(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整手段は、前記第3補助電極、及び前記第4補助電極を、電極の面内方向に移動させることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電界共鳴型カップラ。
前記送電用カップラに交流電力を伝送する給電ケーブルの外導体に流れる電流を検出する検出手段をさらに有し、前記電流の検出結果に基づいて、前記可変コンデンサの容量を調整することを特徴とする請求項9に記載の電界共鳴型カップラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の対応策は、送電用カップラの電極と受電用カップラの電極が略平行に対向した場合(回転ずれが生じていない場合)に生じるコモンモード電流を抑制するものであって、これらの電極が非平行に対向配置された場合(回転ずれが生じた場合)は想定されていない。回転ずれが生じると、新たなコモンモード電流の発生原因が生じるため、従来の対応策ではコモンモード電流を抑制しきれない課題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、送電用電極と受電用電極が非平行に対向配置された場合(回転ずれが生じた場合)に、コモンモード電流を抑制できる電界共鳴型カップラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電界共鳴型カップラは、送電用LC共振回路と受電用LC共振回路とが電界共鳴することによって、送電用カップラから受電用カップラにワイヤレスで電力伝送する電界共鳴型カップラであって、前記送電用LC共振回路と前記受電用LC共振回路とをそれぞれ収容するように構成された送電側および受電側シールドケースを備え、前記送電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を具備し、前記受電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第3電極及び第4電極、を具備し、前記第1電極および前記第2電極が前記第3電極および前記第4電極にそれぞれ対向配置されることで、前記送電用カップラから前記受電用カップラに電力が伝送され、前記送電側シールドケースの電位が接地電位となる様に調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記送電用カップラは、前記第1電極と導通されるとともに、前記第1電極に対向して配される第1補助電極と、前記第2電極と導通されるとともに、前記第2電極に対向して配される第2補助電極と、を有し、前記受電用カップラは、前記第3電極と導通されるとともに、前記第3電極に対向して配される第3補助電極と、前記第4電極と導通されるとともに、前記第4電極に対向して配される第4補助電極と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記調整手段が、前記第1電極と前記送電側シールドケース間の第1容量、及び前記第2電極と前記送電側シールドケース間の第2容量の少なくとも一方を変化させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記調整手段が、前記第3電極と前記受電側シールドケース間の第3容量、及び前記第4電極と前記受電側シールドケース間の第4容量の少なくとも一方を変化させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記送電用LC共振回路と前記受電用LC共振回路が電界共鳴する共振周波数の検出手段をさらに有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記調整手段が、前記第1補助電極、及び前記第2補助電極を、前記送電側シールドケースに対して電極間方向にオフセットする量を調整することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記調整手段が、前記第3補助電極、及び前記第4補助電極を、前記受電側シールドケースに対して電極間方向にオフセットする量を調整することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記調整手段が、前記第1補助電極、及び前記第2補助電極を、電極の面内方向に移動させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記調整手段が、前記第3補助電極、及び前記第4補助電極を、電極の面内方向に移動させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記第1容量及び前記第2容量が可変コンデンサを含み、前記第3容量及び前記第4容量が可変コンデンサを含