(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整手段は、前記固定部材の外形に形成した傾斜面に対応する前記ハウジングの周方向位置に、半径方向に貫通するねじ穴とこのねじ穴にねじ止めされるクランプねじを備えることを特徴とする請求項2に記載の軸連結調整機構。
前記第1の軸は工作機械に用いるシャンクであり、前記第2の軸はこの工作機械に適合した加工工具または計測用プローブを取り付け可能な軸であることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の軸連結調整機構。
【背景技術】
【0002】
従来の、工作機械においては、主軸側に設けたコレットチャックの中心空間に、ドリルやエンドミル等の工具または測定用プローブからなるツールの一端側を軸方向に挿入している。もしくは、ドリルチャックのように回転軸側の中心空間にツールの一端側を軸方向に挿入したのち、外周部を形成するチャック部を引っ掛けスパナ等の工具を用いて周方向に締めているのが一般的である。
【0003】
加工機械に測定プローブを取り付けて加工状態を検査する検測工程では、スピンドルに対して芯出しがなされていた工具の代わりに、スピンドルに直接取り付けた場合には芯ずれが生じる恐れのあるプローブに取り換えるので、スピンドルとプローブ間の芯を調整する機構が必要となる。すなわち、検査精度の低下を防止するため、主軸と測定器軸の軸心を簡便な方法で、一致させる必要がある。
【0004】
工作機械に工具を取り付ける際の芯ずれを解消する方法の例が、特許文献1に記載されている。この公報では、ドリル等のツールをシャンクに取り付けるために、工具とシャンクのいずれか一方に、半径方向に他方に対して力を作用させる作用手段を、工具とシャンクの他方に、上記半径方向の力により作動し、工具とシャンクを相互に締め付ける軸に平行な締め付け力を発生する作動手段を設けている。さらに、軸を横断する方向に工具とシャンクを整列する調節手段を、工具とシャンクのいずれかに設けている。
【0005】
従来の加工機械に工具を取り付けるホルダーの他の例が、特許文献2に記載されている。この公報では、単純で、正確な芯合わせが可能な工具ホルダーを得るために、汎用のシャンクの他に、シャンクに対向配置される工具取付け用ホルダーを設け、シャンクと工具取付用ホルダーの対向面を軸に正確に垂直に加工するとともに、シャンクと工具取付け用ホルダーの外周面に遊嵌する取り付けリングを設け、取り付けリングの外周側に設けたねじ穴から先端が尖ったねじをねじ止めして、シャンクと工具取付け用ホルダーの軸に直角な2方向の相対位置を調整している。その際調整後の位置をしっかりと保持するために、シャンクの外周部にはV溝を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のツールとシャンクとを相互に締め付けるための連結装置では、工作機械側の主軸にテーパ嵌合するシャンクと、シャンクに取り付けたツールとの芯ずれを修正するために、シャンクを追加工している。具体的には、このツールまたは測定具の製作者側で、シャンク側にクランプエレメント保持用の構造を、使用するツールに応じて追加工している。一般的にシャンクは汎用品であり、多くの工作機械で共用できるが、この特許文献1によれば追加工を施す必要があるので、特定の機械の特定の工具または測定具専用となり、加工内容に応じてまたは測定内容に応じてシャンクを揃える必要が生じ、加工・測定現場での管理・手配の複雑さとシャンクのコスト増を招く恐れがある。
【0008】
特許文献2では、上述したように、工具専用のホルダーをシャンクとは別に設け、この工具ホルダーとシャンクとを軸方向に端面で対向させ、それらの対向部の外周側に遊嵌する取り付けリングを用いて芯合わせをしている。しかしながらこの芯合わせでは、工具ホルダーとシャンクとを軸方向に互いにゆるく配置して芯合わせの移動隙間を確保し、さらに取り付けリングを周方向に回動させながらシャンク溝に先端が尖ったねじを当接させ、最大変位位置で係止させるようにしている。そのため、シャンクに対する工具ホルダーの倒れをも考慮して軸の芯出し調整が必要であり、またトライ・アンド・エラーで最大変位位置を求めているので、芯出し調整に熟練を要するとともに、芯出し調整に時間がかかる恐れがある。なお、特許文献3には、テーパ部を用いて工具を確実に保持することが開示されているが、2軸の連結と連結した軸間の芯出し調整については考慮されていない。
