(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ニッケル塩由来の陰イオンと、前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種及び還元剤を含む還元工程水溶液中での還元処理によりニッケル粉末を生成するニッケル還元工程を経るニッケル粉末の製造方法において、
前記還元処理前に、前記還元工程水溶液がニッケル塩の水和物を含むことと、
前記還元工程水溶液が、pH10以上のアルカリ性を示すことと、
前記ニッケル塩の水和物が、0.5μmよりも大きな粒子状であることと、
前記還元処理が、前記ニッケルの化学種と前記ニッケルの水和物を還元することを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
前記ニッケル塩由来の陰イオン及び前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種を含む水溶液と前記ニッケル塩の水和物との混合物に前記還元剤を添加して前記還元工程水溶液を形成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ニッケル粉末は、固体酸化物型燃料電池の燃料極の固体電解質となるジルコニア系セラミックスと混合されて使用されることや、チタン酸バリウム等の強誘電体セラミックを積層した積層セラミックコンデンサの内部電極などに使用されている。
これら、用途では、ニッケル粉末が凝集することは好まれない。
【0003】
ニッケル粉末の別な用途としてポリマーPTC素子が知られている。このポリマーPTC素子は、ポリエチレンやポリプロピレン等の有機ポリマーに、カーボンブラックや金属粉等の導電性物質を分散させた導電性組成物は、その抵抗値が温度と共に変化し、抵抗値が上昇するというPTC(positive temperature coefficient)特性を有することが知られている。このような組成物が、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0004】
PTC特性を利用することによって、導電性組成物が設定(材料設計)温度を保持する機能を有し、自己温度制御ヒーターとしてリボン状やフィルム状のフレキシブルヒーターとして様々なメーカーで製品化、市販されている。
このようなPTC特性を有する素子(以下、PTC素子と呼ぶ)は、PTC素子に過剰電流が流れることで、そのPTC素子の温度自体がある温度T
0(変曲点)に達した場合、又は機器の環境温度が上昇し、PTC素子の温度がT
0に達した場合、PTC素子は急激に高抵抗(トリップ状態)となることにより、素子に流れる電流を遮断することにより、PTC素子が組み込まれた電気回路を保護する、保護回路として用いられている。
【0005】
PTC特性を有する組成物に使用される導電性物質としては、ニッケルや銅といった卑金属による凝集体が用いられる場合があり、凝集体の形状としては、特許文献3や特許文献4に示すように、一次粒子が鎖状に連なったタイプ、一次粒子が塊状になったタイプなどが適宜選択されている。一次粒子が連結しておらず単分散である場合は、粒子同士の接点が少なく、PTC特性が発現させにくいため使用できないことが多い。
ポリマーPTC組成では、凝集したニッケル粉末が求められていることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題とするところは、簡単な製造方法で、凝集したニッケル粉末の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発明は、ニッケル塩由来の陰イオンと前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種及び還元剤を含む還元工程水溶液中での還元処理によりニッケル粉末を生成するニッケル還元工程を経るニッケル粉末の製造方法において、その還元処理前に、前記還元工程水溶液がニッケル塩の水和物を含むことと、前記還元工程水溶液が、pH10以上のアルカリ性を示すことと、前記ニッケル塩の水和物が、0.5μmよりも大きな粒子状であることと、前記還元処理が、前記ニッケルの化学種と前記ニッケルの水和物を還元することを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0009】
本発明の第
2の発明は、第
1の発明における還元工程水溶液が、ニッケルよりもイオン化傾向の小さい異種金属の異種金属イオンを含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0010】
本発明の第
