特許第6859581号(P6859581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859581
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】基板を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210405BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210405BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20210405BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20210405BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20210405BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 Y
   H01L21/78 L
   H01L21/304 631
   H01L21/68 N
   B24B27/06 M
   B24B1/00 A
   B24B7/22 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-147742(P2019-147742)
(22)【出願日】2019年8月9日
(65)【公開番号】特開2020-31211(P2020-31211A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】10 2018 214 337.4
(32)【優先日】2018年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カール ハインツ プリーヴァッサー
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健輔
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−078430(JP,A)
【文献】 特開2006−100413(JP,A)
【文献】 特開2007−165636(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/036512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/002035(WO,A1)
【文献】 特開2016−096325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 1/00
B24B 7/22
B24B 27/06
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(W)を処理する方法において、
前記基板(W)は、一面(1)と、前記一面(1)の反対側にある面(6)とを有し、
前記基板(W)は、前記一面(1)上または前記一面(1)の反対側にある面(6)上に、少なくとも一つの凹部(7)を有し、前記少なくとも一つの凹部(7)は、前記基板(W)の平坦面から内部に、表面から前記基板(W)の大部分に向かう方向に延びており、
前記方法は、
保護フィルム(4)を準備するステップと、
前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記一面に前記保護フィルム(4)を加えるステップであって、前記保護フィルム(4)の表の面(4a)の少なくとも中央領域は、前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記面と直接接触し、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の少なくとも前記中央領域と前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記面との間に接着材が存在しない、前記ステップと、
前記凹部(7)の深さの少なくとも一部に沿って前記少なくとも一つの凹部(7)に前記保護フィルム(4)を3μm以上の深さまで入れるように、前記保護フィルム(4)に熱および圧力を加えるステップと、
前記基板(W)の前記一面および/または前記一面(1)の反対側にある前記基板(W)の前記面(6)を処理するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記保護フィルム(4)に圧力を加えるステップは、前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記面に前記保護フィルム(4)を加える間および/または加えた後、前記保護フィルム(4)に真空を適用する工程を有する又は前記工程から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(W)は、複数のデバイス(27)を備えたデバイス領域(2)を前記一面(1)に有するウェハである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(W)の前記一面(1)に少なくとも一つの分割ライン(11)が形成され、前記少なくとも一つの凹部(7)が前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って延びている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記面に前記保護フィルム(4)を加える間および/または加えた後に前記保護フィルム(4)を加熱するステップを更に有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力は、前記保護フィルム(4)を前記少なくとも一つの凹部(7)に3〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に5〜50μmの深さまで入れるように加えられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの凹部(7)を形成するように、前記基板(W)の前記一面(1)上の基板材料または前記一面(1)の反対側にある前記基板(W)の前記面(6)上の基板材料を除去するステップを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記一面(1)の反対側にある前記基板(W)の前記面(6)を処理するステップを含み、
前記一面(1)の反対側にある前記基板(W)の前記面(6)を処理するステップは、前記基板の厚さを調整するため、前記一面(1)の反対側にある前記基板(W)の前記面(6)を研削する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記保護フィルム(4)には、接着層(9)が設けられ、
前記接着層(9)は、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の周辺領域のみに設けられ、前記周辺領域は、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の前記中央領域を囲み、
前記保護フィルム(4)は、前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記面に加えられ、前記接着層(9)は、前記少なくとも一つの凹部(7)を有する前記基板(W)の前記面の周辺部分のみと接触するようになる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
クッション層が前記表の面(4a)の反対側にある前記保護フィルム(4)の裏の面(4b)に付けられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ベースシートが前記クッション層の裏の面に付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板(W)を複数の分離要素(30)に分離するステップと、
前記保護フィルム(4)から前記分離要素(30)をピックアップするステップと、
を更に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記保護フィルム(4)は、高分子、特に、ポリオレフィンから形成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記保護フィルム(4)の周辺部分を環状フレーム(25)、特に、半導体サイズの環状フレームに付けるステップを更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記保護フィルム(4)は、前記基板(W)の前記処理の最初から最後まで、前記基板(W)に付けられたままである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハのような基板、例えば、少なくとも一つの凹部をウェハの一面に有する半導体ウェハを処理する方法に関する。
【0002】
【技術背景】
【0003】
たとえば、半導体ウェハのような基板を処理するとき、基板の面を損傷及び汚染から保護することが重要である。この要求は、デバイス(例えば半導体デバイス)が基板の面に形成される場合、特に顕著である。
