(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地下水位が高く、締固めが充分でない砂地盤においては、地震等の揺れによって、地盤が液状化することが知られている。そのような地盤中の地下構造物は、液状化に伴う過剰間隙水圧の発生、地下構造物の支持力及び側面の摩擦抵抗力の減少等によって、浮上や沈下を起こす危険を有している。
特許文献1には、地下構造物構築の際の地下水による構築物の浮上対策として、地下水噴出処置方法が提案されている。
特許文献2には、地下水対策として、地下構造物の底盤部分に地下水を導く開口部とその部分から立設する周辺地下水位以上の高さの中空柱を設けて、特許文献1等における地下水対策を補完している。
特許文献3には、液状化しやすい砂地盤における地中構造物の防護工法として、該構造物の底盤下方に水平の礫層を設け、この礫層から該構造物を通って直上に伸びる排水管を設置し、過剰間隙水圧を地上又は該構造物内に排水する工法が提案されている。
特許文献4には、地下埋設型貯水槽の液状化による浮上対策として、該貯水槽底版の下方に、石敷詰め層とその上方にコンクリート打設層を設け、前記底版中心部から前記構造物頂版中心部に及ぶ排水管と前記コンクリート打設層に設けられた誘導通路によって、過剰間隙水を地上に排出することができ、過剰間隙水圧による浮上を防止できるとしている。
【0003】
間隙が水で飽和している土に働く全応力は、間隙水圧と有効応力の和である。そして有効応力とは、土粒子の骨格構造によって支配される。前記の地下貯水槽等の地下構造物の地震時の浮上、沈下及び傾斜といったリスクの原因は、水で飽和したゆる詰めの砂の場合、「地震によって繰返しせん断を受けた砂が密度にかかわりなく体積(間隙比)を減少しようとする。−中略− ところが現実には地震による繰返しせん断は数十秒という短時間に起り、排水が間に合わない(非排水)、」(第四版土木工学ハンドブック第1巻P.383 土木学会編)、といった非排水の状態で砂地盤の元の骨格構造が変化することによって有効応力を失い、それを補う様に間隙水圧が発生することにある。その間隙水圧を過剰間隙水圧という。元の砂粒子間の骨格構造が変化している間は、砂粒子が水中を漂っているような泥水状態になっている。従って、地山中の構造物は、泥水より比重の小さいものは浮上し、重いものは沈下することとなる。その後、過剰間隙水は上昇し、地表面に砂を伴う噴砂等になって現れる。従来技術は、構造物の下方で発生する過剰間隙水圧を有した地下水を排水管で地表に導くものであり、一定の成果を有している。しかしながら、短時間で非排水状態を回避するためには、排水管に至るまでの集水を更に速やかに行って液状化の影響を最小限にとどめる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によって、過剰間隙水圧を有した地下水の排除は期待できるものの、さらに速やかな排除が求められる。従来技術の過剰間隙水圧を有した地下水の排水を超える速やかで確実な集排水対策を課題とする。加えて、これまで提案されている技術は、地下水位の高い地盤中を更に掘り下げて行う対策工であり、工事中に地下水を従来以上に排水する必要があるなど、提案されている技術には実施困難性という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
地下構造物若しくは地下構造物の基礎部の下端面の周縁部に沿って帯状に連続して閉じた枠であって、前記下端面から下方に突設する集水枠と、前記下端面下方の地盤を上下に2分する不透水の面(非透水層及び難透水層を含む概念である不透水層下面を含む概念)であって、上下方向の傾きにより一つ又は複数の頂点部を有し、その周縁は前記集水枠に達する集水不透水面と、該集水不透水面に接して下方に設ける集水透水層と、上端が少なくとも前記地下構造物の周辺地下水位以上に達して開放され、下方は前記頂点部を含む箇所で前記集水不透水面を貫通し、下端面が前記集水透水層の上面に達して開放された管状のベントと、を備えた地下構造物の液状化対策構造物。
