特許第6858043号(P6858043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858043
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20210405BHJP
   H01R 13/516 20060101ALI20210405BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20210405BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B29C45/26
   H01R13/516
   H02G3/16
   H02G3/04
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-55581(P2017-55581)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-158450(P2018-158450A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】金次 良高
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−185023(JP,A)
【文献】 実開平04−131114(JP,U)
【文献】 特開2014−003739(JP,A)
【文献】 特開2000−156921(JP,A)
【文献】 実開昭62−139615(JP,U)
【文献】 特開平02−249618(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部の開口部軸線方向に沿って配列された第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体であって、
前記開口部軸線方向の両側の側面のうちの少なくとも一方の側面に前記開口部が設けられた樹脂成形体本体と、
前記樹脂成形体本体にヒンジ部を介してヒンジ結合され、前記樹脂成形体本体に対する固定位置と前記固定位置と異なる成形位置との間を回動可能な可動部とが備えられ、
前記第1張出部は、前記樹脂成形体本体に設けられ、
前記第2張出部は、前記可動部に設けられ、
前記可動部が前記固定位置に回動された状態で、前記第1張出部及び前記第2張出部は、前記開口部の開口部軸線方向に沿って配列され、前記可動部が前記成形位置に回動された状態で、前記第1張出部及び前記第2張出部は、前記開口部軸線方向から見て、互いに重ならない方向にずれて配列された
樹脂成形体。
【請求項2】
前記固定位置は、前記樹脂成形体本体の前記一方の側面に対する正面位置であり、
前記成形位置は、前記一方の側面に対する外周側位置である
請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記可動部は、前記樹脂成形体本体の外周面にヒンジ結合された
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記第1張出部は、前記樹脂成形体本体の前記外周面のうち、前記可動部がヒンジ結合された側面の側と異なる側の側面に設けられ、
前記第2張出部は、前記可動部のうち、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で前記第1張出部と同じ側の面に設けられた
求項3に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの一方に設けられた挿入部と、
前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの他方に設けられ、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で前記挿入部が嵌入される収容部とが備えられた
請求項1から請求項4のうちの一項に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記挿入部は、1つ以上設けられ、
前記1つ以上の挿入部には、回動軸線方向の幅が前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの一方側に向かって漸次小さくなるテーパ形挿入部が含まれ、
前記テーパ挿入部が嵌入される前記収容部は、回動軸線方向の幅が前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの前記一方側に向かって漸次小さくなっている
請求項5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記挿入部は、断面略四角形の筒状、断面略H字状の柱状、又は断面コの字状の柱状である
請求項5又は請求項6に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの一方に、係止部が設けられ、
前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの他方に、被係止部が設けられ、
前記可動部が前記固定位置に回動された状態で前記係止部が前記被係止部に係止する
請求項1から請求項7のうちの一項に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
前記係止部の基部には、補強リブが設けられた
請求項8に記載の樹脂成形体。
【請求項10】
前記樹脂成形体本体には、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で、前記可動部と同じ側に突出すると共に前記可動部よりも前記開口部軸線方向に突出する突出部が設けられた
請求項1から請求項9のうちの一項に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
前記可動部は、前記第2張出部が設けられた第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、
前記第2面は、前記可動部の先端に向かって前記第1面の側に傾斜している
請求項1から請求項10のうちの一項に記載の樹脂成形体。
