(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、天然の岩牡蠣は、養殖の岩牡蠣よりも価格が高く、地域の特産品として位置付けられることが多いために価値が高い。天然の岩牡蠣は、全国各地の海域に分布し、潮間帯よりも深い岩礁などに着生して生息している。特に、非特許文献1に記載されたように、消波ブロック、根固ブロックや人工護岸などの海中のコンクリート構造物に天然の岩牡蠣の群生が見られている。このため、
図14に示すようなコンクリート構造物を含む牡蠣礁900を主な漁場として、天然の岩牡蠣が採取されている。
【0003】
天然の岩牡蠣は、放卵・放精により生まれた受精卵から孵化した後に海中を浮遊する浮遊生活に入り、しばらくの浮遊生活を経て幼生となり、幼生時に海中のコンクリート構造物に付着して付着生活に入るという過程を経て成長する。そして、2年間程度付着生活を続けると、出荷の目安とされる殻付重量300g以上に成長するものが多くなり、海中のコンクリート構造物から剥離されて採取される。
【0004】
経済的観点などから、牡蠣礁900は繰り返し使用できることが望ましいが、一度コンクリート構造物から牡蠣が採取されると、該コンクリート構造物への新たな幼生の付着量が少なくなり、結果的に漁獲量が減少、牡蠣礁としての再利用が困難となることが知られている。これは、コンクリート構造物の表面に海藻や牡蠣以外の貝類などの付着物が付着することで、該表面に牡蠣の幼生が付着しづらくなることに起因する。
【0005】
そこで、牡蠣の幼生が付着生活に入る時期に合わせて、コンクリート構造物に付着した付着物を除去することで、繰り返し使用される牡蠣礁900への幼生の付着を促進させて牡蠣の漁獲量を維持することが試みられている。コンクリート構造物からの付着物の除去は、作業者が海中に潜って、コンクリート構造物の表面を個々に清掃することにより行われている。例えば、このような清掃は、水平な表面については油圧式水中グラインダーなど、立体的な表面についてはエアケレンなどの処理装置を用いて行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような海中ブロックからの付着物の除去処理は、作業者が海中ブロックの表面を個々に清掃することが必要とされるため、大変な労力と時間を要する。このため、海中ブロックに付着した付着物の除去処理を広範囲で行うことは困難であり、牡蠣の漁獲量を維持することは容易ではなかった。
【0008】
したがって、本発明は、コンクリートブロック等の海中ブロックに付着した付着物の除去を効率的かつ容易に行うことができ、牡蠣の漁獲量を容易に維持することができる牡蠣礁、その造成方法および牡蠣採取方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る牡蠣礁は、海中に設置された海中ブロックと、前記海中ブロックの表面の少なくとも一部を覆って、前記海中ブロックに着脱可能に止着された一つまたは複数の牡蠣着生プレートと、を備える。
【0010】
これにより、海中ブロックの表面に、本来付着させたくない牡蠣以外の付着物が直接付着するのを低減または防止することができると共に、牡蠣着生プレートに該付着物を付着させることができる。そして、該付着物を牡蠣着生プレートに付着させた状態で、海中ブロックから牡蠣着生プレートのみを除去できる。したがって、本発明の実施形態に係る牡蠣礁は、海中ブロックと牡蠣着生プレートとを含む海中構造物の表面から付着物の除去を効率的かつ容易に行うことができ、牡蠣の漁獲量を容易に維持することができる。
【0011】
また、本発明の実施形態に係る牡蠣礁は、牡蠣着生プレートを、替えの新しい牡蠣着生プレートや、海中ブロックから取り外してから付着物を十分に除去した牡蠣着生プレートの再利用品に交換することができる。これにより、海中構造物の平滑な表面を容易に再生することができる。したがって、該牡蠣礁によれば、海中ブロックを牡蠣礁の海中に設置してから1回目の漁獲量に対して、同2回目以降の漁獲量が同等程度となるように漁獲量を容易に維持することができる。
【0012】
さらにまた、海中ブロックから牡蠣着生プレートを取り外した後に、牡蠣着生プレートから牡蠣を取り外すことができるから、牡蠣の取外作業を海中ブロック近傍において行う必要が生ぜず、海中ブロックから離れた場所で牡蠣の取外作業を容易に行うことができる。
