(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正電流生成部は、前記メモリセルと構成を同じくされた複数のダミーセルを備えたダミーセル部、前記ダミーセル部における前記読出し電流に予め定められた係数を乗算して出力する電流出力部、および前記ダミーセル部の動作を制御するダミーセル制御部を備え、
前記ダミーセル制御部は、前記メモリセルアレイの少なくとも一部のメモリセル領域にデータを書き込む場合に、前記メモリセル領域および前記ダミーセル部の消去を実行した後前記ダミーセル部に前記予め定められたデータを書込み、その後書き込まれた前記予め定められたデータを前記ダミーセル部から読み出した際の読出し電流に基づいて前記補正電流が出力されるように前記電流出力部を制御し、前記高電圧発生部から出力される補正された前記目標電圧によって前記メモリセル領域への書込みを行う
請求項3に記載の半導体記憶装置。
フローティングゲートを有する電界効果トランジスタ型のメモリセル、前記メモリセルと同じ構成でかつ前記メモリセルへ書き込みを行う際の書込み電圧の補正に用いるダミーセル部、および電源電圧を昇圧して前記書込み電圧とされる高電圧を発生させる高電圧発生部を備えた半導体記憶装置において、前記メモリセルに予め定められたデータを書き込んだ場合の読出し電流が室温における読出し電流と等しくなるように周囲温度の変化による前記書込み電圧の変動を補正しつつ書込みを行う半導体記憶装置への書込み方法であって、
書き換え命令を受け場合に前記メモリセルおよび前記ダミーセル部を消去し、
前記ダミーセル部に前記予め定められたデータを書き込み、
前記ダミーセル部に書き込まれた前記予め定められたデータを読み出して読出し電流を取得するとともに該読出し流に基づいて補正電流を生成し、
前記高電圧を電流に変換した検出電流と、室温における前記読出し電流に基づく基準電流と前記補正電流との加算値と、を比較した比較結果により前記高電圧発生部における昇圧動作を制御して補正された書込み電圧を取得し、
前記補正された書込み電圧によって前記メモリセルへの書込みを行う
半導体記憶装置への書込み方法。
【背景技術】
【0002】
従来、電流の制御に関する文献として、特許文献1が知られている。特許文献1に開示された半導体集積回路は、第1制御電流に第1利得を積算した第1周波数の発振信号を出力する第1電流制御発振回路と、第1制御電圧と第1基準電圧の電圧差に第2利得を積算した第1出力電流を、第1制御電流に加える第1電圧電流変換回路と、定電流を第1制御電流に加える第1基準電流回路と、可変の第2出力電流を第1制御電流に加える電流出力回路とを有している。
【0003】
また、特許文献2も知られている。特許文献2に開示されたPLL回路は、入力信号の位相と帰還信号の位相とを比較して位相誤差電圧を生成する位相比較器と、位相誤差電圧の高調波成分を除去してフィルタ出力電圧を生成するループフィルタと、フィルタ出力電圧を位相誤差電流に変換する電圧−電流変換回路と、バイアス電流を生成するためのバイアス電流生成手段と、位相誤差電流とバイアス電流とを加算して制御電流を生成する加算器と、制御電流に応じて発振出力信号を生成する電流制御発振器と、発振出力信号にしたがって帰還信号を生成するカウンタとを含む。
【0004】
ところで、不揮発性の半導体記憶装置、例えばフラッシュメモリでは、書込みにおいて比較的大きな電圧が必要となるので、一般的に高電圧の書込み電圧を生成する部位(セル電圧生成部)を設けている。
図11を参照し、セル電圧生成部の一例について説明する。
図11は、比較例に係る半導体記憶装置に含まれるセル電圧生成部90を示すブロック図である。
図11に示すように、セル電圧生成部90は、高電圧発生部92、高電圧レベル検出部94、高電圧レベル判定部96、基準電流生成部98、および高電圧出力部99を備えている。
【0005】
高電圧発生部92は、所定の書込み電圧に見合う高い電圧とされた出力電圧VHを生成するためのチャージポンプ部(図示省略)を備えている。高電圧レベル検出部94は、生成された出力電圧VHのレベルを検出し、検出電流Idtcとして出力する。高電圧レベル判定部96は、検出電流Idtcと基準電流生成部98で生成された基準電流Irefとを比較し、高電圧発生部92を制御するためのCPUMP制御信号CPUMPENを生成する。CPUMP制御信号CPUMPENは、検出電流Idtcが基準電流Iref以上となった場合に高電圧発生部92のチャージポンプ部の動作を停止させ、検出電流Idtcが基準電流Iref未満となった場合に高電圧発生部92のチャージポンプ部の動作を再開させる信号である。
【0006】
図12(a)のグラフは、セル電圧生成部90の検出電流Idtcと出力電圧VHとの関係を曲線C2で示している。すなわち
