(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本尺と、該本尺の長手方向に摺動可能に設けられた測定スライダー部と、を備え、一方が前記本尺に設けられるとともに他方が前記測定スライダー部に設けられたジョウを測定対象に接触させて該測定対象を測定するノギスであって、
前記測定スライダー部は、該測定スライダー部を微動させるとともに前記他方のジョウの当接面に測定対象が接触した際に当該ノギスへ測定力を発生させる微調整測定部を備え、
前記微調整測定部は、ユーザーが指で操作可能な指押し式回転部と、該指押し式回転部を前記測定スライダー部に固定する固定部および前記指押し式回転部が遊嵌されるローラー軸受部を有するサポーターと、を備え、
前記指押し式回転部は、2枚の円盤からなるローラー部と該ローラー部の略中央に位置し前記2枚の円盤を連結するローラー軸部を備え、ユーザーが指で操作する際に少なくとも両円盤の内側の一部と前記本尺とが摩擦力を介して接触しており、
前記ローラー軸受部は、当該ノギスに測定力が発生する際に前記ローラー軸部が移動可能な傾斜面を有し、
さらに前記ローラー軸受部には、前記指押し式回転部の操作時に前記ローラー軸部と接触する位置にストッパが設けられ、
前記ローラー部は、ノギスに測定力が発生すると前記ローラー軸部が前記ストッパに接触しながら前記傾斜面を移動するに伴って前記摩擦力が減少することで前記測定力が制限されることを特徴とするノギス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように定圧手段(ラチェット機構)を設けることで測定力の過大化は防止できるが、このような構成ではノギス構造が複雑であり、組立て調整が難しく、かなりのコストアップになる。また、特許文献2のように柔軟性を有するローラ機構とすることで、測定力のばらつきを抑えられるが、測定はあくまでもユーザーごとの感覚によるものであるため、誰でもいつでも同じ測定力を生じさせることは困難である。
【0006】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みて行われたものであって、その目的は、ユーザーが指で操作可能なサムローラーを備えるノギスにおいて、簡単な構造で、且つ、誰が使用しても測定対象へ同じ測定力を生じさせることで高精度な測定を可能とする定圧機構を有するノギスおよび定圧機構付きのサムローラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるノギスは、
本尺と、該本尺の長手方向に摺動可能に設けられた測定スライダー部と、を備え、一方が前記本尺に設けられるとともに他方が前記測定スライダー部に設けられたジョウを測定対象に接触させて該測定対象を測定するノギスであって、
前記測定スライダー部は、該測定スライダー部を微動させるとともに前記他方のジョウの当接面に測定対象が接触した際に当該ノギスへ測定力を発生させる微調整測定部を備え、
前記微調整測定部は、ユーザーが指で操作可能な指押し式回転部と、該指押し式回転部を前記測定スライダー部に固定する固定部および前記指押し式回転部が遊嵌されるローラー軸受部を有するサポーターと、を備え、
前記指押し式回転部は、2枚の円盤からなるローラー部と該ローラー部の略中央に位置し前記2枚の円盤を連結するローラー軸部を備え、ユーザーが指で操作する際に少なくとも両円盤の内側の一部と前記本尺とが摩擦力を介して接触しており、
前記ローラー軸受部は、当該ノギスに測定力が発生する際に前記ローラー軸部が移動可能な傾斜面を有し、
さらに前記ローラー軸受部には、前記指押し式回転部の操作時に前記ローラー軸部と接触する位置にストッパが設けられ、
前記ローラー部は、ノギスに測定力が発生すると前記ローラー軸部が前記ストッパに接触しながら前記傾斜面を移動するに伴って前記摩擦力が減少することで前記測定力が制限されることを特徴とする。
【0008】
前記傾斜面と前記本尺のジョウ方向との間の角度が90度未満であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるノギスは、
前記ローラー軸受部は、本尺の長手方向において前記傾斜面とは反対側に反対側傾斜面を備え、
前記反対側傾斜面は、該反対側傾斜面と前記本尺のジョウ方向との間の角度が90度以上に設けられ、
