【文献】
加工用馬鈴薯のキュアリングおよび貯蔵中の物性変化,農業機械学会誌,1998年 4月 1日,Vol. 60, No. Supplement,pp. 149 - 150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<貯蔵システム1>
本発明の実施形態を、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態に係る貯蔵システム1を示す系統図である。
図2は、冷凍システム20、ユニット部80、および第1貯蔵庫11を示す系統図である。
図3は、冷凍システム20および第5貯蔵庫15を示す系統図である。
図3では、理解の容易のため、ヒーティングライン56は省略する。本実施形態に係る貯蔵システム1において貯蔵される農産物としては、特に限定されないが、例えば馬鈴薯を挙げることができる。
【0013】
本実施形態に係る貯蔵システム1は、
図1〜
図3に示すように、農産物を貯蔵する8つの貯蔵庫10と、冷凍システム20と、ユニット部80と、制御部90と、を有する。
【0014】
貯蔵庫10は、
図1に示すように、農産物に対して、キュアリング、低温貯蔵、および加温の3通りの運用を行うことが可能な第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14(貯蔵庫に相当)と、低温貯蔵のみの運用を行うことが可能な第5貯蔵庫15〜第8貯蔵庫18と、を有する。
【0015】
第1貯蔵庫11は、第5貯蔵庫15の上方に配置され、第2貯蔵庫12は、第6貯蔵庫16の上方に配置され、第3貯蔵庫13は、第7貯蔵庫17の上方に配置され、第4貯蔵庫14は、第8貯蔵庫18の上方に配置される。
【0016】
第2貯蔵庫12、第3貯蔵庫13、および第4貯蔵庫14は、第1貯蔵庫11と同様の構成であるため、代表して第1貯蔵庫11の構成を説明する。
【0017】
第1貯蔵庫11の内部は、
図2に示すように、差圧壁11Aによって区分けされている。ここで差圧壁11Aとは、壁の両側の圧力差によって、高圧側から低圧側に向けて、気体が移動する壁を意味する。本実施形態では、差圧壁11Aの右側の領域が左側の領域に対して高圧となり、右から左に向けて、気体が移動する。
【0018】
差圧壁11Aの左側の領域には、ユニット部80が配置されている。また、差圧壁11Aの右側の領域には、複数のコンテナCが配置されており、コンテナCの内部に、農産物が配置されている。第1貯蔵庫11の上方には、送風ダクト11Bが配置されている。
【0019】
このように構成された第1貯蔵庫11において、ユニット部80からの冷風または温風は、送風ダクト11Bに取り込まれる。そして、送風ダクト11Bに取り込まれた冷風または温風は、差圧壁11Aの右側の領域において第1貯蔵庫11内に供給されて、差圧壁11Aの右側の領域を、冷却、加温、または除湿する。そして、差圧壁11Aの右側の領域に送風された冷風または温風は、差圧壁11Aを介して、差圧壁11Aの左側の領域に戻される。
【0020】
第6貯蔵庫16、第7貯蔵庫17、および第8貯蔵庫18は、第5貯蔵庫15と同様の構成であるため、代表して第5貯蔵庫15の構成を説明する。
【0021】
第5貯蔵庫15は、
図3に示すように、内部に冷却用熱交換器15Aが設けられる。冷却用熱交換器15Aは、後述する循環ライン30と連結されている。また、第5貯蔵庫15の内部には、送風ダクト15Bおよび複数のコンテナCが配置されており、コンテナCの内部に、農産物が配置されている。
【0022】
このように構成された第5貯蔵庫15では、冷却用熱交換器15Aにおいて熱交換された冷風は、送風ダクト15Bを介して、第5貯蔵庫15内を冷却する。
【0023】
次に、
図2、
図3を参照して、冷凍システム20の構成について説明する。冷凍システム20は、
図2、
図3に示すように、CO
2冷媒が循環する循環ライン30と、CO
2冷媒を貯留するためのCO
2受液器40と、アンモニア冷媒が循環するアンモニア冷凍サイクル50と、冷却塔60と、を有する。
【0024】
循環ライン30は、CO
2冷媒が循環するように構成されている。循環ライン30は、
図2、
図3に示すように、CO
2受液器40から、ユニット部80の冷却用熱交換器81または第5貯蔵庫15の冷却用熱交換器15Aに、液状のCO
2冷媒を送るCO
2送りライン31と、ユニット部80の冷却用熱交換器81または第5貯蔵庫15の冷却用熱交換器15Aから出てくる気液混合のCO
2冷媒をCO
2受液器40に戻すCO
2戻りライン32と、ガス化したCO
2冷媒を再液化する再液化ライン33と、を有する。
【0025】
CO
2送りライン31は、
図2、
図3に示すように、CO
2受液器40の下方に接続されている。また、CO
2戻りライン32は、
図2、
図3に示すように、CO
2受液器40の上方に接続されている。
【0026】
また、CO
2送りライン31には第1ポンプP1が設けられ、第1ポンプP1によってCO
2受液器40内の液状のCO
2冷媒は、ユニット部80の冷却用熱交換器81または第5貯蔵庫15の冷却用熱交換器15Aに流れる。第1ポンプP1の駆動は、制御部90によって行われる。
【0027】
再液化ライン33は、CO
2受液器40の上方に接続されている。CO
2受液器40内のガス状のCO
2冷媒は、再液化ライン33を通る際に、後述するアンモニア冷凍サイクル50の熱交換器51によって再液化される。そして、再液化された液状のCO
2冷媒は、CO
2受液器40に戻る。
【0028】
アンモニア冷凍サイクル50は、アンモニア冷媒が循環する。アンモニア冷凍サイクル50は、ガス状のCO
2冷媒を冷却して液化する。アンモニア冷凍サイクル50は、