【0009】
本発明は上記従来の技術の不具合に鑑み成されたものであり、その目的は工具やプローブからなるツールのツール軸とシャンクの軸心間に潜在的に存在する芯ずれを容易に調整できるようにすることにある。そしてその際、汎用のシャンクに特別な加工をせずに、簡単な調整装置を付加するだけで安価に構成できるようにすることにある。本発明の他の目的は、工具やプローブからなるツールのツール軸と工作機械の主軸に係合するシャンク軸との間の芯出しを短時間で容易に実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、回転可能な第1の軸と、この第1の軸の先端部を嵌め合い保持する、作業具が取り付けられる第2の軸を備える軸連結調整機構において、前記第1の軸が前記第2の軸に接続する側の軸端部にボルトにより取り付けられた固定部材を有し、この固定部材に当接し、固定部材の前記第2の軸に対する軸方向位置及び軸方向に直交する方向の位置を調整可能にする調整手段を前記第2の軸に設けることにある。
【0011】
そしてこの特徴において、前記第1の軸は駆動機に取り付けられる被取付け軸であり、前記第2の軸は加工工具と計測用プローブの少なくともいずれかを取り付け可能なハウジングであり、前記固定部材の外形は、円筒面を実質的に周方向4等分位置または8等分位置で平面または曲面で切り落とした傾斜面を備えることが望ましく、前記調整手段は、前記固定部材の外形に形成した傾斜面に対応する前記ハウジングの周方向位置に、半径方向に貫通するねじ穴とこのねじ穴にねじ止めされるクランプねじを備えるのがよい。
【0012】
また上記特徴において、前記ハウジングは前記被取付け軸に連結する側に凹部を有し、前記被取付け軸の先端部に取り付けた前記固定部材を前記ハウジングの凹部に隙間を持って嵌合し、前記クランプねじを前記傾斜面に当接させることにより、前記固定部材の底面と前記凹部の底面を当接させて芯合わせ可能にしてもよく、前記ハウジングは前記被取付け軸に連結する側に凹部を有し、前記被取付け軸の先端部に突起部を有し、前記被取付け軸の先端部に取り付けた前記固定部材を前記ハウジングの凹部に隙間を持って嵌合し、前記クランプねじを前記傾斜面に当接させることにより、前記固定部材の突起根本部平面と前記ハウジングの端面を軸方向に当接させて芯合わせ可能にしてもよい。
【0013】
さらに、前記第1の軸は工作機械に用いるシャンクであり、前記第2の軸はこの工作機械に適合した加工工具または計測用プローブを取り付け可能な軸であってもよく、前記工作機械はマシニングセンタであり、前記軸連結調整機構は無線ボアゲージであってもよい。
さらに、前記第1の軸は工作機械に用いるシャンクであり、前記第2の軸はこの工作機械に適合した加工工具または計測用プローブを取り付け可能な軸であってもよく、前記工作機械はマシニングセンタであり、前記軸連結調整機構は無線タッチプローブであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャンクを含む第1の軸とハウジングを含む第2の軸の軸心合わせが可能な軸連結調整機構が、第2の軸にこの第2の軸の半径方向外方から第1、第2の軸の相対位置を調整可能な調整手段を、第1の軸の先端に前記調整手段が当接する傾斜面を有する固定部材をそれぞれ設けたので、工具やプローブからなるツールを含む第2の軸と第1の軸心間に潜在的に存在する芯ずれを容易に調整できる。また、汎用のシャンクを特別な加工をしないで第1の軸とし、簡単な調整装置を付加するだけなので、安価に構成できる。さらに、工具やプローブからなるツールのツール軸(第2の軸)と工作機械の駆動源に係合するシャンク軸(第1の軸)との間の芯出しを短時間で容易に実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る軸連結調整機構の実施例及び変形例を、図面を用いて説明する。以下の説明では、マシニングセンタやターニングマシン等の工作機械に用いられるツールホルダに関連して説明するが、本発明はこれに限らず、2つの軸の同心を調整する必要があるものに広く適用できる。
【0017】
初めに
図7を参照する。
