【実施例1】
【0011】
本発明にかかる第1の実施形態を
図1から
図10を参照し説明する。
【0012】
図1は実施例1の自動分析装置の構成を示す図である。
図1(a)は自動分析装置の上面を示す。
図1(b)は試薬分注機構14の側面を示す。
図1(c)はサンプル分注機構15の側面を示す。
【0013】
自動分析装置10は、試薬容器11を複数搭載する試薬ディスク12と、試薬とサンプルを混ぜ合わせて反応を測定する反応ディスク13と、試薬の吸引や吐出を行う試薬分注機構14と、サンプルの吸引や吐出を行うサンプル分注機構15から構成される。試薬分注機構14は試薬を分注するための試薬ノズル16を備え、サンプル分注機構15はサンプルを分注するためのサンプルノズル17(以下、ノズル17とも言う)を備える。装置に投入されたサンプルは、サンプル容器(試験管)18に入れた状態で、ラック19に搭載されて搬送される。ラック19には複数のサンプル容器18が搭載される。なお、サンプルは血清や全血などの血液由来のサンプル又は尿などである。
【0014】
サンプル分注機構15は、ノズル17を、サンプル容器18からサンプル吸引を行う吸引位置、反応セル20(以下、セル20とも言う)に吐出を行う吐出位置、および、ノズル17の先端を水で洗い流す洗浄槽21がある洗浄位置へ回転動作によって移動させる。さらに、サンプル分注機構15は、吸引位置、吐出位置、および洗浄位置ではサンプル容器18、セル20、洗浄槽21のそれぞれの高さに合わせて、ノズル17を下降させる。
【0015】
自動分析装置は、セル20内に収容されたサンプルと試薬との混合液を測光することで、サンプル内の所定成分の濃度などを分析する。サンプル分注機構15の移動やラック19の搬送などは、全てモータ(図示せず)で行い、自動分析装置10内にあるコントローラ22で制御される。例えば、コントローラ22は制御基板である。また、分析したサンプル内の所定成分の濃度などは記憶部23に記憶される。例えば、記憶部23はハードディスクなどの記憶媒体である。
【0016】
図2は分注システムの一例である。
図2(a)は分注システム全体を示す図であり、
図2(b)は温度センサ212を拡大した図である。
【0017】
分注システムは、液体の分注を行うノズル17と、ノズルに接続された配管206と、配管の基部に設けられた、水を貯留するタンク205から少なくとも構成される。さらに、分注システムは、配管206に設けられた電磁弁203と、電磁弁203とノズル17との間に設けられノズル17の液体の分注量を制御するシリンジポンプ202と、電磁弁203とタンク205との間に設けられた当該システム水タンク内に貯留された水をシリンジポンプ202に向かって送液するポンプ204を有する。タンク205はいわゆるシステム水を貯留するシステム水タンクでありノズル内を洗浄するため等に用いられ、ポンプ204は例えばギアポンプである。
【0018】
また、分注システムは、電磁弁203とシリンジポンプ202との間に設けられた温度センサ212と、シリンジポンプ202などを制御するコントローラ211(22)を有し、コントローラ211は、当該温度センサ212によって測定された測定値に基づいて、シリンジポンプ202を制御することができる。詳細については後述する。
【0019】
本実施例では、サンプル分注機構15を例に分注流路を説明する。例えば、分注する液体は尿や血液などの生体試料である。分注流路は、ノズル17と、圧力計201と、シリンジポンプ202と、電磁弁203と、ポンプ204と、タンク205から構成され、各部品は配管206で接続する。また、シリンジポンプ202は、容器207と、プランジャ208と、ボールねじ209と、駆動モータ210で構成される。駆動モータ210は、サンプル分注機構15などを駆動するモータと同様にコントローラ211で制御される。
【0020】
ノズル17から液体を吸引するときは、電磁弁203を閉にした状態で、シリンジポンプ202内のプランジャ208を引き、ノズル17から液体を吐出するときは、電磁弁201を閉にした状態で、シリンジポンプ202内のプランジャ208を押す。以上のプランジャ208の動作によって、配管内の液が押し引きされてノズル17で分注が行える。液体の吸引や吐出は、電磁弁203からノズル17内まで水で満たされ、且つ、サンプルとなる液体と水とが干渉しないように液体と水とが空気層で分離された状態で行われる。
