特許第6858178号(P6858178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858178
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】監視装置および監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210405BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/0134 312
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-509643(P2018-509643)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2017013515
(87)【国際公開番号】WO2017170979
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-72888(P2016-72888)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋輔
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118301(WO,A1)
【文献】 特開2010−208583(JP,A)
【文献】 特開2013−045142(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0271237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
B60R 21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の状況を監視する監視装置において、
電磁波を送信してターゲットからの反射波を受信する送受信部と、
前記送受信部によって受信された前記ターゲットからの前記反射波を参照し、前記車両の直後を含む後部領域に存在する前記ターゲットと、前記車両の後部左右側方に存在する前記ターゲットを検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記ターゲットと前記車両との接触または衝突の可能性の有無を判定する判定部と、を有し、
前記判定部は、前記車両の後部の左右端付近から前記車両の進行方向の後方に伸延する少なくとも2本の衝突判定線とともに、前記車両の後部の進行方向に直交する方向に伸延する前記衝突判定線を設定し、これら3本の前記衝突判定線と前記ターゲットとが交差するか否かを判定することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記判定部によって、前記ターゲットと前記車両が接触または衝突すると判定した場合には警告を発する警告部とを有することを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記車両の後部に位置し、前記車両の進行方向に直交する方向を長手方向とする矩形の検出領域と、前記矩形の前記検出領域の前記長手方向の辺の略半分の長さを半径とし、前記長手方向の辺の略中心を円心とする4つの扇形の前記検出領域内に存在する前記ターゲットを検出し、
前記判定部は、前記矩形の前記検出領域または前記4つの扇形の前記検出領域に存在する前記ターゲットが前記衝突判定線と交差するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記衝突判定線は、前記車両の速度に応じて伸縮することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の監視装置。
【請求項5】
車両の周辺の状況を監視する監視方法において、
電磁波を送信してターゲットからの反射波を受信する送受信ステップと、
前記送受信ステップにおいて受信された前記ターゲットからの前記反射波を参照し、前記車両の直後を含む後部領域に存在する前記ターゲットと、前記車両の後部左右側方に存在する前記ターゲットを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された前記ターゲットと前記車両との接触または衝突の可能性の有無を判定する判定ステップと、を有し、
