特許第6860211号(P6860211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860211樹脂廃棄物の処理方法、及び樹脂廃棄物の処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860211
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】樹脂廃棄物の処理方法、及び樹脂廃棄物の処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20210405BHJP
   B01D 50/00 20060101ALI20210405BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B09B3/00 303E
   B01D50/00 501C
   B01D50/00 501Q
   B01D50/00 502B
   C08J11/06ZAB
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-45329(P2018-45329)
(22)【出願日】2018年3月13日
(62)【分割の表示】特願2017-207977(P2017-207977)の分割
【原出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2018-122299(P2018-122299A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年3月16日
【審判番号】不服2020-542(P2020-542/J1)
【審判請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】林 季穂
(72)【発明者】
【氏名】中塚 誠
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 神田 和輝
【審判官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−350504(JP,A)
【文献】 特開2007−131463(JP,A)
【文献】 特開2013−147545(JP,A)
【文献】 特開2013−64219(JP,A)
【文献】 特開2014−193788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B29B 17/00
C08J 11/00
C04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造設備においてPAN系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維を含む樹脂廃棄物を処理する方法であって、
前記セメント製造設備が、仮焼炉である加熱手段と、前記加熱手段で発生する排ガスの流れ方向の下流側に設けられる回収手段と、を備え、
前記加熱手段に前記樹脂廃棄物が投入され、前記加熱手段において、前記樹脂廃棄物が800〜1300℃に加熱され、前記樹脂廃棄物の樹脂成分が溶融し、該樹脂成分の一部又は全部が燃焼する加熱工程と、
前記加熱工程を経て発生する前記炭素繊維を含む飛散物が、前記排ガスの流れとともに前記回収手段に搬送され、前記回収手段において、バグフィルターによる処理により、前記飛散物を前記排ガスから回収する回収工程とを含、樹脂廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記フィルター処理後に電気集塵処理を施す請求項1に記載の樹脂廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記炭素繊維を含む樹脂廃棄物が自動車シュレッダーダストである請求項1又は2に記載の樹脂廃棄物の処理方法。
【請求項4】
セメント製造設備において炭素繊維を含む樹脂廃棄物を処理する処理システムであって、
仮焼炉である加熱手段と、前記加熱手段で発生する排ガスの流れ方向の下流側に設けられる回収手段と、を備え、前記回収手段がバグフィルターであり、
前記炭素繊維がPAN系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維であり、
前記加熱手段に前記樹脂廃棄物が投入され、前記加熱手段が前記樹脂廃棄物を800〜1300℃で加熱し、前記樹脂廃棄物の樹脂成分溶融し、該樹脂成分の一部又は全部を燃焼させ、
前記加熱手段で発生する前記炭素繊維を含む飛散物を、前記排ガスの流れとともに前記回収手段に搬送し、前記回収手段においてフィルター処理して前記排ガスから前記飛散物を回収する、樹脂廃棄物処理システム。
【請求項5】
排気煙突と電気集塵機とを備えてなり、