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記送電用カップラに交流電力を伝送する給電ケーブルの外導体に流れる電流を検出する検出手段をさらに有し、前記電流の検出結果に基づいて、前記可変コンデンサの容量を調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、前記送電用カップラと前記送電用カップラとの間の距離を検出する位置センサをさらに有し、前記位置センサで検出された距離に基づいて、前記可変コンデンサの容量を調整することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの他の態様は、送電用LC共振回路と受電用LC共振回路とが電界共鳴することによって、送電用カップラから受電用カップラにワイヤレスで電力伝送する電界共鳴型カップラであって、前記送電用LC共振回路と前記受電用LC共振回路とをそれぞれ収容するように構成された送電側および受電側シールドケースを備え、前記送電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を具備し、前記受電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第3電極及び第4電極、を具備し、前記第1および前記第2電極が前記第3電極および前記第4電極にそれぞれ対向配置されることで、前記送電用カップラから前記受電用カップラに電力が伝送され、前記第1電極と前記第3電極間の容量と、前記第2電極と前記第4電極間の容量とが異なることを特徴とする。
【0021】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る電界共鳴型カップラの回転ずれの調整方法は、前記電界共鳴型カップラは、前記送電用LC共振回路と前記受電用LC共振回路とをそれぞれ収容するように構成された送電側および受電側シールドケースを備え、 送電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を具備し、受電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第3電極及び第4電極、を具備し、前記第1および前記第2電極が前記第3電極および前記第4電極にそれぞれ対向配置され電界共鳴することで、送電用カップラから受電用カップラに電力が伝送される電界共鳴型カップラであり、前記第1電極と前記第3電極間距離、及び前記第2電極と前記第4電極間距離を検出する検出ステップ、並びに、前記ステップの検出結果に基づいて、前記第1電極と前記送電側シールドケース間の第1容量、及び前記第2電極と前記送電側シールドケース間の第2容量を変化させる調整ステップ、又は、前記第3電極と前記受電側シールドケース間の第3容量、及び前記第4電極と前記受電側シールドケース間の第4容量を変化させる調整ステップの少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る電界共鳴型カップラの回転ずれの調整方法の他の態様は、前記電界共鳴型カップラが、送電用LC共振回路と受電用LC共振回路とをそれぞれ収容するように構成された送電側および受電側シールドケースを備え、前記送電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第1電極及び第2電極を具備し、前記受電用LC共振回路は、所定の間隔を隔てて配置された第3電極及び第4電極、を具備し、前記第1および第2電極が前記第3電極および第4電極にそれぞれ対向配置され電界共鳴することで、送電用カップラから受電用カップラに電力が伝送される電界共鳴型カップラであり、前記送電用カップラに交流電力を伝送する給電ケーブルの外導体に流れる電流を検出する検出ステップ、並びに、前記電流の検出結果に基づいて、前記第1電極と前記送電側シールドケース間の第1容量、及び前記第2電極と前記送電側シールドケース間の第2容量を変化させる調整ステップ、又は、前記第3電極と前記受電側シールドケース間の第3容量、及び前記第4電極と前記受電側シールドケース間の第4容量を変化させる調整ステップの少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、送電用電極と受電用電極が非平行に対向配置された場合(回転ずれが生じた場合)に、コモンモード電流を抑制できる電界共鳴型カップラを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態における電界共鳴型カップラについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0026】
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電界共鳴型カップラの使用態様の一例を示す。本実施形態に係る電界共鳴型カップラ100は、例えば