【0021】
また、分注後にはノズル17の洗浄を行う。洗浄は分注するサンプル個体が異なるときに行うが、数回分注を繰り返した場合も1回洗浄することが多い。ノズル17を洗浄するときは、外部の洗浄は洗浄槽21で行い、内部の洗浄は電磁弁203を開にして水をポンプ204で送り出すことで行う。
【0022】
以上のような従来の分注流路に加え、本実施例では、電磁弁203とシリンジポンプ202の間の流路に、温度センサ212を少なくとも1つ以上設けられることを特徴とする。温度センサ212は、
図2(b)に示すように、配管の温度を測定する配管温度センサ213と配管内の水の温度を測定する水温センサ214から構成される。配管温度センサ213は配管表面の温度を測定し、水温センサ214はポンプ204が送液した水の温度を測定することができる。配管温度センサ213と水温センサ214は夫々、電磁弁203とシリンジポンプ202の間に設けられていればよいが、図示するように近接した配置が望ましい。図ではこれらのセンサが配管内の液体流路に対して垂直方向の同一平面内に配置されている例である。
【0023】
温度センサ212は、コントローラ211と接続され、夫々のセンサの温度測定データはコントローラ211(22)内の記憶部23に適宜取り込まれる。取り込んだ温度データを基に推定した配管内の水の変動量は、コントローラ211内で計算され、既定の移動量に補正量を合せた移動量をシリンジポンプ202の駆動モータ210に与えることで分注量を補正することができる。なお、既定の移動量は、分注量毎に定められた移動量であり予め記憶部23に記憶されている。
【0024】
温度センサ212の配置と数に関しては、後述する複数の推定手段などによって異なるため、詳細は後述の推定手段と併せて説明する。
【0025】
図3は本実施例の分注システムの制御ブロックの一例である。
図3では、分注システムに関係する分注機構に関連する処理に関してのみ図示・説明する。なお、本実施例では、サンプル分注機構15(以下、分注機構15とも言う)を例に説明するが、試薬分注機構14においても同様に実施可能である。
【0026】
コントローラ211である制御基板内に割り当てられる分注装置制御部300には、分注機構の分注シーケンスを処理する分注シーケンス処理部301と、分注シーケンスデータ302とがあり、分注機構15や試薬ディスク12などの制御は分注シーケンスデータ302を基に管理される。分注シーケンス処理部301は、分注動作制御部303に指令することで分注機構15および該当分注機構の流路系の部品(シリンジポンプ202、電磁弁203、ポンプ204)に指令を出すことができる。分注動作制御部303では制御量や制御時間などの情報は、分注動作パラメータ304を利用する。分注動作制御部303からの指令値は、モータ制御部305やシリンジ制御部306、電磁弁制御部307、ポンプ制御部308を介して、各アクチュエータを制御する。ただし、モータの場合は、モータ駆動部(モータアンプ)330を更に介してモータに指令電流値が送られる。
【0027】
本実施例の分注システムは、分注動作制御部303からの指令値に加え、分注量補正部310が分注動作パラメータ304に登録されたモータ駆動部330の移動量を増減できる。この補正のタイミングに関しては後述する。分注量補正部310は、温度測定部311が取り込んだ温度センサ212の温度測定値を基に、サンプル吐出時に必要な補正量を計算する。
【0028】
分注シーケンス処理部301は、上位通信処理部320を介して上位計算機321との通信を行うことが可能で、ユーザからの指示や他機能で観測された異常などで分注機構および各制御部の停止やリセットなどの処理指令を受け取ることができる。
【0029】
以上の構成によれば、温度センサ212で測定した温度データを基に、必要な補正量を計算しシリンジポンプ202の移動量に反映した制御を行うことが可能である。
【0030】
図4は本実施例の分注システムのタイミングチャートの一例である。下段はノズルステータスを示しノズルを洗浄した後に2回分注動作を行い、その後ノズルを洗浄する例である。上段は補正処理のタイミングを示し補正量を計算するタイミングを示している。
【0031】