【請求項12】
前記可動部における前記樹脂成形体本体との固定面の一部に、前記開口部軸線方向に凸出した段差凸部及び前記段差凸部が嵌合する段差凹部のうちの一方が設けられ、
前記樹脂成形体本体における前記可動部との固定領域に、前記段差凸部及び前記段差凹部のうちの他方が設けられた
請求項1から請求項11のうちの一項に記載の樹脂成形体。
【請求項13】
前記段差凸部における前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの一方側の側面が、前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの他方側に傾斜し、
前記段差凹部における前記一方側の側面が前記一方側に傾斜した
請求項12に記載の樹脂成形体。
【請求項14】
前記樹脂成形体は、コネクタホルダであり、
前記開口部は、外部のコネクタが嵌合するコネクタ嵌挿用開口部である
請求項1から請求項13のうちの一項に記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載可能な樹脂成形体(例えばコネクタホルダ、電線用プロテクタ、ジャンクションボックス)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用のコネクタホルダは、側面に、コネクタが嵌挿されるコネクタ嵌挿用開口部が設けられ、外周面に、当該コネクタホルダの周囲に配置された各種の周辺部材に係合する係合部が設けられている。上記の係合部は、コネクタホルダの外周面から張り出した状態で設けられている。上記の係合部の配置や個数は、コネクタホルダの周囲に配置された各種の周辺部材の配置や個数によって異なるが、例えば、上記のコネクタ嵌挿用開口部の開口部軸線方向に沿って2つ設けられる場合がある。車両用のコネクタホルダに関する先行技術文献として例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−011851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、コネクタホルダは、合成樹脂を材料として金型を用いて成形される。この成形で使用される金型は、通常、離型方向(即ちコネクタホルダを金型から離型する方向)がコネクタ嵌挿用開口部の開口部軸線方向に一致するように構成されている。このため、上述のように、係合部がコネクタ嵌挿用開口部の開口部軸線方向に沿って2つ設けられた場合、上記の2つの係合部(即ち張出部)の間に金型が入ることができないため、上記の2つの係合部を有する樹脂成形体を一体成形することができない。即ち、2つの係合部のうちの一方を樹脂成形体とは別に形成し、形成後に、その一方の係合部を樹脂形成体に組み付ける必要があり、製造コストが高くなる。
【0005】
そこで、この発明は、開口部と、開口部の開口部軸線方向に沿って配列する第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体において、離型方向が開口部軸線方向に一致する金型を用いて一体成形可能な樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、開口部と、前記開口部の開口部軸線方向に沿って配列された第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体であって、前記開口部軸線方向の両側の側面のうちの少なくとも一方の側面に前記開口部が設けられた樹脂成形体本体と、前記樹脂成形体本体にヒンジ部を介してヒンジ結合され、前記樹脂成形体本体に対する固定位置と前記固定位置と異なる成形位置との間を回動可能な可動部とが備えられ、前記第1張出部は、前記樹脂成形体本体に設けられ、前記第2張出部は、前記可動部に設けられ、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で、前記第1張出部及び前記第2張出部は、前記開口部の開口部軸線方向に沿って配列され、前記可動部が前記成形位置に回動された状態で、前記第1張出部及び前記第2張出部は、前記開口部軸線方向から見て、互いに重ならない方向にずれて配列された樹脂成形体である。
【0007】
なお、上記の「開口部」とは、単に開口している部分だけでなく、貫通した孔状のもの、貫通していない孔状のもの、又は、窪み程度の凹状のものであってもよい。また、上記の固定位置とは、可動部が樹脂形成体本体に固定される位置であり、上記の成形位置とは、樹脂成形体が成形されるときの可動部の位置である。
【0008】
この発明により、開口部と、開口部の開口部軸線方向に沿って配列する第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体を、金型を用いて一体成形することができる。
即ち、通常は、開口部と、開口部の開口部軸線方向に沿って配列する第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体を金型で成形する場合、開口部軸線方向が離型方向になるが、そうすると、第1張出部と第2張出部との間に金型が入れず、第1張出部及び第2張出部を有する樹脂成形体を一体成形することができない。
【0009】
しかし、本発明では、樹脂成形体本体に可動部がヒンジ結合され、第1張出部が樹脂成形体本体に設けられ、第2張出部が可動部に設けられ、可動部が固定位置又は成形位置に回動されることで、第1張出部及び第2張出部が開口部軸線方向に沿って配列したり、又は、開口部軸線方向から見て、第1張出部及び第2張出部が互いに重ならない方向にずれて配列される。
【0010】
このため、金型成形時は、可動部を成形位置に回動させ、開口部軸線方向から見て、第1張出部及び第2張出部が互いに重ならない方向にずれて配列された状態で、樹脂成形体が成形されることで、離型方向が開口部軸線方向に一致した金型を用いても、第1張出部及び第2張出部を有する樹脂成形体を一体成形することができる。そして、樹脂成形体本体が金型から離型された後、可動部を固定位置に回動させることで、第1張出部及び第2張出部を開口部軸線方向に沿って配列させることができる。
従って、開口部と、開口部の開口部軸線方向に沿って配列された第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体を、金型を用いて一体成形することができる。