【0007】
前記集水不透水面が剛性を有する不透水の板の下面である地下構造物の液状化対策構造物。
【0008】
前記の集水枠に設けられた孔であって、集水枠の外側の地盤と前記集水透水層若しくはベントとを連通する集水枠地下水流入孔を設けた地下構造物の液状化対策構造物。
【発明の効果】
【0009】
地下構造物若しくは地下構造物の基礎部の下端面より下方の地盤中において、地震等の揺れに起因する液状化よって、砂粒子は地下水中に浮遊した状態になり沈降し始める。砂粒子とは逆に、過剰間隙水圧を有する地下水は上方に残ることになる。集水不透水面の下方においては、前記集水透水層の直近下方に残留した地下水は、透水性の高い集水透水層を速やかに通過して、集水不透水面に達し、該集水不透水面の有する勾配に従い、ベントまでの勾配のある流動ルートを通じて、頂点部に存する前記ベント下端の解放面に到達し、該ベントを通じて速やかに周辺地下水位より上方に排水される。特に、前記集水不透水面が滑らかな材料の場合、該不透水面に達した地下水は、砂粒子の間隙での流動を超える速度で流動し、その効果は更に大きくなる。
【0010】
前記集水不透水面が剛性のある不透水の材料として例えば鋼板の下面であり、前記集水透水層として栗石若しくは砕石(以下栗石等ともいう。)を使用する場合、水中での施工が容易な該集水透水層を設けた後、現場付近で組立てた鋼板をそのまま落し込むことで設置が可能であり、工事中に集水不透水面を設けるために、地下水位を下げることなく施工できる。水中ポンプ等による地下水の強制排水(以下水替えという。)困難な現場では極めて有効な工法として採用しうる。
【0011】
地盤の液状化は地下構造物下方で浮力の発生や支持力の低下という形で該地下構造物の安定に弊害を及ぼすが、該地下構造物の側面での地盤の液状化や側面下方で被圧水が発生した場合、地山と構造物の境界は上昇する地下水のルートになり易い。そこで、境界付近の地盤と集水透水層とを連通する集水枠に設けた孔である集水枠地下水流入孔を設け、構造物境界付近を上昇する恐れのある地下水を前記ベントへ導くことによって、効果を図る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
代表的な地下構造物として、地下貯水槽2を対象に実施例を説明する。本地下貯水槽2は、
図1に示すように、円筒型の構造物で、側版23は鋼製のセグメント24を組立て溶接及びボルトで繋ぎ合わせたもので、底面部と頂部は鋼製の底版27及び頂版21の上部にコンクリートを打設し、構築する。底面部には、中央には集水ピット28(
図3に示す。)が設けられ、頂部には、吸管投入孔兼点検孔22を設けている。図示していないが、底版コンクリート上面は、全ての水が集水ピット28から給水できるよう水切り勾配を設けている。地下貯水槽2には、基礎部として栗石若しくは砕石13(以下基礎部栗石等ともいう。)による基礎工とその上面に、均しコンクリート14による不陸整正を施工し、鋼製の底版27を設置し、底版コンクリートを打設する。集水ピット位置には、工事に必要な水替え時の釜場12(
図9に示す。)を設けることがある。
【0014】
実施例では、ベント5の数を1、3及び4とするが、ベント5までの過剰間隙水圧を有する地下水の集水は、集水不透水面4の下の地下水の流れによる。地下貯水槽2下方の地下水を短時間でバランスよく排水するためには、効率的かつ平面位置的に偏りなく集水することが望ましい。それぞれのケースでは各ベントまでの集水不透水面4下での地下水の最大の流動長は概ね集水枠3で囲まれた円の半径の長さとし、複数ベントの場合はそれぞれのベント5への集水面積は均等割りとしている。
【実施例1】
【0015】
図2に、中央部に1つのベント5を設けた本発明にかかる構造物設置の正面断面図及び底面図を示す。
集水枠3は、
図2(2)に示すように地下貯水槽の基礎部栗石等13の底面の周縁部を帯状に連続した枠を形成しており、
図2 (1)に示すように基礎部栗石等13から下方に突出した構造になっている。
