程と前記第3工程は大気圧雰囲気において行われ、前記第2工程は減圧雰囲気において行われてもよい。
【0009】
本発明の第2態様に係るマスクは、マスク本体に設けた開口部を通して基板に液状の樹脂材料膜を形成した後、該樹脂材料膜を重合させて、該基板上に樹脂膜を形成するためのマスクであって、前記マスク本体は
、可撓性(フィルム状)の支持部
と、前記支持部に接するに接着部
とが重なった構造を有し、
かつ、前記接着部が前記基板に接するものとされており、前記接着部はUV光の照射によって前記基板に対する粘着性が低下する部材であ
り、前記接着部の厚さが、前記基板上に形成される樹脂材料膜の厚さに比べて大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様に係る樹脂膜の形成方法は、樹脂膜を形成する前にマスクを基板に配置する作業や、樹脂を形成した後にマスクを基板から剥離する作業を、大気圧雰囲気で行うことができる。これにより、従来の製法においては必須であった、減圧雰囲気における基板に対するマスクの配置および剥離の作業が、本発明の態様においては不要となる。
ゆえに、本発明の態様は、マスクを用いた樹脂膜の形成において、低コスト化および作業の簡単化を図ることが可能な、樹脂膜の形成方法をもたらす。
【0011】
本発明の態様に係るマスクは、マスク本体が可撓性(フィルム状)の支持部と接着部とが重なった構造を有し、接着部はUV光の照射によって基板に対する粘着性が低下する部材から構成されている。これにより、樹脂膜の形成後に行われる、基板からマスクを除去する作業が容易となる。また、マスクを除去した際に生じる、マスクに隣接する部分(マスク端とも呼ぶ)において樹脂膜の膜厚が局所的に増加する現象(
図12Bに示すような急峻な凸部の発生)が抑制される。
したがって、本発明の態様によれば、樹脂膜の膜厚ムラが小さく、均一な膜厚の樹脂膜を実現する。このような樹脂膜の用途としては、例えば、フレキシブルディスプレイの封止膜に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクリル樹脂膜の作製フローを示す図である。
【
図2】粘着フィルムマスクを基板に配置する前の断面図である。
【
図4A】基板に粘着フィルムマスクを配置し、UV照射した状態を示す断面図である。
【
図4B】基板に粘着フィルムマスクを配置し、UV照射した状態を示す断面図である。
【
図5A】粘着フィルムマスクを介して基板にアクリル材料膜を形成した状態を示す断面図である。
【
図5B】粘着フィルムマスクを介して基板にアクリル材料膜を形成した状態を示す断面図である。
【
図6A】UV照射後、粘着フィルムマスクを基板から剥離した状態を示す断面図である。
【
図6B】UV照射後、粘着フィルムマスクを基板から剥離した状態を示す断面図である。
【
図7】従来のアクリル樹脂膜の作製フローを示す図である。
【
図8】メタルからなる従来のマスクを基板に配置する前の断面図である。
【
図10A】従来のマスクを基板に配置した後の状態を示す断面図である。
【
図10B】従来のマスクを基板に配置した後の状態を示す断面図である。
【
図11A】従来のマスクを配置した基板にアクリル樹脂膜が形成された状態を示す断面図である。
【
図11B】従来のマスクを配置した基板にアクリル樹脂膜が形成された状態を示す断面図である。
【
図12A】UV照射した後、従来のマスクを基板から剥離した状態を示す断面図である。
【
図12B】UV照射した後、従来のマスクを基板から剥離した状態を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るアクリル膜の製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂膜の形成方法と、この樹脂膜の形成において有効な構成を備えたマスクを、図面に基づいて説明する。樹脂膜の一例としてアクリル樹脂を例示する。
