(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記直接接合する工程の後、前記スタッドバンプを形成する工程の前に、前記透光性部材の前記発光素子が接合された面と反対側の面に反射防止膜を形成する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
前記スタッドバンプを形成する工程の後、前記複数の透光性部材を得る工程の前に、前記複数の発光素子の側面を導光部材で被覆する請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1に係る発光装置1)
図1Aは実施形態1に係る発光装置1の模式的斜視図であり、
図1Bは実施形態1に係る発光装置1の模式的平面図であり、
図1Cは
図1B中の1C−1C断面である。
図1Aから
図1Cに示すとおり、実施形態1に係る発光装置1は、表面に配線80が形成された実装基板70と、実装基板70上にフリップチップ実装された複数の発光素子20と、複数の発光素子20の上面に配置された複数の透光性部材10とを備え、発光素子20は、スタッドバンプ30を介して実装基板70の配線80と接合されている。以下、詳細に説明する。
【0010】
(透光性部材10)
透光性部材10は、発光素子20の上面に接し、発光素子20から出射される光を透過させ、外部に放出することが可能な部材である。透光性部材10は、上面と、上面と対向する下面と、上面と下面との間に位置する側面とを有する。上面は、発光装置1の発光面として、発光素子20からの光を外部に出射する面であり、下面は、発光素子20の光取り出し面と直接接合される面である。透光性部材10は、平面視で発光素子20よりも大きい面積を有する。透光性部材10の厚み(つまり上面から下面までの高さ)は、例えば50〜300μmである。
【0011】
透光性部材10には、透光性樹脂、ガラス、セラミックス等の透光性材料を板状に加工したもの、これら板状の透光性材料に波長変換物質が含有されたもの、あるいは波長変換物質の焼結体を板状に加工したものなどを用いることができる。波長変換物質としては、例えば、酸化物系、硫化物系、窒化物系の波長変換物質などが挙げられる。具体的には、発光素子20として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系(β サイアロン)、SGS波長変換物質、赤色発光するSCASN、CASN系、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウム系波長変換物質(KSF系波長変換物質;K2SiF6:Mn)、硫化物系波長変換物質等の波長変換物質の単独又は組み合わせが挙げられる。波長変換物質は、例えば、透光性部材10に対して2〜50重量%で含有させることができる。透光性部材10は、波長変換物質の他に、例えば光拡散物質等の各種フィラー等を含んでいてもよい。
【0012】
透光性部材10は、発光素子20と直接接合されている。ここで、直接接合とは、接合したい界面(つまり発光素子20の上面と透光性部材10の下面)を、接着剤等の接合部材を用いることなく原子の結びつきで接合させる接合を意味する。透光性部材10と発光素子20とが直接接合することにより、透光性部材10の放熱性を高めることができ、発光装置1の信頼性を高めることができる。特に、透光性部材10が波長変換物質を含有する際には、波長変換物質の発熱を、発光素子20を介して効果的に放熱することができる。また、透光性部材10と発光素子20とが接着材等の他の部材を介さずに直接接合されているため、発光装置1の光取り出し効率を高めることができる。
【0013】
(発光素子20)
発光素子20は、例えば、発光ダイオード等の半導体発光素子である。
【0014】
図2Aはスタッドバンプ30が設けられた発光素子20の模式的平面図である。
図2Bは
図2Aの一部拡大図であり、
図2Cは
図2A中のA−A断面を示す模式的断面図である。
図2A〜
図2Cに示すように、発光素子20は、透光性部材10に直接接合される支持基板21と、支持基板21上に形成された半導体層22と、第1電極23と、第2電極24と、を備える。つまり、発光素子20は、支持基板21の半導体層22が形成された面と反対側の面を上面として、この上面が透光性部材10と直接接合される。
【0015】
(支持基板21)
支持基板21には、例えば半導体層22の成長基板として半導体層22をエピタキシャル成長させることができるものを用いることができる。このような材料としては、サファイアやスピネルのような絶縁性基板等が挙げられる。
