特許第6856303号(P6856303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856303
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】直流送電設備
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   H02J1/00 301D
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-203025(P2016-203025)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-64433(P2018-64433A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 憲一朗
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−112984(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0116876(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/092038(WO,A1)
【文献】 特開2016−013039(JP,A)
【文献】 特許第5449625(JP,B1)
【文献】 特開昭64−008828(JP,A)
【文献】 特開昭59−162719(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/123015(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/136229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2回線以上の直流送電線と、
第1交直変換器及び第2交直変換器と、
前記第1交直変換器に交流遮断器を介して接続された交流電源と、
前記第2交直変換器に交流遮断器を介して接続された交流系統と、
前記第1交直変換器と複数の前記直流送電線のそれぞれとをオン又はオフにすることが可能な複数の断路器と、
前記第2交直変換器と前記直流送電線との間を遮断可能な直流遮断器と、を備え、
通常時において、前記断路器の一つは前記第1交直変換器と前記直流送電線とをオンにし、その他の前記断路器は前記第1交直変換器と前記直流送電線とをオフにし、
前記直流送電線に事故が発生したとき、事故が生じた前記直流送電線に接続された直流遮断器をオフにし、前記交流電源に接続された前記交流遮断器をオフにし、
前記事故の後、事故が生じた前記直流送電線に接続された前記断路器をオフにし、事故が生じていない前記直流送電線に接続された何れか一つの前記断路器をオンにし、前記交流電源に接続された前記交流遮断器をオンにする
ことを特徴とする直流送電設備。
【請求項2】
請求項1に記載する直流送電設備において、
複数の前記第1交直変換器と、
複数の前記第1交直変換器のそれぞれに接続された複数の前記交流電源と、
前記第1交直変換器のそれぞれと、前記直流送電線とをオン又はオフにすることが可能な複数の前記断路器と、
を備えることを特徴とする直流送電設備。
【請求項3】
請求項2に記載する直流送電設備において、
前記直流送電線は3回線以上であり、
前記直流送電線に事故が発生したときにおいて、事故が生じた前記直流送電線に接続された前記断路器はオフにし、一回線に直流電力が集中しないよう、事故が生じていない複数の前記直流送電線に接続された前記断路器をオンにする
ことを特徴とする直流送電設備。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載する直流送電設備において、
複数の前記直流送電線が接続される直流母線を備え、
前記直流送電線は、前記直流遮断器を介して前記直流母線に接続されている
ことを特徴とする直流送電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二回線以上の直流送電線を備えた直流送電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの一つとして洋上風力発電の普及が進んでいる。洋上風力発電においては、洋上で発電された交流電力を陸上の電力系統に送電するが、長距離を海底ケーブルで送電する場合は、送電方式として直流送電が採用されている。主な理由として、従来の3相交流による送電よりも、直流送電のほうが高効率、低コストであることが挙げられる。
【0003】
図1は、従来の直流送電設備の概略図である。図1(a)に示す直流送電設備100は、複数の風力発電装置の集合体(いわゆるウィンドファーム)である洋上の風力発電設備(交流電源102)と、陸上の交流系統103とを直流送電線101で接続した構成を有している。交流電源102は交流遮断器104、変圧器105及び交直変換器106を介して直流送電線101に接続され、交流系統103も交流遮断器104、変圧器105及び交直変換器106を介して直流送電線101に接続されている。
【0004】
このように直流送電線が一回線の場合、事故が発生すると、交流遮断器104が開放され、事故箇所が復旧するまで送電が停止するという問題がある。
【0005】
図1(b)に示す直流送電設備100Aは、直流送電線101が2回線に冗長化されている。このため、一方の直流送電線101に事故が生じ、交流遮断器104が開放して送電が停止しても、他方の直流送電線101で送電が可能となる。
【0006】
しかしながら、このような冗長化では、交直変換器106は、直流送電線101の両端に一対必要となる。図1(b)の例では、直流送電線101は二回線あるので、交直変換器106は二対必要となる。交直変換器106は特に高価であるので、図1(b)の直流送電設備100Aは実際には、採用しがたい。
【0007】
図1(c)に示すような直流送電設備100Bは、直流送電線101を並列にし、交流電源102と交流系統103のそれぞれに交直変換器106を接続した構成である(例えば、特許文献1参照)。このような構成によれば、直流送電線101を複数回線に増設しても、交直変換器106を増設する必要はない。しかしながら、直流送電線101に、事故区間を切り離すための直流遮断器107が別途必要になる。直流遮断器107は、一回線の直流送電線101につき、両端に一対必要となる。このため、直流送電線101を冗長化すると、直流遮断器107も増設する必要がある。この直流遮断器107は高価であるので、可能な限り使用する数を低減することが望まれている。
【0008】
