特許第6860090号(P6860090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860090分光データ管理装置、測定装置および測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860090
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】分光データ管理装置、測定装置および測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   G01N21/27 B
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-566429(P2019-566429)
(86)(22)【出願日】2019年1月8日
(86)【国際出願番号】JP2019000218
(87)【国際公開番号】WO2019142699
(87)【国際公開日】20190725
【審査請求日】2020年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-5164(P2018-5164)
(32)【優先日】2018年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 潤弥
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】榊原 洋志
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 清茂
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−014628(JP,A)
【文献】 特開2012−230074(JP,A)
【文献】 特開2008−039680(JP,A)
【文献】 特開2000−131223(JP,A)
【文献】 特開2014−122847(JP,A)
【文献】 特開2012−189342(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0018325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01J 3/00− 3/52
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、
前記画像に含まれる測定領域における前記対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、および、
前記測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データ
を取得するデータ取得部と、
前記画像データ、前記スペクトルデータおよび前記光線空間データを対応付けて記憶する記憶部と
を備える分光データ管理装置。
【請求項2】
前記データ取得部は、同一の前記対象物に対して、複数の前記測定領域における前記スペクトルデータを取得する
請求項1に記載の分光データ管理装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記光線空間データとして前記照明光の光源の位置を示すデータを取得し、
前記画像データに基づいて前記測定領域の位置を算出し、それぞれの前記測定領域の位置および前記光源の位置に基づいて、それぞれの前記測定領域に入射する前記照明光の照射角度を算出する演算部を更に備える
請求項2に記載の分光データ管理装置。
【請求項4】
前記画像データおよび前記スペクトルデータは、前記画像データを生成する撮像部および前記スペクトルデータを生成する分光測定部を備える測定装置により生成され、
前記データ取得部は、複数の前記測定装置により生成された前記画像データ、前記スペクトルデータ、前記光線空間データを取得する
請求項1から3のいずれか一項に記載の分光データ管理装置。
【請求項5】
前記光線空間データが示す照明条件を考慮して、前記画像データ及び前記スペクトルデータの少なくとも一つに基づいて前記対象物の種類または状態を判別する判別部をさらに備える 請求項1から4のいずれか一項に記載の分光データ管理装置。
【請求項6】
対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、
前記画像に含まれる測定領域において、前記対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、
前記対象物に照明光を照射する照明部と、
前記画像データ、前記スペクトルデータ、および、光線空間データを対応付けて記憶および/または出力するデータ処理部と
