(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[007]
図1は、本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。リソグラフィ装置は、照明システムIL、サポート構造MT、基板テーブルWT、及び投影システムPSを備える。照明システムILは放射ビームBを調整するように構成されている。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを支持するように構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されている。基板テーブルWTは、基板W、例えばレジストコートウェーハを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板Wを正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続されている。投影システムPSは、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)に投影するように構成される。
【0011】
[008] 照明システムILは、放射を誘導し、整形し、又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0012】
[009] 照明システムILは放射源SOから放射ビームBを受ける。放射源SO及びリソグラフィ装置は、例えば放射源SOがエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームBは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOから照明システムILへと渡される。他の事例では、例えば放射源SOが水銀ランプの場合は、放射源SOがリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及び照明システムILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0013】
[010] 照明システムILは、放射ビームの角度強度分布を調整するためのアジャスタADを備えていてもよい。一般に、照明システムILの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ−outer及びσ−innerと呼ばれる)を調節することができる。また、照明システムILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。照明システムILを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0014】
[011] 本明細書で使用する「放射ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0015】
[012] サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを支持、すなわちその重量を支えている。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスMAが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。サポート構造MTは、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSなどに対して確実に所望の位置に来るようにできる。
【0016】
[013] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームBに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板Wのターゲット部分Cにおける所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームBに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分Cに生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0017】
[014] パターニングデバイスMAは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小型ミラーのマトリクス配列を使用し、ミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを付与する。
【0018】
[015] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電光学システム、又はその任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。
【0019】
[016] 本明細書で示すように、リソグラフィ装置は、(例えば透過マスクを使用する)透過タイプである。あるいは、リソグラフィ装置は、(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)反射タイプでもよい。
【0020】