前記電気集塵機が、前記排気煙突と前記回収手段との間にある請求項に記載の樹脂廃棄物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理方法、及び炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セメント製造設備においては、建設発生土、汚泥、煤塵、食品系廃棄物、廃プラスチック等の廃棄物の有効利用を図るため、これらを原燃料として活用している。なかでも、廃自動車シュレッダーダスト(ASR:Automobile Shredder Residue)は年々大量に発生し、その効率的な処理の必要性が増している。
【0003】
廃自動車シュレッダーダストは、リサイクル工場で廃自動車を大型カッターで切断した後、磁選機等を通して鉄等の有価物を分離回収した残留物で、プラスチック、ゴム、スポンジ等の有機合成高分子物質を中心とした可燃物やガラス等の無機物を主体とするものである。近年では、車両の強度の向上や軽量化の観点から、これら構成成分として炭素繊維が含まれる炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)や、繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、炭素繊維強化熱硬化性樹脂(CFRTS:Carbon Fiber Reinforced Thermosets)、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)が使用されるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
通常、セメント製造設備で廃自動車シュレッダーダストを処理する場合は、一般的には他の産業廃棄物と同様に仮焼炉や窯尻等、燃料としてこれら可燃性廃棄物を700〜1300℃程度の燃焼場に投入される。従来は、投入位置の詳細な検討(例えば、特許文献2参照)や、燃焼雰囲気の検討(例えば、特許文献3参照)が行われてきた。
ところが、近年これら廃自動車シュレッダーダストに炭素繊維を使用した樹脂部材を処理する場合、排ガス処理設備の電気集塵機において炭素繊維が原因で放電を起こし、電気集塵機が停止する等セメント製造の操業に障害を引き起こすことが判明した。一般的な樹脂部材は燃焼場で加熱処理されるが、炭素繊維は上記温度帯では燃焼しないものがあり、燃焼しない炭素繊維は排ガスと共にプレヒータの中を通過していく。炭素繊維は繊維状であるため、種々の装置内や配管内に絡みつきセメント設備の操業を阻害する問題を発生し得る。特に電気集塵機の停止は深刻な事故につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−212730号公報
【特許文献2】特許5112141号公報
【特許文献3】特許4948429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、炭素繊維を含む樹脂廃棄物を燃料として用いても、セメント設備の操業を阻害することなく、効率的に当該樹脂廃棄物を処理できる樹脂廃棄物の処理方法、及び樹脂廃棄物の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、加熱処理後に発生する炭素繊維を含む飛散物をフィルター処理して飛散物を回収することで、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0008】
[1]炭素繊維を含む樹脂廃棄物を処理する方法であって、前記樹脂廃棄物の樹脂部分を加熱して炭素繊維を分離する加熱・分離工程と、前記加熱・分離工程を経て発生する前記炭素繊維を含む飛散物をフィルター処理して前記飛散物を回収する回収工程とを含み、
前記加熱・分離工程において、前記炭素繊維を含む樹脂廃棄物が800〜1300℃に加熱される、樹脂廃棄物の処理方法。
[2]前記加熱・分離工程における前記加熱が、セメント製造装置のプレヒータ、仮焼炉、窯尻、及びロータリーキルンの少なくともいずれかによって行われる、[1]に記載の樹脂廃棄物の処理方法。
[3]前記回収工程のフィルター処理がバグフィルターによる処理である[1]又は[2]に記載の樹脂廃棄物の処理方法。
[4]前記フィルター処理後に電気集塵処理を施す[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂廃棄物の処理方法。
[5]前記炭素繊維を含む樹脂廃棄物が自動車シュレッダーダストである[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂廃棄物の処理方法。
[6]炭素繊維を含む樹脂廃棄物を処理する処理システムであって、加熱により前記樹脂廃棄物の樹脂部分を加熱する加熱手段と、前記加熱後に発生する前記炭素繊維を含む飛散物をフィルター処理して前記飛散物を回収する回収手段とを備え、前記加熱手段が、前記炭素繊維を含む樹脂廃棄物を800〜1300℃に加熱する、樹脂廃棄物処理システム。
