特許第6855866号(P6855866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855866
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】マクロモノマー共重合体および成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20210329BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20210329BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20210329BHJP
   C08F 290/04 20060101ALN20210329BHJP
【FI】
   C08F265/06
   C08L51/00
   C08L33/12
   !C08F290/04
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-57525(P2017-57525)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-159010(P2018-159010A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】大谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−166260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08L 33/12
C08L 51/00
C08F 290/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(A)由来の単位と、前記マクロモノマー(A)と共重合可能なコモノマー(B)由来の単位からなるマクロモノマー共重合体(Y)であって、前記コモノマー(B)が、アルキルアクリレート(B1)及び芳香族アクリレート(B2)を含み、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定したマクロモノマー共重合体(Y)の5%重量減少温度が340℃以上である、マクロモノマー共重合体(Y)(ただし、脂環式基を有する(メタ)アクリレート由来の単位を有するものを除く。)
【化1】
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
【請求項2】
前記コモノマー(B)100質量部に対して、前記芳香族アクリレート(B2)の割合が20〜50質量部である、請求項1に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
【請求項3】
前記アルキルアクリレート(B1)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、及びi−ステアリルアクリレートからなる群選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
【請求項4】
前記芳香族アクリレート(B2)が、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェニルアクリレートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
【請求項5】
前記コモノマー(B)のみからなる重合体の屈折率と、前記マクロモノマー(A)の屈折率との差の絶対値が0.05以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のマクロモノマー共重合体(Y)と、ポリメチルメタクリレート(Z)とを含む成形材料であって、前記ポリメチルメタクリレート(Z)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、前記マクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含む、成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマクロモノマー共重合体、および該マクロモノマー共重合体を含む成形材料に関する。
特に、触媒的連鎖移動重合(Catalytic Chain Transfer Polymerization、CCTPと略記)で製造されたアクリル系マクロモノマーとコモノマーの共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
反応活性のある不飽和結合を有する単量体の多くは、連鎖移動を起こす触媒を用いて適切な条件で反応させることによりポリマーを生成することができる。ポリマーを工業的に利用する場合、一種の単量体を用いたホモポリマーでは、材料の多様な要求に応えることができないため、異種のポリマーを混合する方法が用いられている。しかし、異種のポリマーを単に混合しただけでは、ポリマー同士が相溶せずに比較的大きなサイズのドメインを持った相分離(マクロ相分離と呼ばれる)され、異種のポリマーの混合物は、各ポリマーが有する特性を共に発現させることが困難な場合が多い。
【0003】
上記の課題を解決する方法として、2種以上のポリマーセグメントを化学結合させたブロックコポリマーを用いる方法が知られている。異種のポリマーの混合物は、前述の通りポリマー同士の相溶性が低いため相分離が起こるが、ブロックポリマーはポリマーセグメント同士が互いに化学結合で連結しているため、その相分離構造はナノメーターサイズになる(ミクロ相分離と呼ばれる)。そのため、各ポリマーセグメントが有する特性を共に発現させることができる。ブロックコポリマーの中でも、(メタ)アクリルブロックコポリマーは、透明性や耐候性を必要とする各種用途での応用が試みられている。
【0004】
例えば、アクリル樹脂成形体は透明性に優れるが、硬くて脆いという課題がある。
前述の2種以上のポリマーセグメントを化学結合させた(メタ)アクリルブロックコポリマーであれば、を使用したアクリル樹脂成形体が知られている。(メタ)アクリルブロックコポリマーは互いに化学結合で連結しているため、その相分離構造はミクロ相分離構造となる。そのため、各ポリマーセグメントの特性を発揮させることによって、透明性に優れ、且つ耐衝撃性や柔軟性に優れたアクリル樹脂成形体が得られることが期待できる。
【0005】
このような(メタ)アクリルブロックコポリマーの製造方法として、例えば、特許文献1及び2に記載の原子移動ラジカル重合(ATRP)法が知られている。しかし、ATRP法では金属触媒を使用するために重合体の生成工程が煩雑となり、コストアップや生産性の低下が課題であった。他には、金属触媒を使用しない方法として、例えば、特許文献3及び4に記載の可逆的付加開裂型連鎖移動(RAFT)重合法が提案されている。しかし、残存硫黄原子が耐候性を低下させたり、得られたポリマーの成形体が着色したりするなどの問題点があった。