【0011】
また、この発明の態様として、前記固定位置は、前記樹脂成形体本体の前記一方の側面に対する正面位置であり、前記成形位置は、前記一方の側面に対する外周側位置であってもよい。
この発明により、固定位置が樹脂成形体の一方の側面に対する正面位置であるため、可動部での第2張出部の位置として、可動部が固定位置に回動された状態で、第1張出部及び第2張出部が開口部軸線方向に沿って配列する位置を確保し易くなる。
【0012】
また、成形位置が樹脂成形体の一方の側面に対する外周側位置であるため、金型成形時に可動部が成形位置として外周側位置に回動されることを考慮すると、可動部の形状を、上記の開口部の配置や形状に関係無く自由な形に形成することができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記可動部は、前記樹脂成形体本体の外周面にヒンジ結合されてもよい。
この発明により、成形位置を樹脂成形体本体の外周側に確保できると共に固定位置を樹脂成形体本体の一方の側面上に確保することができる。
【0014】
また、この発明の態様として、前記第1張出部は、前記樹脂成形体本体の前記外周面のうち、前記可動部がヒンジ結合された側面の側と異なる側の側面に設けられ、前記第2張出部は、前記可動部のうち、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で前記第1張出部と同じ側の面に設けられてもよい。
【0015】
この発明により、可動部が固定位置に回動された状態で、第1張出部及び第2張出部が開口部軸線方向に沿って配列され、可動部が成形位置に回動された状態で、第1張出部及び第2張出部が、開口部軸線方向から見て、互いに重ならない方向にずれて配列されるように、第1張出部を樹脂成形体本体の外周面に設けることができ、第2張出部を可動部に設けることができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの一方に設けられた挿入部と、前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの他方に設けられ、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で前記挿入部が嵌入される収容部とが備えられてもよい。
【0017】
この発明により、挿入部が収容部に嵌入されることで、可動部と樹脂成形体本体とを嵌合形式で接続することができる。この結果、可動部が固定位置に回動された状態で、回動軸線方向からの負荷が可動部に作用しても、樹脂成形体本体に対して可動部が座屈することを抑制することできる。
【0018】
なお、「回動軸線」とは、可動部がヒンジ部によって回動するときの中心軸線であり、「回動軸線方向」とは、上記の中心軸線に平行な方向である。
【0019】
また、この発明の態様として、前記挿入部は、1つ以上設けられ、前記1つ以上の挿入部には、回動軸線方向の幅が前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの一方側に向かって漸次小さくなるテーパ形挿入部が含まれ、前記テーパ型挿入部が嵌入される前記収容部は、回動軸線方向の幅が前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの前記一方側に向かって漸次小さくなっていてもよい。
【0020】
この発明により、挿入部が収容部内でヒンジ部の側及びその反対側のうちの一方側に寄せて配置されることで、挿入部と収容部との間の回動軸線方向の隙間を無くすことができる。この結果、可動部と樹脂成形体本体との間の回動軸線方向の相対位置をガタつきを無くして位置決めすることができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記挿入部は、断面略四角形の筒状、断面略H字状の柱状、又は断面コの字状の柱状であってもよい。
この発明により、挿入部の強度を確保しつつ、挿入部を形成する樹脂の量を軽減することができる。
【0022】
また、この発明の態様として、前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの一方に、係止部が設けられ、前記樹脂成形体本体及び前記可動部のうちの他方に、被係止部が設けられ、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で前記係止部が前記被係止部に係止してもよい。
この発明により、係止部が被係止部に係止することで、可動部を固定位置に固定することができる。
【0023】
また、この発明の態様として、前記係止部の基部には、補強リブが設けられてもよい。この発明により、補強リブによって、係止部を補強することができる。
【0024】
また、この発明の態様として、前記樹脂成形体本体には、前記可動部が前記固定位置に回動された状態で、前記可動部と同じ側に突出すると共に前記可動部よりも前記開口部軸線方向に突出する突出部が設けられてもよい。
この発明により、樹脂成形体が周辺部材に不用意に接触するとき、突出部が可動部よりも先に周辺部材に接触することができる。この結果、可動部が周辺部材に接触して破損することを抑制することができる。
【0025】
また、この発明の態様として、前記可動部は、前記第2張出部が設けられた第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、前記第2面は、前記可動部の先端に向かって前記第1面の側に傾斜していてもよい。
この発明により、可動部における第1面と第2面との間の厚さが可動部の先端に行くほど薄くなり、可動部が第2面の側に可撓し易くなる。この結果、可動部の第1面に押圧力が作用したとき、可動部が第2面側に可撓でき、これにより押圧力が可動部のヒンジ部に集中することを抑制することができる。
【0026】
また、この発明の態様として、前記可動部における前記樹脂成形体本体との固定面の一部に、前記開口部軸線方向に凸出した段差凸部及び前記段差凸部が嵌合する段差凹部のうちの一方が設けられ、前記樹脂成形体本体における前記可動部との固定領域に、前記段差凸部及び前記段差凹部のうちの他方が設けられてもよい。
