(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物及びそれを含有する化粧料を実施するための好ましい形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛]
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、酸化亜鉛粒子と、前記酸化亜鉛粒子の表面における酸化ケイ素被膜と、を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛であって、懸濁水導電率が120μS/cm以下である。
【0019】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における懸濁水導電率とは、次の方法により測定された値を意味する。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛10gと、純水90gとを混合し、この混合液を撹拌しながら、ホットプレート上で10分間煮沸する。次いで、混合液を25℃まで放冷した後、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と純水の合計量が100gになるように、混合液に純水を加えて懸濁させる。この懸濁水の導電率を導電率計(商品名:パーソナルSCメータSC72、横河電機社製)により測定する。
【0020】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の懸濁水導電率は、低い程好ましく、0μS/cmであることが最も好ましい。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に含まれる不純物を全て取り除くことは困難であるため、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の懸濁水導電率は、10μS/cm以上かつ110μS/cm以下であることが好ましく、20μS/cm以上かつ100μS/cm以下であることがより好ましく、30μS/cm以上かつ90μS/cm以下であることがさらに好ましい。
【0021】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の懸濁水導電率を上記の範囲内に制御する方法、すなわち、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の懸濁水導電率を低下させる方法は、特に限定されないが、例えば、製造過程において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の洗浄を強化する方法や、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に残存する不純物量が低減するように、製造条件を適宜調整する方法等が挙げられる。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の洗浄を強化する方法としては、例えば、洗浄力が強い装置を用いたり、洗浄回数を増やしたりする方法等が挙げられる。
洗浄に用いる溶媒としては、例えば、水やアルコール類等が挙げられる。
【0022】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、懸濁水導電率が120μS/cm以下であれば特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛粒子と、前記酸化亜鉛粒子の表面における酸化ケイ素被膜と、を含むものであって、酸化ケイ素被膜が緻密なものや、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中に残存するアルカリ金属が、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種で置換されたものを用いることが好ましい。
【0023】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の例1)
酸化ケイ素被膜が緻密な酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の一例としては、酸化亜鉛粒子と、前記酸化亜鉛粒子の表面における酸化ケイ素被膜と、を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛であって、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5である酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が挙げられる。さらに、この酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下となるほど、酸化亜鉛粒子全体を酸化ケイ素被膜が均一に被覆していることが好ましい。
【0024】
酸化ケイ素被膜は、「ケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5」を満たすほど、縮合度の高いものであればよい。
なお、緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密さ」と酸化ケイ素の「縮合度」との間には密接な関係があり、酸化ケイ素の縮合度が高くなればなるほど酸化ケイ素被膜の緻密性が高まることとなる。
すなわち、ここでいう緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密な」とは、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5を満たすほど、すなわち、Q
3+Q
4およびQ
4/(Q
3+Q
4)が下限値よりも大きくなるほど、酸化ケイ素の縮合度が高い状態の酸化ケイ素被膜のことを意味する。
【0025】
酸化ケイ素の縮合度については、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、固体
29Si MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比からQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を測定することで容易に知ることができる。
ここで、Q
n(n=0〜4)とは、酸化ケイ素の構成単位であるSiO
4四面体単位の酸素原子のうちの架橋酸素原子、すなわち、2つのSiと結合している酸素原子の数に応じて決まる化学的構造のことである。
これらQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を、Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4と表記する。ただし、Q
0+Q
1+Q
2+Q
3+Q
4=1である。
【0026】
酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下であることが好ましいとした理由を以下に述べる。その理由は、このブリリアントブルーの分解率が3%以下であれば、酸化亜鉛粒子の光触媒活性が抑制されていることとなるので、酸化亜鉛粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性も高いことを意味するからである。ここで、酸化亜鉛粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性が高いとは、被覆むらがないこと、被膜が局在化していないこと、ピンホール等がないことを示す。ブリリアントブルーの分解率は、酸化亜鉛粒子の光触媒活性の指標として用いられる。酸化亜鉛粒子の光触媒反応は、基本的に酸化亜鉛粒子の表面にて起こる。すなわち、酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が低いということは、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の表面に、酸化亜鉛粒子が露出している箇所が少ないことを示す。
【0027】
ブリリアントブルーの分解率の測定方法は、次の通りである。
まず、ブリリアントブルーを所定の含有率(例えば、5ppm)に調整したブリリアントブルー水溶液を作製し、このブリリアントブルー水溶液からスクリュー管に所定量採取し、この採取したブリリアントブルー水溶液に、酸化亜鉛換算で、この液の質量の1質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を投入し、超音波分散して懸濁液を調製する。次いで、この懸濁液に、所定の波長の紫外線を所定距離(例えば、10cm)から所定時間(例えば、6時間)照射する。
紫外線照射ランプとしては、例えば、殺菌ランプGL20(波長253.7nm、紫外線出力7.5W:東芝社製)を用いることができる。
【0028】
次いで、この紫外線が照射された懸濁液から上澄み液を採取し、原子吸光光度法により、上記のブリリアントブルー水溶液及び上澄み液それぞれの吸光光度スペクトルを測定する。そして、これらの測定値を用いて、下記の式(1)によりブリリアントブルーの分解率Dを算出する。
D=(A0−A1)/A0 ・・・(1)(但し、A0はブリリアントブルー水溶液(5ppm)の吸光光度スペクトルの吸収極大波長(630nm)における吸光度、A1は上記の上澄み液の吸光光度スペクトルの吸収極大波長における吸光度である。)
【0029】
なお、通常の酸化亜鉛(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)について、上記の方法に基づいてブリリアントブルーの分解率を測定した結果、90%であった。これにより、この酸化亜鉛(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)では、光触媒活性があるとブリリアンブルーの分解率が高いことが確認された。
【0030】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、3nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、化粧料が所望の透明性と紫外線遮蔽性を得るために、前記の範囲内で適宜調整される。透明性の高い化粧料を得たい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、3nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、化粧料の紫外線遮蔽性を向上させたい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、50nm以上かつ2μm以下であることが好ましい。
【0031】
なお、本実施形態における「平均粒子径」とは、以下の方法で求められる数値である。
すなわち、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら酸化ケイ素被覆酸化亜鉛各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均する。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均粒子径とする。
