特許第6861110号(P6861110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861110
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】吸収性物品の包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/07 20170101AFI20210412BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B65D85/07
   B65D33/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-129256(P2017-129256)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-11104(P2019-11104A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】小澤特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】深山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智
【審査官】 内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−254283(JP,A)
【文献】 実開昭56−146536(JP,U)
【文献】 特開2010−006471(JP,A)
【文献】 特開2010−208184(JP,A)
【文献】 特開2008−129038(JP,A)
【文献】 特開2013−139294(JP,A)
【文献】 特開2014−005062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/07
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、複数の前記吸収性物品を包装する袋状の包装シートと、を有し、
前記包装シートは、前記包装シートの表面に設けられた凹凸部と、ドットの集合体からなる着色層と、を有する、吸収性物品の包装体であって、
前記着色層のドット径の標準偏差は、平均径の10%以下であり、
前記凹凸部は、複数の凹凸パターンを有し、
前記複数の凹凸パターンは、前記凹凸部の平面形状、前記凹凸部の高さ、及び前記凹凸部の長さ及び幅の少なくともいずれかが異なり、
前記包装シートは、前記着色層によって構成され、前記吸収性物品の着用者を表す着用者画像を有しており、
前記凹凸部は、前記着用者画像の目を構成する領域に配置されており、
前記目を構成する領域の前記凹凸部の高さは、前記着用者画像の目の周囲を構成する領域の前記凹凸部の高さよりも高い、吸収性物品の包装体。
【請求項2】
吸収性物品と、複数の前記吸収性物品を包装する袋状の包装シートと、を有し、
前記包装シートは、前記包装シートの表面に設けられた凹凸部と、ドットの集合体からなる着色層と、を有する、吸収性物品の包装体であって、
前記着色層のドット径の標準偏差は、平均径の10%以下であり、
前記凹凸部は、複数の凹凸パターンを有し、
前記複数の凹凸パターンは、前記凹凸部の平面形状、前記凹凸部の高さ、及び前記凹凸部の長さ及び幅の少なくともいずれかが異なり、
前記包装シートは、前記着色層によって構成され、前記吸収性物品の着用者を表す着用者画像を有しており、
前記凹凸部は、前記着用者画像の肌を構成する領域に配置されており、
前記肌を構成する領域の前記凹凸部の幅は、前記着用者画像の目の周囲を構成する領域の前記凹凸部の幅よりも小さい、吸収性物品の包装体。
【請求項3】
前記ドット径の標準偏差は、平均径の5%以下である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項4】
複数の前記ドットのうち、同色を構成するドット径の標準偏差は、平均径の5%以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項5】
前記凹凸部の凹部と重なる領域の前記ドット径と、前記凹凸部の凸部と重なる領域の前記ドット径と、の標準偏差は、平均径の5%以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項6】
