【実施例】
【0030】
以下、本発明による球状銀粉およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0031】
[実施例1]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加えてpH調整した後、L−フェニルアラニン(和光純薬工業株式会社製の特級、分子量165.19、中性、炭素数9)を純水に溶解した2.4質量%のL−フェニルアラニン水溶液13.99g(銀に対して0.68質量%のL−フェニルアラニン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0032】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。
【0033】
また、得られた球状銀粉のBET比表面積を、BET比表面積測定器(株式会社マウンテック製のMacsorb HM−model 1210)を使用して、測定器内に60℃で10分間Ne−N
2混合ガス(窒素30%)を流して脱気した後、BET1点法により測定したところ、BET比表面積は0.55m
2/gであった。
【0034】
また、得られた球状銀粉の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布装置(マイクロトラック・ベル株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300EXII)により測定して、体積基準の累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)を求めたところ、それぞれ1.2μm、2.1μmおよび3.9μmであった。
【0035】
また、得られた球状銀粉5gに塩酸(関東化学株式会社製の精密分析用(濃度35〜37質量%))と純水を体積比1:1で混合した塩酸水溶液30mLを加えて、150℃で15分間加熱し、放冷した後、ろ過したろ液を上記と同じ塩酸水溶液で50mLに定容し、さらに超純水で5万倍に希釈して、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)(アジレント・テクノロジー株式会社製のAgilent6470トリプル四重極LC/MS)により分析したところ、銀1g当たり2.2mgのL−フェニルアラニンが検出され、銀は塩酸に溶解しないことから、球状銀粉の表面に0.22質量%のL−フェニルアラニンが存在していることが確認された。
【0036】
また、得られた球状銀粉5gに塩酸(関東化学株式会社製の精密分析用(濃度35〜37質量%))30mLを加え、超音波を10分間照射した後、150℃で15分間加熱し、放冷した後、ろ過して得られた銀粉を純水で洗浄して球状銀粉の表面のL−フェニルアラニンを除去し、真空乾燥機により73℃で1時間加熱して乾燥させた後、この乾燥した球状銀粉1.0gに硝酸(関東化学株式会社製の精密分析用(濃度60〜61質量%))と純水を体積比1:1で混合した硝酸水溶液4mLを加えて超音波により溶解し、得られた溶液に純水6mLを加えて混合して10mLとし、この溶液から5mLを分取し、この分取した溶液に純水を加えて50mLに希釈し、この希釈した溶液100μLを分取し、アセトニトリル(関東化学株式会社製のLC/MS用)800μLと、0.1質量%の酢酸(関東化学株式会社製の高速液体クロマトグラフィー用)と10mMの酢酸アンモニウム(関東化学株式会社製の特級)を含む水溶液100μLとを加えて1.0mLに定容して、上記の液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により分析したところ、球状銀粉の粒子の内部に0.0008質量%のL−フェニルアラニンが含まれていることが確認された。
【0037】
また、得られた球状銀粉1.0gに硝酸(関東化学株式会社製の精密分析用(60〜61%))と純水を体積比1:1で混合した硝酸水溶液10mLを加えて超音波により全溶解し、得られた溶液を超純水で1万倍に希釈して、上記の液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により分析したところ、粒子全体から0.19質量%のL−フェニルアラニンが検出された。
【0038】
また、得られた球状銀粉にペレット成形機により荷重50kgfを1分間加えて(直径5mmの)略円柱形のペレットを作製し、このペレットを熱機械的分析(TMA)装置(株式会社リガク製のTMA8311)にセットし、大気雰囲気中において常温から昇温速度10℃/分で900℃まで昇温し、ペレットの収縮率(常温のときのペレットの長さaと最も収縮したときのペレットの長さbとの差(a−b)に対するペレットの長さの減少量cの割合)(=c×100/(a−b))を測定したところ、収縮率が50%に達した温度は439℃であった。
【0039】
また、得られた球状銀粉3gを秤量(w1)して磁性るつぼに入れ、電気炉(アドバンテック社製のKM−1302)により800℃で30分強熱した後、冷却し、再度秤量(w2)することにより、強熱減量値(%)=(w1−w2)×100/w1から、強熱減量値(Ig−loss)を求めたところ、1.18%であった。
【0040】
また、得られた球状銀粉について、X線回折装置(株式会社リガク製のSmart Lab)によりCuKα線源(45kV/200mA)で30〜50°/2θの範囲を測定して、X線回折(XRD)の評価を行って、このX線回折パターンから得られた球状銀粉の(111)面の半価幅βを用いて、Scherrerの式D=(K・λ)/(β・cosθ)から結晶子径(Dx)を算出したところ、結晶子径(Dx)は225オングストロームであった。なお、Scherrerの式において、Dは結晶子径(オングストローム)、λは測定X線波長(オングストローム)、βは結晶子による回折幅の広がり、θは回折角のブラッグ角、KはScherrer定数を示し、この式中の測定X線波長λを1.54オングストローム、Scherrer定数Kを0.94とした。
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0042】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.72m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.9μm、1.4μmおよび2.1μmであり、銀1g当たり2.3mgのL−フェニルアラニが検出され、表面に0.23質量%のL−フェニルアラニンが存在し、粒子の内部に0.0018質量%のL−フェニルアラニンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−フェニルアラニンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は402℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.14%、結晶子径(Dx)は270オングストロームであった。
【0043】
また、得られた球状銀粉18.0gと、有機ビヒクルとして(エチルセルロースと2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを重量比92:8で混合した)溶液2.0gとを自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(EXAKT社製のM−80S)により混練することにより、得られた導電性ペーストをシリコン基板の表面に、スクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、幅250μm×長さ55mmのライン状に印刷し、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して予備焼成した後、高速焼成IR炉(日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験4室炉)のイン−アウト22.9秒間としてピーク温度770℃で焼成した。このようにして得られた導電膜について、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密株式会社製のサーフコム480B−12)により平均厚さを測定したところ、平均厚さは15.4μmであり、デジタルマルチメーター(株式会社アドバンテスト製のR6551)により抵抗値を測定したところ、抵抗値は0.288Ωであった。また、(この抵抗値と、膜厚、線幅および長さから求めた体積とから)導電膜の体積抵抗率を算出したところ、2.01μΩ・cmであった。
【0044】
また、焼成の際のピーク温度を720℃とした以外は、上記と同様の方法により得られた導電膜について、上記と同様の方法により、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、平均厚さは15.5μm、抵抗値は0.301Ω、体積抵抗率は2.12μΩ・cmであった。
【0045】