さらに前記ローラー軸受部には、前記傾斜面と共に機能するストッパと前記反対側傾斜面と共に機能する反対側ストッパの2つのストッパが設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるノギスは、
前記ローラー軸受部は、本尺の長手方向において前記傾斜面とは反対側に反対側傾斜面を備え、
前記反対側傾斜面は、該反対側傾斜面と前記本尺のジョウ反対側方向との間の角度が90度未満に設けられ、
さらに前記ローラー軸受部には、前記傾斜面と共に機能するストッパと前記反対側傾斜面と共に機能する反対側ストッパの2つのストッパが設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるノギスは、
前記傾斜面は、該傾斜面と前記本尺のジョウ方向との間の角度が40度から50度の範囲の角度で設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるノギスは、
前記傾斜面は、該傾斜面と前記本尺のジョウ方向との間の角度が40度から50度の範囲の角度に設けられ、
前記反対側傾斜面は、該反対側傾斜面と前記本尺のジョウ反対側方向との間の角度が40度から50度の範囲の角度に設けられることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかるノギスは、
前記ストッパは、弾性体であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるノギスは、
前記弾性体は、ゴム、スポンジ、プラスチックのうちのいずれかを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかるノギスは、
前記反対側弾性体は、ゴム、スポンジ、プラスチックのうちのいずれかを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるノギスは、
前記弾性体は、コイルバネまたは棒バネであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかるノギスは、
前記反対側弾性体は、コイルバネまたは棒バネであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ノギスに設けられた微調整測定部は、2枚のローラー部およびこのローラ−部の中央をそれぞれ連結するローラー軸部を有する指押し式回転部(サムローラー)と、前記ローラー軸部を遊嵌保持するローラー軸受部を有すると共に測定スライダー部に固定される固定部を有するサポーターで構成されており、前記ローラー軸受部にはストッパと、傾斜面と、を設けることで、ノギスに測定力が発生すると指押し式回転部のローラー軸部がストッパを押しながら傾斜面を摺動、あるいは傾斜面に沿って転がることで本尺から徐々に離れる(あるいは本尺を滑る)ので、測定対象へ一定以上の測定力を生じさせないようにすることができる。つまり、このような簡単な構成により、誰でもいつでも一定の測定力で、ばらつきの少ない高精度な測定を可能とするサムローラー付きのノギスおよびサムローラーを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のノギスについて図面を用いて説明するが、本発明の趣旨を超えない限り何ら以下の例に限定されるものではない。
<第1実施形態>
【0021】
図1に本発明の第1実施形態に係るノギスの概略図を示す。同図に示すノギス10は、矩形板状の本尺12と、該本尺12の長手方向へスライド自在に設けられた測定スライダー部18と、測定対象を挟んで外径寸法を測定するための外径測定ジョウ14と、測定対象の内径寸法を測定する内径測定ジョウ16と、を備えている。
【0022】
本尺12は、外径測定ジョウ14の一方である固定外径測定ジョウ14aと、内径測定ジョウ16の一方である固定内径測定ジョウ16aと、を備えている。また、本尺12の正面には、図示は省略しているが本尺目盛が設けられており、同じく図示は省略しているが本尺12の短手方向両端には測定対象を測定する際に測定スライダー部18が摺動可能なレールが設けられている。また本明細書では、
図1のノギス10を正面から見て長手方向のジョウ側を左側(左方向)とし、ノギス10を正面から見て長手方向のジョウとは反対側を右側(右方向)とする。
【0023】
