特許第6856354号(P6856354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856354
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】切削ブレードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210329BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20210329BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20210329BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20210329BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   B24D5/12 Z
   B23K26/364
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-218069(P2016-218069)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2018-78166(P2018-78166A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】田畑 晋
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−196976(JP,A)
【文献】 特開平06−188308(JP,A)
【文献】 特開2006−334714(JP,A)
【文献】 特開2003−305652(JP,A)
【文献】 特開平11−028670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
B24B 27/06
B24D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインによって区画されデバイスを形成したウエーハを該分割予定ラインに沿って切削ブレードを回転させ切削する切削装置に装着する切削ブレードの製造方法であって、
砥粒と結合剤とを混合させ円板状に形成した円板砥石の外周部において一方の面側円周方向に均等間隔に該結合剤に対して吸収性波長のレーザ光線を照射させ第1の凹み部を形成する第1の凹み部形成工程と、
該円板砥石の他方の面側該第1の凹み部と対面して第2の凹み部を形成する第2の凹み部形成工程を備え、
該第2の凹み部形成工程は、
該切削ブレードの外周からはみ出させ該一方の面にダイシングテープを貼着するテープ貼着工程と、
該切削ブレードの外周より外に該第1の凹み部に対応した加工跡を該ダイシングテープに形成する加工跡形成工程と、
該他方の面にレーザ光線を照射可能に該ダイシングテープをチャックテーブルで保持する保持工程と、
該加工跡を基に該他方の面側に該結合剤に対して吸収性波長のレーザ光線を照射させる照射工程と、を備える切削ブレードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを分割する切削ブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、半導体基板の表面に半導体デバイスを形成したデバイスウエーハが実用化されている。デバイスウエーハとしては、シリコンやガリウム砒素等の半導体基板の表面に、SiOF、BSG等の無機物系膜あるいはパリレン系ポリマー等の有機物系膜からなるLow−k膜(低誘電率絶縁膜)と、回路を形成する機能膜とを積層して形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。Low−k膜が積層されたデバイスウエーハは、デバイスウエーハに形成された分割予定ラインに沿ってLow−k膜に切削ブレードが切り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−176340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、切削ブレードでウエーハに対して加工送りされると、加工送り方向の前側では切削ブレードの刃先が下向きに移動してウエーハに切込み、後側では切削ブレードの刃先が上向きに移動してウエーハから離れる。