特許第6858539号(P6858539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858539
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/00 20060101AFI20210405BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20210405BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B24B7/00 A
   B24B7/04 A
   H01L21/304 631
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-238428(P2016-238428)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-94636(P2018-94636A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 賢哉
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−277915(JP,A)
【文献】 特開昭61−168462(JP,A)
【文献】 特開平06−143112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/00 − 7/30
B24B 41/00 − 41/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する複数のチャックテーブルと、該チャックテーブルを回動可能に支持しかつ回転可能なターンテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物の被研削面に対して第1の研削を施す第1研削手段と、該チャックテーブルに保持され該第1の研削が施された該被加工物の被研削面に対して第2の研削を施す第2研削手段とから少なくとも構成される研削装置であって、
該第1研削手段は、研削面を有する研削砥石が配設された第1研削ホイールと、該第1研削ホイールを支持して回転可能なスピンドルを有するスピンドルユニットとから少なくとも構成され、
該第2研削手段は、研削面を有する研削砥石が配設された第2研削ホイールと、該第2研削ホイールを支持して回転可能なスピンドルを有するスピンドルユニットとから少なくとも構成され、
該チャックテーブルは、該第1研削手段及び該第2研削手段に対応してそれぞれ2個ずつ配設され、それぞれの該チャックテーブルは円錐形状の吸着面を有し、
該第1研削ホイールに配設された該研削砥石の研削面に対して2個の該チャックテーブルの2個の吸着面が平行となる各チャックテーブルの半径領域において研削が施され、該半径領域において被加工物に対して該研削砥石が研削する方向が同一になるように2個の該チャックテーブルの回転方向と該吸着面の傾きが揃えられ、
該第2研削ホイールに配設された該研削砥石の研削面に対して2個の該チャックテーブルの2個の吸着面が平行となる各チャックテーブルの半径領域において研削が施され、該半径領域において被加工物に対して該研削砥石が研削する方向が同一になるように2個の該チャックテーブルの回転方向と該吸着面の傾きが揃えられることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
全ての該チャックテーブルは、回転軸を中心とする回転方向で等間隔に位置する3箇所の支持部によって傾き調整可能に支持され、
該回転軸に沿って見たときに、3箇所の該支持部で囲まれる三角形状の領域内に該半径領域の全体が位置することを特徴とする請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
全ての該チャックテーブルは、回転軸を中心とする回転方向で等間隔に位置する3箇所の支持部によって傾き調整可能に支持され、
3箇所の該支持部のうち1箇所が、該半径領域の端部に隣接して位置する固定の支持部であり、
3箇所の該支持部のうち他の2箇所が、該チャックテーブルの支持位置を上下方向に調整可能な微調整手段を備える支持部であることを特徴とする請求項1に記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンテーブルに配設されたチャックテーブル上に保持された被加工物を、研削域に配設された研削手段によって研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、IC、LSI等のデバイスが複数個形成された被加工物である半導体ウェーハは、個々のデバイスに分割される前にその裏面を研削装置によって研削して所定の厚さに形成される。