図2、
図3に示すように、蒸発器としての熱交換器51と、圧縮機である冷凍機52と、凝縮器53と、アンモニア受液器54と、膨張弁55と、ヒーティングライン56と、を有する。
【0029】
熱交換器51において、ガス状のCO
2冷媒の熱により蒸発したアンモニア冷媒ガスは冷凍機52によって圧縮され、高温高圧のアンモニア冷媒ガスは凝縮器53において冷却されて凝縮し、液化したアンモニア冷媒液はアンモニア受液器54に貯留され、アンモニア受液器54のアンモニア冷媒液は膨張弁55に送られて膨張され、低圧のアンモニア冷媒液は熱交換器51に送られてガス状のCO
2冷媒の冷却に用いられる。なお、凝縮器53には、冷却塔60で冷却された温ブラインが第2ポンプP2によって循環するようになっている。
【0030】
ヒーティングライン56は、ユニット部80の加温用熱交換器82と連結されている。ヒーティングライン56には、冷凍機52の廃熱を利用して加温された温ブラインが循環するようになっている。この温ブラインは、冷却塔60から供給される。温ブラインとしては、例えば、凍結点がおよそ−27℃に調整されたアルコール系ブラインを用いることができる。冷却塔60から供給される温ブラインは、第2ポンプP2によって、ユニット部80の加温用熱交換器82に供給される。第2ポンプP2の駆動は、制御部90によって行われる。
【0031】
ユニット部80は、
図2に示すように、冷却用熱交換器81および加温用熱交換器82を有する。ユニット部80は、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14を冷却、加温、または除湿することができる。ユニット部80は、
図1、
図2に示すように、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内に配置されている。ユニット部80の上方には、ファンFが配置されており、ファンFによって、送風ダクト11Bに冷風または温風が供給される。
【0032】
冷却用熱交換器81には、
図2に示すように、デフロストヒータ70が備え付けられている。デフロストヒータ70は、加温用熱交換器82のバックアップ用に設けられれる。すなわち、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14における加温が、冷凍機52の廃熱による温ブラインのみでは不足する場合に、デフロストヒータ70が用いられる。
【0033】
制御部90は、ユニット部80における冷却、加温、または除湿を制御する。制御部90は、第1ポンプP1および第2ポンプP2の駆動を制御する。制御部90は、例えば、CPUである。
【0034】
<貯蔵システム1の使用方法>
次に、
図1、
図4、
図5を参照して、本実施形態に係る貯蔵システム1の使用方法について説明する。
図1は、キュアリングを行う際の運転フローを示す系統図である。
図4は、低温貯蔵を行う際の運転フローを示す系統図である。
図5は、加温運転(ヒートショック)を行う際の運転フローを示す系統図である。
【0035】
キュアリング、低温貯蔵、および加温の運用は、
図1、
図4、
図5に示すように、貯蔵庫10のうち、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14において行われる。一方、第5貯蔵庫15〜第8貯蔵庫18では、低温貯蔵のみが行われる。第5貯蔵庫15〜第8貯蔵庫18には、
図1に示すように、冷却用熱交換器15Aによって、冷風が供給される。第5貯蔵庫15〜第8貯蔵庫18内の温度は例えば2℃である。
【0036】
本実施形態の使用方法において、キュアリングは9月の初旬からおよそ3週間行われ、その後、およそ6か月低温貯蔵が行われ、その後、加温によるヒートショックがおよそ2週間行われ、その後、およそ1か月間低温貯蔵が行われる。なお、各工程が行われる期間や時期はこれに限定されない。
【0037】
以下、農産物を、キュアリング、低温貯蔵、および加温(ヒートショック)する場合の運転フローについてそれぞれ説明する。
【0038】
まず、
図1を参照して、農産物をキュアリングする場合の、貯蔵システム1の運転フローについて説明する。
【0039】
農産物をキュアリングする際、制御部90は、第1ポンプP1を駆動させて、循環ライン30にCO
2冷媒を循環させる。この結果、ユニット部80の冷却用熱交換器81において熱交換が行われ、冷風が供給される。また、制御部90は、第2ポンプP2を駆動させて、ヒーティングライン56に温ブラインを循環させる。この結果、ユニット部80の加温用熱交換器82において熱交換が行われ、温風が供給される。
【0040】
この結果、冷風によって、ユニット部80近傍の空気を冷却して、湿気を水滴に変え結露させて排除することで、乾燥した空気を放出して、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内の除湿が行われる。これによって、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14に貯蔵されている農産物はキュアリングされる。キュアリングが行われる際の第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内の温度は例えば10℃であって、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内の湿度はおよそ65%RHである。
【0041】
次に、
図4を参照して、低温貯蔵を行う際の運転フローについて説明する。
【0042】
農産物を低温貯蔵する際、制御部90は、第1ポンプP1を駆動させて、循環ライン30にCO