【0013】
上記牡蠣礁は、上記海中ブロックが複数の表面を含む多面体ブロックであり、上記海中ブロックに固定されたボルト部材と、上記ボルト部材に着脱可能に固定されたナット部材と、を更に備え、上記牡蠣着生プレートは、上記ボルト部材と上記ナット部材とによって上記海中ブロックに着脱可能に止着されたものであってもよい。
【0014】
これにより、本発明の牡蠣礁は、牡蠣着生プレートを海中ブロックに対して容易に着脱させることができる。
【0015】
本発明の実施形態に係る牡蠣礁は、上記牡蠣着生プレートが、上記海中ブロックの表面に当接された当接面と、上記当接面に対向し、海側に向けて配置された非当接面とを有し、上記非当接面に、表面積が0.01m
2以上1.00m
2以下の平坦部を備えるものであってもよい。
【0016】
これにより、出荷可能な程度に十分な大きさの牡蠣を形状よく成長させることができ、かつ、牡蠣着生プレートの取扱いを容易とすることができる。
【0017】
上記牡蠣礁は、上記牡蠣着生プレートがスレート材で構成されていてもよい。
スレート材は、牡蠣を良好に支持できる程度に硬く、海水によって膨潤しにくい材料である。このため、上記牡蠣礁は、上記牡蠣着生プレートの取り外しによる牡蠣の収穫を良好に行うことができ、上記牡蠣着生プレートを海中ブロックに長期間安定して固定させておくことができる。
【0018】
本発明の実施形態に係る牡蠣礁の造成方法は、海中に設置された海中ブロックに牡蠣着生プレートを着脱可能に止着する設置工程を備える。これにより、上記牡蠣礁を造成することができる。
【0019】
本発明の実施形態に係る牡蠣採取方法は、海中に設置された海中ブロックに牡蠣着生プレートを着脱可能に止着する設置工程と、上記海中ブロックから上記牡蠣着生プレートを取り外す回収工程と、を備える。これにより、牡蠣礁から一層容易に牡蠣を採取することができる。
【0020】
また、本発明の実施形態に係る牡蠣採取方法は、上記回収工程の後に、牡蠣が被着した上記牡蠣着生プレートから上記牡蠣を取り外す取外工程を更に備え、上記設置工程と上記回収工程とは海中で実施され、上記取外工程は陸上で実施されてもよい。これにより、海中で海中ブロックから牡蠣着生プレートを取り外してから、陸上で牡蠣着生プレートから牡蠣を取り外すことができるため、牡蠣の取外作業を一層容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、コンクリートブロック等の海中ブロックに付着した付着物の除去を効率的かつ容易に行うことができ、牡蠣の漁獲量を容易に維持することができる牡蠣礁、その造成方法および牡蠣採取方法の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る牡蠣礁を示す部分概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る牡蠣礁の牡蠣着生プレートを海中ブロックに止着した海中構造物の部分拡大図である。
【
図3】
図2の牡蠣礁の牡蠣着生プレートを海中ブロックに止着した止着部における部分断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る牡蠣礁の造成方法を示す部分工程図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る牡蠣礁の造成方法を示す部分工程図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る牡蠣礁の造成方法を示す部分工程図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る牡蠣採取方法を示す部分工程図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る牡蠣採取方法を示す部分工程図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る牡蠣着生プレートを示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