【実施例】
【0046】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
Supernovaシステムの幅広い活用を可能とするために、発明者らは、体系的かつ包括的にSupernovaによる標識の性質を評価した。Supernovaによる標識の疎ら具合と明度を見積もるため、発明者らは、第2/3層(L2/3)の皮質ニューロンに、Flpe/FRTベースのSupernova GFP(Flpe−SnGFP)ベクターセット(TRE−FlpeとCAG−FRT−stop−FRT−GFP−tTA)を胎生期15.5(E15.5)に、in utero electroporation(以下、IUEともいう。)により導入した(
図1(A)参照。)。出生後日数22(P22)のマウスの脳から冠状切片を作製し、蛍光観察を行った。
図2(A)上段は、低倍率の蛍光画像を示す。遺伝子導入した神経細胞のうち、疎らな小集団がGFP陽性であった(1.2%±0.2%、n=5マウスを用いた。)。
図2(B)上段は、
図2(A)上段における四角dの高拡大の蛍光画像を示す。
図2(A)下段のScale barは、50μmを示す。
図2(B)下段のScale barは、100μmを示す。
図2(C)及び
図2(D)は、
図2(B)上段における長方形e、fの高拡大の蛍光画像を示す。
図2(C)のScale barは、10μmを示す。
図2(D)上段のScale barは、50μmを示す。
図2(D)下段のScale barは、10μmを示す。
図2(B)に示される標識されたL2/3錐体神経細胞(樹状突起棘(
図2(C)参照。)、軸索枝(
図2(D)上段参照。)、軸索ボタン(
図2(D)下段参照。)を含む。)の形態を十分視覚化できるほど、Supernovaによる標識は、明るいことが確認された。
また、Flpe−SnGFPとともに導入されたCAG−RFPは、密集した多くの細胞内で発現が確認される一方、Flpe−SnGFPは、1個の細胞レベルで疎らな発現が確認された。
【0048】
[実施例2]
発明者らは異なる発生段階及び成体期において、Flpe−SnGFPとCAG−RFPを共に遺伝子導入することにより、Supernovaによる標識の疎らさを定量的に評価した。全ての遺伝子導入細胞を標識するため、CAG−RFPを、TRE−Flpeベクターと共に導入した。P8、P22、2か月齢(2M)、4Mのマウスの脳から冠状切片を作製し、蛍光観察を行い、Flpe−SnGFP陽性神経細胞とRFP陽性神経細胞との比率を評価した。
図3(A)は、Flpe−SnGFPで標識された、L2/3の皮質ニューロンの蛍光画像を示す。導入に用いたTRE−Flpeベクターの終濃度は、5ng/μLだった。蛍光画像の下の数字は、各月齢でのFlpe−SnGFPラべリングの疎ら度を示す(P8、P22、2Mのマウスにおいては、n=5で算出した。4Mのマウスにおいては、n=3で算出した。)。疎ら度は、Flpe−SnGFP陽性細胞数の遺伝子導入細胞であるRFP陽性細胞数に対する比として算出された。
図3(B)は、各月齢のマウスにおける疎ら度を示したグラフである。各菱形は、一個体を示す。バーは、平均値を示す。Supernovaラべリングの疎らさと明るさは、初期の出生後段階から成人期にかけて一定であることが確認された。
図3のScale barは、100μmを示す。
【0049】
Supernovaベクター組成物におけるTRE−SSRベクターの濃度を変えることにより、標識の疎らさを調節できる可能性がある。この可能性を確かめるため、異なる濃度のTRE−Flpeベクター(5、50、500ng/μL)を含むFlpe−SnGFPベクター組成物を用意し、各組成物をE15.5にIUEを用いて、L2/3の皮質ニューロンに導入した。CAG−RFPは、遺伝子導入した神経細胞を標識するために、共導入した。
図4(A)は、Flpe−SnGFPで標識された、L2/3の皮質ニューロンの蛍光画像を示す。導入したTRE−Flpeベクターの終濃度は、それぞれ5ng/μL(
図4(A)左)、50ng/μL(
図4(A)中央)、500ng/μL(
図4(A)右)であった。P8のマウスの脳から冠状切片を作製した。
図4(B)は、導入したTRE−Flpeベクターの終濃度における疎ら度を示したグラフである(各グループのマウスにおいて、n=5で算出した。)。各菱形は、一個体を示す。バーは、平均値を示す。5ng/μLのTRE−Flpeベクターを用いたとき、非常に少ないRFP陽性神経細胞がSnGFPで標識された(1.4±0.1%、n=5のマウスを用いた。)。50ng/μLのTRE−Flpeベクターを用いたとき、およそ半分のRFP陽性神経細胞がSnGFPで標識された(48.0±5.4%、n=5のマウスを用いた。)。500ng/μLのTRE−Flpeベクターを用いたとき、ほぼ全てのRFP陽性神経細胞がSnGFPで標識された(98.7±2.5%、n=5のマウスを用いた。)。
これらのデータから、TRE−SSRベクターの濃度を変えることにより、Supernovaにより標識された神経細胞の疎らさを調節可能であることが確認された。
図4のScale barは、100μmを示す。
【0050】
[実施例3]
今日、多くのCre発現マウス系統が報告され、領域特異的又は細胞種特異的なノックアウトマウスを作製することにより、脳の理解に貢献している。Supernovaが、Cre発現脳領域に適用可能かどうかを調べるため、Flpe−SnGFPベクターをEmx1Cre knock−in(KI)マウスの皮質に導入した。組み換えを示すものとして、CAG−loxP−stop−loxP−RFP−pA(CAG−LSL−RFP)ベクターを、Emx1Cre knock−in(KI)マウスの皮質に共導入したところ、神経細胞は、密に標識されることが確認された。一方、Flpe−SnGFPベクターをCAG−LSL−RFPと共に導入したところ、少数の皮質ニューロンのみがGFPで標識され、SnGFP標識神経細胞の樹状突起の形態が鮮明に可視化されたことが確認された(
図5(A)参照。)。DreをベースとしたSupernova GFP(Dre−SnGFP)ベクターセット(TRE−Dre及びCAG−rox−stop−rox−tTA)においても同様の結果を示した。IUEは、E14.5で行われ、P8で脳を解体し、冠状切片を作製した。
図5(B)は、Flpe−SnGFPベクター及びCAG−LSL−RFPで標識した神経細胞における標識メカニズムを示した図である。Flpe/FTR及びDre/RoxをベースとしたSupernovaシステムにおいては、Cre発現マウスにおける神経細胞の疎らな標識が可能であることが確認された。
図5のScale barは、100μmを示す。
【0051】
[実施例4]
疎らな細胞集団における遺伝子の同時多重発現が可能かどうかを確かめるため、FlpeをベースとしたSupernovaを用いて、RFP及びGFPを高い共発現効率で発現させることにより、神経細胞を疎らに標識した。具体的には、SnGFP及びSnRFPを、E15.5に、IUEを用いて皮質ニューロンに共に導入した(TRE−Flpe、CAG−FSF−GFP−tTA、及びCAG−FSF−RFP−tTA)。P8で脳を解体し、冠状切片を作製し、蛍光観察を行った(
図6(A)参照)。P8で、ほとんどの標識された神経細胞はGFP及びRFPの両方を発現することが確認された(RFP/GFP=51/53細胞、GFP/RFP=51/51細胞。n=5のマウスを用いた。)。