前記吸収性物品は、前記包装シートと対向して配置される物品表面を有し、
前記物品表面には、着色領域が設けられており、
前記凹凸部及び前記着色層の少なくとも一方は、前記着色領域と重なる領域に配置されている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項7】
前記凹凸部及び前記着色層の少なくとも一方は、前記吸収性物品どうしの境界を跨がる領域に配置されている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項8】
前記凹凸部及び前記着色層の少なくとも一方は、前記境界が延びる方向に対して交差する方向に延びる、請求項に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項9】
前記凹凸部は、前記着色層の表面側に配置された樹脂層によって構成されており、
前記樹脂層は、紫外線硬化樹脂を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品の包装体。
【請求項10】
前記樹脂層と前記着色層が重なる領域の凹凸部の高さと、前記樹脂層と前記着色層が重ならない領域の凹凸部の高さと、の差は、0.1μm以下である、請求項に記載の吸収性物品の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吸収性物品を包装した吸収性物品の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装シートによって複数の吸収性物品を包装した吸収性物品の包装体が知られている(下記特許文献1)。特許文献1の吸収性物品の包装体は、包装シートに艶消し層を設けている。艶消し層は、包装シートにエンボス加工を施した後に、包装シートに印刷することによって設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−536069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、包装シートに艶消し層を設けることにより、高級感の向上等の装飾効果を発揮している。しかしながら、包装シートにエンボス加工を施すと、包装シートの表面及び裏面には凹凸が形成される。そのため、包装シートに印刷され易い部分と印刷され難い部分があり、印刷のむらが生じ易い。印刷のむらが生じることにより、包装シートに施した装飾によって意図した装飾効果を発揮できないおそれがある。
【0005】
包装シートに施した装飾によって意図した装飾効果を発揮できる吸収性物品の包装体が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る吸収性物品の包装体は、吸収性物品と、複数の前記吸収性物品を包装する袋状の包装シートと、を有し、前記包装シートは、前記包装シートの表面に設けられた凹凸部と、ドットの集合体からなる着色層と、を有する、吸収性物品の包装体であって、前記着色層のドット径の標準偏差は、平均径の10%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る吸収性物品の包装体の斜視図である。
図2図1に示すA−A線に沿った吸収性物品の包装体の模式的断面図である。
図3図2に示すB部分の包装シートの断面図である。
図4】包装シートの表面を模式的に示した拡大平面図である。
図5図1に示すC部分の包装シートの平面図である。
図6図5に示すD−D線に沿った包装シートの断面図である。
図7図1に示すE部分の包装シートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品の包装体は、吸収性物品と、複数の前記吸収性物品を包装する袋状の包装シートと、を有し、前記包装シートは、前記包装シートの表面に設けられた凹凸部と、ドットの集合体からなる着色層と、を有する、吸収性物品の包装体であって、前記着色層のドット径の標準偏差は、平均径の10%以下である。
【0009】
包装シートの表面に凹凸部があるため、包装シートの表面に光が当たった際に当該光が乱反射し、装飾効果を発揮できる。着色層のドットの径の標準偏差は、平均径の10%以下であり、ドット径が実質的に均一であることにより、着色層全体に亘って意図した装飾効果を発揮し易い。
【0010】
好ましい一態様によれば、前記ドット径の標準偏差は、平均径の5%以下である。
【0011】