【0004】
たとえば、半導体デバイス製造処理において、複数のデバイスを備えたデバイス領域を有し、複数の分割ラインによって概して区切られる基板としてのウェハは、個々のダイに分割されるように処理される。この製造処理は、ウェハの厚さを調整する為に研削ステップと、個々のダイを得る為に分割ラインに沿ってウェハを切断する切断ステップとを一般的に有する。研削ステップは、デバイス領域が形成されるウェハ表面の反対側にあるウェハの裏面から行われる。さらに、研磨及び/又はエッチングのような他の処理ステップも、ウェハの裏面で実行されてもよい。ウェハは、その表面から、又は、その裏面から、分割ラインに沿って切断されてもよい。
【0005】
基板面に対する保護は、それに保護フィルム又はシーティングを付けることによって与えられる。特に、ウェハ上に形成されたデバイスを、ウェハの処理中、例えば、割れ、変形および/または、破片、研削水、切断水による汚染から保護する為に、そのような保護フィルム又はシーティングが、処理前にウェハの表面に加えられてもよい。
【0006】
基板面の、そのような保護は、トレンチ、溝、切断部などの凹部が、その面に存在する場合、特に重要である。一例を挙げると、そのような凹部は、たとえば、内部に蓄積する場合がある破片又は水による汚染を受けやすい。他に、凹部の存在は、研削、研磨、切断のような処理中、圧力の不均質な分布が生じるので、基板に対する機械的損傷、例えば、基板割れの危険性を高める。
【0007】
そのため、保護フィルム又はシーティングの使用は、一つ又は複数の凹部を一面に有する基板を処理するとき、特に重要である。
【0008】
しかしながら、保護フィルム又はシーティングが付けられる基板面は、保護フィルム又はシーティングに形成された接着層の接着力によって損傷され、あるいは、フィルム又はシーティングが基板から剥がれるとき、接着材残渣により汚染される場合がある。特に、そのような残渣は、基板面に形成された凹部に残る場合がある。この結末は、たとえば、MEMSのような傷つきやすいデバイスが、保護フィルム又はシーティングが加えられた基板面に形成される場合、特に問題がある。この場合、デバイス構造が激しく損なわれる場合がある。
【0009】
このため、一面に凹部を有する基板を処理する、信頼性及び効率の良い方法であって、基板に対する汚染及び損傷の危険性を最小限にする方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は、一面に凹部を有する基板を処理する方法であって、基板に対する汚染および損傷の危険性を最小限にでき、信頼性および効率の良い方法を提供することを目的とする。この目的は、請求項1の技術的特徴を備えた基板処理法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属形式の請求項から得られる。
【0011】
本発明は、基板を処理する方法を提供する。基板は、一面(例えば、表面)および、その一面の反対側にある面(例えば、裏面)を有する。基板は、一面またはその一面の反対側にある面に、少なくとも一つの凹部を有する。この方法は、保護フィルム又はシートを準備するステップと、保護フィルム又はシートを、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えるステップと、を有し、保護フィルム又はシートの表の面の少なくとも中央領域が、少なくとも一つの凹部を有する基板の面と直接接触する。さらに、この方法は、保護フィルム又はシートに圧力を加えるステップであって、保護フィルム又はシートは凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に入る、ステップと、基板の一面および/または一面の反対側にある基板の面を処理するステップと、を有する。
【0012】
保護フィルムは、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えられ、保護フィルム又はシートの表の面の少なくとも中央領域は、少なくとも一つの凹部を有する基板の面と直接接触する。そのため、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域と少なくとも一つの凹部を有する基板の面との間には何も材料、特に、何も接着材が存在しない。
【0013】
したがって、例えば、基板上の接着材残渣または接着層による、基板に対する可能な汚染又は損傷の危険性を著しく減少させることができ、排除さえ可能である。
【0014】
少なくとも一つの凹部を有するウキバンの面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、圧力が保護フィルムに加えられ、保護フィルムは、凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に入る。このように、保護フィルムを、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に付けることができる。保護フィルムを基板の所定位置に保持する、保護フィルムおよび基板を付ける力は、圧力を加えるステップによって発生させることができる。このため、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に保護フィルムを付ける為に、追加の接着材料は不要である。
【0015】
特に、保護フィルムに圧力を加えることによって、積極嵌合のような形状適合(form fit)および/または接着結合のような材料結合(material bond)が、保護フィルムおよび基板の間に形成されてもよい。用語「材料結合」と「接着結合」は、保護フィルムと基板との間を、これら2つのコンポーネント間に作用する原子及び/又は分子力によって付けること又は接続することを定める。
【0016】
用語「接着結合」は、これらの原子及び/又は分子力の存在に関し、これらが、保護フィルムを基板に付ける又は接着するように作用し、保護フィルムと基板との間に追加の接着材の存在を意味しない。むしろ、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域は、前述してきたように、少なくとも一つの凹部を有する基板の面と直接接触する。
【0017】
基板は、一面で、又は、その面の反対側にある面で、少なくとも一つの凹部を有する。
【0018】
基板は、一面で、又は、その面の反対側にある面で、複数の凹部を有してもよい。少なくとも一つの凹部は、たとえば、トレンチ、溝、基板の厚さの一部に沿って延びる部分的な切断部のような切断部でもよい。少なくとも一つの凹部は、基板の平坦面から内部に、即ち、表面から基板の大部分に向かう方向に延びてもよい。
【0019】
圧力が保護フィルムに加えられるので、保護フィルムは、凹部の深さの少なくとも一部に入る。このため、少なくとも一つの凹部は、特に、信頼性良く密封されるので、汚染から安全に保護される。さらに、少なくとも一つの凹部の側壁の少なくとも一部は、保護フィルムによって保護される。
【0020】
そのため、本発明の方法は、基板面の一面に凹部を有する基板の信頼性及び効率の良い処理を可能にし、基板に対する汚染及び損傷の危険性を最小限にする。
【0021】
保護フィルムは、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えられてもよく、保護フィルムの表の面は、少なくとも一つの凹部が存在する全区域において、少なくとも一つの凹部を有する基板の面と直接接触する。このように、特に接着材残渣による凹部の汚染を、特に信頼性良く避けることができる。
【0022】
圧力は、基板の一面、および/または、その一面の反対側にある基板の面を処理する前に、保護フィルムに加えられてもよい。
【0023】
圧力は、ローラ、ローラマウント、圧縮プレート、スタンプ、膜などのような圧力を加える手段によって保護フィルムに加えられてもよい。
【0024】
保護フィルムに圧力を加えるステップは、少なくとも凹部を有する基板の面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、保護フィルムに真空を加える工程を含んでもよく、又は、その工程から成り得る。保護フィルムが凹部の深さの少なくとも一部に沿って少なくとも一つの凹部に入るように、真空が保護フィルムに加えられてもよい。このように、保護フィルムが凹部の深さの少なくとも一部に沿って少なくとも一つの凹部に入ることが特に信頼性良く確保できる。
【0025】
圧力は、更に詳細に後述されるように、真空チャンバ内で保護フィルムに加えられてもよい。
【0026】
保護フィルムは、減圧環境、特に、真空下で、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えられ、更に/又は、付けられてもよい。このように、特に信頼性良く確保できることは、凹部の深さの少なくとも一部に沿って少なくとも一つの凹部に保護フィルムが入ること、さらに/または、保護フィルムおよび基板の間に空洞及び/又は気泡が何も存在しないことである。このため、基板の一面、および/または、その一面の反対側にある基板の面を処理する間、例えば、加熱処理中に膨張する、そのような気泡による基板の応力又は歪が避けられる。
【0027】