図7は、マシニングセンタで使用する無線ボアゲージ(測定ヘッド)65を含む軸連結調整機構102の一実施例を、一部断面正面図で示す。軸連結調整機構102は図示しないマシニングセンタの主軸に取り付けるツールホルダであるシャンク15と、このシャンク15に連結するハウジング24を備える。シャンク15の一部とハウジング24の一部は、連結部55を構成する。
【0018】
シャンク15は工作機械で使用される汎用シャンクであり、上半部は、工作機械で通常使用されるテーパ形状となっている。ハウジング24は、ボアゲージを収容している。ハウジング24の上部には、本発明の特徴的構成である、詳細を後述する固定具(固定部材とも称する)50が収容されている。なお無線ボアゲージの一部をハウジングに収容する代わりに、ハウジング24を無線ボアゲージの筐体としてもよい。
【0019】
無線ボアゲージは、内径測定時にこのボアゲージを被測定物の内部に挿入するためのガイド部62を有し、ガイド部62と連結部55間に配置されたリリービング部またはフローティング部61のいずれかまたは両方を有してもよい。ガイド部62の先端部近傍には、周方向に間隔を置いて複数個(図では対称位置に2個)のコンタクト63が配置されている。コンタクト63は被測定物の内径加工位置に接触させてまたは非接触で内径を測定するのに用いる。
【0020】
次に、上記連結部55の詳細を、
図1ないし
図6により説明する。
図1は、本発明に係る軸連結調整機構の主要部(連結部55)の縦断面図である。この実施例では、工作機械や検査機械等の駆動機に取り付けられる被取付け軸(第1の軸とも称す)10は、円柱状の上部取り付け部111の下方に、末広がり部を経て軸長が短い円柱状の大径部115が設けられている。大径部115の下面の中央部に、下方に延びる突起部113が形成されている。突起部113の中央部には、固定具50を取り付けるためのねじ穴部112が形成されている。突起部113に形成したねじ穴部112には、薄い頭部を有するボルト40がネジ締結されている。ボルト40は、固定具50を突起部113の外周部に固定して取り付ける。
【0021】
ボルト40で突起部113に固定される固定具50の詳細を
図3に示す。
図3(a)は、固定具50の上面斜視図であり、
図3(b)は固定具50の正面図である。固定具50はSK材等の硬度が高い材料製である。固定具50は、中実の上面512、底面513、周囲面(側面)511を有する円柱素材から形成され、ボルトを貫挿するボルト貫通穴525と被取付け軸10の突起部113の外周部に嵌合する位置決め穴521が内部に形成されるとともに、外周部に周方向等角度位置に上面512から周囲面511へ斜めに切り落とした形状の面501〜504が形成されている。この
図3の例では、斜めに切り落とした形状の面501〜504は、平面で切断されており、面形状は惰円の一部となる。なお切り落としの角度は水平面からの角度で、好ましくは30°〜60°である。また、切り落としの個数は、後述するように被取付け軸10の軸に直交する2方向を調整できるように、対称位置を含む90度ピッチすなわち等間隔に4個が最も好ましく、8個でもよい。対称位置を含む6個や10個も可能であるが、4個や8個の場合に比べて調整に時間を要すると思われる。
【0022】
図1に戻って、ハウジング部(第2の軸とも称す)20には、計測用プローブ等のツール(図示せず)を保持する保持部221が下部に設けられており、その上部には大径部225がある。大径部225の中央部分には、円柱状の凹部形状の固定具収容部222が形成されている。固定具収容部222の深さは、被取付け軸10の突起部113の軸方向長さより長い。
【0023】
保持部221に対応する位置であって大径部225の外周面229には(言い換えると、固定具50の傾斜面に対応するハウジング20の周方向位置には)、周方向等間隔位置に、複数の(本実施例では90度ピッチで4個の)半径方向に向いた貫通ねじ穴211〜214が形成されている。このねじ穴211〜214には、クランプねじ201〜204がねじ止め可能である。クランプねじ201〜204は、ねじが切られたねじ部241〜244の先端部に、球が埋め込まれた形の当接部251〜254を有する。当接部251〜254は、固定具50の傾斜面501〜504に当接するので、固定具50よりは硬度の低い材料で製作される。
【0024】
以上のように構成した本実施例の軸連結調整機構100による、第1の軸(被取付け軸)10と第2の軸(ハウジング)20の芯合わせについて説明する。初めに第1の軸10の突起部113に固定具50を取り付ける。その際、突起部113の外径と固定具50の位置決め穴521(