前記判定ステップでは、前記車両の後部の左右端付近から前記車両の進行方向の後方に伸延する少なくとも2本の衝突判定線とともに、前記車両の後部の進行方向に直交する方向に伸延する前記衝突判定線を設定し、これら3本の前記衝突判定線と前記ターゲットとが交差するか否かを判定することを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置および監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された技術では、測距手段としてレーダを用いターゲットとの距離と方向を検出した後、座標変換を行い距離および方向を直行座標空間に写像することで座標値を算出し、あらかじめ定めた自車を中心とする警報領域内にターゲットが存在する場合は警報を発し運転手に注意を促すようにしている。
【0003】
また、特許文献2に開示された技術では、自車両の後側方の検知領域内の所定の領域に、対象物が進入したか否かを判定し、対象物が所定の領域に進入したと判定したときに報知を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−215241号公報
【特許文献2】WO2013/046246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す技術では、例えば、駐車場等において車両を後退させる場合、様々な方向から接近して自車両の後方を横切る他の車両や、自車両の後方に存在する障害物等を確実に検出できないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、車両を後退させる際に、自車両の真後ろに存在する静止した対象物や、真後ろから接近する移動する対象物を検出することができないという問題点がある。
【0007】
本発明は、車両を後退させる際に、自車両の周辺に存在するターゲットを確実に検出することが可能な監視装置および監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の周辺の状況を監視する監視装置において、電磁波を送信してターゲットからの反射波を受信する送受信部と、前記送受信部によって受信された前記ターゲットからの前記反射波を参照し、前記車両の直後を含む後部領域に存在する前記ターゲットと、前記車両の後部左右側方に存在する前記ターゲットを検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記ターゲットと前記車両との接触または衝突の可能性の有無を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、車両を後退させる際に、自車両の周辺に存在するターゲットを確実に検出することができる。
【0009】
また、本発明は、前記判定部によって、前記ターゲットと前記車両が接触または衝突すると判定した場合には警告を発する警告部とを有することを特徴とする。
このような構成によれば、ターゲットとの接触または衝突の可能性をユーザに確実に伝えることができる。
【0010】
また、本発明は、前記判定部は、前記車両の後部の左右端付近から前記車両の進行方向の後方に伸延する少なくとも2本の衝突判定線とともに、前記車両の後部の進行方向に直交する方向に伸延する前記衝突判定線を設定し、これら3本の前記衝突判定線と前記ターゲットとが交差するか否かを判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ターゲットと自車両の接触または衝突の可能性をさらに確実に判定することができる。
【0011】
また、本発明は、前記検出部は、前記車両の後部に位置し、前記車両の進行方向に直交する方向を長手方向とする矩形の検出領域と、前記矩形の前記検出領域の前記長手方向の辺の略半分の長さを半径とし、前記長手方向の辺の略中心を円心とする4つの扇形の前記検出領域内に存在する前記ターゲットを検出し、前記判定部は、前記矩形の前記検出領域または前記4つの扇形の前記検出領域に存在する前記ターゲットが前記衝突判定線と交差するか否かを判定する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、様々な方向から自車両に接近するターゲットを確実に検出することができる。
【0012】
また、本発明は、前記衝突判定線は、前記車両の速度に応じて伸縮することを特徴とする。
このような構成によれば、車両の速度に応じた適切な警告を行うことが可能になる。
【0013】