CreをベースとしたSupernovaシステムを用いて、核移行シグナルを融合させたRFP(SnnlsRFP)、及びGFP(SnGFP)を、皮質ニューロンに、疎らに共発現させた。P4で脳を解体し、冠状切片を作製し、蛍光観察を行った(
図6(B)参照。)。
また、CreをベースとしたSupernovaシステムを用いて、E14.5にSnRFP及びSupernova PSD(シナプス後肥厚部タンパク質)95−GFP(SnPSD95−GFP)をIUEによりP16体性感覚皮質に遺伝子挿入し、接線方向の切片を作製し、蛍光観察を行った。
図6(C)上は、低倍率の蛍光像を示し、
図6(C)下は、
図6(C)上の四角形の高倍率拡大像を示す。樹状突起棘は、RFP及びPSD95−GFPで共標識された。
図6(A)及び(B)のScale barは、100μmを示し、
図6(C)のScale barは、25μmを示す。
実施例4によれば、Supernovaを用いることにより、複数の蛍光タンパク質による1個の細胞の多重染色が可能であることが確認された。
【0052】
[実施例5]
発明者らは、系統的かつ定量的に、マウスにおけるloxPが導入された内在性遺伝子のノックアウトにおける、CreをベースとしたSupernovaの効率及び特異性を分析した。loxPが導入されたマウスを用いて、CreをベースとしたSupernovaを介して、標識した細胞特異的に遺伝子をノックアウトした。
図7(A)は、Supernovaを介した遺伝子ノックアウトの模式図を示す。
SnRFPで標識した海馬CA1神経細胞における1個の細胞において、loxPに挟まれたα2−Chimaerin(以下、α2−Chnともいう。)のノックアウトを行った(
図7(B)参照。)。E14.5にCre−SnRFPベクターセットを、IUEによりα2−Chn
flox/floxマウスの海馬CA1領域に導入した。P14で脳を解体し、冠状切片を作製し、α2−Chnの免疫組織学的解析とDAPI染色を行い、蛍光観察を行った。
図7(B)上段は、α2−Chn
flox/floxマウスの海馬を示す。拡大した蛍光像を
図7(B)中段に示す。矢印は、Cre−SnRFP標識CA1神経細胞を示す。
図7(B)上段のScale barは、500μmを示し、下段のScale barは、100μmを示す。
次いで、Supernova依存的α2−Chnノックアウト効率を定量化した。
図8(A)は、α2−Chnを発現する細胞のDAPI染色細胞の対する割合を示す。α2−Chnの発現は、ほぼ全てのSnRFP陰性CA1海馬細胞において検出された(97.7%±0.1%、n=3マウス)。一方、SnRFP陽性CA1海馬細胞における割合は、5.9%±3.0%(n=3マウス)であった。全ての値を、平均±標準誤差で示した。(
**)は、ウエルチのt検定により0.001<P<0.01を示す。
次いで、RFP陽性細胞におけるα2−Chnのシグナル強度、及びRFP陰性細胞におけるα2−Chnのシグナル強度を測定した(
図8(B)参照。)(n=14細胞。各群において3マウスを用いた。)。バーは平均値を示す。(
***)は、ウエルチのt検定によりP<0.001を示す。SnRFPで標識したα2−Chn陽性神経細胞においても、α2−Chnの発現量は、RFP陰性細胞と比較して非常に低かった。
これらのことから、Supernovaによって誘導される遺伝子ノックアウトの特異性及び効率は極めて高く、Supernovaは、loxPが導入されたマウスを用いたコンディショナルな遺伝子ノックアウトに最適であることが確認された。
【0053】
[実施例6]
効率よく遺伝子の発現抑制を行うため、Supernovaを介したTALENによる野生型マウスにおける標識した細胞特異的な遺伝子編集を行った。
図9(A)は、1個の細胞レベルでのα2−Chnの遺伝子編集のためにデザインしたSupernovaベクターセットの模式図を示す。
図9(B)は、Supernova α2−Chn TALENベクターセットを用いて遺伝子導入した野生型マウスの海馬の蛍光画像を示す。更にその拡大画像を
図10に示す。
図9(B)のScale barは、250μmを示す。
P14の海馬のCA1において、ほとんどのRFP陰性神経細胞は、高レベルのα2−Chnを発現している(
図10(A)、Example image set1中、Cell3参照。)。一方、ほとんどのRFP陽性神経細胞(Supernova α2−Chn TALEN発現細胞)において、α2−Chnタンパク質の発現は検出されなかった(
図10(A)、Example image set1中、Cell1参照。)。しかしながら、極わずかのRFP陽性神経細胞は、非常に低レベルながらもα2−Chnタンパク質の発現を示した(
図10(B)、Example image set2中、Cell2参照。)。
図10(A)及び(B)のScale barは、20μmを示す。
発明者らは、海馬CA1領域におけるDAPI染色細胞を抗α2−Chn抗体による染色シグナルの強度に応じて、α2−Chn
high、α2−Chn
low、及びα2−Chn
negativeの3グループに分類した。
図11(A)は、RFP陰性細胞及びRFP陽性細胞(Supernova α2−Chn TALEN発現細胞)における、α2−Chn
high、α2−Chn
low、及びα2−Chn
negativeの割合を示す。SnRFP標識細胞の76.0%±6.0%(n=3マウス。)が、2−Chn
negative細胞であった。α2−Chn
high細胞は存在せず、残りは、α2−Chn
low細胞であった。一方、RFP陽性細胞において、α2−Chn
high細胞及びα2−Chn
low細胞は、それぞれ95.1%±0.5%、3.2%±0.1%(n=3マウス。)であった。α2−Chnを標的とするTALEN発現細胞において、α2−Chnタンパク質レベルは、劇的に減少していた。このことから、Supernovaを介したTALENは、野生型マウスのCA1錐体神経細胞において、α2−Chnの発現を首尾よく阻害できることが確認された。
α2−Chnを標的とするTALENを介したゲノム編集を確かめるため、発明者らは、Supernovaを介したα2−ChnTALENベクターを、E14.5にIUEにより導入したP1脳からfluorescence−activated cell sorting(FACS)により蛍光標識した細胞を集めた。次いで、FACSでソーティングした200細胞のプールから標的遺伝子座をPCRにより増幅し、プラスミドに導入しクローニングを行った。13のクローン中、12クローンが変異(3パターン)を有しており、1クローンは野生型の配列であった。実験を繰り返すことにより、合計9個の変異パターンが同定された(
図11(B)参照。)。
図11(B)は、マウスα2−Chn遺伝子におけるleft TALEN及びright TALENが標的とする位置を示した模式図である。
図11(B)中、破線はスペーサー領域を示す(17bp)。α2−Chn遺伝子座における変異パターンを下部に示す。
これらのデータから、Supernovaを介したTALENによって誘導される、内在性遺伝子のゲノム編集は、非常に効率が良いことが確認された。
【0054】
[実施例7]
次いで、発明者らは、他のゲノム編集技術として、Supernovaを介したCRISPR/Cas9による野生型マウスにおける標識した細胞特異的な遺伝子編集を行った。