図3)を嵌合させる。これらは僅かな取付け隙間を有する隙間嵌めになっている。次に、ボルト40を固定具50のボルト貫通穴525(
図3)を通って突起部113に形成したねじ穴部112にねじ止めする。これにより第1の軸10と固定具50は、相対位置を変化させることなく固定される(第1のステップ)。なお、固定具50の傾斜面501〜504の周方向位置が明確になるようなマークを、取付け部111または大径部115の対応する位置に設けることが好ましい。このマークは、突起部根本面121に形成した径方向に延びる突起等でもよい。
【0025】
一方、第2の軸(ハウジング)20の大径部225の外周面229に形成したねじ穴211〜214に、クランプねじ201〜204をねじ込む。その際クランプねじ201〜204の当接部251〜254が固定具収容部222の内周面230から内側に出ていないよう、ねじ穴211〜214内に収めておく。次に、この第2の軸20を第1の軸10の下方から上昇させて接近させ、または第1の軸10を第2の軸20の上方から下して接近させ、固定具50が取り付けられた第1の軸10の突起部113を第2の軸20の固定具収容部222内に嵌合する。その際、クランプねじ穴211〜214が固定具50の傾斜面501〜504(
図3)に対応する位置にあるよう、2つの軸10、20の相対周方向位置を合わせる(第2のステップ)。ここで、固定具の周囲面511(
図3)と第2の軸の固定具収容部の内周面230の間には、第1の軸10と第2の軸20の取り付け誤差を修正できるだけの隙間がある。言い換えれば、周囲面511と内周面230の間には相当の誤差があるので、単に第1の軸10を第2の軸20に組み合わせただけでは2本の軸10、20間には芯ずれが生じているのが一般的である。
【0026】
また、固定具の傾斜面501〜504(
図3)は、平面で切り落とした形状であるので、第1の軸10を周方向に回転させると、半径方向長さが変化する。したがって、クランプねじ201〜204を傾斜面501〜504(
図3)に当接させる場合、最もねじ込み量が大きくなる位置が理論的に傾斜面501〜504に正対する周方向位置となる。さらに一旦クランプねじ201〜204が傾斜面501〜504に当接すると、最もねじ込み量が多い位置で傾斜面501〜504(
図3)に当接しているのであれば、第1の軸10はクランプねじ201〜204に対して周方向に相対位置を変化させることが不可能である。したがって、確実に第1の軸10と第2の軸20を連結できる。これに対して、傾斜面501〜504が円錐面等であれば、正対位置から離れるにつれて押し込み量が増していき、クランプねじ201〜204を第1の軸10に対して周方向に位置決めできない。
【0027】
芯調整の詳細を、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5(a)は連結部55を構成する第1の軸10の突起部根本面121で切断した連結部55の上面斜視図である。
図5(b)は、調整方向P−O−P線上にある2個のクランプねじ201、203を用いてP−O−P方向の芯ずれ量を調整することを示す縦断面図であり、
図5(c)はP−O−P線に直交する線Q−O−Q線上にある2個のクランプねじ202、204を傾斜面502、504に係止させない状態を示す縦断面図である。
【0028】
初めに第2の軸20と第1の軸10の連結が解けて互いに脱落するのを防止するため、各クランプねじ201〜204を固定具50の対応する傾斜面501〜504に当接部251〜254で仮止め程度の力で当接させる。その際、当接部251〜254の硬度が固定具50の硬度よりも低いので、この当接により固定具50が損傷することはない。この状態で、第2の軸20の先端部近傍(
図7の例ではコンタクト近傍)にダイヤルゲージ等の振れ測定器を取り付ける。
【0029】
次に調整する側のクランプねじ、すなわちP−O−P線上に位置し、周方向に180°対称位置にある2個のクランプねじ201、203により、P−O−P線方向の芯出しをする。第1の軸10側を回動させ、第2の軸20の振れを観察する。振れが最小になるよう2個のクランプねじ201、203のねじ込み量を調整する。P−O−P線上の振れ調整量が定まったら、同様の手順でP−O−P線に直交するQ−O−Q線方向の調整をする(第3のステップ)。P−O−P線の方向の位置は定まっているので、クランプねじ201、203は傾斜面501、503に当接させたまま実行可能である。最後に振れを確認しながら増し締めする。いずれにしても調整時間を少なくできる方法を用いる。
