(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置として、加熱処理装置に適用した例について説明する。
先ず本発明の加熱処理装置を組み込んだ基板処理システムである塗布、現像装置の全体について簡単に述べておく。塗布、現像装置は
図1及び
図2に示すようにキャリアブロックB1と、処理ブロックB2と、インターフェイスブロックB3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックB3には、更に露光ステーションB4が接続されている。
【0017】
キャリアブロックB1は、製品用の基板である例えば直径300mmのウエハWを複数枚収納する搬送容器であるキャリアC(例えばFOUP)から装置内に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置ステージ101と、ドア102と、キャリアCからウエハWを搬送するための搬送アーム103と、を備えている。
処理ブロックB2はウエハWに液処理を行うための第1〜第6の単位ブロックD1〜D6が下から順に積層されて構成され、各単位ブロックD1〜D6は、概ね同じ構成である。
図1において各単位ブロックD1〜D6に付したアルファベット文字は、処理種別を表示しており、BCTは反射防止膜形成処理、COTはウエハWにレジストを供給してレジスト膜を形成するレジスト膜形成処理、DEVは現像処理を表している。
【0018】
図2に代表して単位ブロックD3の構成を示すと、単位ブロックD3には、キャリアブロックB1側からインターフェイスブロックB3へ向かう直線状の搬送領域R3を移動するメインアームA3と、カップモジュール111を備えた塗布ユニット110と、が設けられている。また棚ユニットU1〜U6には本発明の加熱処理装置に相当する加熱モジュール及び冷却モジュール1が積層されている。
搬送領域R3のキャリアブロックB1側には、互いに積層された複数のモジュールにより構成されている棚ユニットU7が設けられている。搬送アーム103とメインアームA3との間のウエハWの受け渡しは、棚ユニットU7の受け渡しモジュールと搬送アーム104とを介して行なわれる。
【0019】
インターフェイスブロックB3は、処理ブロックB2と露光ステーションB4との間でウエハWの受け渡しを行うためのものであり複数の処理モジュールが互いに積層された棚ユニットU8、U9、U10を備えている。なお図中105、106は夫々棚ユニットU8、U9間、棚ユニットU9、U10間でウエハWの受け渡しをするための搬送アームであり、図中107は、棚ユニットU10と露光ステーションB4との間でウエハWの受け渡しをするための搬送アームである。
塗布、現像装置及び露光ステーションB4からなるシステムのウエハWの搬送経路の概略について簡単に説明する。ウエハWは、キャリアC→搬送アーム103→棚ユニットU7の受け渡しモジュール→搬送アーム104→棚ユニットU7の受け渡しモジュール→単位ブロックD1(D2)→単位ブロックD3(D4)→インターフェイスブロックB3→露光ステーションB4→インターフェイスブロックB3→単位ブロックD5(D6)→棚ユニットU7の受け渡しモジュールTRS→搬送アーム103→キャリアCの順で流れていく。
【0020】
塗布、現像装置は、
図2に示すように制御部100を備えている。制御部100は、プログラム格納部を有しており、プログラム格納部には、ウエハの搬送レシピ、各加熱モジュール及び冷却モジュールのクリーニング作業におけるシーケンスが実施されるように命令が組まれたプログラムが格納される。
【0021】
図3は加熱モジュールである加熱処理装置の全体構成を示している。
図3中の2は処理容器であり、この処理容器2は上面が開口している扁平な円筒体からなる下部材25と、この下部材25に対して上下に移動して処理容器2を開閉する蓋部22とからなり、基板である直径300mmのウエハWの加熱処理を行う加熱室を構成している。
下部材25は加熱処理装置の外装体をなす図示しない筐体の底面部に相当する基台27の上に支持部材26を介して支持されている。下部材25には、基板加熱部である光源部をなすLEDアレイ41が設けられ、LEDアレイ41の上方側には、当該LEDアレイ41が置かれる雰囲気と処理雰囲気とを仕切るための例えば石英からなる光透過窓42が設けられている。LEDアレイ41は、その全周に亘って例えば銅(Cu)板に金メッキをした反射板43により囲まれており、照射方向(
図3では上方向)とは違う方向に向かう光を反射して輻射光を有効に取り出すことができるようになっている。また光透過窓42の表面には、後述するクリーニング用基板を当該光透過窓42に接近した状態で保持するための突起部44が設けられている。
【0022】
下部材25の底部28及び光透過窓42には、これらを厚さ方向に貫通する貫通孔29が上方から見て周方向等間隔に3か所設けられ、各貫通孔29に対応して、ウエハWを支持する昇降ピン23が設けられている。昇降ピン23は、基台27上に設けられた昇降機構24により昇降し、光透過窓42の表面から突没するように設けられ、ウエハWを昇降させることにより、例えば