これらの問題点を解決する方法として、触媒的連鎖移動重合と呼ばれる連鎖移動定数が極めて高いコバルト錯体をごく微量用いてアクリル系マクロモノマーをあらかじめ製造し、そのアクリル系マクロモノマーと他のアクリル系モノマーを共重合させることで(メタ)アクリルブロック/グラフト共重合体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
マクロモノマーとは、重合反応が可能な官能基を持った高分子のことであり、マクロマーとも呼ばれるものである。
【0006】
さらに、アクリル系マクロモノマーとアクリル系モノマーの共重合体である(メタ)アクリルブロック/グラフト共重合体を得る方法として、特許文献6及び7に記載の懸濁重合による方法が知られている。特許文献6では、アクリル系マクロモノマーと組み合わせるコモノマーとして溶解度パラメータが異なる二種類以上を併用する方法が挙げられている。特許文献7では、非金属連鎖移動剤を使用して共重合体の架橋を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3040172号公報
【特許文献2】特開平8−41117号公報
【特許文献3】特許第2553134号公報
【特許文献4】特表2000−515181号公報
【特許文献5】特表2000−514845号公報
【特許文献6】国際公開第2014/098141号
【特許文献7】国際公開第2015/056668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリメチルメタクリレートからなるマクロモノマー由来のセグメントとコモノマーの重合体からなるセグメントの屈折率の屈折率が異なることから、透明性に劣るという欠点があった。特に、ポリメタクリル酸メチルからなるポリマーに対してマクロモノマー共重合体を添加した場合に透明性が低下する問題が顕著であった。
また、CCTPで製造されたマクロモノマーとコモノマーの共重合体では、耐熱分解性が必ずしも十分とは言えず、溶融成形に用いる際に成形不良となる場合があった。
【0009】
本発明は、ポリメチルメタクリレートからなるマクロモノマーとコモノマーの共重合体をポリメチルメタクリレートに添加した時の透明性を改良するとともに、アクリル系マクロモノマー共重合体の耐熱分解性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の実施態様を有する。
[1] 下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(A)由来の単位と、前記マクロモノマー(A)と共重合可能なコモノマー(B)由来の単位からなるマクロモノマー共重合体(Y)であって、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定したマクロモノマー共重合体(Y)の5%重量減少温度が340℃以上であることを特徴とする、マクロモノマー共重合体(Y)。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
【0013】
[2] 前記一般式(1)で表されるマクロモノマー(A)由来の単位と、前記マクロモノマー(A)と共重合可能なコモノマー(B)由来の単位からなるマクロモノマー共重合体(Y)であって、前記コモノマー(B)が、アルキルアクリレート(B1)及び芳香族アクリレート(B2)を含むことを特徴とする、マクロモノマー共重合体(Y)。
[3] 前記アルキルアクリレート(B1)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、及びi−ステアリルアクリレートからなる群選ばれる1種以上である、[2]のマクロモノマー共重合体(Y)。
[4] 前記芳香族アクリレート(B2)が、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェニルアクリレートからなる群より選ばれる1種以上である、[2]または[3]のマクロモノマー共重合体(Y)。
[5] 前記コモノマー(B)のみからなる重合体の屈折率と、前記マクロモノマー(A)の屈折率との差の絶対値が0.05以下であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかのマクロモノマー共重合体(Y)。
[6] [1]〜[5]のいずれかのマクロモノマー共重合体(Y)と、ポリメチルメタクリレート(Z)とを含む成形材料であって、前記ポリメチルメタクリレート(Z)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、前記マクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含む、成形材料。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマクロモノマー共重合体(Y)は、5%重量減少温度が高く、耐熱分解性に優れる。且つポリメチルメタクリレートに混合した時の透明性が良好である。そのため、ポリメチルメタクリレートに耐衝撃性や柔軟性を付与するのに適している他、従来のマクロモノマー共重合体では適用できなかった成形温度や使用温度が高い樹脂の改質剤として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下。「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施できる。
以下において重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。重合体を構成する単量体単位のことを「〜由来の単位」または「〜単位」という。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
また、ポリメチルメタクリレートをPMMAと略記する場合がある。PMMAはメチルメタクリレート単量体の単独重合体、またはメチルメタクリレート単位以外の単位を含む共重合体である。
【0016】
本発明に係るマクロモノマー共重合体(Y)は、下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(A)と、マクロモノマー(A)と共重合可能な他の重合性単量体であるコモノマー(B)とを共重合して得られる。
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。
〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Zは、末端基である。
nは、2〜10,000の自然数である。)
【0019】