【0030】
位置調整中の、各クランプねじ201〜204により2本の軸10、20に発生する締結力を、
図6を用いて説明する。
図6は、
図5(b)の状態における力の発生状態を、模式的に示す図である。クランプねじ201、203をねじ込むと固定具50の傾斜面501、503にそれぞれ当接する。その際ねじ込によりクランプねじ201、203の当接部251、253には各クランプねじ201、203の軸方向に力fが発生する。今単純化するため、左右のクランプねじ201、203が発生する力は同じとしている。
【0031】
当接部251、253から傾斜面501、503に力が加わるが、傾斜面501、503は登坂面になっているので、クランプねじ201、203から加えられた力は固定具50を下方へ押しやるように作用する。したがって、傾斜面501、503には垂直方向分力f
N、接線方向分力f
Tが働き、結果として軸方向分力faが作用する。すべてのクランプねじ201〜204による垂直方向分力の和Fが、固定具50を含む第1の軸10に下向きに加わる。この力Fは、第1の軸10の突起部113回りの部分、すなわち突起部根本面121で下向きの分布荷重qとして作用する。一方第2の軸20にはこの分布荷重qの反作用として上向きの分布荷重qが発生する。したがって、2本の軸10、20は、クランプねじ201〜204を固定具の対応する傾斜面501〜504に当接させることにより、芯合わせをしながら、そのねじ込み力で突起部根本面121と第2の軸20の上面223をそれぞれ基準面として連結し合う。
【0032】
この連結を達成するため、ボルト40と固定具50を含む突起部113の軸長を、第2の軸20の固定具収容部222の深さより短くしている。これにより、突起部根本面121と第2の軸20の上面223が当接する前に、固定具50の底面513(
図3)またはボルト40(
図1)の頭部が、固定具収容部の底面227(
図1)に当接するのを回避している。
【0033】
次に
図1の連結部の変形例を
図2に示す。本連結部56が上記連結部と異なるのは、第1の軸10が、第2の軸20の上面に当接する突起部根本面121を有していないことにある。つまり、第1の軸10は取付け部111の外径がそのまま軸端まで及んでおり、その軸端部には固定具50を取り付けるためのねじ穴部112が形成されている。固定具50の位置決め穴521(
図3)に第1の軸10の軸端部が当接している。第2の軸20は、上記実施例と同じである。第1、第2の軸10、20の芯合わせは、
図1に示した実施例と同様に、上記第1のステップから第3のステップを実行することで達成される。
【0034】
ただしこの変形例では突起部根本面がないため、クランプねじ201〜204をねじ込んでも第2の軸20の上面228に作用する力は発生しない。
図6を参照すると、クランプねじ201〜204をねじ込むことにより固定具50の傾斜面501〜504で当接力fが発生し、この力の軸方向分力faが集まって、全体としてボルト40、固定具50を含む第1の軸10にFとして下向きに作用し、主として固定具50の底面513(
図3)に分布荷重q
1が発生する。一方第2の軸20は、クランプねじ201〜204を介して第1の軸10に固定した固定具50に当接しているから、クランプねじ201〜204が締め込まれると固定具50の傾斜面501〜504に沿って上方に動くように動作する。その結果として固定具収容部222の底面224には、上向きの反力q
1が発生し、第1、第2の軸10、20は、芯調整されながら、固定具50の底面513と固定具収容部の底面224をそれぞれ基準面として連結し合う。
【0035】
次に
図4に、
図7に示した軸連結調整機構102の連結部55の詳細を、断面図で示す。汎用の工作機械取付け用シャンク15には、中央部に貫通穴116が形成されており、その下端部にはねじ穴部112が形成されている。この汎用のシャンク15をそのまま使用するようにして、シャンク15に合わせて固定具50及びハウジング25を作製する。ハウジング25は