3の発明は、第
2の発明における還元工程水溶液が、前記異種金属イオンが還元されて形成された異種金属の微粒子の凝集を抑制する保護コロイド剤を含み、前記保護コロイド剤が、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールのいずれかであることを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0011】
本発明の第
4の発明は、第
2及び第
3の発明における異種金属イオンが、パラジウムイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオン、銅イオン、銀イオンのいずれかであることを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0012】
本発明の第
5の発明は、第1から第
4の発明におけるニッケル塩が、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルのいずれかであることを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0013】
本発明の第
6の発明は、第1から第
5の発明における還元剤が、水加ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムのいずれかであることを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0014】
本発明の第
7の発明は、第1から第
6の発明におけるニッケル塩の水和物が、ニッケル塩由来の陰イオン及びニッケルイオンの還元工程水溶液への含有前に添加されることを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0015】
本発明の第
8の発明は、第
3から第
7の発明におけるニッケル塩の水和物が、錯化剤の還元工程水溶液への含有前に添加されることを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【0016】
本発明の第
9の発明は、第1から第
6の発明において、ニッケル塩由来の陰イオン及び前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種を含む水溶液とニッケル塩の水和物との混合物に還元剤を添加して還元工程水溶液を形成することを特徴とするニッケル粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
一次粒子が連結しているニッケル粉末の凝集体を含むニッケル粉末が、簡便な製造方法により容易に得られ、工業上顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るニッケル粉末の製造方法は、ニッケル塩由来の陰イオンと前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種を含む水溶液と還元剤を加えた還元工程水溶液中での還元処理により、前記ニッケルの化学種からニッケル粉末を生成する際に、その還元処理前にニッケル塩の水和物が還元工程水溶液中に含まれていることを特徴とするものである。
即ち、還元処理前の還元工程水溶液中には、ニッケル塩由来の陰イオンと前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種及びニッケル塩の水和物並びに還元剤が存在している。
【0020】
ところで、ニッケル塩の水和物はニッケル塩に結晶水を持った粉末状である。一般にニッケル塩の水和物は結晶水を有することで粉末状態を維持している。このようなニッケル塩の水和物には、塩化ニッケル六水和物が広く知られている。なお、ニッケル塩の水和物から結晶水が除かれると風解が生じ、ニッケル塩の水和物は粉末状からより細かい微粒子に変化する。ここで、粉末状とは、0.5μmよりも大きな粒子を指すものである。
【0021】
還元工程水溶液中では、前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種が還元剤により還元される。一方、ニッケル塩の水和物は、還元工程水溶液に溶解しながら、水和物の粉末状態を維持しつつ還元剤により還元される。そして、ニッケル塩由来のニッケルの化学種の還元は、ニッケル塩の水和物の粉末の表面で行われることがあり、結果として、ニッケル塩の水和物から還元されたニッケル粉末とニッケル塩由来のニッケルの化学種から還元されたニッケル粉末が凝集し、凝集ニッケル粉末が形成される。なお、前記ニッケル塩由来のニッケルの化学種は、ニッケルイオンや、ニッケルの錯イオン、さらにはニッケルイオンから生じるニッケルの水酸化物である。以下、ニッケル塩由来のニッケルの化学種を、単にニッケルの化学種と称す。