を備え、
前記光線空間データは、前記測定領域に対する照明光に関する光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示すデータである測定装置。
【請求項7】
前記対象物からの光を分岐させて前記撮像部と前記分光測定部にそれぞれ入射させ、回転可能な分岐部材と、
前記分岐部材の回転を制御して、前記画像内での前記測定領域の位置を設定する回転制御部と
を備える請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記分岐部材は、前記対象物からの光の一部を透過させて前記撮像部に入射させるとともに、他部を反射させて前記分光測定部に入射させるビームスプリッタであり、
前記データ処理部は、前記ビームスプリッタの屈折率、回転角、及び厚さのいずれかまたは全てに基づいて、前記画像内での前記測定領域の位置を補正する
請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定領域に、前記分光測定部の光軸と同一の光軸を有するスポット光を照射するスポット照射部を備え、
前記撮像部は、前記スポット光が照射された前記対象物の画像を撮像して前記画像データを生成する
請求項7または8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記画像内の前記スポット光の位置に基づいて前記測定領域を入力する入力部を更に備える
請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記回転制御部は、前記画像内での前記スポット光の位置に基づいて、前記分岐部材の回転を制御する
請求項9に記載の測定装置。
【請求項12】
前記スポット光を集光する対物レンズを更に備え、
前記画像における前記スポット光の大きさに基づいて、前記対物レンズの焦点位置を制御する焦点制御部を備える
請求項9から11のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記スポット照射部は、予め定められた波長帯域の前記スポット光を照射し、
前記分光測定部は、前記対象物の種類に応じた波長帯域の前記スペクトルデータを生成する
請求項9から12のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項14】
前記撮像部は、予め定められた画素ピッチで配列された複数の画素を有し、
前記回転制御部は、前記分岐部材を回転させて、前記画像の撮像領域の位置を前記画素ピッチより小さい距離だけずらした少なくとも2つの前記画像データを取得させる
請求項7から13のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項15】
請求項1から5のいずれか一項に記載の分光データ管理装置と、
請求項6から14のいずれか一項に記載の測定装置と、
を備える測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光データ管理装置、測定装置および測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の分光スペクトルを測定する分光測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2012−189342号公報
【0003】
対象物に照射する照明光の条件により、測定される分光スペクトルが変化する場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様においては、対象物の少なくとも一部を撮像した画像を示す画像データ、画像に含まれる測定領域における対象物のスペクトルを示すスペクトルデータ、および、少なくとも測定領域に対する照明光に関する、光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示す光線空間データを取得するデータ取得部と、画像データ、スペクトルデータおよび光線空間データを対応付けて記憶する記憶部とを備える分光データ管理装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、対象物のスペクトルデータを測定する測定装置を提供する。測定装置は、対象物の少なくとも一部の画像を撮像して画像データを生成する撮像部と、画像に含まれる測定領域において、対象物のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する分光測定部と、対象物に照明光を照射する照明部と、画像データ、スペクトルデータ、および、光線空間データを対応付けて記憶および/または出力するデータ処理部とを備え、光線空間データは、少なくとも測定領域に対する照明光に関する光源の位置、光源の種類、光源の数、波長、照射角度、偏光の少なくともいずれかを示すデータである。