この発明により、段差凸部と段差凹部との嵌合により、可動部と樹脂成形体本体との間の相対位置(例えば回動軸方向に直交する方向の相対位置)を位置決めすることができる。
【0027】
また、この発明の態様として、前記段差凸部における前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの一方側の側面が、前記ヒンジ部の側及びその反対側のうちの他方側に傾斜し、前記段差凹部における前記一方側の側面が前記一方側に傾斜していてもよい。
【0028】
この発明により、段差凸部が段差凹部に嵌合したとき、段差凸部の上記一方側の側面(即ち上記他方側に傾斜した側面)が段差凹部の上記一方側の側面(即ち上記一方側に傾斜した側面)を摺動することで、段差凸部が段差凹部内で上記他方側に寄せられて配置される。これにより、可動部と樹脂成形体本体との間の回動軸線方向に直交する方向の相対位置をガタつきを無くして位置決めすることができる。
【0029】
また、この発明の態様として、前記樹脂成形体は、コネクタホルダであり、前記開口部は、外部のコネクタが嵌合するコネクタ嵌挿用開口部であってもよい。
この発明により、上述の効果を奏するコネクタホルダを提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、開口部と、開口部の開口部軸線方向に沿って配列する第1張出部及び第2張出部とを有する樹脂成形体において、開口部軸線方向が離型方向に一致する金型を用いて成形可能な樹脂成形体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るコネクタホルダを示す斜視図。
図2】(a)は、図1における可動部が固定位置に回動された状態での部分拡大図、(b)は、図1における可動部が成形位置に回動された状態での部分拡大図。
図3】(a)は、可動部が固定位置に回動された状態での部分拡大図、(b)は、可動部が固定位置に回動された状態での別の角度から見た部分拡大図。
図4】本発明の実施形態に係るコネクタホルダを示す正面図。
図5図4の部分拡大図。
図6】本発明の実施形態に係るコネクタホルダを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
<構成説明>
図1図6を参照して、この実施形態に係る樹脂成形体1について説明する。樹脂成形体1は、車両(例えば自動車)に搭載可能な樹脂成形体であって、開口部と、開口部の開口部軸線方向に沿って配列された第1張出部及び第2張出部とを含む樹脂成形体である。この実施形態では、樹脂成形体1の一例としてコネクタホルダを例に挙げて説明する。以下、コネクタホルダ1とも記載する。
【0033】
コネクタホルダ1は、車両に搭載されるコネクタホルダであり、複数のワイヤーハーネスに接続されたコネクタを一括保持するものである。コネクタホルダ1は、合成樹脂(例えばポリエチレン)を材料とし、金型を用いて射出成形で形成することが可能である。
【0034】
図1に示すように、コネクタホルダ1は、コネクタが嵌挿される複数のコネクタ嵌挿用開口部9を有するコネクタホルダ本体2(樹脂成形体本体)と、コネクタホルダ本体2に回動可能にヒンジ結合された可動部3と、コネクタホルダ1の周辺に配置された周辺部材と係合する複数の係合部4,5,6と、複数の突出部7,8とを備えている。
【0035】
図1の符号P,W,Hはそれぞれ、コネクタホルダ本体2の軸線方向、横幅方向、及び上下方向を示している。この実施形態では、軸線方向Pは、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向と一致し、上下方向Hは、可動部3の回動軸線方向に一致している。なお、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向は、コネクタ嵌挿用開口部9にコネクタが挿入される方向に平行な方向である。また、この実施形態では、コネクタ嵌挿用開口部9が上記の開口部に対応し、各係合部4,5がそれぞれ上記の第1張出部及び第2張出部に対応している。
【0036】
このコネクタホルダ1では、各係合部4,6は、コネクタホルダ本体2に設けられ、係合部5は、可動部3に設けられている。そして、図2(b)に示すように、金型成形時は、可動部3がコネクタホルダ本体2の外周側位置である成形位置に回動された状態、即ち、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向(即ち軸線方向P)から見て、各係合部4,5が互いに重ならないように配列された状態で、成形される。そして、図2(a)に示すように、コネクタホルダ1が金型から離型された後、可動部3がコネクタホルダ本体2の正面位置である固定位置に回動された状態、即ち、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向から見て、各係合部4,5が互いに重なるように配列される(即ち、各係合部4,5が開口部軸線方向に一列に配列される)ことで、完成する。
【0037】
図1及び図4に示すように、コネクタホルダ本体2は、例えば略直方体形状に形成されており、軸線方向Pの両側の側面2a,2bと、両側の側面2a,2bの外周を囲む外周面2cとを有している。
両側の側面2a,2bは、例えば略矩形状に形成され、コネクタホルダ本体2における軸線方向Pの両側の面を構成している。この実施形態では、一例として、各側面2a,2bの長手方向は、横幅方向Wに一致し、各側面2a,2bの短手方向(即ち各側面2a,2bの長手方向に直交する方向)は、上下方向Hに一致している。
コネクタホルダ本体2の外周面2cのうち、上側側面2dにおける横幅方向Wの一方Waの端部には、例えば、段差状に落ち込んだ段差面2eが形成されている。
【0038】
コネクタホルダ本体2には、例えば一方の側面2aに、複数のコネクタ嵌挿用開口部9が設けられている。各コネクタ嵌挿用開口部9は、一方の側面2aにおいて、例えば、上段及び下段に例えば複数個ずつ分けられ、各段で横幅方向Wに沿って横一列に並べられて設けられている。各コネクタ嵌挿用開口部9は、軸線方向Pに沿って一方の側面2aから他方の側面2bに向かって凹状に形成されている。各コネクタ嵌挿用開口部9の奥面には、他方の側面2bと貫通するように、相手方コネクタが挿入される開口部が設けられている。