図2中の搬送アームA3との間でウエハWの受け渡しをする。
【0023】
蓋部22は下面が開口している扁平な円筒体からなり、下部材25の周壁部の上面に接触して(詳しくは後述のピン51に当接して)処理容器2を閉じた状態とする下降位置と、ウエハWを昇降ピン23に対して受け渡すときの上昇位置との間で昇降できるように構成されている。この例では蓋部22の昇降動作は蓋部22の外周面に取り付けられた昇降アーム18を、基台27に設けられた昇降機構19により駆動することにより行われる。
【0024】
また下部材25の周壁部の上面には周方向に沿って間隔を置いて例えば高さ1mmのピン51が形成されている。従って蓋部22を閉じたときには蓋部22と下部材25との間に1mmの隙間が形成され、処理容器2内を排気したときに隙間から外気(加熱処理装置が置かれているクリーンルームの雰囲気)が流入し、処理容器2内に気流が形成される。
蓋部22の天井板の中央部には、排気口32が形成され、排気口32には、排気ダクトからなる排気路30の一端側の底部が接続されている。排気路30は、蓋部22の上面に沿って径方向に直線状に伸び出し、工場内の排気ダクトに接続されている。
【0025】
また処理容器2の内壁面の全体には、例えばCr
2O
3で構成された熱触媒物質(熱触媒体)を被覆してなる熱触媒層5が形成されている。熱触媒層5は、例えば基材上に熱触媒体の被膜を塗布、溶射など既知の被覆手法により形成すればよい。蓋部22の壁内には、処理容器2内の熱触媒層5を加熱するための熱触媒用の加熱部であるヒータ10が埋設されている。ヒータ10の発熱量は、熱触媒層5が熱活性化されて熱触媒機能、つまりウエハWから発生して当該熱触媒層5の近傍に到達した昇華物を熱分解する機能が発揮される温度、例えばCr
2O
3の場合、200℃〜400℃となるように設定される。蓋部22の上面に位置する排気路30は図示しないヒータにより、ウエハWから発生した昇華物が付着しない温度に加熱されている。
【0026】
図3には加熱処理装置を制御する制御部を記載しており、この制御部は
図1に示した制御部の一部ということができるので、同じ符号100を付している。
図3に示す制御部100は、メンテナンスモードを選択する選択部99が接続され、メンテナンスモードが選択されたときには、加熱処理装置のメンテナンスを行うためのプログラムが起動される。この選択部99は例えばオペレータが操作する操作パネルに設けられている。制御部100は、昇降機構24による昇降ピン23の昇降動作、LEDモジュール4による照射の強度調整やオンオフ動作を、例えば事前に制御部100に入力された運転プログラムに基づいて制御する。
【0027】
続いて本発明の実施形態をなす基板処理装置である加熱処理装置の作用について説明する。先ず外部の搬送アーム、例えば
図2に示すメインアームA3により処理容器2内にウエハWが搬入される。この時点では、LEDモジュール4はオフとなっている。メインアームA3に保持されたウエハWが光透過窓42の上方に到達すると、昇降機構24により昇降ピン23を上昇させてメインアームA3上のウエハWを突き上げ、メインアームA3からウエハWを受け取り、ウエハWを受け渡したメインアームA3は処理容器2の外に退出する。
【0028】
そして蓋部22を下降させて
図3に示すように蓋部22を閉じた状態として処理雰囲気を形成すると共に昇降ピン23を降下させて、ウエハWを所定の高さ例えば、光透過窓42の表面と、ウエハWの下面と、の隙間の高さが3mmとなる高さに位置させる。次いでLEDモジュール4からウエハWの吸収波長域の輻射光である赤外光がそのウエハWに向けて照射されて、ウエハWが所定の加熱処理温度、200℃〜400℃、例えば300℃に加熱される。従って本実施の形態においては、昇降ピン23が載置部に相当する。また例えば蓋部22を下降させてから排気路30を介して処理容器2内の排気を開始する。既述のように蓋部22を閉じた状態においては、ピン51の存在により蓋部22と下部材25との間に隙間が形成される。このため、処理容器2内が負圧になると当該隙間から周囲の雰囲気(空気)が流入し、
図4に示すように処理容器2内においては、外周から中央上部へ向かう気流が形成される。
【0029】
この時ウエハWの塗布膜からは、例えば塗布液中に含まれていた有機成分が昇華して昇華物となり、生成物である昇華物は処理容器2内に形成された気流に乗って、処理容器2の中央上部の排気口32に向かって流れ、排気口32から排気路30に流れ込もうとする。一方処理容器2の天井面を含む内壁面に形成された熱触媒層5はヒータ10により熱活性化されているため、処理容器2の内壁面に近づいた昇華物は、熱触媒層5の熱触媒作用により分解される。
【0030】
ここで熱触媒層5によるウエハWの処理の際に生じる生成物、ここでは、塗布膜から昇華した昇華物の分解について説明する。熱触媒層5、例えばCr
2O