【0006】
本発明の第3の態様においては、第1の態様に係る分光データ管理装置と、第2の態様に係る測定装置とを備える測定システムを提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一つの実施形態に係る測定システム10の構成の一例を示す図である。
図2】対象物300の少なくとも一部を撮像した画像130の一例を示す図である。
図3】分光測定部122が測定するスペクトルデータの一例である。
図4】照明部110の一例を示す図である。
図5】照明部110の他の例を示す図である。
図6】照明部110の他の例を示す図である。
図7】測定領域132に入射する照明光の照射角度θmを示す図である。
図8】複数の測定領域132に対して測定した複数のスペクトルデータの一例を示す図である。
図9】記憶部220が記憶するデータのデータ構造を示す図である。
図10】測定装置100の他の構成例を示す図である。
図11】画像130内におけるスポット光の照射位置148を示す図である。
図12】測定領域132を設定する他の例を示す図である。
図13】データ処理部124または演算部230の処理の一例を示す図である。
図14】測定装置100の他の構成例を示す図である。
図15】回転制御部144の他の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る測定システム10の構成の一例を示す図である。測定システム10は、対象物300の分光スペクトルデータを測定する測定装置100と、対象物300の分光スペクトルデータを管理する分光データ管理装置200とを備える。
【0011】
本例の分光データ管理装置200は、測定装置100が測定した分光スペクトルデータを取得して管理する。分光データ管理装置200は、一例としてCPU、メモリおよびインターフェース等を備えるコンピュータである。分光データ管理装置200は、測定装置100とは分離していてよく、測定装置100の筐体に組み込まれていてもよい。分光データ管理装置200は、複数の測定装置100が測定した分光スペクトルデータを管理してよい。この場合、分光データ管理装置200は、測定装置100毎に分光スペクトルデータを管理することが好ましい。
【0012】
測定装置100は、撮像部104、分光測定部122、照明部110およびデータ処理部124を備える。撮像部104は、対象物300の少なくとも一部の画像を撮像した画像データを生成する。撮像部104は、2次元に配列された複数の画素を備え、対象物300の2次元画像を撮像する。撮像部104に含まれるセンサは、CCDまたはCMOS等のイメージセンサであってよい。撮像部104に含まれるセンサは、可視帯域の波長の光に感度を有してよく、近赤外などの可視帯域外の波長の光に感度を有してもよい。
【0013】
測定装置100は、対象物300と撮像部104との間に設けられた撮影レンズ106を備えてよい。撮影レンズ106は、対象物300からの光を、撮像部104の撮像面に結像させる。
【0014】
分光測定部122は、対象物300の所定の測定領域において、対象物300のスペクトルを測定してスペクトルデータを生成する。測定領域は、撮像部104が撮像した画像に含まれる領域である。分光測定部122は、光ファイバを含む光学系120を有してよい。光学系120は、対象物300の測定領域からの光を、分光測定部122に伝送する。
【0015】
測定装置100は、分岐部材108を備えてよい。分岐部材108は、対象物300からの光を分岐させて、撮像部104と分光測定部122にそれぞれ入射させる。本例の分岐部材108は、ビームスプリッタである。本例のビームスプリッタは、対象物300からの光の一部を透過させて撮像部104に入射させるとともに、対象物300からの光の他の一部を反射させて分光測定部122に入射させる。
【0016】
測定装置100は、対物レンズ114を備えてよい。撮影レンズ106および対物レンズ114は、それぞれ一つまたは複数のレンズを有してよい。対物レンズ114は、対象物300の測定領域からの光を、光学系120の入射面に集光させる。
【0017】
照明部110は、対象物300に照明光を照射する。照明部110は、1つまたは複数の光源112を有してよい。照明部110は、光源112の位置、種類等の照明条件が可変であってよい。本明細書では、照明部110における照明条件を示すデータを光線空間データと称する。光線空間データは、少なくとも測定領域に対する照明光に関する光源112の位置、光源112の種類、光源112の数、波長、照射角度、および、偏光の少なくともいずれかを示すデータである。