図1に示すように、電気自動車等の車両20のワイヤレス電力伝送(給電)に用いられる。
図1(A)は、送電用カップラ110と受電用カップラ120が略平行(送電用電極と受電用電極が略平行)に対向配置され、電界共鳴型カップラ100に回転ずれが生じていない場合、(B)は送電用カップラ110と受電用カップラ120が略平行(送電用電極と受電用電極が略平行)が非平行に対向配置され、電界共鳴型カップラ100に回転ずれが生じている場合の図である。
【0027】
電界共鳴型カップラ100は、送電用(一次側)カップラ110と受電用(二次側)カップラ120とを有し、送電用カップラ110が第1給電ケーブル11で交流電源10に接続され、受電用カップラ120が第2給電ケーブル21で車両20の負荷(充電用電池等)23に接続されている。交流電源10と接続された送電用カップラ110に対して、車両20の後部に搭載された受電用カップラ120が所定の距離まで接近し、送電用カップラ110から受電用カップラ120に電力がワイヤレスで伝送されることによって、車両20に給電される。このワイヤレス電力伝送の詳細は後述する。
【0028】
給電時、受電用カップラ120と送電用カップラ110が略平行に対向するように、車両20が後方移動すること(
図1(A))が理想的であるが、状況によっては、受電用カップラ120と送電用カップラ110が非平行に対向してしまう場合(
図1(B))が考えられる。例えば、車両20の経路上に何らかの障害物があったり、送電用カップラ110を設置する壁面がそもそも傾いている場合などである。
【0029】
なお、受電用カップラ120は車両20の後部に限らず前方や底部に搭載されていてもよい。底部の場合には、送電用カップラ110は地面に設置されるのが通常であるが、その場合であっても、タイヤの空気圧の増減や地面に置かれた障害物等により、回転ずれが生じる恐れがある。
【0030】
図1(B)のように回転ずれが生じると、電力伝送自体は可能であるが、コモンモード電流と呼ばれる不要電流がより発生しやすくなってしまう。コモンモード電流は、電界共鳴型カップラ100を給電ケーブルに接続した際、給電ケーブルの外導体に流れる不要電流である。コモンモード電流は、不要放射波となって漏れ電界を生じ、他の電子機器の誤動作を誘発したり、人体にも悪影響を及ぼす恐れがある。
【0031】
この回転ずれに起因したコモンモード電流Icの発生メカニズムについて、
図2を参照して説明する。
図2は、電界共鳴型カップラ100の送電用カップラ110と受電用カップラ120の対向方向に沿った断面図であり、(A)は回転ずれが生じていない場合、(B)は回転ずれが生じている場合を示す。
【0032】
電界共鳴型カップラ100の送電用カップラ110は、2つの送電用電極(第1電極111と第2電極112)と2つの共振コイル(第1共振コイル113と第2共振コイル114)とを備える。送電用電極111、112は矩形状の平板電極であるが、これに限定されない。例えば、後述するように容量確保等の目的で2層以上の複数層から構成されていても良い。第1電極111の第2電極112に近接する側の長辺とこれに対向する第2電極112の長辺とを所定の間隔を設けて略平行に配置することで、第1電極111、第2電極112はキャパシタを形成している。第1共振コイル113、第2共振コイル114は、それぞれの一端が第1電極111、第2電極112の端部にそれぞれ接続されている。これらの二つの送電用電極111、112と2つの共振コイル113、114が共振回路(送電用LC共振回路)を形成している。送電用LC共振回路の共振周波数は、給電される交流電力の周波数と略一致するように設計されている。
【0033】
同様に受電用カップラ120も、2つの受電用電極121、122(第3電極と第4電極)と2つの共振コイル(第3共振コイルと第4共振コイル)123、124とを備える。受電用電極121、122は矩形状の平板電極であるが、これに限定されない。例えば、後述するように容量確保等の目的で2層以上の複数層から構成されていても良い。第3電極121と第4電極122の対向する2つの長辺を所定の間隔を設けて略平行に配置することで、第3電極121、第4電極122はキャパシタを形成している。そして、第3共振コイル123、第4共振コイル124のそれぞれの一端が第3電極121、第4電極122の端部にそれぞれ接続されて共振回路(受電用LC共振回路)を形成している。受電用LC共振回路の共振周波数は、受電する交流電力の周波数と略一致するように設計されている。すなわち、受電用LC共振回路の共振周波数は、上記した送電用LC共振回路の共振周波数と略一致する。
【0034】
電界共鳴型カップラ100は、送電用電極111、112と、受電用電極121、122とを対向配置することによって、送電用LC共振回路と受電用LC共振回路との間で電界共鳴させる。すなわち、送電用電極111と112、受電用電極121と122とをそれぞれ所定の間隔を設けて対向配置させ、送電用LC共振回路に所定周波数の交流電力を供給すると、送電用電極111、112と受電用電極121、122との間で電界共鳴が生じて、送電用カップラ110から受電用カップラ120に電力が供給される。