3を加熱すると電子が励起され、強い酸化力を有する。この熱触媒層5に有機成分である昇華物が近づくと、有機成分は酸化され、昇華物内にラジカルが生成する。その後生成したラジカルは、200〜400℃にて、昇華物内を伝播する。そして昇華物はラジカルにより開裂を起こし、小分子化し、小分子となった昇華物は、処理容器2内の雰囲気中に含まれる酸素と結合し、二酸化炭素と水とになる。
そのため排気口32から排気される処理容器2内の雰囲気は、熱触媒層5の触媒作用により昇華物が分解された後、排気される。
【0031】
加熱処理が終わると、昇降ピン23が上昇してウエハWを突き上げ、昇降ピン23はそのまま搬送アームA3との受け渡しの高さ位置まで上昇する。そして搬送アームA3を処理容器2内のウエハWの受け渡し位置まで進入させた後、昇降ピン23を下降させてウエハWを搬送アームA3に受け渡す。ウエハWを受け取った搬送アームA3は、ウエハWを保持したまま後退しウエハWを処理容器2の外に搬出する。
【0032】
このようにウエハWから昇華した昇華物は、処理容器2内に被覆された熱触媒層5により分解された後、排気されるが、一部の昇華物は、ウエハWと光透過窓42との隙間に侵入し、光透過窓42の表面に付着する。そのため
図5に示すように光透過窓42の表面に昇華物9が析出し、LEDモジュール3から照射される光の透過率が悪くなる。このためウエハWの温度ムラが発生し、良好な加熱ができなくなり、また昇華物9がパーティクルの発生源になるおそれがある。
【0033】
従って例えば加熱処理装置にて予め設定した枚数のウエハWの処理を終えた後、光透過窓42の表面に析出した昇華物9の除去のためのクリーニング作業を行う。このクリーニング作業においては、例えば直径300mmのウエハWの裏面を熱触媒層5により被覆したクリーニング用基板を用いる。クリーニング用基板を用いた昇華物の除去について説明すると、先ずモード選択部99によりオペレータがメンテナンスモードを選択する。この選択により、例えば
図1、
図2に示す塗布、現像装置のキャリアブロックB1に置かれたキャリアCから搬送アーム103によりクリーニング用基板が取り出される。クリーニング用基板は搬送アーム104、棚ユニットU7を介してメインアームA3に受け渡され、更にこのメインアームA3により処理容器2内に搬入されて昇降ピン23に受け渡される。
【0034】
その後、
図6に示すように昇降ピン23を下降させ、クリーニング用基板6を突起部44の群に受け渡す(載置する)。しかる後、排気路30から排気を開始すると共に、LEDモジュール3をオンにして、クリーニング用基板6を例えば300℃に加熱する。従ってLEDモジュール4は、熱触媒用の加熱部と、基板加熱部と、を兼用していると言える。するとクリーニング用基板6の下面側の熱触媒層5が活性化され、光透過窓42とクリーニング用基板6との距離が3mm程度と近いため、光透過窓42に付着した昇華物9が熱触媒作用により分解除去される。昇華物9の分解成分は処理容器2内の雰囲気と共に排気路30から排気される。
なおクリーニング用基板6は塗布、現像装置内の保管部に載置しておいてもよい。保管部は例えば棚ユニットU7の一部を利用するようにしてもよい。
【0035】
第1の実施の形態においては、処理容器2内にてウエハWの加熱処理を行うにあたって、処理容器2の内面に熱触媒層5を形成し、この熱触媒層5を加熱している。このためウエハW上の塗布膜から昇華し、処理容器2内に取り込まれた昇華物が熱触媒層5の近傍に到達した時に、熱触媒層5の熱活性化により分解除去される。この結果、排気路30の下流側に流れ込む昇華物の量が少なくなるので、排気路30への昇華物の付着量が少なくなり、メンテナンス頻度を少なくできると共に、処理容器2の内面への昇華物の析出が抑えられるので、パーティクル汚染を低減でき、処理容器2内の清掃の頻度も抑えられる。
【0036】
また表面に熱触媒層5を形成したクリーニング用基板6を処理容器2内に搬入し、クリーニング用基板6を加熱することにより、光透過窓42の表面に付着した昇華物9を除去している。そのため、処理容器2を分解して内部のクリーニングを行うメンテナンス頻度を低減できる。
【0037】
[第2の実施の形態]
図7及び
図8は、第2の実施の形態に係る基板処理装置を示している。この基板処理装置は
図3に示した加熱処理装置において、排気路30における処理容器2の上方側に位置する部位を、当該部位よりも下流側の部位の圧力損失よりも大きな圧力損失となるように例えば迷路構造として構成されている。迷路構造として構成された部位には、熱触媒層5が形成されている。この例では下流側の部位とは、処理容器2の上方側に位置する部位よりも下流側の排気路を構成する排気管34に相当する。迷路構造として構成された部位は、圧損領域(圧損部)に相当し、説明の便宜上、排気路300として説明する。
【0038】