【0018】
照明部110における照明条件が変化すると、分光測定部122が測定するスペクトルデータが変化する場合がある。例えば分光測定部122には、対象物300の測定領域における、表面反射光、表面散乱光および内部散乱光が入射される。表面反射光は、対象物300の表面において入射光が正反射して出射した成分である。表面散乱光は、対象物300の表面において入射光が散乱した拡散光成分と、対象物300の表面が微細構造を持つために広がりを持って反射(乱反射)した反射成分とを重ね合わせて出射した成分である。内部散乱光は、対象物300の内部において入射光が散乱して出射した成分である。光の入射角度等の照明条件が変化すると、分光測定部122に入射される表面反射光、表面散乱光および内部散乱光が変化する場合がある。例えば、光の入射角度が変化すると表面反射光の出射角度および光量が変化し、これに伴って表面散乱成分、内部散乱成分の光量も変化する。このため、照明条件を考慮せずにスペクトルデータを取得した場合、スペクトルデータを適切に処理または比較できない場合がある。
【0019】
データ処理部124は、撮像部104が撮像した画像データ、分光測定部122が測定したスペクトルデータ、および、照明部110における光線空間データを、対応付けて記憶し、および/または、対応付けて外部に出力する。分光データ管理装置200が測定装置100に設けられる場合、データ取得部210が、データ処理部124として機能してよい。画像データ、スペクトルデータおよび光線空間データは、それぞれ同一のタイミングで取得されたデータであることが好ましい。
【0020】
分光データ管理装置200のデータ取得部210は、データ処理部124から画像データ、スペクトルデータおよび光線空間データを取得する。データ取得部210は、複数の測定装置100により生成された画像データ、スペクトルデータ、光線空間データを取得してよい。
【0021】
記憶部220は、画像データ、スペクトルデータおよび光線空間データを対応付けて記憶する。記憶部220は、測定装置100毎に、画像データ、スペクトルデータおよび光線空間データを管理してよい。演算部230は、記憶部220が記憶した各データに対して所定の演算を行う。記憶部220は、演算部230における演算結果を記憶してよい。
【0022】
対象物300のスペクトルデータと、光線空間データとを対応付けて管理することで、それぞれのスペクトルデータを取得したときの照明条件を管理できる。このため、スペクトルデータを適切に管理できる。例えば演算部230は、照明条件に応じてスペクトルデータを適宜補正することができ、また、類似する照明条件ごとにスペクトルデータを分類することもできる。よって、照明条件を考慮した対象物300のスペクトルを取得することができるので、対象物300の種類の判別や状態の把握における精度が向上する。
【0023】
また、画像データとスペクトルデータとを対応付けて管理することで、それぞれのスペクトルデータに対応する測定領域の位置を容易に管理できる。画像データには、それぞれの測定領域を示す情報が含まれてよい。具体的には、測定領域は、画像中の座標(X,Y)で表されてよい。本例において測定領域を示す情報は、画像データに含まれるスポット光の画像である。測定装置100は、スポット光を照射するスポット照射部116を備えてよい。
【0024】
スポット照射部116は、一例としてレーザーまたはLEDである。スポット照射部116は、分光測定部122の光軸(本例では光学系120の光軸)と同一の光軸を有するスポット光を照射する。スポット照射部116は、レーザーまたはLEDの光素子から射出したスポット光の光路を制御するミラー118、119を有してよい。本例のミラー119は、対象物300からの光の少なくとも一部を光学系120に透過させ、スポット照射部116の光素子からの光の少なくとも一部を対象物300の方向に反射させる。
【0025】
スポット光と分光測定部122の光軸を一致させることで、対象物300において分光測定部122がスペクトルを測定する測定領域の位置と、スポット光が照射される位置とがほぼ一致する。このため、画像データにおけるスポット光の位置により、測定領域の位置を管理できる。
【0026】
スポット照射部116は、分光測定部122が測定する波長帯域に含まれない波長の光を射出してよく、分光測定部122が測定する波長帯域に含まれる波長の光を射出してもよい。例えば分光測定部122が赤外帯域のスペクトルデータを測定する場合、スポット照射部116は可視帯域の光を射出してよい。一例としてスポット照射部116が射出する光は白色光である。なお、スポット照射部116が射出する光の波長帯域は予め定められておけばよく、たとえば、紫外帯域であっても赤外帯域であってもよいし、可視帯域の特定の波長帯域(例えば赤等)であってもよい。