【0032】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量は、50質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましい。ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量が50質量%未満では、所望の紫外線遮蔽効果が得られない。そこで、所望の紫外線遮蔽効果を得ようとすると、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を使用しなければならなくなるので好ましくない。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有量が90質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の割合が高くなり過ぎてしまう結果、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で充分に覆うことができなくなるので好ましくない。
【0033】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水素イオン指数(pH)5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したとき、前記の水溶液中に溶出する亜鉛の溶出率は60質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、亜鉛の溶出率が60質量%以下であることが好ましいとした理由は、亜鉛の溶出率が60質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛自体の安定性が低下し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧料に適用した場合に、溶出する亜鉛イオンが、有機系紫外線遮蔽剤、増粘剤等の水溶性高分子等と反応し、化粧料としての性能の低下、変色、粘度の増減等を生じるので好ましくないからである。
【0034】
亜鉛の溶出率は、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をpH=5の緩衝液に0.05質量%となるように分散し、1時間撹拌した後、固液分離を行い、液相の亜鉛濃度をICP発光分析装置にて測定することにより測定することができる。
pH=5の緩衝液としては、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を分散させることができる緩衝液であれば特に限定されず、例えば、0.1Mフタル酸水素カリウム水溶液500mlと、0.1M水酸化ナトリウム水溶液226mlとを混合した後、水を加えて全体量を1000mlとした緩衝液が好適に用いられる。
【0035】
酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、化粧料が所望の透明性と紫外線遮蔽性を得るために適宜調整される。透明性の高い化粧料を得たい場合、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、化粧料の紫外線遮蔽性を向上させたい場合、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、50nm以上かつ500nm以下であることが好ましい。
【0036】
このような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法は、国際公開第2014/171322号に詳述されている。この製造方法によれば、酸化亜鉛粒子を、アルコキシシラン、または、ケイ酸ソーダ及びアルコキシシランを用いて、酸化亜鉛の表面を酸化ケイ素被膜で被覆し、200℃〜600℃で焼成することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が得られる。
なお、平均粒子径が50nm以上の酸化亜鉛粒子を用いる場合には、150℃〜600℃で焼成してもよい。
【0037】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の例2)
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の他の例としては、酸化亜鉛粒子と、前記酸化亜鉛粒子の表面における酸化ケイ素被膜と、を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛であって、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が挙げられる。この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いることが好ましい理由は、次の通りである。
【0038】
酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下になるよう、酸化亜鉛粒子の表面全体を均一にシリカ被膜で被覆するには、ケイ酸ソーダ等のアルカリ金属を含む材料を用いて酸化ケイ素被膜を形成することが好ましい。しかし、このアルカリ金属が酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に残存していると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水相に分散させたときにアルカリイオンが溶出し、pHや粘度を大きく変動させてしまい、化粧料としての品質安定性が損なわれてしまう。
【0039】
そこで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属を、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜から除去される。
一方、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属と置換されたMg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種は、置換後には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に存在する。これらの置換されたMg、Ca、Baは、水への溶解度が低いケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム等として存在する。
【0040】
置換の結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、Ca及びBaの合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の合計の質量百分率より大となる。そのため、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水相に混合しても、アルカリ金属の溶出が抑制され、pHや粘度の変動を抑制することができ、化粧料としての品質安定性を維持することができる。
【0041】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、必要に応じて選択されるが、2nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、5nm以上かつ500nm以下であることがより好ましく、10nm以上かつ400nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は小さいほど、化粧料に配合した場合に使用時の透明性を高くするのに適している。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径が大きいほど、紫外線の散乱強度も高くなり、長波長までの紫外線を遮蔽することができる。そこで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は、目的とする化粧料の透明性及び紫外線の遮蔽性に合わせて適宜選択される。
【0043】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有率は、必要に応じて選択されるが、50質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上かつ95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上かつ90質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有率が50質量%未満では、所望の紫外線遮蔽効果を得ることができない可能性がある。そのような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を化粧品原料基剤中に含む化粧料において、所望の紫外線遮蔽効果を得ようとすると、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を使用しなければならなくなるので好ましくない。
一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の含有率が99質量%を超えると、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化亜鉛粒子の割合が高くなり過ぎてしまう可能性がある。その結果、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で充分に覆うことができなくなり、酸化亜鉛の光触媒活性や亜鉛イオンの溶出抑制が不充分となる可能性があるため好ましくない。
【0044】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化ケイ素の含有率は、酸化亜鉛粒子の平均粒子径に応じて適宜調整される。例えば、平均粒子径が50nm以下の酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有率は3質量%以上かつ45質量%以下であることが好ましい。また、平均粒子径が50nmを超える酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有率は1質量%以上かつ35質量%以下であることが好ましい。
【0045】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有している。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、Ca及びBaの合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の合計の質量百分率より大であることが好ましい。さらに、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の合計の質量百分率の、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、Ca及びBaの合計の質量百分率に対する比(アルカリ金属の合計の質量百分率/(Mg、Ca及びBaの合計の質量百分率)は、0.001以上かつ0.6以下であることが好ましく、0.01以上かつ0.5以下であることがより好ましく、0.1以上かつ0.4以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、アルカリ金属とは、一般的に知られているものを指し、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムからなる群から選択される少なくとも1種を意味する。
【0046】