【0016】
(半導体層22)
半導体層22には、例えば、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等の種々の半導体材料を用いることができる。具体的には、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系の半導体材料が挙げられ、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等を用いることができる。半導体層22は、支持基板21側から順に、第1半導体層221(例えば、n型半導体層)、活性層、及び第2半導体層222(例えば、p型半導体層)を有する。各層の膜厚及び層構造は、当該分野で公知のものを利用することができる。
【0017】
半導体層22は、第2半導体層222の上面側に、第2半導体層222から第1半導体層221が露出する複数の露出部Xを有する。具体的には、露出部Xは、半導体層22の第2半導体層222側の表面において、第2半導体層222及び活性層が膜厚方向の全てにわたって除去され、第2半導体層222及び活性層から第1半導体層221の表面が露出する領域である。つまり、半導体層22は、第2半導体層222側の表面に孔を有し、孔の底面には第1半導体層221が露出しており、孔の側面には第2半導体層222、活性層及び第1半導体層221が露出している。露出部Xから露出する第1半導体層221は、後述する第1電極23と電気的に接続される。第1半導体層221と接続される第1電極23は後述する絶縁膜25を介して第2半導体層222上に形成される。
【0018】
露出部Xの形状、大きさ、位置、数は、意図する発光素子20の大きさ、形状、電極パターン等によって適宜設定することができる。
【0019】
複数の露出部Xはすべてが同じ形状や大きさであってもよいし、それぞれ又は一部が異なる形状、大きさであってもよい。ただし、全てが同程度の大きさ及び形状であることが好ましい。露出部Xは活性層を有さない領域であるため、同程度の大きさの複数の露出部Xを規則的に整列して配置することで、発光面積及び電流の供給量の偏りを抑制することができる。その結果、発光素子20全体として、輝度ムラを抑制することができる。
【0020】
個々の露出部Xの形状は、例えば、平面視において円又は楕円、三角形、四角形、六角形等の多角形等であり、なかでも、円形又は円形に近い形状(例えば楕円又は六角形以上の多角形)が好ましい。
【0021】
露出部Xの大きさは、半導体層22の平面積、求められる発光素子の出力、輝度等によって適宜調整することができ、例えば、露出部Xの平面視形状が円形である場合、直径が数十〜数百μm程度の大きさが挙げられる。
【0022】
露出部Xは、半導体層22の外縁よりも内側に複数形成されていることが好ましい。また、露出部Xは、規則的に配置されていることが好ましく、例えば、平面視においてそれぞれが離間して配列されていることが好ましく、それぞれが一定の距離をあけて、整列して配置されていることがより好ましい。このようにすれば、発光素子20の輝度ムラを抑制して、均一に光取り出しすることができる。
【0023】
(絶縁膜25)
発光素子20は、半導体層22を覆うとともに、複数の露出部Xの上方に開口部を有する絶縁膜25を備える。さらに絶縁膜25は、半導体層22の上面及び側面を被覆するとともに、露出部Xの上方に開口部を有する。絶縁膜25が半導体層22の上面及び側面を被覆し、かつ露出部Xの上方に開口部を有することにより、絶縁膜25の上面の広範囲に第1電極23を形成することができる。
【0024】
絶縁膜25は、当該分野で公知の材料を、電気的な絶縁性を確保し得る材料及び厚みで形成されている。具体的には、絶縁膜25には、金属酸化物や金属窒化物を用いることができ、例えば、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の酸化物又は窒化物を好適に用いることができる。
【0025】
(第1電極23及び第2電極24)
発光素子20は、半導体層22上に、第1半導体層221と電気的に接続される第1電極23と、第2半導体層222と電気的に接続される第2電極24とを備える。第1電極23及び第2電極24は、半導体層22の上面側(つまり、支持基板21とは反対側となる第2半導体層222側)に配置されている。第1電極23及び第2電極24は、第1半導体層221及び第2半導体層222と、それぞれ直接接触せずに後述する光反射性電極26を介して電気的に接続されていてもよい。