【0027】
図2は、対象物300の少なくとも一部を撮像した画像130の一例を示す図である。本例の画像130には、対象物300の全体が含まれている。上述したように、画像130には、測定領域132が含まれている。測定領域132の位置は、画像130におけるスポット光の位置を用いることができる。
【0028】
画像130には、照明部110の光源112からの光の光軸が、対象物300の表面と交わる位置を示す光軸領域134が含まれてよい。光軸領域134は、対象物300において、他の領域よりも明るい部分であってよい。例えば光軸領域134は、対象物300の表面に光源112が映り込んだ領域である。光軸領域134の中心を、光軸の位置としてよい。
【0029】
データ処理部124または演算部230は、光軸領域134と、測定領域132との相対位置を演算してよい。光軸領域134と、測定領域132との距離が近いほど、分光測定部122に入射する光には、対象物300の表面における表面反射光の成分が多くなり、スペクトルが変化する。
【0030】
また、画像130には、対象物300の特徴的な部分136が含まれてよい。一例として、対象物300は果物であり、部分136は果物のヘタ部分である。データ処理部124または演算部230は、部分136と、測定領域132との相対位置を演算してよい。これにより部分136に対して特定の範囲内における測定領域132のスペクトルデータを管理できる。このため、同種の複数の対象物300において、同様の位置の測定領域132におけるスペクトルデータを比較できる。
【0031】
また、データ処理部124およびデータ取得部210は、同一の対象物300に対して、複数の測定領域132におけるスペクトルデータを取得してよい。複数の測定領域132のスペクトルデータは、順番に取得してよく、同時に取得してもよい。同時に取得する場合、測定装置100は複数の光学系120および複数のスポット照射部116を備えてよい。複数の測定領域132は、対象物300における位置が異なる領域である。この場合、データ処理部124および記憶部220は、一つの画像130に対して複数の測定領域132を対応付けてよく、それぞれの測定領域132に対して一つの画像130を対応付けてもよい。
【0032】
また、演算部230は、画像130に基づいて、対象物300の種類を判別してよい。演算部230は、スペクトルデータに基づいて対象物300の種類を判別してもよい。演算部230は、対象物300の種類ごとに予め定められたテンプレートデータと画像130またはスペクトルデータとを比較すること等により、対象物300の種類を判別してよい。対象物300の種類とは、例えばみかん、林檎等の果物の種類である。記憶部220は、対象物300の種類を、画像データ、スペクトルデータおよび光線空間データと対応付けて記憶してよい。なお、対象物300の種類には、さらに細分化された種類を含んでもよい。例えば、果物の種類であれば、みかんの産地、品種などの情報である。なお、対象物300は、果物以外の作物、食肉、加工食品でもよく、生体やその組織でもよい。さらに、演算部230は、上記の判別手法により、対象物300の状態を判別してもよい。対象物300の状態の判別とは、例えば、対象物300を構成する成分やその量を検出することにより得られる糖度や水分量等の判別や、腐敗や異物が混入した異常な状態でないかの判別である。本例の測定装置100は、対象物300の種類、状態等を判別することで、例えば、ユーザーが対象物300を購入する際に判断基準となる情報や、ユーザーが食品である対象物300を安心して食べるための情報を提供することができる。
【0033】
図3は、分光測定部122が測定するスペクトルデータの一例である。スペクトルデータにおける波長分解能は、予め定められた閾値よりも高い分解能を有するものとする。例えば、複数の波長で撮像した画像データの波長分解能を閾値として設定した場合、スペクトルデータは、画像データの波長分解能(複数の波長間隔)よりも高い分解能を有するものとする。本例のスペクトルデータは赤外帯域のデータであるが、スペクトルデータの波長帯域はこれに限定されない。
【0034】
スポット照射部116は、スポット光を照射してよい。ここでスポット光とは、予め定められた波長帯域に渡ってほぼ均一な強度を有する光である。当該波長帯域は、例えば可視帯域の白色光が挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