このような切削ブレードの回転によって、切削ブレードの側面によって脆いLow−k膜がめくり上げられて、ウエーハからLow−k膜が剥離してしまう問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、Low−k膜に対する切削ブレードの側面接触を少なくして、切削ブレードによるLow−k膜のめくり上げを防止できる切削ブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切削ブレードの製造方法の一態様は、分割予定ラインによって区画されデバイスを形成したウエーハを分割予定ラインに沿って切削ブレードを回転させ切削する切削装置に装着する切削ブレードの製造方法であって、砥粒と結合剤とを混合させ円板状に形成した円板砥石の外周部において、一方の面側円周方向に均等間隔に結合剤に対して吸収性波長のレーザ光線を照射させ第1の凹み部を形成する第1の凹み部形成工程と、円板砥石の他方の面側第1の凹み部と対面して第2の凹み部を形成する第2の凹み部形成工程を備え、第2の凹み部形成工程は、切削ブレードの外周からはみ出させ一方の面にダイシングテープを貼着するテープ貼着工程と、切削ブレードの外周より外に第1の凹み部に対応した加工跡をダイシングテープに形成する加工跡形成工程と、他方の面にレーザ光線を照射可能にダイシングテープをチャックテーブルで保持する保持工程と、加工跡を基に他方の面側に結合剤に対して吸収性波長のレーザ光線を照射させる照射工程と、を備える。
【0007】
この構成によれば、切削ブレードの一方の面側では、平面と第1の凹み部とが交互に配置され、他方の面側では、平面と第2の凹み部とが交互に配置されている。このため、切削ブレードの両面においてLow−k膜に対する切削ブレードの側面接触が少なくなり、切削ブレードがLow−k膜をめくり上げることを防止することができる。また、切削ブレードの両面に第1の凹み部と第2の凹み部とが対面して形成されることで、一方の面と他方の面の負荷が均一になって、切削ブレードの反りを防止できる。また、レーザ光線により、第1の凹み部及び第2の凹み部の均等間隔の形成を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、Low−k膜に対する切削ブレードの側面接触を少なくして、切削ブレードによるLow−k膜のめくり上げを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る切削ブレードが用いられる切削装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る切削ブレードの加工前後の状態を示す図である。
図3】本実施の形態に係る一方の面側から見た切削ブレードの上面図である。
図4】本実施の形態に係る切削ブレードが保持される様子を示す図である。
図5】本実施の形態に係るレーザ加工装置の概略斜視図である。
図6】本実施の形態に係るレーザ加工装置で切削ブレードの一方の面側をレーザ加工する様子を示す図である。
図7】本実施の形態に係る切削ブレードの製造方法を示す図である。
図8】本実施の形態に係る切削ブレードの側面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
低誘電率絶縁膜(Low−k膜)が積層された機能層によって複数の半導体デバイスを形成したウエーハが実用化されている。Low−k膜が積層されたウエーハを切削ブレードで切削すると、切削ブレードの側面によりLow−k膜がめくり上げられ、チッピングが生じる問題があった。そこで、本実施の形態においては、切削ブレードの両側面に対面する凹み部を形成して、Low−k膜に対する側面接触を少なくする構成とした。
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る切削ブレードが用いられる切削装置の斜視図である。図2は、本実施の形態に係る切削ブレードの加工前後の状態を示す図である。図2Aは、加工前の切削ブレード70を示し、図2Bは、加工後の切削ブレード71を示す。図3は、本実施の形態に係る切削ブレードの一方の面側から見た上面図である。図4は、本実施の形態に係る切削ブレードが保持される様子を示す図である。図8は、本実施の形態に係る切削ブレードの側面の拡大図である。なお、本実施の形態に係る切削装置は、図1に示す構成に限定されない。本発明は、ウエーハを切削可能な切削装置における切削ブレードであれば、どのような切削ブレードにも適用可能である。
【0012】
図1に示すように、切削装置1は、チャックテーブル12に保持されたウエーハWと切削手段14とを相対的に移動させることによってウエーハWを切削するように構成されている。ウエーハWは、ダイシングテープTを介してリングフレームFに支持された状態で切削装置1に搬入される。ウエ―ハWは、シリコン等の基板と、基板の表面に形成された絶縁膜とで構成されている。絶縁膜には複数の分割予定ラインが格子状に形成され、分割予定ラインによって区画された領域にはデバイスDが形成されている。絶縁膜は、SiO膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系膜、若しくはポリイミド、パリレン等を含むポリマーの有機物系膜からなるLow−k膜(低誘導率絶縁体被膜)で構成されている。
【0013】