る牡蠣着生プレートの変形例を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る牡蠣着生プレートを海中ブロックに止着する方法を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る牡蠣礁の造成方法の変形例を示す部分工程図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る牡蠣礁の造成方法の変形例を示す部分工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図13を参照して、本発明の実施形態に係る牡蠣礁1、牡蠣礁1の造成方法および牡蠣礁1からの牡蠣採取方法を説明する。なお、本明細書において、「海中」とは、海洋中のことをいい、海底を含む概念として用いている。また、本明細書において、「陸上」とは、海中以外のことをいい、海上に位置する船上や、陸上における水槽中をも含む概念を示すものである。また、明細書全体を通じて、同じ構成には同じ符号を付して説明することで、重複する説明を省略している。
【0024】
まず、
図1から
図3、
図11を参照して、本発明の一実施形態に係る牡蠣礁1について説明する。
図1は、牡蠣礁1を示す部分概略図であり、
図2は、牡蠣礁1の牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に止着した海中構造物の部分拡大図であり、
図3は、
図2の牡蠣礁1の牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に止着した止着部における部分断面図である。
図11は、牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に止着する方法を示す説明図である。
【0025】
牡蠣礁1は、海中に設置された海中ブロック40と、海中ブロック40の表面の少なくとも一部を覆って、着脱可能に止着された一つまたは複数の牡蠣着生プレート10とを含む海中構造物を備えている。図示するように、牡蠣礁1は、このような海中構造物を一つまたは複数含んでもよい。海中ブロック40の表面は平面であることが好ましい。
【0026】
これにより、海中ブロック40の表面の少なくとも一部において、本来付着させたくない牡蠣以外の付着物が海中ブロック40に直接付着することを低減または防止することができると共に、該付着物を牡蠣着生プレート10に付着させることができる。そして、牡蠣着生プレート10は、該付着物が付着した状態で海中ブロック40から除去できる。したがって、牡蠣礁1によれば、海中ブロック40の表面からの付着物の除去を効率的かつ容易に行うことができる。また、牡蠣礁1によれば、海中ブロック40を牡蠣礁1の海中に設置してから1回目の漁獲量に対して、同2回目以降の漁獲量が同等程度となるように漁獲量を容易に維持することができる。
【0027】
また、牡蠣礁1は、牡蠣着生プレート10を、替えの新しい牡蠣着生プレートや、海中ブロック40から取り外してから付着物を十分に除去した牡蠣着生プレート10の再利用品に交換することよって、海中構造物の平滑な表面を容易に再生することができる。したがって、該牡蠣礁によれば、海中ブロックを牡蠣礁の海中に設置してから1回目の漁獲量に対して、同2回目以降の漁獲量が同等程度となるように漁獲量を容易に維持することができる。
【0028】
さらにまた、牡蠣礁1は、海中ブロック40から牡蠣着生プレート10を取り外してから、牡蠣着生プレート10から牡蠣を取り外すことができるから、牡蠣の取外作業も容易に行うことができる。
【0029】
海中ブロック40は、四脚ブロック、六脚ブロック、八脚ブロック、中空三角ブロック、ドーム型ブロック等の海中のブロック状構造物であればいずれでも構わない。特に、
図4に示すような多脚ブロック状の消波ブロック、
図12に示すような角型ブロック状の根固ブロックなどの少なくとも一つの平面を備えるコンクリートブロックであることが好ましい。特に、海中ブロック40が海底に設置されたものである場合、作業者が海底まで潜って、油圧式水中グラインダーなどで個々に清掃する従来の方法は容易ではない。したがって、海底に設置された海中ブロック40を含む牡蠣礁である場合、本実施形態の牡蠣礁1をより効果的に採用することができる。