図4で示すように、ノズル洗浄の後、吸引と吐出を複数行う。通常の分注では、吸引と吐出時のプランジャの移動量(以下、シリンジの移動量とも言う)は分注量毎に決まっており、分注動作パラメータ304に登録された移動量を移動する。当該移動量は記憶部23に記憶されている。シリンジポンプのプランジャの移動量の補正を行う場合、吸引完了時から吐出開始時の直前まで補正量計算の処理を行い、補正量計算結果をシリンジの移動量を増減するためにシリンジ制御部(コントローラ22)に出力する。これによって、吐出時には、記憶部23に記憶されているシリンジの移動量に対して補正量計算結果を反映させて、移動量を補正することができる。言い換えると、コントローラはプランジャの移動量を補正することで分注量を補正することができる。このように、ノズル17が液体を吸引した後、かつ、液体の吐出を開始する前の間に測定された夫々の測定値に基づいて、コントローラはシリンジポンプを制御することが望ましい。なお、シリンジ制御部に出力するタイミングとしてノズルの吐出動作の直前が望ましいが吸引と吐出のタイミングの間で出力できればよい。
【0032】
図5に補正処理のフローチャートの一例を示す。補正量の計算では、水および配管の温度データ収集603と、測定値に基づく体積変化量(熱膨張量)の計算604を吐出時まで繰り返す。吐出開始時の直前に、計算した体積変化量に基づいて補正量が計算され、シリンジ移動量に追加・削減するための補正量がシリンジ制御部306に出力される。
【0033】
まず、ノズル17を洗浄後にサンプル(又は試薬)となる液体の吸引が開始される。液体の吸引が完了すると、配管温度・水温データの収集が行われる(601〜603)。収集したデータを基に体積変化量(熱膨張量)の計算が行われる(604)。吐出開始直前になると体積変化量計算から補正量の推定がなされる(606)。すなわち吐出開始直前まで体積変化量の計算が繰り返される。推定した補正量に基づきシリンジ制御部306にシリンジ(プランジャ)の補正量が出力される(607)。
【0034】
当該シリンジの補正量に基づきシリンジポンプを制御することで配管温度および水温を反映した分注量の補正を行うことができる。このように、例えば
図5のフローチャートで示したように、コントローラは、水温センサと配管温度センサによって測定された夫々の測定値に基づいて、分注量を補正するようシリンジポンプを制御する。
【0035】
図6に電磁弁とシリンジポンプとの間の配管温度および水温の変化と体積変化の波形の測定結果の一例を示す。
【0036】
図6(a)と(c)は、
図4に示すように、2回連続した分注時の電磁弁付近からの配管温度および水温の変化、
図6(b)と(d)は、水と配管の熱膨張・収縮の差と言う体積変化量(熱膨張量とも言う)の測定結果の例である。
図6(a)や(b)では電磁弁付近の水温は13℃と設定しており、
図6(c)や(d)では35℃と設定した。
【0037】
分注機構を25℃の部屋で操作していたため、電磁弁付近の水温と室温の差は−12℃と+10℃であった。水と配管の熱膨張は電磁弁とプローブ17の間に分注量に影響を与えるため、電磁弁から入った水の温度を条件パラメータとして本実施例では説明する。また、分注機構の温度は水温によって経時的に変わるため、温度が一定になっている室温を別のパラメータとして本実施例で説明する。
【0038】
例えば、
図4のように連続して2回分注を行う動作では、ノズル17を洗浄した後に吸引と吐出を2回繰り返す。ノズル17の洗浄では、ノズル17内外を前述の通り洗浄するが、ノズル17内の洗浄を行うときに、タンク205からポンプ204の駆動によって一定量の水を送り出す。このとき、タンク205内の水温は、タンク205に供給する上水の水温(あるいは施設外にある純水設備等の水温)に影響される。
【0039】
つまり、タンク205内の水温と、分注機構の流路(配管)の水温は異なる。そのため、ノズル洗浄後には
図6(a)に示す通り、一時的に配管内の温度が低下(あるいは
図6(c)に示す通り、タンク水温が高い場合は上昇)する。その後は、流路周囲の温度によって、配管内の水温は上昇(あるいは低下)し、配管自体の温度は水温変化とは逆に低下(あるいは上昇)する。以上のような温度変化が発生するため、配管と水の膨張・収縮が発生する。