図1(d)に示す直流送電設備100Cは、3地点の交流電源102が連系される場合である。上記の方法によって連系を行おうとすると、3つの直流母線108が必要になる。それぞれの直流送電区間の両端に一対の直流遮断器107が必要になるため、一回線の直流送電線10に対して六つの直流遮断器107が必要となる。複数地点の交流電源102が連系されるような直流送電設備100Cでは、それぞれの交流電源102に対して直流母線108と直流遮断器107が必要になるため、多くの直流遮断器107が必要となる。この直流遮断器107は高価であるので、可能な限り使用する数を低減することが望まれている。
【0009】
なお、このような問題は、洋上風力発電に限定されず、交流電源から交流系統に交直変換して送電する直流送電設備においても同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5449625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、交直変換器及び直流遮断器の増設を抑え、信頼性が向上した直流送電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1の態様は、2回線以上の直流送電線と、第1交直変換器及び第2交直変換器と、前記第1交直変換器に交流遮断器を介して接続された交流電源と、前記第2交直変換器に交流遮断器を介して接続された交流系統と、前記第1交直変換器と複数の前記直流送電線のそれぞれとをオン又はオフにすることが可能な複数の断路器と、前記第2交直変換器と前記直流送電線との間を遮断可能な直流遮断器と、を備え、通常時において、前記断路器の一つは前記第1交直変換器と前記直流送電線とをオンにし、その他の前記断路器は前記第1交直変換器と前記直流送電線とをオフにし、前記直流送電線に事故が発生したとき、事故が生じた前記直流送電線に接続された直流遮断器をオフにし、前記交流電源に接続された前記交流遮断器をオフにし、前記事故の後、事故が生じた前記直流送電線に接続された前記断路器をオフにし、事故が生じていない前記直流送電線に接続された何れか一つの前記断路器をオンにし、前記交流電源に接続された前記交流遮断器をオンにすることを特徴とする直流送電設備にある。
【0013】
第1の態様では、直流送電線に事故が生じても、送電の停止を一時的なものとすることができ、事故による停電の影響は軽減され、従来と同等の信頼性が実現される。また、本発明に係る直流送電設備は、冗長化のために直流送電線を増設しても、交直変換器の増設数及び直流遮断器の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器及び直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する直流送電設備において、複数の前記第1交直変換器と、複数の前記第1交直変換器のそれぞれに接続された複数の前記交流電源と、前記第1交直変換器のそれぞれと、前記直流送電線とをオン又はオフにすることが可能な複数の前記断路器と、を備えることを特徴とする直流送電設備にある
【0015】
第2の態様では、直流送電線に事故が生じても、送電を停止させないことができる。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
【0016】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する直流送電設備において、前記直流送電線は3回線以上であり、前記直流送電線に事故が発生したときにおいて、事故が生じた前記直流送電線に接続された前記断路器はオフにし、一回線に直流電力が集中しないよう、事故が生じていない複数の前記直流送電線に接続された前記断路器をオンにすることを特徴とする直流送電設備にある。
【0017】
第3の態様では、停電から送電を再開した後に、電流容量を超える直流電力が直流送電線に送電されることを抑制することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1から第3の何れか一つの態様に記載する直流送電設備において、複数の前記直流送電線が接続される直流母線を備え、前記直流送電線は、前記直流遮断器を介して前記直流母線に接続されていることを特徴とする直流送電設備にある。
【0019】
第4の態様では、直流送電線に事故が生じたときの影響範囲を直流母線を越えて波及させないことができ、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、交直変換器及び直流遮断器の増設を抑え、信頼性が向上した直流送電設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術に係る直流送電設備の概略図である。
図2】実施形態1に係る直流送電設備の概略図である。
図3】実施形態1に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図4】実施形態2に係る直流送電設備の概略図である。
図5】実施形態2に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図6】実施形態2に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図7】実施形態3に係る直流送電設備の概略図である。
図8】実施形態3に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図9】実施形態3に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図10】実施形態4に係る直流送電設備の概略図である。
図11】実施形態4に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図12】実施形態4に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図13】実施形態5に係る直流送電設備の概略図である。
図14】実施形態5に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図15】実施形態5に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図16】実施形態6に係る直流送電設備の概略図である。
図17】実施形態6に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図18】実施形態6に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〈実施形態1〉
図2は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。
直流送電設備1は、二回線の直流送電線10と、第1交直変換器20と、第2交直変換器30と、交流電源21と、交流系統31と、断路器40と、直流遮断器50と、を備えている。さらに、直流送電設備1は、交流遮断器60及び変圧器61を備えている。