[017] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ以上の他のテーブルを露光に使用している間に1つ以上のテーブルで予備工程を実行することができる。基板Wを保持する代わりに、追加のテーブルを少なくとも1つのセンサを保持するように構成することができる。少なくとも1つのセンサは、投影システムPSの特性を測定するためのセンサ、センサに対するパターニングデバイスMA上のマーカの位置を検出するためのセンサ、又は任意の他の種類のセンサとすることができる。追加のテーブルは、例えば投影システムPSの一部又はリソグラフィ装置の他の任意の部分を洗浄するためのクリーニング装置を含むことができる。
【0021】
[018] リソグラフィ装置は、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板Wの少なくとも一部が相対的に高い屈折率を有する液体、例えば水によって覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばパターニングデバイスMAと投影システムPSとの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増やすために当技術分野では周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板Wなどの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムPSと基板Wとの間に液体が存在するというほどの意味である。
【0022】
[019] 放射ビームBは、サポート構造MT上に保持されたパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMAによってパターン形成される。サポート構造MTを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(
図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、サポート構造MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合、(スキャナとは対照的に)サポート構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。
【0023】
[020] パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークP1、P2は、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分Cの間の空間に位置してもよい。基板アライメントマークP1、P2はターゲット部分Cの間の空間に配置され、スクライブラインアライメントマークとして知られている。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークM1、M2をダイ間に配置してもよい。
【0024】
[021] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0025】
[022] 第1のモード、ステップモードでは、サポート構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに付与されたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0026】
[023] 第2のモード、スキャンモードでは、サポート構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。サポート構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分Cの(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分Cの(スキャン方向における)高さが決まる。
【0027】
[024] 第3のモードでは、サポート構造MTはプログラマブルパターニングデバイスMAを保持しながら本質的に定常に維持され、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、基板テーブルWTは移動又はスキャンされる。このモードでは、一般にパルス放射源が使用され、プログラマブルパターニングデバイスMAは、基板テーブルWTの各動きの後、又はスキャン中の連続する放射パルス間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述のようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用可能である。
【0028】
[025] リソグラフィ装置はさらに、上記のアクチュエータ及びセンサを制御する制御ユニットを備える。制御ユニットはまた、リソグラフィ装置の動作に関連する所望の計算を実行する信号処理及びデータ処理能力を備える。実際には制御ユニットは、多くのサブユニットのシステムとして実現されることになる。各サブユニットは、リソグラフィ装置内のコンポーネントのリアルタイムのデータ収集、処理及び/又は制御を処理することができる。例えば1つのサブユニットは、第2のポジショナPWのサーボ制御に特化していてよい。別個のサブユニットは、ショートストロークモジュール及びロングストロークモジュール、又は異なる軸を取り扱うことができる。別のサブユニットは、位置センサIFの読み出しに特化していてよい。リソグラフィ装置の全体制御は、サブユニットと、オペレータと、リソグラフィ製造プロセスに関与する他の装置と通信する中央処理ユニットによって制御されてよい。