着色層のドットの径の標準偏差は、平均径の5%以下であり、ドット径がより均一であるため、着色層全体に亘って意図した装飾効果をより発揮し易い。
【0012】
好ましい一態様によれば、前記複数のドットのうち、同色を構成するドット径の標準偏差は、平均径の5%以下である。
【0013】
同色を構成するドット径の標準偏差は、平均径の5%以下であり、同色の着色効果を均一化することができ、意図した装飾効果をより発揮し易い。
【0014】
好ましい一態様によれば、前記凹凸部の凹部と重なる領域の前記ドット径と、前記凹凸部の凸部と重なる領域の前記ドット径と、の標準偏差は、平均径の5%以下である。
【0015】
凹部と重なる領域のドット径と凸部と重なる領域のドット径の標準偏差は、平均径の5%以下であり、凹部と重なる領域と凸部と重なる領域の着色効果を均一化することができ、意図した装飾効果をより発揮し易い。
【0016】
好ましい一態様によれば、前記凹凸部は、前記着色層の表面側に配置された樹脂層によって構成されている。
【0017】
樹脂層は、所定の加工(温度調整、紫外線照射)によって硬化され、所望の凹凸部の形状を実現し易い。よって、包装シートの凹凸部によって意図した装飾効果を発揮し易い。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記樹脂層と前記着色層が重なる領域の凹凸部の高さと、前記樹脂層と前記着色層が重ならない領域の凹凸部の高さと、の差は、0.1μm以下である。
【0019】
樹脂層と着色層が重なる領域の凹凸部の高さと、樹脂層と着色層が重ならない領域の凹凸部の高さと、の実質的な差がないため、樹脂層と着色層が重なる領域と樹脂層と着色層が重ならない領域で実質的に同一な光の反射効果を発揮できる。よって、包装シートの凹凸部によって意図した装飾効果を発揮し易い。
【0020】
好ましい一態様によれば、前記樹脂層は、紫外線硬化樹脂を有する。
【0021】
凹凸部を構成する樹脂層が紫外線硬化樹脂を有するため、包装シートによって紫外線を吸収し易い。したがって、包装シートに包装された吸収性物品に紫外線による影響が及ぶことを抑制できる。
【0022】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品は、前記包装シートと対向して配置される物品表面を有し、前記物品表面には、着色領域が設けられており、前記凹凸部及び前記着色層の少なくとも一方は、前記着色領域と重なる領域に配置されている。
【0023】
凹凸部又は着色層による装飾効果によって、吸収性物品の着色領域を目立ち難くし、包装シートの装飾効果を目立ち易くできる。したがって、意図した包装シートの装飾効果をより発揮できる。
【0024】
好ましい一態様によれば、前記凹凸部及び前記着色層の少なくとも一方は、前記吸収性物品どうしの境界を跨がる領域に配置されている。
【0025】
吸収性物品の境界による明度のバラツキを凹凸部又は着色層の装飾効果によって目立ち難くできる。したがって、意図した包装シートの装飾効果をより発揮できる。
【0026】
好ましい一態様によれば、前記凹凸部は、前記境界が延びる方向に対して交差する方向に延びる。
【0027】
凹凸部又は着色層による装飾効果によって吸収性物品どうしの境界における陰影を目立ち難くできる。したがって、意図した包装シートの装飾効果をより発揮できる。
【0028】
好ましい一態様によれば、前記凹凸部は、複数の凹凸パターンを有し、前記複数の凹凸パターンは、前記凹凸部の平面形状、前記凹凸部の高さ、及び前記凹凸部の幅の少なくともいずれかが異なる。
【0029】
複数の凹凸パターンを有するために、複数の反射パターンによって異なる装飾効果を発揮できる。具体的には、着用者を示す着用者画像と重なる領域において、目を構成する領域の凹凸部の高さを高くし、反射効果を高めたり、肌を構成する領域の凹凸部の平面形状を細かくし、滑らかな質感を実現したり、画像に合わせた複雑な装飾効果を発揮できる。
【0030】
好ましい一態様によれば、前記包装シートは、前記着色層によって構成され、前記吸収性物品の着用者を表す着用者画像を有しており、
前記凹凸部は、前記着用者画像の目を構成する領域に配置されており、
前記目を構成する領域の前記凹凸部の高さは、前記着用者画像の目の周囲を構成する領域の前記凹凸部の高さよりも高い。
【0031】
目を構成する領域の凹凸部の高さを高くし、目の反射率を高めることにより、目を目立たせることができ、購入者の注意を引くことができる。
【0032】