このようなウェーハの裏面を研削する研削装置は、被加工物着脱域と研削域に沿って回転可能なターンテーブルと、ターンテーブルに配設されて順次研削域に移動される複数個のチャックテーブルと、研削域に配設されて研削域に位置付けられたチャックテーブル上に保持されたウェーハを研削する研削手段とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−200545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、上述のような研削装置は、研削手段として、粗研削手段と仕上げ研削手段を備えており、粗研削手段と仕上げ研削手段によってそれぞれ1枚ずつのウェーハを同時に研削する。しかし、生産効率を向上させるべく、単位時間あたりに研削可能なウェーハの枚数を増やしたいという要求が生じており、既存の研削装置ではこの要求に応えることが難しい。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、単位時間あたりの被加工物の研削加工の処理数を増やして生産性を向上させることが可能な研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工物を保持する複数のチャックテーブルと、チャックテーブルを回動可能に支持しかつ回転可能なターンテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物の被研削面に対して第1の研削を施す第1研削手段と、チャックテーブルに保持され第1の研削が施された被加工物の被研削面に対して第2の研削を施す第2研削手段とから少なくとも構成される研削装置であって、第1研削手段は、研削面を有する研削砥石が配設された第1研削ホイールと、第1研削ホイールを支持して回転可能なスピンドルを有するスピンドルユニットとから少なくとも構成され、第2研削手段は、研削面を有する研削砥石が配設された第2研削ホイールと、第2研削ホイールを支持して回転可能なスピンドルを有するスピンドルユニットとから少なくとも構成され、チャックテーブルは、第1研削手段及び第2研削手段に対応してそれぞれ2個ずつ配設され、それぞれのチャックテーブルは円錐形状の吸着面を有し、第1研削ホイールに配設された研削砥石の研削面に対して2個のチャックテーブルの2個の吸着面が平行となる各チャックテーブルの半径領域において研削が施され、該半径領域において被加工物に対して研削砥石が研削する方向が同一になるように2個のチャックテーブルの回転方向と吸着面の傾きが揃えられ、第2研削ホイールに配設された研削砥石の研削面に対して2個のチャックテーブルの2個の吸着面が平行となる各チャックテーブルの半径領域において研削が施され、該半径領域において被加工物に対して研削砥石が研削する方向が同一になるように2個のチャックテーブルの回転方向と吸着面の傾きが揃えられることを特徴とする。
【0007】
この研削装置によれば、第1研削手段と第2研削手段のそれぞれで、2個のチャックテーブルに保持された2個の被加工物に対して研削加工を同時に行うため、既存の研削装置に比して多くの被加工物に効率良く研削を施すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単位時間あたりの被加工物の研削加工の処理数を増やして生産性を向上させることが可能な研削装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る研削装置を示す上面図である。
図2】本実施の形態に係る研削装置で、一つの研削手段によって2個のチャックテーブル上の2個の被加工物を同時に研削加工する状態を示す側面図である。
図3】チャックテーブルの微調整手段を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る研削装置を示す上面図である。図1の紙面に沿う方向が水平方向であり、図1の紙面に対して垂直な方向が上下方向である。
【0011】
図1に示す研削装置10は、基台11の上面に円板状のターンテーブル12を有している。ターンテーブル12は、図示を省略する回転駆動機構によって、上下方向に向けて延びる回転軸P1を中心として回転する。
【0012】
図1に示すように、ターンテーブル12上には、6つのチャックテーブルが設けられている。6つのチャックテーブルは、回転軸P1を中心とするターンテーブル12の回転方向に等間隔(120°間隔)で配された3つの第1チャックテーブルTAと、回転軸P1を中心とする回転方向に等間隔(120°間隔)で配された3つの第2チャックテーブルTBとからなる。各チャックテーブルTA、TBは板状の被加工物W(図2図3参照)を吸着保持するためのものであり、その詳細については後述する。被加工物Wは、半導体基板、無機材料基板の他、デバイスが形成された半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等、研削加工の対象となるものであれば任意のものを適用可能である。
【0013】