【0035】
また、送電用LC共振回路、受電用LC共振回路はそれぞれ、外部への不要放射波をシールドする効果のある送電(一次)側シールドケース115、受電(二次)側シールドケース125内に収納されている。これらのシールドケース115(125)は、一部が開放されており、この開放部に電極111(121)、112(122)が配置され、開放部を介して、送電用カップラ110の電極111(112)と、受電用カップラ120の電極121(122)が電界共鳴する。送電用カップラ110と受電用カップラ120は、開放部及び電極が対向するように所定の間隔をおいて配置される。
【0036】
第1、第2給電ケーブル11、21は、それぞれケーブル内部に電力伝送路となる平行2線が貫通しており、平行2線をそれぞれ囲うようにケーブル周縁に外導体を敷設している。本実施形態において、第1給電ケーブル11の外導体は送電側シールドケース115及び接地電位(GND)と導通している。
【0037】
このような構成において、平行2線を通じて送電用カップラ110の第1電極111、第2電極112に負、正の等量の電位(−1000V、+1000V)を印加した状態を考える。
図2(A)のように回転ずれが生じていない場合、負電位側(第1電極111と第3電極121間)と正電位側(第2電極112と第4電極122間)の電極間距離は略同一のため、負電位側のの電極間容量と、正電位側の電極間容量は略同一となる。このため、送電用カップラ110、受電用カップラ120の周りの電位分布は、図の点線で示すように負電位側と正電位側で対称となる。これにより、送電側シールドケース115への影響は双方で打ち消し合うため、送電側シールドケース115の電位は零電位となる。従って、送電側シールドケース115とGNDを接続する第1給電ケーブル11の外導体に、電流は流れない。
【0038】
一方、
図2(B)のように回転ずれが生じている場合、負電位側と正電位側の電極間距離は異なるため、負電位側の電極間容量と、正電位側の電極間容量は相違する。このため、送電用カップラ110、受電用カップラ120の周りの電位分布は、図の点線で示すように負電位側と正電位側で非対称となる。これにより、送電側シールドケース115への影響は双方でアンバランスな状況となって打ち消し合わなくなるため、送電側シールドケース115は、一定の値の電位をもつようになる。従って、送電側シールドケース115とGNDを接続する第1給電ケーブル11の外導体には、コモンモード電流Icが流れてしまう。なお、第2給電ケーブル21は、接続された負荷23が通常GND電位ではないため、コモンモード電流は流れない。
【0039】
すなわち、回転ずれが生じると、負電位側の電極間容量と、正電位側の電極間容量は相違が生じて、送電側シールドケース115の電位が零電位でなくなるため、送電側シールドケース115とGNDを接続する第1給電ケーブル11の外導体にコモンモード電流Icが流れてしまう。従って、コモンモード電流Icを抑制するには、送電側シールドケース115の電位を調整すれば良いと言える。
【0040】
また、例えば、回転ずれがない場合であっても、何らかの理由で負電位側の電極間容量と、正電位側の電極間容量に相違が生じたり、あらかじめこの相違が生じるように電界共鳴型カップラが製造された場合等にも、送電側シールドケース115の電位を調整すればコモンモード電流Icを抑制できる。
【0041】
次に、
図3〜4を用いて、本発明の一実施形態に係る電界共鳴型カップラ100について、送電用電極111、112と受電用電極121、122がそれぞれ補助電極を備えた実施例を説明する。
図3に示すように、電界共鳴型カップラ100の電極111、112、121、122は容量を確保するため、それぞれと導通する補助電極を備える。
なお、以降の説明(
図3以降の図を含む)においては、コモンモード電流Icを抑制する目的で電位分布を中心に説明するため、共振コイル113、114、123、124は簡略化のため省略する。
【0042】
送電用電極111(112)は、支柱111c(112c)を介して、補助電極111b(112b)と導通する。図示するように、受電用電極121、122も同様に、それぞれ補助電極121b、122bと導通する。
【0043】
図4は、
図3の電界共鳴型カップラ100の側面図であり、電界共鳴型カップラ100の電極、及びシールドケースを模式的に示した図である。
図4(A)は回転ずれが生じていない場合、(B)は回転ずれが生じている場合を示す。
図4(A)の場合、送電用カップラ110と受電用カップラ120は80mmの間隔をあけて略平行に対向しており、送電用電極111、121も、受電用電極121、122に対して略平行である。
図4(B)の場合、受電用カップラ120は、送電用カップラ110に対して回転角φだけ相対的に回転しており、受電用電極121、122も、送電用電極111、121に対して、それぞれ回転角φだけ相対的に回転している。