図12(A)は、1個の細胞レベルでのCreb1の遺伝子操作のためにデザインしたSupernovaベクターセットの模式図を示す。IUEで用いられるベクターの数を減らすため、発明者らは、1個のベクターから、hSpCas9及びsgRNAを発現するpX330ベクターを用いた。Cre依存性を持たせるため、このベクターにLSLカセットを挿入した(
図12(A)参照。U6−SgRNA−CAG−LSL−Cas9)。このベクターをTRE−CreとCAG−LSL−GFP−tTAベクターと共に、E14.5にIUEを用いて、海馬CA1錐体神経細胞に導入した。そして、免疫組織学的解析により、P8のマウスの海馬におけるCREBタンパク質の発現を調べた。P8で脳を解体し、冠状切片を作製し、CREBの免疫組織学的解析とDAPI染色を行い、蛍光観察を行った。
図13(A)は、GFP標識神経細胞におけるCREB陽性神経細胞とCREB陰性神経細胞の細胞数の割合を示す。
図12(B)は、Supernova−CRISPR/Cas9コントロール(singleguide RNA(sgRNA)を含まない。)を用いて遺伝子導入した野生型マウスの海馬CA1領域を示す。
図12(C)は、Supernova−マウスCreb1を標的とするCRISPR/Cas9(SnCRISPR/Cas9−Creb1)を用いて遺伝子導入した野生型マウスの海馬CA1領域を示す。図中、CREBは、Creb1の遺伝子産物を示し、野生型マウスの脳の海馬CA1領域において広範囲に強く発現している。
図12(B)に示されるように、CREBの発現は、Supernova−CRISPR/Cas9コントロールを発現する全てのGFP陽性細胞において確認された(111細胞中、111細胞。3マウス使用。
図12(B)の矢印参照。)。
一方、
図12(C)上段に示されるように、CREBの発現は、SnCRISPR/Cas9−Creb1を発現するほとんどのGFP陽性細胞において特異的に欠損していることが確認された。(85細胞中、83細胞。3マウス使用。
図12(C)上段の矢印参照。)。
また、
図12(C)下段に示されるように、極わずかな例外も確認された(85細胞中、2細胞。
図12(C)下段の矢印参照。)。
図12(B)及び(C)のScale barは、50μmを示す。
最後に発明者らは、FACSによりソーティングしたGFP陽性細胞におけるCreb1の編集を、300細胞のプールから標的遺伝子座をPCRにより増幅し、プラスミドに導入しクローニングを行った。シーケンス解析により、12のクローン中、7個の変異パターンが同定された(
図13(B)参照。)。野生型のクローンは同定されなかった。
図13(B)は、Creb1遺伝子座において見つけられた代表的な変異を示す。sgRNAの標的位置を太線で示した。PAM配列を陰影で示す。対応する変異パターンを示すクローンの数を右に示す。
これらのデータから、Supernovaを介したCRISPR/Cas9は、in vivoでの1個の細胞特異的な遺伝子のノックアウトを非常に効率よく行えることが確認された。
【0055】
[実施例8]
Cre−SnRFPとFlpe−SnRFPの性能を比較するため、E15.5に、終濃度5ng/μLのFlpe−SnRFP及びCre−SnRFPのそれぞれを、IUEにより皮質ニューロンに遺伝子導入した。遺伝子導入細胞を示すために、CAG−GFPを共発現させた。
その結果、
図14に示すように、P6にGFP陽性神経細胞の14.8%±3.3%(n=4のマウスを用いた。)がCre−SnRFPによって標識された。一方、Flpe−SnRFPを標識に用いた場合、標識された割合は、1.9%±0.2%(n=4のマウスを用いた。)であった。全ての値を、平均±標準誤差で示した。バーは平均値を示す。(
**)は、ウエルチのt検定により0.001<P<0.01を示す。神経細胞の標識においては、Cre−SnRFPと比較して、Flpe−SnRFPは、より良い疎らさを示すことが確認された。
【0056】
[実施例9]
loxPを導入したマウスを用いなくとも疎に標識した細胞特異的な遺伝子操作を達成するために、Supernovaを介したRNAiによる野生型マウスにおける標識した細胞特異的な遺伝子のノックダウンを行った。
図15は、1個の細胞における、興味ある遺伝子(GOI)のノックダウンの為のSupernovaベクターセットの模式図を示す。GOIに対するshRNAを、Cre依存的なshRNA発現ベクターであるCAG−LSL−mir30により発現させた。
E14.5に、CAG−LSL−mir30(GFP RNAiのスクランブルの配列;左パネル)又はCAG−LSL−mir30(GFP RNAi;右パネル)をSupernova nlsRFP(Sn−nlsRFP)と共に、IUEにより、CAG−loxP−CAT−loxP−GFPレポーターマウスの皮質に導入した。脳をP8で回収し、切片を作製してGFP抗体を用いて染色した(
図16(A)参照。)GFP RNAi発現神経細胞におけるGFPシグナルは、GFP RNAiのスクランブルの配列を発現する細胞におけるシグナルより遥かに低かった(
図16(B)参照。)。GFPのノックダウン効率は、nlsRFPによって補正した相対的なGFPの蛍光強度によって決定した。(
**)は、ウエルチのt検定により0.001<P<0.01を示す。
また、E14.5に、CAG−LSL−mir30(LacZ RNAiのスクランブルの配列;左パネル)又はCAG−LSL−mir30(LacZ RNAi;右パネル)をSnAmcyanと共に、IUEにより、Rosa−loxP−stop−loxP−nlsLacZ(RNZ)レポーターマウスの皮質に導入した。脳をP8で採取し、切片を作製して抗β−Gal抗体を用いて染色した(
図16(C)参照。)。
LacZのノックダウン効率は、抗β−Gal抗体のAmcyanに対する蛍光強度の比として定量した。β−Galの発現レベルは、LacZ RNAiスクランブル配列を共発現させたSnAmcyanで標識した神経細胞と比較して、LacZ RNAiを共発現させたSnAmcyanで標識した神経細胞において顕著に減少していた(
図16(D)参照。)。(
***)は、ウエルチのt検定によりP<0.001を示す。
図16(A)及び(C)のScale barは、50μmを示す。
これらのことから、標識した細胞特異的に遺伝子のノックダウンが可能であることが確認された。
【0057】
[実施例10]
ウイルスを用いた1個の細胞の標識を可能とするため、アデノ随伴ウイルス(以下、AAVともいう。)をベースとしたSupernovaベクターシステムを構築した。AAVベクターの挿入サイズに制限があるため、蛍光タンパク質発現ベクターのサイズを減らすべく、double−floxed inverted open reading frame(DIO)の戦略(Sohal VS, Zhang F, Yizhar O, Deisseroth K(2009).Parvalbumin neurons and gamma rhythms enhance cortical circuit performance.Nature. Jun 4;459(7247):698−702. )を用いた(
図17(A)参照。)。