たとえば、少なくとも一つの凹部を有する基板の一面に保護フィルムを加えるステップおよび/または付けるステップは、真空チャンバ内で実行されてもよい。特に、保護フィルムは、真空ラミネート装置を使用することによって、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えられ、更に/又は、付けられてもよい。そのような真空ラミネート装置において、基板は、少なくとも一つの凹部を持たない基板面がチャックテーブルの上面と接触して少なくとも一つの凹部を有する基板面が上方に向けられる状態で、真空チャンバ内のチャックテーブル上に置かれる。チャックテーブルは、たとえば、加熱されたチャックテーブルでもよい。
【0028】
少なくとも一つの凹部を有する基板面に加えられる保護フィルムは、環状フレームによって、その周辺部分に保持され、真空チャンバ内で、この基板面の上方に置かれる。チャックテーブルの上方に位置される真空チャンバの上部と環状フレームには、拡張可能なゴム製膜によって閉じられる空気入口ポートが設けられている。
【0029】
基板および保護フィルムが真空チャンバにロードされた後、チャンバが排気され、空気がゴム製膜に空気入口ポートを通って供給され、排気済みチャンバにゴム製膜を拡張させる。このように、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムを押し付けるように、ゴム製膜は真空チャンバ内を下方に移動され、基板の周辺部分を保護フィルムで密封し、少なくとも一つの凹部を有する基板面にフィルムを押し付ける。このため、凹部の深さの少なくとも一部に沿って少なくとも一つの凹部に保護フィルムが入ることが信頼性良く確保できる。
【0030】
保護フィルムは、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムを加える間および/または加えた後に、例えば、チャックテーブルを加熱することによって、保護フィルムが加熱されてもよい。
【0031】
続いて、真空チャンバ内の真空が解除され、保護フィルムは、真空チャンバ内で正圧を経て、更に、オプションで加熱処理を経て発生される付ける力によって、少なくとも凹部を有する基板面上の所定位置に保持される。以下、そのような加熱処理を更に詳細に説明する。
【0032】
あるいは、柔らかいスタンプまたは柔らかいローラ(例えば、加熱された柔らかいスタンプ又は加熱された柔らかいローラ)によってゴム製膜を置き換えることができる。
【0033】
基板は、ウェハでもよい。基板は、例えば、半導体ウェハ、ガラスウェハ、サファイヤウェハ、アルミナ(Al23)のようなセラミックウェハ、石英ウェハ、ジルコニアウェハ、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)ウェハ、ポリカーボネートウェハ、金属(例えば、銅、鉄、鋼、アルミニウムなど)または金属で被覆された材料のウェハ、フェライトウェハ、光学的結晶ウェハ、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、被覆または成形されたウェハなどでもよい。
【0034】
特に、基板は、例えば、Siウェハ、GaAsウェハ、GaNウェハ、GaPウェハ、InAsウェハ、InPウェハ、SiCウェハ、SiNウェハ、LT(タンタル酸リチウム)ウェハ、LN(ニオブ酸リチウム)ウェハなどでもよい。
【0035】
基板は、単一材料で形成されてもよく、或いは、異なる材料の組合せ(例えば、2種以上の上記識別された材料)で形成されてもよい。たとえば、基板は、Siで形成された基板要素がガラスで形成された基板要素に結合されるSi・ガラス結合基板でもよい。
【0036】
基板は、どのような種類の形状を有してもよい。ここで、用語「半導体サイズのウェハ」は、半導体ウェハの寸法(標準化された寸法)、特に、直径(標準化された直径)、即ち、外径を持つウェハを指す。半導体ウェハの寸法、特に、直径、すなわち、外径は、SEMI基準で規定されている。たとえば、半導体サイズウェハは、Siウェハでもよい。研磨された単結晶Siウェハは、SEMI規格において、M1およびM76と規定されている。半導体サイズのウェハは、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、12インチまたは18インチウェハでもよい。
【0037】
基板は、どのような形式の形状を有してもよい。その上面視において、基板は、たとえば、円形状、楕円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0038】
保護フィルムは、どのような形状を有してもよい。その上面視において、保護フィルムは、たとえば、円形状、楕円形状、長円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0039】
保護フィルムは、基板と実質的に同一または同一の形状を有してもよい。
【0040】
保護フィルムは、基板の外径より大きな外径を有してもよい。このように、基板の処理、取扱い及び/又は運搬を容易にできる。特に、保護フィルムの外周部分には、後述するように、環状フレームを付けることができる。
【0041】
保護フィルムは、基板の外径より小さな外径を有してもよい。
【0042】
保護フィルムは、基板の外径と実質的に同一の外径を有してもよい。
【0043】
基板は、複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有してもよい。特に、基板は、複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有するウェハでもよい。
【0044】
少なくとも一つの凹部は、基板の一面に存在してもよい。本発明の方法は、デバイス領域に形成されたデバイスが、効率および信頼性良く、損傷および汚染から保護されることを可能にする。
【0045】
基板は、その一面に周辺限界領域を有してもよく、周辺限界領域は、何もデバイスを持たず、デバイス領域の周りに形成される。
【0046】
少なくとも一つの分割ラインが、基板の一面に形成されてもよい。少なくとも一つの凹部は、少なくとも一つの分割ラインに沿って延びてもよい。複数の分割ラインは、基板の一面に形成されてもよい。複数の凹部が、基板の一面に存在してもよい。複数の凹部の各々は、複数の分割ラインのそれぞれに沿って延びてもよい。一つ又は複数の分割ラインは、基板の一面に形成される複数のデバイスを区切ってもよい。本発明の方法は、効率および信頼性の良い方法で、複数のデバイスの表面および側面が損傷および汚染から保護されることを可能にする。
【0047】
少なくとも一つの分割ラインの幅は、30μm〜200μm、好ましくは、30μm〜150μm、より好ましくは、30μm〜100μmの範囲内でもよい。
【0048】
本発明の方法は、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、保護フィルムを加熱するステップを更に有してもよい。特に、当該方法は、保護フィルムを加熱するステップと、保護フィルムに真空を加えるステップとを含んでもよい。この場合、真空は、保護フィルムを加熱する間および/または加熱する前および/または加熱した後、保護フィルムに加えられてもよい。
【0049】
当該方法は、加熱処理の後、保護フィルムが冷却されることを可能にするステップを更に含んでもよい。特に、保護フィルムは、その初期温度(すなわち、加熱処理前の温度)まで冷却されてもよい。保護フィルムは、基板の一面(例えば、基板の表面)および/または、その一面の反対側にある基板の面(例えば、基板の裏面)を処理する前、例えば、その初期温度まで冷却されてもよい。
【0050】
保護フィルムおよび基板を付ける力は、加熱処理を通して発生されてもよい。保護フィルムを基板に付けるステップは、加熱処理自体および/または保護フィルムの冷却を可能にする後処理に生じてもよい。
【0051】
保護フィルムは、加熱処理によって軟化されてもよい。保護フィルムは、例えば、初期温度まで冷却する際、例えば、形状適合および/または材料結合が基板に対して生じるように、再び硬化してもよい。
【0052】
加熱処理を通じて保護フィルムを軟化させることによって、凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に保護フィルムが入ることを特に信頼性良く確保することができる。
【0053】
保護フィルムは、180℃以上の温度、好ましくは、220℃の温度、より好ましくは、250℃の温度、より更に好ましくは、300℃の温度で耐熱性を有してもよい。
【0054】
保護フィルムは、30℃〜250℃、好ましくは、50℃〜200℃、より好ましくは、60℃〜150℃、より更に好ましくは、70℃〜110℃の範囲の温度まで加熱されてもよい。特に好ましくは、保護ファーム得は、約80℃の温度まで加熱される。
【0055】
保護フィルムは、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に保護フィルムを加える間および加えた後、30秒〜10分、好ましくは、1分〜8分、より好ましくは、1分〜6分、更により好ましくは、1分〜4分、もっと更により好ましくは、1分〜3分の範囲の期間にわたって、加熱されてもよい。
【0056】
保護フィルムは、直接および/または間接に加熱されてもよい。
【0057】
保護フィルムは、例えば、加熱されたローラ、加熱されたスタンプ等のような加熱手段、または熱放射手段を使用して、熱を直接、保護フィルムに加えることによって加熱されてもよい。保護フィルムおよび基板は、真空チャンバのようなレセプタクル又はチャンバ内に配置されてもよく、保護フィルムを加熱する為にレセプタクル又はチャンバの内容積が加熱されてもよい。レセプタクル又はチャンバには、熱放射手段が備えられてもよい。