図12(a)は、出力電圧VHを横軸に、検出電流Idtcを縦軸にとるとともに、基準電流Irefの位置を示してこれらの間の関係を表している。
図12(a)に示すように、セル電圧生成部90の動作により、基準電流Irefと検出電流Idtcとの交点P3におけるVHが、高電圧出力部99から出力されるセル電圧(書き込み電圧、以下「目標電圧」という場合がある)VH0となる。
図12(a)から明らかなように、検出電流Idtcの出力電圧VHに対する特性から、基準電流Irefを増やすと目標電圧が高電圧側にシフトする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の出力電圧VH0(目標電圧)が書込み電圧VWとなり、この出力電圧VH0がメモリセルアレイのソースラインに印加されて書込みが行われる。書込み電圧VWは、メモリセルおよびセル電圧生成部の温度変動特性等に起因して変動する。
図12(b)は、データ0を書き込んだ後の読出し時にメモリセルに流れる電流(読出し電流、
図12(b)では「セル電流」と表記)の書込み電圧VWに対する依存性を示している。
図12(b)に示すように、比較例に係る半導体記憶装置の、周囲温度が室温におけるセル電流の書込み電圧依存性は、一例として実線の曲線C3で示す特性となる。そして、メモリセルにデータ「0」を書き込む場合は、例えば書込み電圧VW1を約7.5Vとすると、セル電流は約1n(ナノ)Aまで減少させることができる(
図12(b)の交点P4)。
【0009】
ところが、周囲温度が室温から上昇して高温になると、セル電流の書込み電圧依存性は破線で示す曲線C4のように書込み電圧およびセル電流が大きくなる方向にシフトする。
すると、
図12(b)の<1>に示すように、セル電流は約4nAに増加する(
図12(b)の交点P5)。一方、セル電圧生成部90の出力電圧VHも温度によって変動する場合があり、例えば
図12(b)の<2>に示すように、約7.4V程度まで下がる(
図12(b)の交点P6)。つまり、書込み電圧VWを室温における最適値7.5Vに設定しても、実際の書き込み電圧VWはVW2≒7.4Vとなり、しかもセル電流の温度変動特性も加わることにより、セル電流は約10nAまで増加する。その結果、読み出し時にこの10nAの電流が流れることによって誤り(データ「0」を「1」と出力する誤り)が発生する懸念があった。
【0010】
従来一般的であったように、書換えの要求仕様が、狭い温度範囲の例えば工場内での書換えであればさほど問題とならないが、近年では、広範囲の温度条件での例えばエンドユーザーによる書換えが主流となってきていることにより、上記現象が問題となる場合がある。つまり、室温条件で書換え設定を最適化しても、高温度条件では同じ書込み電圧VWに対するセル電流が増加し、あるいはセル電圧生成部90の出力電圧VHが変化するため、高温条件における書換えにおいて不完全な書込みが発生し、その結果読出し時に想定外のセル電流が流れてしまい、読み出し特性の悪化(読出しデータの誤り)を引き起こす可能性があった。
【0011】
この点、特許文献1あるいは特許文献2でも電流の補正を行っているが、特許文献1、特許文献2は、半導体記憶装置における読出し電流を問題としたものではない。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、書き込み電圧の補正を行わない場合と比較して、環境条件が変化してもメモリセルからのデータの読み出し時の誤りが抑制された半導体記憶装置および半導体記憶装置への書込み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体記憶装置は、複数のメモリセルから構成されたメモリセルアレイと、電源電圧を昇圧して前記複数のメモリセルの各々に印加するセル電圧とされる高電圧を発生させる高電圧発生部、前記セル電圧の周囲温度に対する変動を補正するための補正電流を生成する補正電流生成部、および、前記高電圧を電流に変換した検出電流と、前記高電圧を目標電圧に維持する目標電流と、を比較して前記高電圧発生部における昇圧動作を制御する制御信号を生成し、かつ室温に対応する前記目標電流である基準電流と前記補正電流とを加算して前記目標電流とする制御信号生成部、を備えたセル電圧生成部と、を含むものである。
【0014】
