特許第6857293号(P6857293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857293
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】凍結保存容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20210405BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20210405BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B65D81/18 B
   F25D3/10 E
   A61J3/00 301
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-51606(P2017-51606)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-154357(P2018-154357A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】米内 冠
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−141346(JP,A)
【文献】 実開昭62−93745(JP,U)
【文献】 特開昭59−142365(JP,A)
【文献】 実開昭61−55684(JP,U)
【文献】 特開2006−112456(JP,A)
【文献】 特開平6−300409(JP,A)
【文献】 米国特許第6393847(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
F25D 3/10
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結対象物の収納部を形成する内槽と、該内槽を囲む状態で配置され、内槽との間に液体窒素貯留部を形成する中間槽と、該中間槽を囲む状態で配置され、中間槽との間に断熱層を形成する外槽とを備え、上部に凍結対象物を出し入れするための出入口を設けた三重構造の凍結保存容器において、前記内槽を貫通して上端が前記内槽の底部に開口し、下端が前記断熱層内に突出した排液部材を設け、該排液部材の下端部に、前記断熱層内に配置される蒸発・放出管の一端を接続するとともに、該蒸発・放出管の他端を前記外槽の外部に開口させたことを特徴とする凍結保存容器。
【請求項2】
前記蒸発・放出管は、前記排液部材に接続する一端から前記外部に開口する他端に向かう上り勾配、又は、前記排液部材への接続部に逆止弁を有していることを特徴とする請求項1記載の凍結保存容器。
【請求項3】
前記蒸発・放出管は、前記排液部材に接続する一端から前記中間槽の下方の前記断熱層内に平面視で螺旋状、蛇行状又は多角形状の多層巻形状に配置され、前記中間槽の下方より外周側で上方に立ち上がり、前記外槽を貫通して外部に突出していることを特徴とする請求項1又は2記載の凍結保存容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存容器に関し、詳しくは、動物の精子、受精卵、生殖細胞のような生体試料などを凍結保存するための凍結保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の精子、受精卵、生殖細胞のような生体試料などを凍結保存するための凍結保存容器として、上部に凍結対象物を出し入れするための出入口を有する内槽と、該内槽を囲むように配置され、内槽との間に液体窒素貯留部を形成する中間槽と、該中間槽を囲むように配置され、中間槽との間に断熱層を形成する外槽とを備えた三重構造の容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−141346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載された三重構造の凍結保存容器は、生体試料などの凍結対象物が液体窒素によって汚染されることがないという利点は有しているものの、液体窒素貯留部に貯留された液体窒素によって内槽の周壁が−190℃程度に冷却されるため、内槽内の空気が周壁内面に結露して液体空気となり、長期間運用する過程で内槽底部に蓄積することがある。この液体空気の量が増加すると、被凍結物に接触するおそれがあることから、定期的に内槽内から液体空気を除去する必要がある。内槽内から液体空気を除去するためには、内槽内に収納した被凍結物を外に出す必要があり、被凍結物が昇温するという問題があるだけでなく、多大な手間を要していた。
【0005】
そこで本発明は、内槽内に液体空気が溜まることがない構造を備えた凍結保存容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の凍結保存容器は、凍結対象物の収納部を形成する内槽と、該内槽を囲む状態で配置され、内槽との間に液体窒素貯留部を形成する中間槽と、該中間槽を囲む状態で配置され、中間槽との間に断熱層を形成する外槽とを備え、上部に凍結対象物を出し入れするための出入口を設けた三重構造の凍結保存容器において、前記内槽を貫通して上端が前記内槽の底部に開口し、下端が前記断熱層内に突出した排液部材を設け、該排液部材の下端部に、前記断熱層内に配置される蒸発・放出管の一端を接続するとともに、該蒸発・放出管の他端を前記外槽の外部に開口させたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の凍結保存容器は、前記蒸発・放出管が、前記排液部材に接続する一端から前記外部に開口する他端に向かう上り勾配、又は、前記排液部材への接続部に逆止弁を有していることを特徴としている。
