【実施例1】
【0019】
まず、本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は本発明の
中空パッケージの製造方法による中空パッケージの説明図で、
図1(a)は、リッドと接着剤層を除去した状態の平面図を、
図1(b)は
図1(a)のXY面における断面図で、リッドと接着剤層を取り付けた状態の断面図を、
図1(c)は側面図をそれぞれ示している。
図1(a)、(b)に示すように、チップ搭載部1上に、SAWデバイス、MEMSデバイス等のチップ2が実装されている。本実施例では、チップ搭載部1はリードフレームで形成しており、チップ搭載部1には4方向に延びる吊りピンが形成されている。チップ2が実装されたチップ搭載部1の周囲には、壁部3が形成されている。壁部3の上面には、壁部3の両側面側に連通する段差部4が形成されている。
図1(a)に示す例では、段差部4はチップ搭載部1の周囲に形成された四辺の壁部3上にそれぞれ一か所ずつ形成されている。一例として、段差部4の幅は0.2mm程度、深さは0.05mm程度とすることができる。チップ搭載部1に搭載されたチップ2は、ワイヤ5等の接続手段によってリード6に接続されている。チップ搭載部1とリード6の間、リード6と隣接するリード6との間には、例えばエポキシ系樹脂を充填し、リード間等が固定されている。
【0020】
チップ搭載部1上に実装されたチップ2の表面側は、中空構造となっており、チップ搭載部1に対向するように、リッド7が取り付けられている。リッド7は、壁部3の上面に接着剤層8を介して取り付けられた構造となっている。本実施例では
図1(b)、(c)に示すように、接着剤層8が段差部4内に入り込み、気密構造が形成されている。
【0021】
本発明の
中空パッケージの製造方法による中空パッケージにおいて特徴的な構造となっている段差部4は、以下に示す本発明の中空パッケージの製造方法に従う場合、重要な構成要件となる。
【0022】
次に本発明の中空パッケージの製造方法について説明する。
図2(a)は裏面にバックテープ9を貼り合わせた集合基板10の一部平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のXY面における断面図を示している。
図2に示すように、集合基板10は
図1で説明したチップ搭載部1やリード6等が複数個連続した形状となっており、その周囲は外周部11が形成されている。
【0023】
集合基板10は、半導体装置の製造工程で一般的に使用しているリードフレームを用い、チップ搭載部1とリード6の間やリード6と隣接するリード6との間を樹脂封止すると同時に、壁部3及び外周部11を形成する。この封止樹脂は、たとえばトランスファーモールド金型内に、リードフレームをセッティングして樹脂を流し込んで硬化させることにより行われる。具体的には、チップ搭載部1形成予定領域には封止樹脂が流入させず、壁部3形成予定領域、チップ搭載部1とリード6の間、リード6と隣接するリード6との間、外周部11に封止樹脂が流れ込むようにトランスファーモールド金型を設計する。また、段差部4の形成予定領域には、金型のオス側を凸形状に形成しておくことにより、一括封止した後、
図2に示すように封止樹脂からなる壁部3とその上面に凹形状に切り欠かれた段差部4が形成される。一例として、壁部3の上面の幅は、リッド7が接着剤層8により十分に接着する必要があるために、0.4mm以上とすることが望ましい。また壁部3及び外周部11の高さは、チップ2の高さより更に0.15mm高いことが望ましい。また、チップ搭載部1とリード6の裏面に貼り付けたバックテープ9を一括封止後に剥離する。
【0024】
段差部4は壁部3及び外周部11の両側面側に連通して形成されている。このような構造とすることで、後述する製造工程において、減圧雰囲気下で集合基板10の外周部11にリッド7を接着剤層8を介して隙間なく貼り合わせたとき、各チップ搭載部1は壁部3上の段差部4で連通し、それぞれの空間を均一の減圧状態で保つことができる。なお、
図2に示す例では、段差部4はチップ搭載部1を構成する4面に形成されているが、必ずしも4面に形成することは必須ではない。
【0025】
また、外周部11における段差部4の形状は、前述の形状に必ずしも限定はされず、他の形状をしていてもよい。具体的には、例えば外周部11に形成された段差部4は、外周部11の上面に両側面側に連通しないように形成してもよい。このような構造とすることで、後述する製造工程において、減圧雰囲気下で集合基板10の外周部11にリッド7を貼り合わせたときに、減圧雰囲気から常圧にしても、外周部11の上面に形成した段差部4から接着剤層8が流れ出ることを防ぐことができる。一方、各チップ搭載部1は壁部3上の段差部4で連通し、それぞれの空間を均一の減圧状態で保つことができる。
【0026】
次に、集合基板10のチップ搭載部1にチップ2を実装し、ワイヤ5によりチップ2上に形成されている電極と集合基板10のリード6とを電気的に接続する(
図3)。以下の説明では、チップ搭載部1が3個つながった状態の集合基板10の断面図を用いて説明する。またこのとき、ワイヤボンダー装置に用いられるキャピラリーは、封止樹脂からなる壁部3との接触を避けるために先端部が細いディープアクセス等を用いることで、チップ搭載部1の面積に近いチップを搭載することが可能である。
【0027】