[実施例3]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液4.9gを加えてpH調整した後、L−トリプトファン(和光純薬工業株式会社製、分子量204.23、中性、炭素数11)を濃度3.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.757gに溶解した10質量%のL−トリプトファン水溶液4.17g(銀に対して0.84質量%のL−トリプトファン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0046】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は1.22m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.7μm、1.4μmおよび2.5μmであり、表面に0.003質量%のL−トリプトファンが存在し、粒子の内部に0.54質量%の(硝酸によりニトロ化された)L−トリプトファンが含まれていることが確認され、粒子全体から(硝酸によりニトロ化された)L−トリプトファンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は380℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.46%、結晶子径(Dx)は175オングストロームであった。
【0047】
[実施例4]
実施例3と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0048】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.70m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.0μm、1.7μmおよび2.7μmであり、表面に0.0098質量%のL−トリプトファンが存在し、粒子の内部に0.12質量%のL−トリプトファンと0.012質量%の(硝酸によりニトロ化された)L−トリプトファンが含まれていることが確認され、粒子全体から(硝酸によりニトロ化された)L−トリプトファンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は388℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.53%、結晶子径(Dx)は190オングストロームであった。
【0049】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは15.2μm、抵抗値は0.306Ωであり、体積抵抗率は2.11μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.7μm、抵抗値は0.304Ω、体積抵抗率は2.03μΩ・cmであった。
【0050】
[実施例5]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.2Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水1.55gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加えてpH調整した後、L−チロシン(和光純薬工業株式会社製、分子量181.19、中性、炭素数9)を純水に溶解した0.12質量%のL−チロシン水溶液300g(銀に対して0.75質量%のL−チロシン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液210gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0051】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.99m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.8μm、1.6μmおよび2.9μmであり、表面に0.098質量%のL−チロシンが存在し、粒子の内部に0.0008質量%のL−チロシンと0.0012質量%の(硝酸によりニトロ化された)L−チロシンが含まれていることが確認され、粒子全体から(硝酸によりニトロ化された)L−チロシンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は417℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.35%、結晶子径(Dx)は190オングストロームであった。
【0052】
[実施例6]
実施例5と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0053】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.60m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.0μm、1.7μmおよび2.8μmであり、表面にL−チロシンが存在し、粒子の内部に0.0002質量%の(硝酸によりニトロ化された)L−チロシンが含まれていることが確認され、粒子全体から(硝酸によりニトロ化された)L−チロシンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は381℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.29%、結晶子径(Dx)は210オングストロームであった。
【0054】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは15.6μm、抵抗値は0.306Ω、体積抵抗率は2.17μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは15.8μm、抵抗値は0.319Ω、体積抵抗率は2.29μΩ・cmであった。
【0055】
[実施例7]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加えてpH調整した後、L−プロリン(和光純薬工業株式会社製、分子量115.13、中性、炭素数5)を純水に溶解した10質量%のL−プロリン水溶液2.35g(銀に対して0.47質量%のL−プロリン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0056】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.81m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.8μm、1.7μmおよび3.0μmであり、表面に0.013質量%のL−プロリンが存在し、粒子の内部に0.00003質量%のL−プロリンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−プロリンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は457℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.85%、結晶子径(Dx)は250オングストロームであった。
【0057】
[実施例8]
実施例7と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0058】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.53m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.0μm、1.6μmおよび2.5μmであり、表面にL−プロリンが存在し、粒子の内部に0.0009質量%のL−プロリンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−プロリンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は446℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.88%、結晶子径(Dx)は270オングストロームであった。
【0059】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは14.9μm、抵抗値は0.320Ω、体積抵抗率は2.17μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは15.1μm、抵抗値は0.329Ω、体積抵抗率は2.26μΩ・cmであった。
【0060】
[実施例9]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.16gを加えてpH調整した後、L−アルギニン(和光純薬工業株式会社製、分子量174.20、塩基性、炭素数6)を1.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.7988gに溶解した5.0質量%のL−アルギニン水溶液7.16g(銀に対して0.72質量%のL−アルギニン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0061】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は1.05m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.8μm、1.6μmおよび2.8μmであり、表面に0.42質量%のL−アルギニンが存在し、粒子の内部に0.00004質量%のL−アルギニンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−アルギニンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は436℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.20%、結晶子径(Dx)は220オングストロームであった。