[7]前記回収手段がバグフィルターである[6]に記載の樹脂廃棄物処理システム。
[8]排気煙突と電気集塵機とを備えてなり、前記電気集塵機が、前記排気煙突と前記回収手段との間にある[6]又は[7]に記載の樹脂廃棄物処理システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炭素繊維を含む樹脂廃棄物を燃料として用いても、セメント設備の操業を阻害することなく、効率的に当該樹脂廃棄物を処理できる樹脂廃棄物の処理方法、及び樹脂廃棄物の処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理システムの一形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理方法]
まず、炭素繊維を用いた複合材料としては炭素繊維強化プラスチック、炭素繊維強化炭素複合材料などがある。炭素繊維を単独の材料として利用することは少なく、合成樹脂などの母材と組み合わせた複合材料として用いることが主である。
本発明の炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理方法では、樹脂部分を加熱して溶融又は燃焼させる加熱工程を含んでおり、具体的にはセメント製造装置のプレヒータ、仮焼炉、窯尻、及びロータリーキルンの加熱場又は燃焼場の少なくともいずれかに投入し、炭素繊維を含む樹脂廃棄物のうち、樹脂成分を溶融又は燃焼させ、炭素繊維を分離する。
【0012】
燃焼処理の条件は、セメント製造設備で行われる条件が適用される。例えば処理温度は、仮焼炉では750〜1050℃程度(好ましくは850〜950℃)であり、窯尻では、950〜1250℃程度(好ましくは1000〜1200℃、更に好ましくは1000〜1100℃)である。
【0013】
なお、炭素繊維を含む樹脂廃棄物は予め所定の大きさごとに分けておくことが好ましい。本発明に係る処理方法では、樹脂成分が加熱されることで、樹脂成分が溶融又は燃焼して、炭素繊維部分が燃焼せずに樹脂成分から分離される。樹脂部分と分離された炭素繊維はガスの流れに乗ってプレヒータへ流れていく。そして、本発明に係る処理方法では、炭素繊維を含む飛散物をフィルター処理してこの飛散物を回収する回収工程を含んでいる。当該工程は、具体的にはプレヒータを飛散する炭素繊維をフィルターで回収する工程である。
【0014】
このような処理により、炭素繊維を含む樹脂廃棄物のうち、可燃性である樹脂成分がいずれは燃料の一部として燃焼する。すなわち、樹脂成分が燃料として供される。炭素繊維には様々な種類があるが、種類によって、600℃以下で燃焼するものもあれば1450℃でも燃焼しないものがある。しかし、ほとんど全ての炭素繊維は1450℃程度では溶融しない。アクリル繊維を原料に高温で炭化して作ったPAN系(Polyacrylonitrile)や、ピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料にしたピッチ系(PITCH)等があるが、いずれも融点・分解点は2000〜3500℃と高温のものがある。
したがって、燃焼処理後には、炭素繊維を含む飛散物が発生することになる。この飛散物は、排ガスとともに飛散し、例えば、電気集塵機に混入すると炭素繊維を介して通電してしまう問題が発生し、操業を停止せざるを得なくなることがある。また、当該飛散物が大量に飛散することで他の設備や配管内に滞留し、種々の不具合を生じることがある。
なお、本発明では、PAN系やピッチ系の炭素繊維を含む樹脂廃棄物に対して特に有効である。
【0015】
本発明では、燃焼処理後に発生する上記炭素繊維を含む飛散物をフィルター処理してその飛散物を回収する飛散物回収処理を施す。これにより、飛散物を排ガス中から除去できるため、セメント設備の操業を阻害することなく、その後の排ガス処理工程を阻害したり効率を低下させることがなくなる。
【0016】
飛散物回収処理としては、バグフィルターによる処理、スクラバーによる排ガスの水洗処理、大型沈降室による処理等があるが、設備投資や処理費用などを考慮すると、バグフィルターによる処理が好ましい。
【0017】
ここで、バグフィルターのろ布に使用される素材としては、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、木綿、羊毛、耐熱ナイロン、ポリアミド・ポリイミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ガラス繊維、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などがあり、機能付きろ布として触媒担持フィルター、静電フィルターなどが挙げられる。中でも好適なろ布としては、耐熱ナイロン、ポリアミド・ポリイミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ガラス繊維、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であり、さらに好適には耐熱ナイロン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。