また、本発明は、車両の周辺の状況を監視する監視方法において、電磁波を送信してターゲットからの反射波を受信する送受信ステップと、前記送受信ステップにおいて受信された前記ターゲットからの前記反射波を参照し、前記車両の直後を含む後部領域に存在する前記ターゲットと、前記車両の後部左右側方に存在する前記ターゲットを検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された前記ターゲットと前記車両との接触または衝突の可能性の有無を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、車両を後退させる際に、自車両の周辺に存在するターゲットを確実に検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両を後退させる際に、自車両の周辺に存在するターゲットを確実に検出することが可能な監視装置および監視方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る監視装置の構成例を示す図である。
図2図1に示す実施形態の通常走行時の動作を説明するための図である。
図3図1に示す実施形態の後退時の動作を説明するための図である。
図4図1に示す実施形態の後退時の動作を説明するための他の図である。
図5図1に示す実施形態の斜めに後退する際の動作を説明するための図である。
図6図1に示す実施形態において実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
図7図1に示す実施形態の後退時の動作を説明するための他の図である。
図8】本発明の他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る監視装置の構成例を示す図である。この図に示すように、監視装置10は、他車両検出部11a,11b、自車両状態検出部12、演算処理部13、操舵検出部14、方向指示検出部15、および、警告部16を主要な構成要素としている。
【0018】
ここで、他車両検出部11a,11bは、例えば、他車両に対して電波を照射してその反射波から他車両の位置および速度等を検出するレーダ装置等によって構成される。他車両検出部11aは、例えば、車両の後部左側に配置され、他車両検出部11bは、例えば、車両の後部右側に配置される。また、これらの他車両検出部11aおよび他車両検出部11bのそれぞれの観測領域(ターゲットを観測可能な領域)は、自車両Cの後部側の端部が接触または重複するように設定されている。
【0019】
自車両状態検出部12は、例えば、車速センサ、ヨー軸センサ、および、トランスミッションの状態を検出するセンサ等によって構成され、自車両の走行状態を検出して演算処理部13に通知する。
【0020】
演算処理部13は、他車両検出部11a,11b、自車両状態検出部12、操舵検出部14、および、方向指示検出部15から供給される情報に基づいて、後方を走行する四輪車両または二輪車両を検出して接触または衝突の可能性があるか判定し、接触等する可能性があると判定した場合には警告部16を介して警告を発する。また、演算処理部13は、駐車場等において自車両を駐車する際に、自車両の後方に存在する障害物を検出し、当該障害物との接触等の可能性があるか否かを判定し、接触等する可能性があると判定した場合には警告部16を介して警告を発する。
【0021】
警告部16は、例えば、警告音を発するスピーカや点滅するLED(Light Emitting Diode)等によって構成され、演算処理部13が衝突または接触の可能性があると判定した場合には、警告音を発生して運転者に注意を喚起する。
【0022】
(B)本発明の実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作を説明する。本発明の実施形態では、自車両が前進時に後方に存在するターゲットを検出する前進時動作モードと、後退時に後方に存在するターゲットを検出する後退時動作モードの少なくとも2つの動作モードを有している。それぞれの動作モードでは、後方に存在する他車両等を検出するための検出領域をそれぞれ設定し、当該検出領域に存在する他車両等を検出し、検出した他車両が自車両に接触または衝突するか否かを判定し、接触等すると判定した場合には、警告部16によって警告を発し、運転者に注意を喚起する。
【0023】
図2は、前進時動作モードにおいて、自車両Cの後方に存在するターゲットを検出するための検出領域の一例を示す図である。この図2において、自車両Cは全幅がwであり、全長がhとされている。また、自車両Cの中心が直交座標系の原点(0,0)とされている。また、自車両Cの後方には、検出領域al,arが設定され、それぞれの領域の先頭部分には衝突判定線としてのTTC1,TTC2(Time to Collision)が設定されている。自車両Cが前進している場合には、演算処理部13は、図2に示すような矩形形状を有する検出領域al,arを車両後部に設定する。なお、図2に示す検出領域は、図1に示す2つの他車両検出部11a,11bがターゲットを観測する領域である観測領域に対して、演算処理部13が演算処理によって、設定するものである。
【0024】