【0026】
第1電極23及び第2電極24は、例えばAu、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti、Al、Cu等の金属又はこれらの合金の単層膜又は積層膜によって形成することができる。具体的には、これら電極は、半導体層22側からTi/Rh/Au、Ti/Pt/Au、W/Pt/Au、Rh/Pt/Au、Ni/Pt/Au、Al−Cu合金/Ti/Pt/Au、Al−Si−Cu合金/Ti/Pt/Au、Ti/Rhなどの積層膜によって形成することができる。膜厚は、当該分野で用いられる膜の膜厚のいずれでもよい。
【0027】
第1電極23及び第2電極24の平面視形状は、半導体層22の平面視形状が矩形又は略矩形の場合、同様に矩形又は略矩形であることが好ましい。第1電極23及び第2電極24は、平面視の際に、1つの半導体層22において、一方向に並行して交互に配置されていることが好ましい。例えば、平面視において、第1電極23が第2電極24を挟む配置が挙げられる。
【0028】
第1電極23は、上述した半導体層22の第2半導体層222側に配置される露出部Xと電気的に接続される。この場合、第1電極23は複数の露出部Xを覆うように接続されることが好ましく、全ての露出部Xに一体的に接続されることがより好ましい。従って、第1電極23は、第1半導体層221上のみならず、第2半導体層222上方にも配置される。この場合、第1電極23は絶縁膜25を介して、露出部Xを形成する孔の側面(つまり活性層及び第2半導体層222の側面)及び第2半導体層222上に配置される。第2半導体層222と第1電極23は、平面視において重なって配置されているが、絶縁膜25により絶縁されている。
【0029】
第2電極24は、上述した半導体層22の第2半導体層222上に配置され、第2半導体層222と電気的に接続される。第2電極24は、第2半導体層222と直接接していてもよいし、後述する光反射性電極26を介して第2半導体層222上に配置されていてもよい。
【0030】
(光反射性電極26)
発光素子20は、第2電極24と第2半導体層222との間に介在する光反射性電極26を有する。光反射性電極26としては、銀、アルミニウム又はこれらのいずれかの金属を主成分とする合金を用いることができ、特に活性層から発せられる光に対して高い光反射性を有する銀又は銀合金がより好ましい。光反射性電極26は、活性層から出射される光を効果的に反射することができる厚みを有することが好ましく、例えば、20nm〜1μm程度の厚みを有していることが好ましい。光反射性電極26と第2半導体層222との接触面積は大きいほど好ましく、このため、光反射性電極26は、第1電極23と第2半導体層222との間にも配置されることが好ましい。具体的には、光反射性電極26の総平面積は、半導体層22の平面積の50%以上、60%以上、70%以上が挙げられる。
【0031】
光反射性電極26が銀を含む場合には、銀のマイグレーションを防止するために、その上面、好ましくは、光反射性電極26の上面及び側面を被覆する保護層27を設けてもよい。保護層27としては、通常、電極材料として用いられている金属及び合金等の導電性部材によって形成してもよいし、絶縁性部材を用いても形成してもよい。導電性部材としては、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属を含有する単層又は積層層が挙げられる。絶縁性部材としては、上述した絶縁膜25と同様の材料が挙げられるが、なかでもSiNを用いることが好ましい。SiNは膜が緻密なため、水分の侵入を抑制する材料として優れている。保護層27の厚みは、効果的に銀のマイグレーションを防止するために、数百nm〜数μm程度が挙げられる。
【0032】
保護層27を絶縁性部材で形成する場合、保護層27が光反射性電極26の上方に開口を有することで光反射性電極26と第2電極24とを電気的に接続することができる。
【0033】
発光素子20が第2半導体層222上に光反射性電極26及び保護層27を有する場合、半導体層22を覆う絶縁膜25は光反射性電極26及び保護層27を覆い、かつ、第2電極24の直下の領域に開口を有し、これにより第2電極24と光反射性電極26とが電気的に接続される。
【0034】
(スタッドバンプ30)