【0014】
<アクリル樹脂膜の形成方法>
図1は、本発明の一実施形態に係るアクリル樹脂膜の作製工程を示すフローチャートであり、アクリル樹脂膜の形成方法は、工程SA1〜工程SA7の7つの工程から構成される。
工程SA2〜工程SA3はアクリル樹脂膜を形成する前にマスクを基板に配置する工程(作業)であり、工程SA6〜工程SA7はアクリルを樹脂形成した後にマスクを基板から剥離する工程(作業)である。これらの作業は全て、後述する粘着フィルムマスクを用いることにより、成膜室外(大気圧雰囲気)において行うことができる。これらの2つの作業の間に位置する、工程SA4〜工程SA5は基板上にアクリル樹脂膜を形成する工程(作業)であり、この作業のみ成膜室内(減圧雰囲気)において行なわれる。ゆえに、本発明の実施形態によれば、従来の製法においては必須であった、減圧雰囲気における基板に対するマスクの配置および剥離の作業が不要となる。このため、マスクを用いたアクリル樹脂膜の形成において、低コスト化および作業の簡単化を図ることが可能となる。
【0015】
以下では、
図1のフローチャートに示した各工程(工程SA1〜工程SA7)について、
図2〜
図6を用いて詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態において用いる粘着フィルムマスクを基板に配置する前の断面図である。
図3は、粘着フィルムマスクの平面図である。
図4A及び
図4Bは、基板に粘着フィルムマスクを配置した状態を示す断面図である。
【0016】
粘着フィルムマスクMAは、マスク本体MA1に設けた開口部を通して基板S上にアクリル材料を供給し、基板S上に液状のアクリル材料膜を形成するためのマスクである。粘着フィルムマスクMAを配置する前に、基板Sには、発光部や無機封止膜などが形成される(工程SA1)。
【0017】
粘着フィルムマスクMAは、
図2および
図3に示すように、基板Sに対して、所定の形状からなる開口部を有する。粘着フィルムマスクMAは、
図4Bに示すように、可撓性(フィルム状)の支持部からなるマスク本体MA1と、マスク本体MA1に接着部MA2が重なった構造を有する。この接着部MA2は、UV光照射により、基板Sに対する粘着性が低下する部材から構成されている。
【0018】
可撓性(フィルム状)の支持部からなるマスク本体MA1と接着部MA2とが重なった構造を有するマスクMAを用い、基板Sの被成膜面(
図4A及び
図4Bにおいては上面)に対して接着部MA2が接するようにマスクMAを配置する(工程SA2)。接着部MA2により、マスクMAは基板Sに接着されて固定される。粘着フィルムマスクMAが貼り付けられた基板Sは成膜室内に搬送される(工程SA3)。工程SA2と工程SA3を、工程αとする。
【0019】
次に、マスク本体MA1に設けた開口部を通して基板Sの被成膜面に気化したアクリル材料を供給する。基板は冷却されているので、気体のアクリル材料は凝縮し、
図5A及び
図5Bに示すように、基板S上に液体のアクリル材料膜fを形成する(工程SA4)。ここで、符号f1は基板Sの被成膜面に着膜したアクリル材料膜であり、符号f2は可撓性(フィルム状)の支持部からなるマスク本体MA1に着膜したアクリル材料膜である。
【0020】
その後、アクリル材料膜fに対してUV光を照射する(工程SA5)。これにより、アクリル材料膜fは硬化し、アクリル樹脂膜Fとなる。さらに、UV光の照射の影響を受けて、マスク本体MA1と基板Sとの間に位置する接着部MA2は基板Sに対して、接着力が弱まった状態となる。工程SA4と工程SA5を、工程βとする。この状態で基板Sは、成膜装置の外部へ搬送される(工程SA6)。
【0021】
次いで、
図6A及び
図6Bに示すように、基板SからマスクMAを剥離する(工程SA7)。工程SA7を、工程γとする。