分光測定部122は、スポット光の波長帯域のうち、対象物300の種類に応じた波長帯域のスペクトルデータを生成してよい。対象物300の種類によって測定したい波長帯域が異なる場合に、分光測定部122は適切なスペクトルデータを取得できる。対象物300の種類は、画像130等に基づいて測定装置100が予め判別してよく、使用者等により設定されてもよい。この場合、光線空間データには、スポット光の波長、照射角度の少なくとも一つが含まれる。
【0036】
図4は、照明部110の一例を示す図である。照明条件を示す光線空間データには、光源112の位置、光源112の種類、光源112の数、光源112が照射する光の波長、照射角度、偏光状態の少なくともいずれかを示すデータが含まれる。光線空間データには、分光測定部122が測定するスペクトルデータに影響を与えうる他のパラメータが含まれていてよい。光線空間データには、各光源112が照射する光の強度データが含まれていてもよい。データ処理部124は、光源112毎に光線空間データを管理してよい。
【0037】
光源112の位置とは、対象物300に対する3次元の相対位置(x、y、z)である。光源112の位置は、対象物300の測定領域に対する相対位置であってよい。光源112が複数存在する場合、光線空間データには、それぞれの光源112の位置を示すデータが含まれてよい。
【0038】
光源112の種類とは、光を生成する手段に関する情報であってよい。一例として光源112の種類とは、光源112がハロゲンランプ、キセノンランプ、LED等のいずれの光源であるかを示す情報である。照明部110は、複数の種類の光源を有してよい。
【0039】
光源112の数とは、スペクトルデータの測定時において対象物300に光を照射している光源112の数を指す。光源112が照射する光の波長は、当該光において最も強度が大きい主成分の波長であってよく、所定の波長帯域に渡るスペクトルであってもよい。
【0040】
光源112が照射する光の照射角度は、当該光の光軸140の角度θaが含まれてよい。光軸140とは、光源112が照射する光の中心軸である。当該角度θaは、対象物300の表面302に対する角度であってよく、所定の基準面に対する角度であってもよい。対象物300の表面302が傾斜を有する場合、測定装置100は測定領域における傾斜の角度を測定してもよい。光線空間データには、対象物300の表面302の測定領域における傾斜角が含まれてよい。
【0041】
照明部110が集光系照明である場合、光源112が照射する光の照射角度には、測定装置100の表面302において光が集光する集光角度Φが含まれてもよい。照明部110が集光レンズ138を有する場合、集光角度Φは、集光レンズ138の特性から定められる。光源112が照射する光の照射角度には、光源112から光が発散する発散角度φが含まれてもよい。
【0042】
光源112が照射する光の偏光状態とは、光の偏光の有無、偏光の方向等が含まれる。光線空間データには、光の照射角度が少なくとも含まれてよく、光源112の位置、光源112の種類、光源112の数、光源112が照射する光の波長、照射角度、偏光状態の一部または全部が含まれてもよい。
【0043】
このような光線空間データをスペクトルデータと対応付けて管理することで、照明条件による影響を考慮して、スペクトルデータを管理できる。このため、管理したスペクトルデータから、照明条件を考慮した対象物300のスペクトルを取得することができるので、対象物300の種類の判別や状態の把握を精度よく行うことができる。
【0044】
また、本例の測定装置100によれば、簡易な構成で、対象物300の画像データとスペクトルデータを取得できる。また、スペクトルデータおよび画像データを同時に取得できるので、スペクトルデータおよび画像データの取得時における照明条件を同一にできる。
【0045】
また、撮像部104および分光測定部122は、同一の対象物300に対して、複数のタイミングで画像データおよびスペクトルデータを取得してよい。これにより、対象物300の経時的な変化を測定できる。例えば、果物等の鮮度の変化に応じた画像データおよびスペクトルデータを取得できる。
【0046】
図5は、照明部110の他の例を示す図である。本例の照明部110は、対象物300に平行光を照射する平行系照明である。照明部110は、光源112からの光を平行光にするレンズ139を有してよい。
【0047】
図6は、照明部110の他の例を示す図である。本例の照明部110は、対象物300に拡散光を照射する拡散照明である。光線空間データには、照明部110が、集光系照明、平行系照明、拡散照明のいずれであるかを示す情報が含まれてよい。
【0048】