発光素子20は、第1電極23及び第2電極24と接続されるスタッドバンプ30を備える。スタッドバンプ30は、第1電極23及び第2電極24上にそれぞれ複数配置することができる。スタッドバンプ30を発光素子20の第1電極23及び第2電極24上に高密度に配置することにより、発光素子20の発光によって発生する熱をスタッドバンプ30を介して実装基板70側から逃がす経路を増大させることができる。スタッドバンプ30は、例えば、金、銀、銅、錫、白金、亜鉛、ニッケル又はこれらの合金により形成することができる。
【0035】
スタッドバンプ30は、
図2A、
図2Bに示すように、発光素子20における第1半導体層221の露出部Xと平面視においてオーバーラップしないように配置される。このように、スタッドバンプ30を露出部Xから離間して配置することにより、スタッドバンプ30の形成時、および発光素子20のフリップチップ実装時に発光素子20に負荷される押圧力に起因する発光素子20のクラックを防止することができる。
【0036】
すなわち、
図2A乃至
図2Cに示すように、発光素子20の第1電極23は、絶縁膜25を介して第2半導体層222上に形成されている。絶縁膜25は半導体層22を被覆し、露出部Xの上方に開口部を有する。第1電極23は、開口部の底面にて第1半導体層221と電気的に接続され、半導体層22を覆う絶縁膜25を介して露出部Xの側面(つまり露出部Xを形成する孔の側面)及び第2半導体層222の上面を被覆するように形成される。半導体層22は、露出部Xと第2半導体層222表面との間に段差を有するため、この段差部分に大きな荷重がかかるとクラックが生じる懸念がある。特に、絶縁膜25を形成する金属酸化物や金属窒化物は、第1電極23及び第2電極24を形成する金属材料と比較すると硬くてもろいためクラックが生じやすく、仮に絶縁膜25にクラックが生じると、第1電極23と第2半導体層222とが導通し、発光素子20が短絡する虞がある。しかるところ、露出部Xとスタッドバンプ30とがオーバーラップするように配置されると、つまり露出部Xの直上にスタッドバンプ30が配置されると、フリップチップ時の衝撃により、上記の段差部分に大きな荷重がかかり、半導体層22を覆う絶縁膜25にクラックが生じる虞がある。しかしながら、平面視において、スタッドバンプ30と露出部Xとを離間して配置することにより、上記の段差部分に大きな荷重がかかることが抑制されるため、絶縁膜25のクラックの発生を効果的に回避することができる。なお、ここでの離間とは、発光素子20のフリップチップ実装時に、スタッドバンプ30が圧力によって横方向に広がり平面積が大きくなった後においても、平面視においてスタッドバンプ30の外縁が露出部Xの外縁と重ならないことを意味する。すなわち、
図2B中の二点鎖線Lは、押し潰された後のスタッドバンプ30の形状を示しているが、ここでの離間とは、
図2Bに示すように、押し潰された後においても、平面視において、スタッドバンプ30の外縁が露出部Xの外縁と重ならないことをいう。
【0037】
図3はスタッドバンプ30の模式的断面図である。
図3に示すように、スタッドバンプ30は発光素子20の第1電極23及び第2電極24の反対側に向けて凸となる形状の先端を有している。このような形状のスタッドバンプ30は、例えばスタッドバンプボンダーやワイヤボンディング装置等により形成することができる。
【0038】
(実装基板70)
発光素子20は、実装基板70上にスタッドバンプ30を介してフリップチップ実装される。実装基板70の厚みは、例えば0.2〜5mm程度が挙げられる。実装基板70の平面形状としては、矩形等の多角形、円形、楕円形、またはこれらに近似する形状が挙げられる。実装基板は平板状又はシート状のものが好ましい。
【0039】
実装基板70は、例えば、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、セラミックス、ガラス、金属、紙等これらの複合材料などから選択して構成することができる。なかでも、耐熱性及び対候性に優れたセラミックスが好ましく、セラミックスとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