切削装置1の基台11上には、チャックテーブル12をX方向に切削送りする切削送り手段13が設けられている。切削送り手段13は、基台11上に配置されたX方向に平行な一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル32とを有している。X軸テーブル32の背面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ33が螺合されている。そして、ボールネジ33の一端部に連結された駆動モータ34が回転駆動されることで、チャックテーブル12が一対のガイドレール31に沿って、切削ブレード71の切削方向となるX方向に切削送りされる。
【0014】
X軸テーブル32の上部には、ウエーハWを保持するチャックテーブル12がZ軸回りに回転可能に設けられている。チャックテーブル12には、ポーラスセラミック材により保持面(不図示)が形成されており、この保持面に生じる負圧によってウエーハWが吸引保持される。チャックテーブル12の周囲には、エア駆動式の4つのクランプ部22が設けられ、各クランプ部22によってウエーハWの周囲のリングフレームFが四方から挟持固定される。基台11の上面には、チャックテーブル12の移動経路を跨ぐように立設した門型の立壁部81が設けられている。
【0015】
立壁部81には、切削手段14をY方向にインデックス送りするインデックス送り手段15と、切削手段14をZ方向に切込み送りする切込み送り手段16とが設けられている。インデックス送り手段15は、立壁部81の前面に配置されたY方向に平行な一対のガイドレール51と、一対のガイドレール51にスライド可能に設置されたY軸テーブル52とを有している。切込み送り手段16は、Y軸テーブル52上に配置されたZ方向に平行な一対のガイドレール61と、一対のガイドレール61にスライド可能に設置されたZ軸テーブル62とを有している。Z軸テーブル62の下部には、ウエーハWを切削する切削手段14が設けられている。
【0016】
Y軸テーブル52及びZ軸テーブル62の背面側には、それぞれナット部が形成され、これらナット部にボールネジ53、63が螺合されている。Y軸テーブル52用のボールネジ53、Z軸テーブル62用のボールネジ63の一端部には、それぞれ駆動モータ64(Y軸用の駆動モータは不図示)が連結されている。駆動モータ64により、それぞれのボールネジ53、63が回転駆動されることで、切削手段14がガイドレール51に沿ってX方向に直交するY方向にインデックス送りされ、切削手段14がガイドレール61に沿ってウエーハWに接近および離反するZ方向に切込み送りされる。
【0017】
切削手段14は、ハウジング75から突出したスピンドル92(図4参照)の先端に切削ブレード71を装着して構成される。ハウジング75には、切削ブレード71の回転軸となるスピンドル92が回転可能に支持されると共に、スピンドル92を回転させるモータ(不図示)が設置されている。また、ハウジング75の先端側には、切削ブレード71がウエーハWに切込む領域を露出させるように、切削ブレード71を囲繞するブレードカバー73が設けられている。
【0018】
また、切削手段14のハウジング75にはウエーハWの上面を撮像する撮像手段17が設けられており、撮像手段17の撮像画像に基づいてウエーハWに対して切削ブレード71がアライメントされる。このアライメントにより、切削ブレード71の切削方向にチャックテーブル12上のウエーハWの分割予定ラインの向きが合わせられる。切削手段14では、切削水が噴射されながら、切削ブレード71によってウエーハWに積層されるLow−k膜と共にウエーハWが分割予定ラインに沿って切削されることで個々のデバイスに分割される。
【0019】
次に、本実施の形態に係る切削ブレードの加工前後の状態を説明する。図2Aに示すように、加工前の切削ブレード70は、例えばダイアモンド砥粒を結合剤によって、円板状に固めて形成されている。図2B及び図3に示すように、加工後の切削ブレード71は、一方の面側の外周部、すなわちウエーハWに切込む外側の略半部には、平面部71bを残すようにレーザ光線により第1の凹み部71aが均等間隔に形成され、第1の凹み部71aと平面部71bが交互に設けられている。また、他方の面側の外周部には、平面部71dを残すように第2の凹み部71cが均等間隔に形成され、第2の凹み部71cと平面部71dが交互に設けられている。第2の凹み部71cは、第1の凹み部71aと対面して形成されている。すなわち、第1の凹み部71aと第2の凹み部71cが背合わせで周方向に同じ位置に形成されている。また、切削ブレード71の内側の略半部は平面部71b、71dに連なる内周部71e、71fがそれぞれ形成される。
【0020】
切削ブレード71の外周部において、レーザ光線を照射して第1の凹み部71a及び第2の凹み部71cが形成され、レーザ光線を停止して平面部71b、71dが形成されている。レーザ光線のON、OFFを調節することで平面部71bの幅は第1の凹み部71aの幅より大きく、平面部71dの幅は第2の凹み部71cの幅よりも大きく形成されている。これにより、Low−k膜に対する側面接触が調節され、切削ブレードのウエーハWへの切削性能の低下を抑えている。