一方、本発明に係る半導体記憶装置への書込み方法は、フローティングゲートを有する電界効果トランジスタ型のメモリセル、前記メモリセルと同じ構成でかつ前記メモリセルへ書き込みを行う際の書込み電圧の補正に用いるダミーセル部、および電源電圧を昇圧して前記書込み電圧とされる高電圧を発生させる高電圧発生部を備えた半導体記憶装置において、前記メモリセルに予め定められたデータを書き込んだ場合の読出し電流が室温における読出し電流と等しくなるように周囲温度の変化による前記書込み電圧の変動を補正しつつ書込みを行う半導体記憶装置への書込み方法であって、書き換え命令を受け場合に前記メモリセルおよび前記ダミーセル部を消去し、前記ダミーセル部に前記予め定められたデータを書き込み、前記ダミーセル部に書き込まれた前記予め定められたデータを読み出して読出し電流を取得するとともに該読出し流に基づいて補正電流を生成し、前記高電圧を電流に変換した検出電流と、室温における前記読出し電流に基づく基準電流と前記補正電流との加算値と、を比較した比較結果により前記高電圧発生部における昇圧動作を制御して補正された書込み電圧を取得し、前記補正された書込み電圧によって前記メモリセルへの書込みを行うものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、書き込み電圧の補正を行わない場合と比較して、環境条件が変化してもメモリセルからのデータの読み出し時の誤りが抑制された半導体記憶装置および半導体記憶装置への書込み方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施の形態に係る半導体記憶装置および半導体記憶装置への書込み方法では、書込み電圧を生成する高電圧のセル電圧生成部を備えた半導体記憶装置において、該書込み電圧の環境条件よる変動を補正している。
【0018】
図1は、本実施の形態に係るセル電圧生成部40が含まれる半導体記憶装置(メモリ)10の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
図1において、半導体記憶装置10は例えばフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリであり、メモリセルアレイ1、コントローラ2、ロウドライバ3、およびカラムドライバ4を含んで構成されている。本実施の形態に係るメモリセルは、一例として、フローティングゲートを有するMOS FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)で構成され、データ「0」が書き込まれた場合の読出し電流がほぼ0(一例として、1nA以下)とされ、データ「1」が書き込まれた場合の読出し電流が約15μA程度とされている。そして、データ「0」を書き込む場合に高電圧(本実施の形態では約7.5V)をメモリセルアレイ1のソースラインに印加してフローティングゲートに電子を蓄積させ、データ「1」を書き込む場合は何もしない。
【0020】
メモリセルアレイ1には、複数のビットラインと、各ビットラインに交叉した形態の複数のワードラインとが並置されており、これらビットラインおよびワードラインによる交叉部に、データを記憶される(書き込まれる)メモリセル(図示省略)が形成されている。
【0021】
コントローラ2は、読出し命令または書込み命令に応じて、読出しまたは書込みアドレスを示すアドレス情報をロウドライバ3に供給すると共に、書込み電圧または読出し電圧をメモリセルに印加させるべき書込みまたは読出しアクセス信号をカラムドライバ4に供給する。また、コントローラ2は、後述のダミーセルコントロール部60に消去信号ER、ダミーセル書込み信号DPG、メモリセル書込み信号PGMを送出する。
【0022】
ロウドライバ3は、コントローラ2から供給された書込みまたは読出しアクセス信号、およびアドレス情報に応じて、メモリセルアレイ1に形成されている一対のワードラインを選択して所定の選択電圧を供給する。これにより、かかる選択電圧が供給された一対のワードラインに接続されているメモリセルがデータの読出しまたは書込みの対象となる。
【0023】
カラムドライバ4は、コントローラ2から供給された読出しアクセス信号に応じて、データ読出し用の読出し電圧をメモリセルアレイ1のビットラインに印加する。また、カラムドライバ4には、データをメモリセルに書き込むための高電圧を発生するセル電圧生成部40が搭載されている。カラムドライバ4は、コントローラ2から供給された書込みアクセス信号に応じて、セル電圧生成部40で生成された高電圧に基づきデータに対応した書込み電圧を生成し、これをメモリセルアレイ1のビットラインを介して各メモリセルに印加する。
【0024】
次に、
図2を参照してセル電圧生成部40の構成について説明する。
図2に示すように、セル電圧生成部40は、高電圧発生部(CPUMP)42、高電圧レベル検出部(DTEC)44、高電圧レベル判定部(COMP)46、基準電流生成部(REF)48、高電圧出力部50、およびダミーセル電流生成部52を含んで構成されている。
