特許第6860504号(P6860504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6860504-有機電界発光素子 図000030
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860504
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20210405BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210405BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/10
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-558887(P2017-558887)
(86)(22)【出願日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】JP2016084751
(87)【国際公開番号】WO2017115589
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-257096(P2015-257096)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】多田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】澤田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】上田 季子
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0001488(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/035934(WO,A1)
【文献】 特開2015−111624(JP,A)
【文献】 特開2015−119054(JP,A)
【文献】 特開2010−205815(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0273764(US,A1)
【文献】 特開2015−097201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−33/28
H01L 51/50
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含む有機電界発光素子において、少なくとも1つの発光層が、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる第1ホストと下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる第2ホスト、及び発光性ドーパント材料を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】
ここで、XはN-A、酸素又は硫黄を表し、Aはそれぞれ独立して炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。R1はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。
【化2】
ここで、YはN-Ar、酸素又は硫黄を表し、Arは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。R2はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。但し、YがN-Arを表す場合において、一般式(1)におけるXがN-Aを表すことはない。
【請求項2】
一般式(2)が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化3】
ここで、Y、Ar及びR2は一般式(2)と同意である。
【請求項3】
一般式(1)が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【化4】
ここで、Zはそれぞれ独立してNまたはCR3を表し、少なくとも1つのZはNである。R3はそれぞれ独立して水素、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。X及びR1は一般式(1)と同意である。
【請求項4】
一般式(1)におけるXが、酸素又は硫黄であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
一般式(2)におけるYが、N-Arであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
第1ホストと第2ホストの合計に対し、第1ホストの割合が20wt%を超え、55wt%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
発光性ドーパント材料が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる群れから選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機電界発光素子を製造するにあたり、少なくとも1つの発光層を、第1ホストと第2ホストの予備混合物を含むホスト材料を蒸着させて形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子(有機EL素子という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子に電圧を印加することで、陽極から正孔が、陰極からは電子がそれぞれ発光層に注入される。そして発光層において、注入された正孔と電子が再結合し、励起子が生成される。この際、電子スピンの統計則により、一重項励起子及び三重項励起子が1:3の割合で生成する。一重項励起子による発光を用いる蛍光発光型の有機EL素子は、内部量子効率は25%が限界であるといわれている。一方で三重項励起子による発光を用いる燐光発光型の有機EL素子は、一重項励起子から項間交差が効率的に行われた場合には、内部量子効率が100%まで高められることが知られている。
しかしながら、燐光発光型の有機EL素子に関しては、長寿命化が技術的な課題となっている。
【0003】
さらに最近では、遅延蛍光を利用した高効率の有機EL素子の開発がなされている。例えば特許文献1には、遅延蛍光のメカニズムの一つであるTTF(Triplet-Triplet Fusion)機構を利用した有機EL素子が開示されている。TTF機構は2つの三重項励起子の衝突によって一重項励起子が生成する現象を利用するものであり、理論上内部量子効率を40%まで高められると考えられている。しかしながら、燐光発光型の有機EL素子と比較すると効率が低いため、更なる効率の改良が求められている。
一方で特許文献2では、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence)機構を利用した有機EL素子が開示されている。TADF機構は一重項準位と三重項準位のエネルギー差が小さい材料において三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が生じる現象を利用するものであり、理論上内部量子効率を100%まで高められると考えられている。しかしながら燐光発光型素子と同様に寿命特性の更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/134350 A1
【特許文献2】WO2011/070963 A1
【特許文献3】特開2010-205815号公報
【特許文献4】WO2011/055933 A1
【特許文献5】US2015/0001488 A1
【特許文献6】WO2012/035934 A1
【0005】
特許文献3では、下記一般式で表される部分構造を含む化合物を含有する有機EL素子用材料が開示されている。
【化1】
(式中、X1、X2は、各々異なるカルコゲン原子を表す。)
【0006】
特許文献4では、インドロインドール化合物について、混合ホストとしての使用を開示している。
特許文献6では、インドロインドール化合物について、ホスト材料としての使用を開示している。
【0007】
特許文献5では、下記のようなビスカルバゾール化合物とインドロカルバゾール化合物の混合ホストとしての使用を開示している。
【化2】
【0008】
しかしながら、いずれも十分なものとは言えず、更なる改良が望まれている。
【発明の概要】
【0009】