実装基板70は、少なくとも上面に配線80を有する。配線80上に発光素子20がフリップチップ実装される。配線80としては、発光素子20に電流を供給し得るものであればよく、当該分野で通常使用されている材料、厚み、形状等で形成することができる。具体的には、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、プラチナ、チタン、タングステン、パラジウム等の金属又はこれらを含む合金等が挙げられる。特に、実装基板70の上面に形成される配線80は、発光素子20からの光を効率よく取り出すために、その最表面が銀又は金などの反射率の高い材料で覆われていることが好ましい。配線80は、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタ等によって形成される。例えば、スタッドバンプ30の材料に金を用いる場合、配線80の最表面に金を用いることで、発光素子20と実装基板70との接合性が向上できる。
【0041】
配線80と発光素子20側に形成されたスタッドバンプ30との接合は例えば超音波接合法などのフリップチップ実装により行なわれる。なお、実装基板70は、配線80のほか、後述する被覆部材60を保持するための枠体等を備えていてもよい。
【0042】
(反射防止膜40)
発光装置1は、発光素子20からの光の透過率を高めるために、透光性部材10の発光素子20が固定された面と反対側の面に反射防止膜40を備えていてもよい。透光性部材10の光出射面側に反射防止膜40を形成することにより、発光素子20からの光の出射効率を向上させながら、外部からの光の透過を低減することができる。反射防止膜40にはSiO
2やZrO
2などの透光性膜を単層または多層膜として用いることができる。
【0043】
(導光部材50)
発光装置1は、発光素子20の側面を被覆する導光部材50を備えていてもよい。導光部材50は、発光素子20の側面及び発光素子20から露出する透光性部材10の下面を被覆する。このような導光部材50を備えることにより、発光素子20の側面からの出射光が導光部材50の外面で適度に反射し、反射光を透光性部材10へと導光させることができる。
【0044】
導光部材50は、取り扱いおよび加工が容易であるという観点から、樹脂材料を用いることが好ましい。樹脂材料としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂の1種以上を含む樹脂またはハイブリッド樹脂等からなる樹脂材料を用いることができる。導光部材50は、後述するように、導光部材50を形成するための樹脂材料の粘性、発光素子20との濡れ性を利用して形成することができる。
【0045】
(被覆部材60)
発光装置1は、スタッドバンプ30の側面を被覆する被覆部材60を備えていてもよい。なかでも、被覆部材60は、発光素子20の側面、発光素子20と実装基板70との間、実装基板70の上面、及びスタッドバンプ30の側面の全てを被覆していることが好ましい。これにより発光素子20から実装基板70側に向かう光効率よく反射させることができる。
【0046】
被覆部材60は、例えば、光反射性、透光性、遮光性等を有する樹脂材料によって形成することができる。被覆部材60を構成する樹脂材料には、例えば、光反射性物質、拡散材、及び着色剤の少なくとも1つが含有されていてもよい。これら樹脂材料や光反射性物質等は、当該分野で通常使用されているもののいずれをも利用することができる。例えば、そのような樹脂材料としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂等が挙げられる。また、光反射性物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが挙げられる。
【0047】
発光装置1は、任意に、保護素子90等の半導体素子、電子部品等を備えていてもよい。これらの素子及び電子部品は、被覆部材60に埋設されていることが好ましい。
【0048】
以上説明した実施形態1に係る発光装置1によれば、スタッドバンプ30が形成された発光素子20を実装基板70にフリップチップ実装するため、フリップチップ実装時の発光素子20への衝撃を緩和することができる。また、スタッドバンプ30を実装基板70側ではなく、発光素子20側に形成するため、発光素子20とスタッドバンプ30との位置合わせが容易となる。特に、発光素子20が上記した露出部Xを備える際には、スタッドバンプ30と露出部Xとを離間して配置することが容易となり、上記した発光素子20におけるクラックの発生をより効果的に回避することができる。
【0049】
(実施形態2に係る発光装置2)
図4は実施形態2に係る発光装置2の模式的断面図である。
図4に示すように、実施形態2に係る発光装置2は、1つの透光性部材10に複数の発光素子20が直接接合されている点で、実施形態1に係る発光装置1と相違する。実施形態
2に係る発光装置
2によっても、実施形態