図2において、基準電流Irefとダミーセル書込み電流IrefPとが合流された位置には、図示しない加算部が設けられている。高電圧レベル検出部44、高電圧レベル判定部46、基準電流生成部48、および該加算部が本発明に係る「制御信号生成部」を構成している。
【0025】
高電圧発生部42は、メモリセルアレイ1の各メモリセルに印加する書込み電圧となる高電圧の出力電圧VHを発生する回路である。本実施の形態では、一例としてチャージポンプ式の電圧発生回路を採用しており、書込み電圧VWの標準値を約7.5Vとしている。発生された出力電圧VHは、後述の高電圧出力部50を介して取り出され、メモリセルアレイ1のワードラインに印加される。高電圧発生部42には後述のCPUMP制御信号CPUMPENが入力され、CPUMP制御信号CPUMPENがハイレベル(以下、「H」)の場合にチャージポンプの昇圧動作が停止され、ロウレベル(以下、「L」)の場合に昇圧動作を再開する。
【0026】
高電圧レベル検出部44は、高電圧発生部42の出力電圧VHを受け、出力電圧VHに応じた電流を検出電流Idtcとして出力する。
【0027】
高電圧レベル判定部46は、検出電流Idtcを受け、基準電流Irefと比較し、比較結果に応じて高電圧発生部42の動作を制御するCPUMP制御信号CPUMPENを生成する。
【0028】
基準電流生成部48は、検出電流Idtcとの比較の際の基準となる基準電流Irefを生成する。
図12(a)の説明で述べたように、基本的にこの基準電流Irefによって書込み電圧が決定される。
【0029】
図3(a)に、高電圧レベル検出部44および高電圧レベル判定部46のより詳細な構成を説明するための回路図を示す。
図3(a)に示すように、高電圧レベル検出部44は、直列に接続されたn個のN型MOS FET(以下、「NMOSトランジスタ」)NM1、NM2、・・・、NMn−1、NMnからなるレベル検出回路74を含んで構成されている。レベル検出回路74のNMOSトランジスタNM1のソースに高電圧発生部42からの出力電圧VHが接続され、NMOSトランジスタNMnのドレインから検出電流Idtcが出力される。
【0030】
レベル検出回路74を構成するNMOSトランジスタの各々はゲートとソースが接続されているため、各NMOSトランジスタのゲートとドレインとの間には閾値電圧Vtnに相当する電位差が発生する。これにより、出力電圧VHが、(Vtn・n)V(ボルト)以上になると検出電流Idtcが流れ出す。逆に、出力電圧VHが(Vtn・n)V未満の間は検出電流Idtcは流れない。換言すると、(Vtn・n)が出力電圧VHに対するブレークダウン電圧となっている。
【0031】
一方、高電圧レベル判定部46は、電流検出回路70、およびコンパレータ72を含んで構成されている。
【0032】
電流検出回路70は、NMOSトランジスタTN1、TN2、TN3、TN4、および定電流源となるP型MOS FET(以下、「PMOSトランジスタ」)TP1、TP2を含んで構成されている。そして、検出電流IdtcはNMOSトランジスタTN1を介してGND(グランド)へ流れ、基準電流生成部48から入力された基準電流IrefはNMOSトランジスタTN4を介してGNDに流れるように構成されている。検出電流Idtcおよび基準電流Irefの各々は電流検出回路70によって電圧に変換され、コンパレータ72で比較される。
【0033】
コンパレータ72では、検出電流Idtcが基準電流Iref以上となった場合に出力であるCPUMP制御信号CPUMPENがHに設定され、検出電流Idtcが基準電流Iref未満の場合にCPUMP制御信号CPUMPENがLに設定される。むろんCPUMP制御信号CPUMPENの論理は一例であって、逆の論理でもよい。
【0034】
図2に示すように、CPUMP制御信号CPUMPENは高電圧発生部42に入力され、上述したようにCPUMP制御信号CPUMPENがHの場合にチャージポンプの昇圧動作が停止され、CPUMP制御信号CPUMPENがLの場合にチャージポンプの昇圧動作が再開される。本実施の形態に係るセル電圧生成部40では、チャージポンプの動作をこのように間欠的に行うことにより、一般的に消費電流の大きい高電圧発生部42における消費電流の低減を図りつつ出力電圧VHを目標電圧に維持している(定電圧化している)。
【0035】
再び
図2を参照して、高電圧出力部50は出力電圧VHをメモリセルアレイ1に出力する際のバッファとなっている。
図3(b)に高電圧出力部50の回路図を示す。
図3(b)に示すように、高電圧出力部50は、PMOSトランジスタTP3およびNMOSトランジスタTN5から構成されたインバータである。
【0036】
図2に示すように、高電圧発生部42から出力された出力電圧VHは、高電圧出力部50を介してダミーセル電流生成部52に入力される。なお、ダミーセル電流生成部52に入力される電圧は出力電圧VHと等しい電圧である必要はなく、例えば出力電圧VHに比例する電圧であってもよい。