【0040】
特に、洗浄直後には流路周囲とタンク205内の水温差によって、配管および水の膨張・収縮の変化が生じる。
図6(b)に示す通り、体積変化量(熱膨張量)が、液体の吸引から吐出の間に発生すると、その差分が分注量の目標値からのずれとなる。本実施例は、この差分を測定した配管温度および水温から推定し、シリンジポンプのプランジャの移動量として補正するものである。なお、配管の例として、弾性変形し易い可撓性のチューブが挙げれられる。また、代表的な材質としてはフッ素樹脂などの樹脂素材やシリコン素材が挙げられる。
【0041】
本分注機構の水と配管の体積変化量を分かれて測定するのは困難であるが、ノズル17は温度変化が行う場所から離れていれば、ノズル17内の液面変位(水と空気との界面の変位)から水と配管の差(体積変化量)を測定することが可能である。
【0042】
液面変位の測定方法としては、マイクロスコープ観察(透明ノズルの場合)、ノズルキャパシタンス変化測定、超音波距離センサなど挙げられる。以下、配管と水の熱膨張による分注ばらつきのメカニズムをより明確に説明するため、ノズル17内の液面変位を使用する。
【0043】
図7はノズル17内の液面変位に対する水温と配管温度変化の熱膨張・収縮による影響を説明する図である。
図7(a)に示すように配管温度が上昇する場合、配管の熱膨張により内部体積が広がるため、吸引が行われているかのように液面はノズル17の内方向に変位する。逆に、
図7(b)に示すように配管温度が低下する場合、配管の熱収縮により内部体積が縮まるため、吐出が行われているかのように液面はノズル17の外方向に変位する。
【0044】
一方、水の場合、逆の現象が生じる。
図7(c)に示すように水の温度が上昇する場合、水の熱膨張により水の体積が増加するため、吐出が行われているかのように液面はノズル17の外方向に変位する。逆に、
図7(d)に示すように水の温度が低下する場合、水の熱収縮により水の体積が減少するため、吸引が行われているかのように液面はノズル17の内方向に変位する。
【0045】
なお、上記記載のような現象は、ノズル17周辺では温度変化が生じていない場合の説明であり、温度変化が生じる場合、ノズル17の体積変化は液面変位に影響与えるため、現象が変わることもある。また、水と配管の温度は同時に変化するため、液面変位は配管と水の体積変化の差である。水と配管の両方に同じ温度変化が発生する場合、液面変位は熱膨張係数の差によって決まる。
【0046】
図8は分注量のずれに対する水や配管の熱膨張・収縮の影響の説明する図である。
図8(a)に示すように分注システムは定常温度である場合、水及び配管の熱膨張・収縮が発生しない。このため、吸引と吐出の間に液面変位が生じない。従い、シリンジポンプ202(以下、シリンジ202とも言う)のプランジャ208が予め決まっている移動量を移動すれば、目標量Vを吐出する。
【0047】
ただし、
図8(b)に示すように水の熱膨張及び配管の熱収縮が発生している間分注を行う場合、吸引と吐出の間に液面がノズル17の外側方向に変位するため、余分量がノズル17の先端にたまってしまい、シリンジ202のプランジャ208が予め決まっている移動量を移動すれば、目標量Vより多いサンプルを吐出してしまう。一方、
図8(c)に示すように水の熱収縮及び配管の熱膨張が発生している間分注を行う場合、吸引と吐出の間に液面がノズル17の内側方向に変位するため、ノズル17先端に空気が入ってしまい、シリンジ202のプランジャ208が予め決まっている移動量を移動すれば、目標値Vより少ないサンプルを吐出してしまう。
【0048】
従い、水および配管の温度を考慮してプランジャ208の移動量を補正して吐出量を目標値Vに近づけられるよう補正することが分注ばらつきを抑制する上で重要となる。すなわち、コントローラは、水温センサと配管温度センサによって測定された夫々の測定値から水の体積変化量と配管内の容積変化量を求め、求めた体積変化量と容積変化量に基づき移動量の補正を行うことが望ましい。
【0049】
具体的には、分注量毎にプランジャの移動量が予め記憶されている記憶部を備え、コントローラは、記憶部に予め記憶されているプランジャの移動量で分注した場合に、体積変化量と容積変化量から実際の分注量が多いと判定する場合には移動量を少なくし、少ないと判定する場合には移動量を多くするようプランジャの移動量を補正することが望ましい。