有機EL素子をフラットパネルディスプレイ等の表示素子、または光源に応用するためには素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、上記現状を鑑み、低駆動電圧でありながら高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含む有機EL素子において少なくとも1つの発光層が、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる第1ホストと下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる第2ホスト、そして発光性ドーパント材料を含有することを特徴とする有機EL素子である。
【化3】
(ここで、XはN-A、酸素又は硫黄を表し、Aはそれぞれ独立して炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は、炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。R1はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。)
【化4】
(ここで、YはN-Ar、酸素又は硫黄を表し、Arは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。R2はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。)
但し、一般式(2)におけるYがN-Arを表す場合において、一般式(1)におけるXがN-Aを表すことは無い。
【0011】
一般式(2)の好ましい様態として一般式(3)がある。
【化5】
【0012】
一般式(3)のY、Ar、R2は、一般式(2)のY、Ar、R2と同意である。そしてYがN-Arであることがより好ましい。
【0013】
一般式(1)の好ましい様態として一般式(4)がある。
【化6】
(ここで、Zはそれぞれ独立してNまたはCR3を表し、少なくとも1つのZはNである。R3はそれぞれ独立して水素、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。)
【0014】
一般式(4)のX、R1は一般式(1)と同意である。そして、Xは酸素又は硫黄のいずれかであることがより好ましい。
【0015】
上記第1ホストと第2ホストは、蒸着前に予備混合して使用することが好ましい。また第1ホストの割合が第1ホストと第2ホストの合計に対し、20 wt%よりも多く、55wt %よりも少ないことが好ましい。
【0016】
上記発光性ドーパント材料は燐光発光ドーパント材料、蛍光発光ドーパント材料又は熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料であることができる。燐光発光性ドーパント材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる群れから選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
【0017】
本発明の有機EL素子は、発光層に複数の特定のホスト材料を含有するため、低駆動電圧で高発光効率、且つ長寿命な有機EL素子となることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】有機EL素子の一例を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有機EL素子は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を有し、発光層の少なくとも1層が、第1ホストと第2ホスト、及び発光性ドーパント材料を含有する。第1ホストは、上記一般式(1)で表される化合物であり、第2ホストは、上記一般式(2)で表される化合物である。この有機EL素子は、対向する陽極と陰極の間に複数の層からなる有機層を有するが、複数の層の少なくとも1層は、発光層であり、発光層は複数あってもよい。
【0020】
上記一般式(1)と(4)について説明する。一般式(1)と(4)において、共通する記号は同じ意味を有する。
XはN-A、酸素又は硫黄を表す。好ましくは、酸素又は硫黄であり、より好ましくは硫黄である。
【0021】
Aは独立に炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。好ましくは炭素数3〜30の芳香族複素環基であり、より好ましくは炭素数3〜25の芳香族複素環基である。これらの芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基は、置換基を有してもよく、置換基を有する場合の好ましい置換基は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基である。また、炭素数の計算には置換基の炭素数を含む。
【0022】
上記炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜30の芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール又はこれらの芳香族環が単結合で2〜5個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、又はこれらが2〜5個連結した芳香族化合物から1個のHをとって生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン又はこれらが2〜5個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。連結芳香族化合物は、Ar1-Ar2-Ar3-Ar4-Ar5のような直鎖型であってもよいし、Ar1-Ar2(Ar3)-Ar5のような分岐型であってもよい。Ar1〜Ar5は同一であってもよく、異なってもよい。なお、Ar3〜Ar5はなくともよい。連結芳香族化合物から生じる芳香族基の結合手は、末端のAr1又はAr5から生じてもよく、中間のAr2〜Ar4のいずれから生じてもよい。
【0023】
R1は独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。好ましくは、炭素数6〜8の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜10の芳香族複素環基であり、より好ましくは、フェニル基又は炭素数3〜6の芳香族複素環基である。
【0024】
上記炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる
【0025】
上記炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜12の芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、又はカルバゾールから1個のHをとって生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、又はベンゾチアジアゾールから生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、又はオキサジアゾールから生じる芳香族基が挙げられる。
【0026】
Zは独立にNまたはCR3を表し、少なくとも1つのZはNである。R3はそれぞれ独立して水素、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。
【0027】
R3が炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜12の芳香族複素環基である場合の、具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール又はこれらが2個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、キナゾリン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン又はこれらが2個連結した連結芳香族化合物から1個のHをとって生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、又はビフェニルから生じる芳香族基が挙げられる。
【0028】
一般式(1)で表される化合物の具体的な例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0029】
【化7】

【化8】

【化9】
【0030】
次に、第2ホストとなる一般式(2)又は一般式(3)の化合物について、説明する。一般式(2)と(3)において、共通する記号は同じ意味を有する。
YはN-Ar、酸素又は硫黄を表す。好ましくは酸素又は硫黄を表し、より好ましくは硫黄を表す。
【0031】
Arは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜30の芳香族複素環基を表す。好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜17の芳香族複素環基を表し、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
【0032】