【0023】
直流送電線10は、正極線と負極線の一対からなる電線である。図では、一本の実線で、正極線と負極線の一対からなる直流送電線10の一回線を表している。本実施形態では二回線の直流送電線10を用いているが、二回線以上であれば本数は問わない。二回線のうちの一方を直流送電線10A、他方を直流送電線10Bとも称し、これらを区別しない時は直流送電線10と総称する。
【0024】
第1交直変換器20は交流電源21側の交直変換器であり、第2交直変換器30は交流系統31側の交直変換器であり、何れも、交流電力と直流電力とを相互に変換可能な装置である。本実施形態では、一つの交流電源21が接続されているが、複数の交流電源が一つの第1交直変換器20に接続されていてもよい。第1交直変換器20には、交流遮断器60及び変圧器61を介して交流電源21が接続されている。また、第2交直変換器30には、交流遮断器60及び変圧器61を介して交流系統31が接続されている。
【0025】
直流送電線10の一端側には、二回線の直流送電線10のそれぞれに断路器40が設けられている。二個のうちの一方を断路器40A、他方を断路器40Bとも称し、これらを区別しない時は断路器40と総称する。
【0026】
断路器40は、無負荷状態で開路を行う開閉装置であり、第1交直変換器20と、複数の直流送電線10のそれぞれとをオン又はオフにすることが可能となっている。すなわち、断路器40Aの開閉により、第1交直変換器20は直流送電線10Aに対してオン又はオフとなり、断路器40Bの開閉により、第1交直変換器20は直流送電線10Bに対してオン又はオフとなる。断路器40の開閉動作についての詳細は後述する。
【0027】
直流送電線10の他端側には、二回線の直流送電線10のそれぞれに直流遮断器50が接続され、これらの直流遮断器50は、共通の直流母線51に接続されている。そして、各直流遮断器50は、直流母線51を介して、共通した一つの第2交直変換器30に接続されている。
【0028】
直流遮断器50は、直流送電線10の事故時に、事故電流を遮断する能力を持つ開閉装置である。二個のうちの一方を直流遮断器50A、他方を直流遮断器50Bとも称し、これらを区別しない時は直流遮断器50と総称する。
【0029】
直流送電線10に事故が生じていない通常時では、直流遮断器50は、直流送電線10と第2交直変換器30とを接続した状態である。直流送電線10に事故が生じたときは、直流遮断器50は、事故の生じた直流送電線10を直流母線51から遮断した状態となる。直流遮断器50の開閉動作についての詳細は後述する。
【0030】
交流遮断器60は、第1交直変換器20と交流電源21との間の交流送電線や、第2交直変換器30と交流系統31との間の交流送電線の事故時に、事故電流を遮断する能力を持つ開閉装置である。交流遮断器60の開閉動作についての詳細は後述する。
【0031】
上述した断路器40や直流遮断器50、交流遮断器60は、図示しない制御装置により開閉動作が制御される。制御装置は、直流送電線10に事故が発生したことを検知可能である。制御装置は、事故が発生した時に、それらの断路器40等の開閉動作を制御することで、事故が発生した直流送電線10を切り離す。このような断路器40等の開閉動作の制御について詳細に説明する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図3(a)は、事故が発生する前、すなわち通常時の状態を示している。通常時では、制御装置は、断路器40の一つである断路器40Aをオン(図では「閉」)、その他の断路器Bをオフ(図では「開」)とする。また、直流遮断器50は何れもオンとする。
【0033】
このような通常時では、交流電源21で発電された交流電力は、第1交直変換器20によって直流電力に変換され、直流送電線10Aを経由して第2交直変換器30に送電される。そして、第2交直変換器30では直流電力は交流電力に変換され、交流系統31に送電される。
【0034】
図3(b)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Aに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Aに接続された直流遮断器50Aをオフとし、また、交流電源21側の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Aは切り離され、事故電流は遮断される。
【0035】
図3(c)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Aに接続された断路器40Aをオフとし、事故が生じていない直流送電線10Bに接続された断路器40Bをオンにし、交流電源21側の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21から直流送電線10Bを介して交流系統31へ送電が再開される。
【0036】
本実施形態に係る直流送電設備1によれば、直流遮断器50Aがオフになってから(図3(b)参照)、断路器40Bがオンとなって健全な直流送電線10Bに切り替わるまでの間(図3(c)参照)、送電は一時的に停止する。しかしながら、停止時間は、数分程度の短時間に抑えることができるので、事故による停電の影響は軽減され、従来と同等の信頼性が実現される。
【0037】
また、本実施形態に係る直流送電設備1によれば、二回線の直流送電線10に対して一対の第1交直変換器20及び第2交直変換器30ですむ。図1(b)に示した従来例では、二回線の直流送電線10に対して二対の交直変換器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1は、冗長化のために直流送電線10を増設しても、交直変換器の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る直流送電設備1によれば、一回線の直流送電線10に対して一つの直流遮断器50ですむ。図1(c)に示した従来例では、一回線の直流送電線10に対して二つの直流遮断器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1は、冗長化のために直流送電線10を増設しても、直流遮断器50の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0039】
〈実施形態2〉
実施形態1では、直流送電線10に一つの交流電源21と第1交直変換器20とが接続されていたが、このような態様に限定されない。複数の交流電源21と第1交直変換器20とが直流送電線10に接続されていてもよい。
【0040】