好ましい一態様によれば、前記包装シートの表面には、前記着色層によって構成され、前記吸収性物品の着用者を表す着用者画像が設けられており、
前記凹凸部は、前記着用者画像の肌を構成する領域に配置されており、
前記肌を構成する領域の前記凹凸部の幅は、前記着用者画像の肌の周囲を項制する領域の前記凹凸部の幅よりも短い。
【0033】
肌を構成する領域の凹凸部の幅が短く、購入者が肌の画像を触った際に滑らかな質感となる。肌の画像の柔らかい質感によって、肌に対して優しい印象や肌に触れる吸収性物品が柔らかい印象を与えることができる。
【0034】
(2)吸収性物品の包装体の構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品の包装体について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0035】
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品の包装体の斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿った吸収性物品の包装体の断面図である。吸収性物品の包装体1(以下、包装体1とする)は、吸収性物品20と、複数の吸収性物品20を包装する包装シート10と、を有する。
【0036】
包装シート10は、袋状に成形されている。包装シート10内の空間に、複数の吸収性物品20が収容されている。吸収性物品20としては、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収パットを例示できる。本実施の形態の吸収性物品20は、使い捨ておむつであり、二つ折りに畳まれた状態で包装シート10内に収容されていてよい。吸収性物品20は、厚み方向Tと、吸収性物品20の前後方向に沿う長手方向と、長手方向及び厚み方向Tに直交する幅方向と、を有してよい。
【0037】
図3は、図2に示すB部分の拡大図である。包装シート10の表面10Tは、包装体1の外面を構成し、包装シート10の裏面10Bは、包装体1の内面を構成し、吸収性物品20に接触してよい。
【0038】
包装シート10は、包装シート10の表面に設けられた凹凸部15を有してよい。凹凸部15は、包装シート10の表面10Tに設けられており、包装シート10の表面10Tに当たった光を乱反射させる。光の乱反射によって装飾効果を発揮できる。包装シート10の表面10Tの光沢度は、包装シート10の裏面10Bの光沢度よりも低くてよい。より好ましくは、包装シート10の表面10Tの光沢度は、包装シート10の裏面10Bの光沢度の1/2倍以下であってよい。包装シート10の表面10Tによって光を乱反射する効果をより好適に得られる。包装シートの表面によって光を反射すればするほど、包装シート内部の吸収性物品が見え難くなる。よって、包装シートによって意図した装飾効果を発揮できる。光沢度は、日本電色工業株式会社の光沢計VG7000を用い、鏡面光沢度−測定方法(JIS Z 8741)に準拠した測定方法によって測定することができ、60°の角度の光沢である。
【0039】
包装シート10の裏面10Bは、包装シート10の表面10Tよりも平滑であってよい。シートの平滑を比較する指標としては、面の凸凹の高さ、KESの表面粗さの標準偏差(SMD)、平均摩擦係数の平均偏差(MMD)を例示できる。具体的には、電子顕微鏡によってシートの断面の凹凸の高さを測定できる。包装シートの裏面の凹凸の高さが包装シートの表面の凹凸の高さよりも低い場合には、包装シート10の裏面10Bは、包装シート10の表面10Tよりも平滑である。また、KESの表面粗さの標準偏差(SMD)を測定する際は、測定面と反対側の面の凹凸の形状が影響するため、測定対象の面を構成する層のみを取り出し、測定することが好ましい。包装シートの裏面が包装シートの表面よりも平滑であるため、吸収性物品の取り出し時における摩擦抵抗を抑えることができる。吸収性物品を取り出す際に包装シートの裏面に吸収性物品が引っ掛かり難く、使用者が吸収性物品をスムーズに取り出しやすい。包装シートの表面に凹凸部があり、包装シートの裏面が平滑であるため、包装シートの表面の凹凸部によって意図した装飾効果を発揮しつつ、使用時に吸収性物品をスムーズに取り出すことができる。
【0040】