【0029】
[026] 上述した使用モードの組み合わせ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0030】
[027] 本発明によれば、パターン付与された放射ビームは投影システムPSを横断し、これによってパターニングデバイスMAと基板W上のターゲット部分Cとの間で様々な変換(例えば縮小)を受ける。このような変換は通常、ミラー及び/又はレンズなどの様々な光学素子を備え得る投影システムPSによって実現される。これによって、パターンをターゲット部分に転写する間にそのような光学素子の相対位置が変化する場合、基板により受光されるパターン付与された放射ビームの変形又は変位が生じる可能性がある。このような変形又は変位はオーバーレイエラーを引き起こす可能性がある。このエラーを回避又は軽減するために、本発明によるリソグラフィ装置はさらに、センサフレームと、センサフレームに対する光学素子の位置を測定するための位置測定システムと、を備える。したがって、このような構成では、センサフレームを光学素子の基準位置として使用できることに留意されたい。光学素子の位置をモニタすることによって、実際の位置と所望の位置との相違を検出することができ、これに応じて適切な措置を講じることができる。一例として、この相違がパターン付与された放射ビームの変位を引き起こすことが知られている場合、この変位は、基板Wの位置を制御するポジショナPWが考慮することができる。代替的又は付加的に、光学素子の位置は、1つ以上の光学素子の位置誤差を減らすために、(例えば光学素子に力を及ぼすことによって)制御することができる。本発明の発明者らは、上記のアプローチにはまだ欠点があり得ることに気付いた。具体的には、センサフレーム全体を基準位置に維持することは困難である可能性があることに気付いた。既知の装置で使用されるセンサフレームがこれに伝達される力によって変形する可能性があることに気付いた。なお、このようなセンサフレームは一般に、振動絶縁体によってベース又は分離フレームに取り付けられてよい。しかしながら、このような絶縁体も振動の一部を伝え、センサフレームを変形させる可能性がある。この影響を緩和する方法の1つは、それぞれが投影システムの様々な光学素子の位置をモニタするための位置測定システムを備えた複数の分離センサフレームを使用することである。しかしながら、このような構成には比較的多くの振動絶縁体が必要になる可能性がある。
【0031】
[028] 代替的に、本発明の第1の態様によれば、センサフレームを結合システムにより結合されるN個(NはN>1の整数)のサブフレームに分割する構成が提案される。また、N個のサブフレームの相対位置は、位置測定システムによってモニタされる。
【0032】
[029]
図2は、本発明の第1の態様によるリソグラフィ装置の一部を概略的に示している。
図2は、2つの光学素子200.1及び200.2を備えた投影システム200を概略的に示す。
図2はさらに、光学素子200.1、200.2を支持するように構成された力フレーム210を示す。このような支持は、例えば図示された実施形態における1つ以上の振動絶縁体210.1又はアクチュエータ210.2を使用して実現されてよく、リソグラフィ装置はさらに、第1のサブフレーム220.1と、概略的にダンパ−バネ結合体として示されている結合システム220.3により第1のサブフレーム220.1と結合された第2のサブフレーム220.2と、を備えたセンサフレーム220を備える。示されている実施形態では、リソグラフィ装置はさらに、センサフレーム220に対する光学素子200.1、200.2の位置を測定するための第1の位置測定システム240と、サブフレーム220.1、220.2の相対位置を測定するための第2の位置測定システム250と、を備える。示されている実施形態では、力フレーム210は、振動絶縁体270によって装置のベースフレーム260に取り付けられる。さらにセンサフレーム220は、図から分かるように振動絶縁体280によって力フレームに取り付けられる。
【0033】
[030] 示されている実施形態では、センサフレーム220に対する光学素子200.1及び/又は200.2の変位は、位置測定システム240によってモニタすることができる。このような位置測定システムは、例えば干渉計ベースの測定システム又はエンコーダベースの測定システムを含んでよい。静電容量又は誘導測定システムが同様に考慮されてよい。
【0034】
[031] 示されている実施形態では、センサフレーム220は、結合システム220.3により結合された2つのサブフレームを含む。ある実施形態では、結合システムは、例えばバネとダンパとを備える。サブフレームを結合することは、複数の独立センサフレームを有するシステムと比較して以下の利点の1つ以上を提供する。
センササブフレームを結合することによって、サブフレームの相対位置をモニタする位置測定システム250の測定範囲を比較的小さく保つことができる。一般に、1μmより小さい測定範囲、典型的には約10nmで足りる。
サブフレームを互いに接続された状態に保つことによって、センサフレーム220全体の支持は、実質的に剛性のセンサフレームを支持するのに必要なのと実質的に同数の振動絶縁体280によって実現することができる。