図1に、回転軸P1を通ってターンテーブル12の半径方向に延びる、仮想的な3本の基準線Lを一点鎖線で示している。3本の基準線Lは回転軸P1を中心とする回転方向に等間隔(120°間隔)で配されており、それぞれの基準線Lに関して線対称の関係で第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBが一つずつ配置されている。この基準線Lを挟んで対をなす関係で設けられた第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBを、チャックテーブルセットとする。すなわち、ターンテーブル12上には、それぞれが第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBを含む3組のチャックテーブルセット14、15及び16が設けられている。
【0014】
基台11の上面から上方に突出するコラム17には、各チャックテーブルTA、TBに保持された被加工物W(図2図3参照)に対して研削加工を行う、第1研削手段20と第2研削手段30が支持されている。第1研削手段20は、被加工物Wに対して第1の研削である粗研削を施すものである。第2研削手段30は、第1研削手段20により粗研削が行われた後の被加工物Wに対して、第2の研削である仕上げ研削を施すものである。
【0015】
第1研削手段20と第2研削手段30は、後述する研削砥石26、36を除いて概ね共通の構造を有している。図2及び図3は、第1研削手段20と第2研削手段30の両方の説明に共用される図であり、第1研削手段20の構成要素を通常の符号で表し、第2研削手段30の構成要素を括弧書きの符号で表している。また、図1では、基台11上のターンテーブル12や各チャックテーブルTA、TBとの関係を分かりやすくするために、第1研削手段20と第2研削手段30の構成要素を部分的に二点鎖線で仮想的に示している。
【0016】
図1に示すように、第1研削手段20は、移動基台21と、移動基台21に装着されたスピンドルユニット22を備えている。移動基台21は、コラム17の前面に設けた一対のガイドレール18に沿って上下方向に移動可能に支持されている。スピンドルユニット22は、上下方向に向けて延びる回転軸P2を中心として回転可能なスピンドル23を有し、スピンドル23は上端に設けたモータ24によって回転駆動される。スピンドル23の下端には円板状の第1研削ホイール25が支持される。第1研削ホイール25の中心は回転軸P2と一致しており、スピンドル23が回転すると、第1研削ホイール25は回転軸P2を中心として回転する。第1研削ホイール25の下面の周縁部に、複数の研削砥石26が環状に配設されている。なお、図1では一部の研削砥石26の図示を省略している。研削砥石26は粗研削用の研削砥石であり、図2及び図3に示すように、下方に向く研削面26aを有している。
【0017】
図1に示すように、コラム17の前面側には、上下方向に回転軸が延びるボールネジ27が配設されており、ボールネジ27は上端に設けたモータ28によって回転駆動される。ボールネジ27は、移動基台21に設けた貫通ねじ穴に螺合している。ボールネジ27が回転すると、移動基台21がガイドレール18に沿って上下方向に移動し、移動基台21の移動に伴って、スピンドルユニット22に支持される第1研削ホイール25が上下移動を行う。
【0018】
図1に示すように、第2研削手段30は、移動基台31と、移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を備えている。移動基台31は、コラム17の前面に設けた一対のガイドレール19に沿って上下方向に移動可能に支持されている。スピンドルユニット32は、上下方向に向けて延びる回転軸P3を中心として回転可能なスピンドル33を有し、スピンドル33は上端に設けたモータ34によって回転駆動される。スピンドル33の下端には円板状の第2研削ホイール35が支持される。第2研削ホイール35の中心は回転軸P3と一致しており、スピンドル33が回転すると、第2研削ホイール35は回転軸P3を中心として回転する。第2研削ホイール35の下面の周縁部に、複数の研削砥石36が環状に配設されている。なお、図1では一部の研削砥石36の図示を省略している。研削砥石36は仕上げ研削用の研削砥石であり、図2及び図3に示すように、下方に向く研削面36aを有している。
【0019】
図1に示すように、コラム17の前面側には、上下方向に回転軸が延びるボールネジ37が配設されており、ボールネジ37は上端に設けたモータ38によって回転駆動される。ボールネジ37は、移動基台31に設けた貫通ねじ穴に螺合している。ボールネジ37が回転すると、移動基台31がガイドレール19に沿って上下方向に移動し、移動基台31の移動に伴って、スピンドルユニット32に支持される第2研削ホイール35が上下移動を行う。
【0020】