包装シート10は、凹凸部15の裏面側に配置された本体層11を有してよい。本体層11は、包装シートの裏面に配置されてよい。本体層11は、0.04mm〜0.20mmの厚みのフィルムによって構成されてよい。本体層11の裏面は、実質的に平滑である。具体的には、本体層11の裏面のKESの表面粗さの標準偏差(SMD)は、0.8以下であり、より好ましくは、0.2以上0.3以下であってよい。本体層の裏面のKESの平均摩擦係数の平均偏差(MMD)は、0.01以下であり、より好ましくは、0.004以上0.006以下であってよい。本体層11の厚みの標準偏差は、本体層11の平均厚みの10%以下であってよい。また、本体層11の表面も、本体層11の裏面と同様に、実質的に平滑であってよい。本体層11の表面が実質的に平滑であることにより、本体層11の表面側に着色層12及び樹脂層13を形成する際にむらが生じ難い。よって、着色層12及び樹脂層13を意図した態様で形成し易く、光の乱反射や着色によって意図した装飾効果を発揮できる。
【0041】
本体層11の裏面は、実質的に平滑であるため、凹凸部15の形成等の装飾加工を本体層11に施す際に、加工むらが生じ難い。そのため、本体層11に意図した態様で凹凸部15を加工でき、凹凸部15によって意図した装飾効果を発揮し易い。また、本体層11の裏面が包装シート10の裏面10Bを構成し、包装シート10の裏面10Bが実質的に平滑であってよい。
【0042】
表面摩擦係数の平均偏差(MMD)及び表面粗さの平均偏差(SMD)の測定は、シートの表面の感触を表す特性値として一般的に知られている、カトーテック株式会社製のKESでの特性値(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄 発行 昭和55年7月10日)に基づいて測定できる。
【0043】
具体的には、表面特性の測定は、カトーテック(株)製KES−FB4を用いて、各サンプルにおいて1.0×1.0cmの範囲を試料とし、平滑な金属平面の試験台に配置して行った。表面粗さの測定は、その表面(又は裏面)上に、10gfの荷重を掛け、かつ、0.5mm径のピアノ線で巻かれた幅0.5cmの接触端子を試料に圧着させて行い、また、表面摩擦の測定は、表面粗さの測定に用いた接触端子と同じピアノ線を10本並べ重錘によって50fgの力で接触面を試料に圧着させて行う。表面摩擦及び表面粗さの測定では、試料を0.1cm/secの一定速さで水平に2cm移動させ、試料には20gf/cmの一軸張力が与えられる。測定結果により、表面摩擦係数の平均偏差(MMD)及び表面粗さの平均偏差(SMD)を求めた。
【0044】
本体層11の厚みは、次の方法によって測定できる。本体層11を23℃×50%RHで2時間調湿した後、本体層11の任意の点Aを中心とし、基準方向(0度方向)を特定した後、中心点Aから基準方向(a)、基準方向に対して時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)、135度方向(d)、180度方向(e)、225度方向(f)、270度方向(g)及び315度方向(h)の8方向へそれぞれ100mmの直線L1〜L8の合計8本引く。それぞれの直線上において、中心点から10mm間隔で厚みを長さゲージ 「HEIDENHAIN−METRO MT1287」(ハイデンハイン社製)により測定する(10点測定する)。そして、全部の直線において測定して得られたデータ合計80点の測定値の平均値を算出し、これを平均厚みとし、平均厚みに対する標準偏差値を算出する。
【0045】
また、包装シート10の曲げ剛性は、0.07×10−4Nm/m以上であってよく、包装シート10の剛軟度は、53.0mm以上であってよい。包装シート10の曲げ剛性が0.07×10−4N以上であり、包装シート10の剛軟度が53.0mm以上であり、包装シートは、こしがあるため、凹凸部15の形成等の装飾加工のむらが生じ難い。そのため、本体層11に意図した態様で凹凸部15を加工でき、凹凸部15によって意図した装飾効果を発揮し易い。
【0046】
包装シート10の剛軟度は、JIS L 1913 6.7.3に従って測定する。より具体的には、38mm×25mmの試験片を5枚採取し、ガーレー試験機(株式会社安田精機製作所製剛軟度測定器No.311)にて試験片の表、裏を連続測定後の表裏の平均値から、剛軟度を算出する。
【0047】
包装シート10の曲げ剛性は、カトーテック株式会社製KES FB−2を用いて測定する。寸法50mm×100mmとなる試験片を準備し、一対のチャックの一方に試験片の長手方向の一端を挟み、他方のチャックに試験片の長手方向の他端を挟む。一方のチャックが他方のチャックを中心に回転し、これによって折り曲げられた試験片の曲げ剛性をトルク検出器で測定する。試験片は、5組準備して、測定値の平均値を曲げ剛性とする。