【0044】
ここで、回転角φは、各カップラからの距離が等しく(
図4では各カップラからの距離が40mm)、正電位側と負電位側の中央となる回転軸に対して定義される。回転角φが0°である場合は
図4(A)の回転ずれがない場合となり、0°でない場合は
図4(B)の回転ずれがある場合となる。
【0045】
図5は、このように定義された受電用カップラ120(受電用電極121、122)の回転角φに対して、送電(1次)側シールドケース115、及び受電(2次)側シールドケース125の電位変化を示すグラフ(電磁界シミュレーション結果)である。
なお、同シミュレーションにおける主要パラメーターは以下の通りである。
・送受電カップラ間距離 80mm
・第1電極111、第2電極112、第3電極121、第4電極122
形状:平板
電極間距離=15mm、長手方向の長さ=460mm、幅=222.5mm
補助電極:電極間距離=152mm、長手方向の長さ=460mm、幅154mm
補助電極との距離:63mm
・シールドケース115、125
外形寸法=480mm×480mm×80mm
・第1電極111に−1000V、第2電極112に+1000Vを印加
・共振コイル113、114、123、124
昇圧のみに寄与しているとして計算対象から除去
・第2給電ケーブル21
負荷23がGND電位でないためコモンモード電流は流れないと仮定
【0046】
図5のシミュレーション結果より、回転角φが正方向に大きくなり、負電位側の電極111、121間の結合が強まって、この電極間容量が大きくなると、送電側シールドケース115、及び受電側シールドケース125の電位は共に負電位に増大することが分かる。逆に、回転角φが負方向に大きくなり、正電位側の電極121、122間容量が大きくなると、送電側シールドケース115、及び受電側シールドケース125の電位は共に正電位に増大することが分かる。送電側シールドケース115の電位は、回転角φが±10°付近から急激に増大し、回転角φが+18°、−18°でそれぞれ−4V、+4V程度となる。
【0047】
同シミュレーションにおいては、
図3〜4に示したように受電用電極121、122は離間しているが、上記と同じシミュレーション条件で、近接するこれらの間を導体で接続してショートした場合にも、同様の傾向の結果が得られる(
図6)。送電側シールドケース115の電位は、回転角φが+18°、−18°でそれぞれ−6V、+6V程度である。
【0048】
図5及び
図6のいずれの場合においても、回転角φの絶対値が大きくなると、送電側シールドケース115の電位が零電位でなくなり、回転角の絶対値がある値以上に大きくなると、送電側シールドケース115の電位は急激に零電位から外れることが分かる。上記したように、送電側シールドケース115の電位が零電位でなくなると、コモンモード電流Icが流れるため、送電側シールドケース115の電位が大きいほど、コモンモード電流Icが大きくなる。
【0049】
次に、
図7を参照し、送電側シールドケース115の電位を零電位に調整する方法を説明する。
図7は、送電用電極111、112の補助電極111b、112b、及び、受電用電極121、電極122の補助電極121b、122bの位置を送電側シールドケース115に対してオフセットした場合を示す。
【0050】
まず、
図7のように、第1電極111の補助電極(第1補助電極)111bをOff-zだけ送電側シールドケース115から遠ざけ、逆に、第2電極112の補助電極(第2補助電極)112bをOff-zだけ送電側シールドケース115から近づける場合を考える。また、第3電極121の補助電極(第3補助電極)121bをOff-zだけ受電側シールドケース125から遠ざけ、逆に、第4電極122の補助電極(第4補助電極)122bをOff-zだけ受電側シールドケース125に近づける場合を考える。すなわち、負電位側の補助電極111b、121bと、正電位側の補助電極112b、122bを互い違いに送電側シールドケース115に対して電極間方向にオフセットする。
【0051】
ここで、オフセット量Off-zは、負電位側の電極がシールドケースから遠ざかり、正電位側の電極がシールドケースに近づくように互い違いにオフセットする時をプラス(+)、逆に負電位側の電極がシールドケースに近づき、正電位側の電極がシールドケースから遠ざかるように互い違いにオフセットする時をマイナス(−)と定義する。
図7の場合は(+)の場合を示している。電極の位置は、例えば、支柱111c、112c、121c、122cの長さを調整する手段を設けることにより実現できる。
【0052】
図8は、
図7のようにオフセット調整した場合の電極とシールドケース間の容量変化を示す図である。白抜き丸印は、第1電極111(負電位側電極)と送電側シールドケース115間の容量(第1容量)変化、及び、第3電極121(負電位側電極)と受電側シールドケース125間の容量(第3容量)変化を示す。一方、黒丸印は、第2電極112(正電位側電極)と送電側シールドケース115間の容量(第2容量)変化、及び、第4電極122(正電位側電極)と受電側シールドケース125間の容量(第4容量)変化を示す。