【0037】
ダミーセル電流生成部52は、高温時におけるメモリセルへの書込み電圧を最適な値にするために、高温時におけるセル電流の補正値であるダミーセル書込み電流IrefPを取得する部位である。
図2に示すように、ダミーセル書込み電流IrefPは基準電流Irefと合成(加算)され、高電圧レベル判定部46に入力される。従って、ダミーセル書込み電流IrefPが出力された場合には
図3(a)に示す基準電流はIrefから(Iref+IrefP)に増加するので、高電圧発生部42から出力される出力電圧VHが上昇する。
【0038】
次に、
図4を参照して、ダミーセル電流生成部52についてより詳細に説明する。
図4に示すように、ダミーセル電流生成部52は、ダミーセルコントロール部60、ダミーセル部62、および電流ミラー部64を含んで構成されている。
【0039】
ダミーセル部62は本来のメモリセル以外に設けられた、セル電流の補正値であるダミーセル書込み電流IrefPを取得する際に動作させるダミーのメモリセルである。本実施の形態に係るダミーセル部62は、複数のダミーセルDCが並列に接続されて構成されている。そして、共通ゲートにはダミーセルコントロール部60からのワードライン電圧(以下、<VWL>と表記)を印加するためのワードライン端子VWL(以下、「VWL端子」)が接続され、共通ソースにはダミーセルコントロール部60からのソースライン電圧(以下、<VSL>と表記)を印加するためのソースライン端子VSL(以下、「VSL」端子)が接続されている。一方、共通ドレインには電流ミラー部64からのダミービットライン電圧(以下、<DBL>と表記)を印加するためのダミービットライン端子DBL(以下、「DBL端子」)が接続されている。なお、並列に接続されるダミーセルDCの個数は、読出し電流の取得の際の精度等を勘案して適切な個数を選択すればよい。
また、ダミーセルDCとして、半導体記憶装置10に設けられている冗長セル(不良セルとの置き換え用に設けられているメモリセル)を用いる構成としてもよい。
【0040】
図4に示すように、ダミーセルコントロール部60はVWL制御回路66およびVSL制御回路68を含んで構成されている。ダミーセルコントロール部60には、コントローラ2からの消去信号ER、ダミーセル書込み信号DPG、メモリセル書込み信号PGM、および高電圧出力部50からの出力電圧VHが入力される。ダミーセルコントロール部60は、消去信号ER(以下、「ER信号」)、ダミーセル書込み信号DPG(以下、「DPG信号」)、メモリセル書込み信号PGM(以下、「PGM信号」)、および出力電圧VHを受け、上記のワードライン電圧<VWL>、ソースライン電圧<VSL>、ダミービットライン電圧<DBL>を生成する。
【0041】
電流ミラー部64は、DBL端子を介して取得したダミーセル部62のセル電流を予め定められた比率でミラーリングし、ダミーセル書込み電流IrefPを生成する。また、電流ミラー部64は、DBL端子に印加するダミービットライン電圧<DBL>を生成する。電流ミラー部64にも、電流ミラー部64の動作を制御するER信号、DPG信号、PGM信号が入力されている。
【0042】
次に、
図5(a)を参照して、本実施の形態に係る半導体記憶装置10におけるメモリセルアレイ1への書込み処理について説明する。
図5(a)は、コントローラ2からの消去信号ER、ダミーセル書込み信号DPG、メモリセル書込み信号PGMを受け、ダミーセルコントロール部60が実行する書込み処理のフローチャートを示している。
【0043】
図11に示すセル電圧生成部90を含む比較例に係る半導体記憶装置では、通常のフローに従って、書き換え命令が発出されるとメモリセルアレイ1の書き換え対象として指定された領域のメモリセル領域が消去され、該メモリセル領域への書込みが行われる。これに対し本実施の形態に係る書込み処理では、メモリセル領域の消去と書込みとの間に、ダミーセル部62への書込み、読み出しが行われる。なお、
図5(a)のフローチャートにおいては、基準電流Irefはセル電流が室温で最適となるように設定されている。また、
図5(a)のフローチャートでは、すでにコントローラ2により書き換え命令が発出されているものとしている。
【0044】
図5(a)に示すように、ステップS100で消去信号ERを受信すると、次のステップS102で、書き換えの指定されたメモリセル領域、およびダミーセル部62の消去が行われる。ステップS102においては、ワードライン電圧<VWL>、ソースライン電圧<VSL>、ダミービットライン電圧<DBL>の各々は、一例として以下のように設定される。
<VWL>=約11V(出力電圧VH)