次に、片面に接着剤層8を形成し、反対面にダイシングシート12を貼り合わせたリッド7を用意する。さらにこのリッド7は、ガラスエポキシ樹脂等の有機−無機薄膜の他、Fe−Ni系合金からなる金属膜を用いることができる。また接着剤層8は、エポキシ樹脂系の熱硬化型樹脂の他、熱硬化型での樹脂を用いることができ、例えばフェノール樹脂系やシリコーン樹脂系等を用いてもよい。接着剤層8の厚さは、段差部4内に十分に入り込むことができればよく、より好ましくは段差部4の深さより0.05mm程度厚みがあればよい。ダイシングシート12は、一般的に半導体装置の製造工程で使用するものを使用することができる。例えば、塩化ビニル(PVC)やポリオレフィン(PO)等からなる基材を用いることができる。また、ダイシングシート12は予めリング状の治具で保持させてから、リッド7の片面に貼り合わせる。上記構成からなるリッド7を、予め集合基板10を覆いかつ外周部11より小さくならない大きさに準備しておき、減圧装置13内で接着剤層8を介して壁部3及び外周部11の上にリッド7を載置する。このとき、集合基板10は、ホットプレート14の上に載置する(
図4)。
【0028】
次に、外周部11とリッド7を貼り合わせる。具体的には、まず減圧装置13内の空気を追い出し、減圧雰囲気(1.0×10
4Pa程度)とする。また接着剤層8の接着剤としては、流動性の少ない樹脂を選択する。一例として、ナガセケムテックス株式会社製のA2029を用いることができる。このときは、ホットプレート14を80℃に加熱して、集合基板10、接着剤層8及び全体を加熱する。接着剤層8が加熱され、軟化状態になったら、ダイシングシート12の上からローラー15を用いて、圧着させながら外周部11の上面に接着剤層8を密着させ、段差部4内に接着剤層8を入り込ませる。また、接着剤層8は、他の接着剤からなる選ばれた接着剤を用いてもよい。その場合、使用する接着剤の軟化温度に応じてホットプレート14の温度を、例えば、150℃に変更してもよい。本工程では、段差部4が外周部11の上面において、両側面側に連通しているために、ホットプレート14による集合基板10、接着剤層8及び全体の加熱の後に、減圧装置13内を減圧雰囲気としてもよい。
【0029】
一方、先に述べた外周部11の上面の段差部4が、両側面側まで連通せずに途中まで形成されている場合は、まず減圧装置13内を減圧雰囲気としてから、接着剤層8を介して壁部3及び外周部11の上にリッド7を載置した後に、ローラー15を用いて圧着させながら、段差部4内に接着剤層8を入り込ませて貼り合わせてもよい。
【0030】
ローラー15を用いて、集合基板10の片側にある一辺(図面右側)の外周部11を圧着した後、ローラー15を
図5の左方向へ移動させ、外周部11を圧着する(
図5、6)。また図示しない別の外周部11にも圧着して、外周部11(四辺)とリッド7を隙間なく貼り合わせる。このときに、集合基板10の反り等により、壁部3の上面の段差部4内に接着剤層8が入り込まない部分があっても構わない(
図6)。本工程における目的は、減圧装置13内で外周部11とリッド7を接着剤層8により接着させて、集合基板10内の中空構造部分を減圧状態にすることであるから、先述で説明した外周部11における段差部4の構造に制限はない。
【0031】
次に、減圧装置13内に大気を入れて常圧に戻す(
図7)。このとき集合基板10内における各中空構造は、外周部11とリッド7が接着層8により接着しているので、減圧状態である。また、各中空構造はそれぞ壁部3の上面の段差部4によって連通しているため、各中空構造の圧力は同じとなっている。このような状態で常圧に戻すと、中空構造の外側は常圧であることから、その圧力差によりリッド7は中空構造側に押し込まれる。このようにすると、集合基板10の反り等によりローラー15を用いても壁部3や壁部3の上面に形成された段差部4とリッド7を接着層8を用いて密着させることができなかったところでも、接着層8は加熱により軟化状態であるので、圧力差によりリッド7と段差部4を接着させることができる。このとき外周部11の上面に形成された段差部4の長さは、接着剤層8の接着剤がパッケージ外側からの圧力差により中空構造側に押し流されない程度としておけばよい。
【0032】
また、先に述べた段差部4が外周部11の両側面側まで連通せずに途中まで形成されている場合は、外周部11の外側面には段差部4が存在しないので、接着剤層8の接着剤が中空構造側に押し流されることはない。この後、減圧装置13内から集合基板10を取り出す(
図8)。
【0033】
次に、ダイシング装置を用いて、水をかけながらダイシングソー16を回転させて切断させることにより個片化する(
図9)。即ちダイシングシート12側を下側にして、ダイシングソー16を用いてダイシングシート12と反対側から集合基板10、外周部11または壁部3、接着剤層8及びリッド7を切断することにより、個片化された中空パッケージとすることができる。
【0034】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、段差部4は壁部3及び外周部11一箇所につき、上面に一箇所ずつとしたが、二箇所以上設けてもよい。または、壁部3や外周部11の上面ではなく、各々が交差する角の上であっても構わない。また、段差部4の形状を凹形状としたが、凸形状、U字形状またはV字形状でもよい。