【0050】
図9(a)と(b)は連続分注時の流路の複数位置における配管温度および水温の測定結果の一例である。各図では、シリンジ202と圧力計201の間、電磁弁とシリンジ202の間、電磁弁とシリンジの間に、夫々温度センサ212を、配置した場合における、各配管温度センサ213と水温センサ214の測定値の経時変化を示している。
【0051】
例えば、プローブ洗浄時に配管206の温度より低い水が流れた場合、
図9(a)のような温度変化となる。プローブ洗浄時に配管206の温度より高い水が流れた場合、
図9(b)のような温度変化となる。水と配管206の温度の変化は、電磁弁203とシリンジ202の間(電磁弁付近)の配管206がもっとも大きい。したがって、室温と供給水温による体積変化量もしくは分注機構を一定量に吐出できるようの移動量の補正量を推定するためには、電磁弁203とシリンジ202の間(電磁弁付近)で温度測定をすることが効果的である。但し、電磁弁203とシリンジ202の間(シリンジ付近)も温度変化は比較的大きいため少なくとも、電磁弁203とシリンジ202の間に温度センサ214(配管温度センサ213と水温センサ214)を設けることで精度の高い補正が可能となる。
【0052】
図10は、本実施例の温度センサ212の配置の一例である。本実施例では、電磁弁203とシリンジ202との間の配管206の中央の水温および配管温度から液面変位を推定する。
図9で示すように、電磁弁203とシリンジ202との間の配管の温度は他の配管よりも変化するため、本実施例では電磁弁203とシリンジ202との間の配管の中央で温度測定する。また、電磁弁203とシリンジ202との間の配管206の中央の温度を測定することにより、その配管206全体に沿った温度変化の平均に近い温度変化を測定できる。中央とは略中央を意味し例えば、電磁弁203とシリンジ202との間の配管を均等に3分割したときの中央に配置されることを意味する。
図10の温度センサ212の水温と配管温度及び数式1を用いることで、補正量を推定する。
【0053】
【数1】
【0054】
上記の数式において、ΔLは補正量、Voは電磁弁203とシリンジ202との間の配管内部容積、ΔVwはVoを満たす水の温度変化による体積変化、ΔVpは配管の温度変化による変形に起因するVoの変化である。また、Aplungerはシリンジ202のプランジャ208の断面積、βwは水の熱膨張係数、βpは配管の熱膨張係数、Twは水の温度、Tpは配管の温度、iは時間周期、nは吸引と吐出の間の時間周期数である。この数式は、水温センサ214と配管温度センサ213の夫々の測定値から水と配管206の熱膨張を計算し、水と配管206の体積の差つまり分注量のずれを計算し、それをプランジャ208の断面積Aplungerに割ることによって、補正量ΔLを推定できる。
【0055】
この計算を
図5の配管温度・水温データ収集と体積変化の計算(603、604)として実施する。これにより吐出開始直前において補正量ΔLを推定することができ、シリンジ制御部に補正量を出力することができる(606、607)。従い、液体の吐出時には、シリンジのプランジャの移動量の補正を行った状態で液体の吐出を行うことができる。
【0056】
以上のように、本実施例の分注システムによれば、電磁弁203とシリンジ202との間の配管の中央で測定された配管206の表面および内部の水温からノズル内の液位を推定することで、タンク内の水温と分注ユニットの流路に温度差がある状態において、分注ばらつき(分注量のずれ)を抑制することができる。
【0057】
以下に実施例1と温度センサ配置・推定手段が異なる2つの実施例を示す。
【実施例3】
【0064】
本発明にかかる第3の実施形態を
図12を参照し説明する。
【0065】
図12は実施例3の温度センサ212の配置例である。本実施例では、電磁弁203付近の水温と配管温度を測定する。本実施例の温度センサの配置に対しては、2つの推定手段が利用できる。本実施例は洗浄直後だけの温度測定が行われる。本実施例においては、室温センサ1201で室温も測定すると、更に正確な推定が得られる。本実施例は熱拡散計算手段もしくはテーブル化手段を利用する。
【0066】