ここで、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、Ca及びBaの合計の質量百分率を、酸化ケイ素被膜に含まれるアルカリ金属の合計の質量百分率より大とした理由は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の初期における水素イオン指数(pH)の変動要因は、亜鉛イオンの溶出ではなく、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属イオンの溶出が主要因であるからである。
【0047】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の合計の質量百分率は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましい。
酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の合計の質量百分率の下限値は任意に選択できる。アルカリ金属の合計の質量百分率は0質量%でもよく、他の例を挙げれば、例えば、0.0001質量%以上や0.001質量%以上等であってもよい。
【0048】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛における酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、Ca及びBaの合計の質量百分率は、0.01質量%以上かつ1質量%以下であることが好ましい。
【0049】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛(酸化ケイ素被膜)に含まれるアルカリ金属、Mg、Ca及びBaの質量百分率(質量%)は、原子吸光分析法により測定することができる。
【0050】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛では、酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
さらに、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被膜は、「ケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5」を満たすことが好ましい。
【0051】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法]
本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法を説明する。
本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法は、酸化亜鉛粒子の表面にアルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる複合粒子と、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中にて混合し、この酸化ケイ素中に含まれるアルカリ金属を、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換する工程(以下、「置換工程」と言う。)と、焼成工程と、を有する製造方法である。
【0052】
なお、置換工程前のアルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる酸化亜鉛、または、置換工程後のMg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、アルコキシシラン及び10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうち少なくとも1種と、触媒と、水とを添加し、30分以上かつ24時間以下、これらの混合物を撹拌して反応させ、より縮合度の高い酸化ケイ素被膜が形成される工程を設けてもよい。
次に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の製造方法について詳細に説明する。
【0053】
アルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる酸化亜鉛としては、ケイ酸ソーダ等のアルカリ金属を含有するケイ酸塩と、酸化亜鉛粒子と、を反応させて、酸化亜鉛粒子の表面に酸化ケイ素を被覆させたものを用いてもよい。あるいは、市販品の酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛を用いてもよい。
酸化亜鉛粒子の表面に酸化ケイ素を被覆させる方法としては、例えば、特開平03−183620号公報、特開平11−256133号公報、特開平11−302015号公報、特開2007−016111号公報等に記載されている方法を用いることができる。
【0054】
酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する方法は、必要に応じて選択されるが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、酸化亜鉛粒子と水を混合し、次いで、水中に酸化亜鉛粒子を超音波分散し、酸化亜鉛水系懸濁液を調製する。
次いで、酸化亜鉛水系懸濁液を加温し、この酸化亜鉛水系懸濁液を撹拌しながら、ケイ酸ソーダ水溶液を加え、10分〜60分間熟成する。
次いで、酸化亜鉛水系懸濁液を撹拌しながら、希硫酸等の酸を添加してpHを5〜9に調整し、30分〜5時間熟成する。
次いで、この反応液を固液分離し、得られた反応物を水等の溶媒を用いて洗浄し、さらに、100℃〜200℃程度にて乾燥し、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛粒子を得る。
【0055】
「置換工程」
置換工程は、酸化亜鉛粒子の表面を、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆する工程の後に行う必要がある。その理由は、アルカリ金属を含むケイ酸塩と、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、単に水を含む溶液中で混合すると、不純物としてケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸バリウムの少なくとも1種の沈殿が生成するからである。そこで、置換工程は、ケイ酸塩を中和反応等させることによって、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する工程の後から、乾燥工程の後までの、いずれかの段階に組み込むことが好ましい。そのような方法によれば、反応プロセスを低減することができ、低コストにて、本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得ることができる。
【0056】
置換工程では、最初に、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛と、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中に加え、混合する。
水を含む溶液としては、特に限定されず、必要に応じて選択される。水を含む溶液としては、例えば、水、または、水及び水と相溶可能な溶媒を混合してなる溶液が用いられる。
水と相溶可能な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。これらの中でも、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒がより好ましい。
【0057】
この混合処理における反応温度は、特に限定されず、必要に応じて調整される。酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛と、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種と、水を含む溶液と、を含む混合液中の溶媒の凝固点以上であればよい。
また、混合液を静置したままでも反応は進行するが、反応効率を高めるためには、混合液を撹拌しながら反応させることが好ましい。
反応時間は、特に限定されず、必要に応じて選択される。反応時間は、1時間以上が好ましい。
【0058】
この混合処理により、酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛中のアルカリ金属は、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換されて、酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛から混合液中に溶出する。一方、アルカリ金属と置換したMg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のイオンは、アルカリ金属との置換により酸化ケイ素被覆酸化亜鉛に取り込まれ、その結果、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化ケイ素被覆酸化亜鉛となる。
【0059】
混合液中に含まれるMg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、特に限定されず、必要に応じて選択される。酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛中のNa、K等のアルカリイオンを、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のイオンにてイオン交換するためには、混合液中に含まれるMg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、酸化ケイ素が被覆された酸化亜鉛中のアルカリ金属のモル当量の総和以上であることが好ましい。
【0060】
Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を供するための原料としては、これらの元素を含む無機塩であればよく、特に限定されない。Mgを供するための原料としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられる。Caを供するための原料としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。Baを供するための原料としては、例えば、塩化バリウム、硝酸バリウム等が好適に用いられる。
これらの原料は、固体のまま用いてもよく、水溶液とした状態で用いてもよい。
【0061】
次に、この置換工程により生成した酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を含有する混合液を、常圧濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等により固液分離する。得られた固形物を水等の溶媒を用いて洗浄することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が得られる。
なお、得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中のアルカリ金属の含有量をさらに低減させるためには、固液分離後、再度、得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中で混合させ、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中のアルカリ金属と、Mg、Ca及びBaからなる群から選択される少なくとも1種との置換工程を行うことが好ましい。この置換工程は、複数回繰り返すことがより好ましい。
【0062】