【0062】
[実施例10]
実施例9と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0063】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.62m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.9μm、1.7μmおよび2.7μmであり、表面に0.26質量%のL−アルギニンが存在し、粒子の内部に0.0001質量%のL−アルギニンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−アルギニンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は415℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.63%、結晶子径(Dx)は220オングストロームであった。
【0064】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.9μm、抵抗値は0.331Ω、体積抵抗率は2.09μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.1μm、抵抗値は0.327Ω、体積抵抗率は2.09μΩ・cmであった。
【0065】
[実施例11]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.16gを加えてpH調整した後、L−ヒスチジン(和光純薬工業株式会社製製、分子量155.16、塩基性、炭素数6)を濃度5.56質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.04gに溶解した5.0質量%のL−ヒスチジン水溶液6.36g(銀に対して0.64質量%のL−ヒスチジン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0066】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は1.47m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.8μm、1.5μmおよび2.6μmであり、表面に0.22質量%のL−ヒスチジンが存在し、粒子の内部に0.00035質量%のL−ヒスチジンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−ヒスチジンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は420℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.12%、結晶子径(Dx)は195オングストロームであった。
【0067】
[実施例12]
実施例11と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0068】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は1.55m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.9μm、1.7μmおよび2.7μmであり、表面に0.31質量%のL−ヒスチジンが存在し、粒子の内部に0.00023質量%のL−ヒスチジンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−ヒスチジンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は390℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.25%、結晶子径(Dx)は205オングストロームであった。
【0069】
また、得られた球状銀粉を使用し、予備混練の際に、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートと酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチルを重量比1:1で混合した溶液0.6gをさらに混合した以外は、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.7μm、抵抗値は0.350Ω、体積抵抗率は2.17μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.2μm、抵抗値は0.360Ω、体積抵抗率は2.32μΩ・cmであった。
【0070】
[比較例1]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加えてpH調整した後、液温を20℃に維持し、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0071】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.77m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.8μm、1.5μmおよび2.3μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は462℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.65%、結晶子径(Dx)は305オングストロームであった。
【0072】
[比較例2]
比較例1と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0073】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.55m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.9μm、1.4μmおよび2.1μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は461℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.88%、結晶子径(Dx)は290オングストロームであった。
【0074】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは15.5μm、抵抗値は0.362Ω、体積抵抗率は2.55μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは15.2μm、抵抗値は0.383Ω、体積抵抗率は2.65μΩ・cmであった。
【0075】
[比較例3]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加えてpH調整した後、L−アラニン(和光純薬工業株式会社製、分子量89.09、中性、炭素数3)を5.56質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.47gに溶解した5.0質量%のL−アラニン水溶液3.65g(銀に対して0.37質量%のL−アラニン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。その後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0076】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.66m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.1μm、2.0μmおよび3.7μmであり、表面に0.017質量%のL−アラニンが存在し、粒子の内部に0.00002質量%のL−アラニンが含まれていることが確認され、粒子全体からL−アラニンが検出された。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は477℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.78%、結晶子径(Dx)は265オングストロームであった。
【0077】
[比較例4]
比較例3と同様の方法により得られた銀粒子を含むスラリーに、表面処理剤として15.5重量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌した後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0078】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.60m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.9μm、1.5μmおよび2.3μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は441℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.95%、結晶子径(Dx)は255オングストロームであった。