熱拡散計算手段では、測定された水温と配管温度を次式の円柱座標の2次元非定常熱拡散方程式の初期値として使用し、電磁弁203とシリンジ202との間の配管206全体に沿った水および配管206の経時的な温度変化を数式3の数値的方法で計算する。
【0067】
【数3】
【0068】
この式において、αは熱拡散率、xは配管206に沿った距離、rは配管206の断面の中心からの半径方向の距離である。
【0069】
前記の数式3で温度を計算することで、補正量を次式の数式4で計算することができる。
【0070】
【数4】
【0071】
上式において、jは温度変化が計算された位置の数である。
【0072】
テーブル化手段は、水と配管の初期温度に依存する体積変化量をテーブル化することで液面変位を推定する。テーブル化には、下記数式5の近似式を用いて実測の体積変化量カーブをフィッティングすることが可能である。
【0073】
【数5】
【0074】
近似式のパラメータAや、B、Cをテーブルに保存することで、実測と同じ温度条件が発生すれば、体積変化量を再構築(推定)をすることができる。補正量は吸引と吐出の間の体積変化量から求める。
【0075】
なお、テーブル化手段を使用するには、自動分析装置が受ける様々の温度条件のパラメータを集計する必要がある。また、システムの構造が変更された場合は、再度パラメータを集計する必要がある。
【0076】
以上のように、本実施例の分注システムによれば、電磁弁203付近の配管206の表面および内部の水温から補正量を推定することで、タンク内の水温と分注ユニットの流路に温度差がある状態において、分注ばらつきを抑制することができる。
【0077】
温度センサ212の配置について、
図10〜12で例を説明したが特許請求の範囲に記載された発明はこれらの配置に限定されるものではない。電磁弁203とシリンジ202との間に配管温度センサ213と水温センサ214とが配置される限りにおいて様々な配置が可能である。なお、先に言及したようにこれらのセンサは近接した配置が好ましいがこれに限るものではない。
【0078】
また、温度センサ212の数に関しては、1組の例と2組の例を示したが、数については特に限定はない。3組以上を電磁弁203とシリンジ202との間に配置してもよい。数が少なければ部品点数が少なくできるというメリットがある。一方、電磁弁203とシリンジ202との間以外に配置しても構わない。この間以外でも熱膨張による体積変化が生じるためこの体積変化も補正量に反映することでより精度高く分注量を補正することができる。例えば、シリンジ202とノズル17の間に配置してもよい。
【0079】
また、補正量を計算する上で様々な温度センサ212の配置例と適用する近似式の例を示した。最良と考えられる組み合わせを示したがこれに限定されるものではなく適宜、定数を足したり掛けたり合理的な範疇で近似式の変更が可能であり、変更した近似式を用いて補正量を計算してもよい。また、温度センサ212の配置についても適宜変更可能である。近似式を用いるのであれば、少なくとも配管の熱膨張と水の熱膨張とを加味する近似式であればよい。
【0080】
また、近似式に限られるものではなく予め水温センサと配管温度センサの測定値と補正量との関係を表すテーブルを記憶部に記憶しておき、水温センサと配管温度センサの測定値を入力値とすることで補正量を出力してもよい。
【0081】
すなわち、近似式やテーブルを用いる場合のいずれであっても、コントローラは、水温センサと配管温度センサによって測定された測定値の夫々をパラメータとして、シリンジポンプのプランジャの移動量を決定し、決定された当該移動量でプランジャを制御することが望ましい。言い換えれば、コントローラは、水温センサと配管温度センサによって測定された測定値の夫々をパラメータとして、分注量の補正量を計算することが望ましい。なお、さらに補正量の精度を高めるために室温センサの測定値をパラメータや入力値としてもよい。
【0082】
また、本発明にかかる分注システムの適用例として生化学自動分析装置の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、免疫自動分析装置、凝固自動分析装置、遺伝子自動分析装置など分注ばらつきの抑制することでメリットがある様々な自動分析装置に適用することができる。