(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)、多価イソシアネート系化合物(a2)およびポリエステル系ポリオール化合物(a3)の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を含有し、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)がエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であり、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)が、イソフタル酸、およびイソフタル酸のエステル形成性誘導体の少なくとも一方由来の構成成分を含有するものである活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなるコーティング剤であって、金属薄膜のアンダーコート剤として用いることを特徴とするコーティング剤。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0026】
<ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)>
本発明
に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)、多価イソシアネート系化合物(a2)およびポリエステル系ポリオール化合物(a3)の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を含有するものである。ここで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0027】
〔水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)〕
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)はエチレン性不飽和基を2個以上有することを特徴とするものであり、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイル−オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2個含有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上含有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
これらのなかでも、アンダーコート層の硬度付与の点から、エチレン性不飽和基を3個以上含有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、特に好ましくはエチレン性不飽和基を3〜7個含有することが好ましく、更にはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
また、本発明においては、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)の水酸基価が40mgKOH/g以上であることが、金属薄膜層、特には銅薄膜層との密着性の点で好ましく、特に好ましくは60〜400mgKOH/g、さらに好ましくは75〜300mgKOH/gである。かかる水酸基価が高すぎると硬度低下や耐擦傷性低下を招く傾向がある。
【0030】
〔多価イソシアネート系化合物(a2)〕
上記の多価イソシアネート系化合物(a2)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系ポリイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。これら多価イソシアネート系化合物(a2)は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
これらのなかでも、黄変が少ない点で、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボネンジイソシアネート等の脂環式系ジイソシアネートが好ましく、特に好ましくは脂環式系ジイソシアネートが好ましく、更に好ましくは、イソホロンジイソシアネートである。
【0032】
〔ポリエステル系ポリオール化合物(a3)〕
本発明
に用いるポリエステル系ポリオール化合物(a3)は、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、および多価アルコールと多価カルボン酸と環状エステルとの3種類の成分による反応物の少なくとも一方からなる化合物である。
【0033】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール等の脂肪族ジオール類;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環族ジオール類;ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールE等)、4,4’−チオジフェノール、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、o−ジヒドロキシベンゼン、m−ジヒドロキシベンゼン、p−ジヒドロキシベンゼン、2,5−ナフタレンジオール、p−キシレンジオール及びそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール類等の2価のアルコールや、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等の3価以上のアルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0034】
なかでも、脂肪族ジオール類が、汎用性、柔軟性および密着性の点で好ましく、更に好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、1,4−テトラメチレンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールである。
【0035】
本発明においては、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)が、イソフタル酸およびイソフタル酸のエステル形成性誘導体の少なくとも一方由来の構成成分を含有することが、適度な硬度付与、金属薄膜層の外観良化および金属薄膜への密着性の点から必要である。
【0036】
なお、本発明において、「カルボン酸」との用語は、カルボン酸に加えて、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステルなどのカルボン酸の誘導体を含むものであり、これらカルボン酸の誘導体を「エステル形成性誘導体」と記載する。具体的なカルボン酸に関しても同様である。
【0037】
また、多価カルボン酸として、上記イソフタル酸およびイソフタル酸のエステル形成性誘導体以外の多価カルボン酸を用いてもよく、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、p−フェニレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、原料としての汎用性、柔軟性および密着性の点から、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、特にはアジピン酸が好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
多価カルボン酸全体に対する、イソフタル酸およびイソフタル酸のエステル形成性誘導体の少なくとも一方の含有割合は、5重量%以上であることが好ましく、特には10重量%以上、更には20重量%以上であることが好ましい。かかる含有割合が少なすぎると硬度が低下したり、アンダーコート層上に設けた金属薄膜層の外観が不良となる傾向がある。
【0039】
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。これらの環状エステルは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0040】