また、払い落し方式としては、脈動逆圧方式、パルスジェット方式などが挙げられ、中でも好適な払い落し方式としては、パルスジェット方式である。
【0018】
フィルター処理後には、電気集塵処理を施すことが好ましい。電気集塵処理を施すことで、処理後の排ガスから微粉ダストを回収し、排煙設備から微粉ダストの拡散を防止することができる。
なお、電気集塵処理は、炭素繊維がフィルター処理により分離回収された後に行われるため、炭素繊維に起因する故障が生じることはない。
【0019】
炭素繊維を含む樹脂廃棄物としては、廃自動車シュレッダーダスト、ボート、フロ桶、釣竿、ゴルフクラブ等の廃棄物、型枠、洗面台、浴槽、室内部材等が挙げられるが、燃料としての樹脂成分の大量処理性を考慮すると、廃自動車シュレッダーダストが好ましい。
また、廃自動車シュレッダーダスト中の炭素繊維はセメント製造に適用される加熱では燃焼せずに残留するが、本発明ではそのような場合に炭素繊維に起因する不具合を防止しながら、当該炭素繊維を分離回収できる。かかる観点を考慮しても、廃自動車シュレッダーダストが好ましい。
【0020】
ここで、廃自動車シュレッダーダストは、廃自動車から再利用可能な部品やパーツを取り外した後、大型破砕機(シュレッダー)で大きさ100mm程度に破砕し、磁力選別や手選別等で有価金属類を回収した後に残る破砕廃棄物である。
【0021】
廃自動車シュレッダーダストをプレヒータ及びロータリーキルンの少なくともいずれかに投入する場合、それぞれの投入場所により、廃自動車シュレッダーダストの粒径を調整することが好ましい。
【0022】
プレヒータ(特に仮焼炉)に投入する場合、廃自動車シュレッダーダストの粒径(最大粒径)は15mm以下であることが好ましく、10mm以下がより好ましい。ロータリーキルンに投入する場合はその窯尻に投入することが好ましく、その際の廃自動車シュレッダーダストの粒径(最大粒径)は40mm以下であることが好ましく、30mm以下がより好ましい。
上記粒径ごとに分ける方法としては、篩を用いる等の公知の方法を適用することができる。
【0023】
廃自動車シュレッダーダストには、ポリ塩化ビニル等の塩素含有プラスチック;自動車の窓枠(ウェザーストリップ)として使用されたクロロプレンゴム;等の塩素含有樹脂成分が含まれている場合が多い。従って、これを直接に燃焼処理すると、ダイオキシン発生のおそれがあり、また塩化水素による装置類の腐食が問題になる可能性がある。また、製品であるセメントの塩素含有量が増大する。そこで、本発明においては、脱塩処理を適宜行うことが好ましい。
脱塩処理としては、塩素含有廃棄物の水洗といった処理が挙げられる。あるいは、セメント設備の窯尻からプレヒータの最下段サイクロンまでの間で、高温ガスを抽気することで、セメント設備の中から塩素含有ダストや塩素ガスを系外に排出する脱塩処理が挙げられる。これら脱塩処理を採用すれば、廃自動車シュレッダーダストの処理量を増やすことができる。
【0024】
本発明の樹脂廃棄物の処理方法によれば、セメント設備の操業を阻害し得る炭素繊維を含む樹脂廃棄物を燃料として用いても、セメント設備を安定して運転させることができる。
また、飛散物をフィルター処理して分離回収した飛散物は炭素繊維を含有しているため、繊維補強コンクリート等に使用する補強繊維として再利用することができる。あるいは、回収した繊維をセメントに混合して、繊維補強コンクリート等に使用する繊維プレミックスセメントとして使用することができる。
【0025】
[2.炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理システム]
本発明の炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理システムの一実施形態の概略を図1に示す。当該システムは、既述の本発明の樹脂廃棄物の処理方法を実施するのに好適である。したがって、以下で説明する各種条件は本発明の樹脂廃棄物の処理方法にも適用可能である。
【0026】
図1に示す樹脂廃棄物の処理システム10は、プレヒータ12と、ロータリーキルン14と、プレヒータ12、仮焼炉12A、窯尻13、及びロータリーキルン14の少なくともいずれかに炭素繊維を含む樹脂廃棄物を投入する樹脂廃棄物投入手段16とを含む。なお、図1では樹脂廃棄物投入手段16により樹脂廃棄物はロータリーキルンの窯尻13に投入されているが、これは例示であり、本発明はこの態様に限定されるものではない。
以下、図面を参照して本発明の樹脂廃棄物の処理システムの処理概要の一例を説明する。なお、図1中、実線の矢印は原料の流れを示し、点線の矢印は排ガスの流れを示す。
【0027】