図2の集水枠3は、コンクリート打設による構造物である。地下構造物若しくは地下構造物の基礎部の下端面は、該地下構造物の沈下の場合の支持力若しくは浮上の場合の揚圧力の対象となる面である。前記集水枠3は、前記下端面周縁に設けている。該地下構造物の下方全体を地下水集水範囲とするのが好ましいからである。
【0016】
集水不透水面4は、
図2(1)に示すように下面を解放した円錐状で、円錐の頂点部41をベント5が貫通することによって上方も解放された状態になっている。
図2のケースの集水不透水面4は、鋼製板を加工したものである。
図2(2)に底面図を示すが、集水不透水面4の鋼製板とベント5は、下に開いた漏斗の錐体部と上方に伸びる足の部分に相当する。
図2(1)及び(2)に示すように、この集水不透水面4の周縁は前記集水枠3に達している。集水不透水面4を形成する鋼板の上には、現場の土が埋め戻し土17として埋め戻され、締め固められている。
【0017】
集水透水層42は、
図2(1)に示すように上面部が前記集水不透水面4に接して、該集水不透水面4の下方にその底面部が略水平になるように設けられている。この集水透水層42は、
図2(1)に示すように栗石若しくは砕石(以下栗石等という。)によって構築している。一般に、液状化によって生じる過剰間隙水圧は、地中の同一の高さにおいて同程度の大きさになると考えられる。先に記載した通り、過剰間隙水圧が土の有効応力を補てんするものであり、有効応力は地中の深さに比例するからである。一方で、前記集水透水層42中を流動する地下水の流動速度は、透水係数が同一の場合、過剰間隙水圧の大きさに関わる動水勾配に比例すると考えられ、集水透水層42下面部を略水平にすることによって、集水透水層下面部を上方へ向かう流動速さに大きな違いはなく、偏りのある地下水の流動を回避することができる。
【0018】
ベント5は、
図2(1)に示すように、上方は、基礎部中央位置から地下貯水槽2の周辺に地下水位11以上の高さに達している。下方は、構造物基礎部を貫通し、更に集水不透水面4の頂点部41を貫通し、前記集水透水層42に達している。
【0019】
図5に集水概念図を示す。集水透水層42下方の地山では、液状化によって、集水透水層42直下に過剰間隙水圧を有した地下水が発生する。この地下水は、圧力の低い上方へと流動する。
図5(2)の正面断面図に示す上方への矢印は、集水透水層42中の地下水の流動を示すものである。一方、集水透水層42を通過し、集水不透水面4に達した地下水は、同図の斜め上方へ向かう矢印に示すように流動し、中央部のベント下端52の開放部へ達する。
図5(1)の底面図には、集水不透水面4直下の地下水の流動を示したものである。この場合、集水不透水面の有する勾配によって最短ルートで中央のベント開放部に向かい、ベントからの距離に応じた到達時間でベントに達して、排水される。その到達時間は、ベントからの距離によって異なるが、方向には影響されない。集水不透水面4の上下方向勾配によって表面の地下水流動の速さは、勾配を有しない不透水面の流動と比較して大きくなり、地下貯水槽下方の地下水は、短時間で効率的な排水が可能となる。
【0020】
図6(1)には、前記の集水不透水面4を形成する鋼板の加工展開図を示す。
図2に示す頂点部41のベント貫入部と底面の解放された円錐台の円錐体の展開図である。
図6(1)の辺Mと辺Lを接合し、面全体に曲率を施す加工は容易でなく、ほぼ同様な効果をもたらす集水不透水面4の形状として6角錐状を形成する場合のパネル組立て図を
図6(2)に示す。このような6枚の扇形状の平板パネルを接合することによって円錐体とほぼ同様なルートでベントへ向かう地下水流を生み出し得る。地下水の流れの比較を
図7の(1−a)と(1−b)に示す。
【実施例2】
【0021】
図1及び
図3に基礎部下端面の周縁部に3箇所のベント5を配置する実施例を示す。集水枠3は、実施例1と同様である。
図1には、集水不透水面4に関して、b、d及びfを頂点部41とする概ね1/3の円錐体を組合せた形状としている。従って、集水不透水面4の下における地下水の流動は、ほとんど全ての流れが同一の勾配で、直接頂点部41へ向かう