上記ポリエステル系ポリオール化合物(a3)は、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との混合物(場合によりさらに、環状エステル化合物との混合物)および触媒を適宜の反応器に仕込み、通常150〜260℃に加熱することにより、副生成物である水又はメタノールを留去しながら、エステル化反応又はエステル交換反応を進行させることにより得ることができる。
【0041】
ポリエステル系ポリオール化合物(a3)の含有する水酸基の数は、水酸基の数が多すぎると反応中にゲル化が起こりやすくなる傾向があることから、好ましくは2〜5個、特に好ましくは2〜3個、更に好ましくは金属薄膜層とアンダーコート層との密着性に優れる点から2個である。
【0042】
また、上記ポリエステル系ポリオール化合物(a3)の数平均分子量が500〜50,000であることが好ましく、特には700〜10,000、更には1,000〜5,000であることが好ましい。かかる数平均分子量が小さすぎると密着性が不足する傾向があり、大きすぎると硬度不足になりやすくなる傾向がある。
【0043】
なお、上記の数平均分子量は、例えば、JIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づく方法や、高速液体クロマトグラフィーにより求めることができる。
高速液体クロマトグラフィーにおいては、高速液体クロマトグラフ(日本ウォーターズ社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10
7、分離範囲:100〜2×10
7、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量を測定することができる。
【0044】
本発明
に用いる、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、上記(a1)〜(a3)成分を反応させることにより得られるが、具体的には次のようにして製造することができる。
【0045】
例えば、
(i)上記の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)、多価イソシアネート系化合物(a2)、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)を、反応器に一括または別々に仕込み反応させる方法、
(ii)ポリエステル系ポリオール化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)とを予め反応させて得られる反応生成物に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)を反応させる方法、
(iii)多価イソシアネート系化合物(a2)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)とを予め反応させて得られる反応生成物に、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)を反応させる方法、
等が挙げられるが、反応の安定性や副生成物の低減等の点から(ii)の方法が好ましい。
【0046】
上記(ii)の方法について、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)との反応には、公知の反応手段を用いることができる。その際、例えば、多価イソシアネート系化合物(a2)中のイソシアネート基:ポリエステル系ポリオール化合物(a3)中の水酸基とのモル比を通常2n:(2n−2)(nは2以上の整数)程度にすることにより、イソシアネート基を残存させた末端イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を得ることができ、該化合物を得た後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との付加反応を行うことができる。
【0047】
上記ポリエステル系ポリオール化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)とを予め反応させて得られる反応生成物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との付加反応にも、公知の反応手段を用いることができる。
【0048】
上記反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との反応モル比は、例えば、多価イソシアネート系化合物(a2)のイソシアネート基が2個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)が1:2程度であり、多価イソシアネート系化合物(a2)のイソシアネート基が3個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)が1:3程度である。
【0049】
この反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が得られる。
【0050】
かかるポリエステル系ポリオール化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)との反応、更にその反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ−n−ブチル錫、オクチル酸錫等の有機金属化合物、オクテン酸亜鉛、オクテン酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩、トリエチルアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N−エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2−エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒、無機ジルコニウム、有機ジルコニウム、ジルコニウム単体等のジルコニウム系触媒、2−エチルヘキサン酸亜鉛/ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等が挙げられ、なかでも、ジブチル錫ジラウレート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。なお、これらの触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
また、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)との反応、更にその反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。
【0052】
上記の反応温度は、通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、通常2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0053】
かくして上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が得られる。
【0054】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、特には5,000〜50,000、更には10,000〜30,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると密着性が不足する傾向にあり、大きすぎると硬度不足となる傾向がある。