なお、各コネクタ嵌挿用開口部9は、コネクタホルダ本体2の他方の側面2bに設けられてもよい。
【0039】
図2(b)及び図5に示すように、コネクタホルダ本体2の一方の側面2aには、可動部3が固定される固定領域2fが形成されている。固定領域2fは、可動部3の後述の基端面3cの形状に合わせた形状(例えば略矩形状)に形成されている。固定領域2fは、例えば、一方の側面2aの周縁で且つ各コネクタ嵌挿用開口部9と重ならない所定箇所(例えば、一方の側面2aにおける横幅方向Wの他方側W−で且つ上下方向Hの上側の角部)に形成されている。
【0040】
固定領域2fの一部(例えば横幅方向Wの一方側W+の部分)に、可動部3の後述の段差凸部31が嵌合する段差凹部20が設けられている(図2(b))。段差凹部20における横幅方向の他方側W−(即ちヒンジ部30側)の側面20aは、上下方向Hから見て、横幅方向Wの他方側W−に傾斜している。
【0041】
また、固定領域2fには、係止片21(係止部)と、1つ以上(例えば2つ)の収容部22,23と、支持部24とが設けられている。
係止片21は、可動部3の後述のスリット32aに係止する部分である。係止片21は、例えば舌片状に形成されている。係止片21は、固定領域2fにおける例えば横幅方向Wの一方側W+の端部付近に設けられ、例えば上下方向Hに沿って配置されると共に、固定領域2fから軸線方向Pに沿って突出している。係止片21の両側の主面のうちの一方の主面(例えば横幅方向Wの他方側W+の主面)の先端には、係止突起21aが設けられている(図3(a))。
【0042】
図3及び図5に示すように、係止片21の基部21bは、固定領域2f内の空き領域(即ち横幅方向Wの他方側W−の端部付近の領域)に設けられた空洞部25と、空洞部25に隣接するコネクタ嵌挿用開口部9との間の仕切部分の一部になっている。係止片21の基部21bの両側の主面のうちの一方の主面(例えばコネクタ嵌挿用開口部9側の主面)には、例えば軸線方向Pに沿って延びた補強リブ21cが設けられている(図3(b))。
【0043】
各収容部22,23は、可動部3の後述の挿入部33,34が嵌入される部分である。各収容部22,23は、固定領域2fにおける例えば横幅方向Wの他方側W−の部分に設けられている。各収容部22,23は、例えば底面視略矩形の凹状に形成され、互いに上下方向Hに間隔を空けて設けられている。
【0044】
図5に示すように、一方の収容部(例えば上側の収容部22)の上面22aは、例えば、横幅方向Wの他方側W−から一方側W+(即ちヒンジ部30側からその反対側)に向かって、下面22b側に傾斜している。換言すれば、一方の収容部22は、その上下方向Hの幅が横幅方向Wの他方側W−から一方側W+に向かって漸次小さくなるテーパ形に形成されている。
【0045】
支持部24は、可動部3の後述の下面3gに当接して可動部3を支持する部分である。支持部24は、例えば断面略U字状(又は断面略H字状)の柱状に形成され、固定領域2fの下側に隣接して設けられ、固定領域2fから軸線方向Pに沿って突出している。
【0046】
図2(a)(b)に示すように、可動部3は、コネクタホルダ本体2の外周面2cの所定箇所にヒンジ部30を介してヒンジ結合され、コネクタホルダ本体2に対する固定位置(例えば一方の側面2aに対する正面位置)及び固定位置と異なる成形位置(例えば一方の側面2aに対する外周側位置)の間を回動可能になっている。
【0047】
可動部3は、例えば、側面視略直角三角形の箱状に形成され、内部が中空である。可動部3は、略直角三角形である両側の側面3a,3bと、上記の略直角三角形の一方の対辺、他方の対辺及び斜辺に対応する基端面3c、上面3d及び開放斜面3e(図3(a))とを有する。また、可動部3は、基端面3cと開放斜面3eとの間に上面3dに平行な下面3gを有している(図3(a))。開放斜面3eは、可動部3の基端面3cから先端3fに向かって上面3dの側に傾斜している。
【0048】
図2及び図5に示すように、ヒンジ部30は、可撓性を有すると共に例えば上下方向Hに延びた帯状に形成されている。ヒンジ部30の短手方向の一端は、コネクタホルダ本体2の外周面2cのうちの一側の側面(例えば横幅方向Wの他方側W−の側面2i)における一方の側面2a側の縁部の所定箇所(例えば上側部位)に連結され、ヒンジ部30の短手方向の他端は、可動部3の外周面(即ち両側の側面3a,3b、上面3d及び下面3g)のうちの一側の側面(例えば一方の側面3a)における基端面3c側の縁部に連結されている。
【0049】
この連結により、可動部3は、ヒンジ部30を回動軸線として回動することで、コネクタホルダ本体2の一方の側面2aの固定領域2fに対する正面位置を固定位置とし、一方の側面2aに対する外周側位置(即ち一方の側面2aの外周側のうちの横幅方向Wの他方側W−の位置)を成形位置とし、固定位置と成形位置との間を回動することが可能である。
【0050】
可動部3の基端面3cの所定箇所(例えばヒンジ部30側とは反対側の部分)には、軸線方向Pに凸出した段差凸部31が設けられている(図2(a))。段差凸部31におけるヒンジ部30側の側面31aは、上下方向Hから見て、ヒンジ部30側とは反対側に傾斜している。
【0051】
また、可動部3の基端面3cには、一対のスリット32a,32bと、1つ以上(例えば2つ)の挿入部33,34とが設けられている(図5)。
一対のスリット32a,32bは、基端面3cにおける例えばヒンジ部30側とは反対側に設けられており、それぞれ基端面3cを貫通し、それぞれ上下方向Hに沿って延び、互いに基端面3cの横幅方向Wに間隔を空けて配置されている。
【0052】
一対のスリット32a,32bのうち、一方のスリット(例えばスリット32a)は、コネクタホルダ本体2の係止片21が挿入して係止するスリット(即ち被係止部)であり、他方のスリット(例えばスリット32b)は、係止片21がスリット32aに挿入したとき、スリット32aの横幅を弾性的に拡幅可能にするためのスリットである。
【0053】
2つの挿入部33,34は、基端面3cの所定箇所(例えば基端面3cにおけるヒンジ部30側)に立設されており、それぞれ上下方向Hに間隔を空けて配置されている。各挿入部33,34は、例えば断面略四角形の筒状に形成されている。一方の挿入部(例えば上側の挿入部33)の上面33aは、例えば、ヒンジ部30側からその反対側に向かって下面33b側に傾斜している。即ち、一方の挿入部33は、その上下方向Hの幅がヒンジ部30側からその反対側に向かって漸次小さくなるテーパ形に形成されている。