【0048】
凹凸部15は、本体層11の表面側に配置された樹脂層13によって構成されていてよい。樹脂層13は、所定の加工(温度調整、紫外線照射)によって硬化される。したがって、所望の凹凸部15の形状を実現し易い。よって、凹凸部15の高さを高くして反射効果を高めたり、凹凸部15の高さを部分的に異ならせて反射態様を部分的に異ならせたり、包装シート10の凹凸部15によって意図した装飾効果を発揮し易い。凹凸部15の高さH15は、凸部の頂点と凹みの底面との厚み方向の距離である(図6参照)。凹凸部15の高さは、0.8μm以上であってよい。凹凸部15の高さは、好ましくは1.2μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であってよい。凹凸部の高さが0.8μm以上であることにより、包装シートの表面に当たった光を乱反射する効果をより好適に得られる。また、凹凸部の高さは、好ましくは1.2μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であることにより、更に光の乱反射効果を高めることができる。なお、凹凸部15は、本体層11に形成されていてもよいし、樹脂層13及び後述する着色層12等、本体層と別体の層によって構成されていてもよい。
【0049】
樹脂層13は、紫外線硬化樹脂を有してよい。凹凸部15を構成する樹脂層13が紫外線硬化樹脂を有するため、包装シート10によって紫外線を吸収し易い。包装シート10内の吸収性物品20に紫外線が過度に照射されると、吸収性物品の劣化やインジケータが意図せずに反応するおそれがある。樹脂層13が紫外線硬化樹脂を有することにより、包装シート10に包装された吸収性物品20に紫外線による影響が及ぶことを抑制できる。
【0050】
包装シート10は、本体層11と樹脂層13の間に配置された着色層12を有してよい。包装シート10が着色層12を有するため、包装シート10は着色層12による装飾効果を発揮できる。また、本体層11が実質的に平滑な面であるため、着色層12のドット径を一定にする等、着色層12を意図した形状で設けることができ、包装シート10によって意図した装飾効果を発揮できる。
【0051】
着色層12は、ドットの集合体によって構成されていてよい。着色層を構成するドット径の標準偏差は、平均径の10%以下であり、より好ましくは、平均径の5%以下であってよい。図4は、包装シートの表面を模式的に示した拡大平面図である。図4に示すように、包装シートの表面は、凹凸部15と、凹凸部15よりも裏面側に位置する着色層12のドットと、が視認可能に設けられていてよい。着色層12は、部分的に配置されており、着色層12が配置された領域と着色層が配置されていない領域が設けられてよい。ドット径は、平面視におけるドットの径であり、図4において、ドットを符号121,122で示し、そのドット径をD121、D122で示す。ドット径の標準偏差が平均径の10%以下であるため、ドット径は、実質的に均一である。そのため、着色層12の色むらが生じ難くなり、着色層12によって意図した装飾効果を発揮し易い。ドット径の標準偏差は、ドット径のバラツキを指標するものである。ドットの平均粒径(平面視の径)をx、標準偏差をσとしたときに、σ/xで表される粒径のばらつきが、10%以下であり、より好ましくは5%以下であることが好ましい。
【0052】
複数のドットのうち、同色を構成するドット径の標準偏差は、平均径の10%以下であり、より好ましくは、平均径の5%以下であってよい。同色を構成するドットは、色相、明度及び彩度が同じ色を構成するドットを指している。図4において、ドット121は、同色を構成するドットであり、ドット122は、同色を構成するドットである。ドット121とドット122は、異なる色を構成するドットであり、その径が異なっている。同色を構成するドット径が実質的に均一であるため、同色の着色効果を均一化することができ、意図した装飾効果をより発揮し易い。
【0053】