3組のチャックテーブルセット14、15及び16を構成する計6つのチャックテーブルTA、TBはいずれも、共通する構造と大きさを有している。図2及び図3に示すように、各チャックテーブルTA、TBは、円柱状の枠体40と、枠体40の上面に形成した円形の凹部内に保持される円板状の吸着保持部41を備え、吸着保持部41の上面である吸着面42上に被加工物Wを載置する。被加工物Wは、被研削面Wa(図2図3)を上方に向けて載置される。吸着保持部41はポーラスセラミックス等の多孔質部材からなり、図2に概念的に示す吸引手段43を作動することにより吸着保持部41に吸引力が作用して、吸着面42上に被加工物Wを吸着保持することができる。各チャックテーブルTA、TBは、図示を省略する回転駆動機構によって、回転軸P4を中心として回転される。
【0021】
図1及び図2に示すように、第1研削ホイール25の径は個々のチャックテーブルTA、TBの径よりも大きく、第1研削ホイール25の下面に設けた研削砥石26に対して、各チャックテーブルセット14、15及び16を構成する2個のチャックテーブルTA、TBの2個の吸着面42を同時に対面させることができる。同様に、第2研削ホイール35の径は個々のチャックテーブルTA、TBの径よりも大きく、第2研削ホイール35の下面に設けた研削砥石36に対して、各チャックテーブルセット14、15及び16を構成する2個のチャックテーブルTA、TBの2個の吸着面42を同時に対面させることができる。すなわち、第1研削手段20と第2研削手段30はいずれも、2個のチャックテーブルTA、TB上の2個の被加工物Wに対して同時に研削を施すことが可能であり、第1研削手段20と第2研削手段30によって合計4個の被加工物Wを同時に研削することができる。この研削加工の詳細については後述する。なお、本実施の形態では、第1研削ホイール25と第2研削ホイール35は共通の径に設定されている。
【0022】
図2に誇張して示すように、吸着保持部41の吸着面42は、回転軸P4を軸とする円錐形に形成されている。そして、第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBはそれぞれ、吸着面42の勾配に対応した角度の分、第1研削ホイール25の回転軸P2及び第2研削ホイール35の回転軸P3に対して回転軸P4を傾斜させてターンテーブル12に対して支持される。
【0023】
第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBのそれぞれの吸着面42上に吸着保持される被加工物Wは、吸着面42に沿う円錐状になる。そのため、各チャックテーブルTA、TB上の被加工物Wの被研削面Wa(図2図3)は、第1研削手段20により粗研削加工を施される際に、第1研削ホイール25の下面周縁部に設けた研削砥石26の研削面26a(図2図3)に対して平行となる線状の半径領域が、研削砥石26と接触して研削される。また、各チャックテーブルTA、TB上の被加工物Wの被研削面Waは、第2研削手段30により仕上げ研削加工を施される際に、第2研削ホイール35の下面周縁部に設けた研削砥石36の研削面36a(図2図3)に対して平行となる線状の半径領域が、研削砥石36と接触して研削される。
【0024】
図1に、第1研削手段20の研削砥石26の研削面26aが第1チャックテーブルTA上の被加工物Wの被研削面Waに対して対面する領域を、加工ラインS1として示し、第1研削手段20の研削砥石26の研削面26aが第2チャックテーブルTB上の被加工物Wの被研削面Waに対して対面する領域を、加工ラインS2として示した。また、図1に、第2研削手段30の研削砥石36の研削面36aが第1チャックテーブルTA上の被加工物Wの被研削面Waに対して対面する領域を、加工ラインS3として示し、第2研削手段30の研削砥石36の研削面36aが第2チャックテーブルTB上の被加工物Wの被研削面Waに対して対面する領域を加工ラインS4として示した。このように、第1研削手段20では、第1研削ホイール25に配設された研削砥石26の研削面26aと2個のチャックテーブルTA、TBの2個の吸着面42とが対面する半径領域(加工ラインS1、S2)において、被加工物Wの被研削面Waに対する研削が施される。また、第2研削手段30では、第2研削ホイール35に配設された研削砥石36の研削面36aと2個のチャックテーブルTA、TBの2個の吸着面42とが対面する半径領域(加工ラインS3、S4)において、被加工物Wの被研削面Waに対する研削が施される。
【0025】
各チャックテーブルTA、TBは、微調整手段によって、傾きの方向及び傾きの大きさを調整することができる。図3に示すように、微調整手段50は、枠体40を支持するチャックテーブルベース51の下部に設けたフランジ52と、ターンテーブル12に対して固定関係にある固定部53との間を、調整軸機構によって接続した構造を有している。調整軸機構は、固定部53に対して固定的に支持される筒状部54と、筒状部54に対して挿入されたボルト軸55とを有し、ボルト軸55の下端に設けた回転操作部56を回転させることにより、筒状部54に対してボルト軸55が上下方向に進退移動する。ボルト軸55の上端付近がフランジ52に接続しており、ボルト軸55が進退移動すると、フランジ52におけるボルト軸55の接続部分が上下に位置変化する。