【0021】
第1の凹み部71aと平面部71bとの高さの差と、第2の凹み部71cと平面部71dとの高さ差は、略同じにすることが好ましい。また、切削ブレード71は、例えば、粒度が#2000であり、砥粒径が5μm以上10μm以下となるように形成されることが好ましい。図8に示すように、第1の凹み部71aの表面から突出する砥粒Gaの最も高い位置と平面部71bの表面から突出する砥粒Gbの最も高い位置との差Hを、砥粒径Dより小さく形成することが好ましい。これにより、ウエーハWに接触する際の砥粒Gaと砥粒Gbとの高さ差Hを小さくすることができるため、切削ブレード71がウエーハWに切込む際に切削ブレード71の微小変位を砥粒径D内に抑えることができる。よって、第1の凹み部71a及び第2の凹み部71cによってLow−k膜に対する切削ブレード71の側面接触を少なくしながら、切削ブレード71の蛇行を防いで切削ブレード71を安定化させることができる。このため、Low−k膜の切削ブレード71によるめくり上げが防止される。また、第2の凹み部71cの表面から突出する砥粒の最も高い位置と平面部71dの表面から突出する砥粒の最も高い位置との差を砥粒径より小さく形成することにより(不図示)、同様の効果を得ることができる。
【0022】
図4に示すように、加工後の切削ブレード71は、切削手段14におけるスピンドル92の先端に装着される。スピンドル92のテーパは、ブレードマウント91の嵌合孔91aに嵌め込まれており、ブレードマウント91の嵌合穴91aから突出したスピンドル92のボルト93に押えナット94が締め込まれて、ブレードマウント91がスピンドル92に固定されている。ブレードマウント91のフランジ91bに内周部71e、71fが接触するように切削ブレード71が取り付けられ、固定プレート95によってフランジ91bとの間に挟み込まれている。この状態で、固定ナット96によって、ブレードマウント91に固定ブレード95を介して切削ブレード71が取り付けられている。これにより、加工後の切削ブレード71が切削手段14に保持される。
【0023】
ウエーハWが切削装置1のチャックテーブル12に載置されると、切削手段14がZ方向に切込み送りされ、切削ブレード71が回転しながらウエーハWに切り込まれる(図1参照)。切込み方向の前側では切削ブレード71の刃先が下向きに回転して、ウエーハWに積層されるLow−k膜に切込み、後側では切削ブレード71の刃先が上向きに回転してLow−k膜から離れる。このとき、切削ブレード71の刃先において、一方の面に形成される第1の凹み部71a及び第1の凹み部71aと対面して他方の面に形成される第2の凹み部71cの領域と、一方の面に形成される平面部71b及び他方の面に形成される平面部71dの領域が、交互にLow−k膜に接触される。そして、Low−k膜及びウエーハWが分割予定ラインに沿って切削され、ウエーハWがデバイスに分割される。
【0024】
切削ブレード71の一方の面側の外周部で、平面部71bと第1の凹み部71aとを形成し、他方の面側の外周部で、平面部71dと第2の凹み部71cとが形成されている。これにより、切削ブレード71がLow−k膜に切込んだ際に切削ブレード71の両面においてLow−k膜に対する切削ブレード71の側面接触を少なくすることができる。このため、切削ブレード71がLow−k膜をめくり上げることを防止することができ、Low−k膜のチッピングが防止されてウエーハWが良好に切削される。
【0025】
次に、本実施の形態に係る切削ブレードの製造方法について説明する。まず、本実施の形態に係る切削ブレードの製造方法において用いられるレーザ加工装置について説明する。図5は、本実施の形態に係るレーザ加工装置の概略斜視図である。図6は、本実施の形態に係るレーザ加工装置で切削ブレードの一方の面側をレーザ加工する様子を示す図である。
【0026】
図5に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光線を照射するレーザ加工手段160と、切削ブレード70を保持したチャックテーブル120とを相対移動させて、ウエーハWを加工するように構成されている。
【0027】
レーザ加工装置100は、直方体状の基台110を有している。基台110の上面には、チャックテーブル120をX方向及びY方向に移動するチャックテーブル移動機構130が設けられている。チャックテーブル移動機構130の後方には、立壁部141が立設されている。立壁部141の前面からはアーム部142が突出しており、アーム部142にはチャックテーブル120に対向するようにレーザ加工手段160が支持されている。
【0028】