接着部MAは接着力が弱まっている、もしくは失っているので、マスクMAは容易に基板Sから剥離することができる。剥離されたマスクは廃棄される。フィルムマスクは金属マスクに比べて安価であることから、使い捨てが可能である。さらに、フィルムマスクを洗浄する必要がないので、最終的には環境負荷、コスト共に、金属マスクに比べて有利になる。
図6Aにおける矢印は、基板からマスクMAを剥離する方向を表わしている。
図6Bは符号Eの領域の拡大図である。符号eaは、基板Sの被成膜面に着膜したアクリル樹脂膜の部位F1の端部である。アクリル樹脂膜の部位F1の端部とは、基板からマスクMAが剥離された際に形成された側端部を意味する。
【0022】
このように作製されたアクリル樹脂膜では、
図12Bに示されるような急峻な凸部の発生は確認されなかった。
すなわち、従来の製法ではマスクを除去した際に発生していた、マスクに隣接する部分(マスク端とも呼ぶ)における急峻な凸部の形成が、本発明の実施形態によれば著しく抑制できることが明らかとなった。
したがって、本発明の実施形態は、膜厚ムラが小さく、良好な視認性が確保される均一な膜厚が要求される、封止膜の用途に好適なマスクパターンの形成方法をもたらす。
【0023】
<粘着フィルムマスク>
本発明の一実施形態に係る粘着フィルムマスクMAは、
図4Bに示すように、可撓性(フィルム状)の支持部からなるマスク本体MA1と接着部MA2とが重なった構造を有する。そして、接着部MA2は、UV光の照射によって基板に対する粘着性が低下する部材から構成されている。これにより、第一実施形態においても説明したように、アクリル樹脂膜Fを形成した後に行われる、基板Sから粘着フィルムマスクMAを除去する作業が容易となる。
【0024】
また、基板Sに対する粘着性が低下する部材(接着部MA2)が存在することにより、基板Sに液体のアクリル材料膜fが形成された時に、表面張力によりマスクと接触する部分でアクリル材料膜の膜厚が増加することが抑制される。これは、接着部MA2に対して液体のアクリル材料膜の接触角が大きい場合や、アクリル材料膜の硬化と接着部MA2の粘着性の低下が同時に起こる場合などに顕著になると考えられる。ゆえに、本発明の一実施形態に係る粘着フィルムマスクMAは、粘着フィルムマスクMAを除去した際に生じる、アクリル樹脂膜の部位F1と部位F2の分離を誘導する。その結果、マスクに隣接する部分(マスク端とも呼ぶ)において樹脂膜の膜厚が局所的に増加する現象(急峻な凸部の発生)の発生が解消される。
したがって、本発明の実施形態は、アクリル樹脂膜の膜厚ムラが小さく、良好な視認性が確保される均一な膜厚のアクリル樹脂膜を実現する。このようなアクリル樹脂膜の用途としては、例えば、有機ELディスプレイやフレキシブルディスプレイの封止膜に好適に用いられる。
【0025】
粘着フィルムマスクMAは、ポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるマスク本体MA1と、UV光の照射により粘着性が低下する接着材からなる接着部MA2とから構成されている。マスク本体MA1が可撓性(フィルム状)の支持部からなる。
基板Sと接する接着材ME2の厚さは、形成されるアクリル樹脂膜の厚さより大きく設定されるとよい。これにより、「急峻な凸部」状態の発生が更に低減するので好ましい。例えば、接着材ME2の厚さがアクリル樹脂膜の厚さより大きい範囲で、アクリル樹脂膜の厚さが50nm〜20μmの場合、接着部MA2の厚さが10μm〜50μmである。
【0026】
<アクリル樹脂膜の製造装置>
図13は、上述した本発明の一実施形態に係る粘着フィルムマスクMAを用い、基板に樹脂材料を供給することにより該基板上に液体の樹脂材料膜を形成し、樹脂材料膜を重合して樹脂膜を形成する製造装置100の一構成例である。以下では、樹脂材料膜の一例であるアクリル膜を成膜する場合について詳述する。
成膜装置100は、内部空間が減圧可能なチャンバ110と、気化した樹脂材料をチャンバ110(処理室)に供給する気化器300と、を有する。