【0026】
図1に示すように、各チャックテーブルTA、TBは、回転軸P4を中心とする回転方向で等間隔に位置する3箇所の支持部Mで、ターンテーブル12に対して支持される、この3箇所の支持部Mのうち、2箇所以上に上記の微調整手段50を配することで、各チャックテーブルTA、TBの傾き調整が可能となる。例えば、各チャックテーブルTA、TBにおいて、図1に示す加工ラインS1、S2、S3及びS4の端部に近接して位置する1つの支持部Mを固定の支持部とし、残る2つの支持部Mに微調整手段50を設けることができる。この構成によれば、円錐状の吸着面42のうち、概ね加工ラインS1、S2、S3及びS4に沿って延びる稜線を中心として各チャックテーブルTA、TBの傾き調整を行わせることができる。
【0027】
以上の構成からなる研削装置10の動作を説明する。ターンテーブル12上に設けられた3組のチャックテーブルセット14、15及び16は、回転軸P1を中心とするターンテーブル12の回転によって、図1に示す被加工物着脱域E1と第1研削域E2と第2研削域E3に順次移動される。図1は、チャックテーブルセット14が被加工物着脱域E1に位置し、チャックテーブルセット15が第1研削域E2に位置し、チャックテーブルセット16が第2研削域E3に位置する状態を示している。
【0028】
被加工物着脱域E1は、図示を省略する搬送機構と、第1チャックテーブルTA及び第2チャックテーブルTBとの間で、被加工物Wの受け渡しを行う領域である。被加工物Wは、搬送機構によって被加工物着脱域E1まで搬送される。そして、被加工物着脱域E1に待機しているチャックテーブルセット14の第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBのそれぞれの吸着面42上に、被研削面Waを上方に向けて被加工物Wが載せられる。第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBはそれぞれ、吸引手段43(図2)による吸引力によって吸着面42上に被加工物Wを吸着保持する。
【0029】
なお、本発明は搬送機構の構成を限定するものではなく、様々な形態の搬送機構を用いることが可能である。一例として、2個のチャックテーブルTA、TBに対して2つの被加工物Wを同時に搬送可能な搬送機構を用いると、搬送効率を高めることができる。また、本実施の形態の研削装置10を、様々な加工装置を自由に組みわせて連携させるクラスターモジュールシステムの一部として適用し、クラスターモジュールシステムの搬送機構を用いて、被加工物着脱域E1への被加工物Wの搬送を行ってもよい。
【0030】
第1研削域E2は、第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBのそれぞれに保持されている被加工物Wの被研削面Waに対して、第1研削手段20によって粗研削加工を行う領域である。先に述べたように、第1研削ホイール25の径は、第1研削域E2に位置するチャックテーブルセット15の個々のチャックテーブルTA、TBの径よりも大きい。そして、この2個のチャックテーブルTA、TBの2個の吸着面42上に保持された2個の被加工物Wの被研削面Waに対して、第1研削ホイール25の下面に設けた研削砥石26の研削面26aを接触させて、同時に粗研削加工を行うことができる(図2参照)。
【0031】
より詳しくは、図1に示すように、第1研削域E2では、第1研削ホイール25の回転中心である回転軸P2が、第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBの中間を通る基準線L上に位置する(基準線Lと回転軸P2が垂直な関係で交わる)。また、第1チャックテーブルTAにおける回転軸P4と、第2チャックテーブルTBにおける回転軸P4がそれぞれ、第1研削ホイール25の外周上に位置している。
【0032】
この状態で、チャックテーブルセット15を構成する第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBをそれぞれ、回転軸P4を中心として図1の矢印R1方向(反時計方向)に回転させると共に、第1研削手段20における第1研削ホイール25を図1の矢印R2方向(反時計方向)に回転させながら下降させる。そして、第1研削ホイール25の下面周縁部に設けた研削砥石26の研削面26aを、第1チャックテーブルTAに保持された被加工物Wの被研削面Waに対して加工ラインS1に沿って接触させると共に、第2チャックテーブルTBに保持された被加工物Wの被研削面Waに対して加工ラインS2に沿って接触させて、一つの第1研削ホイール25の回転動作に伴って2個の被加工物Wの粗研削加工を同時に行う。加工ラインS1に沿う粗研削と加工ラインS2に沿う粗研削はいずれも、被加工物Wの外周部分から中心(回転軸P4)に向かう方向となるため、チャックテーブルセット15により保持される2個の被加工物Wに対する研削条件を同じにすることができる。