図4は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態に係る直流送電設備1Aは、二回線の直流送電線10に、複数の交流電源21が第1交直変換器20を介して接続されている構成が実施形態1と異なる。
【0041】
本実施形態では、第1交直変換器20は3つあり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は3つあり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
【0042】
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40A−2及び断路器40B−2が設けられ、第1交直変換器20−3についても同様に、断路器40A−3及び断路器40B−3が設けられている。
【0043】
図5及び図6は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図5は、通常時の状態を示している。通常時においては、3つの交流電源21は、二回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40A−1及び断路器40A−3をオンとし、断路器40B−2をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
【0044】
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−2は、直流送電線10Bを介して第2交直変換器30に送電している。
【0045】
図6(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Aに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Aに接続された直流遮断器50Aをオフとし、また、直流送電線10Aに接続していた交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Aは切り離され、事故電流は遮断される。
【0046】
図6(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Aに接続された断路器40A−1及び断路器40A−3をオフとし、事故が生じていない直流送電線10Bに接続された断路器40B−1及び断路器40B−3をオンにする。さらに、交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21−1及び交流電源21−3から直流送電線10Bを介して交流系統31へ送電が再開される。
【0047】
本実施形態に係る直流送電設備1Aによれば、直流遮断器50Aがオフになってから(図6(a)参照)、断路器40B−1及び断路器40B−3がオンとなって健全な直流送電線10Bに切り替わるまでの間(図6(b)参照)においても、交流電源21−2から直流送電線10Bへの送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
【0048】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Aによれば、二回線の直流送電線10に対して、交流電源21側は、その台数に応じて第1交直変換器20を増設する必要があるが、交流系統31側は、1台の第2交直変換器30ですむ。図1(b)に示した従来例では、二回線の直流送電線10に対して、その本数分の第2交直変換器30が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Aは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、交直変換器の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る直流送電設備1Aによれば、一回線の直流送電線10に対して一つの直流遮断器50ですむ。図1(d)に示した従来例では、それぞれの交流電源102に対して直流母線108と直流遮断器107が必要になるため、一回線の直流送電線10に対して六つの直流遮断器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Aは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、直流遮断器50の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0050】
〈実施形態3〉
実施形態1及び実施形態2では、二回線の直流送電線10を備えていたが、3回線以上であってもよい。
図7は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態に係る直流送電設備1Bは、三回線の直流送電線10に、複数の交流電源21が第1交直変換器20を介して接続されている構成が実施形態1と異なる。
【0051】
本実施形態では、直流送電線10は三回線あり、それらを直流送電線10A、直流送電線10B、直流送電線10Cと称し、それらを区別しない場合は、直流送電線10と総称する。また、直流遮断器50は3台あり、それらを直流遮断器50A、直流遮断器50B、直流遮断器50Cと称し、それらを区別しない場合は、直流遮断器50と総称する。直流送電線10A、直流送電線10B、直流送電線10Cのそれぞれは、直流遮断器50A、直流送電線10B、直流送電線10Cを介して直流母線51に接続されている。
【0052】
本実施形態では、第1交直変換器20は4台あり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3、第1交直変換器20−4と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は4台あり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3、交流電源21−4と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
【0053】
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10Cとをオン又はオフにする断路器40C−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40B−2及び断路器40C−2が設けられている。
【0054】
第1交直変換器20−3と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−3、第1交直変換器20−3と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−3が設けられている。第1交直変換器20−4についても同様に、断路器40A−4及び断路器40B−4が設けられている。