2冷媒を循環させる。この結果、ユニット部80の冷却用熱交換器81において熱交換が行われ、冷風が供給される。また、制御部90は、第2ポンプP2の駆動を停止させる。
【0043】
冷却用熱交換器81から供給される冷風は、ファンFによって、送風ダクト11Bに送られる。そして、送風ダクト11Bから第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内に送られ、庫内は冷却される。低温貯蔵が行われる際の第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内の温度は、例えば2℃である。
【0044】
次に、
図5を参照して、加温運転(ヒートショック)を行う際の運転フローについて説明する。
【0045】
農産物を加温してヒートショックを行う際、制御部90は、第1ポンプP1を停止させて、循環ライン30にCO
2冷媒が循環することを停止させる。また、制御部90は、第2ポンプP2を駆動させて、ヒーティングライン56に温ブラインを循環させる。この結果、ユニット部80の加温用熱交換器82において熱交換が行われ、温風が供給される。
【0046】
加温用熱交換器82から供給される温風は、ファンFによって、送風ダクト11Bに送られる。そして、送風ダクト11Bから第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内に送られ、庫内は加温される。この結果、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14に貯蔵されている農産物に対してヒートショックが行われる。ヒートショックが行われる際の第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内の温度は、例えば15〜20℃である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る貯蔵システム1は、農産物に対して、キュアリング、低温貯蔵、および加温の3通りの運用を行うことが可能な第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14と、冷却用熱交換器81および加温用熱交換器82が組み込まれ、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14内を冷却、加温、または除湿可能なユニット部80と、冷却用熱交換器81に接続され、CO
2冷媒が循環する循環ライン30と、内部を循環するアンモニア冷媒によって、ガス状のCO
2冷媒を冷却して再液化するアンモニア冷凍サイクル50と、加温用熱交換器82に接続され、アンモニア冷凍サイクル50の冷凍機52の廃熱を利用して加温された温ブラインが循環するヒーティングライン56と、ユニット部80における冷却、加温、または除湿を制御する制御部90と、を有する。このように構成された貯蔵システム1によれば、農産物を低温貯蔵する以外に、農産物の収穫時に発生した傷口を自然治癒するキュアリングや、農産物を加温することで発芽処理して、増株することのできるヒートショックを行うことができる。したがって、低温貯蔵以外の用途にも用いることのできる汎用性の高い貯蔵システム1を提供することができる。
【0048】
また、冷却用熱交換器81には、デフロストヒータ70が取り付けられている。このように構成された貯蔵システム1によれば、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14における加温が、冷凍機52の廃熱による温ブラインのみでは不足する場合に、デフロストヒータ70を用いることができる。
【0049】
また、以上説明したように本実施形態に係る貯蔵システム1の使用方法は、農産物をキュアリングする際、制御部90は、冷却用熱交換器81にCO
2冷媒を流通させるとともに、加温用熱交換器82に温ブラインを流通させることによって、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14を除湿する。また、農産物を低温貯蔵する際、制御部90は、冷却用熱交換器81にCO
2冷媒を流通させるとともに、加温用熱交換器82における温ブラインの流通を停止することによって、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14を冷却する。また、農産物を加温する際、制御部90は、冷却用熱交換器81におけるCO
2冷媒の流通を停止するとともに、加温用熱交換器82に温ブラインを流通させることによって、第1貯蔵庫11〜第4貯蔵庫14を加温する。この貯蔵システム1の使用方法によれば、農産物を低温貯蔵する以外に、農産物の収穫時に発生した傷口を自然治癒するキュアリングや、農産物を加温することで発芽処理して、増株することのできるヒートショックを行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、貯蔵庫10は8個設けられたが、設けられる貯蔵庫の個数はこれに限定されない。
【0052】
また、上述した実施形態では、冷却用熱交換器81にデフロストヒータ70が取り付けられていたが、冷却用熱交換器81にデフロストヒータが取り付けられていなくてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、8つの貯蔵庫のうち4つの貯蔵庫において、キュアリング、低温貯蔵、および加温の3通りの運用を行うことが可能であった。しかしながら、これに限定されず、8つの貯蔵庫すべてにおいて、キュアリング、低温貯蔵、および加温の3通りの運用を行うことが可能であってもよい。