<VSL>=GND
<DBL>=GND
なお、<VWL>は高電圧発生部42で発生させた約11Vの出力電圧VHを用いる。
また、上述したように、<DBL>の設定は電流ミラー部64において行われる。
【0045】
次のステップS104でダミーセル書込み信号DPGを受信すると、ステップS106でダミーセル部62への書込みが実行される。本実施の形態では、ダミーセル部62へ書き込むデータをデータ「0」としている。本実施の形態に係るダミーセル部62への書込み時には、電流ミラー部64においてダミーセル書込み電流IrefPの出力は遮断されている。従って、ダミーセル部62への書込みは室温で最適なセル電流となる書込み電圧VWが印加される。ステップS106においては、<VWL>、<VSL>、<DBL>の各々は、一例として以下のように設定される。
<VWL>=約1.4V(ZVDD)
<VSL>=約7.5V(出力電圧VH)
<DBL>=約0.3V
このとき、複数個のダミーセルDCを含むダミーセル部62のセル電流として約4μAの電流が流れる。なお、ZVDDは半導体記憶装置10内で生成される電圧である。
【0046】
次のステップS108でメモリセル書込み信号を受信すると、以下のステップS110からステップS114の手順に従ってメモリセル領域への書込み電圧VWである目標電圧VHtが生成される。本実施の形態ではステップS110からステップS114をフローで示しているが、これらのステップはセル電圧生成部40の回路動作として実行される。
【0047】
ステップS110では、ダミーセル部62の読み出しを実行し、ダミーセル書込み電流IrefPを生成させる。この際、ダミーセル部62における読出し電流が電流ミラー部64からDBL端子を経由してダミーセル部62、VSL端子へと流れ、ダミーセル書込み電流IrefPは、該読出し電流を予め定められた比率でミラーリングして生成する。
【0048】
次のステップS112で、基準電流IrefにステップS110で生成されたダミーセル書込み電流IrefPが合成(加算)され、基準電流が目標電流Ireft=(Iref+IrefP)とされる。目標電流Ireftを受けた高電圧レベル判定部46は目標電流Ireftに基づいてCPUMP制御信号CPUMPENを発生させる。
【0049】
次のステップS114で、上記CPUMP制御信号CPUMPENを受けた高電圧発生部42は、CPUMP制御信号CPUMPENに基づいて出力電圧VHが目標電圧VHtとなるまでチャージアップを行う。ステップS114で生成された目標電圧VHtは、高電圧出力部50を介し書き込み電圧VWとして書込み対象のメモリセル領域に印加される。
【0050】
次のステップS116で対象となるメモリセル領域への書込みを実行する。ステップS116で書込みを行う際の書込み電圧VWは、ステップS114で生成された目標電圧VHtとされる。ステップS116においては、<VWL>、<VSL>、<DBL>の各々は、一例として以下のように設定される。
<VWL>=約2.5V(VD25)
<VSL>=GND
<DBL>=約0.5V
なお、VD25は半導体記憶装置10内で生成される電圧である。
その後、本書込み処理を終了させる。
【0051】
図5(b)に、上述した制御信号と各端子への印加電圧との関係を示す。
図5(b)では、例えば消去信号ERが「1」(H)でアクティブの場合、各端子への印加電圧は、<VWL>=11.0V、<VSL>=GND(0V)、<DBL>=GNDとすることを意味している。
【0052】
次に、
図6から
図9を参照して、ダミーセルコントロール部60、および電流ミラー部64の具体的な回路について説明する。
図6および
図7はVWL制御回路66の回路図を、
図8はVSL制御回路68の回路図を、
図9は電流ミラー部64の回路図を各々示している。
【0053】
図6に示すように、VWL制御回路66は、OR回路100、インバータ101、OR回路102、インバータ103、レベルシフト回路200、201、および選択回路202を含んで構成されている。
【0054】
OR回路100、インバータ101、OR回路102、インバータ103は、ER信号、DPG信号、PGM信号に基づいて、レベルシフト回路200、201、および選択回路202を制御する論理値を生成する。
【0055】
レベルシフト回路200はトランジスタ104、105、106、107、108、および109から構成され、レベルシフト回路200の電源端子は上述した高電圧発生部42の出力電圧VHに接続されている。一方、レベルシフト回路201はトランジスタ110、111、112、113、114、および115から構成され、レベルシフト回路201の電源端子は電源VVVに接続されている。電源VVVは、後述する
図7(a)に示すVVV発生回路208から供給される。