【0079】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは15.2μm、抵抗値は0.358Ω、体積抵抗率は2.47μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは15.6μm、抵抗値は0.370Ω、体積抵抗率は2.62μΩ・cmであった。
【0080】
[比較例5]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水155gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加えてpH調整した後、液温を20℃に維持し、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液240gを純水144gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、L−フェニルアラニン(和光純薬工業株式会社製の特級、分子量165.19、中性、炭素数9)を純水に溶解した2.4質量%のL−フェニルアラニン水溶液13.99g(銀に対して0.68質量%のL−フェニルアラニン)を添加した後、表面処理剤として15.5質量%のステアリン酸溶液0.635gを加えて、十分に撹拌し、その後、撹拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0081】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、表面および内部の分析を行い、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.55m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.0μm、1.4μmおよび2.1μmであり、表面に0.005質量%のL−フェニルアラニンが存在していることは確認されたが、粒子の内部にL−フェニルアラニンが含まれていることは確認されなかった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は461℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.87%、結晶子径(Dx)は285オングストロームであった。
【0082】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは14.5μm、抵抗値は0.356Ω、体積抵抗率は2.35μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.2μm、抵抗値は0.373Ω、体積抵抗率は2.41μΩ・cmであった。
【0083】
[実施例13]
銀イオンとして0.13モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水162gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.86gを加えてpH調整した後、L−トリプトファン(和光純薬工業株式会社製、分子量204.23、中性、炭素数11)を濃度2.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.76gに溶解した7質量%のL−トリプトファン水溶液6.54g(銀に対して0.84質量%のL−トリプトファン)を添加し、液温を28℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液250gを純水125gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として15.5質量%のステアリン酸水溶液0.614gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0084】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.62m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.1μm、1.9μmおよび3.1μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は401℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.51%、結晶子径(Dx)は190オングストロームであった。
【0085】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.7μm、抵抗値は0.330Ωであり、体積抵抗率は2.05μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.0μm、抵抗値は0.337Ω、体積抵抗率は2.14μΩ・cmであった。
【0086】
[実施例14]
銀イオンとして0.13モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水162gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.79gを加えてpH調整した後、L−トリプトファン(和光純薬工業株式会社製、分子量204.23、中性、炭素数11)を濃度2.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.03gに溶解した7質量%のL−トリプトファン水溶液2.18g(銀に対して0.28質量%のL−トリプトファン)を添加し、液温を28℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液250gを純水125gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として15.5質量%のステアリン酸水溶液0.614gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0087】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.58m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.0μm、1.7μmおよび2.6μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は425℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.21%、結晶子径(Dx)は235オングストロームであった。
【0088】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.6μm、抵抗値は0.329Ωであり、体積抵抗率は2.03μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.1μm、抵抗値は0.330Ω、体積抵抗率は2.12μΩ・cmであった。
【0089】
[比較例6]
銀イオンとして0.13モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水162gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液7.5gを加えてpH調整した後、液温を28℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液250gを純水125gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として15.5質量%のステアリン酸水溶液0.614gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0090】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.51m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.1μm、1.7μmおよび2.6μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は463℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.73%、結晶子径(Dx)は305オングストロームであった。
【0091】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.6μm、抵抗値は0.352Ωであり、体積抵抗率は2.18μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.0μm、抵抗値は0.367Ω、体積抵抗率は2.33μΩ・cmであった。
【0092】