【0053】
図8において、オフセット量Off-zがプラス方向に増大すると、
図7に示すように負電位側の補助電極111bは送電側シールドケース115から遠ざかるため、第1容量は減少する。逆に正電位側の補助電極112bは、送電側シールドケース115に近づくため、第2容量は増大する。逆に、オフセット量Off-zがマイナス方向に増大すると、負電位側の補助電極111bは送電側シールドケース115に近づくため、第1容量は増大する。正電位側の補助電極112bは、送電側シールドケース115から遠ざかるため、第2容量は減少する。受電側についても、同様の容量変化が生じる。
【0054】
このようにオフセット調整により電極とシールドケース間の容量を変化することができるため、これによって電位分布を変化させ、送電側シールドケース115の電位を零電位にすることができる。
【0055】
図9は、
図4において回転角φ=−18°の場合に、オフセット調整により、送電側シールドケース115の電位を零電位に調整した結果(シミュレーション結果)を示す。オフセット調整なし(Off-z=0)の場合には、送電側シールドケース115の電位が+4Vであるのに対し、Off-z=−0.1mmの調整後には、同電圧が零電位になっていることがわかる。
【0056】
なお、
図7〜9においては、送電側と受電側の両方の補助電極(計4枚)の位置をオフセット調整する例を示したが、送電側、又は受電側の少なくとも一方の補助電極の位置をオフセット調整すれば、送電側シールドケース115を零電位にするように電位分布を変化させることができる。
【0057】
以上説明したように、送電用カップラ110に対し受電用カップラ120が相対回転し、送電側シールドケース115の電位が変化しても、電極とシールドケース間容量を変化させることで、送電側シールドケース115の電位を零電位に調整することができ、結果として送電側シールドケース115に接続された第1給電ケーブル11に流れるコモンモード電流Icを抑圧できる。
【0058】
このため、上記した電極のオフセット調整に限らず、電極とシールドケース間容量を変化させれば、送電側シールドケース115の電位を零電位とすることができると言える。例えば、
図7の電極オフセット調整では電極を上下方向に互い違いにオフセットしたが、電極を左右方向に互い違いに電極の面内方向にスライドしても、電極とシールドケースの側面との距離を変化させ、電極とシールドケース間の容量を変化させることができる。また、電極とシールドケース間に可変コンデンサを設けることによっても、電極とシールドケース間容量を変化させることができる。
また、電極とシールドケース間の容量を変化することができれば、必ずしも補助電極によって調整する場合に限られず、第1電極111、第2電極112、第3電極121、第4電極122そのものとシールドケース間容量を変化させても良い。
【0059】
次に、
図10〜13を参照し、電極とシールドケース間に可変コンデンサを設けた実施形態について説明する。可変コンデンサによる調整は、金属支柱や電極等の可動部を設ける必要がないため、自動化しやすい利点がある。
なお、以下においては、送電用カップラに可変コンデンサを設けた実施形態を説明するが、受電用カップラに同様の構成を設けても良い。送電側シールドケース115を零電位にするように電位分布を変化することができれば、送電側、又は受電側の少なくとも一方において、電極とシールドケース間に可変コンデンサを設ければよい。
【0060】
(第1実施形態)
図10に、本発明の第1実施形態に係る電界共鳴型カップラの送電用カップラ210を示す。送電用カップラ210は、補助電極111bとシールドケース115間、補助電極112bとシールドケース115間にそれぞれ可変コンデンサ30を備える。可変コンデンサ30は送電側シールドケース115の外部に設置されており、接続端子31は送電側シールドケース115と補助電極111b、112bをそれぞれ接続している。可変コンデンサ30は、嵌合部35を介してモーター40に接続されており、モーター40が回転すると、嵌合部35を介して可変コンデンサ30の回転量を規定するつまみが回転し、可変コンデンサ30の容量が変化する。
【0061】
モーター40は、モーター駆動用ケーブル45を介して制御部50と接続されており、制御部50は動作用電源55と接続されている。また、第1給電ケーブル11には、コモンモード電流Icを測定するための検出部60が接続されている。検出部60で測定したコモンモード電流Icの測定値は制御部50に入力され、その測定値によって制御部50はモーター40の回転量を制御し、上記したように可変コンデンサ30の容量を調整する。すなわち、本実施形態は、コモンモード電流Icの測定値によって、可変コンデンサ30の容量をフィードバック制御で調整する容量調整手段を有する。