センサフレーム220を複数のサブフレームに分割し、サブフレームを接続することによって、センサフレームの変形をより容易に制御又はモニタできる構成が実現される。センサフレームを分割しサブフレームを接続することによって、例えば力フレーム210から伝達された振動力によって、より制御された又は予測可能な方法でセンサフレームを変形させる。具体的には、結合システム220.3にある程度の柔軟性を持たせることによって、サブフレーム220.1及び220.2は実質的に剛体挙動を示すことになる、すなわち実質的に変形することなく変位(例えば並進及び回転)することができる。換言すれば、センサフレームの変形は、結合システムがサブフレームを接続することに起因して結合システム220.3に集中する可能性がある。結果として、センサフレーム全体の挙動がより予測可能つまり制御可能になる可能性がある。本発明の第1の態様によれば、センサフレーム220のサブフレームの相対位置を測定するための位置測定システム250が提供される。サブフレームが結合システムによって結合されているため、位置測定システム250は小さい動作範囲しか必要としない。適切な位置測定システムには、例えばエンコーダベースの測定システム、静電容量又は誘導測定システムが含まれてよい。ある実施形態では、位置測定システム250は、例えば回転自由度を含む複数の自由度でサブフレームの相対位置を測定するように構成される。ある実施形態では、位置測定システム250は、サブフレームの相対位置を6自由度(6DOF)で測定するように構成される。サブフレームの相対位置が知られている場合、光学素子200.1、200.2の位置は、サブフレームに対する光学素子の位置を測定する位置測定システム240の測定結果に基づいて正確に決定することができる。これらの位置又は相対位置が所望の位置から外れている場合、適切な制御動作をとることができる。そのような制御動作には、例えば光学素子の1つ以上、及び/又はステージすなわちサポートMT又は基板テーブルWTの一方又は両方の変位を制御することが含まれてよい。
【0035】
[032] したがって、本発明のある実施形態において、リソグラフィ装置は、装置の動作パラメータ又は状態を制御するように構成された制御ユニット300を備える。このような制御ユニット300は、例えばコントローラ、マイクロプロセッサ、コンピュータなどとして具現化されてよい。示されている実施形態では、制御ユニット300は入力信号310を受信するための入力端子300.1を備える。ある実施形態では、入力端子300.1は、例えば位置測定システム240及び250の位置測定信号を受信するように構成されてよく、これによって制御ユニット300は、受信した測定信号に基づいて投影システム200の光学素子200.1、200.2の位置を決定するように構成することができる。制御ユニットは、例えばこの位置情報に基づいて制御信号を生成し、この制御信号320を制御ユニット300の出力端子300.2を介して出力することができる。このような制御信号320は、例えばアクチュエータ210.2の動作を制御するための制御信号であってよく、これによって光学素子200.1、200.2の位置を制御する。代替的又は付加的に、本発明の実施形態で使用される制御ユニット300は、リソグラフィ装置における基板の位置決め、具体的には投影システム200を介して基板に投影されたパターン付与された放射ビームに対する基板の位置決めを制御するための制御信号を決定するように構成されてよい。こうすることによって、投影システム200の1つ以上の光学素子の変位に起因するパターン付与された放射ビームの変位を補正することができる。
【0036】
[033] ある実施形態では、結合システム220.3は、機械的バネとパッシブダンパとを備える。
本発明によれば、サブフレーム間の結合システムは、好ましくはセンサフレームを例えば3つ又は4つなどの限られた数のサポートで支持できるほど十分な剛性を有する必要がある。これと同時にサブフレーム間の結合は、サブフレームの最低固有振動数より低い振動数である必要がある。一般的には、単体センサフレームの第1の固有振動数は、例えば200Hz以上であってよい。フレームを上記のように、例えば2つのサブフレームに分割することによって、2つのサブフレームの第1の固有振動数は250Hz以上になる。一方、結合されたフレームの振動絶縁体によるサスペンションは、例えば3〜15Hzになるように設計される。一般的には2つのサブフレーム間の結合システムの固有振動数は、これらの値を考慮に入れて20〜250Hz、例えば50〜150Hzの範囲内に設計されてよい。この振動数での非減衰共振挙動を回避するために、少なくとも数パーセント、通常は約5%の制振が好ましい可能性がある。
【0037】
[034] 本発明のある実施形態では、センサフレームのサブフレームを接続するのに使用される結合システムは、アクティブ制振システムを備える。このようなアクティブ制振システムは、例えば結合システムにより接続されたサブフレームの相対変位を決定するように構成された変位センサと、この変位に対抗するためにサブフレームに力を及ぼすアクチュエータと、を備えてよい。ある実施形態では、変位センサとアクチュエータは共に圧電コンポーネントによって実現される。代替的に、アクティブ制振システムは、位置測定システム250により行われた位置測定に基づいて制御信号を決定するように構成された制御ユニット300からの制御信号を受信するアクチュエータのみを備える。
【0038】
[035] 示されている実施形態では、センサフレーム220は、振動絶縁体280によって力フレーム210で支持される。代替的な構成が同様に考慮されてよいことを指摘することができる。
【0039】
[036] そのような代替的な構成のうちの2つが
図3a及び
図3bに概略的に示されている。
図3aに示す第1の代替案では、センサフレーム220は、力フレーム210がベースフレーム260に取り付けられるのと同様の方法でベースフレーム260に取り付けられてよい。