【0058】
保護フィルムは、例えば、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に保護フィルムを加える前および/または加える間および/または加えた後、基板を加熱することによって、間接的に加熱されてもよい。たとえば、チャックテーブルのような支持体またはキャリアに基板を配置し、その支持体またはキャリアを加熱することによって、基板が加熱されてもよい。
【0059】
たとえば、チャックのような支持体又はキャリアは、30℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは60℃〜150℃、更により好ましくは70℃〜110℃の範囲内の温度まで加熱されてもよい。特に好ましくは、支持体又はキャリアは、およそ80℃の温度まで加熱されてもよい。
【0060】
例えば、加熱されたローラ等のような加熱手段、あるいは、保護フィルムの直接加熱および基板を通した保護フィルムの間接加熱の為に熱放射手段を使用することによって、これらの方法が組み合わされてもよい。
【0061】
保護フィルムは、しなやかであり、弾性があり、柔軟性があり、伸ばすことができ、柔らかく、さらに/または、圧縮性があるのが好ましい。保護フィルムは、室温、例えば、18〜23℃および/または加熱された状態にあるとき、しなやかであり、弾性があり、柔軟性があり、伸ばすことができ、柔らかく、さらに/または、圧縮性があるのが好ましい。特に好ましくは、保護フィルムは、室温で、しなやかであり、弾性があり、柔軟性があり、伸ばすことができ、柔らかく、さらに/または、圧縮性があり、保護フィルムが加熱されるとき、しなやかさ、弾性、柔軟性、伸縮性、柔らかさ、圧縮性は、更に高められる。
【0062】
このように、保護フィルムが、凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に入ることが特に信頼性良く確保できる。
【0063】
好ましくは、保護フィルムは、冷却の際、ある程度まで硬くされ、或いは、堅くされ、冷却状態で、より剛性があり、さらに/または頑丈になる。このように、基板の研削及び/又は切断のような基板の後処理中に、特に信頼性の良い基板の保護が確保できる。
【0064】
保護フィルムの加熱前および/または加熱中および/または加熱後に、圧力を保護フィルムに加えてもよい。
【0065】
特に好ましくは、加熱されたローラ、加熱された加圧プレート又は加熱されたスタンプのような組み合わされた熱及び圧力を加える手段が使用されてもよい。この場合、圧力は保護フィルムに加えることができるが、同時に、保護フィルムを加熱する。
【0066】
保護フィルムが、3〜500μm、好ましくは、5〜300μm、特に、5〜50μmの深さまで、少なくとも一つの凹部に入るように、保護フィルムに圧力を加えてもよい。
【0067】
少なくとも一つの凹部は、5〜1500μmの範囲内、又は、50〜1000μmの範囲内、又は、100〜800μmの範囲内で、深さ、即ち、基板の厚さ方向に沿った拡張部を有してもよい。少なくとも一つの凹部は、基板の厚さの2%〜90%の範囲内、又は、5%〜70%の範囲内、又は、8%〜50%の範囲内、又は、10%〜40%の範囲内、又は、12%〜30%の範囲内の深さを有してもよい。
【0068】
保護フィルムが、2%〜100%、好ましくは、5%〜90%、より好ましくは10%〜80%、更により好ましくは15%〜70%、もっと更により好ましくは、20%〜60%の深さまで、少なくとも一つの凹部に入るように、保護フィルムに圧力が加えられてもよい。
【0069】
本発明の方法は、少なくとも一つの凹部を形成するように、基板の一面で、または、その一面の反対側にある基板の面で、基板材料を除去するステップを更に含んでもよい。
【0070】
たとえば、基板材料の除去は、(例えば、ブレードダイシング又は鋸引きによる)機械的切断および/またはレーザ切断および/またはプラズマ切断および/またはエッチング(ウェットエッチング又はドライエッチング)および/または(光リソグラフィ又は電子ビームリソグラフィのような)リソグラフィによって、行われてもよい。基板材料は、単一の機械的切断ステップ、単一のレーザ切断ステップ、単一のプラズマ切断ステップ、単一のエッチングステップ、単一のリソグラフィステップで除去されてもよい。あるいは、基板材料は、連続した2つ以上の上記特定ステップによって除去されてもよい。
【0071】
レーザ切断は、たとえば、アブレーションレーザ切断によって、および/またはステルスレーザ切断によって、即ち、レーザビームを加えることによって基板内部に改質領域を形成することによって、および/またはレーザビームを加えることによって基板内に複数のホール区域を形成することによって、行われてもよい。これらのホール区域の各々は、基板の表面に開いた改質区域内の空間と改質区域とから構成されてもよい。
【0072】
少なくとも一つの凹部は、少なくとも一つの分割ラインが存在する場合、少なくとも一つの分割ラインに沿って基板材料を除去することによって形成されてもよい。複数の分割ラインが存在する場合、複数の凹部は、複数の分割ラインの各々に沿って基板材料を除去することによって形成されてもよい。
【0073】
基板材料は、基板の厚さの一部に沿って、たとえば、基板の厚さの5%以上に沿って、10%以上に沿って、20%以上に沿って、30%以上に沿って、40%以上に沿って、50%以上に沿って、60%以上に沿って、70%以上に沿って、80%以上に沿って、90%以上に沿って、除去されてもよい。基板材料は、基板の厚さの90%以下に沿って、80%以下に沿って、70%以下に沿って、60%以下に沿って、50%以下に沿って、40%以下に沿って、30%以下に沿って、20%以下に沿って、10%以下に沿って、除去されてもよい。
【0074】
本発明の方法は、一面の反対側にある基板の面を処理するステップを含んでもよい。基板の一面の反対側にある面を処理するステップは、基板の厚さを調整するため、一面の反対側にある基板面を研削する工程を含んでもよい。
【0075】
当該方法は、基板の一面の反対側にある面を研磨するステップ(例えば、ドライ研磨または化学機械的研磨(CMP))および/またはエッチング(例えば、ウェットエッチング又はプラズマエッチングのようなドライエッチング)を更に含んでもよい。基板の一面の反対側にある面が研削ステップを受ける場合、研磨ステップおよび/またはエッチングステップは、研削ステップの後に行われてもよい。
【0076】
当該方法は、複数の分離要素に基板を分割するステップを更に含んでもよい。たとえば、基板は、複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有するウェハでもよい。当該方法は、そのウェハを複数の個々のチップ又はダイに分割するステップを含んでもよい。たとえば、基板は、以下の方法で、個々のチップ又はダイのような複数の分離要素に分割されてもよい。
【0077】
基板は、少なくとも一つの凹部を形成するように、(存在する場合には)例えば、少なくとも一つの分割ラインに沿って、除去されてもよい。基板材料を除去するステップは、たとえば、前述した方法で行われてもよい。基板材料の除去処理は、基板の一面から行われてもよい。保護フィルムは、少なくとも一つの凹部が内部に形成された基板面に加えられてもよい。その後、少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面を、基板の厚さを調整する為に研削してもよい。基板の厚さの一部だけに沿って基板材料を除去してもよい。少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面を研削するステップは、例えば、少なくとも一つの分割ラインに沿って、基板を分割するように、何もウェハ材料が除去されなかった基板の厚さの残部に沿って行われてもよい。
【0078】
あるいは、基板は、例えば、存在する場合には少なくとも一つの分割ラインに沿って基板を切断することによって、個々のチップ又はダイのような複数の分離要素に完全に分割されてもよい。少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面から基板を切断してもよい。切断処理は、少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面を研削する前または研削した後に行われてもよい。
【0079】
切断処理は、たとえば、前述した方法、例えば、(ブレードダイシング又は鋸引きによる)機械的切断によって、および/または、レーザ切断によって、および/または、プラズマ切断によって、および/または、エッチング(例えば、ウェットエッチング又はドライエッチング)によって、実行されてもよい。
【0080】
レーザ切断は、たとえば、アブレーションレーザ切断によって、および/またはステルスレーザ切断によって、即ち、レーザビームを加えることによって基板内部に改質領域を形成することによって、および/またはレーザビームを加えることによって基板内に複数のホール区域を形成することによって、行われてもよい。これらのホール区域の各々は、基板の表面に開いた改質区域内の空間と改質区域とから構成されてもよい。基板内に改質領域又はホール区域を形成することに続いて、基板は、基板の径方向に外力を加えることによって、例えば、拡張テープを径方向に拡張させることによって、完全に分離されてもよい。たとえば、保護フィルムは、そのような拡張テープのように使用されてもよい。