1に係る発光装置
1と同様に、フリップチップ実装時の発光素子20への衝撃を緩和することができる。また、発光素子20とスタッドバンプ30との位置合わせが容易となり、特に、発光素子20が上記した露出部Xを備える場合において、上記した発光素子20におけるクラックの発生をより効果的に回避することができる。
【0050】
(実施形態1に係る発光装置1の製造方法)
図5Aから
図5Iは実施形態1に係る発光装置1の製造方法を説明する模式的断面図である。実施形態1に係る発光装置1の製造方法は、板状の透光性部材10に複数の発光素子20を直接接合する工程と、複数の発光素子20の電極にそれぞれスタッドバンプ30を形成する工程と、透光性部材10を分割し、1つまたは2つ以上の発光素子20が接合された複数の透光性部材10を得る工程と、各発光素子20を実装基板70にフリップチップ実装する工程と、をこの順に有する。以下、順に説明する。
【0051】
(透光性部材準備工程)
まず、
図5Aに示すように、板状の透光性部材10を準備する。
【0052】
(直接接合工程)
次に、
図5Bに示すように、板状の透光性部材10に複数の発光素子20を直接接合する。具体的には、複数の発光素子20それぞれが有する支持基板21を透光性部材10に直接接合する。このように、実装基板70へのフリップチップ実装前に複数の発光素子20を透光性部材10に直接接合すれば、フリップチップ実装された複数の発光素子20それぞれに個別の透光性部材10を樹脂などの接着剤で接着する場合よりも、発光素子20と透光性部材10の上面(発光装置1の発光面)の位置合わせの精度が向上する。
【0053】
直接接合する方法としては、当該分野で公知の方法が挙げられる。例えば、表面活性化接合、水酸基接合、及び原子拡散接合のいずれかを利用することができる。表面活性化接合、水酸基接合、及び原子拡散接合のいずれかによれば、常温に近い環境下で発光素子20と透光性部材10とを一体化することができる。
【0054】
表面活性化結合は、接合面を真空中で処理することで化学結合しやすい表面状態として接合面同士を結合する方法である。水酸基結合は、例えば原子層堆積法などにより接合面に水酸基を形成し、それぞれの接合面の水酸基同士を結合させる方法である。原子拡散結合は、それぞれの接合面に1原子層相当の膜厚の金属膜を形成し、真空中や不活性ガス雰囲気でそれぞれの接合面を接触させることで金属原子同士を結合させる方法である。
【0055】
常温接合を効果的に行うために、透光性部材10と発光素子20との接合面は、高い平滑性を有していることが好ましい。具体的には、接合面の算術平均粗さRaが1.0nm以下であることが好ましく、0.3nm以下とすることがより好ましい。接合面をこのような表面粗さに加工する方法は、機械的研磨や化学的研磨等の公知の方法を用いることができる。
【0056】
(反射防止膜形成工程)
直接接合する工程の後、スタッドバンプを形成する工程の前に、透光性部材10の発光素子20が接合された面と反対側の面に反射防止膜40を形成する工程を有することができる。反射防止膜形成工程では、
図5Cに示すように、透光性部材10の発光素子20が接合された面と反対側の面(発光装置1の発光面となる面)に反射防止膜40を形成する。上記したように、透光性部材10と発光素子20とを直接接合する際には、研磨等により接合面を加工する前処理が必要となるが、研磨工程時に、透光性部材10の厚みにばらつきが生じることがある。この厚みばらつきは、直接接合後に、透光性部材10の発光素子20が接合された面と反対側の面を研磨等により加工することで解消することができる。つまり、透光性部材10と発光素子20とが直接接合された後に反射防止膜40を形成することにより、反射防止膜形成工程の前処理として、前記した厚みばらつきを解消するための研磨工程を行うことができる。
【0057】
(スタッドバンプ形成工程)
次に、
図5Dに示すように、発光素子20上にそれぞれスタッドバンプ30を形成する。スタッドバンプ30は、例えば、市販のスタッドバンプボンダー又はワイヤボンダーを用いて形成することができる。具体的には、スタッドバンプボンダーのキャピラリから導出された金属ワイヤの先端を溶融させてボールを形成し、形成されたボールを超音波熱圧着等によって発光素子20の第1電極23および第2電極24上に固着させ、固着されたボールを金属ワイヤから分断する。これにより発光素子20の第1電極23及び第2電極24上にスタッドバンプ30が形成される。ボールの分断は、ボールを第1電極23や第2電極24上に固着した後に金属ワイヤを保持したままキャピラリを上昇させ、さらにキャピラリを水平移動させることにより、変形したボールをキャピラリ先端のエッジによって擦り切って金属ワイヤの上端を比較的平坦になるように分断することが好ましい。