チャックテーブル移動機構130は、基台110の上面に配設されたY方向送り手段151と、Y方向送り手段151の上部に配設されたX方向送り手段131とを備えている。X方向送り手段131は、Y方向送り手段151に下方から支持されている。
【0029】
Y方向送り手段151は、基台110の上面に配置されたY方向に平行な一対のガイドレール151aと、一対のガイドレール151aにスライド可能に設置されたY軸テーブル152とを有している。Y軸テーブル152の下面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ153が螺合されている。ボールネジ153の一端部には、駆動モータ154が連結されている。Y軸テーブル152、X方向送り手段131及びチャックテーブル120は、駆動モータ154が回転駆動されることで、Y方向に移動される。
【0030】
X方向送り手段131は、Y軸テーブル152の上面に配置されたX方向に平行な一対のガイドレール131aと、一対のガイドレール131aにスライド可能に設置されたX軸テーブル132とを有している。X軸テーブル132上部には、チャックテーブル120が設けられている。X軸テーブル132の下面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ133が螺合されている。ボールネジ133の一端部には、駆動モータ134が連結されている。X軸テーブル132及びチャックテーブル120は、駆動モータ134が回転駆動されることで、X方向に移動される。
【0031】
チャックテーブル120は、円板状に形成されており、θテーブル121を介してX軸テーブル132の上面に回転可能に設けられている。チャックテーブル120の上面には、ポーラスセラミックス材により保持面が形成されている。チャックテーブル120の周囲には、4つのクランプ部122が設けられ、各クランプ部122によってリングフレームFが四方から挟持固定される。
【0032】
レーザ加工手段160は、アーム部142の先端に設けられたレーザ発振器161を有している。レーザ発振器161は、切削ブレード70における結合剤に対して吸収性を有する波長のレーザ光線を下向きに照射する。
【0033】
図6に示すように、チャックテーブル120上に切削ブレード70が保持されると、切削ブレード70はチャックテーブル120の回転に伴い回転される。この状態で、レーザ発振器161におけるレーザ光線の発振のONとOFFを交互に繰り返し、切削ブレード70の外周部をレーザ加工し、円周方向に溝を形成していく。レーザ光線の発振がONのとき、第1の凹み部71aが形成され、レーザ光線の発振がOFFのとき加工されず平面部71bが残される。これにより、第1の凹み部71aと平面部71bとが交互に形成される。切削ブレード70の他方の面側においても、同様に第2の凹み部71cと平面部71dとが交互に形成される。なお、図6においてチャックテーブル120に設けられるクランプ122は省略している。
【0034】
上記レーザ加工装置100を用いて、切削ブレード71が製造される。図7は、本実施の形態に係る切削ブレードの製造方法を示す図である。
【0035】
図7Aに示すように、まず切削ブレード70の一方の側面に第1の凹み部71aが形成される。切削ブレード70は、一方の面側を上面にしてチャックテーブル120に吸引保持され、チャックテーブル120の周囲に設けられている4つのクランプ部122は使われず開かれている。レーザ加工手段160のレーザ発振器161の射出口が切削ブレード70の外周部に位置付けられ、レーザ光線が切削ブレード70に照射される。レーザ光線は、切削ブレード70における結合剤に対して吸収性を有する波長であり、切削ブレード70の表面近傍に集光するように調整されている。そして、チャックテーブル120の回転により切削ブレード70を回転させた状態で、レーザ光線の照射のONとOFFが繰り返され、切削ブレード70の円周方向にレーザ光線の照射位置が動かされる。これにより、切削ブレード70の一方の面側に均等間隔に矩形状の第1の凹み部71a(図2及び図3参照)が形成され、第1の凹み部71a間には平面部71bが残される。
【0036】
図7Bに示すように、第1の凹み部71a形成後には、切削ブレード70の一方の側面に形成された第1の凹み部71aの位置がダイシングテープTに転写され、ダイシングテープTに加工跡Pが形成される。切削ブレード70は、第1の凹み部71aが形成された一方の面側を上面にしてチャックテーブル120に吸引保持される。この状態で、切削ブレード70の一方の面に、リングフレームFに支持されたダイシングテープTが載置され、チャックテーブル120の周囲に設けられた4つのクランプ部122によってリングフレームFが四方から挟持固定される。レーザ発振器161の射出口がダイシングテープTの第1の凹み部71aに対応する位置に位置付けられ、レーザ光線が照射される。レーザ光線は、ダイシングテープTに集光するように調整されている。これにより、ダイシングテープTの下方に配置される第1の凹み部71aを目印にして、ダイシングテープTの第1の凹み部71aに対応する位置がレーザ加工され、加工跡Pが形成される。