図7(2−a)の矢印線のようなルートとなる。
【0022】
図3の集水不透水面4は、
図3(2)の底面図に示すように底面図上60度の鋼製扇型のパネルの組合せによって形成する。aboとbco、cdoとdeo又はefoとfaoのそれぞれ2枚のパネルで形成される集水エリアからの地下水が、b、d又はfにある1つのベント5から排出される。oa、oc及びoeは、同じ高さの辺(図上、山表示の実線)を形成し、ob、od及びofは、中心から周辺に向かって上昇する辺(図上、谷表示の点線)を形成する。これらの集水不透水面4下を上昇する地下水に対して、oa、oc及びoeは、同じ高さの稜線となり、稜線から垂直方向の流れを生み、ob、od若しくはofに達した場合は、中央部から周辺の頂点部41に向かう。又、abc、cde若しくはefaに達した流れは、辺に沿って頂点部41へ向かうことになる。これらの流れを
図7(2-b)に示す。本例も、1ベントの場合と同様に、
図1の曲面で形成する集水不透水面4による流動形態の
図7(2−a)に近似する流れの加工の容易な例として、
図7(2−b)に示す。
【0023】
図3に示すように、集水不透水面4の周辺部において頂点部41を形成する箇所であるb、d及びfにはベント5を配置する。これによって、集水不透水面下を流動し上方へ向かう過剰間隙水圧を有する地下水は、概ねベント下端52からの距離に応じた到達時間でベント下端52に達して排水される。
【実施例3】
【0024】
集水不透水面4としては、剛性のある素材として鋼製板を用いることができる他、柔らかな素材であるゴムシートや遮水シート等(以下ゴムシート等)を用いることができる。集水透水層42としては、前記の栗石等の他、透水マットなどを用いることができる。集水枠3として、上記ではコンクリート構造物で構築した実施例を示したが、鋼製板等の不透水の材料を用いることができる。集水枠3は、集水不透水面4の材質によって、集水不透水面4と一体加工で構築することができる。以下に、集水枠3と集水不透水面4が鋼製の場合で、本地下貯水槽を井筒沈下工法での施工により実施する場合における本発明の施工手順を示す。
【0025】
(集水不透水面4として鋼製材料を用いた場合の施工手順)
(1)表土掘削。必要に応じてこの段階からポンプによる強制排水によって、地下水位11を下げる。
(2)床掘面16に、最下段の刃口29その上にセグメント24を組立(井筒の完成)てる(
図8)。
(3)釜場12からのポンプによる強制排水によって、地下水位11を下げつつ、クラムシェルで井筒外部から若しくはバックホーで井筒内部から掘削し、刃口29部は人力で掘削する。
(4)井筒が所定の位置まで沈下した段階で、井筒本体を沈下させないように刃口29を残し、更に井筒内部を一定深さ掘削する。
(5)集水透水層42として、所定の高さまで栗石又は砕石を投入し、上面を成形する。
(6)予め組立てられた鋼製の集水枠3と集水不透水面4の鋼板を井筒上部から降下させて、(5)の成形された集水透水層42上に設置する。
(7)集水不透水面42の鋼板上に土砂を投入し、締固め成形をし、本体工基礎工として栗石又は砕石13を敷設する。
(8)(7)の基礎工上部に第1回コンクリートとして敷均しコンクリート14を打設し、その上部に側板下部を側面に本体底版コンクリートを打設する。
(9)その後人孔の設置、頂版コンクリート打設等を行い、当初地盤の高さへの埋め戻し等を行い、工事を了する。
【0026】
一般に、液状化対策を施す必要のある地盤における地下埋設物設置工事では、
図1に示すように、地下水位11は高く、上記(1)の表土掘削から水替え工(強制排水による地下水位の低下させる工程)を行う必要があり、上記(4)以降の段階では、ポンプによる強制排水が困難な状態になっている。そのような状況においても、上記に示すような手順で工事を行うことによって、容易に効果的な液状化対策を実施しうる。また、集水枠3として、コンクリート打設を行う場合は、上記の(5)の後、予め組立てられた集水不透水面4の鋼板設置後水中コンクリートを打設することで施工可能である。なお、(4)以降の段階で強制排水が可能な場合は、次に示すように集水不透水面4としてゴムシート等を用いた施工手順を採用しうる。