【0054】
図1に示すように、係合部4は、コネクタホルダ本体2の外周面2cのうち可動部3がヒンジ結合された側面2iと異なる側面(例えば上側側面2d)の所定箇所(例えば横幅方向Wの他方側W−の端部)に、外周面2cから張り出した状態で設けられている。係合部4は、例えば、浅底の皿状部4aと、皿状部4aの底部中央に立設された例えば略円柱状の係合部本体4bと、係合部本体4bの外周面に設けられた突起部4cとを備えている。
係合部5は、可動部3の外面のうち係合部4側と同じ側の面(例えば上面3d)に、上面3dから張り出した状態で設けられている。係合部5は、例えば、浅底の皿状に形成されている。
【0055】
係合部6は、コネクタホルダ本体2の外周面2cに、土台部10を介して設けられている。土台部10は、例えば略直方体状に形成されており、外周面2cの所定箇所(例えば横幅方向Wの一方側w+の側面)に、外周面2cから張り出した状態で設けられている。係合部6は、土台部10の上面(即ち上下方向Hの上側の面)に、当該上面から張り出した状態で設けられている。係合部6は、例えば、浅底の皿状部6aと、皿状部6aの底部中央に立設された例えば略円柱状の係合部本体6bと、係合部本体6bの外周面に設けられた突起部6cとを備えている。
【0056】
突出部7は、可動部3が周辺部材に不用意に接触することを抑制する機能を有する部分である。突出部7は、例えば略矩形の片状に形成されており、コネクタホルダ本体2の一方の側面2aの外周縁部の所定箇所(例えば、下縁部における横幅方向Wの他方側W−の箇所)から、軸線方向P(即ち開口部軸線方向)に突出するように延設されている。突出部7の先端7aは、可動部3がコネクタホルダ本体2に対する固定位置に回動された状態で、可動部3の先端3fよりも軸線方向Pに突出している(図6の符号T1)。
【0057】
突出部8は、可動部3が周辺部材に不用意の接触することを抑制する機能を有する部分である。突出部8は、例えば棒状に形成され、コネクタホルダ本体2の外周面2cの段差面2eに設けられ、長手方向の両端部がコネクタホルダ本体2の両側の側面2a,2bから軸線方向Pに沿って突出している。突出部8の一方の端部8aは、可動部3がコネクタホルダ本体2に対する固定位置に回動された状態で、可動部3の先端3fよりも軸線方向Pに突出している(図6の符号T2)。
【0058】
<動作説明>
次に、このコネクタホルダ1の動作を説明する。
このコネクタホルダ1は、図2(b)に示すように、金型成形時は、可動部3がコネクタホルダ本体2の一方の側面2aの外周側位置である成形位置(即ち固定位置から180度反転した位置)に回動された状態で成形される。この回動状態では、可動部3の一方の側面3aがコネクタホルダ本体2の外周面2cのうちの横幅方向Wの他方側W−の側面2iに隣接しており、可動部3は、側面2iから横幅方向Wの他方側W−に張り出した状態で配置されている。従って、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向(即ち軸線方向P)から見て、係合部5は、係合部4に対して、コネクタホルダ本体2の一方の側面2aの外周側のうち係合部4側とは異なる側(例えば横幅方向Wの他方側W−)にずれて配列される。即ち、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向から見て、各係合部4,5は、互いに重ならないようにずれて配列されている。このため、離型方向がコネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向に一致した金型を用いてコネクタホルダ1が成形されても、各係合部4,5を適切に成形することが可能である。即ち、コネクタホルダ1が金型を用いて一体成形される。
【0059】
そして、図2(a)に示すように、コネクタホルダ1は、金型からの離型後、可動部3がコネクタホルダ本体2の一方の側面2aに対する外周側位置(即ち成形位置)から正面位置(即ち固定位置)にヒンジ部30を中心に180度回動されることで、完成する。この回動状態では、可動部3の基端面3cがコネクタホルダ本体2の固定領域2fに配置しており、可動部3は、固定領域2fから軸線方向Pに張り出した状態で配置されている。上記の配置状態では、コネクタホルダ本体2の係止片21が可動部3の一方のスリット32aに挿入されて一方のスリット32aの裏側の周縁に係止する。これにより、可動部3がコネクタホルダ本体2に対する固定位置に固定される。
【0060】
また、上記の当接状態では、可動部3の段差凸部31が固定領域2fの段差凹部20に嵌合すると共に、その嵌合時、段差凸部31の側面31aが段差凹部20の側面20aに沿って摺動することで、段差凸部31が段差凹部20内で横幅方向Wの一方側W+(即ちヒンジ部30側)に寄せられて配置される。これにより、可動部3とコネクタホルダ本体2との間の横幅方向Wの相対位置がガタつき無く位置決めされる。
【0061】
また、上記の当接状態では、可動部3の各挿入部33,34が固定領域2fの各収容部22,23に嵌入される。この嵌入状態では、各挿入部33,34の上面33a,34a及び下面33b,34bのうちの少なくとも一方が収容部22,23の内周面に当接する。また、挿入部33及び収容部22は、それらの上下方向の幅がヒンジ部30側からその反対側に向かって漸次小さくなるテーパ形であるため、上記のように段差凸部31が段差凹部20内で横幅方向Wの一方側W+に寄せられることで、挿入部33が収容部22内で横幅方向Wの一方側W+に寄せられる。これにより、挿入部33と収容部22との間の上下方向Hの隙間が無くなり、可動部3とコネクタホルダ本体2との間の上下方向Hの相対位置がガタつき無く位置決めされる。
また、上記の当接状態では、可動部3の下面3gがコネクタホルダ本体2の支持部24に当接する。これにより、支持部24によって可動部3が支持されている。
【0062】
<主要な効果>