測定スライダー部18には、外径測定ジョウ14の他方として固定外径測定ジョウ14aと対応する位置に可動外径測定ジョウ14bが設けられ、内径測定ジョウ16の他方として固定内径測定ジョウ16aと対応する位置に可動内径測定ジョウ16bが設けられている。また、測定スライダー部18は、正面に設けられた表示部20と、該測定スライダー部18を微動させるための微調整測定部30と、を備えている。さらに、微調整測定部30は、ユーザーが指で操作可能なサムローラー32および該サムローラー32を測定スライダー18に固定するためのサポーター34を有する。サムローラー32は、例えばステンレス等を含む材料で製造されている。表示部20は測定情報等を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイ等である。
【0024】
ノギス10は、測定スライダー部18を本尺12の長手方向へスライドさせて、外径測定ジョウ14(14a、14b)の外径当接面22を測定対象の外面に当接させることによって、該測定対象の外径を測定することができる。また、ノギス10は、内径測定ジョウ16(16a、16b)の内径当接面24を測定対象の内側に当接させることによって、該測定対象の内径(内側の長さ)を測定することができる。具体的には、それぞれの測定において、測定対象に対してある程度の位置まで測定スライダー部18を近づけ、その後、測定ジョウ(外面測定ジョウ14、内径測定ジョウ16)を当接させる際には、サムローラー32をユーザーが指で回転させることで測定スライダー部18を本尺12の長手方向へ微動させて測定を行う。このように微調整測定部30付きのノギス10では、ユーザーがサムローラー32を利用することで微調整をしながらの精度の高い測定が可能となる。それぞれの測定によって得られた測定値は、測定情報として表示部20に表示される。
【0025】
ここで、サムローラー32を利用して、測定対象に測定ジョウの測定面(外径当接面22または内径当接面24)が当接するのを微調整していても、実際には測定対象へ当接面(外径当接面22または内径当接面24)が当接する際の押圧力はユーザーによってさまざまであり、この押圧力の差によって、どうしても測定値にばらつき(誤差)が生じてしまう。そこで、本実施形態では、測定スライダー部18が備える微調整測定部30(サムローラー32)に、一定以上の押圧力(測定力)が発生しないように作用する定圧機構を設けることで、いかなる測定対象に対して誰が測定しても押圧力を常に一定にすることができる。つまり、本実施形態において微調整測定部30がノギスに生じる測定力の定圧機構としての機能を有する。以下、本実施形態における微調整測定部30について詳しく説明する。
【0026】
微調整測定部の構成
はじめに、従来のノギスが備える微調整測定部の構成について説明する。
図2には、従来のノギスが備える微調整測定部の概略図を示す。同図に示す微調整測定部60は、ユーザーが測定対象を測定する際に指で操作可能なサムローラー62と、測定スライダー部18にサムローラー62を保持するためのサポーター64と、を備えている。サポーター64は、当該微調整測定部60を保持した状態で、例えば測定スライダー部18に嵌め込まれると共にねじ止め等によって固定されている。そして、サムローラー62は、ユーザーが指で操作する2枚のローラー部66と、該ローラー部66の略中央に位置してこの2枚のローラー部66を互いに連結するローラー軸部68を備えている。
【0027】
ここで、
図3には従来のサムローラー62を円盤正面に対して垂直方向から見た場合(
図1においてジョウ方向から見た場合)の概略図を示す。
図3(a)に示すようにローラー部66は2枚の円盤から構成されており、それぞれの円盤の略中央にローラー軸部68が固定されている。また、2枚のローラー部66の対向する内側面間の距離は、このローラー部66の外周から中心にむかうに従って徐々に狭くなっていて、この内側面と本尺12が接触することで測定力が発生している。
【0028】
サムローラー62を本尺12に押しつけると、押し付ける力の大きさに従って数μm〜数十μm程度であるが、
図3(b)に示すように2枚のローラー部66間を押し広げることとなる。これによりサムローラー62を本尺12側へ押し付ける力が強いほど、摩擦力は強くなる。この摩擦力が十分に大きければサムローラー62は本尺12に対して滑らずに転がる。そして、測定ジョウが測定対象に当接した状態では、ローラー軸68がサポーター64を押すことで測定力が発生する。また、サポーター64のサイズや弾性係数により、発生させる測定力を調整することができる。