【0081】
さらに、例えば、ダイヤモンドスクライバ、レーザスクライバ等を使用して基板をスクライビングし、その後、それに外力を加えることによって基板を割ることによって、基板を複数の分離要素に分割してもよい。
【0082】
基板は、前述した処理の組合せによって、分離要素に分割されてもよい。たとえば、少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面は、第1切断幅で部分的に機械的に切断され、基板の残部は、第2切断幅で少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面から、部分的切断部又は複数の切断部が形成された区域又は複数の区域で、その厚さ方向において、機械的に切断、および/または、レーザにより切断、および/または、プラズマにより切断されてもよい。第2切断幅は、第1切断幅より小さくても等しくてもよい。その後、例えば、機械的部分切断ステップにより生じる可能性のある損傷部を除去する為に、少なくとも一つの凹部を有する基板面の反対側の面を研削してもよい。
【0083】
当該方法は、保護フィルムから、個々のチップ又はダイのような分離要素をピックアップするステップを更に含んでもよい。ピックアップステップは、ピックアップデバイスを使用して行われてもよい。
【0084】
本発明の方法において、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域が、少なくとも一つの凹部を有する基板面と直接接触するように、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムが加えられる。このため、少なくとも中央領域において接着層が存在しないため、分離要素のピックアップステップは非常に容易になる。特に、ピックアップステップにおける分離要素に対する損傷の危険性を相当に減少させることができ、排除すら可能である。また、分離要素を保護フィルムからピックアップする為に必要な力は、著しく低減される。
【0085】
さらに、本方法では、凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に保護フィルムが入るように、圧力が保護フィルムに加えられる。このように、保護フィルムは、基板を分割する前に所定位置で基板をしっかりと保持することができ、基板を分割した後、所定位置で分離要素をしっかりと保持することができる。このため、要素を研削又はピックアップするステップのような処理ステップにおいて、これらの分離要素または基板の移動またはシフトを信頼性良く防止することができる。特に、研削中、そのような移動又はシフトが生じないことから、可能な後の切断、ダイシング、ピックアップステップにおいて、特に正確かつ簡単な整列を達成できる。たとえば、この高度な整列精度のため、薄いブレード又は薄い鋸引きのような薄い機械的切断手段を使用することによって、基板を、一面から、或いは、一面の反対側にある面から、信頼性良く切断できる。
【0086】
保護フィルムの表の面が、少なくとも一つの凹部を有する基板面と接触する全体の区域において、保護フィルムの表の面が、少なくとも凹部を有する基板面と直接接触するように、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムが加えられてもよい。そのため、保護フィルムと、少なくとも一つの凹部を有する基板面との間には、何も材料、特に、接着材が存在しない。
【0087】
このように、例えば、基板上の接着層又は接着材残渣の接着力による、基板に対する可能な汚染又は損傷の危険性を信頼性良く排除することができる。
【0088】
あるいは、保護フィルムには、接着層が設けられてもよい。この場合、接着層は、保護フィルムの表の面の周辺領域だけに設けられるが、周辺領域は、保護フィルムの表の面の中央領域を囲む。保護フィルムは、接着層が、少なくとも一つの凹部を有する基板面の周辺部分のみと接触するように、少なくとも一つの凹部を有する基板面に加えられる。基板が複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有するウェハの場合、少なくとも一つの凹部を有する基板面の周辺部分は、基板の一面に形成された周辺限界領域であってもよく、或いは、周辺限界領域に対応してもよい。
【0089】
このように、保護フィルムを基板に付けるステップを、更に改善することができる。接着層は保護フィルムの表の面の周辺領域だけに設けられることから、接着層によって保護フィルム及び基板が互いに付けられる領域は、保護フィルムの全体の表の面に接着層が設けられる場合と比較すると、著しく減少される。そのため、保護フィルムは、より簡単に基板から剥がすことができ、基板に対する損傷は相当に減少される。
【0090】
接着層の接着材は、熱、UV線、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。このように、処理の後、基板から保護フィルムを特に簡単に除去できる。外部刺激は、接着材に、その接着力を低減するように、即ち、保護フィルムの簡単な除去を可能にする為に、加えられてもよい。また、個々のチップ又はダイのような分離要素は、保護フィルムから簡単にピックアップできる。
【0091】
たとえば、接着層は、実質的に環状形状、開いた(open)矩形の形状または開いた正方形の形状(即ち、接着層の中央に開口を備えた矩形又は正方形の形状)を有してもよい。
【0092】
クッション層は、保護フィルムの表の面の反対側の保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0093】
バンプ、光学素子(例えば、光学レンズ)、他の構造体などのような突出部又は突起が、基板の厚さ方向に沿って、少なくとも一つの凹部を有する基板面から、突出し、延び、出っ張っている場合、このアプローチは特に有利である。
【0094】
クッション層が保護フィルムの裏の面に付けられる場合、そのような突出部をクッション層に埋め込むことができる。このため、切断、研磨、研削のような後の基板処理ステップで、突出部の否定的影響を排除することができる。特に、クッション層は、そのような処理中、圧力の、特に一様かつ均一分布を達成するのに、特に貢献することができる。
【0095】
クッション層に突出部を埋め込むことによって、たとえば、光学素子又は他の構造体のような突出部は、基板処理中、例えば、後の切断又は研削処理において、どのような損傷からも信頼性良く保護される。
【0096】
クッション層の材料は、特に限定されない。特に、基板の厚さ方向に沿って突出する突出部が内部に埋め込まれることを可能にする材料の種類からクッション層が形成されてもよい。たとえば、クッション層は、樹脂、接着材、ゲルなどから形成されてもよい。
【0097】
クッション層は、UV線、熱、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。この場合、クッション層は、外部刺激を加える際、少なくとも一定の程度まで硬くなる。たとえば、クッション層は、硬化性樹脂、硬化性接着材、硬化性ゲルなどで形成されてもよい。
【0098】
クッション層は、硬化後、ある程度の圧縮性、弾性および/または柔軟性を呈するように、即ち、圧縮性、弾性および/または柔軟性を持つように構成されてもよい。たとえば、クッション層は、硬化によってゴムのような状態にもたらされるものでもよい。あるいは、クッション層は、硬化後、剛性があり、硬い状態に達するように構成されてもよい。
【0099】
本発明の方法においてクッション層として使用されるUV硬化性樹脂の好ましい実施例は、DISCO株式会社によるResiFlatとDENKAによるTEMPLOCである。
【0100】
本発明の方法は、基板の処理(例えば、切断又は研削)前に、クッション層を硬化させるようにクッション層に外部刺激を加えるステップを更に含んでもよい。このように、切断及び/又は研削中の基板の保護と、切断及び/又は研削の精度とを更に改善することができる。
【0101】
クッション層は、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、より更に好ましくは300℃の温度まで耐熱性があってもよい。
【0102】
クッション層は、10〜300μm、好ましくは20〜250μm、より好ましくは50〜200μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0103】
クッション層は、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に保護フィルムを加える前に、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0104】
この場合、保護フィルムおよびクッション層は、最初に積層され、クッション層と、クッション層に付けられた保護フィルムとを備える保護シーティングを形成してもよい。このように形成された保護シーティングは、例えば、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起が保護フィルムによって覆われ、保護フィルム及びクッション層に埋め込まれるように、少なくとも一つの凹部を有する基板面に後で付けられてもよい。保護シーティングは、少なくとも一つの凹部を有する面の反対側にある基板面に対してクッション層の裏の面が実質的に平行になるように、加えられてもよい。保護フィルムの表の面は、保護シーティングが、少なくとも一つの凹部を有する基板面に加えられるとき、少なくとも一つの凹部を有する基板面に加えられる。