まず、セメント原料ストレージ18に貯蔵されたセメント原料は、原料ミル(セメント原料乾燥粉砕機)20により乾燥・粉砕され、サイクロン(セメント原料粉分離機)22を通った後、原料サイロ23に貯蔵され、プレヒータ(サスペンションプレヒータ)12に投入される。プレヒータ(サスペンションプレヒータ)12にて加熱されながらプレヒータ12を通過して仮焼炉12Aに送られる。
プレヒータ12では300〜900℃程度で原料が加熱されており、その後の仮焼炉12Aで800〜1300℃程度で原料が加熱される。仮焼炉12Aで加熱された原料は、ロータリーキルン14内でさらに加熱処理が施される。これにより生成したクリンカはクリンカクーラ26へと運ばれ、その後粉砕されて公知のセメント製造処理が施される。
【0028】
ここで、樹脂廃棄物投入手段16により、プレヒータ12、仮焼炉12A、窯尻13、及びロータリーキルン14の少なくともいずれかに炭素繊維を含む樹脂廃棄物が投入されることで、樹脂廃棄物中の樹脂成分が加熱されて、溶融し、一部もしくは全部が燃料として燃焼して消費される。また、加熱により、樹脂成分が溶融又は燃焼するため、炭素繊維と樹脂成分とが分離されることになる。
【0029】
樹脂廃棄物投入手段16により仮焼炉12Aに樹脂廃棄物を投入する場合は、仮焼炉12Aの天井から底部までのうち、天井から40%までの範囲では最大粒径15mm以下の樹脂廃棄物を投入することが好ましい。また、仮焼炉12Aの天井から40%以上から底部までの範囲では最大粒径40mm以下の樹脂廃棄物を投入することが好ましい。
【0030】
樹脂廃棄物中の炭素繊維は不燃物であるため燃料として供されることはなく、また軽いため燃焼時に発生する排ガスの流れに乗って原料供給方向とは逆方向に飛散する(図中の点線矢印を参照)。
【0031】
燃焼処理後に発生するこの炭素繊維を含む飛散物は、例えば、電気集塵機に混入すると炭素繊維を介して通電してしまう問題が発生し、操業を停止せざるを得なくなることがある。また、当該飛散物が大量に飛散することで他の設備や配管内に付着や滞留し、種々の不具合を生じることがある。
【0032】
そこで、図1では、排ガスの流れ方向において、電気集塵機30より上流側に飛散物回収手段28を設け、燃焼処理後に発生する炭素繊維を含む飛散物をフィルター処理して当該飛散物の回収を行っている。
これにより、電気集塵機30には炭素繊維を含まない排ガスのみが送られ、ここでさらにダストが回収され、最終的に排気煙突32から排ガスが放出される。
【0033】
飛散物回収手段28としては、バグフィルターを用いることが好ましく、特に耐熱性材料からなるフィルターが好ましい。バグフィルターであれば、炭素繊維だけでなく、燃料の石炭で燃え切らなかった未燃カーボンが飛散してきても障害なく除去することが可能であり、電気集塵機での未燃カーボンによる操業阻害を抑制することができる。なお、バグフィルターの集塵性能がよければ、電気集塵機30を停止または外すこともできる。
ここで、電気集塵機30としては、整流方式がシリコンタイプで集塵室が3室のタイプ等を使用することができる。この電気集塵機の集塵室を通過するガス流速としては0.5〜1.5m/s程度で稼働することができる。
【0034】
なお、電気集塵機30と排気煙突32との間には、ファン(図示せず)を設けて制御装置により電気集塵機30及びバグフィルター28を通過する排ガスの流量や流速を一定値に保つ機能を付与してもよい。
【0035】
また、この樹脂廃棄物処理システムにおいて使用することができるセメント原料としては、例えば、天然に存在する鉱石を掘削採取して得られる石灰石、粘土質原料、珪石等の珪酸質原料、酸化鉄等を微粉砕混合したセメント原料の他、無機系廃棄物、有機系廃棄物、無機系廃棄物及び有機系廃棄物を含む廃棄物の1種または2種以上を用いることができる。
無機系廃棄物としては、残留炭素を含む石炭灰、高炉スラグ、高炉ダスト、未燃灰等が用いられ、これらの無機系廃棄物は粘土質原料の代替品として好適である。
【0036】
一方、有機系廃棄物としては、例えば、廃プラスチック、廃タイヤ、廃油等の有機物を含む廃棄物が用いられる。これらの廃棄物は、セメント製造設備で処理される廃棄物の中では比較的処理が容易であり、例えば、廃プラスチック、廃タイヤ等については、裁断もしくは粗砕された後、燃料の一部として直接ロータリーキルン14又は仮焼炉12Aに投入され溶融・燃焼処理される。
【0037】
以上のような炭素繊維を含む樹脂廃棄物の処理システムによれば、炭素繊維を含む樹脂廃棄物を燃料として有効に利用しながら、セメントを生産することができる。また、炭素繊維に起因するセメント設備の操業が阻害されることがなく、効率的に当該樹脂廃棄物を処理できる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・処理システム
12・・・プレヒータ
12A・・・仮焼炉
13・・・窯尻
14・・・ロータリーキルン
16・・・樹脂廃棄物投入手段
18・・・セメント原料ストレージ
23・・・原料サイロ
28・・・飛散物回収手段
32・・・煙突
図1