【0029】
つまり、測定対象を測定する際にサムローラー62を指で回転させることで、本尺12の端部と2枚のローラー部66の内側面とが接触して生じる摩擦力により、本尺12に対してこの内側面が滑ることがなく、本尺12から測定力を発生させることが可能であり、
図4に示すようにサムローラー62(測定スライダー部18)が本尺12の長手方向へ移動可能となっている(例えば
図2においてサムローラー62を時計方向へ回転させることで、ローラー軸部68が
図1におけるジョウ方向へサポーター64を押している)。
【0030】
次に、本実施形態の微調整測定部30の構成について説明する。
図5には、本発明の第1実施形態に係るノギスが備える微調整測定部の概略構成図を示す。同図に示す微調整測定部30は、基本的には
図2に記載されている微調整測定部60と同様の構成であり、ユーザーが測定対象を測定する際に指で操作可能なサムローラー32と、測定スライダー部18に当該微調整測定部30を保持するためのサポーター34と、を備えている。サポーター34は、サムローラー32を保持した状態で、例えば測定スライダー部18に嵌め込まれると共にねじ止め等によって固定されている。
【0031】
そして
図6には、本発明の実施形態に係るノギスが備える微調整測定部の詳細説明図を示す。同図に示すサムローラー32は、ユーザーが指で操作する円盤形状の2枚のローラー部36と、該ローラー部36の略中央に位置するローラー軸部38を備えている。本実施形態における微調整測定部30についても、ローラー部36およびローラー軸部38の構成は、
図3に示される従来の微調整測定部60の構成(および測定力の発生原理)と同様である。
【0032】
また、
図6に示すようにサポーター34は、サムローラー32を測定スライダー18に固定するための固定部40と、ローラー軸部38が遊嵌されるローラー軸受部42と、を備えている。そして、ローラー軸受部42は、本尺12の長手方向に対して所定角度で傾斜した傾斜面44を有している。ここで、従来のサムローラーにおけるローラー軸受部であれば、
図2に示されるようなU字型の形状となっているが、本実施形態におけるローラー軸受部42は
図6に示すような傾斜面44を有する形状となっており、このような形状とすることで後述する定圧機構を実現している。そして
図6に示すように傾斜面44は、該傾斜面44と本尺12のジョウ方向との間の角度A1が90度未満の角度(鋭角)になるように設けられている(サポーター34は本尺12に対して略平行に位置している)。また、傾斜面44は、該傾斜面44と本尺12のジョウ方向との間の角度A1が30度から60度の範囲で設けられていることが好ましく、特に好ましくは角度A1が40度から50度の範囲で設けられていることが好適である。さらに具体的には本実施形態における傾斜面44は、該傾斜面44と本尺12のジョウ方向との間の角度A1が45度の角度で設けられている。
【0033】
また、ローラー軸受部42には、サムローラー32の操作時に前記ローラー軸部38と接触する位置にストッパ46が設けられている。ストッパ46は、弾性体であることが好ましく、例えばゴム、スポンジ、プラスチック(柔軟性を有するプラスチックなど)等のうちのいずれかを含むことが好適である。また、ストッパ46は少なくても測定対象よりも柔軟性を有することが好ましい。
【0034】
サムローラーの動作
次に、本実施形態のサムローラー32の測定時における動作について説明する。
図7には、本発明の第1実施形態に係るノギスが備えるサムローラーの動作説明図を示す。
図7における動作説明は、
図1における外径測定ジョウ14(14a、14b)で測定対象を測定する場合についての動作説明とする。まず、ユーザーが指でサムローラー32を時計回りに回転させることで本尺12の長手方向における左方向へ外径測定ジョウ14b(測定スライダー部18)を微動させて測定対象へと近づける(
図1、
図7(a))。この時、
図7(a)に示すように、ローラー部36の本尺接触面48と本尺12とが接触した状態となっており、測定スライダー部18が本尺12を摺動している時は、ローラー軸部38は測定対象方向へ力が加わることとなる。そして、測定対象と外径測定ジョウ14の外径当接面22とが当接すると、当該ノギス10へ測定力(