[実施例15]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水172gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.3gを加えてpH調整した後、L−トリプトファン(和光純薬工業株式会社製、分子量204.23、中性、炭素数11)を濃度2.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.56gに溶解した7質量%のL−トリプトファン水溶液5.98g(銀に対して0.84質量%のL−トリプトファン)を添加し、液温を40℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液241gを純水193gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として13.1質量%のオレイン酸水溶液0.785gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0093】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.51m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.3μm、2.4μmおよび3.8μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は421℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.57%、結晶子径(Dx)は205オングストロームであった。
【0094】
また、得られた球状銀粉を使用して、高速焼成IR炉のイン−アウト時間を35秒間とした以外は、実施例2と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.3μm、抵抗値は0.329Ωであり、体積抵抗率は1.99μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.4μm、抵抗値は0.338Ω、体積抵抗率は2.22μΩ・cmであった。
【0095】
[比較例7]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水172gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.8gを加えてpH調整した後、液温を40℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液241gを純水193gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として13.1質量%のオレイン酸水溶液0.785gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0096】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.39m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ1.5μm、2.4μmおよび4.0μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は476℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.53%、結晶子径(Dx)は335オングストロームであった。
【0097】
また、得られた球状銀粉を使用して、実施例15と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは13.2μm、抵抗値は0.370Ωであり、体積抵抗率は2.22μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは14.4μm、抵抗値は0.375Ω、体積抵抗率は2.46μΩ・cmであった。
【0098】
[実施例16]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水150gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.2gを加えてpH調整した後、L−トリプトファン(和光純薬工業株式会社製、分子量204.23、中性、炭素数11)を濃度2.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液5.56gに溶解した7質量%のL−トリプトファン水溶液5.98g(銀に対して0.84質量%のL−トリプトファン)を添加し、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液230gを純水207gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として2.0質量%のベンゾトリアゾール水溶液0.396gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0099】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は1.05m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.6μm、1.3μmおよび2.0μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は396℃、強熱減量値(Ig−loss)は1.67%、結晶子径(Dx)は170オングストロームであった。
【0100】
また、得られた球状銀粉を使用して、予備混練の際に2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート0.39gをさらに混合した以外は、実施例15と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは11.1μm、抵抗値は0.391Ωであり、体積抵抗率は1.98μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは11.4μm、抵抗値は0.405Ω、体積抵抗率は2.11μΩ・cmであった。
【0101】
[比較例8]
銀イオンとして0.12モル/Lの硝酸銀水溶液3.3Lに、濃度28質量%の工業用アンモニア水150gを加えて、銀アンミン錯体溶液を得た。この銀アンミン錯体溶液に、濃度20質量%の水酸化ナトリウム水溶液6.8gを加えてpH調整した後、液温を20℃に維持して、還元剤として37質量%のホルマリン水溶液230gを純水207gで希釈した水溶液を加えて、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。このスラリーに、表面処理剤として2.0質量%のベンゾトリアゾール水溶液0.396gを加えて、十分に撹拌した後、攪拌を止めて、銀粒子を沈降させ、この銀粒子が沈殿した液をろ過し、水洗し、乾燥させた後、解砕して、銀粉を得た。
【0102】
このようにして得られた銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率10,000倍で観察したところ、銀粉の形状は球状であることが確認された。また、得られた球状銀粉について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積および粒度分布を測定し、熱機械的分析(TMA)による収縮率を測定し、強熱減量値(Ig−loss)を算出し、結晶子径(Dx)を求めた。その結果、BET比表面積は0.84m
2/g、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)および累積90%粒子径(D
90)はそれぞれ0.8μm、1.3μmおよび2.0μmであった。また、TMAによる収縮率が50%に達した温度は453℃、強熱減量値(Ig−loss)は0.83%、結晶子径(Dx)は260オングストロームであった。
【0103】
また、得られた球状銀粉を使用して、予備混練の際に2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート0.39gをさら混合した以外は、実施例15と同様の方法により、導電性ペーストおよび導電膜を作製して、平均厚さと抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出したところ、焼成の際のピーク温度を770℃としたときの導電膜の平均厚さは11.1μm、抵抗値は0.400Ωであり、体積抵抗率は2.02μΩ・cmであり、焼成の際のピーク温度を720℃としたときの導電膜の平均厚さは11.5μm、抵抗値は0.419Ω、体積抵抗率は2.19μΩ・cmであった。
【0104】
これらの実施例および比較例で得られた球状銀粉の特性を表1〜表3に示す。また、実施例2、4、6、8、10、12および比較例2、4、5で得られた球状銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製のJSM−IT300LV)により1万倍で観察したSEM写真をそれぞれ
図1〜
図9に示し、実施例13〜16で得られた球状銀粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により1万倍で観察したSEM写真をそれぞれ
図10〜
図13に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】