【0022】
ニッケルの化学種及び陰イオンの由来となるニッケル塩は、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルであることが望ましい。このニッケル塩の陰イオンが廃液に含まれるが、この陰イオンが含まれる廃液の処理コストを抑制しやすい。また、ニッケルイオン及び陰イオンは、ニッケル塩の水溶液の形で還元工程水溶液に加えられる。
【0023】
用いるニッケル塩の水和物は、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルの水和物であることが望ましく、還元工程水溶液に含まれるニッケル塩由来の陰イオンとニッケル塩の水和物の陰イオンが、同じ陰イオンであることは、廃液処理を容易にする点で望ましい。また、ニッケル塩の水和物は、還元工程水溶液に徐々に溶解し、ニッケルイオンと陰イオンに解離する。
【0024】
還元剤は、水加ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムであることが望ましく、水加ヒドラジンであることがより望ましい。水素化ホウ素ナトリウムは、ニッケル中にホウ素が残り不純物となるため、ホウ素の残留がニッケル粉末の生成に悪影響を与えない許容量内での使用が望ましい。
【0025】
さらに還元工程水溶液には、ニッケルイオンと錯イオンを形成する錯化剤が含まれていることが望ましい。
この錯化剤を含むことで、ニッケルの化学種から還元されるニッケル粉末の形状を制御できる。錯化剤を添加しない場合、ニッケルの化学種から生成するニッケル粉末は海胆の様なとげを多方向に伸ばした粉末となる。ニッケルイオンが錯化剤とニッケルの錯イオンを形成していれば、錯化剤の配位の効果によりニッケル粉末の成長が全方向に略一定となる。錯化剤の効果は、ニッケルの錯イオンからニッケルの水酸化物を経由してニッケル粉末を生成する場合も同様である。
【0026】
錯化剤としては、有機物ならば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基を有し、ニッケルイオンと錯体を形成する効果を有するものであればよく、エチレンジアミン等のアミン類、蟻酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等のカルボン酸類が挙げられる。また、無機物の錯化剤としてはアンモニアやシアン等が挙げられる。
【0027】
有機物を錯化剤に用いる場合には、酢酸、酒石酸、クエン酸が望ましく、更には、酒石酸が最も望ましい。これらのカルボン酸類を錯化剤として用いると、ニッケルの化学種から還元されて得られるニッケル粉末の形状が略球状となり、ニッケル塩の水和物から得られるニッケル粉末と適度に連結し凝集しやすくなる。
その錯化剤の添加量は、ニッケルイオン1molに対して、0.01〜1molとするのが好ましい。
【0028】
さらに還元工程水溶液には、ニッケルよりもイオン化傾向の小さい異種金属のイオン(異種金属イオンと称す)を含んでいても良く、その異種金属の溶液または異種金属塩の形で加える。
このニッケルよりもイオン化傾向の小さい異種金属として、金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、銅の各元素が挙げられる。還元工程水溶液には、それらの異種金属の溶液や異種金属の塩として添加されたものが含まれている。異種金属は、ニッケルと固溶する銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、銅が、適している。還元工程水溶液への異種金属の添加は、特に水溶性のパラジウムイオンを含む溶液がより適し、さらにはパラジウムと銀の複合体でもよい。なお、異種金属のイオンには、錯イオンも含まれる。
【0029】
これらの異種金属は、ニッケルよりもイオン化傾向が小さいため、還元剤により、ニッケルの化学種よりも優先的に還元され、異種金属の微粒子となる。異種金属の微粒子は、ニッケルの化学種から還元されて得られるニッケル粉末の生成の核となる。
異種金属の微粒子の凝集を抑制するために保護コロイド剤が、還元工程水溶液に含まれることが望ましい。
【0030】
保護コロイド剤としては、異種金属の微粒子からなる複合コロイド粒子(例えば、パラジウムからなるコロイド粒子)を取り囲み、保護コロイドの形成に寄与するものであればよく、特にゼラチンが好ましいが、その他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールなどを用いることもできる。