【0105】
このように、特に単純かつ効率の良い方法で基板処理法を実行することができる。たとえば、保護シーティングは、事前に準備することができ、後の使用の為に貯蔵され、必要なときに基板処理の為に使用される。そのため、保護シーティングは、時間と費用の観点から、大量に製造され、その生産を特に効率良くさせてもよい。
【0106】
クッション層は、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に保護フィルムを加えた後、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0107】
この場合、保護フィルムは、最初に、少なくとも一つの凹部を有する基板面に加えられ、その後、保護フィルムが加えられた、少なくとも一つの凹部を有する基板面は、基板の平坦面から突出する突出部又は突起が保護フィルム及びクッション層に埋め込まれるようにクッション層の表の面に付けられ、クッション層の裏の面は、少なくとも一つの凹部を有する面の反対側にある基板面に対して、実質的に平行になる。このアプローチは、特に、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起に関して、保護フィルムが、特に高精度で、少なくとも一つの凹部を有する基板面に付けられることを可能にする。
【0108】
クッション層は、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムを付ける前および/または付ける間および/または付けた後に、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0109】
クッション層が凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に入るように、クッション層に圧力が加えられてもよい。
【0110】
保護フィルムに付けられる表の面の反対側のクッション層の裏の面にベースシートが付けられてもよい。
【0111】
ベースシートの材料は、特に限定されない。ベースシートは、たとえば、高分子材料のような、柔らかく、しなやかな材料(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)又はエチレン酢酸ビニルコポリマ(EVA)又はポリオレフィン)で形成されてもよい。
【0112】
あるいは、ベースシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはシリコンおよび/またはガラスおよび/またはステンレス鋼(SUS)のような剛性又は硬い材料で形成されてもよい。
【0113】
たとえば、ベースシートがポリエチレンテレフタレート(PET)またはガラスで形成され、クッション層が外部刺激によって硬化可能である場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はガラスを透過可能な放射線(例えば、UV線)でクッション層が硬化されてもよい。ベースシートがシリコン又はステンレス鋼(SUS)で形成される場合、費用効果に優れたベースシートが設けられる。
【0114】
また、ベースシートは、前述した材料の組合せで形成されてもよい。
【0115】
ベースシートは、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、より更に好ましくは、300℃以上の温度まで、耐熱性があってもよい。
【0116】
ベースシートは、30〜1500μm、好ましくは40〜1200μm、より好ましくは50〜1000μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0117】
クッション層及びベースシートは、少なくとも一つの凹部を有する基板面に保護フィルムを加える前または加えた後、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。特に、保護フィルムおよびクッション層およびベースシートを最初に積層し、ベースシート、クッション層、クッション層に付けられた保護フィルムを備える保護シーティングを形成してもよい。このように形成された保護シーティングは、その後、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えられてもよい。
【0118】
ベースシートの表の面は、クッション層の裏の面に接触してもよく、ベースシートの表の面に対して反対側にあるベースシートの裏の面は、少なくとも一つの凹部を有する基板面の反対側にある面に対して実質的に平行であってもよい。そのため、基板を処理(例えば切断又は研削)するとき、例えば、この裏の面をチャックテーブル上に配置することによって、最適なカウンタ圧力をベースシートの裏の面に加えることができる。
【0119】
この場合、ベースシートの平坦な裏の面は、少なくとも一つの凹部を有する基板の面の反対側にある面に対して実質的に平行になっていることから、切断処理のような処理中(例えば、切断装置の切断又はダイシングブレードによって)基板に加えられる圧力は、基板にわたって、均一かつ均質に分布されるので、基板の割れの危険性を最小にする。さらに、少なくとも一つの凹部を有する基板面の反対側にある面とベースシートの平坦かつ均一な裏の面との実質的に平行な整列は、高精度で切断及び研削ステップを実行することを可能にする。
【0120】
保護フィルムは、単一の材料、特に、単一の均質な材料から形成されてもよい。
【0121】
保護フィルムは、高分子のようなプラスチック材料から形成されてもよい。特に好ましくは、保護フィルムはポリオレフィンから形成される。たとえば、保護フィルムは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)又はプリブチレン(PB)で形成されてもよい。
【0122】
特に、当該方法が保護フィルムの加熱ステップを有する場合、ポリオレフィンフィルムは、本発明の基板処理法で使用する為に特に有利な材料特性を有する。ポリオレフィンは、加熱された状態にあるとき、例えば、60℃〜150℃の範囲内の温度まで加熱されたとき、しなやかで、伸ばすことができ、柔らかい。そのため、保護フィルムが凹部の深さの少なくとも一部に沿って少なくとも一つの凹部に入ることを特に信頼性良く確保できる。
【0123】
さらに、ポリオレフィンフィルムは、冷却された状態で、より剛性があり、頑丈になるように、冷却の際に硬化し堅くなる。このため、ウェハの後処理中、特に信頼性の良い基板の保護を確保できる。
【0124】
保護フィルムは、5〜200μm、好ましくは8〜100μm、より好ましくは10〜80μm、更により好ましくは12〜50μmの範囲の厚さを有してもよい。特に好ましくは、保護フィルム又はシートは、80〜150μmの範囲の厚さを有する。
【0125】
このように、保護フィルムは、凹部の深さの少なくとも一部に沿って少なくとも一つの凹部に入るのに十分な柔軟性としなやかさを有し、同時に、処理中に基板を信頼性および効率良く保護する為に、十分な厚さを呈することが、特に信頼性良く確保できる。
【0126】
当該方法は、保護フィルムの周辺部分を環状フレームに付けるステップを更に有してもよい。特に、保護フィルムの周辺部分は、保護フィルムが環状フレームの中央開口部(即ち、環状フレームの内径の内側の領域)を閉じるように環状フレームに付けられてもよい。このように、保護フィルム、特に、その中央部分に付けられた基板は、保護フィルムを介して環状フレームによって保持される。したがって、基板、保護フィルム、環状フレームを備えた基板ユニットが形成され、基板の処理、取扱い、及び/又は運搬が容易になる。
【0127】
保護フィルムの周辺部分を環状フレームに付けるステップは、保護フィルムを基板に加える前または加えた後に行われてもよい。
【0128】
保護フィルムの周辺部分を環状フレームに付けるステップは、保護フィルムを基板に付ける前または付けた後に行われてもよい。
【0129】
保護フィルムの周辺部分を環状フレームに付けるステップは、基板の一面および/またはその一面の反対側にある基板の面を処理する前または処理した後に行われてもよい。
【0130】
環状フレームは、半導体サイズの環状フレームでもよい。本書において、用語「半導体サイズの環状フレーム」とは、半導体ウェハを保持する為の環状フレームの寸法(規格化された寸法)、特に内径(規格化された内径)を持つ環状フレームを指す。
【0131】
半導体ウェハを保持する為の環状フレームの寸法、特に内径は、SEMI規格でも規定されている。たとえば、300mmウェハの為のテープフレームの寸法は、SEMI規格SEMI G74において規定され、300mmウェハの為のプラスチックテープフレームの寸法は、SEMI規格SEMI G87で規定されている。環状フレームは、たとえば、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチサイズの半導体サイズウェハを保持する為のフレームサイズを有してもよい。
【0132】