【0055】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450×1本、ACQUITYAPC XT 200×1本、ACQUITY APC XT 45×2本の4本直列を用いることにより測定される。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の製造に際しては、前述のとおりイソシアネート基と反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば酢酸エチルあるいは酢酸ブチルを20重量%加えておくことができ、そうして得られた固形分80重量%の希釈済みウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の粘度については、20℃における粘度が、500〜500,000mPa・sであることが好ましく、特には1,000〜200,000mPa・sであることが好ましい。かかる粘度が高すぎるとハンドリング性が低下する傾向があり、低すぎてもハンドリング性が低下する傾向がある。なお、粘度の測定法はB型粘度計による。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)のエチレン性不飽和基量としては、0.05〜8mmol/gであることが好ましく、より好ましくは2〜7mmol/g、特には3〜6mmol/gである。エチレン性不飽和基含有量が多すぎると金属薄膜への密着性不足となる傾向があり、少なすぎると硬度が低下したりタックが残りやすくなるとなる傾向がある。
【0058】
なお、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)のエチレン性不飽和基含有量は、例えば、下記式(1)で計算することができる。
〔式(1)〕ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)のエチレン性不飽和基含有量(mmol/g)= 水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)のエチレン性不飽和基含有量(mmol/g)×(ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)中の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)の重量/ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の重量(A))
【0059】
〔光重合開始剤(B)〕
本発明
に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、更に光重合開始剤(B)を含有させることが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させることが可能となる点で好ましい。
【0060】
上記光重合開始剤(B)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類等が挙げられる。なお、これら光重合開始剤(B)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
これら光重合開始剤(B)のなかでも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。なかでも特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0062】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0063】
上記光重合開始剤(B)の含有量については、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)100重量部に対して、1〜20重量部であることが好ましく、特には2〜10重量部、更には3〜7重量部であることが好ましい。上記光重合開始剤(B)の含有量が少なすぎると、硬化不良となる傾向があり、多すぎると塗膜が黄変する傾向がある。
【0064】
かくして本発明
に用いる、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られるが、必要に応じて更に、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤等を配合することができる。
【0065】
表面調整剤としては特に限定されず、例えば、アルキッド樹脂等をあげることができる。
かかるアルキッド樹脂は、塗布時の造膜性を付与する作用や、金属薄膜面との接着性を上げる作用を有する。
【0066】
レベリング剤としては、塗液の基材への濡れ性付与作用、表面張力の低下作用を有するものであれば、公知一般のレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン変性樹脂、フッ素変性樹脂、アルキル変性の樹脂等を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0067】
重合禁止剤としては、例えば、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール等が挙げられる。なかでもメトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0068】
なお
、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を製造するにあたり、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)と光重合開始剤(B)等の任意成分との混合方法については、特に限定されるものではなく、種々の方法により混合することができる。
【0069】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の含有割合としては、10重量%以上(固形分)であることが好ましく、特には20重量%以上、更には40重量%以上であることが好ましい。かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の含有割合が低すぎると、塗工適性が低下する傾向がある。
【0070】
かくして得られ
た活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これを含有してなるコーティング剤として有用であり、とりわけ金属薄膜のアンダーコート剤として有用であり、なかでもITO代替金属薄膜メッシュフィルムのアンダーコート剤として有用である。
【0071】
<コーティング剤>
上記コーティング剤には
、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物以外に、増感剤、シリカ、フィラー、電解質塩、染顔料、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、ゲル化剤、シランカップリング剤、安定剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色防止剤、油、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤、有機微粒子、無機微粒子、高分子化合物(ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)以外のウレタン(メタ)アクリレート化合物、アクリル樹脂、(メタ)アクリレート基を有しないポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等)等を配合することも可能である。
【0072】
また、本発明のコーティング剤は、必要に応じて、有機溶剤を配合し、粘度を調整して使用することも可能である。かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレン等の芳香族類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これら上記の有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
2種以上を併用する場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類とメチルエチルケトン等のケトン類やメタノール等のアルコール類との組み合わせや、メチルエチルケトン等のケトン類とメタノール等のアルコール類の組み合わせ、メタノール等のアルコール類の中から2種以上を選び併用することが、塗膜外観の点で好ましい。
【0074】
本発明のコーティング剤は、上記有機溶剤を用いて、固形分を通常20〜50重量%に調整し、基材に塗布することができる。