排気路300は、一端側が排気口32に接続され、処理容器2の図中、右側周縁に向けて伸びる下側排気路31と、下側排気路31の上方に設けられると共に当該下側排気路31の他端側に連通口31aを介してその底面が連通する上側排気路33と、を備えている。上側排気路33は、処理容器の左側周縁に向かって左右に複数回屈曲し、いわゆる工場排気(工場内に引き回されている排気ダクト)に接続された排気管34に接続されている。そしてこの下側排気路31及び上側排気路33の各々の内面には熱触媒層5が形成されている。更に上側排気路33と処理容器2との間には伝熱プレート36が設けられ、処理容器2に設けられたヒータ10の熱を伝熱して、熱触媒層5を例えば300℃に加熱するように構成されている。なお、排気路300を専用に加熱するヒータを設けてもよい。
【0039】
第2の実施の形態においては、処理容器2内の雰囲気が排気口32を介して排気路300に流入すると、当該排気路300に流れる間に熱触媒層5により昇華物が分解されて排気される。また排気路300は、流路が屈曲していて、通常のレイアウトで排気路が形成される排気管、即ち下流側の排気管34よりも圧力損失が大きいので、処理容器2内の雰囲気である排気流が排気路300の内壁に衝突する度合いが大きい。このため排気流に含まれる昇華物が熱触媒層5に接触するあるいは熱触媒層5の近傍に位置する時間が長くなり、昇華物をより確実に除去することができ、この結果排気管34における昇華物の付着量を低減することができ、メンテナンス頻度を低くすることができる。
【0040】
圧損部である排気路の形状、構造の他の例を
図9に示す。
図9に示す圧損部である排気路301は、処理容器2の排気口32に一端側の底面が接続され、他端側に直線状に伸びている。そして排気路301の長さ方向に見て、右側の壁部から左側の壁部に向けて伸びると共に天井面から底面に向けて伸びる捕捉板部302と、左側の壁部から右側の壁部に向けて伸びると共に底面から天井面に向けて伸びる捕捉板部302と、が排気路301の長さ方向に交互に並べ合わせて複数枚設けられている。排気路301の内面及び捕捉部302の表面には熱触媒層5が形成されている。
【0041】
更に圧損部である排気路については、
図10に示すように排気口32に一端側の底面を接続し、外側に向けて螺旋状に引き回し、外縁部にて排気管34に接続されるように構成した排気路303であってもよい。この場合、例えば
図10に示すように排気流の流れる方向において左右の側壁から捕捉板部304を交互に突出させた構成であってもよい。
このように処理容器2の直ぐ下流側に圧力損失が大きい排気路を設けてこの排気路に熱触媒層5を形成することが好ましいが、
図1に示すように通常の排気路30のレイアウトに沿った排気路30に熱触媒層5を設けてもよく、この場合であっても、下流側の排気路における昇華物の付着が抑えられる効果がある。また処理容器2の内壁には熱触媒層5を設けずに、排気路に熱触媒層5を設ける構成であっても、下流側の排気路における昇華物の付着が抑えられる効果がある。
以上述べた実施の形態では、ウエハWを加熱する基板加熱部としてLEDアレイ41を用いているが、ウエハWが載置される載置板をなす、ヒータにより加熱される加熱板であってもよい。
【0042】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置として、ウエハWの表面にUV(紫外線)を照射してUV処理する装置、例えばウエハWに成膜された塗布膜の表面を平坦化するUV処理装置に適用した例を説明する。
塗布膜としては例えば、ウエハWのパターン上に形成されたSOC膜が挙げられる。SOC膜の原料としては、酸素含有雰囲気下で紫外線を照射することにより発生する活性酸素やオゾンと反応して分解される炭素化合物を含む有機膜原料、例えばポリエチレン構造((−CH
2−)
n)の骨格を持つポリマー原料を溶媒に溶解させた液体が用いられる。
UV処理装置は、
図11に示すように扁平で前後方向に細長い直方体形状の筐体70を備え、筐体70の前方側の側壁面にはウエハWを搬入出するための搬入出口71と、この搬入出口71を開閉するシャッタ72とが設けられている。
【0043】
筐体70の内部は、搬入出口71から見て手前側における、仕切り板73の上方側の空間には、ウエハWを搬送する搬送アーム74が設けられている。搬送アーム74には、図示しない外部の搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行う手前側の位置と、後述の載置台81との間でウエハWの受け渡しを行う奥手側の位置との間を前後方向に移動するための不図示の移動機構が設けられている。搬送アーム74は、処理後のウエハWを冷却するクーリングアームとしての役割も果たす。
【0044】
外部の搬送アームとの間でウエハWを受け渡す手前側の位置には、外部の搬送アームと搬送アーム74との間のウエハWの受け渡し時に、当該ウエハWを一時的に支持する昇降ピン75が設けられている。昇降ピン75は、仕切り板73の下方側の空間に配置された昇降機構76に接続され、搬送アーム74におけるウエハWの載置面よりも下方側の位置と、当該載置面よりも上方側であって、外部の搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行う位置との間を昇降することができる。