着色層12のドットは、凹凸部15の凹部と重なる領域と、凸部と重なる領域と、に設けられていてよい。なお、凹部と凸部の境界は、凸部の頂点と凹部の底面の厚み方向の中間点としてよい。凹部と重なる領域は、図4における15Aで示す領域であり、凸部と重なる領域は、図4における15Bで示す領域である。凹部と重なる領域15Aのドット径と、凹凸部の凸部と重なる領域15Bのドット径と、の標準偏差は、平均径の10%以下であり、より好ましくは、平均径の5%以下であってよい。より好適には、凹部と重なる領域15Aのドットのうち、同色を構成するドットのドット径(例えば、D121)が実質的に均一であり、凸部と重なる領域15Bのドットのうち、同色を構成するドットのドット径(例えば、D121)が実質的に均一である。凹部と重なる領域のドット径と凸部と重なる領域のドット径が実質的に均一であるため、着色効果を均一化することができ、意図した装飾効果をより発揮し易い。
【0054】
着色層12は、部分的に樹脂層13と重なっていてもよく、樹脂層13と着色層12が重なる領域12Aと、樹脂層13と着色層12とが重ならない領域12Bと、が設けられてよい。樹脂層13と着色層12とが重ならない領域12Bは、着色層12が配置されず、本体層11と樹脂層13が配置されていてよい。樹脂層13と着色層12が重なる領域12Aの凹凸部の高さと、樹脂層13と着色層12が重ならない領域12Bの凹凸部の高さと、の差は、0.1μm以下であってよい。樹脂層13と着色層12が重なる領域12Aの凹凸部15の高さと、樹脂層13と着色層12が重ならない領域の凹凸部の高さと、の実質的な差がないため、樹脂層と着色層が重なる領域と樹脂層と着色層が重ならない領域で実質的に同一な光の反射効果を発揮できる。よって、包装シートの凹凸部によって意図した装飾効果を発揮し易い。
【0055】
包装シート10は、着用者の画像を示す着用者画像17と、商品名等の識別情報を表示する識別画像16と、が設けられていてよい。着用者画像17と、識別画像16と、は、着色層12によって構成されていてよい。着用者画像17は、着用対象者を指標するための画像であり、着用対象者の顔及び身体の一部を含んでよい。
【0056】
凹凸部15は、複数の凹凸パターンを有してよい。複数の凹凸パターンは、凹凸部の平面形状、凹凸部の高さ、及び凹凸部の長さ及び幅の少なくともいずれかが異なってよい。凹凸部の平面形状は、凹部又は凸部の平面視での形状であり、矩形、円形、三角形を含む。複数の凹凸パターンを有するため、複数の反射パターンによって異なる装飾効果を発揮できる。包装シート10の表面10Tに当たった光が複雑な反射態様となり、審美性を高めることができる。凹凸部の幅及び凹凸部の間隔は、2.0mm以下であってよい。凹凸部の幅は、凹部又は凸部の幅方向の長さであり、凹凸部の間隔は、凹部どうしの間隔又は凸部どうしの間隔である。包装シートの表面に微細な凹凸部を配置し、包装シートの表面において光がより乱反射し易くなる。よって、光の乱反射による装飾効果を高めることができ、意図した装飾効果を発揮できる。好ましくは、凹凸部の幅及び凹凸部の間隔は、0.5mm以上1.0mm以下であってよく、更に光の乱反射効果を高め、意図した装飾効果を発揮し易い。
【0057】
図5は、着用者画像と重なる領域のC部分の拡大平面図である。図6は、図5に示すD−D線に沿った包装シートの断面図である。着用者画像の目を構成する領域R1における着色層のドット径は、着用者画像の目の周囲を構成する領域R2における着色層のドット径よりも大きくてよい。よって、着用者画像における目が濃くなり、目を目立たせることができる。目を構成する領域R1の凹凸部15の高さは、目の周囲を構成する領域R2における凹凸部15の高さよりも高くてよい。目を構成する領域R1の反射効果を高め、目を目立たせることができる。目を構成する領域R1の凹凸部15を規則的に配置し、目の周囲を構成する領域R2における凹凸部15を不規則に配置してよい。目の周囲の領域R2は、肌を構成する領域であり、不規則な形状によって肌のような質感を与えることができる。
【0058】
凹凸部15と着色層12の組み合わせにより、画像に合わせた複雑な装飾効果を発揮してよい。着用者画像と重なる凹凸部の凹凸パターンと、識別画像の凹凸パターンと、を異ならせてもよい。着用者画像の凹凸パターンは、不規則かつ細かい凹凸パターンを採用し、肌のような質感を生じ易くしてよい。識別画像16と重なる凹凸部の凹凸パターンは、規則的な凹凸パターンを採用し、識別情報を見やすく構成してよい。なお、細かい凹凸パターンは、凹凸部の幅及び凹凸部の長さが短いパターンである。具体的には、肌を構成する領域の凹凸部の幅は、着用者画像の他の部分(肌の周囲)を構成する領域の凹凸部の幅よりも小さくしてよい。肌を構成する領域の凹凸部の幅が短く、使用者が肌の画像を触った際に滑らかな質感となる。肌の画像の柔らかい質感によって、肌に対して優しい印象や肌に触れる吸収性物品が柔らかい印象を与えることができる。また、肌を構成する領域の凹凸部の平面形状は、正円形でない楕円形や矩形状であることが好ましい。凹凸部が正円形であると、凹凸部が吹き出物のような視覚効果を発揮することがあり、楕円形や矩形状であることにより滑らかな質感を与えることができる。