[マクロモノマー(A)]
マクロモノマー(A)は、ポリ(メタ)アクリレートセグメントの片末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基を持つ。ここで、マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持ったポリマーであり、別名マクロマーとも呼ばれる。
【0020】
[R・R〜R
一般式(1)において、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基は、置換基を有することができる。
【0021】
R及びR〜Rのアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びi−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基が挙げられる。これらの中で、入手しやすさから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びt−ブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0022】
R及びR〜Rのシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、アダマンチル基、等が挙げられる。入手しやすさから、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びアダマンチル基が好ましい。
【0023】
R及びR〜Rのアリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、等が挙げられる。
【0024】
R及びR〜Rの複素環基としては、例えば、炭素数5〜18の複素環基が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。複素環基の具体例としては、例えば、γ−ラクトン基、ε−カプロラクトン基、モルフォリン基、等が挙げられる。
【0025】
R又はR〜Rの置換基としては、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アコキシカルボニル基(−COOR’)、カルバモイル基(−CONR’R’’)、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基(−NR’R’’)、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(−OR’)、及び親水性もしくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。なお、R’又はR’’は、それぞれ独立して、Rと同様の基(ただし複素環基を除く。)
【0026】
R又はR〜Rの置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのカルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル基及びN,N−ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアミド基としては、例えば、ジメチルアミド基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としての親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0027】
R及びR〜Rは、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル基がより好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はi−プロピル基が好ましく、入手のしやすさの観点から、メチル基がより好ましい。
【0028】
[X〜X
一般式(1)において、X〜Xは、それぞれ水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましい。さらに、マクロモノマー(A)の合成し易さの観点から、X〜Xの半数以上がメチル基であることが好ましい。
【0029】
[Z]
一般式(1)において、Zは、マクロモノマー(A)の末端基である。マクロモノマー(A)の末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0030】
マクロモノマー(A)の数平均分子量Mnは、500以上100,000以下が好ましい。マクロモノマー(A)の数平均分子量Mnの下限値は、1,000以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましい。また、マクロモノマー(A)の数平均分子量Mnの上限値は、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。数平均分子量Mnが下限値以上であれば、マクロモノマー共重合体(Y)にマクロモノマー(A)由来の相溶性や物性を付与することができる。数平均分子量Mnが上限値以下であれば、マクロモノマー(A)とコモノマー(B)が共重合しやすくなる。
【0031】
マクロモノマー(A)の数平均分子量Mnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレートの検量線から算出した値のことを意味する。
【0032】
[マクロモノマー(A)の原料モノマー]
マクロモノマー(A)を得るためのモノマー(原料モノマー)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0033】
これらの中で、モノマーの入手のし易さの点で、メタクリレート(メタクリル酸エステル)が好ましい。
メタクリレートとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び4−ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートがより好ましい。
【0034】
また、マクロモノマー(A)を得るためのモノマーは、マクロモノマー共重合体(Y)及びこれを含有する成形体の耐熱性の点からは、上記のメタクリレート又はアクリレート(アタクリル酸エステル)を含有することが好ましい。
アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中で、入手しやすさの点で、メチルアクリレートが好ましい。
【0035】
マクロモノマー(A)を得るためのモノマー合計のうちのメタクリレートの含有量としては、生成物であるマクロモノマー共重合体(Y)及びこれを含有する成形体の耐熱性の点から、80質量%以上100質量%以下が好ましい。メタクリレートの含有量は、82質量%以上99質量%以下がより好ましく、84質量%以上98質量%以下がさらに好ましい。