図1に示したものと同一の連結部構造を有している。したがって、ハウジング25の外周面229に形成したねじ穴211〜214にクランプねじ201〜204をねじ込むことにより、固定具50の傾斜面501〜504にクランプねじ201〜204が当接し、シャンク15に下向きの力を加える。これによりシャンク15の基準面121とハウジング25の基準面223が当接し、互いに連結し合う。
【0036】
本発明の連結部55の他の実施例を、
図8に示す。
図8が上記実施例と異なるのは、固定具51の切り落とし面を平面ではなく、曲面としたことにある。なお、この
図8に示した連結部55は、
図4に示した軸連結調整機構102の連結部である。
図8(a)は、連結部55の縦断面図であり、
図8(b)はそれに用いる固定具51の斜視図、
図8(c)は固定具51の正面図である。
【0037】
図8(c)で最もよく分かるように、固定具51の上面512から周囲面511にかけて斜めに形成した切り落とし面である傾斜面531〜534は、もはや平面ではなく下に凸の曲面となっている。この傾斜面531〜534は、固定具51の軸線を含む垂直面に対して対称形となっているので、その面を含む周方向位置でクランプねじ201〜204との当接距離(固定具51の中心線からクランプねじ201〜204の当接部251〜254までの距離)が最小となる。したがってクランプねじに対して一番凹んだ位置で固定具51がクランプねじでハウジング25に係止するので、加工や計測中にシャンク15とハウジング25の周方向が相対変位するのを防止できる。
【0038】
なお、平面で切り落とした
図1に示す実施例の固定具50に比べ、本変形例の固定具51は
図8(c)の正面図における、左右端部形状から明らかなようにその線長、換言すればクランプねじ201〜204との接触可能範囲が長いので、シャンク15とハウジング25の芯合わせ範囲を増大できる。またクランプねじ201〜204の当接部251〜254は球形の一部または半球形であるので、平面の傾斜面501〜504では理論的には点接触で接触面積が小さく、局所応力が増大する。しかし本変形例の場合には、理論的に点接触ではない接触形状となる曲面を選定することができ、当接部251〜254の弾性変形等を考慮した実際の局所応力を大幅に低減できる。さらに、クランプねじ201〜204の当接部251〜254を、傾斜面501〜504の2方向に曲率を持つボウル状面で当接させるので、クランプねじ201〜204のねじ込み量の変化により傾斜面501〜504への接触角が変化し、より軟らかい材料の当接部251〜254の偏摩耗を低減できる。さらにまた、クランプねじ201〜204のねじ込み量と傾斜面の当接部の半径方向位置が直線的に変化せず、初めのねじ込み時には傾斜面の半径方向位置が大きく変化し、徐々に傾斜面の半径方向位置が減少するので、粗調整と微調整を使い分けることができ、芯合わせ時間を短縮できる。あるいは、芯合わせ時に仮止め状態から仕上げ締めに移る際の軸心の変位量を微小量にすることができ、精度の良い芯合わせを実現できる。
【0039】
以上述べたように本発明の実施例及び変形例によれば、第1の軸に種方向複数個所に傾斜面を持つ固定具を取り付け、第2の軸にこの固定具を収容する収容部を設け、第2の軸のクランプねじを傾斜部に当接させたので、ねじ締め付け力が傾斜面を通して第1の軸に第2の軸の向きの力を発生する。これにより第1の軸と第2の軸が相対的に静止状態で連結し合う。または傾斜面を通して固定具を第2の軸に押し付ける力が発生し、第1、第2の軸が連結し合う。
【0040】
また、上記実施例及び変形例によれば、軸に直交する2方向の調整において、調整側のクランプねじを押し込む際に、調整しない側のクランプねじをわずかに緩める。その際、調整しない側の固定具の傾斜面が平面または周方向に凹んだ曲面となっているので、第1、第2の軸間に調整軸方向の相対変位があっても、調整しない側のクランプねじと傾斜面が必ず当接するので、第1の軸と第2の軸の連結が解除されるのを防止できる。したがって調整中に、調整する側のクランプねじが傾斜面から外れても、第2の軸または第1の軸の落下を防止できる。
【0041】
上記実施例及び変形例では、無線ボアゲージを使用する場合を例に取り説明したが、本発明は上記の構成を備えるあらゆる軸連結調整機構に適用できるものであり、例えばタッチプローブや他の測定器をマシニングセンタに取り付ける場合にも適用できる。また、上記実施例及び変形例では、固定具に形成する傾斜面を上面から周囲面へ切り落とした形状としているが、底面から周囲面に切り落とした形状としてもよいことは言うまでもない。