保護コロイド剤の添加量は、ニッケル質量100%に対して、保護コロイド剤が0.025〜0.2質量%が望ましい。理由としては、ニッケル中に有機化合物である分散剤が不純物として残留しやすいためである。
【0031】
また、異種金属の微粒子からなるコロイド粒子は、ニッケルの化学種から還元されるニッケル粉末の生成の核となるので、異種金属の微粒子からなるコロイド粒子の数を制御する。すなわち、ニッケル塩の溶液に対して添加される異種金属のモル数を制御することで、ニッケルの化学種から還元されるニッケル粉末の粒子径を制御することができる。
異種金属の微粒子からなるコロイド粒子は、ニッケル塩の水和物の表面に付着して、凝集したニッケル粉末を形成しやすい。
さらに、異種金属の微粒子からなるコロイド粒子を作製する際の温度は、特に制限されないが、50℃〜95℃が好ましく、特に60℃〜85℃が好ましい。また、パラジウム塩と銀塩の混合液、還元剤を添加する前の水溶液は、極力撹拌されていることが望ましい。
【0032】
この加温する理由としては、保護コロイド剤のゼラチンの絡み合った高分子鎖が解され、所望の保護コロイド効果を発揮させやすいからである。また極力撹拌する理由としては、十分に撹拌されていない場合、微細な核が得られず、ニッケルの化学種から生成されるニッケル粉末の粒径が所望レベルで制御できないためである。
【0033】
また、異種金属微粒子のコロイド水溶液をあらかじめ作製する異種金属還元工程を経て、還元工程水溶液を形成してもよい。
【0034】
さらに、還元工程水溶液は、アルカリ性であることが望ましい。具体的には、還元工程水溶液のpHは10以上が望ましく、より望ましくは12以上である。pHが10未満では、ニッケルイオンがニッケルに還元され難くなるためである。
還元工程水溶液がpH10以上のアルカリ性ならば、ニッケルイオンの一部がニッケルの水酸化物に変化する。反応の系内に異種金属の微粒子からなるコロイドが存在するならば、ニッケルの水酸化物は、異種金属のコロイドを核としてニッケルの水酸化物として晶析する。
【0035】
混合されて還元工程水溶液になる原料の各水溶液の混合される前の温度は、室温付近25℃として、その後加温保持してもよいし、混合前にも加温して、その後、加温保持しても良い。
還元工程水溶液の温度が、50℃〜85℃になれば還元処理が進行してニッケルの化学種とニッケル塩の水和物がニッケルまで還元される。このように還元工程水溶液中で、ニッケルの化学種とニッケル塩の水和物がニッケルまで還元されてニッケル粉末を生じる工程が、本発明におけるニッケル還元工程であり、その還元処理の進行に伴い、還元工程水溶液中のニッケルの化学種とニッケル塩の水和物と還元剤が消費され、ニッケル粉末を得るものである。
なお、反応の系内に異種金属の微粒子からなるコロイド粒子が存在せずに、異種金属のイオンが存在する場合は、ニッケルの化学種の還元より先に、異種金属のイオンが還元され、異種金属の微粒子からなるコロイド粒子が析出し、ニッケル粉末生成の核となる。
【0036】
ニッケル塩由来の陰イオン及びニッケルの化学種、還元剤、ニッケル塩の水和物、さらには、錯化剤やニッケルよりもイオン化傾向の小さい異種金属の異種金属イオンの還元工程水溶液に含まれる順序、即ち添加順序は、還元処理前のニッケル塩由来のニッケルの化学種に対する一連の反応が行われる前に、ニッケル塩の水和物が還元工程水溶液に含まれる限り制限されない。
即ち、ニッケル塩由来のニッケルの化学種が、アルカリ性の下でニッケルの水酸化物が発生する反応の前段階、ニッケルイオンが錯化剤と反応しニッケルの錯イオンが発生する反応の前段階、或いはニッケルの化学種に対し還元剤と反応しニッケル粉末が発生する還元処理の前に、ニッケル塩由来のニッケルの化学種と未溶解のニッケル塩の水和物が均一に混合されていることが望ましい。
【0037】
また、ニッケル塩由来のニッケルの化学種、即ちニッケル塩水溶液と、未溶解のニッケル塩の水和物と、ニッケル元素よりもイオン化傾向が小さい異種金属イオン、即ち異種金属の溶液は、略均一に混合されていることがより望ましい。
ニッケル塩由来のニッケルイオンからニッケルの水酸化物が生じる際や、ニッケルの化学種から金属ニッケルまで還元される際の、一連のイオンから固体へ変化する反応である晶析の際に、ニッケル塩の水和物が反応の系内に分散して存在すればよい。その理由は、系全体を均一にし、系全体で所望とする凝集体を発生させるためである。
【0038】
ニッケル塩の水和物の添加を、ニッケルの化学種の一連の反応後に行うと、反応系内が不均一になりやすいためである。なお、反応系内にニッケル塩の水和物を添加しない場合は、ニッケルよりもイオン化傾向が小さい異種金属の微粒子(コロイド粒子)が核となり微粒子を形成し、単分散のニッケル粒子を形成しやすく、凝集体がほとんど発生しない。