マクロモノマー(A)の全単位のうち、メタクリレート単位は80〜100質量%が好ましく、82〜99質量%より好ましく、84〜98質量%がさらに好ましい。
【0036】
マクロモノマー(A)を得るためのモノマー合計のうちのアクリレートの含有量としては、0質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上18質量%以下がより好ましく、2質量%以上16質量%以下がさらに好ましい。
マクロモノマー(A)の全単位のうち、アクリレート単位は0〜20質量%が好ましく、1〜18質量%より好ましく、2〜16質量%がさらに好ましい。
【0037】
[マクロモノマー(A)の製造方法]
マクロモノマー(A)は、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許第4680352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報、米国特許第5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(A)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数が高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。
【0038】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(A)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。これらの中で、マクロモノマー(A)の回収工程の簡略化の点から水系分散重合法が好ましい。
【0039】
本発明において使用されるコバルト連鎖移動剤としては、式(2)に示されるコバルト連鎖移動剤が使用でき、例えば、特許第3587530号公報、米国特許第4526945号明細書、同第4694054号明細書、同第4886861号明細書、同第5324879号明細書、国際公開第95/17435号、特表平9−510499号公報、特開2012−158696号公報等に記載されているものを使用することができる。
【0040】
【化3】
【0041】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基;Xは、それぞれ独立して、F原子、Cl原子、Br原子、OH基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基及びアリール基である。]
【0042】
コバルト連鎖移動剤としては、具体的には、ビス(ボロンジフルオロジメチルジオキシイミノシクロヘキサン)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビシナルイミノヒドロキシイミノ化合物のコバルト(II)錯体、テトラアザテトラアルキルシクロテトラデカテトラエンのコバルト(II)錯体、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミノコバルト(II)錯体、ジアルキルジアザジオキソジアルキルドデカジエンのコバルト(II)錯体、コバルト(II)ポルフィリン錯体などがあげられる。中でも、水性媒体中に安定に存在し、連鎖移動効果が高いビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)(R〜R:フェニル基、X:F原子)が好ましい。これらは一種以上を適宜選択して使用することができる。
【0043】
コバルト連鎖移動剤の使用量は、マクロモノマー(A)を得るためのモノマーの合計量100部に対し20ppmから350ppmが好ましい。コバルト連鎖移動剤の使用量が20ppm未満であれば分子量の低下が不十分となりやすく、350ppmを超えると得られるマクロモノマー(A)が着色しやすい。
【0044】
[マクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応機構]
マクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応機構については、山田らの報文(Prog. Polym. Sci.31 (2006) p835−877)等に詳しく記載されている。具体的には、マクロモノマー(A)の末端二重結合基は、アクリレートとの共重合反応では分岐構造を形成し、共重合することができる。しかし、マクロモノマー(A)の末端二重結合基とメタクリレートとの反応では分岐構造の形成が困難であり、主に再開裂して末端二重結合基とメタクリレート成長末端のラジカルが生成する。コモノマー(B)にスチレンを用いた場合は、分岐構造を形成可能であるが反応の進行が極端に遅く、工業的に好ましくない。この点からは、コモノマー(B)は、アクリレートを主成分とすることが好ましい。
【0045】
[コモノマー(B)]
コモノマー(B)は、マクロモノマー(A)と共重合可能であれば特に限定されず、必要に応じて種々の重合性単量体を使用できる。しかし、前述のマクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応機構を考慮し、アクリレートを主成分とすることが好ましい。コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントに柔軟性を持たせる場合、コモノマー(B)がアルキルアクリレート(B1)を含むことが好ましい。また、コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントの耐熱分解性の向上と屈折率調整を同時に達成するためには、コモノマー(B)が芳香族アクリレート(B2)を含むことが好ましい。コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントの耐熱分解性を向上させることで、マクロモノマー共重合体(Y)の耐熱分解性を向上させることができる。また、コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントの屈折率を調整することで、マクロモノマー共重合体(Y)の透明性を向上させたり、他の樹脂とマクロモノマー共重合体(Y)との混合物の透明性を向上させたりすることができる。また、コモノマー(B)は、その他のモノマー(B3)を含んでも良い。その他のモノマー(B3)は、マクロモノマー共重合体(Y)に種々の機能を付与するために用いられる。
【0046】
[アルキルアクリレート(B1)]
アルキルアクリレート(B1)は、アクリレートのうち、エステル基がアルキル基であるものを指す。アルキル基は直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基などを含む。これらのうち、コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントが柔軟性に優れる点では、直鎖アルキル基や分岐アルキル基を用いることが好ましい。