搬送アーム74が外部の搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行う位置の後方側にはウエハWの載置台81が配置されている。載置台81の内部には、ヒータ82が埋め込まれており、ウエハWを加熱する加熱部としての機能も有する。
【0045】
載置台81の下方側には、搬送アーム74との間でのウエハWの受け渡し時に、当該ウエハWを一時的に支持する昇降ピン83が設けられている。
図5に示すように載置台81には、昇降ピン83を貫通させるための貫通孔84が設けられている。
昇降ピン83は、昇降機構85に接続され、載置台81の上方側まで移動した搬送アーム74におけるウエハWの載置面の下方側位置と、当該載置面の上方側位置との間を昇降することにより、搬送アーム74との間でウエハWの受け渡しを行い、載置台81に載置する。また昇降ピン83は、第1の実施の形態にて説明したクリーニング用基板6を支持したときに、クリーニング用基板6の上面と、天井面(詳しくは後述するUV透過部93の下面)との間の高さ寸法が、数mm〜十数mmの範囲内の例えば3mmとなる高さまで上昇できるように構成されている。
【0046】
載置台81の上方側には、載置台81に載置されたウエハWにUV光を照射するための光源部となるUVランプ92を収容したランプ室91が設けられている。ランプ室91の下面は、UVランプ92から照射されたUV光をウエハWへ向けて透過させる光透過窓であるUV透過部93が設けられている。UV透過部93は、例えばUV光を透過する石英板などによって構成される。
またランプ室91の下方の側壁には、筐体70内に清浄空気を供給するためのガス供給部94と、筐体70内の雰囲気を排気するための排気口95と、が互いに対向するように設けられている。排気口95には、排気管96を介して排気機構97が接続されている。またUV処理装置にも加熱処理装置と同様に制御部100が接続されている。
【0047】
このUV処理装置においては、表面にSOC膜が塗布されたウエハWが外部の基板搬送機構と昇降ピン75との協働作用により搬送アーム74に受け渡される。次いで搬送アーム74を載置台81の上方側まで移動して停止したら、昇降ピン83を上昇させ、搬送アーム74から昇降ピン83にウエハWを受け渡す。その後昇降ピン83を降下させて載置台81にウエハWを載置する。そしてガス供給部94からガスを供給すると共に排気口95から排気を開始する。
【0048】
その後ウエハWを例えば250℃に加熱し、UVランプ72を点灯してUV光を照射する。照射されたUV光によって、ウエハWの上方の清浄空気(含酸素雰囲気)中の酸素から活性酸素やオゾンが発生する。これら活性酸素とオゾンによって、SOC膜の表面(SOC膜の一部)が分解されて除去され、いわゆるエッチバックが実行される。
【0049】
このようなウエハWにUVを照射してSOC膜の平坦化を行うにあたって、
図12に示すようにウエハWを加熱処理した際に、ウエハWから昇華した昇華物がUV透過部93の下面に付着することがあり、UV透過部93に昇華物9が付着してしまうと透過率が落ち、良好なUV処理が行えなくなる。そこで例えば予め設定した枚数のウエハWの処理を行った後、表面及び裏面の内、少なくとも表面の全面に亘って熱触媒層5を形成したクリーニング用基板6を用いて昇華物9の除去を行う。
【0050】
例えばウエハWと同様の工程により、
図13に示すようにクリーニング用基板6を載置台81に載置する。その後、載置台81によりクリーニング用基板6(熱触媒層5)を200〜400℃例えば300℃に加熱する。次いで
図14に示すように昇降ピン83を上昇させて、クリーニング用基板6をUV透過部93との間の高さ寸法が、数mm〜十数mmの範囲内、例えば3mmとなる高さまで上昇させる。この時載置台81による加熱を続け、クリーニング用基板6の温度を300℃に維持する。またガス供給部94により清浄空気を供給すると共に、排気口95から排気を開始する。この結果熱触媒層5の作用により、UV透過部93の下面に付着した昇華物9が分解され、分解された昇華物9は雰囲気と共に排気口95から排気される。
【0051】
第3の実施形態によれば、クリーニング用基板6を加熱することにより、UV透過部93の表面に付着した昇華物9を除去している。従ってUVの透過が悪くなることによるUV処理への悪影響を抑えることができ、また処理容器2を分解して内部のクリーニングを行うメンテナンス頻度を低減できる効果がある。
第3の実施形態においても、排気管96に熱触媒層を形成して下流側の排気路への昇華物の析出を抑えるようにしてもよいし、この場合、排気管96を第2の実施形態のように圧力損失が大きい構造としてもよい。
また載置台81を昇降自在に構成し、載置台81を上昇させて、除去用基板をUV透過部93の下面に近づけるようにしてもよい、この例においてはクリーニング用基板6の少なくとも表面側が熱触媒層5により被覆されていればよいが、表面及び裏面の両面に被覆されていてもよい。
本発明の基板処理装置は、基板を加熱する装置に限らず、例えば処理ガスにより基板をエッチングする装置であってもよい。