図17(A)に示す、AAV−TRE−CreとAAV−EF1α−DIO−RFP−tTAの混合物(AAV−Supernova RFP(AAV−SnRFP)ともいう。)をP10〜P13マウスの海馬と大脳皮質深層に注入した。AAV−EF1α−GFP−WPREをコントロールとして共に注入した。感染30日後に皮質切片を作製した。
図17(B)〜17(G)に示すように、海馬CA1神経細胞(
図17(B)〜17(D))と大脳皮質第5層(L5)錐体神経細胞(
図17(E)〜17(G))の鮮明な蛍光像を得ることができた。その蛍光像では、疎に標識され、詳細な細胞の形態を鮮明に見ることができる。
この結果から、AAVをベースとしたSupernovaベクターシステムは、バックグラウンドが小さく、高い蛍光強度で個々の細胞の標識が可能であることが確認された。また、AAVをベースとしたSupernovaベクターシステムは、IUEをベースとしたSupernovaベクターシステムの優れた特長の多くを保持しており、感染10日後での疎ら度と標識の明るさは同等であり、疎らさはAAV−TRE−Creの量を調節するだけで、調節可能で、蛍光強度に顕著な影響を与えないことを確認している。
【0058】
[実施例11]
AAVをベースとしたSupernovaベクターシステムにおいて、疎らに標識された神経細胞においてのみ、Creが染色体のloxP断片の切除を誘導するのに十分なほど、非常に高いレベルで発現している。Creを介した組み換えの効率及び特異性を検討するため、P10のRosa26−loxP−stop−loxP−nlsLacZ(RNZ)レポーターマウスの海馬CA1神経細胞に、AAV−SnRFPを注入した。感染40日後の脳を採取したところ、RFPで標識したほとんどの神経細胞でLacZが発現していることが確認された(76/80細胞、n=3マウス)。また、全てのLacZ陽性細胞は、AAV−SnRFPで標識されていた(76/76細胞、n=3マウス)(
図17(H)上段参照。)。同様の結果は、皮層でも確認された(
図17(H)下段参照。)。これらのことから、Cre依存的な染色体の組み換えは、AAV−SnRFPに特異的であることが確認された。
次いで、AAVをベースとしたSupernovaベクターシステムにおける、α2−Chn
flox/floxマウスを用いた内在遺伝子のノックアウトの効率を検討した。P2のα2−Chn
flox/floxマウスの海馬の神経細胞に、AAV−SnRFPを注入した。P18で脳を解剖したところ、海馬CA1における非注入領域では、RFP陰性細胞は、α2−Chnを発現していた(204/210細胞、n=3マウス)。一方、海馬CA1におけるAAV−SnRFP注入領域では、全てのRFP陽性細胞は、α2−Chnを発現していなかった(0/20細胞、n=3マウス)(
図17(I)参照。)。これらのことから、AAVをベースとしたSupernovaベクターシステムは、loxPが導入されたマウス(floxマウス)による標識細胞特異的な遺伝子ノックアウトを高い効率で行えることが確認された。
【0059】
本実施例で用いられた材料を以下に示す。
[プラスミド構築]
<CreをベースとしたSupernova>
pK031.TRE−Cre及びpK029. CAG−loxP−STOP−loxP−RFP−ires−tTA−WPREについては、Mizuno H., Luo W., Tarusawa E., Saito Y.M., Sato T., Yoshimura Y., Itohara S., Iwasato T.NMDAR−regulated dynamics of layer 4 neuronal dendrites during thalamocortical reorganization in neonates. Neuron. 2014 Apr 16;82(2):365−79.を参照した。
【0060】
pK038.CAG−loxP−STOP−loxP−EGFP−ires−tTA−WPRE:EGFP及びires−tTA断片をそれぞれ、pEGFP−N1ベクター(Clontech社製)及びpK029ベクターから、HM050(配列番号5;CGGTCGACGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC)/HM055(配列番号6;GGAATCCTTAATTAACTCGATCTAGGATATCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCCGAGA)及びHM054(配列番号7;TCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAAGATATCCTAGATCGAGTTAATTAAGGATTCC)/HM035(配列番号8;GGGCGGCCGCTTACTTAGTTACCCGGGGAGCATGTCAAG)を用いて、PCRにより増幅し単離した。得られた2つのPCR産物を結合させて、HM050/HM035を用いて、再度PCRにより増幅させて、EGFP−ires−tTAを作製した。次いで、EGFP−ires−tTAをpK029ベクターのSalI/NotI部位に挿入し、pK038ベクターを得た。
【0061】
pK039.CAG−loxP−STOP−loxP−AmCyan−ires−tTA−WPRE:pAmCyan vector(Clontech社製)からAmCyan断片をSalI/StuI消化により切り出し、pK029ベクターのSalI/EcoRV部位に挿入し、pK039ベクターを得た。
【0062】
pK098.CAG−loxP−STOP−loxP−nlstagRFP−ires−tTA−WPRE:核移行シグナル(nls)−tagRFPをpK022TagRFP−N(Evrogen社製)から、HM079(配列番号9;CCGTCGACCATGGGCCCAAAGAAGAAGAGAAAGGTTTCGGTGTCTAAGGGCGAAG)/HM075(配列番号10;CCGATATCTTCAATTAAGTTGTGCCCCAGTTTGCTAGG)を用いて、PCRにより増幅し、増幅産物をpK038ベクターのSalI/EcoRV部位に挿入した。
【0063】
pK102.CAG−loxP−STOP−loxP−PSD95eGFP−ires−tTA−WPRE:PSD95eGFPをpCMV−PSD95GFP(東京大学岡部博士から供与された。)からEcoRIとNotIで切り出し、クレノウフラグメントによりブラント化し、EGFPと交換で、pK038ベクターのブラント化したSalI/EcoRVに挿入した。
【0064】
<FlpeをベースとしたSupernova>
pK036.TRE−Flpe−WPRE:Flpeのコーディング配列をpK016.CAG−Flpe−ires−Puro (GeneBridge社製)から、AY101(配列番号11;GGAAGGATCCTTGTGCTGTCTCATCATTTTGG)/AY102(配列番号12;TTGCGGCCGCGGGCGGAATTCTTAATTAACTC)を用いて増幅し、増幅産物をpK026.TRE−Tight vector (Clontech社製)のBamHI/NotI部位に挿入した。pK029ベクターから切り出したWPREをpTRE−FlpeベクターのNotI部位に挿入した。
【0065】