【0033】
このとき、加工ラインS1及び加工ラインS2においては、研削砥石26の研削面26aと2個のチャックテーブルTA、TBのそれぞれの吸着面42とが予め平行になるように調整されているため、2個の被加工物Wの被研削面Waに対して粗研削が精度良く行われる。また、研削砥石26の研削面26aが2個のチャックテーブルTA、TBのそれぞれの回転軸P4を通るので、2個の被加工物Wに対して削り残し無く被研削面Wa全体を均一に粗研削できる。さらに、各チャックテーブルTA、TBを支持する3箇所の支持部Mで囲まれる三角形状の領域内に加工ラインS1、S2が位置するので、第1研削手段20によって粗研削を行う際の被加工物Wの安定性を高めることができる。
【0034】
第2研削域E3は、第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBのそれぞれに保持されている被加工物Wの被研削面Waに対して、第2研削手段30によって仕上げ研削加工を行う領域である。先に述べたように、第2研削ホイール35の径は、第2研削域E3に位置するチャックテーブルセット16の個々のチャックテーブルTA、TBの径よりも大きい。そして、この2個のチャックテーブルTA、TBの2個の吸着面42上に保持された2つの被加工物Wの被研削面Waに対して、第2研削ホイール35の下面に設けた研削砥石36の研削面36aを接触させて、同時に仕上げ研削加工を行うことができる(図2参照)。
【0035】
より詳しくは、図1に示すように、第2研削域E3では、第2研削ホイール35の回転中心である回転軸P3が、第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBの中間を通る基準線L上に位置する(基準線Lと回転軸P3が垂直な関係で交わる)。また、第1チャックテーブルTAにおける回転軸P4と、第2チャックテーブルTBにおける回転軸P4がそれぞれ、第2研削ホイール35の外周上に位置している。
【0036】
この状態で、チャックテーブルセット16を構成する第1チャックテーブルTAと第2チャックテーブルTBをそれぞれ、回転軸P4を中心として図1の矢印R3方向(反時計方向)に回転させると共に、第2研削手段30における第2研削ホイール36を図1の矢印R4方向(反時計方向)に回転させながら下降させる。そして、第2研削ホイール35の下面周縁部に設けた研削砥石36の研削面36aを、第1チャックテーブルTAに保持された被加工物Wの被研削面Waに対して加工ラインS3に沿って接触させると共に、第2チャックテーブルTBに保持された被加工物Wの被研削面Waに対して加工ラインS4に沿って接触させて、一つの第2研削ホイール35の回転動作に伴って2個の被加工物Wの仕上げ研削加工を同時に行う。加工ラインS3に沿う仕上げ研削と加工ラインS4に沿う仕上げ研削はいずれも、被加工物Wの外周部分から中心(回転軸P4)に向かう方向となるため、チャックテーブルセット16により保持される2個の被加工物Wに対する研削条件を同じにすることができる。
【0037】
このとき、加工ラインS3及び加工ラインS4においては、研削砥石36の研削面36aと2個のチャックテーブルTA、TBのそれぞれの吸着面42とが予め平行になるように調整されているため、2個の被加工物Wの被研削面Waに対して仕上げ研削が精度良く行われる。また、研削砥石36の研削面が2個のチャックテーブルTA、TBのそれぞれの回転軸P4を通るので、2個の被加工物Wに対して削り残し無く被研削面Wa全体を均一に仕上げ研削できる。さらに、各チャックテーブルTA、TBを支持する3箇所の支持部Mで囲まれる三角形状の領域内に加工ラインS3、S4が位置するので、第2研削手段30によって仕上げ研削を行う際の被加工物Wの安定性を高めることができる。
【0038】
図1に示す状態で、第1研削域E2と第2研削域E3における計4個の被加工物Wに対する研削が完了すると、第1研削ホイール25と第2研削ホイール35をそれぞれ被加工物Wから上方へ引き上げた状態にして、ターンテーブル12を図1の矢印R5方向(反時計方向)に回転させる。図1に示す位置からターンテーブル12が120°回転すると、チャックテーブルセット14が被加工物着脱域E1から第1研削域E2に移動され、チャックテーブルセット15が第1研削域E2から第2研削域E3に移動され、チャックテーブルセット16が第2研削域E3から被加工物着脱域E1に移動される。
【0039】