【0056】
選択回路202は、トランジスタ117、119から構成された出力電圧VHを供給する回路部と、トランジスタ118、120から構成された電源VVVを供給する回路部とが、一端を共通にしてトランジスタ121、122から構成された出力段(ゲート)に接続された構成となっている。該出力段からワードライン電圧<VWL>が出力される。
【0057】
図7(a)に示すように、VVV発生回路208は、レベルシフタ203、インバータ130、トランジスタ131、132から構成されたトランスファーゲート204、トランジスタ133、134から構成されたトランスファーゲート205を含んで構成されている。トランスファーゲート204には電源ZVDDが接続され、トランスファーゲート205には電源VD25が接続されている。電源ZVDDおよび電源VD25は半導体記憶装置10の内部で生成される電圧であり、
図5(b)に示すように、電源ZVDDはダミーセル書込みモードにおいて<VWL>を与え、電源VD25はメモリセル書込みモードにおいて<VWL>を与える。
【0058】
レベルシフタ203は入力端子IN、出力端子OUT、電源入力VIを備えたレベルシフト回路である。
図7(b)にレベルシフタ203の内部回路を示す。
図7(b)に示すように、レベルシフタ203は、インバータ140、トランジスタ141、142、143、144を含んで構成されている。レベルシフタ203は、
図7(b)に示すように、入力端子INに入力された信号に応じて、電源入力VIに入力された電圧を出力する。
【0059】
図7(a)に示すように、入力端子INにはDPG信号またはPGM信号が入力され、電源入力VIには、電源ZVDDまたはVD25が入力される。DPG信号が入力される場合には電源入力VIにZVDDが入力され、端子VVVから電源ZVDDが出力される。一方、PGM信号が入力される場合には電源入力VIにVD25が入力され、端子VVVから電源VD25が出力される。
【0060】
以上の構成を有するVWL制御回路66は、ER信号、DPG信号、PGM信号の各々に基づいて、
図5(b)に示す<VWL>を発生させる。例えばER信号=1の場合はトランジスタ109、115がオンとなり、トランジスタ117、119がオンとなる。このときトランジスタ121、122のゲートはLなので、トランジスタ121がオンとなり、出力電圧VHがVWL端子から出力されるモードとなっている。つまり、トランジスタ117、119、121を介して出力電圧VH(消去モードなので、11.0V、
図5(b)参照)がVWL端子から出力される。
【0061】
一方、DPG信号=1の場合は、
図7(a)に示すVVV発生回路208から電源ZVDD(1.4V)が発生し、この電源ZVDDが電源VVVとしてレベルシフト回路201、選択回路202に印加される。DPG信号=1の場合はトランジスタ108、114がオンとなり、トランジスタ118、120がオンとなる。このときトランジスタ121、122のゲートはLなので、トランジスタ121がオンとなり、電源VVV、すなわち電源ZVDDがVWL端子から出力されるモードとなる。すなわち、トランジスタ118、120、121を介して電源ZVDD(1.4V、
図5(b)参照)がVWL端子から出力される。
【0062】
また、PGM信号=1の場合は、
図7(a)に示すVVV発生回路208から電源VD25(2.5V)が発生し、この電源VD25が電源VVVとしてレベルシフト回路201、選択回路202に印加される。PGM信号=1の場合はトランジスタ108、114がオンとなり、トランジスタ118、120がオンとなる。このときトランジスタ121、122のゲートはLなので、トランジスタ121がオンとなり、電源VVV、すなわち電源VD25がVWL端子から出力されるモードとなる。すなわち、トランジスタ118、120、121を介して電源VD25(2.5V、
図5(b)参照)がVWL端子から出力される。
【0063】
図8(a)に示すように、VSL制御回路68は、レベルシフタ203から構成され、入力端子INにはDPG信号が入力され、電源入力VIには出力電圧VHが入力される。
その結果、
図8(b)に示すように、出力端子OUTからは出力電圧VHが<VSL>として出力される(ダミーセル書込みモードなのでVH=7.5V、
図5(b)参照)。
【0064】
次に、
図9を参照して電流ミラー部64の回路例について説明する。
図9に示すように、電流ミラー部64は、トランジスタ150、151、152、153、154、インバータ160、162を含んで構成されている。トランジスタ150のゲートにはインバータ160を介してDPG信号が入力され、トランジスタ152のゲートにはインバータ162を介してPGM信号が入力され、トランジスタ153のゲートにはER信号が入力されている。