また、20℃における粘度は、通常50〜1,000mPa・sである。なお、粘度の測定法はB型粘度計による。
【0075】
また、本発明のコーティング剤は、必要に応じて、上記有機溶剤に代えてエチレン性不飽和基を含有する不飽和化合物を反応性希釈剤として配合し、粘度を調整して使用することも可能である。この場合、VOC(揮発性有機化合物)規制対応などの環境対応、乾燥工程を省略できることによる生産効率の向上、熱や溶剤に対して弱い素材への塗工性の向上などの利点がある。
【0076】
上記のエチレン性不飽和基を含有する不飽和化合物として、エチレン性不飽和基を1個有する不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性−グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、グリシジル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(フォルマル)(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0077】
上記のエチレン性不飽和基を含有する不飽和化合物として、エチレン性不飽和基を2個有する不飽和化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイル−オキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0078】
上記のエチレン性不飽和基を含有する不飽和化合物として、エチレン性不飽和基を3個以上有する不飽和化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
上記の反応性希釈剤としてのエチレン性不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、真空蒸着時に未反応分の揮発が少なく、より均一な金属薄膜層を得ることができる点から、エチレン性不飽和基を2個または3個以上有する不飽和化合物であることが好ましく、更にはエチレン性不飽和基を3個以上有する不飽和化合物であることが好ましい。
【0080】
上記反応性希釈剤の含有量については、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)100重量部に対して、通常10〜300重量部の範囲で配合し、粘度の調整を行うことができる。また、反応性希釈剤と上記有機溶剤との併用も可能である。
【0081】
本発明のコーティング剤は、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コート剤、アンカーコート剤、磁性粉コートバインダー、サンドブラスト用被膜、版材など、各種の被膜形成材料として有用である。なかでも、金属薄膜用アンダーコート剤として用いた場合には、金属薄膜層、特には銅薄膜層との密着性に優れ、硬度や耐擦傷性にも優れるアンダーコート層を形成することができる。
【0082】
<アンダーコート層付き基材フィルム>
上記アンダーコート層付き基材フィルムは、上記コーティング剤を基材フィルムに塗工した後、必要に応じて乾燥工程を経て溶剤を除去し、その後、活性エネルギー線を照射し硬化させることにより得られる。
【0083】
上記の基材フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂等から製膜されたフィルムが挙げられる。
【0084】
本発明のコーティング剤を基材フィルムに塗工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロール、スピン、バーコーター、アプリケーター、スクリーン印刷等のようなウエットコート法が挙げられる。
【0085】
また、溶剤を除去する際の乾燥工程の条件は特に限定されないが、通常、60〜90℃程度で、1〜5分間程度である。
【0086】
上記活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行う場合は、光重合開始剤(B)を用いなくても硬化し得る。
【0087】
紫外線照射により硬化させる方法としては、例えば、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いて、30〜3000mJ/cm
2程度照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0088】
塗工膜厚(硬化後の膜厚)としては、通常、0.5〜50μmであり、好ましくは0.7〜20μm特には1〜10μmであることが好ましい。
【0089】
<金属薄膜層付き積層フィルム>
本発明の金属薄膜層付き積層フィルムは、上記アンダーコート層付き基材フィルムのコート層上に、金属薄膜層を成膜することにより得られる。
【0090】
金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、スズ(Sn)等の金属、またはかかる金属の酸化物等を用いることができる。これらのなかでも、銅(Cu)、銀(Ag)が好ましく用いられ、特に銅(Cu)が、柔軟性、導電性、コスト、入手のし易さ等の点から好ましい。
【0091】
金属薄膜層の成膜方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、抵抗加熱蒸着法、高周波誘導加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法などの一般的な成膜方法を用いることができる。なかでも、汎用性、生産性の点で、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法が好ましく用いられる。
【0092】
金属薄膜層の厚みは、通常50〜2,000nm(500〜20,000Å)程度である。
【0093】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、金属薄膜層、特には銅薄膜層との密着性に優れ、アンダーコート剤として用いた際に、金属薄膜層の外観にも優れ、硬度や耐擦傷性にも優れたコート層を形成することができる。そのため、ITO代替銅薄膜メッシュフィルム等の金属薄膜のアンダーコート剤として有用である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」は重量基準を意味する。
また、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量および粘度は、前述の方法にしたがって測定した。
【0095】
実施例及び比較例に先立って、下記の各成分を準備した。
【0096】
<<ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)>>
[製造例1]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート112g(0.50モル)、ポリエステルポリオール442g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸,イソフタル酸、多価アルコール成分:1,6−ヘキサメチレンジオール、水酸基価63.8mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量1760、0.25モル)、希釈溶媒として酢酸エチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.8%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価117mgKOH/gであるペンタエリスリトールのアクリル酸付加物247g(0.51モル)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A−1)(重量平均分子量:12,000、粘度:29,000mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:3.25mmol/g)を得た。
【0097】