以上、この実施形態に係るコネクタホルダ1(樹脂成形体)によれば、コネクタ嵌挿用開口部9(開口部)と、このコネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向(即ち軸線方向P)に沿って配列する係合部4(第1張出部)及び係合部5(第2張出部)とを有するコネクタホルダであって、開口部軸線方向の両側の側面2a,2bのうちの少なくとも一方の側面(例えば側面2a)にコネクタ嵌挿用開口部9が設けられたコネクタホルダ本体2(樹脂成形体本体)と、コネクタホルダ本体2の外周面2cにヒンジ部30を介してヒンジ結合され、コネクタホルダ本体2に対する固定位置と固定位置と異なる成形位置との間を回動可能な可動部3とが備えられ、係合部4は、コネクタホルダ本体2に設けられ、係合部5は、可動部3に設けられ、可動部3が固定位置に回動された状態で、係合部4及び係合部5は、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向(即ち軸線方向P)に沿って配列され、可動部3が成形位置に回動された状態で、軸線方向Pから見て、係合部4及び係合部5は、互いに重ならない方向(即ちコネクタホルダ本体2の一方の側面2aの外周側のうち係合部4側とは異なる側(例えば横幅方向Wの他方側W−))にずれて配列される。
【0063】
この構成により、コネクタ嵌挿用開口部9と、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向(以下、単に「開口部軸線方向」と記載する)に沿って配列する係合部4及び係合部5とを有するコネクタホルダ1を、金型を用いて一体成形することができる。
即ち、通常は、コネクタ嵌挿用開口部9と、開口部軸線方向に沿って配列する係合部4及び係合部5とを有するコネクタホルダ1を金型で成形する場合、開口部軸線方向が離型方向になるが、そうすると、係合部4と係合部5との間に金型が入れず、係合部4及び係合部5を有するコネクタホルダ1を一体成形することができない。
【0064】
しかし、このコネクタホルダ1では、コネクタホルダ本体2に可動部3がヒンジ結合され、係合部4がコネクタホルダ本体2に設けられ、係合部5が可動部3に設けられ、可動部3が固定位置又は成形位置に回動されることで、係合部4及び係合部5が開口部軸線方向に沿って配列したり、又は、開口部軸線方向から見て、係合部4及び係合部5が互いに重ならない方向にずれて配列する。
【0065】
このため、金型成形時は、可動部3を外周側位置(成形位置)に回動させ、開口部軸線方向から見て、係合部4及び係合部5が互いに重ならない方向にずれて配列された状態でコネクタホルダ1を成形することで、開口部軸線方向が離型方向に一致した金型を用いても、係合部4及び係合部5を有するコネクタホルダ1を一体成形することができる。そして、コネクタホルダ1を金型から離型した後、可動部3を固定位置に回動させることで、係合部4及び係合部5を開口部軸線方向に沿って配列させることができる。
従って、コネクタ嵌挿用開口部9と、コネクタ嵌挿用開口部9の開口部軸線方向に沿って配列された係合部4及び係合部5とを有するコネクタホルダ1を、金型を用いて一体成形することができる。
【0066】
また、上記の固定位置は、コネクタホルダ本体2(樹脂成形体本体)の一方の側面2aに対する正面位置であるため、可動部3での係合部5(第2張出部)の位置として、可動部3が固定位置に回動された状態で、係合部4(第1張出部)及び係合部5が開口部軸線方向に沿って配列する位置を確保し易くなる。
また、成形位置がコネクタホルダ本体2の一方の側面2aに対する外周側位置であるため、金型成形時に可動部3が成形位置として外周側位置に回動されることを考慮すると、可動部3の形状を、コネクタ嵌挿用開口部9の配置や形状に関係無く自由な形に形成することができる。
【0067】
また、可動部3は、コネクタホルダ本体2の外周面2cにヒンジ結合されるため、成形位置をコネクタホルダ本体2の一方の側面に対する外周側位置にできると共に固定位置をコネクタホルダ本体2の一方の側面2aに対する正面位置にすることができる。
【0068】
また、係合部4(第1張出部)は、コネクタホルダ本体2の外周面2cのうち、可動部3がヒンジ結合された側面2iの側と異なる側の側面2dに設けられ、係合部5(第2張出部)は、可動部3のうち、可動部3が固定位置に回動された状態で係合部4と同じ側の面(即ち上面3d)に設けられるため、可動部3が固定位置に回動された状態で、係合部4及び係合部5が開口部軸線方向に沿って配列され、可動部3が成形位置に回動された状態で、係合部4及び係合部5が、開口部軸線方向から見て、互いに重ならない方向にずれて配列されるように、係合部4をコネクタホルダ本体2の外周面2cに設けることができ、係合部5を可動部3に設けることができる。
【0069】
また、コネクタホルダ本体2(樹脂成形体本体)に設けられた挿入部33,34と、可動部3に設けられ、可動部3が固定位置に回動された状態で挿入部33,34が嵌入される収容部22,23とが備えられるため、挿入部33,34が収容部22,23に嵌入されることで、可動部3とコネクタホルダ本体2とを嵌合形式で接続することができる。この結果、可動部3が固定位置に回動された状態で、回動軸線方向からの負荷が可動部3に作用しても、コネクタホルダ本体2に対して可動部3が座屈することを抑制することできる。
【0070】
なお、この実施形態では、挿入部33,34が可動部3に設けられ、収容部22,23がコネクタホルダ本体2に設けられたが、逆に、挿入部33,34がコネクタホルダ本体2に設けられ、収容部22,23が可動部3に設けられてもよい。
【0071】
また、挿入部33,34には、回動軸線方向(即ち上下方向H)の幅がヒンジ部30の側とは反対側に向かって漸次小さくなるテーパ形挿入部(即ち挿入部33)が含まれ、挿入部33が嵌入される収容部22は、回動軸線方向の幅がヒンジ部30側とは反対側に向かって漸次小さくなっているため、挿入部33が収容部22内でヒンジ部30側とは反対側に寄せて配置されることで、挿入部33と収容部22との間の回動軸線方向の隙間を無くすことができる。この結果、可動部3とコネクタホルダ本体2との間の回動軸線方向の相対位置をガタつきを無くして位置決めすることができる。
【0072】
なお、この実施形態では、挿入部33の回動軸線方向(即ち上下方向H)の幅は、ヒンジ部30側とは反対側に向かって漸次小さくなるが、挿入部33の回動軸線方向の幅は、ヒンジ部30側の反対側からヒンジ部30側に向かって漸次小さくなってもよい。この場合、収容部22の回動軸線方向の幅も、挿入部33の回動軸線方向の幅に合わせて、ヒンジ部30側の反対側からヒンジ部30側に向かって漸次小さくなる。