【0065】
そして、トランジスタ150および152と、トランジスタ153との接続点がDBL端子とされている。また、トランジスタ151および152と、トランジスタ154とにより電流ミラー回路が構成され、トランジスタ154のソースからダミーセル書込み電流IrefPを出力する構成となっている。なお、電流ミラー部64におけるミラー比は、トランジスタ151のサイズとトランジスタ154のサイズの比によって設定される。トランジスタ150のドレインには固定電圧0.3Vが接続され、トランジスタ151、154のドレインには電源Vddが接続されている。
【0066】
図9に示す電流ミラー部64において、まず消去モードの場合にはER信号が1(H)とされ、トランジスタ153がオンとなるので、<DBL>はGNDとなる(
図5(b)参照)。この際DPG=0(L)、PGM=0(L)なのでトランジスタ150、152はオフとなっている。従って、電流ミラー回路は動作しない。
【0067】
ダミーセル書込みモードの場合にはDPG信号=1、PGM信号=0、ER信号=0となっているので、トランジスタ150がオン、トランジスタ152、153がオフとなり、トランジスタ150を介してDBL端子から0.3Vが出力される(
図5(b)参照)。従って、電流ミラー回路は動作しない。
【0068】
メモリセル書込みモードの場合にはPGM信号=1、DPG信号=0、ER信号=0となっているので、トランジスタ152がオン、トランジスタ150、153がオフとなり、トランジスタ151、152を介してDBL端子からダミーセルDCに向かってセル電流が流れる。この際、<DBL>は0.5Vに設定される。メモリセル書込みモードでは電流ミラー回路が動作し、トランジスタ154から電流検出回路70のIref端子に向けてダミーセル書込み電流IrefPが流れ、基準電流Irefと合成される(
図3(a)参照)。
【0069】
以上のように、
図5(a)に示すステップS116でメモリセル領域への書込みを行う際には、ダミーセル部62は読出し状態となっているため、ステップS106におけるダミーセル部62への書込みの際の書込みが浅かった場合(書込み電圧VWが低かった場合)には、書込み電圧VWの低下分に応じたセル電流(読出し電流)が流れ、電流ミラー部64からダミーセル書込み電流IrefPが出力される。該ダミーセル書込み電流IrefPは基準電流Irefと合成されて目標電流Ireftが生成され、該目標電流Ireftにより制御された出力電圧VHが目標電圧VHtとして出力されてメモリセル領域の書込みが行われる。
【0070】
次に、
図10を参照して、本実施の形態に係るセル電圧生成部40の作用について説明する。
図10は、セル電圧生成部40における検出電流Idtcの出力電圧VHに対する依存性(
図10は曲線C1で示されている)と、基準電流Iref、目標電流Ireftとの関係を示している。
【0071】
図10において、検出電流Idtc特性と基準電流Irefの交点P1における出力電圧VH0は、室温T0における書込み電圧を示している。半導体記憶装置10の周囲温度が上昇して室温以上の温度Ttになった場合には、ダミーセル電流生成部52によって上昇温度ΔT=(Tt−T0)に応じたダミーセル書込み電流IrefPが基準電流Irefに加算され、目標電流Ireftとされる。温度Ttが高いほどダミーセル書込み電流IrefP、すなわち目標電流Ireftが大きくなり、その結果目標電圧VHtも高電圧側にシフトする(
図10の交点P2)。
【0072】
つまり、本実施の形態に係る半導体記憶装置および半導体記憶装置への書込み方法によれば、書換え動作時に常にダミーセル部62の書換え、読み出しを行いその結果を反映しているので、周囲温度の条件に応じたメモリセルアレイ1への書込みが実行される。これにより、ダミーセル部62への書込みが浅い場合(書き込み電圧VWが低い場合)、ダミーセル書込み電流IrefPが増加して基準電流Irefへ加算されることで高電圧側にシフトした出力電圧により書込みを行うことができる。その結果、常にセル電流に対して最適な書込み電圧VWによって書込みが行われるので、メモリセルアレイ1からの読み出し特性が悪化することが抑制される。
【0073】
なお、本実施の形態では、メモリセルへの書込みにおいて常にダミーセル部62への書込み、読出しを行って基準電流を補正する形態を例示して説明したがこれに限られず、所定の場合にダミーセル部62への書込み、読出しを停止させてもよい。この場合、例えば予め定められた回数のメモリセルへの書き換えにおいてダミーセル書込み電流IrefPが発生しなかった場合には、次の予め定められた回数のメモリセルへの書き換えにおいてダミーセル部62への書込み、読出しを停止させるようにしてもよい。