上記炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜30の芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール又はこれらが2〜5個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、又はこれらが2〜5個連結した連結芳香族化合物から1個のHをとって生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、トリフェニレン又はこれらが2〜5個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。
【0033】
R2は、独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を表す。好ましくは、炭素数6〜8の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜10の芳香族複素環基であり、より好ましくは、フェニル基又は炭素数3〜6の芳香族複素環基である。これらのアルキル基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の説明は、前記R1におけるこれらの説明と同意である。
【0034】
一般式(2)〜(3)で表される化合物の具体的な例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0035】
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】
【0036】
前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる第1ホストと前記一般式(2)で表される化合物から選ばれる第2ホストを発光層のホスト材料として使用することで優れた有機EL素子を提供することができる。
【0037】
第1ホストと第2ホストは、個々に異なる蒸着源から蒸着して使用することもできるが、蒸着前に予備混合して予備混合物とし、その予備混合物を1つの蒸着源から同時に蒸着して発光層を形成することが好ましい。この場合、予備混合物には、発光層を形成するために必要な発光性ドーパント材料、又は必要により使用される他のホストを混合させてもよいが、所望の蒸気圧となる温度に大きな差がある場合は、別の蒸着源から蒸着させることがよい。
【0038】
また、第1ホストと第2ホストの混合比(重量比)は、第1ホストと第2ホストの合計に対し、第1ホストの割合が20〜60%がよく、好ましくは20%よりも多く、55%よりも少ないことであり、より好ましくは30〜50%である。
【0039】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造はこれに限定されない。
【0040】
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表す。本発明の有機EL素子は発光層と隣接して励起子阻止層を有してもよく、また発光層と正孔注入層との間に電子阻止層を有しても良い。励起子阻止層は発光層の陰極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。本発明の有機EL素子では、陽極、発光層、そして陰極を必須の層として有するが、必須の層以外に正孔注入輸送層、電子注入輸送層を有することが良く、更に発光層と電子注入輸送層の間に正孔阻止層を有することがよい。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか、または両者を意味し、電子注入輸送層は、電子注入層と電子輸送層のいずれかまたは両者を意味する。
【0041】
図1とは逆の構造、すなわち基板1上に陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も必要により層を追加、省略することが可能である。
【0042】
―基板―
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については特に制限はなく、従来から有機EL素子に用いられているものであれば良く、例えばガラス、透明プラスチック、石英等からなるものを用いることができる。
【0043】
―陽極―
有機EL素子における陽極材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3-ZnO)等の非晶質で、透明導電膜を作成可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成しても良く、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは有機導電性化合物のような塗布可能な物質を用いる場合には印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0044】
―陰極―
一方、陰極材料としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム―カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの陰極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度は向上し、好都合である。
【0045】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で形成した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0046】
―発光層―
発光層は陽極及び陰極のそれぞれから注入された正孔及び電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり発光層には有機発光性ドーパント材料とホスト材料を含む。
【0047】
発光層におけるホスト材料としては、一般式(1)で表される第1ホストと一般式(2)で表される第2ホストを用いる。更に、公知のホスト材料を1種又は複数種類併用しても良いが、その使用量はホスト材料の合計に対し、50wt%以下、好ましくは25wt%以下とすることがよい。
【0048】
第1ホストと第2ホストは、それぞれ異なる蒸着源から蒸着するか、蒸着前に予備混合して予備混合物とすることで1つの蒸着源から第1ホストと第2ホストを同時に蒸着することもできる。予備混合方法としては、粉砕混合等の公知の方法が採用できるが、可及的に均一に混合することが望ましい。
【0049】
発光性ドーパント材料として燐光発光ドーパントを使用する場合、燐光発光ドーパントとしては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも1つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には、J.Am.Chem.Soc.2001,123,4304や特表2013-53051号公報に記載されているイリジウム錯体が好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0050】
燐光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。燐光発光ドーパント材料の含有量はホスト材料に対して0.1〜30wt%であることが好ましく、1〜20wt%であることがより好ましい。
【0051】
燐光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる
【0052】
【化20】
【0053】
発光性ドーパント材料として、蛍光発光ドーパントを使用する場合、蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないが例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族誘導体、スチリル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、オキサジン誘導体、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、又はランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくはナフタレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフソフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタレン、ヘキサセン、ナフト[2,1-f]イソキノリン、α‐ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5-f]キノリン、ベンゾチオファントレン等が挙げられる。これらは置換基としてアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はジアリールアミノ基を有しても良い。