【0073】
また、挿入部33,34は、断面略四角形の筒状であるため(即ち挿入部33,34の内部が中空であるため)、挿入部33,34の強度を確保しつつ、挿入部33,34を形成する樹脂の量を軽減することができる。
なお、挿入部33,34は、断面略四角形の筒状の形状に形成する代わりに、断面略横転H状の柱状又は断面コの字状の柱状であってもよく、この場合の上記と同様の効果を得る。
【0074】
また、コネクタホルダ本体2に係止片21(係止部)が設けられ、可動部3にスリット32a(被係止部)が設けられ、可動部3が固定位置に回動された状態で係止片21がスリット32aに係止するため、可動部3を固定位置に固定することができる。
【0075】
なお、この実施形態では、コネクタホルダ本体2に係止片21が設けられ、可動部3にスリット32aが設けられたが、逆に、コネクタホルダ本体2にスリット32aが設けられ、可動部3に係止片21が設けられてもよい。
【0076】
また、係止片21の基部21bには、補強リブ21cが設けられているため、係止片21を補強することができる。
【0077】
また、コネクタホルダ本体2(樹脂成形体本体)には、可動部3が固定位置に回動された状態で、可動部3と同じ側に突出すると共に可動部3よりも開口部軸線方向に突出する突出部7,8が設けられるため、コネクタホルダ1(樹脂成形体)が周辺部材に突き当たるとき、突出部7,8が可動部3よりも先に周辺部材に突き当たることができる。この結果、可動部3が周辺部材に突き当たって破損することを抑制することができる。
【0078】
また、可動部3は、係合部5(第2張出部)が設けられた上面3d(第1面)と、上面3dの反対側の開放斜面3e(第2面)とを有し、開放斜面3eは、可動部3の先端3fに向かって上面3dの側に傾斜しているため、可動部3における上面3dと開放斜面3eとの間の厚さが可動部3の先端3fに行くほど薄くなり、可動部3が開放斜面3eの側に可撓し易くなる。この結果、可動部3の上面3dに押圧力が作用したとき、可動部3が開放斜面3e側に可撓でき、これにより押圧力が可動部3のヒンジ部30に集中することを抑制することができる。
【0079】
また、可動部3におけるコネクタホルダ本体2(樹脂成形体本体)との固定面(即ち基端面3c)の一部に、開口部軸線方向(即ち軸線方向P)に凸出した段差凸部31が形成され、コネクタホルダ本体2における可動部3との固定領域2fに、段差凸部31が嵌合する段差凹部20が形成されているため、段差凸部31と段差凹部20との嵌合により、可動部3とコネクタホルダ本体2との間の相対位置(例えば回動軸方向(即ち上下方向H)に直交する横幅方向Wの相対位置)を位置決めすることができる。
【0080】
また、段差凸部31のヒンジ部30側の側面31aがヒンジ部30側とは反対側に傾斜し、段差凹部20のヒンジ部30側の側面20aがヒンジ部30側に傾斜しているため、段差凸部31が段差凹部20に嵌合したとき、段差凸部31のヒンジ部30側の側面(即ちヒンジ部30側とは反対側に傾斜した側面)31aが段差凹部20のヒンジ部30側の側面(即ちヒンジ部30側に傾斜した側面)21aを摺動することで、段差凸部31が段差凹部20内でヒンジ部側とは反対側に寄せられて配置される。これにより、可動部3とコネクタホルダ本体2との間の回動軸線方向に直交する方向(即ち横幅方向W)の相対位置をガタつきを無くして位置決めすることができる。
【0081】
なお、この実施形態では、段差凸部31のヒンジ部30側の側面31aがヒンジ部30側とは反対側に傾斜し、段差凹部20のヒンジ部30側の側面20aがヒンジ部30側に傾斜しているが、段差凸部31のヒンジ部30側とは反対側の側面がヒンジ部30側に傾斜し、段差凹部20のヒンジ部30側とは反対側の側面がヒンジ部30側とは反対側に傾斜してもよい。この場合は、段差凸部31が段差凹部20内でヒンジ部30側に寄せられて配置される。
【0082】
また、この実施形態の樹脂成形体1は、コネクタホルダであり、開口部は、外部のコネクタが嵌合するコネクタ嵌挿用開口部9であるため、上記の効果を奏するコネクタホルダを提供することができる。
【0083】
なお、この実施形態では、可動部3は、コネクタホルダ本体2の外周面2cにヒンジ結合されたが、ヒンジ結合の位置をそのような位置に限定するものではない。また、成形位置は、コネクタホルダ本体2の外周側に取られたが、そのような位置に限定するものではない。また、係合部4は、コネクタホルダ本体2の外周面2cに設けられたが、係合部4の位置をそのような位置に限定するものではない。
【0084】
また、この実施形態では、可動部3が1つ設けられ、コネクタ嵌挿用開口部9に沿って並ぶ係合部が2つ(係合部4,5)設けられたが、可動部3が複数設けられ、コネクタ嵌挿用開口部9に沿って並ぶ係合部が3個以上設けられてもよい。例えば、上記の実施形態において、コネクタホルダ本体2の他方の側面2b側に可動部3と同様に別の可動部が設けられ、別の可動部に、係合部5に対してコネクタ嵌挿用開口部9に沿って並ぶ別の係合部が設けられてもよい。
【0085】
また、この実施形態では、樹脂成形体1の例としてコネクタホルダに適用した場合で説明したが、車両に搭載可能な樹脂成形体(例えば電線用プロテクタやジャンクションボック)に適用可能である。
【0086】
なお、この実施形態では、第1張出部及び第2張出部として各係合部4,5が設けられたが、第1張出部及び第2張出部は、各係合部4,5に限定するものではなく、例えば、面に対して突出した突出部であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…コネクタホルダ(樹脂成形体)
2…コネクタホルダ本体(樹脂成形体本体)
3…可動部
3e…開放斜面(第2面)
3d…上面(第1面)
4…係合部(第1張出部)
5…係合部(第2張出部)
9…コネクタ嵌挿用開口部
17,18…突出部
20…段差凹部
21…係止片(係止部)
21c…補強リブ
22,23…収容部
31…段差凸部
33,34…挿入部
32a…スリット(被係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6