【0047】
アルキルアクリレート(B1)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、i−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、i−デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、i−ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中で、入手しやすさの点で、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、i−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、i−デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、i−ステアリルアクリレート、が好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、i−ステアリルアクリレート、がさらに好ましい。
【0048】
コモノマー(B)が含むアルキルアクリレート(B1)の割合は、例えば、コモノマー(B)100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、20〜80質量部がさらに好ましい。コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントに柔軟性が求められない場合はアルキルアクリレート(B1)を含まなくてもよい。アルキルアクリレート(B1)の割合は、マクロモノマー共重合体(Y)、または他の樹脂とマクロモノマー共重合体(Y)との混合物に求められる柔軟性や耐衝撃性、靱性などの条件によって適宜調整される。
【0049】
[芳香族アクリレート(B2)]
芳香族アクリレート(B2)を用いることにより、耐熱分解性の向上と屈折率調整を同時に達成することができる。芳香族アクリレート(B2)単位からなる重合体の屈折率は、アルキルアクリレート(B1)単位からなる重合体の屈折率より高くなることから、屈折率調整に好適に用いられる。
さらに、芳香族アクリレート(B2)を共重合することでマクロモノマー共重合体(Y)の耐熱分解性を向上させることができる。例えばマクロモノマー共重合体(Y)の5%重量減少温度が340℃以上を達成することができる。該5%重量減少温度は345℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。
【0050】
芳香族アクリレート(B2)としては、例えば、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ビフェニルアクリレート、ノニルフェニルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、クミルフェノールアクリレート、クミルフェノキシエチルアクリレート、クミルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、o−フェニルフェノールアクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、EO変性トリブロモフェニルアクリレート、等が挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中で、入手しやすさの点で、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、が好ましい。
【0051】
コモノマー(B)が含む芳香族アクリレート(B2)の割合は、コモノマー(B)単位からなる重合体の屈折率や、マクロモノマー共重合体(Y)に求められる耐熱分解性の高さによって適宜調整可能である。コモノマー(B)が含む芳香族アクリレート(B2)の割合は、例えば、コモノマー(B)100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、10〜70質量部がより好ましく、20〜50質量部がさらに好ましい。
【0052】
コモノマー(B)が、アルキルアクリレート(B1)および芳香族アクリレート(B2)の両方を含む場合、アルキルアクリレート(B1)/芳香族アクリレート(B2)で表される含有量の質量比は、60/40〜90/10が好ましく、65/35〜80/20 がより好ましい。
【0053】
[その他のモノマー(B3)]
その他のモノマー(B3)は、マクロモノマー共重合体(Y)に種々の機能性を付与するために使用される。その他のモノマー(B3)は、マクロモノマー(A)、アルキルアクリレート(B1)及び、芳香族アクリレート(B2)のうちのいずれかと共重合可能な重合性単量体であれば、特に制限なく選択可能である。
その他のモノマー(B3)としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等のメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート等の水酸基含有メタクリレート;メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシプロピルコハク酸、等のカルボキシ基含メタクリレート;グリジシルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリレート;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有メタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、等の多官能メタクリレート;クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0054】
[ラジカル重合開始剤]
マクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応をラジカル重合開始剤の存在下で行う場合、ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2 , 2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、マクロモノマー(A)とコモノマー(B)の合計量100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
重合温度については特に制限はなく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