【0008】
また、前記蒸発・放出管は、前記排液部材に接続する一端から前記中間槽の下方の前記断熱層内に平面視で螺旋状螺旋状、蛇行状又は多角形状の多層巻形状に配置され、前記中間槽の下方より外周側で上方に立ち上がり、前記外槽を貫通して外部に突出していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の凍結保存容器によれば、内槽内で発生する液体空気を自動的に外部に排出できるので、被凍結物が汚染されることがなく、内槽内から液体空気を除去するための作業が不要となり、被凍結物を長期間にわたって所定の凍結状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の凍結保存容器の一形態例を示す一部断面斜視図である。
図2】同じく正面図である。
図3】同じく平面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
図5図3のV−V断面図である。
図6図2のVI−VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6は本発明の凍結保存容器の一形態例を示している。本形態例に示す凍結保存容器は、内槽11と、該内槽11を囲む状態で配置された中間槽12と、該中間槽12を囲む状態で配置された外槽13とを有する三重構造で形成されている。内槽11内は、被凍結物を所定の凍結状態で収納するための収納部14となっており、内槽11と中間槽12との間には、液体窒素を貯留するための液体窒素貯留部15が形成されている。また、中間槽12と外槽13との間には、積層真空法を採用した断熱層16が形成されている。
【0012】
内槽11、中間槽12及び外槽13の上部中央には、被凍結物を収納部14内に出し入れするための出入口11a,12a,13aが設けられており、中間槽12の出入口12aと外槽13の出入口13aとの間には、両出入口12a,13a間を気密に接続する連結筒17が設けられ、該連結筒17の内側に、断熱性を有する断熱蓋体18が着脱可能に挿入されている。また、中間槽12の底板には、円形の開口部12bが設けられており、該開口部12b内に内槽11の底板中央部11bが嵌入して気密に接合されており、内槽11の底板中央部11bは、断熱層16に接した状態になっている。
【0013】
内槽11の底板中央部11bには、底板中央部11bを貫通して上端が内槽11の底面最下端に開口し、下端が前記断熱層16内に配置される有底筒状の排液部材19が設けられ、該排液部材19の下端は、排液部材19を介して内槽11及び中間槽12を支持する断熱性支持部材20によって外槽13の底板中央部13bに保持されている。
【0014】
さらに、排液部材19の下端部側面には、排液部材19の筒内に連通する蒸発・放出管21の一端が接続されている。この蒸発・放出管21は、前記断熱層16内に配置されるもので、平面視で排液部材19に接続する一端を中心として中間槽12の下方部分で螺旋状に形成された螺旋部21aと、中間槽12の下方部分より外周側に位置する螺旋部21aの終端から鉛直方向上方に立ち上がった立ち上がり部21bとで形成され、該立ち上がり部21bの上端部は、貫通部材22を介して外槽13の天板13cを貫通することにより外部に突出している。外部に突出した蒸発・放出管21の他端には、逆J字状で先端が容器側方下部で下方に開口した逆J字管23の基端が接続されている。また、蒸発・放出管21の螺旋部21aは、排液部材19に接続する一端を最下端として螺旋部21aの終端に向かう上り勾配を有している。
【0015】
前記外槽13の天板14cには、蒸発・放出管21の他端に設けられた逆J字管23のほか、左右一対の把手24,24と、液体窒素貯留部15内に液体窒素を充填するための液体窒素充填管25と、液体窒素貯留部15内の液体窒素の液面を監視するための液面センサ26と、断熱層16内を真空排気するための真空排気口27と、断熱蓋体18の上方を開閉可能に覆う外蓋28とが設けられている。液体窒素充填管25の充填管25a及び液面センサ26の保護管26aは、貫通部材25b,26bを介して外槽13の天板外周部及び中間槽12の天板外周部を貫通して液体窒素貯留部15内にそれぞれ挿入されている。
【0016】
この凍結保存容器は、排液部材19を取り付けた内槽11や中間槽12及び外槽13などを所定の状態で組み合わせ、真空排気口27から真空ポンプによって断熱層16内を真空排気して断熱状態とした後、液体窒素充填管25から液体窒素貯留部15内に所定量の液体窒素を充填して使用する。
【0017】
液体窒素貯留部15内の液体窒素によって冷却される内槽11内の収納部14の雰囲気が所定の低温状態になった後、外蓋28を開き、断熱蓋体18を抜き取って収納部14内に被凍結物を収納する。この被凍結物の収納部14内への被凍結物の出し入れは、被凍結物の形状などに応じて従来と同様にして行うことができる。被凍結物の凍結保管中は、液面センサ26によって検出した液体窒素貯留部15内の液体窒素の液面に応じて液体窒素充填管25から液体窒素を適宜補充する。