【0055】
図8及び図9は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図8は、通常時の状態を示している。通常時においては、4つの交流電源21は、三回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40B−1、断路器40C−2、断路器40A−3、及び断路器40B−4をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
【0056】
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−4は、直流送電線10Bを介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−2は、直流送電線10Cを介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30に送電している。
【0057】
図9(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Bに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Bに接続された直流遮断器50Bをオフとし、また、直流送電線10Bに接続していた交流電源21−1及び交流電源21−4の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Bは切り離され、事故電流は遮断される。
【0058】
図9(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Bに接続された断路器40B−1及び断路器40B−4をオフとする。また、制御装置は、事故が生じていない直流送電線10Aに接続された断路器40A−4、事故が生じていない直流送電線10Cに接続された断路器40C−1をオンにする。さらに、交流電源21−1及び交流電源21−4の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21−1から直流送電線10Cを介して交流系統31へ送電が再開され、交流電源21−4から直流送電線10Aを介して交流系統31へ送電が再開される。
【0059】
本実施形態に係る直流送電設備1Bによれば、直流遮断器50Bがオフになってから(図9(a)参照)、断路器40C−1及び断路器40A−4がオンとなって健全な直流送電線10A及び直流送電線10Cに切り替わるまでの間(図9(b)参照)においても、交流電源21−2及び交流電源21−3から直流送電線10A及び直流送電線10Cへの送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
【0060】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Bによれば、三回線の直流送電線10に対して、交流電源21側は、その台数に応じて第1交直変換器20を増設する必要があるが、交流系統31側は、1台の第2交直変換器30ですむ。図1(b)に示した従来例では、二回線の直流送電線10に対して、その本数分の第2交直変換器30が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Bは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、交直変換器の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Bによれば、一回線の直流送電線10に対して一つの直流遮断器50ですむ。図1(d)に示した従来例では、それぞれの交流電源102に対して直流母線108と直流遮断器107が必要になるため、一回線の直流送電線10に対して六つの直流遮断器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Bは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、直流遮断器50の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係る直流送電設備1Bによれば、三回線のうち一回線の直流送電線10Bに事故が発生した際に、切り替える先を直流送電線10A及び直流送電線10Cに分散させた。すなわち、交流電源21−1及び交流電源21−4からの変換された直流電力が、事故のない直流送電線10A及び直流送電線10の何れかの一回線に集中しないように、断路器40は制御される。これにより、停電から送電を再開した後に、電流容量を超える直流電力が直流送電線10に送電されることを抑制することができる。
【0063】
〈実施形態4〉
実施形態2では、直流送電線10に交流電源21と第1交直変換器20とが接続されていたが、それらの間に直流母線が設けられていてもよい。
図10は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態2と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
本実施形態の直流送電設備1Cでは、直流送電線10は、二回線あり、それぞれは直流母線で2区間に分けられる。それらを直流送電線10A−1、直流送電線10A−2、直流送電線10B−1、直流送電線10B−2と称し、それらを区別しない場合は、直流送電線10と総称する。
【0065】
直流送電線10A−1は、直流遮断器50A−1を介して直流母線52に接続され、直流送電線10B−1は、直流遮断器50B−1を介して直流母線52に接続されている。
直流送電線10A−2は、両端の直流遮断器50A−2及び直流遮断器50A−3を介して直流母線51及び直流母線52を接続している。
直流送電線10B−2は、両端の直流遮断器50B−2及び直流遮断器50B−3を介して直流母線51及び直流母線52を接続している。
【0066】
本実施形態では、第1交直変換器20は3つあり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は3つあり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
【0067】
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10A−1とをオン又はオフにする断路器40A−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10B−1とをオン又はオフにする断路器40B−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40A−2及び断路器40B−2が設けられている。第1交直変換器20−3と直流送電線10A−2とをオン又はオフにする断路器40A−3、第1交直変換器20−3と直流送電線10B−2とをオン又はオフにする断路器40B−3が設けられている。