【0055】
[マクロモノマー共重合体(Y)]
マクロモノマー共重合体(Y)は、マクロモノマー(A)由来の単位とコモノマー(B)由来の単位を共に含有するブロック/グラフト共重合体(Y1)を含み、そのほかの成分を含んでもよい。例えば、コモノマー(B)単位のみからなる重合体(Y2)、及び、未反応のマクロモノマー(A)を含む可能性がある。重合体(Y2)及び未反応のマクロモノマー(A)の含有量は少ない方が好ましい。
「ブロック/グラフト共重合体」はブロック共重合体およびグラフト共重合体の一方または両方の意味である。
【0056】
未反応のマクロモノマー(A)は、マクロモノマー共重合体(Y)を種々の樹脂に対する添加剤として使用した際のミクロ相分離構造制御の妨げとなる可能性がある。さらに、マクロモノマー(A)は末端二重結合部位から分解しやすい性質があることから耐熱性低下の原因となる可能性がある。そのため、未反応のマクロモノマー(A)は少ない方が好ましい。
具体的には、未反応のマクロモノマー(A)がマクロモノマー共重合体(Y)100質量%に対して20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
また、コモノマー(B)単位のみからなる重合体(Y2)が、マクロモノマー共重合体(Y)100質量%に対して15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0057】
マクロモノマー共重合体(Y)の質量平均分子量Mwは、30,000以上10,000,000以下が好ましく、50,000以上8,000,000以下がより好ましく、100,000以上6,000,000以下がさらに好ましい。質量平均分子量Mwが30,000以上であれば樹脂成形体の機械強度及び耐熱分解性が良好となり、10,000,000以下であれば成形性や添加剤として使用した時のマトリクス樹脂への溶解性が良好となる。
【0058】
マクロモノマー共重合体(Y)は、コモノマー(B)のみからなる重合体(Y2)の屈折率と、マクロモノマー(A)の屈折率との差の絶対値が0.05以下であることが好ましく、0.02以下がより好ましい。
該屈折率の差の絶対値が0.05以下であると、マクロモノマー共重合体(Y)は透明性に優れる。またマクロモノマー共重合体(Y)を他の樹脂と混合したときに、他の樹脂の透明性が低下しにくい。
例えば、透明性が高いポリメチルメタクリレートにマクロモノマー共重合体(Y)を混合した時の透明性の低下が小さい。
したがって、マクロモノマー共重合体(Y)は、ポリメチルメタクリレートの耐衝撃性や柔軟性を向上させる改質剤として好適に使用できる。またマクロモノマー共重合体(Y)自身の耐熱分解性が高いため、従来のマクロモノマー共重合体では適用できなかった、成形温度や使用温度が高い他の樹脂の改質剤として好適に使用できる。
【0059】
マクロモノマー共重合体(Y)中の、コモノマー(B)のみからなる重合体(Y2)の屈折率は、コモノマー(B)のみを、マクロモノマー共重合体(Y)を製造する際と同じ条件で重合させた重合体の屈折率と同じとみなすことができる。
コモノマー(B)のみからなる重合体の屈折率は特に限定されないが、例えば波長589nmにおける屈折率が1.44〜0.54であることが好ましく、1.47〜1.51がより好ましい。
マクロモノマー(A)の屈折率は特に限定されないが、例えば波長589nmにおける屈折率が1.44〜0.54であることが好ましく、1.47〜1.51がより好ましい。
【0060】
[マクロモノマー共重合体(Y)の製造]
本発明のマクロモノマー共重合体(Y)の製造は、溶液重合、懸濁重合もしくは塊状重合で行われる。溶液重合は、得られたポリマー溶液をそのまま塗料や粘接着剤の原料として用いることができる。また、脱気押出等の方法で溶剤等を除去し、成形材料及びその添加剤として用いることもできる。塊状重合は重合場が懸濁重合と同等であり、シラップを型に注入して重合・硬化させることで目的の成形体を得ることができる。懸濁重合では微小なビーズ(粒子状)としてマクロモノマー共重合体(Y)を得ることができることから、成形材料としてそのまま溶融成形に用いたり、他の樹脂に混合して添加剤として使ったり、塗料や粘接着剤の成分として用いたりすることができる。
【0061】
マクロモノマー(A)とコモノマー(B)の仕込比は、マクロモノマー(A)とコモノマー(B)の合計に対して、マクロモノマー(A)が10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。
マクロモノマー(A)の割合が上記範囲の下限値以上であるとマクロモノマー共重合体(Y)および後述の成形材料(Z)の透明性を向上させると共にミクロ相分離構造を制御でき、上限値以下であるとマクロモノマー(A)とコモノマー(B)の共重合反応が進行しやすくなる。
【0062】
[用途]
本発明のマクロモノマー共重合体(Y)は、マクロモノマー共重合体(Y)を主成分として使用しても良いし、他の樹脂の添加剤として使用しても良い。
マクロモノマー共重合体(Y)を主成分として使用する場合、溶融成形可能な成形材料としてシートやフィルム、各種筐体やカバー類、導光体などの種々の成形体として使用できる。また、溶剤に溶解させたのち塗工することで塗料や粘接着剤などとして利用可能である。
マクロモノマー共重合体(Y)を他の樹脂の添加剤として使用する場合、主成分となる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
マクロモノマー共重合体(Y)が他の樹脂に付与する機能としては、柔軟性、靱性、耐衝撃性、耐候性、加工性、離型性、耐擦傷性、表面硬度、相溶性、結晶サイズ制御、延性等が挙げられる。
他の樹脂と混合させる方法としては、物理的混合、溶融混合、重合/硬化前に溶解・分散させておく方法、等が挙げられる。
【0063】
[成形材料]
成形材料の好ましい態様として、マクロモノマー共重合体(Y)と、ポリメチルメタクリレート(Z)を含む成形材料が挙げられる。
マクロモノマー共重合体(Y)をPMMA(ポリメチルメタクリレート(Z))に添加して使用する場合は、マクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を含むことが好ましい。マクロモノマー(A)が含むメチルメタクリレート単位が多いほどPMMAとの相溶性が良好となり好ましい。この場合の、マクロモノマー(A)が含むメチルメタクリレート単位は、マクロモノマー(A)に対して50質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、マクロモノマー共重合体(Y)を添加するPMMAがメチルメタクリレート単位以外の単位を含む場合は、マクロモノマー(A)とPMMAのモノマー組成を近づけることが好ましい。
【0064】