[製造例2]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート81g(0.37モル)、ポリエステルポリオール315g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸,イソフタル酸、多価アルコール成分:1,6−ヘキサメチレンジオール、水酸基価65.2mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量1720、0.18モル)、希釈溶媒として酢酸ブチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.6%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価52mgKOH/gであるジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物404g(0.37モル)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A−2)(重量平均分子量:13,000、粘度:5,800mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:5.05mmol/g)を得た。
【0098】
[製造例3]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン72g(0.37モル)、ポリエステルポリオール319g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸,イソフタル酸、多価アルコール成分:1,6−ヘキサメチレンジオール、水酸基価65.2mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量1720、0.19モル)、希釈溶媒として酢酸ブチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.6%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価52mgKOH/gであるジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物410g(0.38モル)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A−3)(重量平均分子量:17,000、粘度:27,000mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:5.12mmol/g)を得た。
【0099】
[製造例4]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート106g(0.48モル)、ポリエステルポリオール409g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸,イソフタル酸、多価アルコール成分:1,6−ヘキサメチレンジオール、水酸基価65.2mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量1720、0.24モル)、希釈溶媒として酢酸ブチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.8%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価96mgKOH/gであるジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物285g(0.49モル)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A−4)(重量平均分子量:18,000、粘度:190,000mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:3.42mmol/g)を得た。
【0100】
[製造例5]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート138g(0.62モル)、ポリエステルポリオール289g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸,イソフタル酸、多価アルコール成分:1,6−ヘキサメチレンジオール、水酸基価121.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量927、0.31モル)、希釈溶媒として酢酸エチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が4.2%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価96mgKOH/gであるジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物373g(0.64モル)、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A−5)(重量平均分子量:14,000、粘度:20,000mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:4.48mmol/g)を得た。
【0101】
[製造例6]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート68g(0.30モル)、ポリエステルポリオール309g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:イソフタル酸、多価アルコール成分:3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、水酸基価55.2mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量2033、0.15モル)、希釈溶媒として酢酸ブチル300g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.9%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価54mgKOH/gであるジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物324g(0.31モル)、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A−6)(重量平均分子量:11,000、粘度:1,200mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:4.62mmol/g)を得た。
【0102】
[比較製造例1]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート222g(1.00モル)、ポリエステルポリオール459g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸,イソフタル酸、多価アルコール成分:1,6−ヘキサメチレンジオール、水酸基価122.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量920、0.50モル)、希釈溶媒として酢酸エチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が4.8%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価483mgKOH/gである2−ヒドロキシエチルアクリレート119g(1.02モル)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A’−1)(重量平均分子量:5,500、粘度:3,500mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:1.28mmol/g)を得た。
【0103】
[比較製造例2]