図7は、測定領域132に入射する照明光の照射角度θmを示す図である。一例として照明部110は拡散照明である。照射角度θmは、光源112の光射出面の中心位置(x1、y1、z1)と、測定領域132の中心位置(x2、y2、z2)とを結ぶ直線141と、対象物300の表面302との角度である。光線空間データには、照射角度θmを示すデータが含まれてよい。
【0049】
データ処理部124または演算部230は、画像130の画像データに基づいて測定領域132の位置(x2、y2、z2)を算出してよい。データ処理部124または演算部230は、画像130の画像データに基づいて、撮像面と平行な2次元の位置(x2、y2)を算出してよい。また、撮像部104は、撮像面と垂直なz軸方向における測定領域132の位置を検出する奥行位置検出部を有してよい。また、データ処理部124または演算部230は、測定領域132のz軸方向における位置データとして、対象物300の種類毎に予め定められた数値を用いてもよい。
【0050】
データ処理部124または演算部230は、それぞれの測定領域132の位置(x2、y2、z2)および光源112の位置(x1、y1、z1)に基づいて、それぞれの測定領域132に入射する照明光の照射角度θmを算出してよい。光源112の位置(x1、y1、z1)は、データ処理部124に予め設定されてよい。また、光源112の位置が可変の場合、データ処理部124は、光源112の位置制御データを用いて、光源112の位置を決定してもよい。
【0051】
データ処理部124または演算部230は、測定領域132に含まれる画素毎または画素ブロック毎に、照明光の照射角度を算出してよい。画素ブロックとは、複数の画素が含まれるブロックである。データ処理部124および記憶部220は、測定領域132に含まれる画素または画素ブロック毎に、光線空間データを記憶してよい。
【0052】
図8は、複数の測定領域132に対して測定した複数のスペクトルデータの一例を示す図である。本例では、測定領域132−1は、光軸領域134に含まれる領域であり、測定領域132−2は、光軸領域134から離れた領域であり、測定領域132−3は光軸領域134から更に離れた領域である。
【0053】
図8に示すように、測定領域132と光軸領域134との距離に応じて、対象物のスペクトルデータが変化する。これは、当該距離に応じて、分光測定部122に入射する光に含まれる表面反射光、表面散乱光および内部散乱光が変化するためと考えられる。例えば、光軸領域134の近傍では、表面反射光の成分が多くなる。データ処理部124および記憶部220は、測定領域132と光軸領域134との距離を、スペクトルデータに対応付けてよい。演算部230は、当該距離に基づいて、それぞれのスペクトルデータを補正してよい。このような処理により、測定領域132と光軸領域134との距離に応じてスペクトルデータを管理できる。なお、スペクトルデータの補正は、当該距離に限らない。例えば、光軸領域134での光線空間データとスペクトルデータを基準として、当該基準と測定領域132の光線空間データの各パラメータとの差分に対応して測定領域132のスペクトルデータを補正する補正値(補正係数)を設けてもよい。それぞれのパラメータに対応する補正値は、複数の対象物(および測定領域)を測定した結果を収集して、統計解析や機械学習することにより演算部230が設定してもよい。
【0054】
図9は、記憶部220が記憶するデータのデータ構造を示す図である。例えば、スペクトルデータおよび光線空間データは、撮像データ(画像データに対応する)のタグ情報として対応付けられている。図9に示すように、撮像データのタグ情報には、画像のファイルの詳細を説明するファイルデータが含まれてよい。撮像データのタグ情報には、ファイルデータ、スペクトルデータ及び光線空間データが階層構造で記憶されている。各々に含まれる詳細な情報については上述したとおりである。なお、記憶するデータは図9に示す情報に限らない。
【0055】
図10は、測定装置100の他の構成例を示す図である。本例の測定装置100は、図1に示した測定装置100に対して回転制御部144を更に備える。他の構成は、図1に示した測定装置100と同一である。
【0056】
本例の分岐部材108は回転可能に設けられている。分岐部材108が回転することで、分光測定部122が測定する測定領域132の位置およびスポット光の照射位置が変化する。回転制御部144は、分岐部材108の回転を制御して、画像130内での測定領域132の位置を設定する。データ処理部124および記憶部220は、スペクトルデータに対応付けて、分岐部材108の回転量を示すデータを管理してよい。
【0057】
図11は、画像130内におけるスポット光の照射位置148を示す図である。回転制御部144は、画像130に含まれるスポット光の照射位置148に基づいて、分岐部材108の回転を制御してよい。回転制御部144は、照射位置148が、光軸領域134または部分136に対して所定の相対位置となるように、分岐部材108の回転を制御してよい。