なお、これらの検出領域al,arは、自車両Cが走行する車線に隣接する車線を走行する他車両を検出するための検出領域である。演算処理部13は、他車両検出部11a,11bによって検出された他車両が、検出領域al,ar内に存在する場合には、他車両の位置と速度を検出し、他車両がTTC1,TTC2と交差するか否かを判定する。そして、交差すると判定した場合に、当該他車両が走行している車線に対して移動しようと運転者がハンドルを操作したり、あるいは、方向指示器を操作したりした場合には、警告部16によって警告を発する。
【0025】
より詳細には、演算処理部13は、他車両が走行している車線に移動するハンドル操作を運転者が行ったことが操舵検出部14によって検出された場合、または、他車両が走行する車線に向けて方向指示器を操作したことが方向指示検出部15によって検出された場合には、警告部16より警告を発する。これにより、自車両Cが後続車に接触または衝突することを回避できる。
【0026】
つぎに、図3は、後退時動作モードにおいて、自車両Cの後方に存在するターゲットを検出するための検出領域の一例を示す図である。より詳細には、図3は、例えば、駐車場等において自車両Cが後退する場合における検出領域の一例を示す図である。演算処理部13が自車両状態検出部12の出力を参照し、自車両Cのトランスミッションが後退(バック)の状態に設定されたと判定した場合には、演算処理部13は、図2に示す検出領域から、図3に示す検出領域に設定を変更する。
【0027】
この図3の例では、検出領域としては、自車両Cの後方に位置し、X方向(自車両Cの進行方向に直交する方向)を長手方向とする矩形の検出領域a1(以下、単に「矩形検出領域a1」と称する)と、矩形検出領域a1の長手方向の辺の長さの略半分の長さを半径とし、中心が矩形検出領域a1の中点付近に位置する扇形の検出領域a2〜a5(以下、単に「扇形検出領域a2〜a5」と称する)を有している。より詳細には、扇形検出領域a2は、矩形検出領域a1の上側(図3の上側)の辺の略中点を中心とし、自車両Cから左側に離れるに従ってその幅が広くなる扇形の形状を有している。扇形検出領域a3は、矩形検出領域a1の上側の辺の中点を略中心とし、自車両Cから右側に離れるに従ってその幅が広くなる扇形の形状を有している。扇形検出領域a4は、矩形検出領域a1の下側(図3の下側)の辺の中点を略中心とし、自車両Cから左側に離れるに従ってその幅が広くなる扇形の形状を有している。扇形検出領域a5は、矩形検出領域a1の下側の辺の中点を略中心とし、自車両Cから右側に離れるに従ってその幅が広くなる扇形の形状を有している。
【0028】
矩形検出領域a1の左半分および扇形検出領域a2,a4は、図1に示す他車両検出部11aの観測領域内に設定され、矩形検出領域a1の右半分および扇形検出領域a3,a5は、図1に示す他車両検出部11bの観測領域内に設定される。また、図2に示す前進時動作モードでは、検出領域al,arはそれぞれが重複しない独立した領域とされているが、図3に示す後退時動作モードでは、矩形検出領域a1の左半分および扇形検出領域a2,a4と、矩形検出領域a1の右半分および扇形検出領域a3,a5とは、一部が接触または重複するように設定されている。前述したように、他車両検出部11aと他車両検出部11bの観測領域は、自車両Cの後方において端部が接触または重複するように設定されているので、図3に示すように、自車両Cの直後の領域も、検出領域a1の中央付近の領域によってカバーされている。なお、他車両検出部11aと他車両検出部11bの観測領域の端部が重複する場合には、これらの他車両検出部11aと他車両検出部11bの一方をマスタとし、他方をスレーブとし、重複する観測領域から得られる情報に優先順位を設けることで、重複した処理によって処理速度が低下したり、誤検出が発生したりすることを防止できる。
【0029】
扇形検出領域a2,a3の中心の座標はA(Xa,Xa)とされ、扇形検出領域a4,a5の中心の座標はB(Xb,Xb)とされている。また、扇形検出領域a2,a3の中心角はθ1とされ、扇形検出領域a4,a5の中心角はθ2とされている。なお、θ1,θ2は、例えば、30°に設定される。さらに、矩形検出領域a1の右端からTTCrまでの距離dおよび矩形検出領域a1の左端からTTClまでの距離dは、例えば、3mに設定される。
【0030】
車両Cの後部には、X方向に伸延し、自車両Cの全幅wと略同じ長さを有する衝突判定線としてのTTCb(Time to Collision)と、車両Cの後部の左右端からY方向の後方に向かって伸延する2本の衝突判定線としてのTTCl,TTCrを有している。なお、TTCl,TTCrの長さは、例えば、自車両Cの全幅wと略同じに設定される。もちろん、これ以外の長さに設定してもよい。
【0031】