【0030】
図2および
図3に示すように、海中に設置された海中ブロック40には、一つまたは複数の牡蠣着生プレート10が着脱可能に止着されている。例えば、
図2、
図3および
図11に示すように、牡蠣着生プレート10は、海中ブロック40に固定されたボルト部材30と、ボルト部材30に係合されたナット部材20とによって、海中ブロック40に着脱可能に止着されてもよい。
【0031】
例えば、ボルト部材30は、平板部32と平板部32から突出したネジ部34とを備えている。ボルト部材30の平板部32は、水中ボンド、ネジ、アンカーなどの公知の方法によって、海中ブロック40の表面に固定されている。ナット部材20は、ネジ溝を備える把持部22とフランジ部24とを備えている。そして、ナット部材20は、ナット部材20のネジ溝とボルト部材30のネジ部34とが係合されることで、ボルト部材30に止着される。そして、牡蠣着生プレート10は、ボルト部材30の平板部32とナット部材20のフランジ部24とに強固に挟持されている。
【0032】
ボルト部材30およびナット部材20の材質としては、樹脂などの非金属材料や金属からなるものを例示することができる。なかでも、ボルト部材30は少なくともネジ部34が金属材料からなり、ナット部材20は少なくともネジ溝周りが樹脂材料からなることが好ましい。ボルト部材30は少なくともネジ部34が金属材料からなることで、ボルト部材30をナット部材20に強固に固定することができ、ナット部材20の少なくともネジ溝が樹脂材料からなることで、金属に劣化が生じやすい海中においてもボルト部材30とナット部材20との係合部に経時劣化を生じにくくすることができ、ボルト部材30とナット部材20とを着脱しやすくすることができる。なお、ボルト部材30は全体が金属材料からなり、ナット部材20は全体が樹脂材料からなるものであってもよい。
【0033】
牡蠣着生プレート10は、
図9および
図11に示すように、ボルト部材30のネジ部34を通す貫通孔14と、成長した牡蠣が被着可能な大きさを備える平坦部12を備える平板部材であってもよい。なお、貫通孔14は、牡蠣着生プレート10の周縁部に複数設けられることが好ましい。これにより、牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に強固に止着でき、牡蠣着生プレート10の回転を抑えることができると共に、牡蠣が着生し成長するための平坦部12を牡蠣着生プレート10の中央に大きく確保することができる。
【0034】
なお、複数の貫通孔14の配置、数および形状は、牡蠣着生プレート10の形状や材質などに応じて適宜選択可能である。例えば、
図9等に示すように、牡蠣着生プレート10の四隅に4つ設けられてもよいし、さらに多くの貫通孔14が設けられてもよい。牡蠣着生プレート10の構成材料は、牡蠣が着生できる材料であればよく、例えば、スレート材、コンクリート材、プラスチック材を用いることができる。なかでも、牡蠣着生プレート10としては、スレート材で構成されたものを用いることが好ましい。特に屋根材などにも使われる硬質木片スレート材は、牡蠣を支持できる程度に強度があり、海水による膨潤が生じにくいためである。
【0035】
また、
図1に示すように、海中ブロック40は、複数の表面を含む多面体ブロックであり、牡蠣着生プレート10は、海中ブロック40の表面に当接された当接面と、当接面に対向し、海側に向けて配置された非当接面とを有する平板部材であってもよい。これにより、本発明の牡蠣礁1は、より多くの牡蠣の幼生を着生させることができ、牡蠣着生プレート10上で形状のよい牡蠣を成長させることができる。牡蠣着生プレート10は、海中ブロック40の複数の表面の全てに設置されてもよいし、複数の表面の一部に設置されてもよい。なお、
図1には、表面を30面有する多面体の消波ブロックが図示されている。
【0036】
海中ブロック40の一表面には、
図2等に示すように、牡蠣着生プレート10が一つ止着されていてもよいし、複数止着されていてもよい。例えば、