【0058】
図12は、測定領域132を設定する他の例を示す図である。本例では、測定装置100の使用者等が、画像130におけるスポット光の照射位置148に基づいて、測定領域132の位置を調整する。
【0059】
測定装置100は、画像130を使用者等に表示する表示部を備えてよい。使用者等は、表示された画像130に基づいて、測定領域132の位置を調整できる。測定装置100は、画像130上で測定領域132の位置を使用者等が指定する入力部145を有する。入力部145は、画像130上に表示されるカーソル等を移動させる手段を含んでよい。
【0060】
測定装置100は、入力部145からの入力に応じて、分岐部材108等を制御する。これにより、画像130上の照射位置148が矢印で示されるように移動する。使用者等は、照射位置148が所望の位置となった場合に、その位置を測定領域132として決定する入力を行ってよい。
【0061】
図13は、データ処理部124または演算部230の処理の一例を示す図である。本例のデータ処理部124または演算部230は、分岐部材108(ビームスプリッタ)の屈折率、回転角および厚さのいずれかまたは全てに基づいて、画像130内の測定領域132の位置を補正する。
【0062】
データ処理部124または演算部230は、画像130内のスポット光の照射位置148を、分岐部材108の屈折率、回転角および厚さに基づいて補正して、測定領域132の位置を算出する。スポット光と照明光の波長が異なる場合、分岐部材108における反射角度が、スポット光と照明光とで異なる場合がある。このような場合であっても、データ処理部124または演算部230により補正演算することで、測定領域132の位置を正しく検出できる。データ処理部124または演算部230には、分岐部材108の屈折率、回転角および厚さの値と補正係数とを対応付けた関数またはテーブル等が、予め設定されてよい。
【0063】
図14は、測定装置100の他の構成例を示す図である。本例の測定装置100は、焦点制御部150を備える。他の構成は、図1から図13において説明したいずれかの態様の測定装置100と同一である。
【0064】
焦点制御部150は、画像130におけるスポット光の大きさR(本例では直径)に基づいて、対物レンズ114の焦点位置を制御する。焦点制御部150は、スポット光の大きさRが、測定領域132と同一か、または、大きくなるように制御してよい。測定領域132の大きさは、焦点制御部150に予め設定されてよい。
【0065】
図15は、回転制御部144の他の動作例を示す図である。本例の撮像部104は、予め定められた画素ピッチPx、Pyで二次元に配列された複数の画素を有する。PxはX軸方向におけるピッチであり、PyはY軸方向におけるピッチである。
【0066】
回転制御部144は、分岐部材108を回転させて、画像の撮像領域の位置を画素ピッチより小さい距離Δx、Δyだけずらした少なくとも2つの画像130の画像データを取得させる。例えば回転制御部144は、画像130−1の撮像領域の位置を、X軸方向にΔx=Px/2ずらした画像130−2、および、Y軸方向にΔy=Py/2ずらした画像130−3を撮像部104に撮像させる。なお、画像130−1と画像130−2のY軸方向の位置は同一であり、画像130−1と画像130−3のX軸方向における位置は同一である。
【0067】
データ処理部124または演算部230は、これらの画像130−1、130−2、130−3を重ね合わせる。これにより、画素ピッチよりも解像度の高い画像130−4を生成できる。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
10・・・測定システム、100・・・測定装置、104・・・撮像部、106・・・撮影レンズ、108・・・分岐部材、110・・・照明部、112・・・光源、114・・・対物レンズ、116・・・スポット照射部、118・・・ミラー、119・・・ミラー、120・・・光学系、122・・・分光測定部、124・・・データ処理部、130・・・画像、132・・・測定領域、134・・・光軸領域、136・・・部分、138・・・集光レンズ、139・・・レンズ、140・・・光軸、141・・・直線、144・・・回転制御部、145・・・入力部、148・・・照射位置、150・・・焦点制御部、200・・・分光データ管理装置、210・・・データ取得部、220・・・記憶部、230・・・演算部、300・・・対象物、302・・・表面
図1
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