このようにして得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、水を含んでいるので、この水を除くために乾燥させることが好ましい。
乾燥温度は、特に限定されないが、通常、100℃以上の温度にて乾燥することが好ましい。また、80℃以下の温度にて乾燥する場合には、減圧乾燥が好ましい。
【0063】
次いで、この乾燥物を200℃以上かつ600℃未満の熱処理(焼成)を行うことにより、本実施形態における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製することができる。
【0064】
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物]
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を含有してなる。
【0065】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径は任意に選択可能であるが、2nm以上かつ500nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上かつ400nm以下、さらに好ましくは10nm以上かつ400nm以下である。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、平均粒子径が2nm未満では、粒子径が小さすぎるために、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の表面エネルギーが高く、したがって、互いに凝集し易く、所望の形状及びサイズを維持することが困難になるからである。一方、平均粒子径が500nmを超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛自体の透明性が低下し易くなり、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を化粧料等に用いた場合に、可視光線領域の透明性を損なうおそれや、きしみ等が生じて使用感が悪化するおそれがあるからである。
【0066】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径は、10nm以上かつ1μm以下であることが好ましい。より好ましくは20nm以上かつ800nm以下、さらに好ましくは25nm以上かつ500nm以下である。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径が10nm未満では、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の結晶性が低くなる結果、充分な紫外線遮蔽性を示さないおそれがある。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の平均分散粒径が1μmを超えると、ぎらつき、きしみ等が生じて、化粧料に処方した際の使用の触感が悪くなるおそれがあるとともに、分散安定性が低下し、安定な組成物が得られないおそれがある。なお、本発明において、分散粒径とは、複数の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が集まって分散している状態の粒径を意味する。
【0067】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率は、所望の紫外線遮蔽性能を得るために適宜調整すればよく、特に制限されるものではない。好ましくは1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは5質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上かつ60質量%以下である。また、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の特徴を有効に利用するために、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ20質量%以下でもよく、或いは、2質量%以上かつ10質量%以下または3質量%以上かつ7質量%以下でもよい。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下が好ましいとした。その理由は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率が1質量%未満では、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物が充分な紫外線遮蔽機能を示すことができなくなる。その結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を化粧料等に配合する際に、所望の紫外線遮蔽機能を示すためには大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を添加する必要があり、製造コストが高くなるおそれがあるので好ましくないからである。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率が80質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘性が増加して、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散安定性が低下し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が沈降し易くなるおそれがあるので好ましくないからである。
【0068】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物に用いられる溶媒としては、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を分散させることができる溶媒であればよく、特に限定されない。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;が好適に用いられる。これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物に用いられる他の溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の環状炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類;も好適に用いられる。
【0070】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類;も好適に用いられる。これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、その特性を損なわない範囲において、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤等の、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0072】
分散剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシラン等のシランカップリング剤、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の変性シリコーンが好適に用いられる。これらの分散剤の種類や量は、複合粒子の粒子径や目的とする分散媒の種類に応じて適宜選択すればよく、上記分散剤のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0074】
増粘剤としては、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を化粧料に適用する場合には、化粧料に使用される増粘剤であればよく、特に限定されない。増粘剤としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等の天然の水溶性高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機鉱物等が好適に用いられる。これらの増粘剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの増粘剤の中でも、合成高分子が好ましく、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)がより好ましい。なお、カルボキシビニルポリマーは、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等、カルボキシビニルポリマーの一部を変性したものも含む。
【0075】
ここで、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを用いる場合、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物におけるカルボマーの含有率は0.0001質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上かつ1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物におけるカルボキシビニルポリマーの含有率が0.0001質量%未満であると、増粘効果が得られないおそれがある。一方、カルボキシビニルポリマーの含有率が10質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘度が高くなり過ぎてしまい、使用上の観点から好ましくない。
また、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を有効に利用するために、カルボキシビニルポリマーを用いる場合、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛組成物におけるカルボキシビニルポリマーの含有量は、0.5質量%以上2.5質量%以下、1.0質量%以上2.0質量%以下、または1.3質量%以上1.7質量%以下でもよい。
【0076】
また、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを用いる場合の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物における水素イオン指数(pH)は5以上かつ9以下が好ましく、6以上かつ9以下がより好ましく、7以上かつ9以下がさらに好ましい。本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物におけるpHを上記の範囲内とすることにより、粘度等の経時変化を抑制することができる。
【0077】
なお、上記のカルボキシビニルポリマーは、水系の化粧料の増粘剤として広く用いられている。しかしながら、カルボキシ基間やカルボキシレート基間の相互作用を利用して増粘(ゲル化)するため、亜鉛イオンが存在するとカルボキシビニルポリマーのネットワーク構造が破壊されてしまい、粘性を一定に保つことができない。よって、粘度調整したカルボキシビニルポリマー水溶液に酸化亜鉛を数質量%混合すると、数時間のうちに低粘度化が進行することとなる。また、無機酸化物や樹脂で被覆して表面活性を抑制した酸化亜鉛を用いた場合においても、多くの場合、数時間から数日のうちに低粘度化または分相が進行する。よって、カルボキシビニルポリマーと酸化亜鉛を併用する場合、これらを含む混合物の粘度低下を抑制または低減することが問題点となる。
【0078】