図3に示すような検出領域および衝突判定線が設定された状態において、例えば、図4に示すように、自車両Cに対して、他車両C1が左側から接近したとする。このような場合、演算処理部13は、他車両検出部11a,11bの出力を参照し、他車両C1が検出領域(図4の例では矩形検出領域a1)内に存在していることを検出する。
【0032】
検出領域内に他車両C1が存在していることを検出すると、演算処理部13は、当該他車両C1の位置C(Xc,Yc)と相対速度V(Vx,Vy)を検出する。そして、演算処理部13は、検出した他車両C1の位置C(Xc,Yc)および相対速度V(Vx,Vy)を参照し、TTCb,TTCl,TTCrのいずれかと交差する可能性があるか否かを判定する。そして、交差する可能性がある場合には、演算処理部13は、警告部16を介して警告を発し、運転者に注意を喚起する。より詳細には、他車両C1の位置C(Xc,Yc)および相対速度V(Vx,Vy)から、他車両C1がTTCb,TTCl,TTCrと交差するまでの時間Tを求め、この時間Tが、TTC設定時間よりも小さい場合には、交差する可能性が高いと判定する。なお、TTC設定時間としては、例えば、2秒程度の時間とすることができる。演算処理部13は、T<TTC設定時間の場合には、警告部16を介して警告を発する。この結果、運転者は、他車両C1が接近していることを知ることができるので、例えば、アクセルペダルを戻したり、ブレーキペダルを操作したりすることで、他車両C1との接触または衝突を回避することができる。なお、警告の方法としては、例えば、サイドミラーやルームミラー等に配置されたLEDを点灯(または点滅)させたり、スピーカから警告音を発したりする方法がある。なお、警告を停止するタイミングとしては、例えば、車両が停車した場合や、対象物が検出領域から外れた場合とすることができる。
【0033】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、例えば、自車両Cが駐車場等において、後退しようとしている場合、または、後退している場合に、他車両C1が検出領域a1〜a5のいずれかに属していると判定されるとともに、TTCb,TTCl,TTCrのいずれかと交差すると判定された場合には、警告部16から警告が発せられるので、他車両C1と接触または衝突することを回避できる。特に、駐車場等において、自車両Cの左右に図示しない他車両が並列して停車している場合において後退するとき、左右に停車されている他車両によって、自車両Cに接近する他車両C1は死角となって視認できない場合があるが、そのような場合でも、他車両C1と接触または衝突することを回避できる。
【0034】
また、本実施形態では、図3に示すように、他車両検出部11a,11bは、それぞれの観測領域の車両後方の端部が接触または重複するように配置するようにしたので、自車両Cの直後の領域を検出領域とすることができる。これにより、自車両Cの直後に存在するターゲットを確実に検出することができる。
【0035】
また、本実施形態では、3つの衝突判定線であるTTCb,TTCl,TTCrを設定し、これらと他車両C1が交差するか否かを判定するようにしたので、前進時とは異なり、様々な方向から接近する他車両C1または停止している障害物を確実に検出することができる。また、本実施形態では、他車両の位置および速度から、他車両が衝突判定線と交差するか否かを判定し、交差する場合に警告を発するようにしたので、衝突する可能性が低い場合には警告を発しないことで、不要な警告を減らすことができる。例えば、特許文献2に開示される技術では、報知対象領域に対象物が存在する場合に警告を発するので、他車両が停車していて衝突する可能性が無い場合でも警告が発せられる。しかし、本実施形態では、停止している場合には衝突判定線と交差しない場合には警告が発せられないので、不要な警告を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、図4に示すように、車両の前方にもその一部が到達する扇形検出領域a2,a3を設けるようにしたので、例えば、図5に示すように、車両Cが斜めに後退する場合であっても、横方向から接近する他車両C1を確実に検出することができる。
【0037】
つぎに、図6を参照して、図1に示す実施形態において実行される処理の詳細について説明する。図6に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0038】
ステップS10では、演算処理部13は、自車両状態検出部12の出力を参照して、自車両Cの状態を取得する。例えば、演算処理部13は、自車両状態検出部12から出力される車速およびトランスミッションの状態等の情報を取得する。
【0039】