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート76g(0.34モル)、ポリエステルポリオール344g(直鎖構造2官能、多価カルボン酸成分:アジピン酸、多価アルコール成分:エチレングリコール,1,4−テトラメチレンジオール、水酸基価56.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量2004、0.17モル)、希釈溶媒として酢酸ブチル200g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを仕込み、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.3%以下となった時点で60℃まで冷却し、水酸基価52mgKOH/gであるジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物380g(0.35モル)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.4gを更に仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A’−2)(重量平均分子量:11,000、粘度:10,200mPa・s/20℃、エチレン性不飽和基含有量:4.74mmol/g)を得た。
【0104】
<実施例1>
製造例1にて作製したウレタンアクリレート系化合物(A−1)の樹脂分100部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン社製、商品名:Irgacure184)4部を加え、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。その後、固形分40%となるように酢酸エチルを希釈溶媒として上記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に加えることにより、コーティング剤を得た。
【0105】
<実施例2>
製造例2にて作製したウレタンアクリレート系化合物(A−2)の樹脂分100部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン社製、商品名:Irgacure184)4部を加え、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。その後、固形分40%となるように酢酸ブチルを希釈溶媒として上記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に加えることにより、コーティング剤を得た。
【0106】
<実施例3>
実施例2におけるウレタンアクリレート系化合物(A−2)の代わりに、製造例3にて作製したウレタンアクリレート系化合物(A−3)を用いた他は、製造例2と同様に配合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびコーティング剤を得た。
【0107】
<実施例4>
実施例2におけるウレタンアクリレート系化合物(A−2)の代わりに、製造例4にて作製したウレタンアクリレート系化合物(A−4)を用いた他は、製造例2と同様に配合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびコーティング剤を得た。
【0108】
<実施例5>
実施例1におけるウレタンアクリレート系化合物(A−1)の代わりに、製造例5にて作製したウレタンアクリレート系化合物(A−5)を用いた他は、製造例1と同様に配合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびコーティング剤を得た。
【0109】
<実施例6>
実施例2におけるウレタンアクリレート系化合物(A−2)の代わりに、製造例6にて作製したウレタンアクリレート化合物(A−6)を用いた他は、製造例2と同様に配合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびコーティング剤を得た。
【0110】
<比較例1>
比較製造例1にて作製したウレタンアクリレート系化合物(A’−1)の樹脂分100部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン社製、商品名:Irgacure184)4部を加え、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。その後、固形分40%となるように酢酸エチルを希釈溶媒として上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に加えることにより、コーティング剤を得た。
【0111】
<比較例2>
比較製造例2にて作製したウレタンアクリレート化合物(A’−2)の樹脂分100部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン社製、商品名:Irgacure184)4部を加え、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。その後、固形分40%となるように酢酸ブチルを希釈溶媒として上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に加えることにより、コーティング剤を得た。
【0112】
<<評価用塗膜サンプルの作製>>
実施例1,5および比較例1で調製したコーティング剤を、易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製;コスモシャインA4300、厚み125μm)上に、バーコーターによって塗布し、60℃で3分間乾燥させた後、高圧水銀灯にて積算光量800mJ/cm
2となるように紫外線照射し、コーティング剤を硬化させ、膜厚5μmの塗膜サンプル(アンダーコート層付き基材フィルム)を作製した。
また、実施例2、3、4、6および比較例2で調製したコーティング剤において、塗布後の乾燥時間を90℃で3分間とした以外は上記と同様に実施して、評価用塗膜サンプルを作製した。
以降の評価は上記で得た評価用塗膜サンプルを用いて行った。
【0113】
〔鉛筆硬度〕
上記の評価用塗膜サンプルを用いて、JIS K 5600−5−4に準じて鉛筆硬度を測定し、下記の通り評価した。
(評価基準)
○・・・H以上
△・・・F〜HB
×・・・2B以下
【0114】
〔耐擦傷性〕
上記の評価用塗膜サンプルを用いて、真鍮ブラシにて荷重500gで10往復回塗膜表面を擦り、傷の有無を目視で確認し、下記の通り評価した。
(評価基準)
○・・・傷がなかった
△・・・少し傷があった
×・・・多数の傷があった
【0115】
〔金属密着性〕
上記の評価用塗膜サンプルのアンダーコート層上に、抵抗加熱式真空蒸着装置(サンユー電子社製「SVC−700TM、SVC−700−2」)を用いて銅薄膜を膜厚500nmで形成し、銅薄膜層付き積層フィルムを得た。得られたフィルムについて、銅薄膜とアンダーコート層との密着性を、1mmクロスカット碁盤目密着試験を行い、下記の通り評価した。
(評価基準)
○・・・91/100以上(残存個数(剥離や欠けのなかったマス目の数)/測定個数)
△・・・80/100以上、90/100以下
×・・・79/100以下
【0116】
〔金属薄膜層外観〕
上記の金属密着性評価にて作成した銅薄膜付フィルムの銅薄膜層表面を目視にて確認し、以下の通り評価した。
(評価基準)
○・・・曇りがなく金属光沢が得られた
△・・・わずかに白化が見られるが光沢があった
×・・・全面が白化し金属光沢が失われていた
【0117】
実施例1〜6および比較例1、2の評価結果を下記表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
上記評価結果より
、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有するコーティング剤から得られた実施例1〜6の評価用塗膜サンプルは、鉛筆硬度および耐擦傷性に優れるものであった。また、評価用塗膜サンプル上に銅薄膜を形成した、金属薄膜層付き積層フィルムは、金属薄膜層の外観および銅密着性にも優れていた。
一方、特定の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)を含有しない比較例1については、鉛筆硬度、耐擦傷性、金属薄膜層の外観が劣っていた。また、ポリエステル系ポリオール化合物(a3)の多価カルボン酸成分として、イソフタル酸およびイソフタル酸のエステル形成性誘導体のいずれも含有しない比較例2については、耐擦傷性、金属密着性が劣っていた。