【0037】
図7Cに示すように、ダイシングテープTに加工跡Pを形成した後には、切削ブレード70の他方の側面に第2の凹み部71cが形成される。切削ブレード70は、図7Bの一方の面にダイシングテープTが載置された状態からひっくり返され、他方の面を上面にしてダイシングテープTを介してチャックテーブル120に吸引保持される。チャックテーブル120の周囲の4つのクランプ部122によりダイシングテープT及びダイシングテープTを支持するリングフレームFが四方から挟持固定されている。レーザ発振器161の射出口が、ダイシングテープTに形成されている加工跡Pを目印にして、切削ブレード70の外周部に位置付けられ、レーザ光線が照射される。レーザ光線は、切削ブレード70の表面近傍に集光するように調整されている。そして、チャックテーブル120の回転により切削ブレード70を回転させた状態で、レーザ光線の照射のONとOFFが繰り返され、切削ブレード70の円周方向にレーザ光線の照射位置が動かされる。これにより、切削ブレード70の他方の面側に均等間隔に矩形状の第2の凹み部71c(図2及び図3参照)が形成され、第2の凹み部71c間には平面部71dが残される。
【0038】
レーザ加工により、第1の凹み部71a及び第2の凹み部71cの均等間隔の形成を容易に行うことができる。また、切削ブレード70の一方の面側に第1の凹み部71aを形成した後に、第1の凹み部71aに対応する位置をダイシングテープTに加工跡Pとして転写する。そして、ダイシングテープTに形成された加工跡Pを目印として、他方の面側に第2の凹み部71cを形成する。これにより、一方の面と他方の面のアライメントを正確に行うことができる。このため、切削ブレード70の両面において第1の凹み部71aと第2の凹み部71cとを対面させて形成することができ、切削ブレード71を製造することができる。
【0039】
第1の凹み部71aと第2の凹み部71cとを対面させて形成することで、一方の面と他方の面に均一に負荷をかけることができる。これにより、一方の面側に第1の凹み部71aを形成した際に片方の面側にのみ切削負荷が掛かることで生じる切削ブレード70の反りを、第2の凹み部71cの形成時に抑えることができる。
【0040】
なお、加工跡Pは、切削ブレード70に形成される第1の凹み部71aを円周方向に若干はみ出すようにダイシングテープTに形成されることが好ましい。これにより、図7Bに示すダイシングテープTが載置された切削ブレード70をひっくり返して、図7Cに示すように切削ブレード70を他方の面側を上面にしてチャックテーブル120に保持した際に、加工跡Pの確認が容易になる。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係る切削ブレード71では、切削ブレード71の一方の面側では、平面71bと第1の凹み部71aとが交互に配置され、他方の面側では、平面71dと第2の凹み部71cとが交互に配置されている。このため、切削ブレード71の両面においてLow−k膜に対する切削ブレード71の側面接触が少なくなり、切削ブレード71がLow−k膜をめくり上げることを防止することができる。また、切削ブレード71の両面に第1の凹み部71aと第2の凹み部71cとが対面して形成されることで、一方の面と他方の面の負荷が均一になって、切削ブレード71の反りを防止できる。また、レーザ光線により、第1の凹み部71a及び第2の凹み部71cの均等間隔の形成を容易に行うことができる。
【0042】
上記実施の形態においては、切削ブレード71の両側面において、平面部71b、71dと凹み部71a、71cとを交互に形成することによりLow−k膜との側面接触を少なくする構成としたが、これに限定されない。Low−k膜との接触する平面部の他に、例えばレーザ加工により平面部よりも接触面積が小さくなる部分を形成する構成としてもよい。
【0043】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0044】
本実施の形態では、本発明をLow−k膜が積層されるウエーハを切削する切削ブレードに適用した構成について説明したが、剥離し易い膜が積層される基板を切削する切削ブレードに適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明は、Low−k膜に対する切削ブレードの側面接触を少なくして、切削ブレードによるLow−k膜のめくり上げを防止できるという効果を有し、特に、ウエーハを分割する切削ブレードに有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 切削装置
71 切削ブレード
71a 第1の凹み部
71b、71d 平面部(平面)
71c 第2の凹み部
W ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8