【0052】
熱触媒層に用いられる材料の例としては、以下の化学式にて示される物質であってもよい。BeO(酸化ベリリウム)、MgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、SrO(酸化ストロンチウム)、BaO(酸化バリウム)、CeO
2(酸化セリウム)、TiO
2(酸化チタン)、ZrO
2(二酸化ジルコニウム)、V
2O
5(五酸化二バナジウム)、Y
2O
3(酸化イットリウム)、Y
2O
2S(Yttrium oxide sulfide)、Nb
2O
5(五酸化二ニオブ)、Ta
2O
5(五酸化二タンタル)、MoO
3(モリブデントリオキシド)、WO
3(タングステントリオキシド)、MnO
2(二酸化マンガン)、Fe
2O
3(三酸化二鉄)、Fe
3O
4(四酸化三鉄)、MgFe
2O
4、NiFe
2O
4、ZnFe
2O
4、ZnCo2O
4、ZnO(酸化亜鉛)、CdO(酸化カドミウム)、MgAl
2O
4、ZnAl
2O
4、Tl
2O
3(酸化タリウム)、In
2O
3(酸化インジウム)、SnO
2(二酸化錫)、PbO
2(二酸化鉛)、UO
2(二酸化ウラン)、Cr
2O
3(三酸化ニクロム)、MgCr
2O
4、FeCrO
4、CoCrO
4、ZnCr
2O
4、WO
2(酸化タングステン)、MnO(酸化マンガン)、Mn
3O
4(四酸化三マンガン)、Mn
2O
3(三酸化二マンガン)、FeO(酸化鉄)、NiO(酸化ニッケル)、CoO(酸化コバルト)、Co
3O
4(四酸化三コバルト)、PdO(酸化パラジウム)、CuO(酸化銅)、Cu
2O(酸化二銅)、Ag
2O(酸化銀)、CoAl
2O
4、NiAl
2O
4、Ti
2O(酸化チタン)、GeO(酸化ゲルマニウム)、PbO(酸化鉛)、TiO(酸化チタン)、Ti
2O
3(三酸化二チタン)、VO(酸化バナジウム)、MoO
2(二酸化モリブデン)、IrO
2(二酸化イリジウム)、RuO
2(酸化ルテニウム)。更にこれらの熱触媒体は、200℃以上、より好ましくは300℃以上の温度に加熱することが好ましい。
また熱触媒体を処理容器の内面、あるいは排気管の内面に設けるにあたっては、例えば熱触媒体を板状に成形した成形体を設置するようにしてもよい。またメンテナンス用基板は熱触媒体からなる板状体であってもよい。
【0053】
またこれらの材料を熱触媒層5に用いることでポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール残渣、ベンゼン、トルエン、揮発性有機炭素などを分解することができる。
【0054】
また処理容器あるいは排気管の内面に熱触媒層を被覆するにあたって、熱触媒層を加熱する加熱部と共に熱触媒層を冷却する冷却機構を設けてもよい。例えば処理容器の壁内あるいは排気管の周囲に冷却配管を埋設し、冷却配管の内部に例えばチラーにより冷却された冷却水を通流させた構成が挙げられる。このような構成においては、例えば冷却機構により熱触媒層を冷却し、処理容器内の雰囲気あるいは排気管を通流する排気に含まれる有機成分を熱触媒層の表面に析出させる。その後加熱機構により熱触媒層を加熱し、昇華物を分解して除去する。このような手法によれば、熱触媒層を冷却して雰囲気や排気中に含まれる有機成分を積極的に捕集することができるため、捕集効率が上がり、熱触媒層を加熱し、有機成分の除去を行った時により多くの昇華物を除去することができる。従って排気管の下流側に流れる有機成分の量をより抑制することができる。
【0055】
[第4の実施の形態]
以下に述べる第4〜6の実施形態は、本発明に係る基板処理装置を加熱処理装置に適用した例を示す。
本発明は、多孔質の熱触媒体(熱触媒物質)を排気路に配置して当該熱触媒体の中に排気流を通過させるようにしてもよく、本発明の第4の実施形態は、このような手法を採用した加熱処理装置の構成例である。
図15及び
図16に示す例は、既述の
図7に示した加熱処理装置における排気路300を含む構造部位に代えて、多孔質の熱触媒をブロック状に形成した成形体であるブロック体322を含む構造体310を備えている。
構造体310は、蓋部22に形成された排気口32に一端が接続された排気路312を含む本体部分311と、当該排気路312の他端側に形成された排気ポート313から当該排気路312内に挿入されるカートリッジ320と、を備えている。
【0056】
カートリッジ320は、ケース体321と、多孔質の熱触媒体であるブロック体322と、を備えている。ケース体321はブロック体322を保持する保持体であり、排気路312の上流側から下流側に向けて伸びる上面が開口した概略箱型に形成されている。ケース体321は、カートリッジ320を排気路312に挿入したときに排気路312の壁面とカートリッジ320との間がカートリッジ320の着脱を妨げない程度のごく狭い隙間が形成されるように作られている。またケース体321の長さ方向一端側の底面には、排気口32に対応する位置に孔部323が形成されている。さらにケース体320の長さ方向の他端側は、側面が開放されると共に、カートリッジ320を排気路312から引き出すための水平突片324がケース体321の底面から延出して形成されている。