ステップS11では、演算処理部13は、自車両Cが後退する状態であるか否かを判定し、後退する状態である場合(ステップS11:Yes)にはステップS13に進み、それ以外の場合(ステップS11:No)にはステップS12に進む。例えば、トランスミッションが後退(バック)に設定されている場合にはYesと判定してステップS13に進む。あるいは、車両が停車している状態において、パーキングブレーキが解除され、車両が後退された場合にもYesと判定してステップS13に進む。
【0040】
ステップS12では、演算処理部13は、自車両Cが前進する際の動作を実行する。より詳細には、演算処理部13は、図2に示すような検出領域を設定し、自車両Cが走行する車線に隣接する車線を走行している他車両を検出し、他車両がTTC1,TTC2と交差する可能性がある場合に、当該他車両が走行する車線に車線変更しようとした場合には警告を発する動作を実行する(前進時動作モードを実行する)。
【0041】
ステップS13では、演算処理部13は、後退時の検出領域を設定する。より詳細には、図3に示すような検出領域a1〜a5を設定し、後退時動作モードに移行する。
【0042】
ステップS14では、演算処理部13は、他車両検出部11a,11bから供給される情報を参照し、ターゲットが検出領域内に存在するか否かを判定し、検出領域内に存在すると判定した場合(ステップS14:Yes)にはステップS15に進み、それ以外の場合にはステップS21に進む。例えば、図4に示すように、ターゲットである他車両C1が矩形検出領域a1に存在している場合にはYesと判定してステップS15に進む。
【0043】
ステップS15では、演算処理部13は、ステップS14で検出したターゲットの位置(X,Y)を算出する。より詳細には、演算処理部13は、図4に示す他車両C1の位置C(X,Y)を、例えば、自車両Cの中心を原点とする直交座標系上の座標点として算出する。
【0044】
ステップS16では、演算処理部13は、ステップS14で検出したターゲットの速度(Vx,Vy)を算出する。より詳細には、演算処理部13は、図4に示す他車両C1の速度(Vx,Vy)を算出する。
【0045】
ステップS17では、演算処理部13は、ターゲットがTTCbと交差するか否かを判定し、交差すると判定した場合(ステップS17:Yes)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS17:No)にはステップS18に進む。より詳細には、以上の処理によって求めたターゲットのX,Y,Vx,Vyを用いてTTCbと交差するか否かを判定する。
【0046】
ステップS18では、演算処理部13は、ターゲットがTTClと交差するか否かを判定し、交差すると判定した場合(ステップS18:Yes)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS18:No)にはステップS19に進む。より詳細には、以上の処理によって求めたターゲットのX,Y,Vx,Vyを用いてTTClと交差するか否かを判定する。
【0047】
ステップS19では、演算処理部13は、ターゲットがTTCrと交差するか否かを判定し、交差すると判定した場合(ステップS19:Yes)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS19:No)にはステップS21に進む。より詳細には、以上の処理によって求めたターゲットのX,Y,Vx,Vyを用いてTTCrと交差するか否かを判定する。
【0048】
ステップS20では、演算処理部13は、警告部16を介して警告を発し、運転者に対して注意を喚起する。
【0049】
ステップS21では、演算処理部13は、処理を繰り返すか否かを判定し、処理を繰り返すと判定した場合(ステップS21:Yes)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS21:No)には処理を終了する。
【0050】
以上のフローチャートによれば、図1を参照して前述した動作を実現することができる。
【0051】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、TTCb,TTCl,TTCrは、図3に示すように、車両Cの全幅および矩形検出領域a1の短手方向の幅に応じて設定するようにしたが、例えば、図7に示すように、例えば、自車両Cの速度等に応じて、矢印の方向に伸縮するようにしてもよい。より詳細には、図7の例では、TTCl,TTCrは、例えば、車速に応じて車両の前方方向に伸縮し、TTCbは、例えば、車速に応じて車両Cの幅方向に伸縮するように設定されている。このように、TTCb,TTCl,TTCrを伸縮するようにすることで、例えば、自車両Cが高速で後退している場合には、低速で後退している場合に比較してTTCb,TTCl,TTCrを長くすることで、他車両C1との接触の可能性をより確実に検出することができる。