【0027】
(集水不透水面4としてゴムシート等を用いた場合の施工手順)
上記(4)に関して、更にポンプによる強制排水を行い、地下水位を下げ、地山を掘削し、成形する。
上記(5)に関して、(4)で成形された地山に集水透水層42として透水マットを設置し、その上面にゴムシート等を設置する。
上記(6)の工程はなく、上記(7)以下に続く。
【実施例4】
【0028】
図4に基礎部下端面の周縁部に4箇所のベント5を配置する実施例を示す。8枚のパネルを組み合わせた集水不透水面4として、
図4(2)に底面図を示す。集水概念図は
図7(3−b)に示す。
【実施例5】
【0029】
図9に、ベント5周辺の集水枠3に集水枠地下水流入孔31を設けた例を示す。集水枠3に設置する集水枠地下水流入孔31の外側地盤側には、透水マットや栗石工など周辺地山からの土砂の流入を防止する措置を講ずるのが望ましい。このような集水枠地下水流入孔31の配置によって、ベント5には、集水透水層42から集水不透水面4を通じて流入する地下水と地下構造物側面下方部から集水枠地下水流入孔31を通じて流入する地下水とが共存することになるが、後者は構造物境界付近を上昇する恐れのある地下水を対象とするものであり、前者の様に短時間での排水を目的とするものではない。
【0030】
集水枠3の位置は、先に記載のとおり、構造物若しくは構造物の基礎部全体の周縁と重複し、集水枠3と集水不透水面4とで構造物の下方部の全てをから覆うのが好ましいが、施工方法によっては困難な場合もある。井筒沈下工法で、予め組立てた集水枠と集水不透水面の部材を落し込む方法では側版のセグメントの主桁部分や底版下の刃口部分等が支障になって、基礎部周辺の内側に設置せざるを得ない。実施例5の集水枠地下水流入孔の
図9は、そのような場合として図示している。
【0031】
実施例においては、実施例2及び実施例4で、地下構造物周縁に設置する集水枠3に近接する位置に複数個のベント5を設ける例を示したが、地下貯水槽等の地下構造物の中央部或いはその周辺にベント5を設置した場合、貯水槽としての使用に支障をきたす場合が多く、地下構造物の管理上、前記地下構造物の周縁部に設置するのが望ましい場合が多い。また、集水枠地下水流入孔31の設置に関しても、ベント5が集水枠3に近接する位置に接する場合は、実施例5に示すように、集水枠地下水流入孔31のみで集水透水層42に連通できるが、実施例1のような中央部にベント5がある場合、集水枠3上方の外側地盤からの地下水を流入させるときには、集水不透水面4を貫通して、集水枠地下水流入孔31と集水透水層42を連通させる管が必要になる。従って、ベント5を複数個設置できる場合、集水枠3に近接する位置に設置する利点は大きい。
【0032】
実施形態では、地下貯水槽の地震時の地盤液状化に関して、主に貯水槽の浮上対策として考えられるが、実施形態とは異なり、地下構造物の全体の単位体積重量が大きい構造物である場合、過剰間隙水圧によって構造物が浮上することはないが、非排水の状態での繰返しせん断は、泥水状態を惹起し、支持力を失って沈下することとなる。このような構造物に対しても、本発明の対策を講ずることによって、そのような非排水状態をきわめて短い時間に限定することができるため、このような地盤の液状化による地下構造物の沈下対策にもなり得る。
【0033】
地盤の液状化による弊害は、前述のように、水で飽和したゆる詰めの砂が地震の揺れに伴う繰返しせん断によって砂地盤の体積を収縮しようとする過程で生じるものである。本発明では、その繰返しせん断をできる限り排水状態で行わせるものである。非排水での体積収縮過程を限定的にするものであり、本発明においても、体積収縮に伴う地下構造物の沈下を完全に防ぐことはできない。しかしながら、この体積収縮による地下構造物の沈下は、泥水状態での液状化地盤層全体に及ぶ沈下と比較して沈下の規模は小さく、大きな支障にならない場合が多いと考えられる。