【0059】
図2及び図3に示すように、吸収性物品は、厚み方向に積層されていてよい。吸収性物品どうしの境界23は、吸収性物品の長手方向及び幅方向に沿っていてよい。吸収性物品20は、不織布等、柔軟性を有する材質によって構成されていてよく、吸収性物品の外形の角部は、直線状ではなく、曲線状となり易い。そのため、包装シート10と対向して配置される吸収性物品の物品表面22と、包装シート10の裏面と、の距離D1は、吸収性物品20の境界23付近において変化し易い。包装シート10から物品表面22までの深さが変化すると、包装シート10の内側に陰影が生じ、包装シート10の表面10T側から視認した際の視覚効果が変化し易い。具体的には、包装シート10から物品表面22までの深さが深い箇所は、影が濃くなるため、包装シート10の明度が低くなる。包装シート10から物品表面までの深さが浅い箇所は、影が薄くなるため、包装シート10の明度が高くなる。凹凸部15及び着色層12の少なくとも一方は、吸収性物品20どうしの境界23を跨がる領域に配置されてよい。凹凸部15が吸収性物品20の境界23を跨がる領域に配置されていることにより、吸収性物品20の境界23による明度のバラツキを凹凸部15の装飾効果によって目立ち難くできる。したがって、意図した包装シートの装飾効果をより発揮できる。また、着色層12が吸収性物品どうしの境界23を跨がる領域に配置されていることにより、吸収性物品の境界23による明度のバラツキを着色層12の装飾効果によって目立ち難くできる。
【0060】
吸収性物品20は、包装シート10と対向して配置される物品表面22を有する。物品表面22には、着色領域21が設けられていてよい。図6は、図1に示すE部分の拡大平面図である。図6において、包装シート10を介して視認可能な着色領域21を示す。着色領域21は、吸収性物品20の外面を構成する外装シート自体に設けられていてもよいし、外装シートを介して視認可能に設けられていてもよい。包装シート10の凹凸部15及び着色層12の少なくとも一方は、着色領域21と重なる領域に配置されてよい。包装シート10の外側から視認した際に、吸収性物品20の着色領域21が目立ちすぎると、使用者が包装シート10の装飾効果を把握し難いことがある。吸収性物品20の着色領域21を凹凸部15又は着色層12による装飾効果によって目立ち難くし、包装シート10の装飾効果を目立ち易くできる。したがって、意図した包装シート10の装飾効果をより発揮できる。
【0061】
着色領域21は、複数のパターンを有し、隣接する吸収性物品の着色領域21のパターンが異なるように構成されていてよい。着色領域21が複数のパターンを有すると、各パターンによる装飾効果が発揮され、吸収性物品20の着色領域がより目立ちやすくなる。包装シート10の装飾効果によって、吸収性物品20の着色領域21を目立ち難くし、包装シート10の装飾効果を目立ち易くできる。
【0062】
図6に示すように、包装シート10の凹凸部15及び着色層の少なくともいずれか一方は、境界23が延びる方向に対して交差する方向に延びてよい。吸収性物品どうしの境界23は、影が生じ易くなるため、包装シートの明度が低くなり易い。凹凸部15又は着色層12による装飾効果を発揮する部分が、吸収性物品どうしの境界23に対して交差する方向に延びるため、吸収性物品どうしの境界23における陰影を目立ち難くできる。したがって、意図した包装シートの装飾効果をより発揮できる。
【0063】
次に、別の実施形態に係る吸収性物品の包装体について説明する。別の実施形態に係る吸収性物品の包装体の包装シートは、本体層11を有していなくてもよく、着色層12が本体層11を兼ねてもよい。
【0064】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上記態様によれば、包装シートに施した装飾によって意図した装飾効果を発揮できる吸収性物品の包装体を提供できる。
【符号の説明】
【0066】
1:吸収性物品の包装体
10:包装シート
11:本体層
12:着色層
13:樹脂層
15:凹凸部
20:吸収性物品
21:着色領域
22:物品表面
23:境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7