【0027】
チャンバ110の内部空間は、後述するように、上部空間107、下部空間108から構成されている。
チャンバ110には、不図示の真空排気装置(真空排気手段、真空ポンプ等)が接続され、真空排気装置は、チャンバ110の内部空間が真空雰囲気となるように、内部空間のガスを排気できるように構成されている。
【0028】
チャンバ110の内部空間には、
図13に示すように、シャワープレート105が配されており、チャンバ110内においてシャワープレート105より上側が上部空間107を構成する。チャンバ110の最上部には、紫外光を透過可能な部材からなる天板120が設けられ、天板120の上側には紫外光の照射装置122(UV照射装置)が配されている。ここで、シャワープレート105も紫外光を透過可能な部材で形成することにより、照射装置122から天板120を通過して上部空間107へ導入された紫外光は、さらにシャワープレート105を通過し、シャワープレート105の下側に位置する下部空間108へ進行可能となる。これにより、後述する基板S上に形成されたアクリル材料膜に対して、成膜後に紫外光を照射し、アクリル材料膜(樹脂材料膜)を硬化させ、アクリル樹脂膜(樹脂膜)を形成することが可能とされている。
【0029】
チャンバ110には、不図示の加熱装置が配されている。上部空間107及び下部空間108を構成するチャンバ110の内壁面の温度は、樹脂材料の露点温度以上、好ましくは40〜250℃程度となるように設定可能であり、加熱装置によって制御される。
【0030】
チャンバ110内においてシャワープレート105より下側に位置する下部空間108には、アクリル樹脂膜が形成される基板Sを載置するステージ102(基板保持部)が配されている。
【0031】
ステージ102においては、表面に基板が配置されるべき位置が予め定められている。ステージ102は、その表面が露出された状態で、チャンバ110内に配置されている。符号Sは基板ステージ102の表面の所定位置に配置された基板を示している。ステージ102には、基板Sを冷却する基板冷却装置102aが設けられる。
【0032】
基板冷却装置102aは、ステージ102内部に冷媒を供給してステージ102上面の基板Sを冷却する。具体的には、基板Sの温度が基板Sを載置するステージ102(基板保持部)に内蔵された冷却装置102aにより制御され、樹脂材料の気化温度以下、好ましくは零度(0℃)以下、例えば、−30℃〜0℃程度に制御される。
【0033】
ステージ102の上側位置には、ステージ102の全面に対してシャワープレート105が設けられる。シャワープレート105は、多数の貫通孔の設けられた石英等の紫外線透過材料からなる板状部材で構成され、チャンバ110の内部空間を上空間と下空間とに分割している。
【0034】
チャンバ110の上部空間107は、配管112(樹脂材料供給管)およびバルブ112Vを介して気化器300と連通している。この樹脂材料供給管112を介してチャンバ110の上部空間107に対して、気化された樹脂材料は供給可能である。
【0035】
樹脂材料供給管112(第一配管)のバルブ112Vよりも気化器300に近い位置には、バルブ113Vを有する樹脂材料迂回管113(第二配管)の一端が接続されている。樹脂材料迂回管113(第二配管)の他端は、排気管114を介して外部に接続されており、樹脂材料迂回管113を通じてガスが排気可能である。
【0036】
バルブ112Vおよびバルブ113Vの開閉駆動は、制御部400によって制御される。制御部400は、気化器300からの気化した樹脂材料をチャンバ110内へ供給する成膜状態と、気化器300からの気化した樹脂材料を外部に排気してチャンバ110内への供給しない非成膜状態と、を切り替え可能に制御する。
【0037】
バルブ112V、バルブ113V、及び制御部400は、チャンバ110の内部に樹脂材料を供給する、或いは、チャンバ110の外部に樹脂材料を排気する選択機能を有する切替部を構成している。