【0068】
図11及び図12は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図11は、通常時の状態を示している。通常時においては、3つの交流電源21は、二回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40A−1及び断路器40A−3をオンとし、断路器40B−2をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
【0069】
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−2は、直流送電線10Bを介して第2交直変換器30に送電している。
【0070】
図12(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10A−1に事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10A−1に接続された直流遮断器50A−1をオフとし、また、直流送電線10A−1に接続していた交流電源21−1の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Aは切り離され、事故電流は遮断される。このとき、直流遮断器50A−1が遮断されているので、それ以外には事故電流が及ばない。例えば、実施形態2の図6(a)では、交流電源21−3の交流遮断器60も遮断する必要があったが、本実施形態では、遮断する必要はない。
【0071】
図12(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10A−1に接続された断路器40A−1をオフとし、事故が生じていない直流送電線10B−1に接続された断路器40B−1をオンにする。さらに、交流電源21−1の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21−1から直流送電線10B−1、さらには直流送電線10A−2及び直流送電線10B−2を介して交流系統31へ送電が再開される。
【0072】
本実施形態に係る直流送電設備1Cによれば、直流送電線10A−1は、直流遮断器50A−1を介して直流母線52に接続されているので、直流送電線10A−1に事故が生じたときの影響範囲を直流母線52を越えて波及させない。これにより、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。このように事故による停電の影響を低減し、従来と同等の信頼性が実現される。
【0073】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Cによれば、二回線の直流送電線10に対して、交流電源21側は、その台数に応じて第1交直変換器20を増設する必要があるが、交流系統31側は、1台の第2交直変換器30ですむ。図1(b)に示した従来例では、二回線の直流送電線10に対して、その本数分の第2交直変換器30が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Cは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、交直変換器の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Cによれば、直流母線51と直流母線52との間の直流送電線10A−2及び直流送電線10B−2については、両端に直流遮断器50が必要となる。しかし、直流母線52よりも末端側の直流送電線10A−1及び直流送電線10B−1については、直流母線52との間に一台の直流遮断器を設置するだけですむ。図1(d)に示した従来例では、それぞれの交流電源102に対して直流母線108と直流遮断器107が必要になるため、一回線の直流送電線10に対して六つの直流遮断器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Cは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、直流遮断器50の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0075】
〈実施形態5〉
実施形態3では、三回線の直流送電線10を備えていたが、これに直流母線をさらに設けてもよい。
図13は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態3と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0076】
本実施形態の直流送電設備1Dでは、直流送電線10は三回線あり、うち2回線は直流母線で2区間に分けられる。それらを直流送電線10A、直流送電線10B−1、直流送電線10B−2、直流送電線10C−1、直流送電線10C−2と称し、それらを区別しない場合は、直流送電線10と総称する。また、直流遮断器50は8台あり、それらを直流遮断器50A−1、直流遮断器50A−2、直流遮断器50B−1、直流遮断器50B−2、直流遮断器50B−3、直流遮断器50C−1、直流遮断器50C−2、直流遮断器50C−3と称し、それらを区別しない場合は、直流遮断器50と総称する。
【0077】
直流送電線10Aは、直流遮断器50A−1及び直流遮断器50A−2を介して直流母線51及び直流母線52に接続されている。
直流送電線10B−1は、直流遮断器50B−1を介して直流母線52に接続されている。直流送電線10B−2は、両端の直流遮断器50B−2及び直流遮断器50B−3を介して直流母線51及び直流母線52を接続している。
直流送電線10C−1は、直流遮断器50C−1を介して直流母線52に接続されている。直流送電線10C−2は、両端の直流遮断器50C−2及び直流遮断器50C−3を介して直流母線51及び直流母線52を接続している。
【0078】
本実施形態では、第1交直変換器20は4台あり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3、第1交直変換器20−4と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は4台あり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3、交流電源21−4と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