pK037.CAG−FRT−STOP−FRT−RFP−ires−tTA−WPRE:pK029.のEcoRI/SalI間にあるloxP−STOP−loxP配列をFRT−STOP−FRT配列に置き換えた。FRT−STOP−FRT配列は、pBS302 ベクター (Gibco−BRL社製)から、HM009(配列番号14;CCGTCGACATGAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTCTAGGTCCCTCGACCTGCAGCCCAAGCTTA)/HM008(配列番号13;GGGAATTCTAGAAGTTCCTATACTTTCTAGAGAATAGGAACTTCATTAAGGGTTCCGGATCCTCGGGGACACCA)を用いて増幅した。
【0066】
pK068.CAG−FRT−STOP−FRT−EGFP−ires−tTA−WPRE:pK038ベクターからSalIとNotIでEGFP−ires−tTAを切り出し、pK037ベクターのSalI/NotI部位へ挿入し、pK068ベクターを作製した。
【0067】
<DreをベースとしたSupernova>
pK073.TRE−Dre−WPRE:pK055.CAG−Dre−ires−puro.gccベクター(国立遺伝学研究所 森本博士から供与された。)から、WL006(配列番号15;CGAATTCGCC ACCATGGGTG CT)/WL007(配列番号16;TGCGGCCGCT CACACTTTCC TCTT)を用いてPCRでDre配列を増幅した。増幅産物をpK036.TRE−Flpe−WPREのEcoRI/NotI部位に挿入し、pK073ベクターを作製した。
【0068】
pK129.CAG−Rox−STOP−Rox−RFP−ires−tTA−WPRE:pK078.JFRC176−10XUAS−rox−dSTOP−rox−myr::GFP(Gerald Rubinから供与された。)からBglIIとXhoIでRox−STOP−Roxを切り出し、pCAGplayベクター(Niwa,H., Yamamura,K., and MIyazaki,J.(1991). Efficient selection for high−expression transfectants with A novel eukaryotic vector. Gene 108, 193−199. Kawaguchi, S.−y., and Hirano, T. (2006). Integrin α3β1 suppresses long−term potentiation at inhibitory synapses on the cerebellar Purkinje neuron. Molecular and Cellular Neuroscience 31, 416−426.)のBamHI/XhoI部位に挿入した。得られたベクターをEcoRIとXhoIで消化し、pK037ベクターに挿入し、FRT−STOP−FRTをRox−stop−Rox置き換えた。
【0069】
pK224.CAG−Rox−STOP−Rox−EGFP−ires−tTA−WPRE:pK078からBglIIとXhoIにより、Rox−STOP−Roxを切り出し、pCAGplayベクターのBamHI/XhoI部位に挿入した。pK068ベクターからSalIとNotIにより、EGFP−ires−tTAを切り出し、上記得られたベクターに挿入した。pK046.CAG−loxP−STOP−loxP−RFP−WPREからNotIで切り出されたWPREを、得られたpCAG−Rox−STOP−Rox−EGFP−ires−tTAベクターのNotI部位に挿入した。
【0070】
<Supernovaを介したRNAi>
pK177.CAG−loxP−STOP−loxP−mir30(GFP RNAi)及びpK178.CAG−loxP−STOP−loxP−mir30 (GFP RNAi スクランブルコントロール):GFPのコーディング領域(441−461)に対するshRNA及びそのスクランブルコントロールを、HM082(配列番号17;CAGAAGGCTCGAGAAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCG)/HM083(配列番号18;CTAAAGTAGCCCCTTGAATTCCGAGGCAGTAGGCA)を用いてPCRで増幅した。
GFP shRNAの鋳型オリゴヌクレオチドは、5’−TGCTGTTGACAGTGAGCGAAGCCACAACGTCTATATCATGTAGTGAAGCCACAGATGTACATGATATAGACGTTGTGGCTGTGCCTACTGCCTCGGA−3'(HM084;配列番号1)である。GFP shRNAスクランブルコントロールの鋳型オリゴヌクレオチドは、5’− TGCTGTTGACAGTGAGCGAGCTCATAGAAGCTCTACAATCTAGTGAAGCCACAGATGTAGATTGTAGAGCTTCTATGAGCGTGCCTACTGCCTCGGA−3'(HM085;配列番号2)である。増幅産物をpCAG−loxP−STOP−loxP−mir30ベクターのXhoI/EcoRI部位に挿入した。
【0071】
pK225.CAG−loxP−STOP−loxP−mir30 (LacZ RNAi)及びpK226.CAG−loxP−STOP−loxP−mir30 (LacZ RNAiスクランブルコントロール):1個の細胞におけるLacZのノックダウンの為に、LacZのコーディング領域(651−671)に対するshRNA及びそのスクランブルコントロールを、HM082/HM083を用いてPCRで増幅した。
LacZshRNAの鋳型オリゴヌクレオチドは、5’− TGCTGTTGACAGTGAGCGAAAATCGCTGATTTGTGTAGTCTAGTGAAGCCACAGATGTAGACTACACAAATCAGCGATTTGTGCCTACTGCCTCGGA−3'(WL090;配列番号3)である。LacZ shRNAスクランブルコントロールの鋳型オリゴヌクレオチドは、5’− TGCTGTTGACAGTGAGCGAGGCAACTTCGGTTAGTATTTATAGTGAAGCCACAGATGTATAAATACTAACCGAAGTTGCCGTGCCTACTGCCTCGGA−3'(WL091;配列番号4)である。増幅産物をpCAG−loxP−STOP−loxP−mir30ベクターのXhoI/EcoRI部位に挿入した。
【0072】
<Supernovaを介したTALENベクター>
pK217.CAG−FRT−STOP−FRT−α2Chn TALEN Left 及びpK218.CAG−FRT−STOP−FRT−α2Chn TALEN Right: α2Chn TALENをPlatinum Gate TALEN Kitを用いたtwo−step Golden Gate assembly法により作製した。予想される切断部位は、マウスα2Chnエクソン6の237番目である。pK037からSpeI/SalIにより、FRT−STOP−FRTを切り出し、pK209.CMV−A2Chn TALEN Left 及びpK210.CMV− A2Chn TALEN RightのSpeI/XhoI部位に挿入した。
【0073】
<Supernovaを介したCRISPR/Cas9ベクター>
pK162は、ヒト用にコドンを最適化したSpCas9とキメラのガイドRNA発現プラスミド(pX330)であり、F.Zhangより供与された。