図10には、牡蠣着生プレート10を二分割した変形例である牡蠣着生プレート10aを示しているが、海中ブロック40の一表面に、2つ又はそれ以上の牡蠣着生プレート10aを含んでいてもよい。この場合、牡蠣着生プレート10aは、ボルト部30のネジ部34が牡蠣着生プレート10aの貫通孔14aを通った状態で位置決めされて、海中ブロック40に止着される。
【0037】
また、牡蠣着生プレート10は、非当接面に表面積が0.01m
2以上1.00m
2以下の平坦部12を備えるものであってもよい。通常、出荷可能な牡蠣は長手方向に10cm以上の大きさとなることと、牡蠣着生プレート10に着生した牡蠣の幼生は牡蠣着生プレート10平面におけるいずれの方向にも成長可能であるため、平坦部12の表面積を0.01m
2以上にすると、出荷可能な程度に十分な大きさの牡蠣を形状よく成長させることができ、1.00m
2以下にすると牡蠣着生プレート10の取扱いを容易とすることができる。
【0038】
上記実施形態において、海中ブロック40の表面に平板部32を有するボルト部材30を固定する例を示したが、
図12に示すように、ボルト部材30aの一部が海中ブロック40aに埋設されたものを用いてもよい。この例においては、海中ブロック40として、根固ブロック40aを用いて説明する。ボルト部材30aは、後施工アンカー工法により、海中ブロック40aに設けられた穿孔内にボルト部材30aの一部を固着することで埋設されたものであってもよいし、先付けアンカー工法により、コンクリート打設前にボルト部材30aを所定の位置に設置後、コンクリートを打設してボルト部材30aの一部を固着することで埋設されたものであってもよい。後施工アンカー工法による場合、ボルト部材30としては、金属拡張アンカー、接着系アンカー、無機系アンカー、スタッドボルト等を用いることができる。
【0039】
牡蠣着生プレート10bは、
図13に示すように、ボルト部材30aの他部を牡蠣着生プレート10bの貫通孔(図示せず)に挿通させた後、ナット部材20をボルト部材30aに係合させることで海中ブロック40aに固定される。これにより、海流等の影響による海中ブロック40aからボルト部材30aの乖離を抑制することができ、牡蠣着生プレート10を海中ブロック40aにより強固に固定することができる。
【0040】
また、上記実施形態において、図示はしないが、ボルト部材30は平板部32を有さないものであってもよく、海中ブロック40にネジ部34が水中ボンド等により直接固定されたものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、貫通孔14が複数設けられた牡蠣着生プレート10を示したが、
図12および
図13に示すように、牡蠣着生プレート10は、一つの貫通孔14を備え、該貫通孔14を介してボルト部材30bとナット部材12とで固定されたものであってもよい。この場合、牡蠣着生プレート10の位置合わせが容易となり、牡蠣着生プレート10を短時間に設置することができるため、海中での作業性をよくすることができる。例えば、この場合、牡蠣着生プレート10をボルト部材30bとナット部材12とで仮固定した後に、牡蠣着生プレート10を回転させて角度を合わせてから更に固定することで、容易に位置合わせすることができる。
【0042】
次に、
図1および
図4乃至
図6を用いて、牡蠣礁1の造成方法を説明する。牡蠣礁1の造成方法は、海中に設置された一つまたは複数の海中ブロック40に牡蠣着生プレート10を着脱可能に止着する設置工程を備えるものである。これにより、牡蠣礁1を造成することができる。
【0043】
具体的に説明すると、
図5に示すように、海中に複数設置された海中ブロック40(
図4に示す)に、水中ボンドやアンカー等を用いてボルト部材30を止着する。次に、
図6に示すように、ボルト部材30を介して、海中ブロック40の表面に牡蠣着生プレート10を配置する。この際、牡蠣着生プレート10は、ボルト部材30のネジ部34が、牡蠣着生プレート10の貫通孔14を貫通するように位置づけられる。そして、ネジ部34とナット部材20とを係合して、ボルト部材30にナット部材20を着脱可能に止着する。これにより、牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に着脱可能に止着する。
【0044】