図3bに示す第2の代替案では、センサフレーム220は、力フレームから分離した中間フレーム290と呼ばれることもある、例えば力フレームを支持する振動絶縁体270と類似し得る振動絶縁体272により取り付けられた分離フレーム290に振動絶縁体280によって取り付けられる。
図3bに示すセンサフレーム220は、中間フレーム290並びに振動絶縁体272及び280によって、
図2に示すのと同様の方法で分離されてよい。
図3bの構成の追加の利点は、センサフレーム220がもはや力フレーム210で直接支持されていないために、力フレーム210とセンサフレーム220の分離が改善されることである。この結果、センサフレーム220の外乱が少なくなる。示されている実施形態について、中間フレーム290がさらに、
図1に示すポジショナPWなどの位置決めデバイスの位置測定システムの取り付けに使用できることをさらに指摘することができる。一例として、中間フレーム290に、基板テーブル、例えばポジショナPWにより位置決めされた
図1に示す基板テーブルWTに向けてレーザビームを照射するように構成された干渉測定システムを取り付けることができる。
代替的に、エンコーダベースの測定システムの場合、ポジショナPWにより位置決めされた基板テーブルWT上に取り付けられた光エンコーダセンサと協働するように構成された1又は2次元エンコーダ格子が中間フレーム290に取り付けられてよい。
【0040】
[037]
図2、
図3a及び
図3bに示す実施形態では、センサフレーム220はN個のサブフレームに分割されるため、フレームに与えられた振動により生じたセンサフレーム220の変形をより上手く制御することができる。
【0041】
[038] 発明者らは、センサフレームの変形の原因が他にも存在する可能性があることに気付いた。示されている実施形態では、センサフレーム220は、振動絶縁体によって力フレーム210(
図2)、ベースフレーム(
図3a)又は中間フレーム(
図3b)のいずれかに取り付けられる。そのような振動絶縁体は、例えば機械的バネを備えた機械システムであってよい。このようなバネベースのシステムは、センサフレームの所望のサスペンション振動数を得るために選択された並進方向(X,Y,Z)に特定の剛性を有するように設計されてよい。理想的には、回転方向に対する剛性がゼロで、移動方向間にクロストークがない振動絶縁体が求められる。しかしながら、実際にはそのようなクロストーク及び回転方向に対する非ゼロ剛性は、不可能ではないにしても実現困難な可能性がある。本発明の意義の範囲内で、このクロストーク及び非ゼロ剛性は寄生剛性と呼ばれる。この寄生剛性は、センサフレームをさらに変形させる可能性があるため最小限に抑えることが望ましい。当業者により理解されるように、支持フレーム(力フレーム、ベースフレーム又は中間フレームのいずれか)の変形又は移動の場合、このような変形はまた、寄生剛性に起因してセンサフレームの変形をもたらすであろう。この影響は特に、センサフレームが過剰決定された方法で、例えば4つ以上の振動絶縁体によって又は寄生剛性を有する振動絶縁体によって支持されている場合に現れる可能性がある。寄生剛性の発生に関して、例えばこのような寄生剛性はまた、非対角位置にゼロ以外の要素を有する剛性行列によって参照され得ることが指摘される可能性がある。
【0042】
[039] センサフレームの取り付け又は支持について、リソグラフィ装置のレイアウトにより課される物理的制約に起因して過剰決定された支持が必要になる可能性があることを指摘することができる。一例として、EUVベースのリソグラフィ装置の場合、投影システムは、その位置をモニタする必要がある複数のミラーを備えてよい。ミラーの特定のレイアウト、例えばサイズ及び配向は、投影システムの光学設計によって決定される。光学素子をモニタするのに使用されるセンサフレームは、パターン付与された放射ビームの軌道を含む光学設計を妨げないように設計されなければならない。
図4は、EUVベースのリソグラフィ装置で使用され得るセンサフレーム420を概略的に示している。示されているセンサフレーム420は略矩形形状であり、パターン付与された放射ビームが通過可能な開口420.1を有する。示されている実施形態では、センサフレーム420は4つの振動絶縁システムすなわち振動絶縁体430で支持される。振動絶縁体430は、例えば3Hzから15Hzの範囲内、好ましくは約6Hzのサスペンション振動数でセンサフレームを支持するように構成された機械的絶縁体であってよい。したがって、このようなセンサフレーム構成は、上記の寄生剛性に起因して誘発された、光学素子の位置基準であるセンサフレームの使用をいくらか不完全なものにする変形に悩まされる可能性がある。寄生剛性の影響に加えて、過剰決定された方法で取り付けられたセンサフレームに変形力が送られる可能性もあり、支持フレーム自体が変形する。例えばセンサフレームが4つの絶縁体で支持されている場合、絶縁体に寄生剛性が存在しない場合でも支持フレームのねじれ形状がセンサフレームへの力をもたらすであろう。
【0043】
[040] 本発明の第2の態様によれば、振動絶縁体、例えば振動絶縁体430の寄生剛性に起因するセンサフレームの変形は、そのような寄生剛性を有する振動絶縁体の数を減らし、振動絶縁体に対する配置が同一線上にない異なる場所になされる少なくとも1つの制御されたアクチュエータ力をセンサフレームにもたらすことによって回避又は軽減することができる。
【0044】
[041]
図5は、本発明の第2の態様によるリソグラフィ装置で使用可能な懸架されたセンサフレームの第1の実施形態を概略的に示している。