【0058】
形成されたスタッドバンプ30の形状は、溶融する金属ワイヤの量、キャピラリの先端形状、押圧の大きさ等によって適宜調整することができる。キャピラリの持ち上げ高さ等、水平移動のタイミング等によって、スタッドバンプ30の高さを適宜調整することができる。スタッドバンプ30の上端は、エッチング、ブラスト、研磨等の平坦化処理に付してもよい。また、形成されたスタッドバンプ30に電圧を印加してスパークを発生させ、スタッドバンプ30の上端を溶融、再結晶させ、軟質化又は平滑化させてもよい。
【0059】
このような方法によって、発光素子20上に凸状の先端部を有するスタッドバンプ30を形成する。また、スタッドバンプ30の上端を軟質化させることにより、フリップチップ実装時に上端が容易に変形して実装基板70上の配線80と密着させやすくし、常温でも強度の高い接合をすることができる。
【0060】
各スタッドバンプ30間の間隔は、発光素子20の大きさ、形成されるスタッドバンプ30の数等によって適宜設定することができる。例えば、放熱性の観点からは、スタッドバンプ30と発光素子20との接合面積は大きいほど好ましいため、同じ電極上に形成されるスタッドバンプ30間の距離は短い方が好ましい。また、後述する被覆部材形成工程における、樹脂材料の流動性を考慮すると、各スタッドバンプ30間の距離は樹脂材料の流動性を妨げない程度に離れていることが好ましい。これらを考慮して、スタッドバンプ30間の距離は例えば10〜45μm程度が挙げられる。なお、本実施形態では、前記のとおり、スタッドバンプ30を発光素子20側に形成するため、発光素子20とスタッドバンプ30とを精度良く位置合わせすることができる。したがって、スタッドバンプ30同士を適度に離間させつつ、スタッドバンプ30間の距離をより短くすることができる。
【0061】
スタッドバンプ30ではなく、めっきによりバンプを形成する場合には、発光素子20の電極デザインの変更に伴い、めっきバンプを形成するためのマスクのデザインも変更する必要があり、手間やコストの負担が比較的大きくなる虞があるが、スタッドバンプ30を用いることにより、マスクを用いずに発光素子20の所望の位置にバンプを配置することができる。また、めっきバンプによりバンプを形成する場合には、めっきバンプを形成した後、めっきバンプが形成された発光素子と透光性部材とを直接接合することになる。しかしながら、このようにすると、発光素子を透光性部材に直接接合する際の荷重により、透光性部材上のめっきバンプが潰れてしまう虞があり、発光素子の高さのばらつきが大きくなる虞がある。本実施形態によれば、透光性部材10と発光素子20とを直接接合した後にスタッドバンプ30を形成するため、このような虞はない。
【0062】
スタッドバンプを実装基板側に形成する場合には、実装基板側に形成されたスタッドバンプと発光素子の電極との位置合わせが必要となる。つまり、スタッドバンプを発光素子の所望の位置に配置するために、スタッドバンプを実装基板に形成する際の位置精度のばらつき、スタッドバンプ上に発光素子をフリップチップ実装する際の位置精度のばらつきの双方を考慮する必要があり、スタッドバンプの大きさに生じる制約が大きくなる。しかしながら、本実施形態によれば、スタッドバンプ30を発光素子20側に形成するため、そのような制約が緩和され、スタッドバンプ30を発光素子20上に形成する際の位置精度だけでスタッドバンプ30の大きさを設定できる。そして、上記した発光素子20の露出部Xとオーバーラップしない位置に、より大きい平面積を有するスタッドバンプ30を配置することができる。よって、発光素子20と実装基板70との接合面積を大きくすることが可能となり、発光装置1の放熱性が向上する。また、発光素子20の電極パターンに応じた所望の位置に高精度でスタッドバンプを形成することができるため、発光素子20における光反射性電極26の面積及び/又は露出部Xの数等を増加することが可能となり、発光素子20の光取り出し効率の向上や電流拡散性の向上にも寄与することができる。
【0063】
(導光部材形成工程)
スタッドバンプ30を形成する工程の後、複数の透光性部材10を得る工程の前に、複数の発光素子20の側面を導光部材50で被覆する導光部材形成工程を有することができる。導光部材形成工程では、