また、従来の無機酸化物や樹脂で被覆して表面活性を抑制した酸化亜鉛を用いてカルボキシビニルポリマー水溶液の粘度低下を抑制した場合、初期の粘度低下よりも、一定時間経過した後の粘度低下がしばしば大きな問題点となる。
初期の粘度低下は、カルボキシビニルポリマー水溶液の粘度を予め高めに調整すること等で対応することができる。しかしながら、一定時間経過した後の中長期にて粘度が変化すると、流通段階で化粧料の性状が変化し、経時安定性を損なうこととなる。特に、無機酸化物や樹脂で表面処理を施した酸化亜鉛は、一定の溶出抑制効果を有していることから、中長期に亘って徐々に亜鉛イオンを溶出するおそれがあった。
また、従来、カルボキシビニルポリマーを含む組成物の粘度変化に関する報告例は少なく、また、報告例があったとしても、室温にて7日程度の経時による粘度変化までしか抑制が確認されていなかった。
【0079】
ここで、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3とし、Q
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6、かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5であり、かつ酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下である、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いれば、品質安定性に優れた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物が得られる。すなわち、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、従来の無機酸化物や樹脂で被覆された酸化亜鉛と比べて、さらに亜鉛溶出抑制効果の高い酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いているので、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを用いたとしても、経時による粘度の低下が小さく、品質安定性に優れた組成物となる。
【0080】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを含有する場合、粘度が5Pa・s以上であることが好ましい。
粘度が5Pa・s未満では、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を含む化粧料が肌にうまく伸びず、ハンドリングの面で好ましくない。粘度の上限値は、特に限定されず、所望の使用感に合せて適宜調整すればよく、例えば、100Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下であることがより好ましく、15Pa・s以下であることがさらに好ましい。水系化粧料に特有のみずみずしさを感じられる使用感にするためには、15Pa・s以下であることが好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘度を5Pa・s以上とするためには、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の懸濁水導電率を120μS/cm以下にすればよい。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の粘度の上限値は、カルボキシビニルポリマーの含有量で調整すればよい。カルボキシビニルポリマーの含有量が多いほど粘度が高くなるため、所望の使用感が得られるように適宜調整して、カルボキシビニルポリマーを添加すればよい。
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘度は、BII型回転粘度計(東機産業社製)を用い、20℃、30rpmの条件下で測定した値である。
【0081】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を15質量%とし、この組成物を用いて厚み32μmの塗膜を形成した場合に、その塗膜の波長450nmの光に対する透過率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
この透過率は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を15質量%含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を、石英基板上にバーコーターにて塗布して、厚みが32μmの塗膜を形成し、この塗膜の分光透過率をSPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)にて測定することにより求めることができる。このとき、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛以外の組成物の成分は、例えば、水等の溶媒であってもよい。
【0082】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の製造方法は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を上記の溶媒中に分散させることができればよく、特に限定されない。
このような分散に用いられる分散方法としては、公知の分散方法を用いることができる。例えば、攪拌機の他、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、混練機、三本ロールミル、自転・公転ミキサー等を用いた分散方法が好適に用いられる。
分散処理に要する時間としては、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を上記の溶媒中に均一に分散されるのに充分な時間であればよい。
【0083】
次に、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の具体例として、(a)酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を非水溶性分散媒であるシリコーン樹脂中に分散させた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物、及び(b)酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を水中に分散させた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物、のそれぞれについて説明する。
【0084】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物)
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛をシリコーン樹脂中に分散したシリコーン樹脂系組成物である。この組成物は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下である。
【0085】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、その表面をシリコーン樹脂にて表面処理してなることとしてもよい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、シリコーン樹脂にて表面処理されることにより、油相、特にシリコーン油への親和性が高くなる。よって、油中水型(W/O型)や水中油型(O/W)の化粧料への配合がより容易になる。
すなわち、シリコーン樹脂にて表面処理した酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を油相に配合して、油中水型又は水中油型の化粧料とすることで、油中水型(W/O型)や水中油型(O/W)の化粧料における亜鉛イオンの溶出を抑制することができる。
【0086】
表面処理に用いられるシリコーン樹脂としては、化粧料として使用できるものであれば特に限定されない。シリコーン樹脂としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシラン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、これらのうち2種以上を混合したものを用いてもよく、これらの共重合体を用いてもよい。
【0087】
シリコーン樹脂としては、下記の式(2)にて示される構造骨格を有する、環状シリコーン樹脂、あるいは直鎖状シリコーン樹脂であればよく、特に限定されない。
(−(Si(CH
3)
2O−)
X ・・・(2)
(式(2)中、Xは1〜2000の範囲である。)
このシリコーン樹脂では、Xの値を上記範囲とすることにより、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛との混合が容易となるので、好ましい。
このようなシリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン、メチルトリメチコン等が挙げられる。
【0088】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物は、分散剤を含有していてもよい。
分散剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ジメチルシリコーン等を挙げることができる。
【0089】
分散剤の添加量は任意に選択できるが、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の質量に対して、1質量%以上かつ50質量%以下の範囲であることが好ましい。例えば、必要に応じて、3質量%以上かつ15質量%以下の範囲や、10質量%〜30質量%等であってもよい。
分散剤の添加量を上記の範囲内で調整することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物を単独で用いた場合においても、また、化粧料に直接混合した場合においても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を充分に確保することができる。
また、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有シリコーン樹脂系組成物に、その特性を損なわない範囲で、さらに天然オイル、保湿剤、増粘剤、香料、防腐剤等を混合させてもよい。
【0090】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物)
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、水系分散媒または、アルコール類を含む水系分散媒中に分散した水系組成物である。この組成物は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下含有する。
また、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の特徴を有効に利用するために、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率を1質量%以上かつ20質量%以下でもよく、或いは、2質量%以上かつ10質量%以下または3質量%以上かつ7質量%以下でもよい。
水系分散媒、またはアルコール類を含む水系分散媒は、20質量%〜99質量%含むことが好ましく、30質量%〜80質量%含むことがより好ましく、40質量%〜70質量%含むことがさらに好ましい。