【0062】
(第2実施形態)
図11に、本発明の第2実施形態に係る電界共鳴型カップラの送電用カップラ310を示す。送電用カップラ310は、第1実施形態と比較して、コモンモード電流Icを測定する検出部60を備えておらず、代わりに、受電側カップラ(受電用電極)の位置(回転ずれ)を測定する位置センサ70を備える。位置センサ70の種類は特に限定されず、例えば、レーザー光や超音波を用いたものなどを利用できる。
【0063】
位置センサ70の測定値は、位置センサ用ケーブル71を介してデータ処理部75に出力され、データ処理部75の出力値が制御部50に入力される。制御部50はデータ処理部75からの入力値によってモーター40の回転量を制御し、可変コンデンサ30の容量を調整する。すなわち、本実施形態においては、受電側カップラ(受電用電極)の位置(回転ずれ)の測定値によって、可変コンデンサ30の容量をフィードバック制御で調整する容量調整手段を有する。
【0064】
(第3実施形態)
図12に、本発明の第3実施形態に係る電界共鳴型カップラの送電用カップラ410を示す。送電用カップラ410は、第1実施形態と比較して、補助電極111b、112bと送電側シールドケース115との間ではなく、電極111、112と送電側シールドケース115間にそれぞれ可変コンデンサ30を備える点が異なる。可変コンデンサ30は送電側シールドケース115の外部に設置されており、接続端子33は送電側シールドケース115と電極111、112をそれぞれ接続している。
【0065】
第1実施形態と同様に、可変コンデンサ30は、嵌合部35を介してモーター40に接続されており、モーター40が回転すると、嵌合部を介して可変コンデンサ30の回転量を規定するつまみが回転し、可変コンデンサ30の容量が変化する。すなわち、本実施形態は、第1実施形態と同様に、コモンモード電流Icの測定値によって、可変コンデンサ30の容量をフィードバック制御する容量調整手段を有する。
【0066】
(第4実施形態)
図13に、本発明の第4実施形態に係る電界共鳴型カップラの送電用カップラ510を示す。送電用カップラ510は、第2実施形態と比較して、補助電極111b、112bと送電側シールドケース115との間ではなく、電極111、112と送電側シールドケース115間にそれぞれ可変コンデンサ30を備える点が異なる。可変コンデンサ30は送電側シールドケース115の外部に設置されており、接続端子33は送電側シールドケース115と電極111、112をそれぞれ接続している。
【0067】
また、本実施形態は、第2実施形態と同様に位置センサ70を備え、この測定値によって、可変コンデンサ30の容量をフィードバック制御する容量調整手段を有する。
【0068】
本発明に係る電界共鳴型カップラによれば、正電位側電極とシールドケース間容量、負電位側電極とシールドケース間容量を変化させ、送電側シールドケース115の電位を零電位に調整する調整手段を備えることによって、回転ずれによるコモンモード電流を抑制できる。この調整手段の実施形態として、例えば、上記した電極のオフセット調整、スライド調整、可変コンデンサの配設が挙げられる。
【0069】
このように正電位側電極とシールドケース間容量、負電位側電極とシールドケース間容量を変化させると、その変化量によって、電界共鳴に使用するLC(基本)共振周波数も若干変化する。このため、電界共鳴の基本周波数の微調整が必要な場合には、上記した本実施形態によって、コモンモード電流の抑制と基本共振周波数の微調整の双方を同時に実現することも可能である。その場合、電界共鳴型カップラは、共振周波数の検出手段をさらに有し、送電側カップラ、受電側カップラの両方に上記した調整手段を含むことが好ましい。
【0070】
なお、本実施の形態における電界共鳴型カップラの細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、送電用LC共振回路、受電用LC共振回路には、通常共振回路として使用される種々様々な回路を適用することができる。また例えば、第1、第3実施形態における動作用電源55は第1給電ケーブルに接続される交流電源10から流量しても良く、第2、第4実施形態におけるデータ処理部75と制御部50はIC等で一体的に設けられていても良い。
また、給電ケーブルについては平行2線ケーブルに限るものでは無く、同軸ケーブルを適用しても良い。例えば
図2(A)の給電ケーブル11、21を同軸ケーブルに変更しても良い。その場合、送電側、受電側それぞれ同軸ケーブル11、21の中心導体を正電位側電極に、外導体を振電位側電極に接続すれば、給電ケーブルを平行2線ケーブルとした場合と同様の結果を得ることができる。但し、同軸ケーブルは不平衡ケーブルであるため、同軸ケーブルを適用した場合はカップラ周りの電位分布が非対称となり易い。従って1次側シールドケースの基準電位を零電位に設定する場合、平行2線ケーブルを適用することが好ましい。