半導体サイズの環状フレームに保護フィルムの周辺部分を付けるステップが提供する利点は、慣例的ピックアップデバイスのような慣例的半導体ウェハ取扱い及び処理設備が、基板および個々のチップ又はダイのような分離要素の取扱い及び処理の為に使用できる点である。
【0133】
本発明の方法において、保護フィルムは、基板処理の最初から最後まで、基板に付けられたままでもよい。そのため、例えば、基板を分割することによって得られた個々のチップ又はダイのような分離要素が保護フィルムからピックアップされるまで、基板処理の最初から最後まで、同一の保護フィルムを使用することができる。この場合、基板から保護フィルムを剥がすステップ、基板を異なるフィルム又はテープに再装着するステップは不要である。このように、処理法を非常に単純化することができる。さらに、基板の取扱い及び処理に必要なステップ数の減少のため、基板に対する損傷の危険性を更に減少させることができる。また、このアプローチは、たとえば、処理時間及び費用の観点で、特に効率的である。
【0134】
保護フィルムは、拡張可能であってもよい。保護フィルムは、少なくとも一つの凹部を有する基板の面に加えられるとき、拡張可能であってもよい。このように、凹部の深さの少なくとも一部に沿って、少なくとも一つの凹部に保護フィルムが入ることが特に信頼性良く確保できる。特に、保護フィルムは、その当初の大きさから2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上に拡張されてもよい。
【0135】
保護フィルムが拡張可能である場合、基板を分離することによって得られるチップ又はダイのような要素を互いに分離する為に使用されてもよい。特に、当該方法は、基板の一面および/またはその一面の反対側にある基板の面を処理した後、要素を互いに分離するように保護フィルムを径方向に拡張するステップを更に有してもよい。
【0136】
たとえば、基板は、例えば、機械的切断処理またはプラズマ切断処理、研削処理前のダイシングによって、完全に分離されてもよい。その後、完全に分割されたチップ又はダイのような要素は、保護フィルムを径方向に拡張させることによって、お互いから遠ざかるように移動されてもよく、これによって、隣接したデバイス間の距離が増加する。
【0137】
あるいは、基板は、ステルスダイシング処理、即ち、前述されてきたように、レーザビームを加えることによって改質区域がウェハ内部に形成される処理を受けてもよい。その後、基板は、保護フィルムを径方向に拡張させることによって改質区域が形成された場所で、少なくとも分割ラインに沿って、分割され(例えば、割れ)てもよく、これによって、個々のチップ又はダイを得る。
【0138】
保護フィルムを径方向に拡張させるステップの代替として、別個の拡張テープが使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0139】
以下、添付図面を参照して、本発明の非限定実施例を説明する。
図1図1は、本発明の実施形態に従う基板を処理する方法おいて、基板に保護フィルムを加えるステップを例示する横断面図である。
図2図2は、図1に例示されたステップの結果を示す横断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に従う基板を処理する方法において、図2で囲まれた領域の拡大横断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に従う基板を処理する方法の変形実施例において、図2で囲まれた領域の拡大横断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に従う基板を処理する方法において、基板を検索するステップを例示する横断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に従う基板を処理する方法において、複数の分離要素に基板を分割するステップを例示する横断面図である。
図7図7は、図6に例示されたステップの結果を示す横断面図である。
図8図8は、本発明の実施例に従う基板を処理する方法において、保護フィルムから分離要素をピックアップするステップを例示する横断面図である。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0140】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。好ましい実施形態は、基板の例示的実施形態としてのウェハWを処理する方法に関する。好ましい実施形態の方法は、ウェハ以外の基板にも適用される。この方法によって処理される基板は、ウェハに限定されるものではない。
【0141】
ウェハWは、たとえば、MEMSウェハでもよく、MEMSウェハは、その表面1の面にMEMSデバイスが形成されている。しかしながら、ウェハWは、MEMSウェハに限定されるものではなく、好ましくは、その表面1に形成されたCMOSデバイス、好ましくは、固体撮像装置としてのCMOSデバイス、或いは、表面1上に他の形式のデバイスを備えたウェハでもよい。好ましい実施形態の方法は、上部にデバイスが形成されていない基板に適用されてもよい。
【0142】
ウェハWは、半導体、例えば、シリコン(Si)から形成されてもよい。そのようなシリコンウェハWは、シリコン基板上に、IC(集積回路)、LSI(大規模集積)のようなデバイスを含んでもよい。あるいは、ウェハWは、たとえば、セラミック、ガラス、サファイアの有機材料基板上にLED(発光ダイオード)のような光学デバイスを形成することによって構成される光学デバイス用ウェハでもよい。ウェハWは、これに限定されるものではなく、他の方法で形成することができる。さらに、前述した例示的ウェハ設計の組合せも可能である。
【0143】
ウェハWは、μm範囲で研削前の厚さ、好ましくは、625〜925μmの範囲を有してもよい。
【0144】
ウェハWは、円形を呈するのが好ましい。しかしながら、ウェハWの形状は、特に限定されない。他の実施形態では、ウェハWは,たとえば、楕円形状、長円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0145】
ウェハWには、その表面1に形成されたストリートと呼ばれる複数の交差分割ライン11(図2を参照)が設けられ、それによって、前述されたようなデバイス27がそれぞれ形成される複数の矩形区域にウェハWが区切られる。これらのデバイス27は、ウェハWのデバイス領域2に形成される。円形ウェハWの場合、このデバイス領域2は、好ましくは、円形であり、ウェハWの外周と同心で配置される。好ましい実施形態の方法も、上部にデバイスが形成されていない基板に適用されてもよい。たとえば、デバイス27の代わりに、保護が必要な傷つきやすい表面が分割ライン11の間の基板の表面1に存在してもよい。
【0146】
デバイス領域2は、図1に概略的に示されるように、環状周辺限界領域3によって囲まれている。この周辺限界領域3には、デバイスが形成されない。周辺限界領域3は、好ましくは、ウェハWの外周および/またはデバイス領域2に対して同心で配置される。周辺限界領域3の径方向拡張部は、mm範囲、好ましくは、1−3mmである。
【0147】
ウェハWは、表面1の反対側にある裏面6を更に有する(図1を参照)。
【0148】
ウェハWの表面1には、複数の凹部7が形成されている。複数の凹部7の各々は、分割ライン11の、それぞれの一つに沿って延びている。凹部7は、ウェハWの厚さの一部に沿って延びる、トレンチ、溝、切断部(例えば、切断部の一部)でもよい。たとえば、凹部7は、分割ライン11に沿ってウェハ材料を除去することによって、例えば、ブレードダイシング、鋸引きのような機械的切断、および/または、レーザ切断、および/または、プラズマ切断および/またはエッチング(例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング)、および/または、光リソグラフィ又は電子ビームリソグラフィのようなリソグラフィによって形成されてもよい。凹部7は、ウェハWの平坦面から内側に延びている。
【0149】
次に、図1図8を参照して、本発明の実施形態に従うウェハWを処理する方法を説明する。
【0150】
保護フィルム4が、図1に示されるように準備される。たとえば、保護フィルム4は、5〜200μmの範囲の厚さを有してもよい。保護フィルム4は、ポリオレフィンから形成される。たとえば、保護フィルム4は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)から形成されてもよい。保護フィルム4は、表の面4aと、その反対側の裏の面4bとを有する(図1を参照)。
【0151】
接着層9は、保護フィルム4の表の面4aの一部に加えられる。特に、接着層9は、環状形状を有し、保護フィルム4の表の面4aの周囲または周辺領域のみに設けられる。周囲または周辺領域は、保護フィルム4の表の面4aの中央領域を囲む。他の実施形態において、接着層9は、省略されている。この場合、保護フィルム4の表の面4aは、保護フィルム4の表の面4aが表面1と接触する全体区域においてウェハWの表面1と直接接触してもよい。
【0152】
図1は、ウェハWの表面1に保護フィルム4を加えるステップを例示する。
【0153】
図1に示されるように、環状接着層9は、環状フレーム25の内径より大きな外径を有する。さらに、環状接着層9は、ウェハWの外径より小さいが、デバイス領域2の外径より大きな内径を有する。このため、信頼性良く確保されるのは、何もデバイスが形成されていないウェハWの表面1上の周辺限界領域3とだけ接着層9の接着材が接触するようになることである。