また、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の特徴を有効に利用するために、アルコール類を含む水系分散媒または水を、80質量%〜99質量%または90質量%〜97質量%でもよい。
【0091】
ここで、水系分散媒とは、水、または酸やアルカリによりpH調整された水を意味する。
ここで、アルコール類を含む水系分散媒とは、アルコール類と水とを含む分散媒である。水は、酸やアルカリによってpHが調整されたものを用いてもよい。アルコール類としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素数1〜6の一価アルコールまたは多価アルコールが挙げられる。これらの中でも一価アルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。
【0092】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とアルコール類を含む水系分散媒とにより構成されている場合、アルコール類の含有率は、5質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ20質量%以下である。
特に、アルコール類の含有率を5質量%以上かつ20質量%以下とした場合には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の水系組成物における分散性及び経時安定性を向上させることができるので好ましい。
【0093】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物では、さらに、水溶性高分子を0.001質量%以上かつ10質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上かつ5質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上かつ3質量%以下含有してなることとしてもよい。この場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛、水系分散媒、アルコール類を含む水系分散媒及び水溶性高分子各々の含有率の合計が100質量%を超えないように、各成分の含有率を調整する必要がある。
【0094】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物を化粧料に適用する場合、この水系組成物に含まれる水溶性高分子としては、化粧料の用途として使用できるものであればよく、特に限定されない。例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、カラギーナン、ガラクタン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプン、寒天、キサンタンガム、クインスシード、グアーガム、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、トラガカントガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムペクチン、プルラン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を有効に利用するために、カルボキシビニルポリマーを用いる場合、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物におけるカルボキシビニルポリマーの含有量は、0.5質量%以上2.5質量%以下、1.0質量%以上2.0質量%以下、または1.3質量%以上1.7質量%以下でもよい。
この水溶性高分子は、分散剤及び粘度調整剤としての役割を有するとともに、水系組成物に添加することによって、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物中における分散性及び経時安定性も向上させるという役割も有する。
【0095】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が水溶性高分子を含む場合のアルコール類の含有率は、5質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上かつ20質量%以下である。また、アルコール類を含まなくてもよい。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が水溶性高分子を含む場合のアルコール類の含有率を5質量%以上かつ20質量%以下とした。その理由は、以下の通りである。すなわち、アルコール類の含有率が5質量%未満の場合、水溶性高分子の種類によっては、アルコール類の含有量が少なすぎてしまうために、水溶性高分子がアルコール類に均一に浸潤できずに水分にて不均一に膨潤することとなる。その結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散性が低下して取扱いが困難となり、さらには酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の経時安定性が低下するので、好ましくないからである。また、含有率が20質量%を超えると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物全体の粘性が高くなる。その結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散安定性が低下するとともに、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物の経時安定性も低下するので、好ましくないからである。
【0096】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物は、水系分散媒、アルコール類を含む水系分散媒、水溶性高分子を含む水系分散媒、またはアルコール類及び水溶性高分子を含む水系分散媒に、上記の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を混合し、次いで、必要に応じて、水を混合して、分散させることにより得られる。組成物中の水の量は適宜調整すればよいが、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の分散安定性及び経時安定性を考慮すると、15質量%以上かつ94質量%以下の範囲が好ましい。この範囲の中から必要に応じて好適な量を選択すればよい。
水の量を上記範囲で調整することにより、単独で用いても、あるいは化粧料に混合しても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を充分に確保することができる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有水系組成物が得られる。
【0097】
[化粧料]
本実施形態の化粧料の一例は、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛または本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を含有してなる。
本実施形態の化粧料の他の例は、化粧品原料基剤と、化粧品原料基剤に分散される、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛または本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を含有してなる。
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料を意味し、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛または酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品原料基剤に、従来通りに配合することにより得られる。
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛または酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品原料基剤と配合してもよい。
化粧料における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量は所望の特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。化粧料における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
また、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を有効に利用するために、本発明の化粧品は、例えば、本発明の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と化粧品原料基剤とを含み、化粧品原料基剤がカルボキシビニルポリマーと水系溶媒を含み、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率が0.5質量%以上20質量%以下、好ましく2質量%以上8質量%以下、より好ましく3質量%以上7質量%以下であり、カルボキシビニルポリマーの含有率が0.1質量%以上10質量%以下、好ましく0.5質量%以上5質量%以下、より好ましく1質量%以上2.5質量%以下であり、前記水系溶媒のpHが6.5以上9以下、好ましく7以上8.5以下、よりこのましく7以上8以下である。
以下、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
【0098】
日焼け止め化粧料における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の含有率は、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽するためには、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物に含まれる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率で1質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上かつ20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上かつ15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0099】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、酸化亜鉛粒子以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料等を含んでいてもよい。
疎水性分散媒としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0100】
酸化亜鉛粒子以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ−酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0101】
日焼け止め化粧料は、さらに有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種含有していてもよい。