図7(a)におけるジョウ方向矢印への力)が発生する。つまり、測定対象と外径当接面22が当接することで、ローラー軸部38への力(測定対象方向への力)が大きくなる。
【0035】
そして、ローラー軸部38の測定対象方向への力が一定以上になると、該ローラー軸部38はストッパ46を圧縮させながら角度A1が45度(鋭角)として設けられた傾斜面44に沿って移動することとなる。その結果、この移動に伴ってローラー部36の本尺接触面48が本尺12から徐々に離れることとなる(
図7(b))。具体的には、サムローラー32は、わずかに弾性変形しているので、2枚のローラー部36の内側面と本尺12との接触面の摩擦力(
図7(a)におけるジョウ反対側方向矢印への力)が徐々に減少していく。その結果、摩擦力の減少があるところまで達すると、ローラー部36は本尺12を滑り始める。より詳細に説明すると、傾斜面44に沿って摺動ないし転がることでローラー軸38がストッパ46を押すように進むと、徐々にサムローラー32が本尺12から離れるので、サムローラー32を本尺12へ押し付ける力が徐々に弱まり摩擦力が減少する。そして、あるところまでいくと(測定対象方向への力が一定以上になると)サムローラー32と本尺12とが滑りはじめるので、一定以上の測定力が発生することを防ぐことができる。つまり、ローラー部36と本尺12とが滑ることで本尺12から受ける反力、すなわち本尺12の長手方向の測定力が所定以上に発生しなくなるのである。
【0036】
このように、ノギス10に測定力が発生すると、その測定力を利用してローラー軸部38がストッパ46を圧縮させながら傾斜面44を移動して、
図7(b)に示すように本尺接触面48が本尺12から離れることで(ローラー部36と本尺12とが滑ることで)、誰が測定を行っても一定の測定力を生じさせることができる。具体的にはサムローラー32の操作時においては、測定スライダー部18が本尺12と接触しており、サムローラー32の回転とともに測定スライダー部18が本尺12に対して摺動しているが、測定力が発生し、ある一定の測定力に達すると本尺接触面48と本尺12とは徐々に離れる(ローラー部36と本尺12とが滑る)こととなる。つまり、ユーザーが測定対象にどんなに大きな押圧力を加えたとしてもローラー部36の本尺接触面48が本尺12から離れているので、結果的にサムローラー32は空回りするだけで測定スライダー部18が本尺12に対して摺動することはないため測定対象を破損することもなくなる。したがって、ユーザーごとに異なる押圧力がローラー部36へ印加されたとしても測定対象への測定力は一定であるため、ばらつきの少ない良好な測定が可能となる。
【0037】
そして、本実施形態におけるストッパ46は、例えば
図8(a)に示すようなコイルバネや、
図8(b)に示すような棒バネを用いることができる。例えば、この棒バネはサポーター34と同一材料で一体に成形することもできる。また、本実施形態におけるストッパ46は
図8に示したこれらのバネに限定されず、板バネや他の種類のバネを用いることもできる。この場合は、必要な測定力に応じたバネを選定できるので、より精度の良い測定が可能である。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るノギスについて図面を用いて説明する。
図1〜
図8に示したノギスおよびサムローラーと共通する構成については、符号100を足して示している。
【0039】
図9には、本発明の第2実施形態に係るノギスが備える微調整測定部の概略構成図を示す。本実施形態において特徴的なことは、微調整測定部130のサポーター134に設けられたローラー軸受部142に傾斜面144とストッパ146を有するとともに、さらに前記傾斜面144とストッパ146に対して本尺12長手方向の反対側に反対側傾斜面150と反対側ストッパ152を備えていることである。このような構成とすることで、測定対象の外径寸法に対する測定だけでなく、内径測定ジョウ16(16a、16b)を利用して測定対象の内径寸法を測定する際にも第1実施形態と同様に一定の測定力を生じさせることができる。
【0040】