特に、ポリメチルメタクリレート(Z)が、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、かつマクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含むことが好ましい。ポリメチルメタクリレート(Z)およびマクロモノマー(A)におけるメチルメタクリレート単位の含有量が上記下限値以上であると、特に透明性に優れる。
【0065】
本態様の成形材料において、マクロモノマー共重合体(Y)とポリメチルメタクリレート(Z)の合計に対して、マクロモノマー共重合体(Y)の含有量は0.5〜100質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましく、2〜30質量%がさらに好ましい。
成形材料は本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を含んでもよい。例えば、成形材料に対して、マクロモノマー共重合体(Y)とポリメチルメタクリレート(Z)の合計が80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
【実施例】
【0066】
以下において配合量の単位である「部」は「質量部」の意味である。
<測定方法・評価方法>
[GPC測定]
Mw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して求めた。以下に測定条件を示す。
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H−H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK−GEL SUPER HM−H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速: 0.6mL/分
Mw(質量平均分子量)及び(Mn)数平均分子量は、Polymer Laboratories製のポリメチルメタクリレート(Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して算出した。分子量分布は、式「分子量分布=(質量平均分子量)/(数平均分子量)」により算出した。
【0067】
[NMR測定]
コモノマー(B)の反応率は、H−NMR測定によって求められる。H−NMR測定は核磁気共鳴装置を用いて実施した。以下に測定条件を示す。
装置:UNITY INOVA500(Varian社製)
重溶媒:重クロロホルム(シグマ−アルドリッチ社製)
サンプル調製:重合反応溶液0.225gに重クロロホルム1.2を加えた。
測定条件:積算回数1000回、測定温度40℃
【0068】
[耐熱分解性の評価(5%重量減少温度の測定)]
耐熱分解性は、熱重量測定/示差熱分析装置を使用し、測定対象ポリマーの重量減少を追跡して評価した。以下に測定条件を示す。
装置: 日立ハイテクサイエンス社製 STA7300
測定条件: 窒素気流200mL/分、110℃〜550℃、昇温速度10℃/分
【0069】
[透明性の評価(△Haze値の測定)]
射出成形して2mm厚の成形板を得た後、ヘイズ値の測定を実施した。以下に測定条件を示す。
装置: 日本電色工業社製 NDH2000
測定条件: 全光線透過率はJIS K7361−1、ヘイズ値(曇価)はJIS K7316に準拠して評価した。
標準板としてVH001(三菱レイヨン社製、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体、商品名)で作成した2mm厚板を用い、各サンプルのヘイズ値(単位:%)と標準板のヘイズ値(単位:%)との差の絶対値を△Haze値として算出した。△Haze値で比較することで、外部ヘイズの影響を除いた内部ヘイズの値を比較することができる。
【0070】
<製造例1:分散剤(1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中に、17質量%水酸化カリウム水溶液61.6部、メチルメタクリレート19.1部及び脱イオン水19.3部を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、4時間撹拌した。この後、反応装置中の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。
【0071】
次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、42質量%メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム水溶液(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルSEM−Na)70部、上記のメタクリル酸カリウム水溶液16部及びメチルメタクリレート7部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、反応装置内の液を50℃に昇温した。重合装置中に、重合開始剤としてV−50(和光純薬工業社製2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、商品名)0.053部を添加し、反応装置内の液を60℃に昇温した。重合開始剤投入後、15分毎にメチルメタクリレート1.4部を計5回(メチルメタクリレートの合計量7部)、分割添加した。この後、重合装置内の液を撹拌しながら60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分8質量%の分散剤(1)を得た。
【0072】
<製造例2:連鎖移動剤(1)の合成>
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬工業社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
【0073】
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成社製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。得られたものをろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体の連鎖移動剤(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0074】