そして、第1研削域E2において、チャックテーブルセット14の2個のチャックテーブルTA、TBに保持される2個の被加工物Wの被研削面Wa(図1の状態で被加工物着脱域E1に位置していた未研削のもの)に対して、第1研削手段20を用いて同時に粗研削加工を行う。また、第2研削域E3において、チャックテーブルセット15の2個のチャックテーブルTA、TBに保持される2個の被加工物Wの被研削面Wa(図1の状態で第1研削域E2において粗研削が施されたもの)に対して、第2研削手段30を用いて同時に仕上げ研削加工を行う。さらに、被加工物着脱域E1において、チャックテーブルセット16の2個のチャックテーブルTA、TBに保持された仕上げ研削済みの2つの被加工物Wを、不図示の搬送機構に受け渡しする。研削装置10による研削加工を継続して行う場合には、被加工物着脱域E1で、チャックテーブルセット16の2個のチャックテーブルTA、TBのそれぞれの吸着面42上に、未研削の状態の新たな被加工物Wが載置される。
【0040】
上記の動作の繰り返しで、第1研削手段20による粗研削加工と第2研削手段30による仕上げ研削加工を、それぞれ2個の被加工物Wに対して同時に行うことができる。従って、本実施の形態の研削装置10によれば、粗研削用の研削手段と仕上げ研削用の研削手段でそれぞれ1個ずつ被加工物を研削する既存の研削装置に比して、単位時間あたりに研削加工可能な被加工物の数を増やすことができ、生産性が向上する。
【0041】
また、上記実施の形態では、第1研削域E2において、基準線Lに関して2個のチャックテーブルTA、TBを線対称に配置すると共に、第1研削ホイール25の回転軸P3を基準線L上に位置させている。そして、2個のチャックテーブルTA、TBは、いずれも被加工物Wの外周から中心(回転軸P4)に向けて研削砥石26による研削が進むように、傾きと回転方向が揃えられている。同様に、第2研削域E3において、基準線Lに関して2個のチャックテーブルTA、TBを線対称に配置すると共に、第2研削ホイール35の回転軸P3の回転軸P3を基準線L上に位置させている。そして、2個のチャックテーブルTA、TBは、いずれも被加工物Wの外周から中心(回転軸P4)に向けて研削砥石36による研削が進むように、傾きと回転方向が揃えられている。これらの構成によって、第1研削域E2での2個の被加工物Wに関する研削条件が同じになり、かつ第2研削域E3での2個の被加工物Wに関する研削条件が同じになり、研削加工の処理数を増やしながら、加工の質のばらつきをなくすことができる。
【0042】
また、上記実施の形態の研削装置10は、2個のチャックテーブルTA、TBの吸着面42に対して同時に対面する大径の第1研削ホイール25や第2研削ホイール35を用いて、2個の被加工物Wへの研削を行う。この構成によると、第1チャックテーブルTA上の被加工物Wを研削する範囲(加工ラインS1、S3)と、第2チャックテーブルTB上の被加工物Wを研削する範囲(加工ラインS2、S4)との間に、各研削砥石26、36が被加工物Wに接触しない研削休止範囲が得られる。この研削休止範囲を利用して、各研削砥石26、36を効率的に冷却して、各研削砥石26、36の耐久性向上を図ることができる。例えば、研削休止範囲で各研削砥石26、36を積極的に冷却するような冷却水の供給システムを備えてもよい。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。
【0044】
例えば、上記実施の形態では、第1研削手段20と第2研削手段30をほぼ共通の構成としているが、第1研削手段と第2研削手段が異なる構成を備えていてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態の研削装置10は、第1研削域E2と第2研削域E3の2つの研削域を備えているが、3以上の異なる研削域を備える研削装置にも適用が可能である。
【0046】
また、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態や変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0047】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、単位時間あたりの被加工物の研削加工の処理数を増やして生産性の向上を実現できるという効果を有し、特に、ターンテーブルに配設されたチャックテーブル上に保持された被加工物を、研削域に配設された研削手段の研削ホイールによって研削する研削装置に有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 研削装置
12 ターンテーブル
13 14 15 チャックテーブルセット
20 第1研削手段
22 スピンドルユニット
23 スピンドル
25 第1研削ホイール
26 研削砥石
26a 研削面
30 第2研削手段
32 スピンドルユニット
33 スピンドル
35 第2研削ホイール
36 研削砥石
36a 研削面
41 吸着保持部
42 吸着面
50 微調整手段
E1 被加工物着脱域
E2 第1研削域
E3 第2研削域
M 支持部
P1 P2 P3 P4 回転軸
S1 S2 S3 S4 加工ライン
TA 第1チャックテーブル
TB 第2チャックテーブル
W 被加工物
Wa 被研削面
図1
図2
図3