【0057】
ブロック体322は、例えばセラミックで構成された多孔質体の触媒担持体であるフィルターに熱触媒物質を付着させて構成され、ケース体321に収まる角柱状に形成されている。そして
図16に示すようにブロック体322をケース体321に挿入して構成されたカートリッジ320は排気ポート313から排気路312に挿入される。排気ポート313は、工場用力に接続された図示しないをダクトに接続される。
この例の加熱処理装置においては、例えば蓋体22に設けられたヒータ10が本体部分311を介して、排気路312内のブロック体322を加熱し、熱触媒体が活性化される。なお本体部分311にヒータを設け、当該ヒータによりブロック体322を加熱してもよい。そして処理容器2内の雰囲気を排気すると、排気流は排気路312を流れるときにブロック体322を構成する多孔質体の空隙を通過し、ダクトを介して排気される。
【0058】
このように多孔質体のブロック体322を排気路312を塞ぐように配置し、排気流をブロック体322内の空隙を通過させることで、排気流に含まれる昇華物が接触する熱触媒体の面積が大きくなり、排気中の昇華物の分解効率が良くなる。
そして例えば所定の枚数のウエハWの処理毎あるいは、加熱処理装置の所定の稼働時間毎にダクトから排気ポート313を切り離し、排気路312からカートリッジ320を取り出し、ブロック体322を新しいブロック体322と交換する。
【0059】
加熱処理装置において、加熱処理を行っていると、排気に含まれる難分解性の物質がブロック体322の空隙に詰まり、排気流量が低下するおそれがあるが、第4の実施の形態に係る加熱処理装置によれば、排気路312からブロック体322を速やかに取出し、簡単に交換できる。このためメンテナンスを簡単に行うことができ、メンテナンスに伴う装置の運転中断時間(ダウンタイム)の短縮化が図れる。
【0060】
またブロック体322に代えて例えば粒状のセラミックボールの表面に熱触媒体を付着させ、ケース体321の隙間を埋めるように充填するようにしてもよい。熱触媒体が設けられる基質を粒子状にした場合にも、表面積が大きくなるので同様の効果がある。
さらに排気路312の内部にブロック体322を設けるにあたって、ブロック体322を排気路312の上流側(排気口32側)に配置される部位から下流側(ダクト側)に配置される部位に向かって、ブロック体322の構成材料であるセラミックの密度が高くなるように(上流側ほど空隙率が高くなるように)形成してもよい。このように構成することでブロック体322を排気が通過するときの圧力損失が小さくなるため、排気路312を排気流がスムーズに流れ、所要の排気流量を容易に確保できる。
さらに熱触媒用の加熱部は、ブロック体322の内部に埋設されてもよい。例えば
図17に示すようにブロック体322の内部に長さ方向に複数回屈曲するヒータ325を設ける構成を挙げることができる。
【0061】
[第5の実施の形態]
また複数の加熱処理装置の個々の排気路を共通の排気路である集合ダクトに接続して排気するように構成した基板処理装置に対して、本発明を適用した実施の形態について
図18を用いて説明する。
図18においては、加熱処理装置1に接続された300は、加熱処理装置1の個別の排気路を、330は共通の集合ダクトを示し、集合ダクト330の下流側は工場用力に接続されている。そしてこの実施の形態では、集合ダクト330に
図18に示すような熱触媒物質を備えた熱触媒ユニット340を着脱自在に設けている。
【0062】
熱触媒ユニット340は、例えば
図18の縦断面図に示すように断面形状が集合ダクト330の断面形状に対応する管路332を備え、管路332の両端に形成されたフランジ331と、集合ダクト330側のフランジと、を介して、集合ダクト330に着脱自在に接続されている。管路332の内部には、多孔質の熱触媒体のブロック体341が固定され、管路332の外面は、ブロック体341を加熱するためのヒータ342が全周に亘って設けられている。またヒータ342の周囲は、断熱材343で覆われ、さらに断熱材343の外側がカバー344で覆われている。またカバー344とヒータ342との間に断熱材343を設けることに代えて、カバー344とヒータ343の間に冷却水を通流させてもよく、断熱用の空気を供給してもよい。この例では、各加熱処理装置1の個別の排気路300には、例えば第2の実施の形態、あるいは第4の実施の形態で述べたように熱触媒体が設けられており、個別の排気管300に加えて、さらに集合ダクト330に熱触媒体を設けることにより、個別の排気路300にて除去できなかった昇華物が下流側にて付着堆積することが避けられる。
【0063】
また第5の実施の形態においては、個別の排気路300に熱触媒体を設けずに処理容器2の内面に熱触媒体が設けられている場合、あるいは個別の排気路300にも処理容器2の内面にも熱触媒体が設けられていない場合に集合ダクト330のみに熱触媒体を設けてもよい。また第3の実施の形態に係る加熱処理装置において、さらに集合ダクト330に熱触媒ユニット340を設けた構成としてもよい。