【0079】
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10B−1とをオン又はオフにする断路器40B−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10C−1とをオン又はオフにする断路器40C−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40B−2及び断路器40C−2が設けられている。
【0080】
第1交直変換器20−3と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−3、第1交直変換器20−3と直流送電線10B−2とをオン又はオフにする断路器40B−3が設けられている。第1交直変換器20−4についても同様に、断路器40A−4及び断路器40B−4が設けられている。
【0081】
図14及び図15は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図14は、通常時の状態を示している。通常時においては、4つの交流電源21は、三回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40B−1、断路器40C−2、断路器40A−3、及び断路器40B−4をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
【0082】
このような通常時においては、交流電源21−1は直流送電線10B−1を介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−4は直流送電線10B−2を介して第2交直変換器30に送電している。交流電源21−2は、直流送電線10C−1を介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30に送電している。
【0083】
図15(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10B−2に事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10B−2に接続された直流遮断器50B−2及び直流遮断器50B−3をオフとし、また、直流送電線10B−2に接続していた交流電源21−4の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10B−2は切り離され、事故電流は遮断される。このとき、直流遮断器50B−2及び直流遮断器50B−3が遮断されているので、それ以外には事故電流が及ばない。例えば、実施形態3の図9(a)では、交流電源21−1の交流遮断器60も遮断する必要があったが、本実施形態では、遮断する必要はない。
【0084】
図15(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10B−2に接続された断路器40B−4をオフとする。また、制御装置は、事故が生じていない直流送電線10Aに接続された断路器40A−4をオンにする。さらに、交流電源21−4の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21−4から直流送電線10Aを介して交流系統31へ送電が再開される。
【0085】
本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、直流送電線10B−1は、直流遮断器50B−2及び直流遮断器50B−3を介して直流母線51及び直流母線52に接続されているので、直流送電線10B−1に事故が生じたときの影響範囲を直流母線52を越えて波及させない。これにより、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。このように事故による停電の影響を低減し、従来と同等の信頼性が実現される。
【0086】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、直流遮断器50B−2及び直流遮断器50B−3がオフになってから(図15(a)参照)、断路器40A−4がオンとなって健全な直流送電線10Aに切り替わるまでの間(図15(b)参照)においても、交流電源21−1、交流電源21−2及び交流電源21−3から直流送電線10A、直流送電線10B−1、直流送電線10C−1及び直流送電線10C−2への送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
【0087】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、複数回線の直流送電線10に対して、交流電源21側は、その台数に応じて第1交直変換器20を増設する必要があるが、交流系統31側は、1台の第2交直変換器30ですむ。図1(b)に示した従来例では、二回線の直流送電線10に対して、その本数分の第2交直変換器30が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Dは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、交直変換器の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0088】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、直流母線51と直流母線52との間の直流送電線10A、直流送電線10B−2、及び直流送電線10C−2については、両端に直流遮断器50が必要となる。しかし、直流母線52よりも末端側の直流送電線10B−1及び直流送電線10C−1については、直流母線52との間に一台の直流遮断器を設置するだけですむ。図1(d)に示した従来例では、それぞれの交流電源102に対して直流母線108と直流遮断器107が必要になるため、一回線の直流送電線10に対して六つの直流遮断器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Dは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、直流遮断器50の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【0089】
〈実施形態6〉
実施形態5では、直流送電線10の間に一本の直流母線52を設けたが、複数本の直流母線52を設けてもよい。
図16は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態5と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0090】