図5Eに示すように、複数の発光素子20の側面を被覆する導光部材50を形成する。導光部材50は、取り扱い及び加工が容易なことから樹脂材料を用いることが好ましい。導光部材50が樹脂材料を用いてなる場合は、スタッドバンプ形成前に透光性部材を配置すると、スタッドバンプ形成時の熱で透光性部材が劣化してしまう虞がある。しかしながら、本工程のように、スタッドバンプ30を形成する工程の後、複数の透光性部材10を得る工程の前に、複数の発光素子20の側面を導光部材50で被覆するものとすれば、そのような虞を抑制することができる。
【0064】
(分割工程)
次に、
図5Fに示すように、スタッドバンプ30が形成された発光素子20および導光部材50を備える透光性部材10を、任意に、例えば発光素子20ごとに、
図5F中に示す点線で分割し、1つの発光素子20が接合された透光性部材10を得ることができる。分割は、ダイシングソー等、当該分野で公知の手段によって実行することができる。
【0065】
(フリップチップ実装工程)
次に、
図5G、
図5Hに示すように、各発光素子20を実装基板70にフリップチップ実装する。
図5Gはフリップチップ実装する前の状態を示し、
図5Hはフリップチップ実装した後の状態を示す。前記のとおり、スタッドバンプ30は、発光素子20との接合面とは反対側に向けて凸状の先端を有するが、この凸状の先端を実装基板70側に向けてフリップチップ実装される。この凸状の先端は接合時の応力が集中しやすい部位であるため、先端を実装基板70側に向けて実装することで、発光素子20にかかる応力を緩和することができる。特に、発光素子20は、透光性部材10と直接接合により一体的に接合されているため、フリップチップ実装時の衝撃を、発光素子20と一体化された透光性部材10へ逃がすことができ、発光素子20に係る応力を緩和することができる。
【0066】
図5Hに示すように、フリップチップ実装後、スタッドバンプ30は押し潰された形状となる。この点、前記のとおり、
図2B中の二点鎖線Lは、押し潰された後のスタッドバンプ30の形状を示しているが、
図2Bに示すように、スタッドバンプ30は、押し潰された後においても、平面視において、露出部Xと離間する。
【0067】
フリップチップ実装は例えば超音波接合法である。
【0068】
(被覆部材形成工程)
フリップチップ実装する工程の後、スタッドバンプ30の側面を被覆する被覆部材60を形成する工程を有することができる。被覆部材形成工程では、
図5Iに示すように、スタッドバンプ30の側面を被覆する被覆部材60を形成する。被覆部材60は、発光素子20の下面(つまり発光素子20と実装基板70との間)において、スタッドバンプ30の側面を被覆するように形成される。さらに被覆部材60は透光性部材10の側面、発光素子20および導光部材50の側面を被覆するように形成される。この際、透光性部材10の上面(つまり反射防止膜40が形成された面)を被覆部材60から露出させることで、透光性部材10の上面を発光面とする発光装置1が形成される。
【0069】
被覆部材60を構成する材料は、発光素子20と実装基板70との間に入り込みやすく、ボイドの発生を防止しやすいという観点から、流動性が高く、熱又は光の照射により硬化する樹脂材料を含むことが好ましい。このような材料は、例えば、0.5〜30Pa・sの粘度での流動性を示すものが挙げられる。また、被覆部材60を構成する材料における光反射性物質等の含有量等によって光の反射量や透過量等を変動させることができる。被覆部材60は、例えば、光反射性物質を20wt%以上含有することが好ましい。被覆部材60は、例えば、射出成形、ポッティング成形、樹脂印刷法、トランスファーモールド法、圧縮成形など当該分野における公知の方法で成形することができる。
【0070】
以上説明した実施形態1に係る発光装置1の製造方法によれば、スタッドバンプ30が有する凸状の先端が、発光素子20側ではなく、実装基板70や配線80などにより押し潰される。したがって、発光素子を実装基板にフリップチップ実装するにあたり、発光素子20に加わる衝撃を緩和させることができる。
【0071】
実施形態2に係る発光装置2の製造方法については、前記の分割工程において、2つ以上の発光素子20が接合された複数の透光性部材10を得られるよう透光性部材10を分割する点除き、実施形態1に係る発光装置1の製造方法と同様の工程を有するので、説明は省略する。
【0072】
以上、実施形態について説明したが、これらの説明によって特許請求の範囲に記載された構成は何ら限定されるものではない。