図5は、2つの振動絶縁体530により支持され、これに及ぼされる2つのアクチュエータ力540により制御されるセンサフレーム520を概略的に示す。
【0045】
[042] ある実施形態では、センサフレームに加えられるアクチュエータ力は、例えば垂直方向(Z方向)に配向された実質的に一方向の力である。
【0046】
[043] ある実施形態では、アクチュエータ力を生成するために使用されるアクチュエータは、永久磁石アクチュエータである。このようなアクチュエータは、一方向の力を生成する一方、作動方向と作動方向に垂直な方向の両方向に低い剛性を有するように構築されてよい。このような構成では、アクチュエータは、例えば永久磁石アセンブリと協働して所要の力を生成するように構成されたコイルアセンブリを備えてよい。
図2を参照すると、そのようなアクチュエータ装置のコイルアセンブリは、例えば力フレーム210に取り付けることができる一方、永久磁石アセンブリはセンサフレーム220に取り付けることができる。
【0047】
[044] このような電磁アクチュエータ、例えば永久磁石アクチュエータは、一般に非接触アクチュエータと解釈される、すなわちコイルアセンブリ及び永久磁石アセンブリは、ギャップ、例えばエアギャップによって分離される。このようなアクチュエータは通常、実質的にクロストークや寄生剛性なしに一方向の力を生成するのに最適である。より具体的には、永久磁石アクチュエータを3D動作範囲内で所望の力を生成するように設計してよく、これによって生成された力は、動作範囲内のコイルアセンブリと永久磁石アセンブリの相対位置に関係なく実質的に変わらない。
【0048】
[045] ある実施形態では、アクチュエータ力を生成するアクチュエータは、センサフレームを安定化させるように構成される。ある実施形態では、アクチュエータは、センサフレームが所望の振動数で懸架されるようにセンサフレームに力を及ぼすように構成されてよい。1つ以上の制御されたアクチュエータ力を加えることによって、振動絶縁体の数を減らすことができ、結果として振動絶縁体の寄生剛性の影響が低減する。
【0049】
[046] これは、例えばサブフレームの相対変位を測定することによって実現され、この相対変位を1つ以上のアクチュエータのコントローラへのフィードバックとして提供してよく、これによって1つ以上のアクチュエータが相対変位に対抗するためにサブフレームに力を及ぼすように制御することができる。そうすることによって、所望の大きさの「電子的な」堅牢性を実現することができる。
【0050】
[047] ある実施形態では、センサフレームは、2つの振動絶縁体だけで支持され、1つ以上のアクチュエータ力によって制御される。そのような実施形態では、2つの振動絶縁体は、センサフレームを実質的にバランスよく支持するように配置されてよい。そうすることによって、アクチュエータによりセンサフレームに及ぼされる所要の制御力を最小限に抑えることができる。このような状況は、センサフレームの重心の水平面上への投影が振動絶縁体の支持位置を結ぶ線の水平面上への投影の上にくるように振動絶縁体を位置決めすることによって実現可能である。
図6は、本発明によるセンサフレームを支持及び制御するための振動絶縁体及びアクチュエータの場所の2つの可能な配置を概略的に示している。左側の実施形態では、センサフレーム620は、フレームの縦軸に沿って配置された2つの振動絶縁体630で支持される。フレーム620の位置はさらに、「X」で印を付けられた位置640でフレームに及ぼされる2つのアクチュエータ力によって制御される。右側の実施形態では、振動絶縁体は縦軸と垂直な軸上にある。なおいずれの実施形態でも、振動絶縁体630は、センサフレーム620の重心650の水平面(すなわちXY平面)への投影が振動絶縁体の支持位置630.1を結ぶ線660の水平面上への投影の上にくるように位置決めされる。
【0051】
[048] ある実施形態では、本発明の第1及び第2の態様を組み合わせてよい。そのような構成では、センサフレームは、N個(NはN>1の整数)のサブフレームに分割され、M個(Mは1≦M<3の整数)の振動絶縁体及び少なくとも1つの垂直に方向付けられたアクチュエータ力で支持されてよい。
【0052】
[049] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板Wは、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。さらに基板Wは、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0053】
[050] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスMA内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組み合わせを適用することでレジストは硬化する。パターニングデバイスMAはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0054】
[051] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0055】
[052] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、説明されている本発明に修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。