【0064】
[第6の実施の形態]
図19、
図20は、本発明の第6の実施形態に係る加熱処理装置を示している。この加熱処理装置は、ウエハWが載置される載置台360を、加熱部であるヒータ361が埋設された熱板362と、この熱板362が嵌入される基体370と、により、載置台360の周縁部である基体370の表面に周方向に沿って複数の排気口363が全周に亘って開口している。基体370内には、各排気口363を開口端とする排気路364が下方に伸び更に載置台360の中央部に向けて屈曲して形成されている。
一方、載置台360の下面中央部には、排気管365が接続され、この排気管365の開口部をその下面により塞ぐように、また排気路364の下流側をその周面により塞ぐように例えば円柱状のブロック体366が設けられている。即ち、排気管365と排気路364との間はブロック体366により塞がれており、ブロック体366の上面は熱板362の下面に接している。ブロック体366は、第4の実施の形態で用いたブロック体322と同様に例えば多孔質のセラミックフィルターに熱触媒体を付着させて構成される。
なお、排気路364は、各排気口363に対応して上下に伸びる排気路とこれら排気路の下端が開口する共通の排気室とからなり、この排気室内にブロック体366が設けられている構成としてもよい。
また載置台360の上方には、蓋部367が設けられ、蓋部367は、天井部中央に例えば窒素ガス(N
2ガス)などのパージガスを供給するためのパージガス供給路368が接続されている。従ってこの実施の形態では、ヒータ361は、熱触媒用の加熱部を兼用している。
【0065】
このように構成することで載置台360の熱板362によりウエハWを加熱すると共に排気路364に設けた熱触媒体のブロック体366を加熱して活性化させることができる。そして排気口363からウエハWの上方の雰囲気を排気したときに排気が加熱されたブロック体366を通過して排気されるため、排気に含まれる昇華物を分解することができる。
また第1〜第5の実施の形態に示した加熱処理装置の載置台として、
図19、
図20に示す載置台360を適用してもよい。
【0066】
また例えば排気路において、熱触媒体を設けた領域の下流側の排気圧を測定し、排気圧が閾値を上回った時には、熱触媒体の温度を昇温するようにしてもよい。例えば
図21に示すように第4の実施の形態に示した加熱処理装置において、排気路312のブロック体322を設けた領域の下流側に排気圧を測定する排気圧測定部326を設ける。そして制御部100に排気圧の上限閾値をあらかじめ記憶させておき、排気圧測定部326の測定値と、圧力の上限閾値とを比較し、排気圧が上限閾値を上回った場合には、熱触媒用の加熱部であるヒータ10の温度を例えば500℃まで昇温するように構成する。
【0067】
例えば加熱処理装置において、ウエハWの処理を行い、雰囲気の排気を続けると分解しきれない昇華物がブロック体322や排気路312に付着することがあり、圧力損失が高くなることがあるため、排気流量が低下するおそれがある。そのため排気圧が上昇したときにヒータ10の温度を昇温することで、熱触媒体の活性が上昇する。これによりブロック体322に詰まっている物質や排気路312に付着した付着物も分解することができ、圧力損失を下げることができ、メンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0068】
また排気圧測定部326は、熱触媒体を設置した領域よりも上流側(処理容器2側)に設けてもよい。あるいは排気の流量を測定し、流量が下限値を下回った場合に熱触媒用の加熱部の温度を上昇させるようにしてもよい。
さらに例えば所定の枚数のウエハWの処理毎、あるいは装置の稼働時間が所定の時間を経過するごとに一定時間、熱触媒用の加熱部の加熱温度を昇温するようにしてもよい。このように構成することで定期的に成形体に付着する難分解性の物質を除去することができ、メンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0069】
[検証試験]
Cr
2O
3により被覆した基板に対し、表面にポリマー(FRP)を付着させたサンプルを参考例、表面にポリマーを付着させないサンプルを比較例とし、参考例及び比較例に係るサンプルを0℃から600℃まで徐々に温度を上げたときの質量の変化と、熱流とを測定した。熱流の測定には、示差走査熱量測定器を用いた。
図22及び
図23は夫々参考例及び比較例における、温度に対応したサンプルの質量の変化率(質量%)と熱流(μV)の値とを示す特性図である。この結果によれば、参考例においては、温度が300℃〜350℃付近において熱流が増加し、質量が減少している。これは、Cr
2O
3が熱触媒として作用し、ポリマーを分解したためと考えられる。従って、熱触媒層として、Cr
2O
3を用いた場合に300℃程度まで加熱することにより付着したポリマーを分解することができると言える。