pK237.pU6−Chimeric−CAG−LSL−hspCas9:CAGプロモーターの一部とloxP−STOP−loxPを含む断片を、pK029のSnaBIとAgeIから切り出し、pK162(pX330)の同じ部位に挿入した。pK237は、ガイドオリゴを有していないため、Supernova−CRISPR/Cas9実験におけるコントロールとして用いられる。
pK238.pU6−gRNACreb1−CAG−LSL−hspCas9:Feng Zhangグループによって出版された標的配列クローニングプロトコールに従い、ガイドオリゴWL107(配列番号19;CACCGTTGTCTGCTCCAGATTCCA)/WL108(配列番号20;AAACTGGAATCTGGAGCAGACAAC)をアニールし、pK237のBbsI部位に挿入した。ガイドRNAの標的配列は、F. Zhangグループによって供与されたオンラインツールを用いてデザインした(http://crispr.mit.edu/)。NCBIデータベースからゲノム配列NC_000067.6(18054...18167)をブラストに用いた。
【0074】
<他の構築ベクター>
pK046.CAG−loxP−STOP−loxP−RFP−WPRE: loxP−STOP−loxP配列をpBS302 vector(Gibco−BRL社製)から、HM010(配列番号21;GGGAATTCTAATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTATATTAAGGGTTCCGGATCCTCGGGGACACC)/HM007(配列番号22;CCGTCGACATATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAAGTTATTAGGTCCCTCGACCTGCAGCCCAAGCTTA)を用いて増幅した。RFP配列をpK023.TurboRFP−N (Evrogen社製) から、HM026(配列番号23;CGAATTCTGCAGTCGACGGTACCGAGGGCC)/HM030(配列番号24;GTCGCGGCCGCATCATCTGTGCCCCAGTTT)を用いて増幅した。WPRE配列をpK021.Lenti−Synapsin−hChR2 (H134R)−EYFP−WPRE ベクターから、HM019(配列番号25;GCGGCCGCTCAACCTCTGGATTACAAAATT)/HM020(配列番号26;GCGGCCGCTGCGGGGAGGCGGCCCAAAGGG)を用いて増幅した(Zhang, F., Wang, L.−P., Brauner, M., Liewald, J.F., Kay, K., Watzke, N., Wood, P.G., Bamberg, E., Nagel, G., Gottschalk, A., et al. (2007). Multimodal fast optical interrogation of neural circuitry. Nature 446, 633−639.) 。得られた三つの増幅産物をpCAGplayベクターのそれぞれEcoRI/SalI、SalI/NotI、及びNotI 部位に挿入した。
【0075】
<AAVをベースとしたSupernova>
pK168(pAAV−EF1α−DIO−RFP−P2A−tTA−WPRE):tTA配列をpK029(pTet−Off−Advanced ベクター(Gossen M, Bujard H.(1992)Tight control of gene expression in MAMMALIAN cells by tetracycline−responsive promoters.Proc Natl Acad Sci U S A. Jun 15;89(12):5547−51.))から、RY78(配列番号27;TGCTAGCGCCACCATGTCTAGACTGGA)/RY79(配列番号28;TGCTAGCGCCACCATGTCTAGACTGGA)を用いて増幅した。
P2A−tRFP配列をpK025(TurboRFP(Evrogen, Moscow, Russia))から、RY69(配列番号29; AGGATCCGGAAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTATGAGCGAGCTGATCA)/RY80(配列番号30;AGGCGCGCCTCATCTGTGCCCCAGTTTG)を用いて増幅した。
pK168 (pAAV−EF1α−DIO−tTA−P2A−RFP−WPRE)は、tTAとP2A−tRFPを、pK167(pAAV−EF1α−DIO−EYFP) vector(Addgene: 27056, Cambridge, MA, USA)の、NheI/BamHI部位とBamHI/AscI部位に挿入して作製した。
pK170(pAAV−TRE−Cre−WPRE): Cre配列をpK031(pCAG−nlsCre−WPRE)から増幅した。pK170は、pK169(pAAV−TRE−MCS−WPRE) vector(Dr.Yu Hayashiから供与)のEcoRI/BglII部位にCreを挿入して製造した。
【0076】
<他のAAVベクター>
pK165(pAAV−EF1α−RFP−WPRE)は、Iwata,R.et.al.(2015).Developmental RacGAP α2−Chimaerin Signaling Is A Determinant of the Morphological Features of Dendritic Spines in Adulthood. The Journal of Neuroscience35, 13728−13744.を参照した。
pK229(pAAV−EF1α−EGFP−WPRE):EGFP配列は、pK024(pCAsalEGFP)からWL103(配列番号31; CTGAATTCGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC)/WL104(配列番号32;CGGATCCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCCGAGAG)を用いて増幅した。pK229を作製するため、pK165(pAAV−EF1α−RFP−WPRE)中のRFPは、EcoRI/BamHI部位にサブクローニングすることにより、EGFPに置き換えた。
【0077】
<動物>