【0054】
蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜20%であることが好ましく、1〜10%であることがより好ましい。
【0055】
発光性ドーパント材料として、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントを使用する場合、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないがスズ錯体や銅錯体等の金属錯体や、WO2011/070963号公報に記載のインドロカルバゾール誘導体、Nature 2012,492,234に記載のシアノベンゼン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0056】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0057】
【化21】
【0058】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されてもよいし、2種類以上を含有してもよい。また、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントは燐光発光ドーパントや蛍光発光ドーパントと混合して用いてもよい。熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜50%であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましい。
【0059】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0060】
−正孔阻止層−
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0061】
正孔阻止層には、公知の正孔阻止層材料を用いることができる。
【0062】
−電子阻止層−
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0063】
電子阻止層の材料としては、公知の電子阻止層材料を用いることができ、また後述する正孔輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0064】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は2つ以上の発光層が隣接する素子において、隣接する2つの発光層の間に挿入することができる。
【0065】
励起子阻止層の材料としては、公知の励起子阻止層材料を用いることができる。例えば、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)や、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0066】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0067】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。正孔輸送層には従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。かかる正孔輸送材料としては例えば、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体及びスチリルアミン誘導体を用いることが好ましく、アリールアミン化合物を用いることがより好ましい。
【0068】
−電子輸送層−
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0069】
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。電子輸送層には、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントロリン等の多環芳香族誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、ビピリジン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体等が挙げられる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を超えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0071】
実施例1
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを45nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして第1ホストとして化合物1-16を、第2ホストとして化合物2-18を、発光ドーパントとしてIr(piq)2acacをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(piq)2acacの濃度が6.0wt%、第1ホストと第2ホストの重量比が、30:70となる蒸着条件で共蒸着した。次に、電子輸送層としてET-1を37.5nmの厚さに形成した。そして電子輸送層上に電子注入層としてLiFを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0072】
実施例2
実施例1において、第1ホストと第2ホストの重量比が50:50となる蒸着条件で共蒸着した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0073】
実施例3〜10
実施例1において、第1ホストとして化合物1−16、1−7、1−27のいずれを使用し、第2ホストとして化合物2−18、2−3、2−88、2−97のいずれかを使用した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0074】
実施例11
化合物1−16(0.30g)と化合物2−18(0.70g)を量りとり、乳鉢ですり潰しながら混合することにより予備混合物H1を調製した。
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを45nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そしてホストとして予備混合物H1を、発光ドーパントとしてIr(piq)2acacをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(piq)2acacの濃度が6.0wt%となる蒸着条件で共蒸着した。次に電子輸送層としてET-1を37.5nmの厚さに形成した。そして電子輸送層上に電子注入層としてLiFを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0075】
比較例1
実施例11において、ホストとして化合物1−16のみを用いた以外は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0076】
比較例2
実施例11において、ホストとして化合物2−18のみを用いた以外は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0077】
比較例3
実施例1において第1ホストとしてRH-1を第2ホストとしてRH-2を使用した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0078】
実施例で使用した化合物を次に示す。
【0079】
【化22】
【0080】
第1ホストと第2ホストに使用した化合物と、その割合(重量比)を表1に示す。
【表1】
【0081】
実施例1〜11及び比較例1〜3で作製された有機EL素子は、これに外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれも極大波長620nmの発光スペクトルが観測され、Ir(pic)2acacからの発光が得られていることがわかった。
【0082】
作製した有機EL素子の輝度、駆動電圧、発光効率、輝度半減寿命を表2に示す。表中で輝度、駆動電圧、発光効率は駆動電流20mA/cm2時の値であり、初期特性である。表2中でLT95は、初期輝度3700cd/m2時に輝度が初期輝度の95%まで減衰するまでにかかる時間であり、寿命特性である。
【0083】
【表2】
【0084】
表2から、一般式(1)で表される第1ホストと一般式(2)で表される第2ホストを混合して使用すると、それぞれを単独で使用した場合と比較し、寿命特性が著しく伸長することがわかる。また、第1ホストと第2ホストを混合して使用したとしても、一方が一般式(1)の化合物ではない場合、良好な寿命特性が得られないことが分かる。
【符号の説明】
【0085】
1 基板、2 陽極、3 正孔注入層、4 正孔輸送層、5 発光層、6 電子輸送層、7 陰極
図1