ニッケルよりもイオン化傾向が小さい異種金属元素の水溶液、ニッケル塩水溶液、還元剤、錯化剤が、混合される際の反応器は、回分式反応器、半回分式反応器もしくは流通管型反応器いずれでもよい。
【0039】
最も簡易に凝集したニッケル粉を得られるのは系内を均一に保ちやすい回分式反応器であるが、バッチ式であるため連続的に生産することができず他の生産方式に比べて若干劣る。半回分式反応器の場合は、槽で反応をさせるため系内を均一に保ちやすい回分式のメリットを保ちながら連続生産できるので、回分式よりも生産性を高くさせやすい。
しかし、ニッケルの化学種をニッケルにまで還元するまでの反応に時間がかかる系では反応が完了する前にバッチから排出されるので、反応が完了するまでのリードタイムを担保するための槽を幾槽も設ける必要が発生する。そのため、本反応のように比較的、反応が完了するまでに時間がかかる系では、適用させにくい。
【0040】
一方、流通式管型反応器の場合は、各水溶液同士が混合される部分で均一に混合できるようにできれば、連続生産しやすく、回分式反応器と比較して装置の設置面積などをコンパクトにしやすく、回分式や半回分式反応器よりも初期コストを抑えやすい。
【0041】
その他の添加剤として、ニッケル塩由来のニッケルイオンに対して錯形成をする錯化剤やニッケルよりもイオン化傾向が小さい異種金属の溶液に金属の分散を促進する分散剤を添加してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、各実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例により、それぞれ得られたニッケル粉末の形状の判定は、以下に示す通りである。
[ニッケル粉末の形態判定]
ニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、日本電子株式会社製、「JSM−5510」)を用いて、倍率5000倍で観察して粒子の凝集状態を判定した。
【実施例1】
【0044】
10Lビーカーに3Lの純水を入れ、75℃まで昇温した。昇温後、ゼラチンをニッケルに対して1000ppmとなるように昇温した純水に添加して5minの間、撹拌保持した。
その5min間の攪拌保持後、Pdがニッケルに対して50ppmになるように5mLのジクロロテトラアンミンPd水溶液を添加し、次いで60体積%水加ヒドラジン0.1mLを添加した。
その後、酒石酸8gを添加し、次いで水酸化ナトリウム50gを添加し、更に180mLの60体積%水加ヒドラジンを添加した。その後、100g/L塩化ニッケル水溶液500mLと塩化ニッケルの水和物5gの混合物を添加して還元工程水溶液を調整した。
調整された還元工程水溶液のpHは13で、温度85℃に加温し、30min間保持する還元処理を行った。
その後、上澄み液を除去した後に、5Lの純水を添加してレパルプ洗浄を行い、ヌッチェにて固液分離して500mLの掛け水洗浄を施した。その後、100℃で24時間、大気乾燥し、形態観察の供試材とした。
【0045】
供試材をSEMで観察した際の、粒子の状態を表1に示す。
得られた凝集したニッケル粉末のSEM像を
図1に示す。
【実施例2】
【0046】
実施例1において、酒石酸を添加する前に、塩化ニッケルの水和物5gを添加したこと以外は実施例1と同様の条件でニッケル粉末を作製した。
SEMで観察した粒子の状態を表1に示す。
SEM観察の結果、
図1と同様な凝集したニッケル粉末が確認された。
【実施例3】
【0047】
実施例1において、180mLの60体積%水加ヒドラジンを添加する前に、塩化ニッケルの水和物5gを添加したこと以外は実施例1と同様とした。
SEMで観察した粒子の状態を表1に示す。
また、SEM観察の結果、
図1と同様な凝集したニッケル粉末が確認された。
【0048】
(比較例1)
実施例1において、塩化ニッケル水溶液に塩化ニッケルの水和物を混合せずに、個別に系内に添加したこと以外は、実施例1と同様とした。
SEMで観察した粒子の状態を表1に示す。
図2にSEM観察結果を示す。実施例1から3のニッケル粉末の凝集した状態とは異なり、ニッケル粉末の凝集体がほとんど見られず微粒子が分散した状態を示しているのが観察された。
【0049】
【表1】
【0050】
表1、
図1、2からも明らかなように、本発明の実施例1〜3では、ニッケル粉末の状態は、凝集粉末(凝集体)を含んだ状態であったのに対し、本発明に入らない製造条件で作製された比較例1の場合、凝集したニッケル粉末がほとんど見られず、微粒子のニッケル粉末から構成されているのが判る。