【0154】
ウェハWに保護フィルム4を加える前に、接着層9によって保護フィルム4の周辺部分が環状フレーム25に装着される。環状フレーム25は、半導体サイズの環状フレームでもよい。その後、図1の矢印によって表示されるように、保護フィルム4がウェハWの表面1に加えられ、保護フィルム4は、接着層9によって表面1の周辺部分に接着される。
【0155】
接着層9を形成する接着材は、熱、UV線、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。このように、処理後、特に簡単に保護フィルム4をウェハWから取り外すことができる。
【0156】
特に、接着材料は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂でもよい。接着材の為のUV硬化型樹脂の好ましい実施例は、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマーである。
【0157】
さらに、接着材は、例えば、水溶性樹脂でもよい。
【0158】
保護フィルム4はウェハWの表面1に加えられるので、保護フィルム4の表の面4aの中央領域、すなわち、環状接着層9の内側の表の面4aの領域は、ウェハWの表面1と直接接触する(図2を参照)。そのため、保護フィルム4の表の面4aの中央領域とウェハWの表面1との間には、どのような材料も、特に、接着材が存在しない。
【0159】
その後、圧力が保護フィルム4に加えられるので、保護フィルム4は、図3及び図4を参照して更に後述されるように、凹部7の深さの少なくとも一部に沿って、凹部7の中に入る。圧力を加えることによって、保護フィルム4は、保護フィルム4の表の面4aの中央領域においても、ウェハWの表面1に付けられる。保護フィルム4およびウェハWを付ける力は、圧力を加えることによって発生される。
【0160】
本実施形態において、圧力を保護フィルム4に加えるステップは、保護フィルム4を基板の表面1に加える間および/または加えた後、保護フィルム4に真空を加える工程から成る。真空が保護フィルム4に加えられるので、保護フィルム4は、凹部7の深さの少なくとも一部に沿って、凹部7に入る。このように、保護フィルム4が、凹部7の深さの少なくとも一部に沿って、凹部7に入ることが特に信頼性良く確保される。真空は、真空チャンバ(図示せず)のような真空マウンタ内で加えられてもよい。
【0161】
任意で、保護フィルム4は、ウェハWの表面1に保護フィルム4を加える間および/または加えた後に加熱されてもよい。この場合、真空は、保護フィルムを加熱する間および/または加熱する前および/または加熱した後に、保護フィルムに加えられてもよい。
【0162】
保護フィルム4およびウェハWを付ける力は、加熱処理によって発生されてもよい。ウェハWに保護フィルム4を付けるステップは、加熱処理自体および/または保護フィルム4を冷却させる後処理で生じてもよい。
【0163】
保護フィルム4は、加熱処理によって軟化されてもよい。保護フィルム4は、(例えば、その初期温度への)冷却の際、例えば、ウェハWへの形状適合および/または材料結合を生じさせる為に再び硬化されてもよい。加熱処理によって保護フィルムを軟化することによって、保護フィルム4が凹部7の深さの少なくとも一部に沿って凹部7に入ることを特に信頼性良く確保できる。
【0164】
ウェハWの表面1に保護フィルム4を付ける処理の結果は、図2に示されている。図3及び図4は、本発明の実施形態およびその変形実施例によるウェハWを処理する方法において、図2の囲まれた領域の拡大横断面図である。
【0165】
本実施形態の方法において、凹部7は、ウェハの厚さの約50%の深さ、即ち、ウェハWの厚さ方向に沿った拡張部を有する。保護フィルム4は、図3に例示されるように、凹部7の深さの約50%の深さまで凹部7に入る。
【0166】
本実施形態の方法の変形実施例において、ウェハWの表面1には何もデバイスが存在しない。その代わり、連続した傷つきやすい表面層29が表面1に形成されている(図4を参照)。さらに、凹部7の深さは、図3に示された実施形態の深さより著しく小さい、すなわち、ウェハの厚さの約10%である。保護フィルム4は、図4に示されるように、凹部7の全体の深さに沿って凹部7に入る。
【0167】
ウェハWの表面1に保護フィルム4を付けた後、図5の矢印によって表示されるように、ウェハの厚さを調節する為にウェハWの裏面6が研削される。研削処理中、表面1は、保護フィルム4によって損傷および汚染から信頼性良く保護される。特に、保護フィルム4は凹部7の深さの一部に沿って凹部7に入っていることから、保護フィルム4は、その位置でウェハWを特にしっかりと保持することができ、ダイのずれのような移動またはずれが生じない。このため、切断、ダイシング、ピックアップステップのような後処理および取扱いステップの精度は著しく高められる。
【0168】
任意で、本実施形態の方法は、ウェハWの裏面6の研磨(例えば、乾式研磨、化学機械的研磨(CMP))および/またはプラズマエッチングのようなエッチング(例えば、ウェットエッチング又はドライエッチング)を更に含んでもよい。研磨および/またはエッチングのステップは、研削後に行われてもよい。研磨および/またはエッチングのステップは、ウェハWを分割する前に行われてもよい。
【0169】
図5に例示された研削ステップは、分離された個々のダイ30にウェハWを分割するステップ(図7を参照)が続いてもよい。特に、図6の矢印によって表示されるように、ウェハWは、完全にウェハWを分割するために、ダイシングブレード32を使用することによって、分割ラインに沿って裏面6から切断される。この分割ステップの結果は、図7に示されている。あるいは、ウェハWは、たとえば、レーザ切断処理によって、プラズマ切断処理によって、あるいは、前述されたように、研削処理前のダイシングによって、切断されてもよい。
【0170】
ウェハWの分割処理において、保護フィルム4を凹部7へと部分的に拡張させることによって、得られるダイ30の側壁に対しても、確実な保護を与える。さらに、ウェハWが分割された後、ダイ30は、保護フィルム4によって、しっかりと、それらの位置に保持されるので、ダイ30をピックアップする後処理を非常に容易にする。特に、このピックアップステップを、単純な方法で、特に高精度で行うことができる。
【0171】
他の実施形態において、ウェハW又は他の形式の基板は、前述されてきたように、異なる方法で分割されてもよい。たとえば、ウェハWまたは他の形式の基板を切断するステップは、ウェハWまたは基板を研削する前に行われてもよい。また、一部の実施形態において、ウェハWまたは他の形式の基板の研削は実行されない。
【0172】
ウェハWを別個のダイ30に分割した後、ダイ30は、図8に示されるように、ピックアップデバイス40を使用して、個々にピックアップされる。ピックアップデバイス40は、ピックアップ用コレット42およびプッシュアップ用ピン44を備える。ピックアップ処理において、ピックアップされるダイ30は、図8の矢印によって表示されるように、プッシュアップ用ピン44によって、保護フィルム4の裏の面4bの側から最初に押し上げられる。このように、ダイ30は上方に持ち上げられるので、ピックアップ用コレット42によって容易にアクセス可能である。その後、ピックアップ用コレット42は、例えば真空吸引によって、ダイ30をピックアップし、図8の他の矢印によって表示されるように、分割されたウェハWの残りから、それを取り外す。
【0173】
前述されてきたように、保護フィルム4はウェハWに付けられるので、接着層9の接着材は、何もデバイスが形成されないウェハWの表面1の周辺限界領域3のみと接触するようになる。デバイス領域2には何も接着材が存在しない。そのため、ダイ30のピックアップステップは大幅に容易になる。一例を挙げると、保護フィルム4からダイをピックアップする為に必要な力は、著しく低下する。このため、ピックアップステップは、単純な方法で実行可能であり、ダイ30に対する機械的損傷の危険性は、減少されるか、さらには排除される。次の例を挙げると、ダイ30の接着材残渣による汚染は確実に防止される。
【0174】
本実施形態の方法において、保護フィルム4は、ウェハ処理の最初から最後まで、ウェハWに付けられたままである。ウェハ裏面6の研削するステップ(図5)、ウェハWをダイに分割するステップ(図6)、ダイ30をピックアップするステップ(図8)には同一の保護フィルム4が使用される。したがって、ウェハWから保護フィルムを剥がすステップおよびウェハWを異なるフィルム又はテープに再装着するステップは不要である。このため、処理方法は著しく単純化される。さらに、必要なウェハ取扱い及び処理ステップの数が減少するため、ウェハWに対する損傷の危険性を更に減少させることができる。また、このアプローチは、たとえば、処理時間および費用という点で、特に効率が良い。
【0175】
本実施形態の方法では、保護フィルム4だけを含む単一層の配置が使用される。
【0176】
他の実施形態では、クッション層(図示せず)が保護フィルム4の裏の面4bに付けられた構成が使用される。任意で、ベースシート(図示せず)がクッション層の裏の面に付けられてもよい。クッション層および/またはベースシートは、前述した特性、特徴、機能を有してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8