本実施形態の直流送電設備1Eでは、交流系統31側の直流母線51の他に、2本の直流母線52を備えている。交流系統31に近い一本の直流母線52と、直流母線51との間には、4回線の直流送電線10が設けられており、それらを直流送電線10A、直流送電線10B、直流送電線10C、直流送電線10Dと称する。他にも直流送電線10が図16に記載するように設けられている。また、直流送電線10A〜直流送電線10Dの両端には、直流遮断器50が設けられている。他にも直流遮断器50が図16に記載するように設けられている。
【0091】
本実施形態では、複数の第1交直変換器20があり、第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3、第1交直変換器20−4と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。他にも第1交直変換器20が図16に記載するように設けられている。また、複数の交流電源21があり、交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3、交流電源21−4と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。他にも交流電源21が図16に記載するように設けられている。
【0092】
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−1が設けられている。
第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40A−2及び断路器40B−2が設けられている。
第1交直変換器20−3についても同様に、断路器40A−3及び断路器40B−3が設けられている。
第1交直変換器20−4についても同様に、断路器40A−3及び断路器40B−4が設けられている。
また、他にも断路器40が図16に記載するように設けられている。
【0093】
図16は、通常時の状態を示している。通常時においては、複数の交流電源21は、複数回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。例えば、制御装置は、断路器40B−1、断路器40A−2、断路器40B−3、及び断路器40A−4をオンとし、断路器40A−1、断路器40B−2、断路器40A−3、及び断路器40B−4をオフとしている。その他の断路器40についても図16に示すようにオン又はオフとする。
【0094】
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−3は直流送電線10Bを介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−2及び交流電源21−4は直流送電線10Aを介して第2交直変換器30に送電している。その他の交流電源21についても同様に直流送電線10を介して第2交直変換器30に送電している。
【0095】
図17は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Bに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Bに接続された直流遮断器50をオフとし、また、直流送電線10Bに接続していた交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Bは切り離され、事故電流は遮断される。このとき、直流送電線10Bの両端に接続された直流遮断器50が遮断されているので、それ以外には事故電流が及ばない。
【0096】
図18は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Bに接続された断路器40B−1及び断路器40B−3をオフとする。また、制御装置は、事故が生じていない直流送電線10Aに接続された断路器40A−1及び断路器40A−3をオンにする。さらに、交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21−3及び交流電源21−4から直流送電線10Aを介して交流系統31へ送電が再開される。
【0097】
このような本実施形態に係る直流送電設備1Eによれば、直流送電線10Bは、直流遮断器50を介して直流母線51及び直流母線52に接続されているので、直流送電線10Bに事故が生じたときの影響範囲を直流母線52を越えて波及させない。これにより、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。このように事故による停電の影響を低減し、従来と同等の信頼性が実現される。
【0098】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Eによれば、直流送電線10Bの両端の直流遮断器50がオフになってから(図17参照)、断路器40A−1及び断路器40A−3がオンとなって健全な直流送電線10Aに切り替わるまでの間(図18参照)においても、交流電源21−1や交流電源21−3以外の交流電源21から直流送電線10A、直流送電線10C、及び直流送電線10Dを介して第2交直変換器30への送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
【0099】
また、本実施形態に係る直流送電設備1Eによれば、直流母線51と直流母線52との間、直流母線52同士の間の直流送電線10については、両端に直流遮断器50が必要となる。しかし、最も交流系統31から遠い直流母線52よりも末端側の直流送電線10については、直流母線52との間に一台の直流遮断器を設置するだけですむ。図1(d)に示した従来例では、それぞれの交流電源102に対して直流母線108と直流遮断器107が必要になるため、多くの交流電源102が接続される場合には一回線の直流送電線10に対して多くの直流遮断器が必要となってしまう。このように、本実施形態に係る直流送電設備1Eは、冗長化のために直流送電線10を増設しても、直流遮断器50の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B、1C、1D、1E…直流送電設備、10…直流送電線、20…第1交直変換器、21…交流電源、30…第2交直変換器、31…交流系統、40…断路器、50…直流遮断器、51、52…直流母線、60…交流遮断器


図1
図2
図3
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図5
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図18