このように造成された牡蠣礁1において、天然の牡蠣は卵から孵化した後に海中を浮遊する浮遊生活に入り、しばらくの浮遊生活の後に幼生となり、海中ブロック40と牡蠣着生プレート10を含む海中構造物に付着した付着生活に入って成長を続ける。海中構造物の表面の少なくとも一部は牡蠣着生プレート10に覆われているため、少なくとも一部の牡蠣の幼生は牡蠣着生プレート10に着生して、そこで成長する。
【0045】
上記実施形態においては、ボルト部材30を海中ブロック40に止着した後に、ボルト部材30を介して、海中ブロック40の表面に牡蠣着生プレート10を配置し、ナット部材20とボルト部材30に係合させることによって、牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に着脱可能に止着する牡蠣礁1の造成方法の例を示した。
しかし、上記例に限定されず、牡蠣礁1の造成方法は、例えば牡蠣着生プレート10と挟んで、ボルト部材30とナット部材20とを固定させた組立体を形成する工程と、該組立体を水中ボンドやアンカー等で海中ブロック40に止着する工程とを備えてもよい。
この場合、時間と労力を要する組立体の組立作業を陸上等の条件のよい場所で行った後に、海中ブロック40に止着するため、牡蠣着生プレート10を海中ブロック40に着脱可能に止着する設置工程をより容易に行うことができ、海中ブロック40の近傍での困難な作業負荷を低減することができる。
【0046】
次に、牡蠣礁1から牡蠣を採取する方法について説明する。牡蠣礁1からの牡蠣採取方法は、海中に設置された海中ブロック40に牡蠣着生プレート10を着脱可能に止着する設置工程と、海中ブロック40から牡蠣着生プレート10を取り外す回収工程と、を備える。これにより、牡蠣礁1から一層容易に牡蠣を採取することができる。なお、上記設置工程は、上述した牡蠣礁1の造成方法における設置工程と同様の工程である。
【0047】
図7および
図8を用いて、回収工程を具体的に説明する。回収工程では、
図7に示すような牡蠣が付着した牡蠣着生プレート10を取り外す。具体的には、回収工程は、ボルト部材30からナット部材20を取り外し、牡蠣着生プレート10の止着を解いた後、海中ブロック40から牡蠣着生プレート10を取り外すことによって行ってもよい。牡蠣着生プレート10は、牡蠣が付着生活を続けて十分に成長した後に、海中ブロック40から取り外されてもよい。例えば、出荷の目安とされる殻付重量300g以上となるものが付着した牡蠣着生プレート10を選択して、海中ブロック40から牡蠣着生プレート10を取り外してもよい。
【0048】
さらに、牡蠣礁1からの牡蠣採取方法は、
図8に示すように、牡蠣が被着した牡蠣着生プレート10から牡蠣を取り外す取外工程を、回収工程の後に備えてもよい。設置工程、回収工程および取外工程は、すべてを海中で実施してもよいし、設置工程と回収工程とは海中で実施し、取外工程は陸上で実施してもよい。設置工程と回収工程とを海中で実施し、取外工程を陸上で実施する場合、海中で海中ブロック40から牡蠣着生プレート10を取り外してから、陸上で牡蠣着生プレート10から牡蠣を取り外すことができるから、牡蠣の取外作業を一層容易に行うことができる。上記取外工程は、図示するようにナイフ等を用いて牡蠣を剥ぎ取ることによって実施してもよいし、牡蠣や牡蠣着生プレート10にハンマーで衝撃を加えることで牡蠣を牡蠣着生プレート10から落下させることによって実施してもよいし、牡蠣着生プレート10を破壊することで牡蠣から牡蠣着生プレート10を除去することによって実施してもよい。また、取外工程は手作業で行ってもよいし、機械的に行ってもよい。
【0049】
なお、本発明に係る牡蠣礁、牡蠣礁の造成方法および牡蠣採取方法は、上記実施形態を用いて説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、牡蠣着生プレート10がボルト部材30とナット部材20とで着脱可能に止着される例を用いて説明したが、例えば、牡蠣着生プレート10は、ボルト部材30とナット部材20との代わりに、海中ブロック40に固定されたベルト、ロープ、公知の連結継手等の止着具を用いて、海中ブロック40に止着されてもよい。
【0050】
また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。