Emx1Cre KI−ΔNeoマウス(Iwasato, T., Datwani, A., Wolf, A.M., Nishiyama, H., Taguchi, Y., Tonegawa, S., Knopfel, T., Erzurumlu, R.S., and Itohara, S. (2000). Cortex−restricted disruption of NMDAR1 impairs neuronal patterns in the barrel cortex. Nature 406, 726−731.;Iwasato, T., Inan, M., Kanki, H., Erzurumlu, R.S., Itohara, S., and Crair, M.C.(2008). Cortical adenylyl cyclase 1 is required for thalamocortical synapse maturation and aspects of layer IV barrel development. The Journal of Neuroscience 28, 5931−5943. ; Iwasato, T., Inan, M., Kanki, H., Erzurumlu, R.S., Itohara, S., and Crair, M.C. (2008). Cortical adenylyl cyclase 1 is required for thalamocortical synapse maturation and aspects of layer IV barrel development. The Journal of Neuroscience 28, 5931−5943.)、CAG−loxP−CAT−loxP−GFP reporterマウス(Kawamoto, S., Niwa, H., Tashiro, F., Sano, S., Kondoh, G., Takeda, J., Tabayashi, K., and Miyazaki, J.−i. (2000). A novel reporter mouse strain that expresses enhanced green fluorescent protein
upon Cre−mediated recombination. FEBS Letters 470, 263−268.)、RNZレポーターマウス(Kobayashi, Y., Sano, Y., Vannoni, E., Goto, H., Ikeda, T., Suzuki, H., Oba, A., Kawasaki, H., Kanba, S., Lipp, H.−P., et al. (2013). Genetic dissection of medial habenula−interpeduncular nucleus pathway function in mice. Frontiers in Behavioral Neuroscience 7.)、α2−Chn floxマウス(Iwata, R., Ohi, K., Kobayashi, Y., Masuda, A., Iwama, M., Yasuda, Y., Yamamori, H., Tanaka, M., Hashimoto, R., Itohara, S., et al. (2014). RacGAP α2−Chimaerin Function in Development Adjusts Cognitive Ability in Adulthood. Cell Reports 8, 1257−1264.)の遺伝型は、PCRにて決定した。
IUE及びウイルス感染の為の胎児は、一晩、雄と雌を交配させて得られた。膣栓が認められた日の正午を胎生期0.5とした。生まれた日は、出生後日数0としてカウントした。
【0078】
<In utero electroporation (IUE)>
IUEは、以前の報告に基づいて行われた(Mizuno, H., Hirano, T., and Tagawa, Y. (2007). Evidence for activity−dependent cortical wiring: formation of interhemispheric connections in neonatal mouse visual cortex requires projection neuron activity. The Journal of Neuroscience 27, 6760−6770.)。簡単には、妊娠したマウスに、生理食塩水に溶解したペントバルビタールナトリウム(50 mg/kg body weight)を用いて麻酔をかけた。
腹部を70%エタノールで洗浄した後、約3cmの正中開腹手術を行い、子宮を取り出した。DNAのマイクロインジェクションの為に、ガラスキャピラリーチューブ(GC150TF−10; Harvard Apparatus)を、マイクロピペットプラー(PC−10; Narishige)を用いて引っ張った。mouth−controlledピペットシステム(Drummond Scientific)を用いて、DNA溶液0.5μL全量を胎児の右側脳室に注入した。ピンセットタイプの電極で保持することにより(CY650P10, Unique Medical Imada, Japan)、胎児に、Square electric pulses (40 V; 50 ms)をエレクトロポレーター(CUY21SC; NepaGene)により、子宮を介して、1Hzの割合で5回伝達した。皮質ニューロンに遺伝子導入するための電極の位置は、以前の報告に基づいて行われた(Saito, T., and Nakatsuji, N. (2001). Efficient gene transfer into the embryonic mouse brain using in vivo electroporation. Developmental biology 240, 237−246.)。エレクトロポレーションの後、子宮を腹腔に戻し、腹壁と皮膚を外科的縫合術により縫合した。
IUEの為のプラスミドをNucleoBond Xtra Midi kit(Macherey−Nagel社製)を用いて精製した。各実験に用いたDNA溶解液組成物を以下にまとめて示す。
【0079】
CreベースのSupernova標識において、pK031.TRE−Cre (5ng/μL)及びpK029.CAG−loxP−STOP−loxP−RFP−ires−tTA−WPRE (1μg/μL) 又はpK038.CAG−loxP−STOP−loxP−EGFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL) 又は pK039.CAG−loxP−STOP−loxP−AmCyan−ires−tTA−WPRE(1μg/μL) を用いた。
【0080】
皮質ニューロンのFlpeベースのSupernova標識において、pK036.TRE−Flpe−WPRE(5ng/μL)及びpK037.CAG−FRT−STOP−FRT−RFP−ires−tTA−WPRE (1μg/μL) 又はpK068.CAG−FRT−STOP−FRT−EGFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL)を用いた。
【0081】
海馬CA1ニューロンのFlpeベースのSupernova標識において、pK036.TRE−Flpe−WPRE(50ng/μL)及びpK037.CAG−FRT−STOP−FRT−RFP−ires−tTA−WPRE (1μg/μL)を用いた。
【0082】
DreベースのSupernova標識において、pK073.TRE−Dre−WPRE (5ng/μL)及びpK129.CAG−Rox−STOP−Rox−RFP−ires−tTA−WPRE (1μg/μL) 又はpK038.CAG−loxP−STOP−loxP−EGFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL) 又は pK224.CAG−Rox−STOP−Rox−EGFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL) を用いた。
【0083】
Emx1−Cre KIマウスにおける皮質ニューロンのFlpe−SnGFP及び Dre−SnGFP標識において、pK046.CAG−loxP−STOP−loxP−RFP−WPRE(1μg/μL)をコントロールとして共導入した。