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤、これら以外の有機系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0102】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、1−(4’−イソプロピルフェニル)−3−フェニルプロパン−1,3−ジオン、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0103】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸 (PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等が挙げられる。
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−2−プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0104】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート、ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0105】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−1−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリル−1−メチルプロピル]−3,4−ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0106】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛によれば、懸濁水導電率が120μS/cm以下であるため、水系の化粧料等の水系材料に適用した場合においても、カルボマーに起因する粘度の低下を抑制することができ、水系材料の品質安定性を維持することができる。
【0108】
本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を含有するため、水系の化粧料等の水系材料に適用した場合においても、カルボマーに起因する粘度の低下を抑制することができ、水系材料の品質安定性を維持することができる。
【0109】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を含有するため、カルボマーに起因する粘度の低下がなく、品質安定性に優れている。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
[実施例1]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)と水を混合し、次いで、超音波分散を行い、酸化亜鉛粒子の含有率が20質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で20質量%のケイ酸ソーダを含むケイ酸ソーダ水溶液に加え、撹拌し、懸濁液とした。
【0112】
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら希塩酸を徐々に添加して、pHを6.5〜7に調整した。その後、2時間静置した後、さらに、この懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量と同質量の塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム2水和物25質量%)を加えて撹拌し、さらに、2時間静置した。
次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を、フィルタープレスを用いて水にて洗浄した。その後、この固形物を150℃にて乾燥し、さらに、500℃にて1時間、熱処理(焼成)を行った。
【0113】
次いで、得られた固形物と2−プロパノールを混合し、次いで、超音波分散し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率が10質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛2−プロパノール懸濁液を調製した。
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながらアンモニア水及び水を添加して、pHを10〜11に調整した。なお、水の添加量は、後に添加するテトラエトキシシラン2−プロパノール溶液中のテトラエトキシシランに対して120質量%となるようにした。
【0114】
さらに、この懸濁液に、テトラエトキシシラン2−プロパノール溶液を、テトラエトキシシランの滴下量が酸化ケイ素に換算して酸化亜鉛の全質量に対して15質量%となるように、ゆっくり滴下し、6時間撹拌を継続した。
反応終了後、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を150℃にて乾燥した。次いで、この乾燥物を500℃にて3時間、熱処理(焼成)を行い、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
【0115】
原子吸光分析により、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛のNaとCaの含有量を測定した結果、Naは0.20質量%、Caは0.32質量%であった。
また、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、固体
29Siを用いたMAS−核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比から、Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4を算出した。
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を構成する酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3とし、Q
4環境における存在比をQ
4とし、Q
3+Q
4の値と、Q
4/(Q
3+Q
4)の値を算出した。その結果、Q
3+Q
4≧0.6であり、Q
4/(Q
3+Q
4)≧0.5であった。
【0116】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
カルボマー(商品名:Ultrez10、日光ケミカルズ社製)1.5gを純水に溶解し、次いで、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを調整し、カルボマーを1.5質量%含有し、pHが7.5のカルボマー水溶液を調製した。
次いで、このカルボマー水溶液と、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とを、95:5の質量比にて混合した後、撹拌して、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0117】
[実施例2]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)と水を混合し、次いで、超音波分散を行い、酸化亜鉛粒子の含有率が20質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で20質量%のケイ酸ソーダを含むケイ酸ソーダ水溶液に加え、撹拌し、懸濁液とした。
【0118】
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら希塩酸を徐々に添加して、pHを6.5〜7に調整した。その後、2時間静置した後、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を、フィルタープレスを用いて水にて洗浄した。
次いで、この固形物中の酸化亜鉛粒子の質量と同質量の塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム2水和物25質量%)を加えて撹拌し、さらに、2時間静置した。その後、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を、フィルタープレスを用いて水にて再度洗浄した。その後、この固形物を150℃にて乾燥し、さらに、500℃にて1時間、熱処理(焼成)を行った。
【0119】
次いで、得られた固形物と2−プロパノールを混合し、次いで、超音波分散し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有率が10質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛2−プロパノール懸濁液を調製した。
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながらアンモニア水及び水を添加して、pHを10〜11に調整した。なお、水の添加量は、後に添加するテトラエトキシシラン2−プロパノール溶液中のテトラエトキシシランに対して120質量%となるようにした。
【0120】
さらに、この懸濁液に、テトラエトキシシラン2−プロパノール溶液を、テトラエトキシシランの滴下量が酸化ケイ素に換算して酸化亜鉛の全質量に対して15質量%となるように、ゆっくり滴下し、6時間撹拌を継続した。
反応終了後、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を150℃にて乾燥した。次いで、この乾燥物を500℃にて3時間、熱処理(焼成)を行い、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
【0121】
原子吸光分析により、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛のNaとCaの含有量を測定した結果、Naは0.10質量%、Caは0.17質量%であった。
また、実施例1と同様にして、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を構成する酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3とし、Q
4環境における存在比をQ
4とし、Q
3+Q
4の値と、Q
4/(Q
3+Q
4)の値を算出した。その結果、Q
3+Q
4≧0.6であり、Q
4/(Q
3+Q
4)≧0.5であった。
【0122】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0123】
[実施例3]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
酸化亜鉛粒子(平均粒子径250nm;住友大阪セメント社製)と水を混合し、次いで、超音波分散を行い、酸化亜鉛粒子の含有率が50質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で17.7質量%(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中の酸化ケイ素が15質量%)のケイ酸ソーダを含むケイ酸ソーダ水溶液に加え、撹拌し、懸濁液とした。
【0124】
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら希塩酸を徐々に添加して、pHを6に調整した。その後、2時間静置した後、さらに、この懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量と同質量の塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム2水和物50質量%)を加えて撹拌し、さらに、2時間静置した。