反対側傾斜面150は、該反対側傾斜面150と本尺12のジョウとは反対方向(ジョウ反対側方向)との間の角度A2が90度未満の角度になるように設けられている(サポーター134は本尺12に対して略平行に位置している)。また、反対側傾斜面150は、該反対側傾斜面150と本尺12のジョウとは反対方向との間の角度A2が30度から60度の範囲(反対側傾斜面150と本尺12のジョウ方向との間の角度としては120度から150度の範囲)で設けられていることが好ましく、特に好ましくは角度A2が40度から50度の範囲(反対側傾斜面150と本尺12のジョウ方向との間の角度としては130度から140度の範囲)で設けられていることが好適である。具体的には本実施形態における傾斜面150は、角度A2が45度で設けられている。
【0041】
また、反対側ストッパ152は、ストッパ146と同様に、弾性体であることが好ましく、例えばゴム、スポンジ、プラスチック(柔軟性を有するプラスチックなど)等のうちのいずれかを含むことが好適である。反対側ストッパ152は少なくても測定対象よりも柔軟性を有することが好ましい。
【0042】
そして
図10には、本発明の第2実施形態に係るノギスが備えるサムローラーの動作説明図を示す。
図10における動作説明は、
図1における内径測定ジョウ16(16a、16b)で測定対象を測定する場合についての動作説明とする。まず、ユーザーが指でローラー部136を反時計回りに回転させることで本尺12の長手方向右側(正面から見て右方向)へ内径測定ジョウ16bを微動させて測定対象へと近づける(
図1、
図10(a))。この時、
図10(a)に示すように、ローラー部136の本尺接触面148と本尺12とが接触した状態となっており、測定スライダー部18が本尺12を摺動している時は、ローラー軸部138は右方向(測定対象方向とは反対方向)へ力が加わることとなる(
図10(a))。そして、測定対象と測定ジョウ16の内径当接面24が当接すると、当該ノギス10へ測定力(
図10(a)におけるジョウ反対側方向矢印への力)が発生する。つまり、測定対象と内径当接面24が当接することで、ローラー軸部138への力(測定対象方向とは反対方向への力)が大きくなる。この時に、ローラー軸部138の右方向への力が一定以上となると、該ローラー軸部138は反対側ストッパ152を圧縮させながら反対側傾斜面150に沿って移動することとなる。具体的には、サムローラーは、わずかに弾性変形しているので、2枚のローラー部136の内側面と本尺12との接触面の摩擦力(
図10(a)におけるジョウ方向矢印への力)が徐々に減少していく。その結果、摩擦力の減少があるところまで達すると、サムローラーは本尺12を滑り始め、ローラー部136の本尺接触面148が本尺12から徐々に離れることとなる(
図10(b))。
【0043】
このように、傾斜面144とストッパ146を備えるとともに、さらに反対側傾斜面150と反対側ストッパ152を備えることで、外径測定ジョウ14(14a、14b)による測定と内径測定ジョウ16(16a、16b)による測定のどちらの測定であっても、測定力を一定とすることができる。その結果、ユーザーごとに異なる押圧力がサムローラー132に印加されたとしても、測定対象へかかる測定力は一定以上にはならないため、ばらつきの少ない良好な測定結果を得ることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態における傾斜面144の角度A1および反対側傾斜面150の角度A2は、異なる角度としても良い。また、本実施形態におけるストッパ146と反対側ストッパ152もそれぞれ異なる弾性力を有する弾性体や弾性材料を利用しても良い。このような構成とすることで、外径測定における適正な測定力と内径測定における適正な測定力をそれぞれ設定することができる。
【0045】
以上のように本発明のサムローラー付きノギスによれば、ノギス10に設けられた微調整測定部30が2枚のローラー部36およびローラー軸部38を有するサムローラー32と、該サムローラー32を測定スライダー部18に固定する固定部40および前記ローラー軸部38を保持するローラー軸受部42を有するサポーター34で構成されており、前記ローラー軸受部42にはストッパ46(弾性体等)と傾斜面44(傾斜面44と本尺12のジョウ方向との間の角度は90度未満)を設けることで、ノギスに測定力が発生するとサムローラー32のローラー軸部38がストッパ46を圧縮させながら傾斜面44を摺動、あるいは傾斜面44に沿って転がることで本尺12から徐々に離れる(あるいは本尺12を滑る)ので、測定力が一定以下に制限されることになり、誰が使用しても測定対象へ同じ測定力を生じさせることができる。