【0052】
また、以上の実施形態では、TTCb,TTCl,TTCrの3つを有するようにしたが、例えば、TTCbだけ、または、TTClおよびTTCrだけを有する構成としてもよい。
【0053】
また、通常走行の場合の検出領域としては、図2を例に挙げて説明したが、これ以外の検出領域を有するようにしてもよい。
【0054】
また、以上の実施形態では、図3に示す角度θ1,θ2は約30°とし、距離dは3mとしたが、これ以外の角度または距離に設定するようにしてもよい。
【0055】
また、検出領域al〜a5のサイズは、固定としたが、例えば、自車両Cの走行速度等に応じて、検出領域al〜a5のサイズを変更するようにしてもよい。例えば、自車両Cの速度の増加に対応して検出領域のサイズを大きくするようにしたりしてもよい。
【0056】
また、以上の実施形態では、ターゲットである他車両C1が動いている場合を例に挙げて説明したが、ターゲットが停止している場合であっても本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【0057】
また、ターゲットの種類によって、警告を発生する条件を変更するようにしてもよい。例えば、ターゲットが車両である場合には、前述のように位置と速度を求め、衝突判定線であるTTCb,TTCl,TTCrと交差するか否かを判定するようにし、ターゲットが人である場合には、前述した衝突判定線であるTTCb,TTCl,TTCrと交差するか否かの判断だけでなく、例えば、矩形検出領域a1および扇形検出領域a2〜a5に存在するか否かを判定し、これらのいずれかの検出領域に存在する場合には警告を発するようにしてもよい。このような方法によれば、人と衝突したり、巻き込んだりしたりすることを確実に防止できる。
【0058】
また、図6に示すフローチャートでは、その時点における状態のみに基づいて判定するようにしたが、過去における情報の履歴を格納しておき、この履歴に基づいて判定するようにしてもよい。そのような方法によれば、駐車場等の状況が急に変化した場合であっても、誤判定の発生を防止できる。
【0059】
また、以上の実施形態では、ターゲットと接触または衝突の可能性があると判定された場合には、警告部16によって警告を発するようにしたが、例えば、自動ブレーキ等によって自車両Cを制動するようにしてもよい。
【0060】
また、以上の実施形態では、他車両検出部11a,11bが有する観測領域が、自車両Cの後部において端部が相互に接触または重複するようにし、重複する場合には、他車両検出部11a,11bが有する観測領域に優先順位を設けて、優先順位が高い方の観測領域によって観測された情報を優先するようにしたが、例えば、重複する観測領域については、重複しない観測領域とは異なる演算処理を実行し、それぞれの観測領域によって観測された情報を照合して、より確度が高い情報を生成するようにしてもよい。
【0061】
また、以上の実施形態では、衝突判定線としてのTTCl,TTCrは、車両の前後方向に対して平行するように設定したが、TTCl,TTCrが車両の前後方向に対して斜めになるように設定してもよい。例えば、図8に示すように、中央線21を有する道路20の路肩に対して、斜めに駐車線22が引かれている場合には、衝突判定線としてのTTCl,TTCrを図8に示すように道路20と直交する方向に設定するようにしてもよい。なお、このように斜めに設定する方法としては、例えば、道路20を走行している時に、道路20の方向を検出して記憶するか、駐車している車両を用いて推定しても良い。車両が駐車されるときに、この記憶もしくは推定した方向との角度差に基づいて、TTCl,TTCrの角度を調整することで実現できる。あるいは、中央線21に平行に走行する他の車両の走行方向と、自車との角度を検出し、他の車両と直交するようにTTCl,TTCrの角度を調整することでも実現できる。なお、複数台の走行車両や駐車車両から平均的な走行方向を求め、この平均的な走行方向と、TTCl,TTCrとが直交するように角度を調整することで、TTCl,TTCrをより最適な角度に設定することができる。また、自車両が後退する際には、舵角センサによって操舵角を検出し、検出された方向(後退方向)に基づいて、TTCl,TTCrの角度と長さを調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 監視装置
11a,11b 他車両検出部
12 自車両状態検出部
13 演算処理部
14 操舵検出部
15 方向指示検出部
16 警告部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8