【0038】
気化器300は、チャンバ110に対して気化された樹脂材料を供給可能とする。
図13に示すように、気化器300は、気化槽130と、吐出部132と、樹脂材料原料容器150と、を有する。
【0039】
気化槽130は、
図13に示すように、液状の樹脂材料を気化するための内部空間を備え、内部空間の上方には、液状の樹脂材料を噴霧する吐出部132が配されている。気化槽130は、略円筒状に形成されるが、他の断面形状とされることもできる。気化槽130は、その内面が、例えば、SUSやアルミニウム等からなることができる。
【0040】
吐出部132には、樹脂材料原料容器150にバルブ140Vを介して接続された樹脂材料液供給管140の一端と、窒素ガス等とされるキャリアガスを供給するキャリアガス供給管130Gと、が接続されている。樹脂材料液供給管140の他端は、樹脂材料原料容器150に接続されるとともに、樹脂材料原料容器150内に貯留された液状の樹脂材料の内部に位置している。
【0041】
樹脂材料原料容器150には、窒素ガス等とされる材料液供給用の加圧ガス供給管150Gが接続され、樹脂材料原料容器150の内圧を上昇させて加圧した液状の樹脂材料を樹脂材料液供給管140へと送液可能となっている。
【0042】
吐出部132は、樹脂材料液供給管140から供給された液状の樹脂材料をキャリアガスとともに気化槽130の内部空間に噴霧するよう構成されている。吐出部132は、気化槽130の頂部略中央位置に設けられている。
【0043】
気化槽130には、
図13に示すように、気化槽130の下側位置に加温部135が設けられる。
加温部135は、内部空間を上空間と下空間とに分割するように配置され、加温部135より上方に気化空間が形成され、下方に貯留部が形成される。
【0044】
加温部135は、吐出部132より下方位置に設けられ、吐出部132から噴霧された液状の樹脂材料を加熱して気化させるものである。
【0045】
樹脂材料原料容器150の内圧を上昇させて、樹脂材料液供給管140から供給された液状の樹脂材料を、吐出部132からキャリアガスとともに気化槽130の内部空間に噴霧する。このとき、吐出部132に供給される樹脂材料およびキャリアガスをさらに加温することもできる。
【0046】
吐出部132からキャリアガスとともに気化槽130の内部空間に噴霧された樹脂材料は、加温された気化槽130の内部において気化する。
【0047】
樹脂材料の気化が定常的に行われている間に、制御部400により、バルブ112Vを開状態として、チャンバ110にガスが流入可能な状態とするとともに、バルブ113Vを閉状態とする。これにより、樹脂材料迂回管113(第二配管)にガスが流入できない状態とする。これにより、チャンバ110に気化した樹脂材料が供給され、成膜処理を行うことが可能となる。
【0048】
切替部の駆動によって、即ち、制御部400によってバルブ112V及びバルブ113Vの開閉状態を切替えるだけで、チャンバ110に対する樹脂材料の供給と、樹脂材料迂回管113(第二配管)に対する樹脂材料の供給とを選択することができる。このため、チャンバ110に供給する気化した樹脂材料の供給量を安定化できるため、成膜レートが変動することを防止して、膜特性の優れた樹脂材料膜を安定して形成することが可能となる。さらに、チャンバ110における基板の入れ替え時に、チャンバ110に樹脂材料を導入せずに樹脂材料の気化を継続して行うことができるので、蒸気発生の停止/開始を繰り返すことなく、蒸気の発生レートを概ね一定にすることができる。
【0049】
成膜装置100は、例えば、気化温度40℃〜250℃程度とされる紫外線硬化型のアクリル樹脂とされる樹脂材料の成膜と、成膜された樹脂材料の硬化のための紫外線照射とを同一のチャンバ110内で可能とするように構成されている。これにより、何れの処理工程も同一の装置構成で行うことが可能となり、生産性を向上させることができる。