次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離した。得られた固形物を水に懸濁し、10分間攪拌した後、遠心分離機により固液分離した。この水に懸濁し洗浄する工程を合計5回行った。
次いで、この固形物を150℃にて乾燥し、さらに、500℃にて3時間、熱処理(焼成)を行い、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
【0125】
原子吸光分析により、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛のNaとCaの含有量を測定した結果、Naは0.12質量%、Caは0.10質量%であった。
また、実施例1と同様にして、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を構成する酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3とし、Q
4環境における存在比をQ
4とし、Q
3+Q
4の値と、Q
4/(Q
3+Q
4)の値を算出した。その結果、Q
3+Q
4≧0.6であり、Q
4/(Q
3+Q
4)<0.5であった。
【0126】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0127】
[実施例4]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
実施例3において、固形物を水に懸濁し洗浄する工程を合計8回行った以外は実施例3と同様にして、実施例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
原子吸光分析により、実施例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛のNaとCaの含有量を測定した結果、Naは0.11質量%、Caは0.13質量%であった。
また、実施例1と同様にして、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を構成する酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3とし、Q
4環境における存在比をQ
4とし、Q
3+Q
4の値と、Q
4/(Q
3+Q
4)の値を算出した。その結果、Q
3+Q
4≧0.6であり、Q
4/(Q
3+Q
4)<0.5であった。
【0128】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、実施例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0129】
[比較例1]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
実施例3において、固形物を水に懸濁し洗浄する工程を合計4回行った以外は実施例3と同様にして、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
実施例1と同様にして、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を構成する酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3とし、Q
4環境における存在比をQ
4とし、Q
3+Q
4の値と、Q
4/(Q
3+Q
4)の値を算出した。その結果、Q
3+Q
4≧0.6であり、Q
4/(Q
3+Q
4)<0.5であった。
【0130】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0131】
[比較例2]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)と水を混合し、次いで、超音波分散し、酸化亜鉛粒子の含有率が50g/L(5質量%)の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この懸濁液を80℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら、酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で10質量%のケイ酸ソーダを含むように、ケイ酸ソーダ水溶液を加え、10分間熟成した。
次いで、この懸濁液を撹拌しながら、60分かけて希硫酸を添加して、pHを6.5に調整し、30分間熟成した。
【0132】
次いで、この懸濁液を撹拌しながら、酸化亜鉛粒子の全質量に対して酸化アルミニウム換算で5質量%となるように、アルミン酸ナトリウムの水溶液を加え、10分間、熟成した。
次いで、この懸濁液を撹拌しながら、10分かけて希硫酸を添加して、pHを7.0に調整し、30分間熟成した。
次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、水にて洗浄し、得られた固形物を130℃にて5時間、加熱乾燥した。
次いで、この乾燥物を、ジェットミルを用いて粉砕し、比較例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
【0133】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、比較例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0134】
[比較例3]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
比較例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛として、市販品の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛(商品名:SIH20−ZnO650、平均粒子径25nm、SiO
2/ZnO=17質量%、住友大阪セメント社製)を用いた。
【0135】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、比較例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0136】
[比較例4]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛」
比較例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛として、市販品の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛(商品名:SIH5−ZnO650、平均粒子径25nm、SiO
2/ZnO=4.77質量%、住友大阪セメント社製)を用いた。
【0137】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物」
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いる替わりに、比較例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物を得た。
【0138】
[評価]
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の懸濁水導電率の評価」
実施例1〜4及び比較例1〜4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛10gを純水90gに投入し、攪拌しながら10分間煮沸し、25℃まで放冷した後、蒸発したのと同量の純水を追加して、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を10質量%含有する懸濁水を調製した。
この懸濁水の導電率を、導電率計(商品名:パーソナルSCメータSC72、横河電機社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0139】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘度の評価」
実施例1〜4及び比較例1〜4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物の粘度を、BII型回転粘度計(東機産業社製)を用いて、20℃、30rpmの条件下で測定した。
また、実施例1〜4及び比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物から所定量を採取し、この採取した試料を恒温槽にて40℃に保持し、所定の時間毎に20℃、30rpmの条件下で粘度を測定した。結果を
図1に示す。また、40℃に保持するのを開始してから300時間までの酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成の粘度が5Pa・s以上であった場合を○、40℃に保持するのを開始してから300時間までの酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成の粘度が5Pa・s未満であった場合を×と評価した。結果を表1に示す。なお、比較例2、比較例3及び比較例4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、混合直後に粘度が3Pa・s以下に低下したため、40℃に保持して、所定時間毎に粘度を測定する試験を行わなかった。
なお、実施例1の試料を、恒温槽にて40℃に780時間保持したあとのpHを20℃で測定したところ、8.9であった。
また、実施例3の試料を、恒温槽にて40℃に780時間保持したあとのpHを20℃で測定したところ、9.2であった。
【0140】
【表1】
【0141】
表1の結果から、実施例1〜4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、懸濁水導電率が100μS/cm以下であることが分かった。
一方、比較例1〜4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛は、懸濁水導電率が185μS/cm以上であることが分かった。
【0142】
表1および
図1の結果から、実施例1〜4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、40℃に保持するのを開始してから300時間までの酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成の粘度が5Pa・s以上であることが分かった。
一方、比較例1〜4の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物は、40℃に保持するのを開始してから300時間までの酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成の粘度が5Pa・s未満であることが分かった。
【0143】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の観察」
実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を、電離放射型電子顕微鏡(FE−TEM)JEM−2100F(日本電子社製)を用いて、観察した。観察された顕微鏡像を
図2に示す。
図2より、酸化ケイ素被膜が、酸化亜鉛粒子をだいたい均一に被覆しており、酸化ケイ素被膜の均質性が高いことが確認された。