【0018】
収納部14内に被凍結物を収納して凍結保存を行っている使用中に、収納部14内の空気が、液体窒素貯留部15内の液体窒素によって−190℃程度に冷却されている内槽11の壁面に結露して液体空気となり、内槽11の壁面に沿って内槽11の底面に流下すると、底面最下端に開口した排液部材19の筒内に流入し、さらに、蒸発・放出管21の内部に流入する。
【0019】
蒸発・放出管21は、断熱層16内に配置されているため、液体空気の沸点(約−190℃)より高い温度となっていることから、蒸発・放出管21内に流入した液体空気は次第に気化してガス状空気となり、螺旋部21aの上り勾配に沿って上昇し、立ち上がり部21bを通り、突出部21cに接続した逆J字管23を通過して下方に向かって外気に放出される。このとき、蒸発・放出管21の螺旋部21aが上り勾配となっているため、蒸発・放出管21内で気化したガス状空気が排液部材19に向かって逆流することがなく、排液部材19内に流下した液体空気をガス状空気によって吹き上げることがない。
【0020】
したがって、内槽11内で発生した液体空気を排液部材19から蒸発・放出管21を介して外部に放出できるので、内槽11内に液体空気が蓄積されることがなくなり、液体空気が被凍結物に接触することを回避できる。これにより、被凍結物が液体空気によって汚染されることを防止できる。さらに、内槽11内から液体空気を除去する作業が不要になるので、被凍結物を内槽11内の低温の収納部14内に長期にわたって安定した凍結状態で収納保管しておくことができる。
【0021】
なお、各槽や配管は、アルミニウム合金やステンレス鋼などの金属で形成することができ、構造や形状は、収納量などの条件に応じて適宜に設定することができる。また、充填管25a及び保護管26aは、一つの貫通部材に纏めて外槽13の肩部と中間槽12の肩部とを1箇所で貫通させることもでき、適宜な断熱構造を採用することもできる。
【0022】
さらに、蒸発・放出管21は、適当量の液体空気を管内に蓄積できる構造とすることが好ましく、前記形態例に示しように、排液部材19への接続部から立ち上がり部21bに向けて上り勾配の螺旋部21aを設けることにより、螺旋部21aの下部側となる排液部材19の近傍に液体空気を貯留することができる。排液部材19への接続部から立ち上がり部21bに向かう配管の形状は、螺旋状に限らず、蛇行させたり、多角形の多層巻形状や円形状などにしたりすることによっても、液体空気を貯留するように形成することができる。さらに、排液部材19への接続部から立ち上がり部21bに向かう配管の途中にタンク状の大径管を設けることによって液体空気を貯留するように形成することもできる。
【0023】
また、立ち上がり部21bを外槽13の上部まで設けずに、外槽13の上下方向中間部で外槽13の外方に突出させるようにしてもよく、逆U字管23に代えて突出部21cに逆止弁を設けることもできる。内槽11内から液体空気を排出する排液部材19の位置も任意であり、内槽11内から液体空気を排出可能な任意の位置に設けることができ、形状や設置数も任意である。例えば、外槽13の底面から立ち上がった壁面に立ち上がり部21bの端部を開口させても液体空気の排出は可能である。さらに、排液部材19と蒸発・放出管21とを一体形成することも可能である。また、液体窒素貯留部15には、液体窒素吸収剤を充填してもよい。これにより、凍結保存容器を移動させたときに中間槽12の周壁を伝って収納部14内に液体窒素が回り込むトラブルを防止できる。さらに、蒸発・放出管21の排液部材19への接続部から立ち上がり部21bに向かう配管は、全て上り勾配でなくてもよい。例えば水平でもよく、また一部だけが上り勾配であっても、蒸発・放出管21内で気化したガス状空気が排液部材19に向かって逆流することを防ぐことができる。また、蒸発・放出管21の排液部材19への接続部に逆止弁を設けることによっても、逆流防止効果を得ることができる。
【0024】
凍結保存容器で凍結保存する被凍結物の形状や大きさは任意であり、例えば、バイアルやアンプルに封入した生体試料や、シート状に成形した各種試料を対象とすることができ、収納部14に対する被凍結物の出し入れや収納部14内での被凍結物の保持などを確実に行えればよく、通常は、従来と同様にして行うようにすればよい。
【符号の説明】
【0025】
11…内槽、11a…出入口、11b…底板中央部、12…中間槽、12a…出入口、12b…開口部、13…外槽、13a…出入口、13b…底板中央部、14…収納部、15…液体窒素貯留部、16…断熱層、17…連結筒、18…断熱蓋体、19…排液部材、20…断熱性支持部材、21…蒸発・放出管、21a…螺旋部、21b…立ち上がり部、21c…突出部、22…貫通部材、23…放出管、24…把手、25…液体窒素充填管、25a…充填管、25b…貫通部材、26…液面センサ、26a…保護管、26b…貫通部材、27…真空排気口、28…外蓋
図1
図2
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図4
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