<製造例3:マクロモノマー(A−1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水135部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.1部及び製造例1で製造した分散剤(1)(固形分10質量%)0.26部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート95部、メチルアクリレート5部、製造例2で製造した連鎖移動剤(1)0.0024部及び重合開始剤としてパーオクタO(日油(株)製1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、商品名)0.3部を加え、水性分散液とした。
【0075】
次いで、重合装置内を十分に窒素置換し、水性分散液を80℃に昇温してから3時間保持した後に90℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(A−1)を得た。マクロモノマー(A−1)の平均粒径は95μm、Mwは23,700、及びMnは12,600であった。マクロモノマー(A−1)において、メチルメタクリレート単位/メチルアクリレート単位の質量比は95/5であった。マクロモノマー(A−1)の末端二重結合の導入率は、ほぼ100%であった。
【0076】
<製造例4:コモノマー(B)のみからなるポリマー(Z−1)の合成>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたセパラブルフラスコ内に、トルエン(和光純薬工業社製)200部、n−ブチルアクリレート(三菱化学社製)100部、V59(和光純薬工業社製AMBN(2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、商品名)0.3部を加えて撹拌して均一な溶液を得た。30分間窒素バブリングを実施してセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換した。次いで69℃まで昇温して重合を開始し、5時間反応を進行させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。
【0077】
得られたポリマー溶液100質量部をトルエン(和光純薬工業社製)200部で希釈した後、3000質量部のメタノール(和光純薬工業社製)に投入して沈殿物を生じさせた。得られた沈殿物を濾別して回収し、減圧乾燥させてポリn−ブチルアクリレートからなるポリマー(Z−1)を得た。ポリマー(Z−1)のMnは52,800、Mwは134,000、5%重量減少温度は330℃であった。
【0078】
<製造例5〜8:コモノマー(B)のみからなるポリマー(Z−2)〜(Z−5)の合成>
製造例4において、用いるモノマーをn−ブチルアクリレート100部から表1に記載のモノマー組成に変更した以外は同様の方法でポリマー(Z−2)〜(Z−5)を得た。評価結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果より、製造例4〜8を比較すると、アルキルアクリレート(B1)のみからなるポリマー(Z−1)と比較して、芳香族アクリレート(B2)を含むポリマー(Z−2)〜(Z−5)の方が、耐熱分解性が高くなっていることが分かる。
【0081】
<実施例1:マクロモノマー共重合体(Y−1)の合成>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたセパラブルフラスコ内に、トルエン(和光純薬工業社製)100部、製造例3で製造したマクロモノマー(A−1)30.0部を入れて50℃で1時間撹拌して均一な溶液とした。一度室温まで冷却後、アルキルアクリレート(B1)であるn−ブチルアクリレート(三菱化学社製)49.0部、芳香族アクリレート(B2)であるベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製)21.0部、V59(和光純薬工業社製AMBN(2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、商品名)0.3部を加えて撹拌して均一な溶液を得た。30分間窒素バブリングを実施してセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換した。次いで69℃まで昇温して重合を開始し、5時間反応を進行させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。
【0082】
得られたポリマー溶液100質量部をトルエン(和光純薬工業社製)200部で希釈した後、3000質量部のメタノール(和光純薬工業社製)に投入して沈殿物を生じさせた。得られた沈殿物を濾別して回収し、減圧乾燥させてマクロモノマー共重合体(Y−1)を得た。マクロモノマー共重合体(Y−1)のMnは32,400、Mwは72,800、であった。上記の方法で耐熱分解性を評価した。重合条件および評価結果を表2にまとめた。
【0083】
<実施例2および比較例1〜2:マクロモノマー共重合体(Y−2)〜(Y−4)の合成>
実施例1において、マクロモノマー(A1)およびコモノマー(B)の組成を表2に記載の内容に変更した。そのほかは実施例1と同様にして、実施例2および比較例1〜2を行い、マクロモノマー(Y−2)〜(Y−4)を得た。実施例1と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果に示されるようにマクロモノマー共重合体(Y−1)及び(Y−2)は、5%重量減少温度が340℃以上であり、耐熱分解性に優れる。
具体的に、マクロモノマー共重合体(Y−1)及び(Y−2)は、芳香族アクリレート(B2)を含まないマクロモノマー共重合体(Y−3)及び(Y−4)とそれぞれ比較して5%重量減少温度がおよそ20℃高くなった。
【0086】
<実施例3:マクロモノマー共重合体(Y)とPMMAとの混練物>
実施例1で製造したマクロモノマー共重合体(Y−1)14部とVH001(ポリメチルメタクリレート、三菱レイヨン社製、商品名)86部をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いて240℃で溶融混練した。得られた混練物を用い、微量混練射出成形機(井元製作所社製)を使用して2mm厚の成形板を作製し、上記の方法で透明性を評価した。△Haze値を表3に示す。
【0087】
<実施例4及び比較例3〜4>
実施例3と同様の方法で、使用するマクロモノマー共重合体(Y)を表3に記載のものに変更して溶融混練、射出成形板作製、及び評価を行った。結果を表3に示した。
【0088】
【表3】
【0089】
表3の結果より、実施例1、2で得たマクロモノマー共重合体(Y−1)、(Y−2)を用いた実施例3、4の混練物は、△Haze値が小さく透明性に優れる。すなわち、マクロモノマー共重合体(Y−1)、(Y−2)はポリメチルメタクリレートと混練したときにポリメチルメタクリレートの透明性を損なわないことがわかる。
【0090】
一方、比較例1、2で得たマクロモノマー共重合体(Y−3)、(Y−4)を用いた比較例3、4の混練物は、実施例3、4よりも△Haze値が大きい。