【0084】
共発現実験として、pK031.TRE−Cre(10ng/μL)を、pK038.CAG−loxP−STOP−loxP−EGFP−ires−tTA−WPRE (1μg/μL) 及びpK098.CAG−loxP−STOP−loxP−nlstagRFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL)又はpK029.CAG−loxP−STOP−loxP−RFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL)及び pK102.CAG−loxP−STOP−loxP−PSD95eGFP−ires−tTA−WPRE(1μg/μL)と共に用いた。
【0085】
CAG−loxP−CAT−loxP−GFP reporter Tgマウスを用いた、Supernovaを介した疎らな遺伝子ノックダウン実験において、pTRE−Cre (10 ng/μl)、 pK098.CAG−loxP−STOP−loxP−nlstagRFP−ires−tTA−WPRE (1 μg/μl)及びpK177.CAG−loxP−STOP−loxP−mir30 (GFP RNAi) (1 μg/μl) 又は pK178.CAG−loxP−STOP−loxP−mir30 (GFP RNAi スクランブルコントロール)(1μg/μl)を含有するDNA溶解液を用いた。
【0086】
RNZマウスを用いたSupernovaを介した疎らな遺伝子ノックダウン実験において、pTRE−Cre(10ng/μl)、pK039: pCAG−loxP−STOP−loxP−AmCyan−ires−tTA−WPRE(1μg/μL)及びpK225:pCAG−loxP−STOP−loxP−mir30(LacZ RNAi) (1 μg/μl)又はpK226:pCAG−loxP−STOP−loxP−mir30(LacZ RNAiスクランブルコントロール)(1μg/μL)を含有するDNA溶解液を用いた。
【0087】
SupernovaシステムによるTALENを介したα2−Chn遺伝子操作の実験において、pK036.TRE−Flpe−WPRE(50ng/μl)、pK037.CAG−FRT−STOP−FRT−RFP−ires−tTA−WPRE (1μg/μl)、pK217.CAG−FRT−STOP−FRT−α2Chn TALEN Left (1μg/μl)、及びpK218.CAG−FRT−STOP−FRT−α2Chn TALEN Right(1μg/μl)を含有するDNA溶解液を用いた。
【0088】
<ウイルスの調製>
AAVの調製は、AAV−DJ/8 Helper Free Packaging System(Cell Biolabs, San Diego, CA, USA)を用いて行った。pAAV発現ベクターをpAAV−DJ(Agilent Technologies: 240071)及びpHelper(Agilent Technologies: 240071)と、penicillin 及びstreptomycin入りのComplete Medium(DMEM containing 10% heat−inactivated FBS, 1 mM sodium pyruvate solution, 0.075% sodium bicarbonate solution)中のHEK293T又はHEK293FT細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション72時間後に、細胞をフラスコから優しく掻き採り、2,500rpmで30分遠心分離した。上清を0.45μmのメンブレンフィルター(Millipore, Bedford, MA, USA)を用いて濾過し、超遠心チューブに移した。ウイルス沈澱物を100μLのcold PBSに懸濁し、−80℃で保存した。各ウイルスの力価は、プライマーセットWL123(配列番号33;GTATGGAGCAAGGGGCAAG)/WL124(配列番号34; AGGCGGAGATTGCAGTGAG)を用いた定量PCRにより決定した。ウイルスサンプルをDNaseIで、37℃30分処理した。DNaseIは、65℃10分インキュベートして不活化した。標準曲線は、EcoRIで消化し、事前に精製したpK165プラスミドの10倍希釈系列(10〜10
8コピー/μL)を用いて作成した。
【0089】
<ウイルスの注入>
P10〜P13マウスに、1.7〜2.5%のイソフルランを用いて麻酔をかけた。皮膚の注入箇所を開き、ハンドドリル(MINIMO,Tokyo,Japan)を用いて、頭がい骨に穴をあけた。左海馬か皮層にウイルスを注入した。ウイルス注入の間に、イソフルランの用量を1.5%にまで減らした。海馬CA1領域及び深皮層において、標識神経細胞の注入部位は、矢状縫合の約1mm外側、硬膜表面から−1.5mm〜−0.8mmに位置した。P2マウスのウイルス注入において、注入部位は、人字縫合の1.5mm左、硬膜表面から−1.5mm〜−1.0mmに位置した。ウイルスのデリバリーは、プログラムされた、34ゲージの斜角NanoFil needle (World Precision Instruments, Sarasota, FL, USA)付きのシリンジポンプ(KD Scientific)を用いて、220nL/分の割合で行われた。注入に用いたウイルスベクターを以下に示す。
【0090】
AAVによる通常の標識に、AAV−EF1α−RFP−WPRE(5.5x10
11ゲノムコピー/mL)をPBSで10〜10
3倍希釈した。希釈した、又は無希釈のAAV−EF1α−RFP−WPREと、AAV−EF1α−GFP−WPRE(3.5x10
11ゲノムコピー/mL)と、PBSを等量ずつ混ぜた。1匹のマウスに、1000nLのウイルス混合物を注入した。
AAV−SnRFPによる標識に、AAV−TRE−Cre−WPRE(2.3x10
13ゲノムコピー/mL)をPBSで10
2〜10
6倍希釈した。希釈した、又は無希釈のAAV−TRE−Cre−WPREと、AAV−EF1α−DIO−tTA−RFP(1.7x10
13ゲノムコピー/mL)と、AAV−EF1α−GFP−WPRE(3.5x10
11ゲノムコピー/mL)PBSを等量ずつ混ぜ、注入に用いた。
図17(B)〜(G)において、AAV−TRE−Cre−WPREを10
5倍希釈して用いた。1匹のマウスに、1000nLのウイルス混合物を注入した。
RNZマウスへのAAV−SnRFPの注入において、AAV−TRE−Cre−WPRE(2.3x10
13ゲノムコピー/mL)をPBSで10
5倍希釈し、AAV−EF1α−DIO−tTA−RFP(1.7x10
13ゲノムコピー/mL)と等量ずつ混合した。1匹のマウスに、1000nLのウイルス混合物を注入した。α2−Chn floxedマウスへのAAV−SnRFPの注入において、AAV−TRE−Cre−WPRE(2.3x10
13ゲノムコピー/mL)をPBSで10
4倍希釈し、AAV−EF1α−DIO−tTA−RFP(1.7x10
13ゲノムコピー/mL)と等量ずつ混合した。1匹のマウスに、300nLのウイルス混合物を注入した。
【0091】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。